説明

シームレスベルト

【目的】 電子写真式複写機、レーザープリンター等に使用されるシームレスベルトにおいて、耐久性に優れ、かつ真円度の高いシームレスベルトを提供すること。
【構成】 下記のa〜cの熱可塑性樹脂組成物から成る電子写真用シームレスベルトチューブであって、aを、a+b基準で50〜95重量%、bを、a+b基準で50〜5重量%、cを、a+b100重量部に対して5〜25重量部配合した導電性樹脂組成物からなり、かつシームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□であるシームレスベルト。
a 熱可塑性ポリアルキレンテレフタレートb 熱可塑性芳香族ポリカーボネートc カーボンブラック

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真式複写機、レーザープリンター等に使用されるシームレスベルトに関し、特に感光体基体用、中間転写用、搬送用、定着用、現像用等に使用されるシームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から電子写真式複写機等の、中間転写装置、転写分離装置、帯電装置等においては、エンドレスベルトが多用されている。図1は従来の中間転写装置の側面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトである。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。 導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7、8、9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同調して矢印方向に移動するようになっている。
【0003】次に、動作について説明する。まず矢印A方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像に現像される。このトナー像を、静電転写器10により導電性シームレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0004】ところで、電子写真式複写機等の導電性シームレスベルトの場合には、機能上2本以上のロールにより高張力で長時間駆動されるため、十分な耐久性が要求される。更に、中間転写装置等に使用される場合は、ベルト上でトナーによる画像を形成して紙へ転写するため、駆動時にベルトが弛んだり、伸びたりすると、画像ズレの原因となる。また、トナーの転写を静電気的に行うため、ある程度の導電性も必要である。
【0005】従来、この様な導電性シームレスベルトとして、例えば非晶性熱可塑性樹脂のポリカーボネート樹脂や結晶性熱可塑性樹脂のポリエチレンテレフタレート等に導電性フィラーであるカーボンブラックを配合したベルトが検討されている(特開平2−233765号公報、特開平3−89357号公報および特開昭64−26439号公報等に開示)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ポリカーボネート系シームレスベルトでは短時間で端面にクラックが入り、時間の経過と共にクラックが進展しついには破断する。また、ポリエチレンテレフタレート系シームレスベルトの場合、未延伸状態では結晶性樹脂であることからガラス転移温度が低く、熱収縮度が高いため、必要な寸法精度を有するベルトが得られない。一方、機械的強度を達成するために一軸または二軸の延伸操作を行うと、カーボンの連続構成が切断されるため導電性が不均一になるほか、延伸方向に裂け易くなるため耐久性も損なわれてしまう等の問題があった。
【0007】本発明の目的は、電子写真式複写機、レーザープリンター等に使用されるシームレスベルトにおいて、耐久性に優れ、かつ真円度の高いシームレスベルトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者の検討によれば、耐久性に優れる結晶性熱可塑性ポリアルキレンテレフタレートが連続相に、寸法精度に優れる非晶性熱可塑性ポリカーボネートが分散相となるような混合物に、導電性フィラーのカーボンブラックを配合した樹脂組成物を用いれば、上記目的を達成できる。
【0009】すなわち、本発明によれば、下記のa〜cの熱可塑性樹脂組成物から成る電子写真用シームレスベルトチューブであって、aを、a+b基準で50〜95重量%、bを、a+b基準で50〜5重量%、cを、a+b100重量部に対して5〜25重量部配合した導電性樹脂組成物からなり、かつシームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□である、耐久性に優れ、かつ真円度の高いシームレスベルトが得られる。
a 熱可塑性ポリアルキレンテレフタレートb 熱可塑性芳香族ポリカーボネートc カーボンブラック
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。本発明のシームレスベルトを構成する導電性樹脂組成物は、基本的に二種類の熱可塑性樹脂とカーボンブラックとから構成される。
(1)熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート本発明で使用する二種類の熱可塑性樹脂のうち、主成分であるポリアルキレンテレフタレート(PAT)としては、アルキレン成分を構成すべきグリコール成分がエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチレングリコール等の脂肪族のジオキシ化合物が好ましい。特にエチレングリコール及びブチレングリコールが好ましいが、その40モル%までを他のジオキシ化合物とした混合物もまた好ましい。
【0011】一方、このPATのテレフタル酸成分はテレフタル酸のみからなるものが最も好ましいが、特に芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸で置き換えても良い。本発明で好ましいPATは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)であるが、特に好ましいのは、PBTである。また、PBTの中でも耐久性の観点から混練時および押し出し成形時に熱劣化の少ない、メルト・フロー・レートが15g/10min未満のものが好ましい。PET、PBTを含めて各種のPATが市場で入手できる。
【0012】(2)熱可塑性芳香族ポリカーボネートもう一種類の熱可塑性樹脂である芳香族ポリカーボネートは、炭酸エステルを構成すべきジヒドロキシ化合物の少なくとも大部分が2個のフェノール性水酸基を持つものからなる。この様な二価フェノールにはビスフェノール類、特にビスフェノールAがある。
【0013】芳香族ポリカーボネートは、前述の二価フェノールをカーボネートブリカーサーであるホスゲン、ビスクロロホーメート、炭酸ジエステル等と反応させることで製造させるが、本発明には市場で入手可能なものを用いることができる。
【0014】(3)カーボンブラック本発明で使用されるカーボンブラックとして好ましいのは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックがある。この中でも分散性の良好なアセチレンブラックが特に好ましい。
【0015】(4)付加的成分さらに本発明では、発明の効果を著しく損なわない範囲でこれらの成分の他に付加的成分を配合することができる。付加的成分のうち、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。
【0016】熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。また、各種フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム(重質、軽質、膠質)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、中空ガラス球、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩、等があげられる。
【0017】この他、添加剤として、酸化防止剤(フェノール系、硫黄系等)、滑剤、有機・無機系の各種顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、架橋剤、流れ性改良剤等を挙げることができる。
【0018】(5)配合量本発明における導電性樹脂組成物は、以下の割合で配合される。
a.熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート(PAT)
a+bを100重量%として50〜95重量%b.熱可塑性芳香族ポリカーボネートa+bを100重量%として50〜5重量%c.カーボンブラックa+bの100重量部に対して5〜25重量部
【0019】熱可塑性PATが上述の割合を超えると、結晶性樹脂である熱可塑性PATの性質が影響して成型時に生じる収縮が大きくなり、必要な寸法精度、真円性が得られない。この結果、画像ズレの原因となる。一方、上述の割合に満たない場合には、カーボンブラックの分散が悪化し、導電性が不均一になるほか、ベルトの耐久性も劣化する。熱可塑性PATの好ましい配合量はa+bを100重量%として60〜95重量%である。また、カーボンブラックの配合量が上述の割合に満たないと、表面導電特性が1013Ω/□以上になり、必要な導電性が得られない。一方、上述の割合を超えると、材料強度が低下する。
【0020】(6)表面導電性表面導電性は、100 〜1013Ω/□の範囲が好ましい。感光体基体用シームレスベルトに使用する場合には、100 〜105 Ω/□が好ましく、100 〜103 Ω/□が特に好ましい。中間転写用シームレスベルト、定着用シームレスベルト、搬送用シームレスベルト、現像用シームレスベルト等に使用する場合には105 〜1013 /□が好ましく、107 〜1012Ω/□が特に好ましい。
【0021】(7)配合方法上記組成物は、所望により付加的成分を一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて製造することができる。通常は押出機等で各成分を各々に混練してペレット状のコンパウンドにした後、加工に供するが、特殊な場合は各成分を直接成形機に供給し、成形機で本組成物を混練しながら成形することもできる。
【0022】この混練に際しては、各成分の含有水分について十分な制御が必要である。各成分の含有水分は0.5重量%以下であり、0.2重量%以下が好ましく、1000ppm以下がさらに好ましい。含有水分が0.5重量%を超えると、熱可塑性PATおよびポリカーボネートが溶融混練時に加水分解し、製品外観を悪化させる恐れがある。含有水分量の制御は混練後の樹脂組成物についても必要で、0.5重量%以下になるよう保管することが望ましい。必要に応じて熱風乾燥や減圧乾燥などを行ってもよい。
【0023】(8)シームレスベルトの製造方法シームレスベルトの製造方法は、連続溶融押出成形法、射出成形法あるいはブロー成形法、インフレーションフィルム成形法等公知の方法を採用することが出来る。望ましい製造方法は連続溶融押出成形法で、特にベルトの直径が30mmφ以上の場合には、押し出したチューブの内径を高精度に制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式が適しておりまた、ベルト直径が30mmφ未満の場合には、さらにバキュームサイジング方式が適している。
【0024】押し出されたシームレスベルトは導電性、厚みの均一性、機械的強度等、要求される特性を未延伸状態で満足しなければならない。これは、延伸操作により、機械的強度の向上は期待できるものの、導電性の均一性が損なわれること、延伸方向に裂け易くなるため耐クラック性も損なわれることなどの問題が生じるからである。さらに、延伸によりカーボンブラックと樹脂との界面に剥離が生じ、カーボンが脱落して転写むら等の原因となる。
【0025】(9)シームレスベルトの厚みシームレスベルトの厚みは、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上700μm以下がさらに好ましい。50μm未満になるとシームレスベルトが伸び易くなる為、画像の色むら等の問題が生じる。また、耐電圧が不足し、転写に必要な電荷の付与に十分な電圧が印加出来なくなる。一方、1000μmを越えると柔軟な変形が困難になるため、小径ロールによる一定速度の駆動ができず、画像の転写ずれが生じる。また、静電容量が小さくなるため、高電圧を印加しないと転写に必要な電荷を付与することができず、電源装置の高コスト化、大型化ばかりでなく、周辺機器部品間での放電等の問題が生ずる。
【0026】シームレスベルトはそのままベルトとして使用しても良いし、ドラムあるいはロール等に巻き付けて使用しても良い。更に、図2に示すように、蛇行防止や端面補強等の目的のために、所定の寸法のシームレスベルトの内側面端部を耐熱テープ13或いは、シリコンゴム14等で処理しても良い。
【0027】
【実施例】次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例における使用材料は、次の通りである。
1.ポリブチレンテレフタレート(三菱化成社製商品名「ノバドール:5020」、MFR14g/10min、230℃)
(鐘紡社製商品名「カネボウPBT:128」、MFR9g/10min、230℃)
2.ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、商品名「ユーピロン:Eー2000」、MFR4g/10min,280℃)
3.アセチレンブラック(電気化学社製、商品名「デンカブラック」)
【0028】また、実施例及び比較例における物性測定および評価方法は次の通りである。
1.導電性(表面抵抗:Ω/□)
三菱油化(株)製表面抵抗計、商品名「ハイレスタ」「ロレスタ」を用い、測定電圧500V、測定時間10秒で測定した。
2.耐折強さJIS P−8115に準拠し、試験片を幅10mm、長さ80mmの大きさに切断し、MIT試験機で折り曲げ速度180回/分、回転角度90゜左右、引張り荷重0.5kgの条件で破壊回数を測定した。
【0029】3.耐久性200mm幅のシームレスベルトを、両ロール径25mmφ、ロール速度100mm/sec、ベルト張力8Kg/ベルト全巾、25℃、55%の条件で図2の装置にセットし、ベルトの割れ状態を目視にて観察した。
4.真円性図3に示す装置でベルトへの張力を8Kg/200mmとし、25mmφの2本のロールの最短距離AおよびBをノギスで測定した。AとBの差が0.05mm未満を○、それ以上を×とした。
5.画像ズレ図1の中間転写装置にベルトをセットし、ベルトへの張力を10Kg/200mmおよび12Kg/200mmの条件で用いたときの画像ズレが0.1mm以下なら○、0.2mm以上を×とした。
【0030】(実施例1〜6)表1にて示した配合にて、各成分を押出成形機に供給し、混練してペレットを得た。このペレットを、260℃で140mmφの環状ダイより下方に溶融チューブの状態で押出す。押出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した、130mmφの冷却マンドレル外表面に接しめて冷却固化させてシームレスチューブとした。次に、シームレスチューブの中に設置されている中子と、外側に設置されているロールにより、厚さ150μmのシームレスチューブ(所定の長さに切断したものがシームレスベルト)を円筒形を保持した状態で引き取った。得られたベルトの導電性、耐折強さ、耐久性、真円性、画像ズレの評価結果を表1に示す。
【0031】(比較例1〜4)配合以外は実施例1〜6と同様にシームレスベルトを得た。得られたベルトの導電性、耐折強さ、耐久性、真円性、画像ズレの評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、耐久性に優れ、真円度が高く、画像ズレのないシームレスベルトが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】中間転写方式の複写機における要部側面図である。
【図2】端面を補強したシームレスベルトの斜視図である。
【図3】真円度測定装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光用光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性シームレスベルト
6a 内側面
6b 外側面
7 搬送ローラ
8 搬送ローラ
9 搬送ローラ
10 静電転写器
11 記録紙
12 押圧ローラ
13 補強用テープ
14 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記のa〜cの熱可塑性樹脂組成物から成る電子写真用シームレスベルトチューブであって、aを、a+b基準で50〜95重量%、bを、a+b基準で50〜5重量%、cを、a+b100重量部に対して5〜25重量部配合した導電性樹脂組成物からなり、かつシームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□であるシームレスベルト。
a 熱可塑性ポリアルキレンテレフタレートb 熱可塑性芳香族ポリカーボネートc カーボンブラック

【図1】
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【図2】
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【図3】
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