説明

シート供給装置、およびシート供給方法

【課題】 画像形成装置に接続されるシート供給装置において、大容量のシート供給装置から、手差し給紙部へのシート供給を可能とし、ユーザによるシート供給の煩わしさを大幅に軽減する。
【解決手段】 給紙口に手差しトレイ9が開閉自在に設けられる画像形成装置2の、手差し給紙部8の給紙口側に接続され、画像形成装置2にシートを供給するシート供給装置1であって、シートを積載して収納する用紙トレイ20と、この手差しトレイ9が閉姿勢の状態にて、用紙トレイ20に積載される複数枚のシートをシート束として手差し給紙部8に搬送するスライドユニット50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に対してシートを供給するシート供給装置等に係り、より詳しくは、画像形成装置の例えば手差しトレイなどのシート供給部にシートを供給するシート供給装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式などを採用するプリンタや複写機、ファクシミリなどの画像形成装置では、装置本体の内部に設けられる内部給紙機構に加え、装置本体の側面に、いわゆる手差しトレイからシート(用紙)を供給可能な手差し給紙機構を備えたものが広く存在している。この内部給紙機構は、普通紙などのシートを、ある一定量、連続的に供給でき、通常のオフィスでは最も頻繁に用いられている。一方、手差し給紙機構は、はがきや封筒、写真用紙、名刺用紙、ラベル用紙などの特殊紙や厚紙と呼ばれるシートを、1枚ずつまたは数枚ずつ画像形成部に提供するような作業に適している。この手差し給紙機構に備えられる手差しトレイは、一般的には装置本体の外部に設けられている。そして、シートの供給に際して装置本体に設けられる扉の開閉が不要であることから、内部給紙機構に比べて使い勝手に優れている。
【0003】
しかし、この手差しトレイは、一般にシートの積載容量が小さく設計されており、大量のシートを連続して供給する用途には適していない。そこで、手差し給紙機構から画像形成部への供給経路を利用して、外部に設置される大容量給紙装置からシートを供給する技術が存在している。公報記載の従来技術として、装置本体(画像形成ユニット)の側方の手差しトレイが設けられる位置に、高さ調整を施した状態で大容量給紙装置を接続配置し、この大容量給紙装置から手差しトレイに連続的にシートを供給するものが存在している(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の技術では、記録装置から手差しトレイを取り外すことなく、この手差しトレイの位置から本体側にシートを供給することが可能である。また、他の公報記載の従来技術として、折りたたみ式手差しトレイを閉じた状態にて、シートの搬送を可能にするものが存在する(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の発明によれば、例えば、一枚だけコピーしようとした場合に、いちいち手差しトレイを開閉することが必要なくなり、使い勝手を向上させることが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−45268号公報(第3−5頁、図1、図3)
【特許文献2】特開平5−92846号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、装置本体の外部からシートを供給できる手差し給紙機構などの給紙機構を利用した幾つかのシート搬送技術が従来から提案されている。しかしながら、例えば、特許文献1に記載の技術では、手差しトレイを開いた状態で手差しトレイからシートを搬送する構造を採用していることから、手差しトレイの長さだけ装置が大きくなってしまう。即ち、画像形成装置と給紙装置とを含むシステム全体の大きさが大きくなってしまい、設置面積が多く必要となる点で好ましいものではない。また、手差しトレイ部分だけが外部に突出するために、その構造部分が不安定になる点も問題となる。一方、特許文献2に記載の技術によれば、手差しトレイを閉じた状態でシートを供給することが可能となるが、この技術を採用するためには、特別な機構を手差しトレイ部に設けることが必要となる。また、手差しトレイでは、一般に複数枚のシートを束として載置することが可能であるが、特許文献2に記載の技術では、一枚の用紙を差し込む作業だけに限定されてしまう。特に連続的なシート供給を行う用途には、特許文献2の技術だけでは対応できない。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、画像形成装置に接続されるシート供給装置において、簡易な構造にて、手差し給紙機構からの連続的なシート供給を可能とすることにある。
また他の目的は、折りたたみ式の手差しトレイが折りたたまれた閉姿勢の状態にて、画像形成装置とシート供給装置とを併設させることを可能とし、この閉姿勢の状態のままで手差し給紙機構からシート供給装置を用いたシートの供給を可能にすることにある。
また更に他の目的は、画像形成装置側にて、例えばタイミング信号の出力などの設計変更を不要とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明では、手差しトレイが折りたたまれた状態で、画像形成装置の手差しシート供給部にシート束を供給する。ここで、特定の画像形成装置では、シート載置台がスライドする手差しトレイにて、この手差しトレイが折りたたまれた状態にてこのシート載置台がスライドして下降し、シートの供給口が閉じられるものが存在する。本発明が適用されるシート供給装置では、これらの画像形成装置に接続される場合に、このシート載置台を例えば持ち上げて、供給口を開放している。即ち、本発明は、給紙口にトレイが開閉自在に設けられる画像形成装置の給紙口側に接続され、画像形成装置にシートを供給するシート供給装置であって、シートを積載して収納する収納部と、このトレイが閉姿勢の状態にて、収納部に積載される複数枚のシートをシート束として給紙口に搬送する搬送機構とを備えた。
【0008】
ここで、このトレイの一部を変位させることで、トレイが閉姿勢の状態(跳ね上げた状態)にて給紙口を開放させることにより給紙口からシートの搬送を可能にする開放構造を更に含むことを特徴とすることができる。尚、この開放構造は、シート供給装置の本体とは筐体構造を一体とせず、シート供給装置の本体とは別体として設けられる場合もある。
また、この搬送機構は、複数枚のシート束の後端部を押すことで、給紙口に向けてシート束を搬送することを特徴とすることができる。
更に、この搬送機構は、収納部の上部に開閉可能に設けられ、この収納部に対して閉じられた状態にて所定の押し込み部材をスライドさせることで、収納部に積載されたシートの上方位置から複数枚のシート束を押し出すことを特徴とすることができる。
【0009】
一方、本発明は、折りたたみ式手差しトレイが折りたたまれた状態にて手差しシート供給口が閉じられる画像形成装置に接続され、この手差しシート供給口に対してシートを供給するシート供給方法であって、折りたたみ式手差しトレイが折りたたまれた状態にてこの折りたたみ式手差しトレイの一部を変位させて手差しシート供給口を開放状態にし、この開放状態にされた手差しシート供給口に対してシートを供給することを特徴としている。
【0010】
ここで、この折りたたみ式手差しトレイの一部はスライド部分であり、スライド規制部材を折りたたみ式手差しトレイの所定箇所に挿入することにより、この一部をスライド変位させることを特徴とすることができる。
また、この開放状態にされた手差しシート供給口に対して、複数枚のシートの束を供給することを特徴とすることができる。更に、手差しシート供給口に先に供給されたシート(残留シート)の枚数が少量になったことを検知し、先に供給されたシートの下側に次のシートの束を供給することを特徴とすることができる。これらの発明によれば、手差し供給部に対してシートの連続的な供給が可能となる点で優れている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像形成装置の例えば手差し給紙部(手差し給紙機構)に向けて連続的にシート供給を可能とし、ユーザによるシート供給の煩わしさを大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成システムの全体構成例を示した図である。図1に示す画像形成システムは、本実施の形態における特徴的な構成を有するシート供給装置1と、プリンタ、複写機、ファクシミリ等として機能する画像形成装置2とで構成されている。
【0013】
画像形成装置2は、装置内部に、例えば電子写真方式を採用する画像形成部を備えている。より具体的には、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4種類のトナー像を各々担持する複数の像担持体と、この複数の像担持体にて各々形成されたトナー像を重畳して転写する中間転写体と、搬送されるシート上に中間転写体上のトナー像を転写する転写部と、シート上に転写されたトナー像を、このシートに定着する定着部とを備えている。尚、画像形成装置2の詳細な構成については、多数の文献等にて明らかにされており、ここでは更なる詳細な説明を省略する。また、本実施の形態に適用可能な画像形成装置2は、電子写真方式を採用したものに限らない。各種のプリンタや複写機、各種の印刷装置を用いて画像形成システムを形成することができる。
【0014】
画像形成装置2の側方には、内部に設けられた給紙部(給紙機構)に加えて、外部からシートを供給できる手差し給紙部(手差し給紙機構)8が設けられている。この手差し給紙部8からシートが供給できるように、画像形成装置2の側方は、手差し給紙部8の部分に開口がある。また、画像形成装置2の側方には、手差し給紙部8から供給されるシートを積載するための手差しトレイ9が設けられている。この手差しトレイ9は、折りたたみ式であり、画像形成装置2に対して開閉自在に設けられている。また、この手差しトレイ9は、大サイズ(例えばA3サイズ)のシートを積載し、また大サイズのシートの搬送を安定して行なうために、スライド状に引き出せるスライド部9aを備えている。即ち、手差しトレイ9を開き、画像形成装置2の側方から遠ざける方向にスライド部9aをスライドさせる(引き出す)ことで、シートを積載し易くなり、特に大サイズのシートを手差しトレイ9上に積載する際に使いやすくなる。このようにして、例えば小部数の特殊紙で印刷を行なう場合など、ユーザが手差し給紙部8を利用したいと欲する場合には、手差しトレイ9は開いた状態で用いられる。
【0015】
一方、手差し給紙部8を利用せず、画像形成装置2の内部に設けられた給紙部を使ってユーザが印刷作業を実行する場合には、この手差しトレイ9は一般に閉じた状態(折りたたまれた状態、跳ね上げた状態)にある。手差しトレイ9を閉じた状態に置くことで、画像形成装置2の作業スペースを小さくすることができる。この手差しトレイ9を閉じた状態にすると、スライド部9aが自重で下がり、スライド部9aが手差しトレイ9に収納される。このような画像形成装置2では、このスライド部9aが手差しトレイ9に収納されると、自重により下がったスライド部9aによって手差し給紙部8の開口部が塞がれる。手差し給紙部8の開口部を塞ぐことで、一般に、手差しトレイ9が開かれていない状態では手差し給紙部8からの給紙が行なわれない。手差しトレイ9を用いずに給紙を行なうと、シートの姿勢が安定せず、シート搬送が良好に行なわれないためである。また、手差し給紙部8を使用しない場合に開口部を塞ぐことで、塵やゴミなどが開口部から画像形成装置2の内部に入り込むことを防止することができる。
【0016】
本実施の形態では、手差しトレイ9が折りたたまれ、閉じた状態にて、シート供給装置1が画像形成装置2にドッキングする点に特徴がある。即ち、シート供給装置1は、手差しトレイ9を跳ね上げた状態で設置される。これによって、画像形成装置2の側面に、シート供給装置1をコンパクトに設置でき、画像形成システム全体の設置面積を小さくすることが可能である。また、本実施の形態では、手差しトレイ9に収納されたスライド部9aを図の矢印方向に持ち上げ、手差しトレイ9が折りたたまれた状態でも手差し給紙部8へのシート搬送を可能とするために、スライド部持ち上げ機構(後述)を備えている。画像形成装置2に対するシート供給装置1の位置決めは、ドッキング機構部12によって行われる。
【0017】
シート供給装置1は、画像形成装置2の側方に設けられる手差し給紙部8に、複数枚のシート(記録紙、用紙)を束としてまとめて供給している。このシート供給装置1は、シートを積載する本体10と、この本体10の上方に設けられシート束を押し出すスライドユニット50とを備えている。本体10は、その内部に、シートを積載して収納する用紙トレイ20が設けられ、また、用紙トレイ20を上下動させるエレベータ機構部30を備えている。また、シート供給装置1は、シート供給装置1の動きを制御するための制御部を構成するコントロール基板90を備えている。
【0018】
図2は、シート供給装置1の本体10に設けられたエレベータ機構部30を説明するための図である。エレベータ機構部30は、パンダグラフ型エレベータ方式により、用紙トレイ20の面を平行に保った状態で上下動させている。このパンダグラフ型エレベータ方式を採用するにあたり、フレーム31の底面側の両サイドに、一対のスライドレール32が水平に取り付けられている。また、エレベータ機構部30は、X状のリンク機構を構成する第1のリンク33と第2のリンク34とが、ピン35にて連結されている。図2に示すように、この第1のリンク33と第2のリンク34とで構成されるX状のリンク機構は、本体10の両サイドに一対、設けられ、この一対のX状のリンク機構によって、用紙トレイ20が支えられている。第1のリンク33の一端は、フレーム31にベアリング36を介して連結され、他の一端は、用紙トレイ20のスライド溝21に、スライドベアリング37を介して接続されている。
【0019】
一対のスライドレール32にはブラケット40が連結されている。また、このブラケット40には、第2のリンク34の一端がベアリング38を介して連結されている。ブラケット40の中央部には、駆動用のネジシャフト41が連結されている。一方、エレベータ機構部30は、ステッピングモータ45を備え、このステッピングモータ45は、ウォームギア46を介してネジシャフト41を回動させる。このネジシャフト41を回動させることで、ブラケット40をスライドレール32に沿って、水平方向(図の矢印方向)にスライドさせることができる。図2の一点鎖線で示すブラケット40は、用紙トレイ20が最上点の位置にある状態を示し、このときの用紙トレイ20は一点鎖線で表現されている。図2の実線で示すブラケット40は、用紙トレイ20が実線で示す最下点の位置にある状態を示している。更に、エレベータ機構部30のフレーム31には、ブラケット40を検知するトレイボトムリミットセンサ47とトレイアップリミットセンサ48とが設けられている。このトレイボトムリミットセンサ47は、ブラケット40の位置によって用紙トレイ20の最下降位置を検出し、それ以上の動きを制限している。また、トレイアップリミットセンサ48は、ブラケット40の位置によって用紙トレイ20の最上昇位置を検出し、それ以上の動きを制限している。
尚、用紙トレイ20の裏面には、用紙トレイ20上のシートが無い状態を検知するペーパーアウトセンサ(図示せず)を備えている。
【0020】
次に、スライドユニット50について説明する。
図3は、シート供給装置1の本体10から、スライドユニット50が開かれた状態を示している。図1に示す状態からヒンジ52を中心としてスライドユニット50を開くことで、本体10の内部にある用紙トレイ20上に、シートを積載することが可能となる。スライドユニット50には、用紙トレイ20に向けてプッシャー51が突出している。このプッシャー51は、スライドユニット50の筐体に設けられた溝部53を、画像形成装置2の手差し給紙部8の方向に、用紙トレイ20に載置されたシート束の後端を押し出すようにスライドする。図3には、プッシャー51の押し出し動作時の移動方向を「押しだし方向」として矢印で示している。また、プッシャー51の移動状態としては、実線にてプッシャー51のホームポジション状態を示し、破線(点線)にてプッシャー51の最先端移動状態を示している。プッシャー51は、L字状部材が用紙押しだし側(スライドユニット50を閉じたときの下側)に、約7mm突出した突出部分を備えており、更に約3mm程度の段差を設けることで、この約3mmの段差部分で用紙トレイ20上の複数枚のシートを一度に押し出している。更に、プッシャー51の平面部分にはセンサ用穴51aが設けられており、後述するペーパーエッジセンサを用いてシートの位置を認識している。
【0021】
また、スライドユニット50にはマグネットキャッチ54が設けられ、スライドユニット50の開閉状態を検出するインタロックスイッチとして機能している。
尚、用紙トレイ20の面には、積載されたシートの枚数が少ない場合においてもプッシャー51の移動を可能にするための凹部22が設けられている。この凹部22を設けることで、用紙トレイ20のシート積載面よりも下側までプッシャー51の先端が伸び、少ない枚数のシートも安定して押し出すことが可能となる。
【0022】
図4は、スライドユニット50の構造を更に詳述するための図である。図4では、スライドユニット50の上面から、即ち、図3に示す開いた状態ではなく閉じた状態の上側から、スライドユニット50の内部を眺めている。図4に示すように、スライドユニット50の筐体の内部には、プッシャー51のスライド方向(図示する押し出し方向、およびその反対方向)に設けられる溝部53に平行して、フレーム部材55が設けられている。また、プッシャー51が取り付けられ、プッシャー51のスライド方向にわたって延長されるプッシャー用ベルト61が溝部53に平行して設けられている。このフレーム部材55には、プッシャー51の駆動源であるステッピングモータ56や、ステッピングモータ56からの駆動力を伝達するギア類57が設けられている。また、プッシャー用ベルト61を架け渡すための駆動側シャフト62および従動側シャフト63が設けられ、これらの一端がベアリングを介してフレーム部材55に連結されており、これらの他端はベアリングを介してスライドユニット50の筐体に連結されている。そして、駆動側シャフト62はギア類57に連結されると共に、その軸には駆動側プーリー64が設けられている。一方、従動側シャフト63には従動側プーリー65が設けられている。そして、プッシャー用ベルト61は、内側に駆動歯が付いており、ギア付きの駆動側プーリー64と従動側プーリー65によって噛み合って張りわたされ、プッシャー51のスライド方向への移動を実現している。
【0023】
更に、スライドユニット50には、プッシャー51のホームポジション位置を検出するためのホームポジションセンサ66が設けられており、プッシャー51に取り付けられたセンサ用板58によって、プッシャー51のホームポジション位置を認識している。また、プッシャー51には、積載されているシートのエッジを検出するペーパーエッジセンサ59が設けられている。更に、用紙トレイ20を上昇させるときのシートの最上点を検知するフェースコントロールセンサ67を備えている。このフェースコントロールセンサ67としては、例えばリミットセンサによるアクチュエータを用いることができる。また、これらのアクチュエータのセンサを用いる代わりに、例えば、スライドユニット50のシートに接する面(底面)側に赤外線センサなどの例えば反射型光センサを用いて、横から(底面に沿うように)シートの有無を検出するように構成することもできる。
【0024】
このペーパーエッジセンサ59は、例えば反射型の赤外センサで構成され、プッシャー51のシート後端押し出し面よりも約10mm、押し出し側に配置されている。そして、図3に示すプッシャー51のセンサ用穴51aを通過して、シートの存在を検知している。シートのエッジ検出に際し、まず、ホームポジションセンサ66によってホームポジション位置にあるプッシャー51の移動を開始する。このホームポジション位置からプッシャー用ベルト61によってプッシャー51の移動を開始し、用紙トレイ20上にあるシートの後端エッジをペーパーエッジセンサ59にて検出する。このような構成を採用することで、はがき用紙や名刺用紙、各種封筒、A3厚紙など、任意のサイズのシートが積載された場合であっても、その後端エッジを正しく検出することができる。即ち、用紙トレイ20のシート送り出し(押し出し)側にシートの先端を合わせてシートを載置した場合に、載置されたシートのサイズが異なっても正しくシートの後端を認識できる。このシートの後端を認識した後、プッシャー51の移動量をある一定の値とすることで、画像形成装置2に対するシートの送り出し量を常に一定に保つことが可能となる。
【0025】
図5は、画像形成装置2に接続される側からシート供給装置1の本体10を眺めた外観図である。本体10には、折りたたまれた手差しトレイ9のスライド部9a(図1参照)を持ち上げるスライド部持ち上げ機構11と、折りたたまれた手差しトレイ9の両端を先端部12aで挟み込んで位置を決定するドッキング機構部12とが設けられている。また、ドッキング機構部12には、用紙トレイ20に積載されたシートを、シート搬送方向に直交する方向のサイズに合わせてガイドするサイドガイド13が設けられている。尚、このスライド部持ち上げ機構11は、画像形成装置2のシート供給口を開放状態にする開放構造として機能している。
【0026】
本実施の形態では、図1に示すように、手差しトレイ9を閉じた(折りたたんだ)状態で、シート供給装置1を画像形成装置2に接続させている。ここで、手差しトレイ9を閉じた(折りたたんだ)状態では、一般に、画像形成装置2の手差し給紙部8へシートを搬送する開口部が、手差しトレイ9のスライド部9aにより閉じられた状態にある。そこで、本実施の形態が適用されるシート供給装置1では、スライド部9aを持ち上げるためのスライド部持ち上げ機構11を設けている。これによって、手差しトレイ9が折りたたまれた状態であっても、手差し給紙部8へシート搬送が可能である。
尚、図5に示すようなスライド部持ち上げ機構11に代えて、手差しトレイ9にスライド部9aを固定するための特別な部材(本体10とは別体)を、この手差しトレイ9に取り付けるように構成することも可能である。より具体的には、例えば、手差しトレイ9の先端部に、スライド部9aとの隙間を固定するトレイ開口用スペーサを取り付ける等である。これによっても、スライド部9aを持ち上げ、手差し給紙部8へシートを搬送する開口部を開放することが可能となる。かかる場合には、本体10とは別体のトレイ開口用スペーサを含めてシート供給装置1とすることができる。
【0027】
また、図5に示すように、シート供給装置1は、手差し給紙部8のシートが少量になったことを検知するペーパーローセンサ71と、画像形成装置2へのシート搬送タイミングを手差し給紙部8の動作によって検知するためのタイミングセンサ72とを備えている。
【0028】
図6は、フィード動作検知部の構成を説明するための図である。この図6には、画像形成装置2の手差し給紙部8に設けられたフィードプレート8aが示されている。このフィードプレート8aの動作によって、フィードプレート8a上に先端部が積載されたシート束につき、最上位のシートから順にシートが画像形成装置2の画像形成側に供給される。ここで、まず、画像形成装置2側のシート供給動作について説明すると、画像形成装置2の手差し給紙部8では、1枚ずつシートを供給するシート供給部に、図示しない半月状のロール(半月ロール)が設けられている。この半月ロールが回動するタイミングに合わせて、フィードプレート8aが支点8bを中心として回動(図6の反時計回り方向に回転)し、手差し給紙部8に供給されたシートの先端部分を持ち上げる。これによって、シートの先端部分が半月ロールのロール部分に当接可能となり、回動する半月ロールの摩擦力によってシートがフィードされ、フィードされたシートが下流側(画像形成装置2の画像形成側)に搬送される。
【0029】
図5および図6に示すタイミングセンサ72では、このフィードプレート8aの動作を検知することで、シートの供給タイミングを認識している。図6に示すフィード動作検知部は、フィードプレート8aの動きをタイミングセンサ72で検出するためにレバー73が設けられている。レバー73は、例えば図5に示すドッキング機構部12から延長されるブラケット(図示せず)に、軸73aを中心として回動可能に構成されており、その一端に当接部73b、他端にアクチュエータ部73cを備えている。当接部73bはフィードプレート8aの面に自重(または軽いバネ力)により当接しており、その形状は、フィードプレート8aの動きを妨げないようにR形状で構成されている。また、当接する位置は、シートが載置されていないフィードプレート8a上の一端部(例えばフロント側の端部)としている。タイミングセンサ72は、断面凹状のくぼみ部分に透過式赤外線センサが設けられた構造を備えている。そして、この断面凹状のくぼみ部分にレバー73のアクチュエータ部73cが入ることで、透過式赤外線センサからの赤外線を遮断し、アクチュエータ部73cがくぼみ部分から出ることで赤外線が透過する。これらの動作によって、ON/OFFを検知することができる。図6に示す例では、フィードプレート8aが下がっている状態にて、レバー73の当接部73bが下降し、アクチュエータ部73cが上昇して、タイミングセンサ72のくぼみに入り込む。フィードプレート8aが上がることでアクチュエータ部73cが下降し、タイミングセンサ72のくぼみから出る。このようにして、フィード動作検知部では、フィードプレート8aの動作を適切に検知することが可能となる。尚、画像形成装置2の構造によっては、フィードプレート8aの動きがない場合もある。かかる場合には、例えば回動するフィードロールの動作を検知する等、何らかの動作部の動作を検出することで、画像形成装置2のシート供給タイミングを知ることができる。
【0030】
次に、シート供給装置1にて実行される処理について説明する。
図7は、シート供給装置1のシート押し出し処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、コントロール基板90(図1参照)をハードウェアとする制御部にて制御(コントロール)されている。
まず、電源(例えばAC100Vの電源スイッチ)がONされた後(ステップ101)、用紙トレイ20上のペーパーアウトセンサ(図示せず)からの出力により、用紙トレイ20上にシートがあるか否かが判断される(ステップ102)。シートが無い場合には、図2にて説明したエレベータ機構部30のステッピングモータ45を駆動し、パンダグラフ型エレベータを用いて用紙トレイ20を最下降位置まで下げる(ステップ103)。この最下降位置は、図2に示すトレイボトムリミットセンサ47により検出される。また、この用紙トレイ20の下降と共に、プッシャー51をホームポジション位置まで戻す(ステップ104)。即ち、図4に示すように、ステッピングモータ56を動作させて、ホームポジションセンサ66によって検知される位置までプッシャー51を押し出し方向とは反対方向にスライドさせる。
【0031】
ステップ102で用紙トレイ20上にシートがある場合には、図2にて説明したエレベータ機構部30のステッピングモータ45を駆動し、パンダグラフ型エレベータを用いて用紙トレイ20をシート搬送高さ位置まで上昇させる(ステップ105)。シート搬送高さ位置は、図4に示したフェースコントロールセンサ67による最上位のシート検出によって決定される。また、用紙トレイ20の上昇と共に、ステッピングモータ56を動作させてプッシャー51をホームポジション位置まで戻す(ステップ106)。その後、例えばコントロールパネル(図示せず)に設けられたスタートスイッチがオンされたか否かが判断される(ステップ107)。オンされていない場合にはスイッチオンを待つ。スイッチがオンされた場合には、ステッピングモータ56を動作させて、プッシャー51を図4に示す押し出し方向にスライドさせ、シートエッジ(シートの後端エッジ)までプッシャー51を移動させる(ステップ108)。このシートエッジまでの移動は、図4を用いて説明したペーパーエッジセンサ59によるエッジ検出に基づいて制御される。
【0032】
その後、手差し給紙部8のシート残量が少なくなったか否かを、図5に示すペーパーローセンサ71によって認識する(ステップ109)。残量が少なくなっていない場合には待機し、残量が少量(例えば2枚程度)になったことをペーパーローセンサ71によって認識した場合には、ステッピングモータ56を動作させて、図4に示す押し出し方向に約10mmスライドさせる(ステップ110)。その後、更にステッピングモータ56を動作させて、図4に示す押し出し方向にプッシャー51を約100mmスライドさせる(ステップ111)。このように2度に分けて押し出しを行なうことで、シート束を押し出す際に、スタックされた他のシートを重ねて送る、いわゆる重送を軽減することが可能となる。このステップ110およびステップ111の押し出し動作によって、先の押し出し動作によって押し出され手差し給紙部8のフィードプレート8a(図6参照)に残された少量のシートの下側に、次のシート束が供給(搬送)されることになる。これによって、シート供給装置1から画像形成装置2に対して連続的なシートの供給が可能となる。
【0033】
その後、エレベータ機構部30のステッピングモータ45を駆動し、パンダグラフ型エレベータを用いて用紙トレイ20を約10mm下げる(ステップ112)。そして、ステッピングモータ56を動作させてプッシャー51をホームポジション位置まで戻す(ステップ113)。その後、ステッピングモータ45を駆動し、パンダグラフ型エレベータを用いて用紙トレイ20をシート搬送高さ位置まで上昇させる(ステップ114)。そして、ステップ108に戻り、同様な処理が繰り返される。
【0034】
尚、制御部では、用紙トレイ20に積載されたシートの残枚数を検知している。例えば残枚数が40枚程度になった時点でブザー(図示せず)を間欠的に鳴らし始め、ユーザに知らせる。完全にシートが無くなった場合には、ブザーを連続音とする。
また、シート供給装置1にはレディランプ(図示せず)が設けられている。例えば用紙トレイ20が最下降位置から上昇するときにレディランプを点滅させ、フェースコントロールセンサ67によって検知されるスタンバイ位置に達した時点でレディランプを連続点灯することも有効である。このように構成することで、ユーザに対し、シート供給装置1の稼働状況をより詳細に通知することが可能となる。
更に、図6を用いて説明したフィード動作検知部の動作によって、画像形成装置2の動作に応じたシート供給装置1からのシート供給が可能である。
【0035】
また、用紙トレイ20へのシートの供給は、図3に示すように、スライドユニット50を開いて行なわれる。ヒンジ52を中心としてスライドユニット50を開くと、エレベータ機構部30のステッピングモータ45の駆動を開始し、パンダグラフ型エレベータを用いて用紙トレイ20を最下降位置まで下げる。そして、シートが積載され、スライドユニット50が閉じられたことをマグネットキャッチ54により認識すると、ステッピングモータ45の駆動を開始して用紙トレイ20を上昇させる。この上昇に際して、上述したレディランプを点滅させ、フェースコントロールセンサ67によってスタンバイ位置に達したことを検知してレディランプを連続点灯させる。そして、前述したようなシート束供給操作を実行する。
【0036】
以上、詳述したように、本実施の形態によれば、画像形成装置2に接続されるシート供給装置1において、大容量のシートを積載可能な用紙トレイ20からのシート供給を可能とし、ユーザによるシート供給の煩わしさを大幅に軽減することができる。また、シート供給装置1の用紙トレイ20に積載されるシートは、はがき用紙や名刺用紙、各種封筒、A3厚紙など、任意のサイズとすることができる。また、これらの各種シートが積載された場合であっても、その後端エッジを正しく検出し、シートの種類を選ばずに適切な搬送距離だけシート束を送り出すことが可能となる。
【0037】
更に、本実施の形態によれば、画像形成装置2の手差しトレイ9を跳ね上げた状態(閉じた状態)でシート供給装置1をドッキングさせることができる。そして、この状態にて、手差しトレイ9のスライド部分を押し上げ、シート供給装置1から画像形成装置2の手差し給紙部8に向けてシート束を供給している。これによって、シート供給装置1を画像形成装置2の側面にコンパクトに設置でき、また、設置場所として最小面積を確保すれば足りる。
【0038】
また更に、本実施の形態では、画像形成装置2のシート供給動作に伴う動作部の動作を認識してシート押し出しタイミングを決定しており、画像形成装置2の制御部からタイミング信号などを取得する必要がない。その結果、画像形成装置2にてタイミング信号をシート供給装置1に出力する必要がなく、シート供給装置1を設置したことに伴う画像形成装置2側の特別な設計変更を不要とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、プリンタや複写機、印刷機等の各種画像形成装置に接続されるシート供給装置、シートの供給方法、およびシート供給装置と各種画像形成装置とを組み合わせた画像形成システム等への活用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成システムの全体構成例を示した図である。
【図2】シート供給装置の本体に設けられたエレベータ機構部を説明するための図である。
【図3】シート供給装置の本体から、スライドユニットが開かれた状態を示している。
【図4】スライドユニットの構造を更に詳述するための図である。
【図5】画像形成装置に接続される側からシート供給装置の本体を眺めた外観図である。
【図6】フィード動作検知部の構成を説明するための図である。
【図7】シート供給装置のシート押し出し処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1…シート供給装置、2…画像形成装置、8…手差し給紙部(手差し給紙機構)、9…手差しトレイ、9a…スライド部、10…本体、11…スライド部持ち上げ機構、12…ドッキング機構部、20…用紙トレイ、30…エレベータ機構部、50…スライドユニット、51…プッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙口にトレイが開閉自在に設けられる画像形成装置の当該給紙口側に接続され、当該画像形成装置にシートを供給するシート供給装置であって、
シートを積載して収納する収納部と、
前記トレイが閉姿勢の状態にて、前記収納部に積載される複数枚のシートをシート束として前記給紙口に搬送する搬送機構と
を備えたことを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
当該トレイの一部を変位させることで、前記トレイが前記閉姿勢の状態にて前記給紙口を開放させることにより当該給紙口からシートの搬送を可能にする開放構造を更に含む請求項1記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、複数枚のシート束の後端部を押すことで、前記給紙口に向けて当該シート束を搬送することを特徴とする請求項1または2記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記収納部の上部に開閉可能に設けられ、当該収納部に対して閉じられた状態にて所定の押し込み部材をスライドさせることで、当該収納部に積載されたシートの上方位置から複数枚のシート束を押し出すことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のシート供給装置。
【請求項5】
折りたたみ式手差しトレイが折りたたまれた状態にて手差しシート供給口が閉じられる画像形成装置に接続され、当該手差しシート供給口に対してシートを供給するシート供給方法であって、
前記折りたたみ式手差しトレイが折りたたまれた状態にて当該折りたたみ式手差しトレイの一部を変位させて前記手差しシート供給口を開放状態にし、
開放状態にされた前記手差しシート供給口に対してシートを供給することを特徴とするシート供給方法。
【請求項6】
前記折りたたみ式手差しトレイの前記一部はスライド部分であり、スライド規制部材を当該折りたたみ式手差しトレイの所定箇所に挿入することにより、当該一部をスライド変位させることを特徴とする請求項5記載のシート供給方法。
【請求項7】
開放状態にされた前記手差しシート供給口に対して、複数枚のシートの束を供給することを特徴とする請求項5または6記載のシート供給方法。
【請求項8】
前記手差しシート供給口に先に供給されたシートの枚数が少量になったことを検知し、当該先に供給されたシートの下側に次のシートの束を供給することを特徴とする請求項5乃至7何れか1項記載のシート供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−347759(P2006−347759A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179905(P2005−179905)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000105006)クローバーエンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】