説明

シートバック

【課題】外観品質を向上させることができ、シートバックパネルの下端角部に乗員が直接触れることを回避でき、シートバックパネルの下端角部に錆が発生することを防止できて乗員に錆が付着することを防止でき、軽量化でき、生産工程を少なくでき、製作コストを低廉化できるシートバックを提供する。
【解決手段】シートバックフレーム13を構成する金属製のシートバックパネル15と、シートバックパネル15に支持されるシートバックパッド8と、シートバックパッド8を覆う表皮20とを備え、シートバックパネル15の下端角部15K1側に位置する表皮20のサイド表皮材22の下端部22Kに袋状表皮11が設けられ、袋状表皮11の袋部18がシートバックパネル15の下端角部15K1に被さっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シートバックフレームを構成する金属製のシートバックパネルと、
前記シートバックパネルに支持されるシートバックパッドと、
前記シートバックパッドを覆う表皮とを備えているシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のシートバックでは、シートバックの周囲に亘る複数の表皮端末部分をシートバックパネルに固定してあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3647984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートバックパネルの下端角部は、シートバックパッドの側面を覆う表皮材と、シートバックパッドの背面を覆う表皮材の合わせ目となる。
そのために、上記従来の構造のように、複数の表皮端末部分をシートバックパネルに固定する構造では、表皮材のズレなどにより、表皮材の合わせ目が開き、シートバックパネルの下端角部が露出しやすかった。
その結果、美観を損ねるばかりではなく、シートバックパネルの下端角部に乗員が直接触れる虞があった。また、シートバックパネルの下端角部に錆が発生し、乗員に錆が付着する虞もあった。
一般的な対策としてシートバックパネルの下端角部を樹脂カバーで覆い隠す手段があるが、この手段では、重量が増加し、生産工程が増加し、製作コストが増加する。また、別の対策としてシートバックパネルを塗装しても、生産工程が増加し、製作コストが増加する。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、外観品質を向上させることができ、シートバックパネルの下端角部に乗員が直接触れることを回避でき、シートバックパネルの下端角部に錆が発生することを防止できて乗員に錆が付着することを防止でき、軽量化でき、生産工程を少なくでき、製作コストを低廉化できるシートバックを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
シートバックフレームを構成する金属製のシートバックパネルと、
前記シートバックパネルに支持されるシートバックパッドと、
前記シートバックパッドを覆う表皮とを備えているシートバックであって、
前記シートバックパネルの下端角部側に位置する前記表皮の下端部に袋状表皮が設けられ、
前記袋状表皮の袋部が前記シートバックパネルの下端角部に被さっている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、
前記シートバックパネルの下端角部側に位置する前記表皮の下端部に袋状表皮が設けられ、前記袋状表皮が前記シートバックパネルの下端角部に被さっているから、シートバックパネルの下端角部が露出することを回避できる。
これにより、外観品質を向上させることができ、シートバックパネルの下端角部に乗員が直接触れることを回避することができる。また、シートバックパネルの下端角部に錆が発生することを防止でき、乗員に錆が付着することを防止できる。
さらに、シートバックパネルの下端角部を樹脂カバーで覆い隠す手段に比べると軽量化することができる。
そして、シートバックパネルに塗装する必要がないことから生産工程を少なくでき、製作コストを低廉化することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルに固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、前記シートバックパネルに形成された切り起こし状の被係止部と、前記表皮の下端部に形成された係止部とから成ると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルに固定する固定手段が設けられているから、シートバックパネルに対して袋状表皮の袋部が位置ずれすることを防止することができる。
また、前記固定手段は、前記シートバックパネルに形成された切り起こし状の被係止部と、前記表皮の下端部に形成された係止部とから成るから、固定手段の構造を簡素化することができる。そして、シートバックパネルの被係止部が切り起こし状に形成されていることで、被係止部を簡単に形成することができ、製作コストをより低廉化することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記袋状表皮の袋部は上側とシートバック幅方向内側に開口し、
前記係止部は係止孔に構成され、
前記被係止部は、頂部側ほどシートバック幅方向内側に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記袋状表皮の袋部は上側とシートバック幅方向内側に開口しているから、前記袋部をシートバックパネルの下端角部に簡単に被せることができる。
さらに、切り起こし状の被係止部は前記係止部が被係止部から外れる方向と反対側に傾斜しているから、係止部が被係止部から外れにくくなり、シートバックパネルに対して袋状表皮の袋部が位置ずれすることをより確実に防止することができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記シートバックパッドは前記シートバックパネルの前面を覆い、
前記シートバックパッドの下端部が、前記シートバックパネルの下端部の下方を通って裏側に回り込み、前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルの裏側から覆っていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記シートバックパッドの下端部が前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルの裏側から覆っているから、シートバックパッドの下端部で袋状表皮の袋部をシートバックパネルの裏側からしっかりと押さえることができる。
これにより、袋状表皮の袋部がシートバックパネルの下端角部から外れるのを防ぐことができる。
また、シートバックパネルの下端角部を袋状表皮の袋部とシートバックパッドの下端部で2重に覆うことにより、シートバックパネルの下端角部の露出を確実に防ぐことができ、シートバックパネルの下端角部から乗員をより確実に保護することができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記袋状表皮は、前記シートバックパッドの側面を覆う前記表皮のサイド表皮材の後ろ側下端部に縫製され、
前記表皮が前記シートバックパッドを覆うとともに、前記袋状表皮の袋部が前記シートバックパネルの下端角部に被さった表皮装着状態で、前記サイド表皮材に上下方向の張力が掛かるように、前記表皮の上端から前記袋状表皮の袋部の下端までの長さが設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記表皮装着状態で前記サイド表皮材に張力が掛かることにより、サイド表皮材にしわやたるみが発生することを防止できる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記袋状表皮は連続した1枚の表皮素材で形成され、
下側の表皮素材部分を上側の表皮素材部分に対してシートバック幅方向に沿う折り曲げ線を中心に折り曲げるとともに、前記下側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部を前記上側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部に縫製して前記袋状表皮の袋部が形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
一般に、袋状表皮を形成する場合は、表材と裏材の2枚の表皮素材で形成されるが、本発明の上記構成によれば、前記袋状表皮は連続した1枚の表皮素材で形成され、下側の表皮素材部分を上側の表皮素材部分に対してシートバック幅方向に沿う折り曲げ線を中心に折り曲げるとともに、前記下側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部を前記上側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部に縫製して前記袋状表皮の袋部が形成されているから、縫製長と裁断長を短縮でき、製作コストを低減でき、縫製工数を削減でき、縫製作業性を向上させることができる。(請求項6)
【0017】
本発明において、
前記袋状表皮の袋部の縫製前における展開形状は、前記折り曲げ線を中心に対称形状に設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
前記袋状表皮の袋部の縫製前における展開形状は、前記折り曲げ線を中心に対称形状に設定されているから、縫製工程で作業者が表皮素材を折り曲げる際に表皮素材を折り合わせしやすくなり、作業性を向上させることができる。(請求項7)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
外観品質を向上させることができ、シートバックパネルの下端角部に乗員が直接触れることを回避でき、シートバックパネルの下端角部に錆が発生することを防止できて乗員に錆が付着することを防止でき、軽量化でき、生産工程を少なくでき、製作コストを低廉化できるシートバックを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用シートの斜視図
【図2】シートバックパネルの下端角部に袋状表皮の袋部を被せた状態を示す斜視図(袋状表皮の装着構造を示すために、シートバックパネルの後面を覆うカーペット材の下端部は上方にめくってある)
【図3】図2のA−A断面図
【図4】(a)は袋状表皮の裁断された表皮素材を示す図、(b)は図4(a)の表皮素材から作成された袋状表皮を示す図
【図5】シートバックの分解斜視図
【図6】別実施形態の斜視図であり、シートバックパネルの下端角部に被せた袋状表皮の袋部をシートバックパッドの下端部でシートバックパネルの裏側から覆った状態を示す斜視図
【図7】別実施形態の斜視図であり、シートバックパネルの下端角部に袋状表皮の袋部を被せ、第2の袋部でシートバックパッドの下端部を覆った状態を示す斜視図
【図8】従来の車両用シートの斜視図であり、カーペット材の下端部をめくった状態を示す斜視図
【図9】従来のシートバックパネルの下端角部とその周辺を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に支持フレーム4を介してフロア固定された車両用シート1を示してある。この車両用シート1は、着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、着座者の背中を受け止め支持するシートバック3とを備えている。符号Frはシート前方側(車両前方側)、Rrはシート後方側(車両後方側)である。
【0022】
図5に示すように、前記シートバック3は、骨組み部材となるシートバックフレーム13と、シートバックフレーム13に前側から重ねられ、シートバックフレーム13に支持されるシートバックパッド8と、シートバックパッド8を覆う表皮20とを備え、シートバックパッド8が後述のシートバックパネル15の前面を覆っている。
【0023】
前記シートバックフレーム13は、長方形状のシートバックパネル15の前面の周縁部に、長方形環状のパイプ材14を溶接固着して構成されている。シートバックパネル15とパイプ材14は金属で形成されている。シートバックパッド8は発泡ウレタンで形成され、表皮20はレザーで形成されている。表皮20は布材で形成されていてもよく、レザーや布材以外の部材で形成されていてもよい。
【0024】
前記表皮20は、シートバックパッド8の前面を覆う前側表皮材21と、シートバックパッド8の左右一対の側面を各別に覆う左右一対のサイド表皮材22と、シートバックパッド8の上面を覆う上側表皮材23と、シートバックパッド8の下面を覆う下側表皮材24とから成る。そして、図1に示すように、前記上側表皮材23の後端部と左右一対のサイド表皮材22の後端部とにカーペット材5の周部が縫製されて、カーペット材5がシートバックパネル15の後面を覆っている。
【0025】
図2,図3に示すように、前記シートバックパネル15の下端角部15K1側に位置するサイド表皮材22の下端部22K(表皮の下端部に相当)に、サイド表皮材22と同一の材質・厚さの袋状表皮11が設けられ、袋状表皮11に形成された袋部18がシートバックパネル15の下端角部15K1に被さっている。
【0026】
[袋状表皮11の構造]
図4(a),図4(b)に示すように、前記袋状表皮11は連続した1枚の表皮素材30で形成され、前記表皮素材30の下半部31のうち下側の表皮素材部分51を上側の表皮素材部分52に対してシートバック幅方向に沿う折り曲げ線Lを中心に折り曲げるとともに、前記下側の表皮素材部分51のシートバック幅方向外側W2の一側部を前記上側の表皮素材部分52のシートバック幅方向外側W2の一側部に縫製して前記袋状表皮11の袋部18が形成されている。符号18Sは縫製部である。これにより、前記袋部18が上側とシートバック幅方向内側W1に開口している。
【0027】
前記袋状表皮11の袋部18の縫製前における展開形状、すなわち、前記袋部18が形成される表皮素材部分の形状は、前記折り曲げ線Lを中心に対称形状に設定されている。
詳しくは、図4(a)に示すように、前記袋部18が形成される表皮素材部分のシートバック幅方向外側W2の側縁31Aが上下方向に沿う直線状に設定され、上端縁31B(図4(a)の二点鎖線)と下端縁31Cが横方向(シートバック幅方向)に沿う直線状に設定され、シートバック幅方向内側W1の側縁33Nが三角波形の凹凸状に設定されている。
前記波形は、シートバック幅方向内側W1に開口する三角形状の凹部33を中央に有し、前記凹部33の上下方向の中心を通る横線が前記折り曲げ線Lに設定されている。凹部33の底部は円弧状に形成されている。
【0028】
袋状表皮11の上半部32の両側部は下半部31に対してシートバック幅方向に張り出している。前記上半部32のシートバック幅方向内側W1の張り出し部の下端縁32Nは、前記表皮素材部分のシートバック幅方向内側W1の側縁33N(シートバック幅方向内側W1ほど上方に位置するように傾斜した側縁33N)の延長線上に設定され、張り出し部のシートバック幅方向の両側縁32A,32Bは上下方向に沿い、上半部32の上縁32Jはシートバック幅方向に沿っている。
【0029】
そして、前記上半部32のシートバック幅方向外側W2の側部が、シートバックパッド8の側面を覆うサイド表皮材22の後ろ側下端部22K1に縫製されている(図2参照)。
また、前記表皮20がシートバックパッド8を覆うとともに、袋状表皮11の袋部18がシートバックパネル15の下端角部15K1に被さった表皮装着状態で、サイド表皮材22に上下方向の張力が掛かるように、表皮22の上端から袋状表皮11の袋部18の下端までの長さが設定されている。これにより、サイド表皮材22にしわやたるみが発生することを防止できる。
【0030】
図2,図3に示すように、前記袋状表皮11の袋部18をシートバックパネル15に固定する固定手段60が設けられている。この固定手段60は、シートバックパネル15に形成された切り起こし舌片状の係止片16(被係止部に相当)と、前記表皮20の下端部の袋状表皮11に形成された上下方向に沿うスリット状の係止孔19(係止部に相当)とから成る。
【0031】
前記係止孔19は前記袋部18の上側開口のシートバック幅方向内側W1に位置している。前記係止片16は、頂部16T側ほどシートバック幅方向内側W1に位置するように傾斜し、前記頂部16Tはシートバック幅方向に沿うように折曲されている。
【0032】
図8,図9にカーペット材5を上方にめくった状態の比較例の車両用シート1を示してある。この構造ではシートバック3に袋状表皮11は設けられていない。シートバックパネル15はカーペット材5で覆われているが、図9に示すように、カーペット材5では端縁がめくれ上がった状態になることがあるため、クリップ等で多数の箇所を留めないとシートバックパネル15の下端角部15K1を隠せない為、シートバックパネル15の下端角部15K1が露出してしまうことで美観を損ねる。
また乗員への錆による汚れ付着が発生する虞がある。一般的な対策方法としてシートバックパネル15に樹脂カバーを設けてシートバックパネル15を覆い隠す方法もあるが、この方法では部品点数の増加により、重量増、生産工程増加、コスト増加などが懸念される。別の対策としてシートバックパネル15を塗装すると、生産工程増加、コスト増加などが懸念される。そこで、本発明では、上記のようにサイド表皮材22の後ろ側下端部22K1に袋状表皮11を縫製してある。
【0033】
上記の構成により、
(1) シートバックパネル15の下端角部15K1側に位置するサイド表皮材22の下端部22Kに袋状表皮11が設けられ、袋状表皮11がシートバックパネル15の下端角部15K1に被さっているから、シートバックパネル15の下端角部15K1が露出することを回避できる。
これにより、外観品質を向上させることができ、シートバックパネル15の下端角部15K1に乗員が直接触れることを回避することができる。また、シートバックパネル15の下端角部15K1に錆が発生することを防止でき、乗員に錆が付着することを防止できる。
さらに、シートバックパネル15の下端角部15K1を樹脂カバーで覆い隠す手段に比べると軽量化することができる。
そして、シートバックパネル15に塗装する必要がないことから生産工程を少なくでき、製作コストを低廉化することができる。
また、袋状表皮11をシートバックパネル15の下端角部15K1に被せることでシートバックパネル15に対する袋状表皮11の下端角部の位置がある程度規制される為、シート組み付け作業時の位置決めをする目印となる。これにより表皮被せ作業のバラツキを抑えることができ、表皮20に発生するしわやたるみの防止になる。
【0034】
(2) 前記袋状表皮11の袋部18を前記シートバックパネル15に固定する固定手段60が設けられているから、シートバックパネル15に対して袋状表皮11の袋部18が位置ずれすることを防止することができる。
また、固定手段60は、シートバックパネル15に形成された切り起こし舌片状の係止片16と、表皮20の下端部の袋状表皮11に形成された上下方向に沿うスリット状の係止孔19とから成るから、固定手段60の構造を簡素化することができる。そして、シートバックパネル15の係止片16が切り起こし舌片状に形成されていることで、係止片16を簡単に形成することができ、製作コストをより低廉化することができる。
【0035】
(3) 前記袋状表皮11の袋部18は上側とシートバック幅方向内側W1に開口しているから、前記袋部18をシートバックパネル15の下端角部15K1に簡単に被せることができる。
さらに、切り起こし舌片状の係止片16は、係止孔19が係止片16から外れる方向と反対側に傾斜しているから、係止孔19が係止片16から外れにくくなり、シートバックパネル15に対して袋状表皮11の袋部18が位置ずれすることをより確実に防止することができる。
【0036】
(4) 一般に、袋状表皮11を形成する場合は、表材と裏材の2枚の表皮素材で形成されるが、本発明の上記構成によれば、前記袋状表皮11は連続した1枚の表皮素材30で形成され、前記下側の表皮素材部分51を前記上側の表皮素材部分52に対してシートバック幅方向に沿う折り曲げ線Lを中心に折り曲げるとともに、前記下側の表皮素材部分51のシートバック幅方向外側W2の一側部を前記上側の表皮素材部分52のシートバック幅方向外側W2の一側部に縫製して袋状表皮11の袋部18が形成されているから、縫製長と裁断長を短縮でき、製作コストを低減でき、縫製工数を削減でき、縫製作業性を向上させることができる。
【0037】
(5) 前記袋状表皮11の袋部18の縫製前における展開形状は、前記折り曲げ線Lを中心に対称形状に設定されているから、縫製工程で作業者が表皮素材30を折り曲げ線Lを中心に折り曲げる際に表皮素材30を折り合わせしやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0038】
[別実施形態]
(1) 図6に示すように、前記シートバックパッド8の下端部8Kが、シートバックパネル15の下端部15Kの下方を通って裏側に回り込み、前記袋状表皮11の袋部18をシートバックパネル15の裏側(シート後方側Rr)から覆っていてもよい。
この構成によれば、シートバックパッド8の下端部8Kが袋状表皮11の袋部18をシートバックパネル15の裏側から覆っているから、シートバックパッド8の下端部8Kで袋状表皮11の袋部18をシートバックパネル15の裏側からしっかりと押さえることができる。
これにより、袋状表皮11の袋部18がシートバックパネル15の下端角部15K1から外れるのを防ぐことができる。
また、シートバックパネル15の下端角部15K1を袋状表皮11の袋部18とシートバックパッド8の下端部8Kで2重に覆うことにより、シートバックパネル15の下端角部15K1の露出を確実に防ぐことができ、シートバックパネル15の下端角部15K1から乗員をより確実に保護することができる。
前記シートバックパッド8の下端部8Kにはカーペット材5が被せられる。このカーペット材5はサイド表皮材22の下端部22Kと下側表皮材24の後端部とに係止具を介して接続されている。
【0039】
(2) 図7に示すように、シートバックパッド8の下端角部を包み込む第2の袋部28を、前記表皮20の下側表皮材24(図5参照)の後端部に縫製して、シートバックパッド8の下端角部の露出を防止してあってもよい。
すなわち、シートバックパッド8の下端側はカーペット材5により覆われるが、シートバックパッド8の下端角部は露出してしまう。そこで、シートバックパッド8の下端角部に前記第2の袋部28を被せる。これにより、さらに外観を向上させることができる。
【0040】
(3) 前記袋状表皮11をシートバックパネル15に固定する方法として、前記係止片16に換え、係止片16が設けられていたシートバックパネル15の部分にクリップ孔(丸孔)を設け、樹脂クリップ部材(図示せず)を介してシートバックパネル15と袋状表皮11を固定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
8 シートバックパッド
8K シートバックパッドの下端部
11 袋状表皮
13 シートバックフレーム
15 シートバックパネル
15K シートバックパネルの下端部
15K1 下端角部(シートバックパネルの下端角部)
16 被係止部(係止片)
18 袋部
19 係止部(係止孔)
20 表皮
22 サイド表皮材
22K 表皮の下端部(サイド表皮材の下端部)
22K1 サイド表皮材の後ろ側下端部
30 表皮素材
51 下側の表皮素材部分
52 上側の表皮素材部分
60 固定手段
L 折り曲げ線
W1 シートバック幅方向内側
W2 シートバック幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームを構成する金属製のシートバックパネルと、
前記シートバックパネルに支持されるシートバックパッドと、
前記シートバックパッドを覆う表皮とを備えているシートバックであって、
前記シートバックパネルの下端角部側に位置する前記表皮の下端部に袋状表皮が設けられ、
前記袋状表皮の袋部が前記シートバックパネルの下端角部に被さっているシートバック。
【請求項2】
前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルに固定する固定手段が設けられ、
前記固定手段は、前記シートバックパネルに形成された切り起こし状の被係止部と、前記表皮の下端部に形成された係止部とから成る請求項1記載のシートバック。
【請求項3】
前記袋状表皮の袋部は上側とシートバック幅方向内側に開口し、
前記係止部は係止孔に構成され、
前記被係止部は、頂部側ほどシートバック幅方向内側に位置するように傾斜している請求項2記載のシートバック。
【請求項4】
前記シートバックパッドは前記シートバックパネルの前面を覆い、
前記シートバックパッドの下端部が、前記シートバックパネルの下端部の下方を通って裏側に回り込み、前記袋状表皮の袋部を前記シートバックパネルの裏側から覆っている請求項1〜3のいずれか一つに記載のシートバック。
【請求項5】
前記袋状表皮は、前記シートバックパッドの側面を覆う前記表皮のサイド表皮材の後ろ側下端部に縫製され、
前記表皮が前記シートバックパッドを覆うとともに、前記袋状表皮の袋部が前記シートバックパネルの下端角部に被さった表皮装着状態で、前記サイド表皮材に上下方向の張力が掛かるように、前記表皮の上端から前記袋状表皮の袋部の下端までの長さが設定されている請求項1〜4のいずれか一つに記載のシートバック。
【請求項6】
前記袋状表皮は連続した1枚の表皮素材で形成され、
下側の表皮素材部分を上側の表皮素材部分に対してシートバック幅方向に沿う折り曲げ線を中心に折り曲げるとともに、前記下側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部を前記上側の表皮素材部分のシートバック幅方向外側の一側部に縫製して前記袋状表皮の袋部が形成されている請求項1〜5のいずれか一つに記載のシートバック。
【請求項7】
前記袋状表皮の袋部の縫製前における展開形状は、前記折り曲げ線を中心に対称形状に設定されている請求項6記載のシートバック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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