説明

シリアルデータ移動平均装置

【課題】シリアルデータの移動平均の精度を上げるために移動平均回数を増やすと平均化に必要な変換時間が長くなってしまう。
【解決手段】変換周期タイマと、変換データラッチとを備えたシリアルデータ移動平均装置において、複数の積分微分回路と、ロード信号生成回路と、変換データセレクタとを備えた構成とする。このロード信号生成回路で生成するタイミングで動作する複数の積分微分回路と変換データセレクタにより、変換データの更新周期を短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアルデータの移動平均を計算するシリアルデータ移動平均装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来のAD変換のシリアルデータを移動平均する装置は、入力されたシリアルデータを積分し、その積分値を微分し、微分後のデータをラッチすることで移動平均化を行い、変換データを得ていた(例えば、特許文献1参照)。
図3において、31は従来のシリアルデータ移動平均装置である。32はAD変換器、35は積分回路、36は微分回路、37は変換データラッチ、39は変換周期タイマ、40はロード信号生成回路である。
AD変換器32から出力されるクロック34に同期したシリアルデータ33は、積分回路35で積分された後、微分回路36で微分される。変換周期タイマ39は定周期で変換開始信号43を発生する。ロード信号生成回路40は変換開始信号43を受けてクロックに同期したロード信号41を積分回路35及び微分回路36に対して発生させる。ロード信号41は、変換開始信号43を受けて、シリアルデータのサンプリング回数分のクロック34に対して1度発生する信号であり、変換終了信号42は移動平均回数分のロード信号41が発生した後に発生する。変換終了信号42により微分回路36の出力を変換データラッチ37で保持して変換データ38となる。
このように、従来のシリアルデータ移動平均装置は、シリアルデータサンプリング回数と移動平均回数により変換開始から変換終了までの時間、すなわち変換時間が決まっていた。
【特許文献1】特開昭60−230300号(第4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のシリアルデータ移動平均装置は、変換の精度を上げるためにはシリアルデータのサンプリング回数を多くする必要があり、これにより変換時間を早くすることが出来ず、変換データの更新周期を早く出来ないという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、シリアルデータのサンプリング回数を増やしても短い周期で変換データを得ることができるシリアルデータ移動平均装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、AD変換器からのシリアルデータを積分する積分回路35と、その積分値を微分する微分回路36からなる積分微分回路5と、定周期で平均化の変換開始信号43を発生する変換周期タイマ39と、前記変換開始信号を受けてクロック34に同期し、前記積分微分回路に対して移動平均開始信号のロード信号4と移動平均の変換終了信号7を発生するロード信号生成回路2と、積分微分回路の出力をデータラッチし保持する変換データラッチ37とを備えたシリアルデータ移動平均装置において、前記積分微分回路5は複数の積分微分回路で構成され、前記ロード信号生成手段2は複数の積分微分回路に時間をずらして起動するロード信号4と、変換データを選択するための選択信号6とを発生し、前記複数の積分微分回路5からの出力を切り替え変換データとする変換データセレクタ3とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、同じ構成の積分微分回路を複数持つことを特徴とする。
請求項3、請求項4および請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、任意のロード間隔で発生してシリアルデータのサンプリング回数に応じた間隔でパルスを生成する複数のロード信号を生成し、複数の積分微分回路での平均化が終了するタイミングにあわせて変換データ選択のための選択信号を生成し、複数の積分微分回路での平均化が終了するタイミングにあわせてデータを保持するための変換完了信号を生成するロード信号生成回路を備えたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ロード信号生成回路で生成された選択信号によって前記複数の積分微分回路の出力を切り替える変換データセレクタを備えることを特徴とする。

【発明の効果】
【0005】
請求項1から請求項6に記載の発明によると、変換データの更新周期を長くすること無しに、シリアルデータのサンプリング回数を増やすことができる。これにより変換精度を上げることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のシリアルデータ移動平均装置の実施例を示す図である。従来技術と同一の機能を持つ要素は同一番号をつけ、説明を省略する。本発明が従来技術と異なる部分は、積分回路と微分回路の組を複数用意し、その起動を時間差を付けて行う部分である。
図において、5aは積分回路35と微分回路36を1セット含む積分微分回路であり、同じ積分微分回路が複数有る。シリアルデータ33は複数の積分微分回路5a〜5nに入力されている。変換開始信号43の発生により、複数の積分微分回路5a〜5nのそれぞれに対してロード信号4a〜4nが時間をずらして起動される。複数の積分微分回路5a〜5nの中での微分された信号は変換データセレクタ3に入力されており、選択信号6により各積分微分回路での微分が終わったタイミングに合わせて変換データが選択される。また、この変換データセレクタでの切り替にあわせて変換完了信号7も発生し、変換データラッチ37で変換データ38としてラッチされる。このようなタイミングにあわせたロード信号4a〜4n、選択信号6、変換完了信号7をロード信号生成回路2で生成する。
【0008】
図2は本発明の実施例の動作を示す図である。変換開始信号43によってまず、ロード信号4aが起動される。ロード信号4bはロード信号4aの起動後から任意の設定でのロード起動間隔後に起動される。以降順次ロード信号4nが起動される。各ロード信号はそれ以降、シリアルデータのサンプリング回数のクロック毎にパルスが発生する。ここでは8回の場合を示している。その後、移動平均回数分のロード信号4aが入力されると積分微分回路での平均化が完了する。ここでは、3回の移動平均の場合を示している。このロード信号4aの3回分の期間が変換時間に相当する。各積分微分回路5a〜5nでの変換完了ごとにそれぞれの変換完了信号7が発生し、変換データ38がその都度ラッチされる。
変換開始信号43の周期を積分微分回路の個数とロード起動間隔を乗じた値にしておけば、変換データ38はロード起動間隔毎に連続して発生する。
【0009】
このように、変換データの更新を短い間隔に出来るため、変換時間を延ばすこと無しにシリアルデータのサンプリング回数を増やして変換精度を上げることができる。

【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明のシリアルデータ移動平均装置はA/D変換器からのシリアルデータを移動平均する回路に関する。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示すシリアルデータ移動平均装置
【図2】本発明の動作図
【図3】従来のシリアルデータ移動平均装置の例
【符号の説明】
【0012】
1 本発明のシリアルデータ移動平均装置
2 ロード信号生成回路
3 変換データセレクタ
4a〜4n ロード信号
5a〜5n 積分微分回路
6 選択信号
7 変換終了信号
32 AD変換器
33 シリアルデータ
34 クロック
35 積分回路
36 微分回路
37 変換データラッチ
38 変換データ
39 変換周期タイマ
43 変換開始信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AD変換器からのシリアルデータを積分する積分回路35と、その積分値を微分する微分回路36からなる積分微分回路5と、定周期で平均化の変換開始信号43を発生する変換周期タイマ39と、前記変換開始信号を受けてクロック34に同期し、前記積分微分回路に対して移動平均開始信号のロード信号4と移動平均の変換終了信号7を発生するロード信号生成回路2と、積分微分回路の出力をデータラッチし保持する変換データラッチ37とを備えたシリアルデータ移動平均装置において、
前記積分微分回路5は複数の積分微分回路で構成され、
前記ロード信号生成手段2は複数の積分微分回路に時間をずらして起動するロード信号4と、変換データを選択するための選択信号6とを発生し、
前記複数の積分微分回路5からの出力を切り替え変換データとする変換データセレクタ3とを備えたことを特徴とするシリアルデータ移動平均装置。
【請求項2】
前記複数の積分微分回路は、同じ構成の積分微分回路を複数持つことを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ移動平均装置。
【請求項3】
前記ロード信号生成回路2は、任意のロード間隔で複数のロード信号を起動し、各ロード信号はシリアルデータのサンプリング回数に応じた間隔でパルスを生成することを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ移動平均装置。
【請求項4】
前記ロード信号生成回路2は、前記複数の積分微分回路での平均化が終了するタイミングにあわせて変換データ選択のための選択信号6を生成することを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ移動平均装置。
【請求項5】
前記ロード信号生成回路2は、前記複数の積分微分回路5での平均化が終了するタイミングにあわせてデータを保持するための変換完了信号7を生成することを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ移動平均装置。
【請求項6】
前記変換データセレクタ3は、前記ロード信号生成回路2で生成された選択信号6によって前記複数の積分微分回路の出力を切り替えることを特徴とする請求項1記載のシリアルデータ移動平均装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−157679(P2009−157679A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335660(P2007−335660)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】