説明

シート止部材

【課題】波形状であっても、嵌入作業の作業性が高く、嵌入作業中にシートに疵が生じることを防止し得るシート止部材を提供する。
【解決手段】山部3を構成する2つの角部15a,15aの角度の内、本体2の一端側の角部15aの角度は、本体2の他端側の角部15bの角度より大きくしてある。例えば、前者の角部15aの角度は略130°から140°程度にしてあり、後者の角部15bの角度は、120°程度にしてある。また、本体2の一端側の角部15a,15a,…を構成する斜辺部11,11,…はそれぞれ、本体の一端側へ凸の円弧状にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート止用条材間に合成樹脂製のシートを展張してなる、所謂ビニルハウスにおいて、前記シート止用条材にシートを係止させるシート止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向へ溝部が設けてある複数のシート止用条材間に合成樹脂製のシートを展張してなる、所謂ビニルハウスにあっては、波形状のシート止用スプリングをシート止用条材の溝部内にシートの一部を挿入し、その上からシート止部材を前記溝部に嵌合させることによって、シートをシート止用条材に係止するようにしてある。
【0003】
このようなシート止部材として、後記する特許文献1には次のようなものが開示されている。即ち、シート止部材は、弾性材料を端面視が略倒立Ω形状に成形してなり、その中央の凸条部をシート止用条材の溝部内に挿入させる挿入具と、この挿入具の凸条部内に嵌入させて、該凸条部を外側へ拡張させる筒状の拡張具とから構成されている。一方、シート止用条材は、角管の一側面の中心軸上に開口を設けてなり、この開口に臨む両縁部を筒内側面側へ半円弧状に延設して溝部が形成してある。そして、このシート止用条材の溝部内にシートの一部を挿入し、その上からシート止部材を構成する挿入具の凸条部を嵌入し、該凸条部内に拡張具を嵌合させることによって、シートをシート止用条材に係止する。
【0004】
【特許文献1】特開平8−56499号公報
【0005】
しかしながら、このようなシート止部材にあっては、シート止部材が挿入具と拡張具の2つの部材から構成されているため、材料コスト及び製造コストが高いのに加え、シートを係止する作業の作業性が低いという問題があった。そのため、次のようなシート止部材が開発されている。
【0006】
図3は、ビニルハウスを示す部分外観斜視図であり、図中、50,50,…は、シート止用条材である。後述する如く溝部を有する複数のシート止用条材50,50,…が縦方向及び横方向へ適宜の距離を隔てて組付けられており、各シート止用条材50,50,…の間に展張させた合成樹脂製のシートS,S,…が、シート止用条材50,50,…の溝部内に嵌入させた波形スプリング状のシート止部材21,21,…によってシート止用条材50,50,…に係止されている。このように、波形スプリング状のシート止部材21によってシートSを係止することができるため、材料コスト及び製造コストを低くすることができると共に、1回の作業でシートを係止させることができ、係止作業の作業性を向上させることができる。
【0007】
図4は、従来の波形スプリング状のシート止部材をその部分拡大図と共に示す平面図である。図4に示した如く、シート止部材21は、線材を、図3に示したシート止用条材50の溝部の幅と同じ幅の帯状面内で台形波状に成形することによって、複数の山部23,23,…と複数の谷部24,24,…が交互に形成された本体22を備えている。すなわち、山部(谷部)23(24)は、ハ字状の両斜辺部31,31の頂部間を上底部30で架橋した形状をしている。また、本体22の表面は合成樹脂材で被覆してある。
【0008】
各山部23,23,…と各谷部24,24,…とは、互いに同じ外寸にしてある。また、この山部23を構成する2つの角部35a,35bの角度(上底部30と斜辺部31,31とがなす角度)は互いに同じ角度にしてあり、具体的には略120°である。また、本体22の両端は、谷部24,24,…の上底部30,30,…を通る直線上の位置にフランジ状に形成されている。
【0009】
図5は、従来のシート止部材21によってシートの一部をシート止用条材に係止させる方法を説明する説明図であり、図中、50はシート止用条材である。なお、図5では、本体22の両端を山部23側にした場合を示している。
【0010】
シート止用条材50は端面視が、上底部を開口51にした台形枠形状をなしており、下底部両縁の両角部は円弧状に成形してある。このシート止用条材50の開口51より内側は溝部52である。
【0011】
このようなシート止用条材50に、前述したシート止部材21を用いてシートSを係止させるには、シートSを、その一部がシート止用条材50の開口51を覆うように展開させた後、シート止部材21の一端から適宜距離を隔てた位置を把持し、シート止部材21の一端部及び該一端部から1つめの谷部24をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。このとき、シートSの該当部分を溝部52内に予め挿入させておいてもよい。
【0012】
次に、前述した1つめの谷部24のシート止部材21一端側角部を支点にシート止部材21を、シート止部材21の一側側へ湾曲させ、シート止部材21の一端部から1つめの山部23をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。そして、前記1つめの山部23のシート止部材21一端側角部を支点にシート止部材21を、シート止部材21の他側側へ湾曲させ、シート止部材21の一端部から2つめの谷部24をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。
【0013】
同様の操作をシート止部材21の2つめの山部23、3つめの谷部24、…と交互に繰り返して、シート止部材21の全ての部分をシート止用条材21内に嵌着させることによって、シートSをシート止用条材50に係止させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このようなシート止部材21にあっては、風雨に曝された場合であっても、シート止用条材50の溝部52内にシートSの一部を確実に係止しておく必要があり、従来のシート止部材21にあっては、シート止用条材50の溝部52の内面への当接力、すなわち所要のバネ力を確保すべく、山部23を構成する2つの角部35a,35bの角度(上底部30と斜辺部31,31とがなす角度)を、互いに同じ角度である略120°にしていた。そのため、このバネ力に抗して、山部(谷部)23(24)をシート止用条材50の溝部52内に嵌入させる作業に比較的大きな力を要し、嵌入作業の作業性が低いという問題があった。また、前述した嵌入作業において支点となる角部で、シートSに孔又は引っかきといった疵が生じる場合があり、シートSの寿命が短くなるという問題もあった。
【0015】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、波形状であっても、嵌入作業の作業性が高く、嵌入作業中にシートに疵が生じることを防止し得るシート止部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の本発明は、線材を所定幅寸法の帯状面内で略台形波状に成形して、山部及び谷部を交互に複数設けた本体を備え、シートの係止に用いられるシート止部材において、前記各山部又は各谷部にそれぞれ形成された両角部の内、前記本体の一端側の角部の角度はそれぞれ、本体の他端側の角部の角度より大きくしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の本発明は、前記本体の一端側の角部を構成する斜辺部はそれぞれ、前記本体の一端側へ凸の円弧状にしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の本発明は、前記本体の一端又はその近傍にマークが設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の本発明では、線材を所定幅寸法の帯状面内で略台形波状に成形した本体の複数の山部又は複数の谷部にそれぞれ形成された両角部の内、本体の一端側の角部の角度はそれぞれ、本体の他端側の角部の角度より大きくしてある。従って、相対的に角度が小さい本体の他端側の角部を構成する斜辺部のバネ力は相対的に強く、該バネ力によって、シート止部材全体として所要のバネ力を保持することができる。一方、相対的に角度が大きい本体の一端側の角部を構成する斜辺部のバネ力は相対的に弱いため、シート止部材の嵌入作業に要する力を低減することができ、作業性が向上する。また、本体の一端側の角部は相対的に緩やかであるため、嵌入作業において当該角部を支点にした場合であっても、シートに疵が生じ難い。
【0020】
請求項2記載の本発明では、本体の一端側の角部を構成する斜辺部はそれぞれ、本体の一端側へ凸の円弧状にしてあるため、嵌入作業中、当該部分の応力によって当該部分を容易に湾曲させることができ、嵌入作業の作業性が向上する。
【0021】
請求項3記載の本発明では、本体の一端又はその近傍にマークが設けてあるため、シート止部材がどのような姿勢にあっても、マークが設けてある側の端部を先頭にして嵌入作業を行えばよいことを一見して目視することができ、シート止作業の作業効率を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本実施の形態に係るシート止用条材は、線材を所定幅寸法の帯状面内で略台形波状に成形して、山部及び谷部を交互に複数設けた本体を備えており、各山部及び各谷部には、それぞれ2つの角部が形成されている。そして、各山部又は各谷部の両角部の内、本体の一端側の角部の角度はそれぞれ、本体の他端側の角部の角度より大きくしてある。
【0023】
例えば、本体の一端側の角部の角度は略130°から140°程度にしてあり、本体の他端側の角部の角度は、120°程度にしてある。従って、後者の角部を構成する斜辺部によって、シート止部材全体として所要のバネ力を保持することができる一方、前者の角部を構成する斜辺部によって、シート止部材の嵌入作業に要する力を低減することができ、作業性が向上する。また、本体の一端側の角部は相対的に緩やかであるため、シート止用条材の嵌入作業において当該角部を支点にした場合であっても、シートに疵が生じ難い。
【0024】
また、前述した本体の一端側の角部を構成する斜辺部はそれぞれ、本体の一端側へ凸の円弧状にしてある。前述した嵌入作業中、当該部分を円弧の曲率が大きくなる方向へ湾曲させるが、その際、当該部分の応力によって当該部分を容易に湾曲させることができ、嵌入作業の作業性が向上する。
【0025】
一方、本体の一端又はその近傍に、着色又は着色カバー材の被覆等によってマークが設けてあり、これによって、嵌入作業の先頭を一見して把握することができる。
【0026】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【0027】
図1は、本発明に係るシート止部材をその部分拡大図と共に示す平面図である。図1に示した如く、シート止部材1は、線材を、所定幅寸法の帯状面内で略台形波状に成形することによって、複数の山部3,3,…と複数の谷部4,4,…とがそれぞれ交互に形成された本体2を備えている。すなわち、山部(谷部)3(4)は、ハ字状の両斜辺部11,11の頂部間を上底部10で架橋した形状をしている。
【0028】
この山部3を構成する2つの角部15a,15bの角度(上底部10と斜辺部11,11とがなす角度)の内、本体2の一端側の角部15aの角度は、本体の他端側の角部15bの角度より大きくしてある。例えば、前者の角部の角度は略130°から140°程度にしてあり、後者の角部の角度は、120°程度にしてある。従って、後者の角部15bを構成する斜辺部11によって、シート止部材1全体として所要のバネ力を保持することができる一方、前者の角部15aを構成する斜辺部11によって、後述する如く、シート止部材1の嵌入作業に要する力を低減することができ、作業性が向上する。また、本体2の一端側の角部15a,15a,…は相対的に緩やかであるため、嵌入作業において当該角部15a,15a,…を支点にした場合であっても、シートに疵が生じ難い。
【0029】
更に、本体2の一端側の角部15a,15a,…を構成する斜辺部11,11,…はそれぞれ、本体の一端側へ凸の円弧状にしてある。後述する如く、嵌入作業中、当該部分を円弧の曲率が大きくなる方向へ湾曲させるが、その際、当該部分の応力によって当該部分を容易に湾曲させることができ、嵌入作業の作業性が向上する。
【0030】
一方、本体2の両端は、谷部4,4,…の上底部10,10,…を通る直線上の位置にフランジ状に形成されている。また、本体2の表面は合成樹脂材で形成した被覆部2aによって被覆してあり、この被覆部2aの本体の一端近傍の部分は、その色を他の部分の色と異ならせてマーク部2bにしてある。これによって、シート止部材1の嵌入作業において、嵌入させるシート止部材1の先頭を一見して把握することができる。
【0031】
ところで、前述した山部(谷部)3,3,…(4,4,…)の上底部10,10,…、即ち、シートに当接してそれを係止させる部分の長さ寸法は、従来のシート止部材の対応する部分の長さ寸法より長くしてあり、これによって、より強固にシートを係止することができる。
【0032】
なお、本発明に係るシート止部材にあっては、図1に示したシート止部材1と軸対象となる構成、即ち、山部側と谷部側とが逆になる構成も含まれることはいうまでもない。
【0033】
図2は、本発明に係るシート止部材1によってシートの一部をシート止用条材に係止させる方法を説明する説明図であり、従来のシート止部材を用いた場合と比較して示してある。なお、図2にあっては、図1に示したシート止部材の山部と谷部とを逆にしたシート止部材を用いた場合を示している。
【0034】
シート止用条材50は端面視が、上底部を開口51にした台形枠形状をなしており、下底部両縁の両角部は円弧状に成形してある。このシート止用条材50の開口51より内側は溝部52である。
【0035】
このようなシート止用条材50に、本発明に係るシート止部材1を用いてシートSを係止させるには、シートSを、その一部がシート止用条材50の開口51を覆うように展開させた後、マーク部(図1参照)が設けてある側端であるシート止部材1の一端から適宜距離を隔てた位置を把持し、シート止部材1の一端部及び該一端部から1つめの谷部4をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。このとき、シートSの該当部分を溝部52内に予め挿入させておいてもよい。
【0036】
次に、前述した1つめの谷部4のシート止部材1一端側角部を支点にシート止部材1を、シート止部材1の一側側(シート止部材1の一端部がわの側部とは逆側)へ湾曲させ、シート止部材1の一端部から1つめの山部3をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。
【0037】
このとき、前記谷部4の支点となる角部の角度は、図中、一点鎖線で示した従来のシート止部材21の対応する角部の角度より緩やかであるため、実線で示した本発明に係るシート止部材1とシート止用条材50とがなす角度は、従来のシート止部材21とシート止用条材50とがなす角度より小さい。従って、本発明に係るシート止部材1の嵌入作業に要する力を低減することができ、嵌入作業の作業性が高い一方、嵌入作業において当該角部を支点にした場合であっても、シートSに疵が生じ難い。
【0038】
次に、前記1つめの山部3のシート止部材1一端側角部を支点にシート止部材1を、シート止部材1の他側側へ湾曲させ、シート止部材1の一端部から2つめの谷部4をシート止用条材50の溝部52内に、前記開口51上のシートSを内部へ押し込みながら、嵌着させる。
【0039】
このとき、当該谷部4のシート止部材1の一端側角部を構成する斜辺部11が、シート止部材1の一端側へ凸の円弧状にしてあるため、その応力によって、シート止部材1をシート止部材1の他側側へ容易に湾曲させることができる。これによって、当該部分の嵌入作業の作業性を向上させることができる。
【0040】
そして、同様の操作をシート止部材1の2つめの山部3、3つめの谷部4、…と交互に繰り返して、シート止部材1の全ての部分をシート止用条材50内に嵌着させることによって、シートSをシート止用条材50に係止させる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るシート止部材をその部分拡大図と共に示す平面図である。
【図2】本発明に係るシート止部材によってシートの一部をシート止用条材に係止させる方法を説明する説明図である。
【図3】ビニルハウスを示す部分外観斜視図である。
【図4】従来の波形スプリング状のシート止部材をその部分拡大図と共に示す平面図である。
【図5】従来のシート止部材によってシートの一部をシート止用条材に係止させる方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 シート止部材
2 本体
2a 被覆部
2b マーク部
3 山部
4 谷部
10 上底部
11 斜辺部
15a 角部
15b 角部
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を所定幅寸法の帯状面内で略台形波状に成形して、山部及び谷部を交互に複数設けた本体を備え、シートの係止に用いられるシート止部材において、
前記各山部又は各谷部にそれぞれ形成された両角部の内、前記本体の一端側の角部の角度はそれぞれ、本体の他端側の角部の角度より大きくしてあることを特徴とするシート止部材。
【請求項2】
前記本体の一端側の角部を構成する斜辺部はそれぞれ、前記本体の一端側へ凸の円弧状にしてある請求項1記載のシート止部材。
【請求項3】
前記本体の一端又はその近傍にマークが設けてある請求項1又は2記載のシート止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−25648(P2006−25648A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206515(P2004−206515)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】