説明

シームレスベルト

【目的】 電子写真式複写機、レーザープリンター等の感光体装置、フルカラー中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に使用されるシームレスベルトにおいて、難燃性が高く、耐久性に富みかつ伸びにくいシームレスベルトを提供すること。
【構成】 引張弾性率が10000(Kg/cm2 )以上でメルトフローレートが10g/10min以下の、ポリフッ化ビニリデンを主成分とする樹脂組成物97〜75重量%とカーボンブラック3〜25重量%からなり、かつシームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□であるシームレスベルト。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真式複写機、レーザープリンター等の中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に使用される導電性のシームレスベルトに関し、特に難燃性が高く、耐久性に富みかつベルトが変形しにくいシームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から電子写真式複写機等の、中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等においては、エンドレスベルトが多用されている。図1R>1は中間転写装置の平面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトである。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7、8、9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同調して矢印方向に移動するようになっている。
【0003】次に、動作を説明する。まず矢印方向に回転する感光ドラム1の表面が帯電器2により一様に帯電される。次にこの上に光学系4により静電潜像が形成され、この潜像が現像器により現像される。この現像により形成されたトナー像は、静電転写器10により導電性エンドレスベルト6へ静電転写される。このベルト上に転写されたトナー像は、搬送ローラ7、8、9により搬送され、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このようなシームレスベルトは装置内で、高温部品の近くや高温雰囲気中で長時間使用されるため、難燃性が必要である。具体的には、電気機器やプラスチック材料の難燃性の尺度としてよく知られる、米国のUL規格に準じた難燃性が要求される。
【0005】また、機能上2本以上のロールを用いて高張力下で長時間使用されるため、十分な強度および耐久性を有していなければならない。更に、中間転写装置等に使用されるベルトの場合には、ベルトが伸びると画像ズレの原因となるため、ベルトの伸びを防ぐ必要がある。さらには、ベルト表面にトナーが固着すると画像の鮮明さが損なわれてしまうために、ベルト表面にトナーが固着しないことが重要である。
【0006】従来の熱可塑性樹脂製導電性シームレスベルトは、熱可塑性樹脂にカーボンブラック等、可燃性の導電性粒子を添加した材料を用いていたため、ベルトの難燃性が低い。そこで、様々な難燃剤を添加して難燃性を改良する試みがとられているが、難燃剤を添加した樹脂からなる導電性シームレスベルトは、難燃剤を添加しない導電性シームレスベルトに比べ、ベルト駆動時にクラックが発生しやすく耐久性が劣ることが判ってきた。
【0007】一方、難燃性の高いフッ素系樹脂を用いることも行われてきているが、フッ素樹脂の弾性率が低いため、ベルト駆動時にベルトが伸びて変形し画像がズレてしまうという問題点を有している。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、電子写真式複写機、レーザープリンター等の感光体装置、フルカラー中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に使用されるシームレスベルトにおいて、難燃性が高く、耐久性に富みかつ伸びにくいシームレスベルトを提供することにある。
【0009】このため、本発明においては、シームレスベルトを構成するフッ素系樹脂として、特定のポリフッ化ビニリデン系樹脂を選択する事により、目的を達成した。すなわち、本発明のシームレスベルトは、引張弾性率が10000Kg/cm2以上で、メルト・フロー・レート(MFR)が10g/10min以下のポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物97〜75重量%とカーボンブラック3〜25重量%からなり、シームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□であることを特徴とするシームレスベルトである。
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。
(1)ポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物本発明で使用されるポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物とは、引張弾性率が10000(Kg/cm2 )以上で、メルト・フロー・レートは10g/10min以下であれば、フッ化ビニリデンの単独重合体のみならず、六フッ化プロピレンや四フッ化エチレン等との共重合体、及び、これら重合体と他の樹脂との混合物を用いることができる。
【0011】混合物に用いることのできる樹脂としては、ポリメチルメタクリレートやエチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル系樹脂をあげることができるが、これらは可燃性でありまたトナーと固着しやすいため、配合量は20重量%以下にするのが望ましい。好ましい引張弾性率は12000(Kg/cm2 )以上で、特に好ましい引張弾性率は15000(Kg/cm2 )以上である。引張弾性率が10000(Kg/cm2 )未満になるとベルトが伸びてしまい画像を転写する際に画像ズレを発生する。
【0012】好ましいメルト・フロー・レートは4g/10min未満で、特に好ましくは、2g/10min未満が好ましい。メルト・フロー・レートが10g/10minを越えると極めて耐クラック性が悪くなり耐久性が劣る。これらのポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物には本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、各種フィラーおよび添加剤等の付加成分を更に添加しても構わない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック叉はランダム共重合体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフッルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。
【0013】熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の1種叉はこれらの混合物からなるものが使用される。各種フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム(重質、軟質、膠質)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、中空ガラス球、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等のフィラーがあげることができる。
【0014】また添加剤としては、例えば、酸化防止剤(フェーノール系、硫黄系等)、滑剤、有機・無機系の各種顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、架橋剤、流れ性改良剤等あげることができる。
【0015】(2)カーボンブラック本発明で使用されるカーボンブラックとして好ましいのは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックである。その中でも、シームレスベルトの外観を損なわないために、分散性の良いアセチレンブラックが特に好ましい。
【0016】(3)配合量本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂とカーボンブラックの配合量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂97〜75重量%に対しカーボンブラック3〜25重量%、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂90〜80重量%に対しカーボンブラック10〜20重量%である。カーボンブラックが3重量%未満では導電性に乏しく、25重量%を越えると製品の外観が悪くなり、また、材料強度が低下して好ましくない。
【0017】(4)導電性表面導電性は、100 〜1013Ω/□の範囲が好ましい。感光体基体用シームレスベルト、定着用シームレスベルトに使用する場合には、100 〜105 Ω/□が好ましく、100 〜103 Ω/□が特に好ましい。中間転写用シームレスベルト、搬送用シームレスベルト、定着用シームレスベルト、現像用シームレスベルト等に使用する場合には105 〜1013 /□が好ましく、107 〜1012Ω/□が特に好ましい。
【0018】(5)配合方法上記組成物は、所望により付加的成分を一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて製造することができる。通常は押出機等で各成分を各々に混練してペレット状のコンパウンドにした後加工に供するが、特殊な場合は各成分を直接成形機に供給し、成形機で本組成物を混練しながら成形することもできる。
【0019】(6)シームレスベルトの製造方法シームレスベルトの製造方法は、連続溶融押出成形法、射出成形法あるいはブロー成形法、インフレーションフィルム成形法等公知の方法を採用することが出来る。望ましい製造方法は連続溶融押出成形法である。
【0020】シームレスベルトの望ましい連続溶融押出成形法としては、ベルトの直径が30mm以上の場合には、押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押し出し方式の内部冷却マンドレル方式、直径が30mm未満の場合には、内部冷却マンドレル方式に加えて、バキュームサイジング方式があげられる。
【0021】押し出されたシームレスベルトは未延伸状態で必要な導電性、厚みの均一性、機械的強度を有していなければならない。これは、延伸操作により、機械的強度の向上は期待できるが、導電性の均一性が損なわれること、延伸方向に裂け易くなるため耐久性も損なわれてしまう等の問題が生じるからである。さらに、カーボンブラックとプラスチックの界面に剥離が生じカーボンが脱落して転写むら等の原因となる問題もある。
【0022】(7)シームレスベルトシームレスベルトの厚みは、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上700μm以下がさらに好ましい。50μm未満になるとシームレスベルトが伸び易くなる為、画像の色むら等の問題が生じる。また、耐電圧が不足し、転写に必要な電荷を付与するのに十分な電圧を印加する事が出来なくなる。また、1000μmを越えると柔軟な変形が困難になるため、小径ロールによる均一な速度の駆動ができず、画像の転写ずれが生じる。さらに、静電容量が小さくなるため、高電圧を印加しないと転写に必要な電荷を付与することができず、電源装置の高コスト化、大型化のみならず、周辺機器部品間での放電等の問題が生ずる。
【0023】シームレスベルトはそのままベルトとして使用しても良いし、ドラムあるいはロール等に巻き付けて使用しても良い。更に、図2に示すように、蛇行防止や端面補強等の目的のために、所定の寸法のシームレスベルトの内側面端部を耐熱テープ13或いは、シリコンゴム14等で処理しても良い。
【0024】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例1〜2)表1に記載したように各成分を所定の割合にて押出成形機に供給し、混練し、ペレットを製造した。得られたペレットを、環状ダイ付き40φの押出機を用い、押出温度を230℃にて150φの環状ダイより下方に溶融チューブの状態で押出した。この溶融チューブを、環状ダイの同一軸線上に支持棒を介して装着された冷却マンドレル外表面に接触させ冷却固化し、120mmφで厚み150μmのシームレスチューブとした。そして、シームレスチューブの中に設置されている中子と外側に設置されているロールにより、シームレスチューブ(所定の長さに切断したものがシームレスベルト)を円筒を保持した状態にて(折り目を付けずに)引き取った。得られたベルトの導電性、引張弾性率、耐折強さ、耐久性、画像ズレを評価した。評価結果を第1表に示す。
【0025】(比較例3〜4)押出温度を280℃にて150φの環状ダイより下方に溶融チューブの状態で押出した以外は、上記実施例1〜3、比較例1〜2と同様にシームレスチューブを得た。
【0026】実施例及び比較例においての使用材料は、下記の通りである。
1.ポリフッ化ビニリデン(三菱油化社製、商品名「KYNAR740」)
MFR:0.3g/10min 230℃2.ポリフッ化ビニリデン(ダイキン工業社製、商品名「ネオフロンVP820」)MFR:1g/10min 230℃3.ポリフッ化ビニリデン(三菱油化社製、商品名「KYNAR720」)
MFR:4g/10min 230℃4.ポリフッ化ビニリデン(三菱油化社製、商品名「KYNAR710」)
MFR:12g/10min 230℃5.ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(三菱油化社製、商品名「KYNAR2812」)
MFR:0.3g/10min 230℃6.ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、商品名「ユーピロンE2000」)
MFR:5g/10min 280℃7.アセチレンブラック(電気化学社製、商品名「デンカブラック」)
8.難燃剤 (帝人化成社製、ファイヤーガード7000)
実施例及び比較例においての評価方法は、下記の通りである。
【0027】1.MFR実施例1〜3、比較例1〜2は、JIS K−7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16Kgで測定した。比較例3は、JIS K−7210に準拠し、温度280℃、荷重2.16Kgで測定した。
【0028】2.導電性(表面抵抗:Ω/□)
表面抵抗計ハイレスタHAプローブ(三菱油化社製)を用い、測定電圧500V、測定時間10秒で測定した。
【0029】3.引張弾性率ISO R1184に準拠し、試験片は、幅15mm長さ150mmの短冊型試験片を用い、オートグラフ引張試験機で引張速度1.0mm/min、チャック間距離100mmで測定した。
【0030】4.耐折強さJIS P−8115に準拠し、試験片は、幅10mm、長さ80mmの試験片を用い、MIT試験機で速度180回/分、回転角度90゜左右、引張り荷重0.5kgの条件で破壊回数を測定した。
【0031】5.耐久性200mm幅のシームレスベルトを、両ロール径25φmm、ロール速度100mm/sec、ベルト張力8Kg/ベルト全巾、25℃、55%の条件で図2の装置にセットし、ベルトの割れ状態を目視にて観察した。100時間以上の耐久性を持つものを○とした。
【0032】6.画像ズレ図1に示す装置でベルトへの張力を10Kg/200mmと12Kg/200mmに変化させて、画像のズレが0.1mm以下を○、0.2mm以上を×とした。
【0033】7.難燃性厚み150μmのシートサンプルをUL−94VTMに準拠し燃焼試験を行った。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、特定のフッ素系樹脂組成物を用いてシームレスベルトを構成することにより、難燃性が高く、耐久性に優れ、かつ伸びにくいシームレスベルトが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】中間転写方式の複写機における要部側面図である。
【図2】端面を補強したシームレスベルトの斜視図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光用光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 シームレスベルト
6a 内側面
6b 外側面
7,8,9 搬送ローラ
10 静電転写器
11 記録紙
12 押圧ローラ
13 補強用テープ
14 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 引張弾性率が10000(Kg/cm2 )以上でメルトフローレートが10g/10min以下の、ポリフッ化ビニリデンを主成分とする樹脂組成物97〜75重量%とカーボンブラック3〜25重量%からなり且つ、シームレスベルトの表面および裏面の表面導電性が1×100 〜1×1013Ω/□であるシームレスベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−228335
【公開日】平成6年(1994)8月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−14877
【出願日】平成5年(1993)2月1日
【出願人】(000006057)三菱油化株式会社 (9)