説明

シートの裁断装置

【課題】カッターと受け台の損傷を少なくしながら、被裁断シートを確実に切り離して能率よく裁断する。
【解決手段】シートの裁断装置は、裁断面2Aを上面に有する受け台2と、被裁断シート1を裁断するカッター3と、カッター3を上下に往復運動させるカッター駆動機構4とを備える。さらに、裁断装置は、被裁断シート1を上に載せて移送する搬送ベルト5と、被裁断シート1が裁断面2Aを所定の速度で通過するように搬送ベルト5を駆動する搬送機構6と、搬送ベルト5の上に被裁断シート1を所定の速度で供給する供給機構7とを備える。カッター駆動機構4は、被裁断シート1の移送方向にカッター3を移動させる縦送り機構4Bを備え、縦送り機構4Bでカッター3を被裁断シート1の移送方向に移動させると共に、カッター3を受け台2の裁断面2Aに接近するように降下させて、受け台2の裁断面2Aに移送される被裁断シート1を裁断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト状に連続するシートを所定の長さに裁断する装置に関し、とくに複数のシートを積層している多層積層構造の高機能シートであるプラスチックシートの裁断に最適な裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のプラスチックシートを積層している多層積層構造の高機能シートは、たとえば液晶モニタに使用される。これ等の用途に使用される高機能シートは、裁断装置で決められた長さに裁断して使用される。この裁断装置は、シートを高い精度で正確な長さに裁断する必要がある。このことを実現するために、シートを正確に裁断する裁断装置は開発されている。(特許文献1参照)
【0003】
特許文献1に記載される裁断装置は、上面を水平の裁断面とする受け台と、この受け台の裁断面に向かって下端の直線刃を降下させるカッターと、カッターを上下に往復運動させるカッター駆動機構とを備えている。この裁断装置は、受け台の裁断面に裁断されるシートである被裁断シートを配置して仮止めする。この状態で、カッターを降下させて、下端の直線刃で被裁断シートを直線状に裁断する。
【0004】
この構造の裁断装置は、カッターで被裁断シートを確実に切り離すのが難しい。カッターが、被裁断シートを完全に切り離す位置まで移動しないと、切り残しができて、完全に切り離しできなくなる。この弊害を避けるために、カッターが受け台に食い込むまで移動させると、カッターと受け台の両方の損傷が甚だしく、綺麗に切断できなくなると共に、カッターと受け台の寿命が著しく短くなる。この弊害を解消するために、カッターが受け台の裁断面に接触したことを電気的に検出する装置が開発されている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2000−62017号公報
【特許文献2】特開2005−219159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の装置は、カッターと受け台を金属製とし、カッターが受け台の裁断面に接触して通電されたことを電気的に検出して、被裁断シートを裁断する。この構造の装置は、カッターの刃先と、受け台の裁断面とが完全に平行で、刃先全体が裁断面に接触する状態にかぎって、被裁断シートを全周で切り離しできる。カッターの刃先の一部が受け台の裁断面に接触する装置にあっては、被裁断シートの横幅全体を完全には切り離しできない。
【0006】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、被裁断シートを能率よく裁断すると共に、カッターと受け台の損傷を少なくしながら、被裁断シートを確実に切り離しできるシートの裁断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシートの裁断装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
シートの裁断装置は、ベルト状の被裁断シート1を裁断する平面状の裁断面2Aを上面に有する受け台2と、この受け台2の裁断面2Aに向かって降下して、被裁断シート1を移送方向に直交する方向に裁断するカッター3と、このカッター3を上下に往復運動させるカッター駆動機構4とを備え、カッター3をカッター駆動機構4で往復運動させて、受け台2の裁断面2Aで被裁断シート1を裁断する。さらに、裁断装置は、被裁断シート1を上に載せて移送する搬送ベルト5と、この搬送ベルト5で移送される被裁断シート1が受け台2の裁断面2Aの上を所定の速度で通過するように搬送ベルト5を駆動する搬送機構6と、この搬送機構6で移送される搬送ベルト5の上に被裁断シート1を所定の速度で供給する供給機構7とを備える。カッター駆動機構4は、搬送ベルト5で移送される被裁断シート1の移送方向にカッター3を移動させる縦送り機構4Bを備える。裁断装置は、縦送り機構4Bでカッター3を被裁断シート1の移送方向に移動させると共に、カッター3を受け台2の裁断面2Aに接近するように降下させて、受け台2の裁断面2Aに移送される被裁断シート1を裁断する。
【0008】
本発明の請求項2のシートの裁断装置は、搬送機構6で移動される搬送ベルト5の移動速度を、供給機構7で移動される被裁断シート1の移動速度よりも速くしている。
【0009】
本発明の請求項3のシートの裁断装置は、受け台2の裁断面2Aに、搬送ベルト5を介して被裁断シート1を積層して、カッター3で被裁断シート1を裁断している。
【0010】
本発明の請求項4のシートの裁断装置は、搬送ベルト5が、受け台2の裁断面2Aに被裁断シート1を移送する第1の搬送ベルト5Aと、この第1の搬送ベルト5Aの供給側と排出側のいずれか又は両方に配設されて、被裁断シート1を第1の搬送ベルト5Aと同じ方向に移送する第2の搬送ベルト5Bとを備える。この裁断装置は、第2の搬送ベルト5Bで裁断面2Aに移送される被裁断シート1を、第1の搬送ベルト5Aの上に積層されてカッター3で裁断する。
【0011】
本発明の請求項5のシートの裁断装置は、カッター駆動機構4が、搬送ベルト5で移送される被裁断シート1の側縁1b、又は被裁断シート1に印刷している模様の側縁を検出する位置検出部25と、この位置検出部25に制御されて、受け台2の裁断面2Aを含む水平面内でカッター3を回転させる水平回転機構4Cを備える。この裁断装置は、位置検出部25が、被裁断シート1の側縁1b、又は被裁断シート1に印刷している模様の側縁を検出して水平回転機構4Cを制御し、水平回転機構4Cがカッター3を受け台2の裁断面2Aを含む水平面内で回転させて、被裁断シート1を側縁1bに直交する方向に裁断する。
【0012】
本発明の請求項6のシートの裁断装置は、位置検出部25がデジタルカメラ24を備えており、デジタルカメラ24が被裁断シート1の側縁1bや印刷された模様の側縁をイメージで検出している。さらに、本発明の請求項7のシートの裁断装置は、位置検出部25がデジタルカメラ24を備え、デジタルカメラ24が被裁断シート1の側縁1bや印刷された模様の側縁と、カッター3で裁断された裁断縁1aとを検出している。
【0013】
本発明の請求項8のシートの裁断装置は、被裁断シート1を、複数のプラスチックフィルムを積層・接着してなる多層プラスチックシートとしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートの裁断装置は、被裁断シートを能率よく裁断し、また、カッターと受け台の損傷を少なくしながら、被裁断シートを確実に切り離しできる特徴がある。それは、本発明の裁断装置が、被裁断シートを搬送ベルトで受け台の裁断面に移送し、搬送ベルトで移送される被裁断シートの移送方向にカッターを移動させながら、カッターを裁断面に向かって移動させて、受け台の裁断面に移送される被裁断シートを裁断するからである。すなわち、本発明の裁断装置は、被裁断シートを受け台の裁断面で停止させることなく、搬送ベルトで移送しながらカッターで裁断する。裁断される被裁断シートは搬送ベルトで移送され、カッターは縦送り機構で被裁断シートの移送方向に移動される。カッターと被裁断シートは同じ方向に移動されながら、カッターを裁断面に接近させて被裁断シートを裁断するが、被裁断シートとカッターは、移送方向にわずかなずれが発生する。とくに、被裁断シートは搬送ベルトに載せて移送されるが、搬送ベルトに対してわずかに相対的なずれが発生しながら移送される。たとえば、被裁断シートは、搬送ベルトの上で蛇行しながら移送され、あるいはスリップしながら移送される。このため、被裁断シートを搬送ベルトで移送し、カッターを縦送り機構で移送方向に移動させても、カッターが被裁断シートを裁断するときに、カッターと被裁断シートとの間に発生する移送方向における相対的なずれを皆無にできない。本発明は、カッターと被裁断シートとが移送方向における相対的なずれで、被裁断シートを確実に切り離しする。カッターが被裁断シートを裁断して、移送方向に相対的にずれると、この相対的なずれが、カッターの裁断ラインを拡開するからである。
【0015】
さらに、本発明の裁断装置は、被裁断シートを受け台の裁断面で停止することなく、移動させながらカッターで裁断するので、受け台の裁断面で被裁断シートを停止して裁断する従来の装置に比較して、極めて能率よく被裁断シートを裁断できる特徴も実現される。
【0016】
また、本発明の請求項2の裁断装置は、搬送機構で移動される搬送ベルトの移動速度を、供給機構で移動される被裁断シートの移動速度よりも速くするので、被裁断シートをさらに確実に切り離しできる特徴がある。それは、搬送ベルトが裁断された被裁断シートを速く移送するために、カッターで裁断された切断ラインを搬送ベルトで強制的に拡開するからである。
【0017】
さらに、本発明の請求項3の裁断装置は、受け台の裁断面に、搬送ベルトを介して被裁断シートを積層して、カッターで被裁断シートを裁断するので、搬送ベルトでもって、カッターの刃先の損傷を防止しながら、被裁断シートを確実に切り離しできる特徴がある。それは、カッターの刃先が、わずかに搬送ベルトに食い込むまで移動して、被裁断シートを裁断できるからである。
【0018】
また、本発明の請求項4の裁断装置は、受け台の裁断面に被裁断シートを移送する第1の搬送ベルトと、この第1の搬送ベルトの供給側と排出側のいずれか又は両方に配設されて、被裁断シートを第1の搬送ベルトと同じ方向に移送する第2の搬送ベルトとを備えているので、供給される被裁断シートを第2の搬送ベルトで第1の搬送ベルトに確実に搬送しながら、第1の搬送ベルトの上に積層される被裁断シートをカッターで確実に裁断できる。
【0019】
さらにまた、本発明の請求項5の裁断装置は、搬送ベルトの上で蛇行して移送される被裁断シートを正確に裁断できる特徴がある。それは、カッター駆動機構が、搬送ベルトで移送される被裁断シートの側縁を検出する位置検出部と、この位置検出部に制御されて、受け台の裁断面を含む水平面内でカッターを回転させる水平回転機構を備え、位置検出部が被裁断シートの側縁、又は被裁断シートに印刷している模様の側縁を検出して水平回転機構を制御し、水平回転機構がカッターを受け台の裁断面を含む水平面内で回転させて、被裁断シートを側縁に直交する方向に裁断するからである。
【0020】
また、本発明の請求項6の裁断装置は、デジタルカメラで被裁断シートの側縁、又は被裁断シートに印刷している模様の側縁をイメージとして検出し、また、請求項7の裁断装置は、デジタルカメラでもって、被裁断シートの側縁や印刷された模様の側縁とカッターの裁断縁とを検出してカッターで裁断するので、被裁断シートを正確に直角に、また正確な長さに裁断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのシートの裁断装置を例示するものであって、本発明はシートの裁断装置を以下のものに特定しない。
【0022】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0023】
図1ないし図3に示すシートの裁断装置は、被裁断シート1を移送しながら裁断する裁断面2Aを上面に設けている受け台2と、この受け台2の裁断面2Aで被裁断シート1を直線状に裁断する平面状のカッター3と、このカッター3を上下に往復運動させるカッター駆動機構4と、被裁断シート1を上にのせて移送する搬送ベルト5と、この搬送ベルト5の搬送機構6と、搬送ベルト5に被裁断シート1を供給する供給機構7とを備える。
【0024】
受け台2は、上面に平面状の裁断面2Aを設けている。裁断面2Aは、ベルト状の被裁断シート1を上に載せて裁断する。図に示す裁断装置は、裁断面2Aの上に下敷ベルト8を配設し、この下敷ベルト8の上に被裁断シート1を載せて、カッター3で被裁断シート1を裁断する。受け台2は固定されて移動しない。図の裁断装置は、裁断面2Aの上に搬送ベルト5を移送し、この搬送ベルト5の上に被裁断シート1を載せて移送する。搬送ベルト5は、受け台2の裁断面2Aを摺動する。裁断面2Aは、搬送ベルト5との摩擦抵抗を小さくするために平滑面としている。さらに、裁断面2Aは、フッ素樹脂膜等の摩擦抵抗の小さい膜を被覆して、搬送ベルト5の摩擦抵抗を小さくしている。
【0025】
搬送ベルト5は、被裁断シート1を上に載せて移送する。図1と図2の裁断装置は、搬送ベルト5を受け台2の裁断面2Aの上に移送して、被裁断シート1を裁断するための下敷ベルト8に併用する。これ等の裁断装置は、被裁断シート1を下敷ベルト8の上に載せて裁断面2Aの上に移送し、下敷ベルト8の上で被裁断シート1を裁断する。図1の裁断装置は、下敷ベルト8をループ状に連結し、これを循環させて繰り返し使用する。図2の装置は、下敷ベルト8を繰り返し使用せず、常に新しい下敷ベルト8に被裁断シート1を載せて裁断面2Aに移送する。
【0026】
図3の装置は、搬送ベルト5を、第1の搬送ベルト5Aと第2の搬送ベルト5Bとで構成している。第1の搬送ベルト5Aと第2の搬送ベルト5Bは、直線状に配置されて、被裁断シート1を同じ方向に移送する。第1の搬送ベルト5Aは、被裁断シート1を受け台2の裁断面2Aに移送する下敷ベルト8に併用される。第2の搬送ベルト5Bは、第1の搬送ベルト5Aの供給側と排出側に直線状に設けられて、裁断されない被裁断シート1を第1の搬送ベルト5Aに供給し、また裁断された被裁断シート1を第1の搬送ベルト5Aから排出する。
【0027】
搬送ベルト5は搬送機構6で一定の速度で移送される。図1の裁断装置の搬送機構6は、ループ状に連結している搬送ベルト5をかけている4組の移送ロール10と、この移送ロール10を一定の速度で駆動するモーター11とを備える。4組の移送ロール10は、ループ状の搬送ベルト5を所定のテンションで一定の速度で移送するように、上段に2個、下段に2個を配置している。上段に配置される2組の移送ロール10は、受け台2の裁断面2Aの両側にあって、搬送ベルト5を裁断面2Aを含む水平面に移送するように、上面を裁断面2Aと同一平面に配設している。下段に配置されるる2組の移送ロール10は、ループ状の搬送ベルト5を裁断面2Aの下方に移送するように、上段の移送ロール10の下方に配置している。図1の搬送機構6は、裁断面2Aの排出側にある上段の移送ロール10をモーター11で駆動している。ただし、搬送ベルトの搬送機構は、上段2個の移送ロールをひとつ又は二つのモーターで駆動し、あるいは全ての移送ロールをひとつ又は複数のモーターで駆動することもできる。移送ロール10を駆動するモーター11は、一定の速度で搬送ベルト5を移送し、この搬送ベルト5の上に載せる被裁断シート1を一定の速度で移送する。
【0028】
図2に示す裁断装置の搬送機構6は、受け台2の裁断面2Aの両側に配設している2組の移送ロール10と、受け台2の排出側の下方に配設している巻取ロール12と、移送ロール10と巻取ロール12を駆動するモーター11、13とを備える。2組の移送ロール10は、受け台2の裁断面2Aの両側にあって、搬送ベルト5を裁断面2Aを含む水平面に移送するように、上面を裁断面2Aと同一平面に配設している。この搬送機構6は、受け台2の排出側の移送ロール10を、あるいは受け台の両側に配置される移送ロール10をモーター11で一定の速度で駆動して、搬送ベルト5を受け台2の裁断面2Aに一定の速度で移送する。受け台2を通過した搬送ベルト5は、巻取ロール12で一定のテンションで巻き取られる。巻取ロール12は、クラッチを介してモーター13に連結されて、受け台2を通過した搬送ベルト5を一定のテンションで巻き取る。巻取ロール12は、裁断面2Aの排出側に配設している移送ロール10の下方に配置される。図2の搬送機構6は、移送ロール10と巻取ロール12をモーター11、13で駆動する。ただし、この搬送機構は、搬送ベルトが一定の速度で移送されるように巻取ロールのみをモーターで駆動することもできる。
【0029】
さらに、図3の搬送機構6は、第1の搬送ベルト5Aを移送する第1の搬送機構6Aと、第2の搬送ベルト5Bを移送する第2の搬送機構6Bとを備える。第1の搬送機構6Aは、第1の搬送ベルト5Aを挟んで移送速度を一定にするキャプスタンロール14と、裁断面2Aを通過した第1の搬送ベルト5Aの巻取ロール12と、キャプスタンロール14と巻取ロール12を駆動するモーター15、13とを備える。キャプスタンロール14は、受け台2の裁断面2Aの供給側にあって、裁断面2Aに一定の速度で第1の搬送ベルト5Aを移送させる。巻取ロール12は、クラッチを介して第1の搬送ベルト5Aを巻き取る。巻取ロール12は、裁断面2Aの排出側の下方に配置される。第1の搬送機構6Aは、巻取ロール12とキャプスタンロール14をモーター13、15で駆動する。巻取ロール12は、第1の搬送ベルト5Aをキャプスタンロール14よりも速く巻き取り、第1の搬送ベルト5Aの移送速度はキャプスタンロール14で制御する。この構造の第1の搬送機構6Aは、キャプスタンロール14で第1の搬送ベルト5Aを正確な速度で裁断面2Aに移送できる。巻取ロール12は、裁断面2Aを通過した第1の搬送ベルト5Aを一定のテンションで巻き取る。第1の搬送機構は、キャプスタンロールを使用することなく、巻取ロールで第1の搬送ベルトの移送速度をコントロールすることもできる。
【0030】
第2の搬送機構6Bは、上段4個の移送ロール10と、中間2個の移送ロール10と、下段2個の移送ロール10と、いずれかひとつ又は複数の移送ロール10を一定の速度で駆動して、第2の搬送ベルト5Bを一定の速度で移送するモーター11とを備える。上段4個の移送ロール10は、上面を裁断面2Aと同一面に配置して、受け台2の供給側に2個、排出側に2個設けている。受け台2の両側に配設される移送ロール10は、第2の搬送ベルト5Bを第1の搬送ベルト5Aの外側に移送させる。中間の移送ロール10は、第2の搬送ベルト5Bを第1の搬送ベルト5Aの外側に案内して移送させる。言いかえると、第2の搬送ベルト5Bの内側に第1の搬送ベルト5Aを移送させる。さらに、下段2個の移送ロール10は、第2の搬送ベルト5Bを中間の移送ロール10で移送される部分よりもさらに下方に第2の搬送ベルト5Bを移送させる。
【0031】
この構造の第2の搬送機構6Bは、上段の移送ロール10をモーター11で駆動して、第2の搬送ベルト5Bを一定の速度で移送させる。ただし、第2の搬送機構は、上段4個の移送ロールをひとつ又は複数のモーターで駆動し、さらに、他の移送ロールを同じモーターで、又は別のモーターで駆動して、第2の搬送ベルトを一定の速度で移送することもできる。
【0032】
被裁断シート1は、供給機構7で搬送ベルト5に供給される。図の裁断装置の供給機構7は、被裁断シート1のメジャーロール16と、定寸送りロール17と、定寸送りロール17を一定の速度で駆動するモーター18とを備える。メジャーロール16は、被裁断シート1を一対のロールで挟着して、被裁断シート1の移送速度を検出する。定寸送りロール17も一対のロールで被裁断シート1を挟着し、モーター18に駆動されて被裁断シート1を一定の速度で移送する。
【0033】
裁断装置は、搬送機構6で移動される搬送ベルト5の移動速度を、供給機構7で移動される被裁断シート1の移動速度よりも速くする。カッター3で裁断された被裁断シート1の切り離しを確実にするためである。このことを実現するために、図の装置は、搬送機構6と供給機構7を別々に設けたモーター11、18で駆動して、各々の搬送ベルト5と被裁断シート1の移送速度を別々にコントロールできる構造としている。この構造の裁断装置は、搬送機構6のモーター11で搬送ベルト5の移送速度をコントロールし、供給機構7のモーター18で被裁断シート1の移送速度をコントロールする。供給機構7と搬送機構6のモーター18、11を別々に設ける裁断装置は、搬送ベルト5と被裁断シート1の移送速度を独立してコントロールできるので、裁断された被裁断シート1の切り離しを理想とする状態に調整できる。ただし、本発明の裁断装置は、搬送機構と供給機構をひとつのモーターで駆動して、搬送機構で移動される搬送ベルトの移動速度を、供給機構で移動される被裁断シートの移動速度よりも速くすることもできる。この裁断装置は、ひとつのモーターの回転軸を、歯車や、チェーン及びスプロケット等の動力伝達機構を介して、搬送機構と供給機構の回転軸に連結して、供給機構と搬送機構の両方を所定の速度で駆動する。
【0034】
カッター駆動機構4は、カッター3を上下に往復運動させて、受け台2の裁断面2Aで被裁断シート1を裁断する。カッター駆動機構4は、カッター3を裁断面2Aに向かって降下させて被裁断シート1を裁断する上下機構4Aと、被裁断シート1の移送方向にカッター3を移送させる縦送り機構4Bと、カッター3を水平面内で回転させる水平回転機構4Cとを備える。
【0035】
上下機構4Aは、カッター3に連結されてこれを上下に移動する上下シリンダー21と、この上下シリンダー21の制御回路22とを備える。制御回路22は、被裁断シート1の移送距離を移送距離センサー23で検出し、被裁断シート1を決められた長さに裁断するように上下シリンダー21を制御してカッター3を上下に駆動する。移送距離センサー23は、被裁断シート1の移送距離を検出するもので、図1と図2の裁断装置は、メジャーロール16を移送距離センサー23として、被裁断シート1の移送距離を検出する。図3の裁断装置は、キャプスタンロール14を移送距離センサー23とし被裁断シート1の移送距離を検出する。
【0036】
さらに、本発明の裁断装置は、図4と図5に示すように、被裁断シート1の裁断縁1aの位置を検出する光センサーの移送距離センサー23を備える。光センサーはデジタルカメラ24である。この移送距離センサー23は、デジタルカメラ24から出力される映像信号を演算して、裁断縁1aの位置を検出する演算回路(図示せず)を備える。この移送距離センサー23は、先に裁断したカットラインを裁断縁1aとして検出する。裁断縁1aから被裁断シート1の裁断位置が特定される。被裁断シート1を一定の長さ(L)に裁断するからである。光センサー24の移送距離センサー23を備える裁断装置は、メジャーロール16やキャプスタンロール14で被裁断シート1の移送距離を検出し、さらに、光センサーからなる移送距離センサー23でカッター3の切断位置を正確にコントロールして、被裁断シート1を最も正確に一定の長さ(L)に裁断できる。
【0037】
縦送り機構4Bは、上下機構4Aがカッター3を降下させるときに、カッター3を被裁断シート1の移送方向に移送する。縦送り機構4Bで被裁断シート1の移送方向に移動されながら、上下機構4Aで降下されるカッター3は、被裁断シート1の移送を停止することなく、移送しながらカッター3で被裁断シート1を裁断する。
【0038】
さらに、図4のカッター駆動機構4は、搬送ベルト5で移送される被裁断シート1の側縁1b、又は図示しないが被裁断シートに印刷している模様の側縁を検出する位置検出部25と、この位置検出部25に制御されて、受け台2の裁断面2Aを含む水平面内でカッター3を回転させる水平回転機構4Cを備えている。
【0039】
図4と図5の水平回転機構4Cは、カッター3の両端部に連結している一対のシリンダー等の軸方向制御機構26を備える。軸方向制御機構26は、カッター3に連結しているロッド27の軸方向の位置を制御できる。この軸方向制御機構26は、油圧シリンダーやモーターシリンダー等のシリンダーである。油圧シリンダーは、シリンダーに供給するオイルをコントロールして、ロッドの位置を制御する。モーターシリンダーは、モーターの回転を制御して、ロッドの位置を制御する。また、軸方向制御機構は、ネジ棒とナットとモーターとで構成することもできる。この軸方向制御機構は、モーターでネジ棒を回転して、ネジ棒に噛み合うナットを軸方向に移動させる。ナットは、回転しないがネジ棒に沿って軸方向に移動できるように配置される。一対の軸方向制御機構26は、ロッド27の位置をコントロールして、カッター3の水平回転角を制御する。
【0040】
位置検出部25は、被裁断シート1の側縁1bや被裁断シートに印刷された模様の側縁を検出して水平回転機構4Cの軸方向制御機構26を制御し、水平回転機構4Cがカッター3を受け台2の裁断面2Aを含む水平面内で回転させて、被裁断シート1を側縁1bに直交する方向に裁断する。位置検出部25はデジタルカメラ24を備える。このデジタルカメラ24でもって被裁断シート1の側縁1bや模様の側縁をイメージ画像として検出する。デジタルカメラ24の出力は演算回路(図示せず)に出力される。この演算回路が、デジタルカメラ24から入力される映像信号から被裁断シート1の側縁1bや模様の側縁を演算する。
【0041】
この構造の裁断装置は、搬送ベルト5に載せて蛇行しながら移送される被裁断シート1を正確な位置で、正確に直角に裁断する。
【0042】
さらに、図4と図5の裁断装置は、移送距離センサー23で一対の軸方向制御機構26を制御して、被裁断シート1を裁断する長さ(L)を調整できる。この裁断装置は、たとえば、メジャーロール16やキャプスタンロール14で被裁断シート1の移送距離を検出し、さらに、移送距離センサー23で被裁断シート1の移送長さを検出し、さらに、移送距離センサー23の信号で一対の軸方向制御機構26を制御して、被裁断シート1を極めて高い精度で裁断できる。この裁断装置は、移送距離センサー23で一対の軸方向制御機構26を制御することで、被裁断シート1を裁断する長さ(L)を補正して、高精度に被裁断シート1を裁断できる。
【0043】
以上の裁断装置は、搬送ベルト5の上に供給機構7で被裁断シート1を供給し、カッター3で所定の寸法に正確に裁断される。搬送ベルト5は、被裁断シート1を受け台2の裁断面2Aに移送する。移送される被裁断シート1は、移送距離センサー23で移送距離が検出される。移送距離から被裁断シート1の裁断位置が特定される。裁断位置が特定の位置となるように、カッター駆動機構4が、カッター3を被裁断シート1の移送方向に移動させながら、また水平回転機構4Cで被裁断シート1の蛇行に補正して、上下機構4Aで受け台2の裁断面2Aに向かって降下させて、被裁断シート1を裁断する。被裁断シート1を移送しながらカッター3で裁断する独得の構造は、カッター3と被裁断シート1とを相対運動させる。カッター3と被裁断シート1の両方が運動していることから、両者を完全に一致させて同じ方向に、同じ速度で移送できないからである。カッター3と被裁断シート1の相対運動は、被裁断シート1を裁断縁1aで確実に切り離す作用をする。それは、カッター3が被裁断シート1に対して相対運動することで、カッター3が裁断縁を分離するからである。
【0044】
さらに、以上の裁断装置は、供給機構7が被裁断シート1を移送するよりも速く搬送ベルト5を移送することによっても、カッター3で裁断された裁断縁1aが拡開されて、確実に切り離しされる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例にかかるシートの裁断装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかるシートの裁断装置の概略構成図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかるシートの裁断装置の概略構成図である。
【図4】カッター駆動機構の水平回転機構を示す概略平面図である。
【図5】図4に示す水平回転機構の位置を制御する状態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…被裁断シート 1a…裁断縁
1b…側縁
2…受け台 2A…裁断面
3…カッター
4…カッター駆動機構 4A…上下機構
4B…縦送り機構
4C…水平回転機構
5…搬送ベルト 5A…第1の搬送ベルト
5B…第2の搬送ベルト
6…搬送機構 6A…第1の搬送機構
6B…第2の搬送機構
7…供給機構
8…下敷ベルト
10…移送ロール
11…モーター
12…巻取ロール
13…モーター
14…キャプスタンロール
15…モーター
16…メジャーロール
17…定寸送りロール
18…モーター
21…上下シリンダー
22…制御回路
23…移送距離センサー
24…デジタルカメラ
25…位置検出部
26…軸方向制御機構
27…ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト状の被裁断シート(1)を裁断する平面状の裁断面(2A)を上面に有する受け台(2)と、この受け台(2)の裁断面(2A)に向かって降下して、被裁断シート(1)を移送方向に直交する方向に裁断するカッター(3)と、このカッター(3)を上下に往復運動させるカッター駆動機構(4)とを備え、カッター(3)をカッター駆動機構(4)で往復運動させて、受け台(2)の裁断面(2A)で被裁断シート(1)を裁断するシートの裁断装置であって、
被裁断シート(1)を上に載せて移送する搬送ベルト(5)と、この搬送ベルト(5)で移送される被裁断シート(1)が受け台(2)の裁断面(2A)の上を所定の速度で通過するように搬送ベルト(5)を駆動する搬送機構(6)と、この搬送機構(6)で移送される搬送ベルト(5)の上に被裁断シート(1)を所定の速度で供給する供給機構(7)とを備え、
カッター駆動機構(4)は、搬送ベルト(5)で移送される被裁断シート(1)の移送方向にカッター(3)を移動させる縦送り機構(4B)を備え、この縦送り機構(4B)でカッター(3)を被裁断シート(1)の移送方向に移動させると共に、カッター(3)を受け台(2)の裁断面(2A)に接近するように降下させて、受け台(2)の裁断面(2A)に移送される被裁断シート(1)を裁断するようにしてなるシートの裁断装置。
【請求項2】
搬送機構(6)で移動される搬送ベルト(5)の移動速度が、供給機構(7)で移動される被裁断シート(1)の移動速度よりも速い請求項1に記載されるシートの裁断装置。
【請求項3】
受け台(2)の裁断面(2A)に、搬送ベルト(5)を介して被裁断シート(1)を積層して、カッター(3)で被裁断シート(1)を裁断する請求項1に記載されるシートの裁断装置。
【請求項4】
搬送ベルト(5)が、受け台(2)の裁断面(2A)に被裁断シート(1)を移送する第1の搬送ベルト(5A)と、この第1の搬送ベルト(5A)の供給側と排出側のいずれか又は両方に配設されて、被裁断シート(1)を第1の搬送ベルト(5A)と同じ方向に移送する第2の搬送ベルト(5B)とを備え、第2の搬送ベルト(5B)で裁断面(2A)に移送される被裁断シート(1)が、第1の搬送ベルト(5A)の上に積層されてカッター(3)で裁断されるようにしてなる請求項1に記載されるシートの裁断装置。
【請求項5】
カッター駆動機構(4)が、搬送ベルト(5)で移送される被裁断シート(1)の側縁(1b)を検出し、又は被裁断シート(1)に印刷している模様の側縁を検出する位置検出部(25)と、この位置検出部(25)に制御されて、受け台(2)の裁断面(2A)を含む水平面内でカッター(3)を回転させる水平回転機構(4C)を備えており、
位置検出部(25)が被裁断シート(1)の側縁(1b)、又は被裁断シート(1)に印刷している模様の側縁を検出して水平回転機構(4C)を制御し、水平回転機構(4C)がカッター(3)を受け台(2)の裁断面(2A)を含む水平面内で回転させて、被裁断シート(1)を側縁(1b)に直交する方向に裁断するようにしてなる請求項1に記載されるシートの裁断装置。
【請求項6】
位置検出部(25)がデジタルカメラ(24)を備え、デジタルカメラ(24)が被裁断シート(1)の側縁(1b)又は、印刷された模様の側縁をイメージで検出する請求項5に記載されるシートの裁断装置。
【請求項7】
位置検出部(25)がデジタルカメラ(24)を備え、デジタルカメラ(24)が被裁断シート(1)の側縁(1b)又は印刷された模様の側縁と、カッター(3)で裁断された裁断縁(1a)とを検出する請求項5に記載されるシートの裁断装置。
【請求項8】
被裁断シート(1)が、複数のプラスチックフィルムを積層・接着してなる多層プラスチックシートである請求項1に記載されるシートの裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−283429(P2007−283429A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112623(P2006−112623)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(591246296)株式会社トーコー (4)
【Fターム(参考)】