説明

シール検査方法および装置

【課題】袋詰製品におけるシール部のシール異常を精度よく検査することができるシール検査方法および装置を提供する。
【解決手段】袋詰製品におけるシール部への内容物噛み込みを検査するシール検査方法であって、互いに対向する押圧面を有する一対の押圧部材で前記シール部を挟んで押圧する押圧ステップと、前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測ステップと、計測した複数の前記面間距離を用いて前記シール部のシール状況値を算出するシール状況値算出ステップと、前記シール状況値と予め設定されるしきい値とを比較して内容物噛み込みの有無を判定する判定ステップとを備えるシール検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品や医薬品等の内容物を包装袋に収納した袋詰製品が数多く製造されている。このような袋詰製品は、通常、内容物が一定量ずつ包装袋に充填され、包装袋の開口部をヒートシールにより密閉することにより製造されているが、ヒートシールによりシールされたシール部に内容物による噛み込みが発生する場合がある。内容物による噛み込みがシール部に発生すると、内容物が徐々に吸湿し、あるいは酸化してしまうので品質保持の観点から好ましくない。そこで、シール部への内容物の噛み込みを検知し、シール異常を判別する方法として、特許文献1に開示されているようなヒートシール検査方法が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示されているヒートシール検査方法を図9により説明する。図9は、シート状の包装フィルムFの両端をセンターシール機構100により熱融着してセンターシール部SSを有する筒状包装体Tを形成した後、筒状包装体Tの一部をエンドシール機構101により熱融着してエンドシール部ESを形成し、内容物を充填して袋詰製品を製造するラインを示す概略構成図である。特許文献1に開示されているヒートシール検査方法は、図9に示すように、熱融着により形成されたエンドシール部ESを一対の押圧部材102,102により挟み込み、両者間の距離を2つの渦電流センサー103,103によってそれぞれ計測し、計測した距離の双方またはいずれか一方が、予め設定された基準となるしきい値を超えたときに、内容物の噛み込みがエンドシール部ESに発生したと判定するというものである。
【0004】
なお、エンドシール部ESの断面形状は、図10の断面図に示すように、包装フィルムの両端を図9のセンターシール機構100により熱融着することによって形成されたセンターシール部SSが、エンドシール部ESの略中央部に形成されているのが通常であるが、例えばフィルム蛇行の発生に起因して、図11に示すように、センターシール部SSがエンドシール部ESの一方の端部側に偏って形成される場合もある。
【特許文献1】特開2003−112714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のヒートシール検査方法においては、エンドシール部に微小な内容物の噛み込みが発生している異常品と、センターシール部がエンドシール部の一方の端部側に偏って形成された正常品とを正確に判別することが困難であり、本来、異常品と判断すべき物を正常品と判断したり、正常品であると判断すべきものを異常品であると判断してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、袋詰製品におけるシール部のシール異常を精度よく検査することができるシール検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、袋詰製品におけるシール部への内容物噛み込みを検査するシール検査方法であって、互いに対向する押圧面を有する一対の押圧部材で前記シール部を挟んで押圧する押圧ステップと、前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測ステップと、計測した複数の前記面間距離を用いて、前記シール部のシール状況値を算出するシール状況値算出ステップと、前記シール状況値と予め設定されるしきい値とを比較して内容物噛み込みの有無を判定する判定ステップとを備えるシール検査方法により達成される。
【0008】
また、このシール検査方法において、前記シール状況値は、前記押圧面間の複数の面間距離を加えて算出されることが好ましい。
【0009】
また、前記計測ステップは、前記シール部の両側における前記押圧面間の面間距離をそれぞれ計測することが好ましい。
【0010】
また、前記しきい値は、複数の袋詰製品に対して算出される前記シール状況値についての標準偏差に基づいて決定されることが好ましい。
【0011】
また、前記シール状況値の標準偏差に基づいて前記シール部の密着性の良否を判断する密着性判断ステップを更に備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明の上記目的は、袋詰製品におけるシール部への内容物噛み込みを検査するシール検査装置であって、互いに対向する押圧面を有し前記シール部を挟んで押圧する一対の押圧部材と、前記押圧面間の面間距離を計測する複数の計測手段と、計測した複数の前記面間距離を用いて前記シール部のシール状況値を算出するシール状況値算出手段と、前記シール状況値と予め設定されるしきい値とを比較して内容物噛み込みの有無を判定する判定手段とを備えるシール検査装置により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、袋詰製品におけるシール部のシール異常を精度よく検査することができるシール検査方法および装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るシール検査装置について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係るシール検査装置の概略構成図であり、図2は図1のA−A断面図である。図1及び図2に示すように、シール検査装置1は、ケーシング2と検査装置本体3とを備えている。
【0015】
ケーシング2は、基台21、支柱22および基台21の上方に配置される取付部23を備えており、基台21と取付部23とは支柱22を介して連結されている。
【0016】
検査装置本体3は、押圧部31、2つのセンサー部32,33および管理装置34を備えている。押圧部31は、一対の押圧部材311,312と、支持部材313とを備えている。一対の押圧部材311,312は、互いに対向する押圧面311a,312aを有する上部押圧部材311と下部押圧部材312とから構成されており、包装物Hのシール部ESを上下に挟んで押圧する。支持部材313は、図示しない駆動装置を介して上下方向に移動可能となるようにケーシング2の取付部23に取り付けられている。この支持部材313の下端部には上部押圧部材311が取り付けられており、支持部材313の上下動に伴って、上部押圧部材311も上下方向に移動できるように構成されている。下部押圧部材312は、基台21に固定されている。
【0017】
各センサー部32,33は、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を計測するための計測手段である。これら各センサー部32,33は、図2に示すように、シール部ESの両側における押圧面間の面間距離を計測できるように配置されている。各センサー部32,33は、ケーシング2の取付部23に固定されており、それぞれのセンサーヘッド32a,33aから上部押圧部材311の上面までの距離に対応する電気信号を管理装置34に出力できるように構成されている。このようなセンサー部32,33として渦電流センサーやレーザー式変位計等を用いることができる。上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を計測する方法については後述する。
【0018】
管理装置34は、メモリー部341、入力部342、表示部343、面間距離算出部344、シール状況値算出部345および判定部346を備えている。メモリー部341は、各センサー部32,33から出力された電気信号の出力値や、予め設定されるしきい値等を記憶する記憶手段である。入力部342は、シール検査装置1の運転指令や停止指令を入力したり、メモリー部341に記憶されているしきい値を変更する場合に変更後のしきい値を入力するための入力手段である。表示部343は、シール部ESに内容物噛み込みが発生した場合に、その旨を表示するための表示手段である。
【0019】
面間距離算出部344は、各センサー部32,33から出力された電気信号に基づいて、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を算出する演算手段である。面間距離を算出するには、まず、図3(a)に示すように図示しない駆動装置を動かして押圧部31の上部押圧部材311を降下させることにより、シール部ESを下部押圧部材312との間で挟み込む。この状態を維持して、2つのセンサー部32,33の各センサーヘッド32a,33aから上部押圧部材311の上面までの距離L1,L2をそれぞれ計測する。図3(b)に示すように上部押圧部材311と下部押圧部材312との間にシール部ESが存在しない場合におけるセンサーヘッド32a,33aから上部押圧部材311の上面までの距離をそれぞれL01,L02とすると、(L01−L1)が、センサー部32により計測した上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離D1に対応し、(L02−L2)が、センサー部33により計測した押圧面間の面間距離D2に対応することになる。
【0020】
シール状況値算出部345は、面間距離算出部344で算出した押圧面間の複数の面間距離を用いてシール部ESのシール状況を示すパラメータであるシール状況値を算出する演算手段である。本実施形態においては、シール状況値を、計測した押圧面間の複数の面間距離を加えて算出している。なお、複数の面間距離を加えてシール状況値を算出する代わりに、例えば、各面間距離を掛け合わせてシール状況値を算出するように構成してもよい。
【0021】
判定部346は、シール状況値算出部345で算出したシール状況値と、メモリー部341に記憶されているしきい値とを比較して、シール部ESの内容物噛み込みの有無を判定する判定手段である。
【0022】
このように構成されたシール検査装置1は、例えば、図4の概略構成図に示すような内容物包装装置5において使用され、袋詰製品の製造に供される。この内容物包装装置5は、シール検査装置1の他に、支持台51、ボビン取付部材52、フィルム送出機構53、内容物供給機構54、センターシール機構55、エンドシール機構56、切断機構57、包装物コンベア58を備えている。
【0023】
支持台51は、ボビン取付部材52、フィルム送出機構53、センターシール機構55、エンドシール機構56、シール検査装置1、切断機構57、包装物コンベア58を支持する部材である。
【0024】
ボビン取付部材52は、シート状の包装フィルムFが巻回されたボビン521を取り付ける部材である。包装フィルムFとしては、アルミニウム箔の両面にポリエチレンやポリプロピレンなどをラミネートしたフィルムを例示することができる。
【0025】
フィルム送出機構53は、ボビン521から包装フィルムFを送り出す装置であり、図示しない駆動モータ、ローラ531a、当該ローラ531aに巻き掛けられ包装フィルムFの外表面に接する無端ベルト531bを有する送出部531と、当該送出部531により送り出された包装フィルムFを載置して、包装フィルムFの長手方向に搬送するフィルム搬送コンベア532とを備えている。このフィルム送出機構53は、包装フィルムFを所定長さで間欠的に長手方向に送り出すことができるように構成されている。
【0026】
内容物供給機構54は、送り出されたシート状の包装フィルムF上に、内容物Zを供給する装置であり、内容物Zを搬送する搬送コンベア541および内容物を包装フィルム上の所定箇所に案内する図示しない案内部材を備えている。
【0027】
センターシール機構55は、内容物Zが供給された包装フィルムFの両端部を合掌状に重ね合わせて熱融着してセンターシール部SSを有する筒状包装体Tを形成する装置である。
【0028】
エンドシール機構56は、筒状包装体Tをその長手方向に対して垂直に熱融着してエンドシール部ESを形成する装置であり、上下方向にスライド可能な上部加熱部材561と、下部加熱部材562とを備えている。上部加熱部材561と下部加熱部材562とは、筒状包装体Tを挟んで相対向して配置されており、上部加熱部材561が降下して筒状包装体Tの所定位置を下部加熱部材562との間で押圧加熱することによりエンドシール部ESが形成された包装物Hを生成する。
【0029】
切断機構57は、エンドシール部ESが形成された包装物Hをエンドシール部ESで切断して包装物Hを個々に分散する装置であり、上下方向にスライド可能なスライドカッタ571と、固定カッタ572を備えている。スライドカッタ571と固定カッタ572とは、包装物Hを挟んで相対向して配置されている。
【0030】
包装物コンベア58は、切断機構57により切断された個々の包装物H(袋詰製品)を箱詰め作業等の後工程に供するために搬送装置である。
【0031】
シール検査装置1は、エンドシール部ESにおける内容物の噛み込みの有無を検出するために、エンドシール機構56と切断機構57との間に配置されている。
【0032】
この内容物包装装置5は、フィルム送出機構53により包装フィルムFを間欠送りしながら、内容物供給機構54からの包装フィルムF上への内容物Zの供給、センターシール機構55によるセンターシール部SSの形成、エンドシール機構56によるエンドシール部ESの形成、シール検査装置1によるエンドシール部ESにおける内容物噛み込みの検査、および、切断機構57による包装物Hの切断を連続的に行って、内容物Zが充填された袋詰製品Hを製造する。なお、シール検査装置1においてエンドシール部ESへの噛み込みが検知された場合、包装物コンベア58において正常品と区別されて回収されるようになっている。また、フィルム送出機構53による包装フィルムFの送り出し、内容物Zの包装フィルムF上への供給、センターシール部SSの形成、エンドシール部ESの形成、内容物噛み込み検査、エンドシール部ESの切断などのタイミングは、例えば、予め入力されたプログラムに従って、コンピュータ制御によって行うことが好ましい。
【0033】
次に、シール検査装置1の作動について説明する。まず、図3(a)に示すように図示しない駆動装置を動かして押圧部31の上部押圧部材311を降下させることにより、エンドシール機構56により形成されたエンドシール部ESを下部押圧部材312との間で挟み込む。この状態を維持して、2つのセンサー部32,33の各センサーヘッド32a,33aから上部押圧部材311の上面までの距離L1およびL2と、図3(b)に示すように上部押圧部材311と下部押圧部材312との間にエンドシール部ESが存在しない場合におけるセンサーヘッド32a,33aから上部押圧部材311の上面までの距離L01,L02とに基づいて、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離D1,D2を面間距離算出部344において算出する。
【0034】
次に、シール状況値算出部345において、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離D1,D2を加えてシール状況値を算出すると共に、判定部346において、予め設定されているしきい値と比較し、シール状況値がしきい値よりも小さければ正常品であると判断し、シール状況値がしきい値よりも大きい場合には内容物噛み込みが発生した異常品であると判断する。
【0035】
各センサー部32,33により計測した2つの面間距離D1,D2を加えることにより、エンドシール部ESへの内容物の噛み込みにより発生する上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離の変化を強調することができるので、微小な内容物の噛み込みが発生したとしても、これを精度よく検出することが可能になる。
【0036】
より具体的に、図5〜図7を用いて従来の検査方法と比較して説明する。図5(a)は、内容物噛み込みが生じていない正常品のエンドシール部ESを上部押圧部材311と下部押圧部材312とで挟み込み、押圧面間の面間距離を各センサー部32,33で計測している状態を表す概略構成断面図である。同様に、図5(b)は、微小な内容物Zの噛み込みが生じているエンドシール部ESを上部押圧部材311と下部押圧部材312とで挟み込み、押圧面間の面間距離を各センサー部32,33で計測している状態を表す概略構成断面図であり、図5(c)は、センターシール部SSがエンドシール部ESの一方の端部側に偏って形成された正常品のエンドシール部ESを上部押圧部材311と下部押圧部材312とで挟み込み、押圧面間の面間距離を各センサー部32,33で計測している状態を表す概略構成断面図である。図6(a)は、図5(a)に示す正常品において計測される上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離の定性的な関係図を示している。センターシール部SSの影響により、各センサー部32,33により計測される各面間距離は、図6(a)に示すように、一致しないのが一般的である。図6(b)は、図5(b)に示す異常品において計測される押圧面間の面間距離の定性的な関係図を、図6(c)は、図5(c)に示すセンターシール部SSが偏って形成された正常品において計測される押圧面間の面間距離の定性的な関係図を示している。また、図7(a)は、図6(a)において示される各センサー部32,33により計測した押圧面間の各面間距離を加えて算出したシール状況値を示しており、図7(b)または(c)も、図6(b)または(c)において示される各センサー部32,33により計測した押圧面間の各面間距離を加えて算出したシール状況値を示している。
【0037】
図5(b)に示すように、エンドシール部ESに内容物Zの噛み込みが発生した場合、上部押圧部材311が図5(a)に示す正常品の場合よりも上方に変位するため、この変位の影響が各センサー部32,33の計測値に現れ、各センサー部32,33により計測される押圧面間の面間距離は、図6(b)に示すように、図6(a)に示す正常品の場合よりもそれぞれ大きい値を示す。
【0038】
また、図5(c)に示すように、センターシール部SSが偏って形成された正常品においては、センターシール部SSの影響により、センターシール部SSが存在する側に配置されるセンサー部33により計測される押圧面間の面間距離が、図6(c)に示すように、図6(a)に示す正常品における面間距離よりも大きい値を示すが、センターシール部SSが存在しない側に配置されるセンサー部32で計測される押圧面間の面間距離は、図6(a)に示す正常品における面間距離よりも小さい値を示す。このことは、センターシール部SSが偏って形成されることにより、図5(c)に示すように、下部押圧部材312との間でエンドシール部ESを挟み込んで押圧する上部押圧部材311の傾きが、図5(a)に示す正常品を押圧する場合に比べて大きくなることに起因していると考えられる。
【0039】
ここで、従来のように、各センサー部32,33により計測した押圧面間の面間距離ごとに、予め設定されたしきい値を基準に内容物噛み込みの有無を判定する場合、例えば、図6(a)〜(c)の破線で示す値をしきい値として採用すると、図6(b)に示す微小な内容物Zの噛み込みが発生している異常品においては、各センサー部32,33により計測される押圧面間の面間距離がしきい値よりも小さいため、内容物噛み込みが発生していると判定されず、誤って正常品であると判断されることになる。一方、図6(c)に示すセンターシール部SSが偏って形成されている正常品においては、センサー部33により計測される押圧面間の面間距離がしきい値を超えているため、誤って異常品であると判断されることとなる。
【0040】
これに対し、各センサー部32,33により計測される押圧面間の各面間距離を加えたシール状況値に基づいて内容物噛み込みを検出する方法によれば、図7(b)および図7(c)に示すように、内容物噛み込みが発生している異常品におけるシール状況値が、センターシール部SSが偏って形成されている正常品におけるシール状況値よりも大きい値を示すこととなるので、しきい値を図7(a)〜(c)における破線に示すような値に設定すれば、内容物噛み込みが発生している異常品を正確に異常品であると判断することができると共に、センターシール部SSが偏って形成されている正常品を正確に正常品であると判断することが可能になる。
【0041】
このように本実施形態に係るシール検査装置1によれば、2つのセンサー部32,33により上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を2箇所で計測し、これらの面間距離を用いて、シール部への内容物Zの噛み込みにより発生する上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離の変化を強調するシール状況値を算出し、このシール状況値としきい値とを比較するので、微小な内容物Zの噛み込みを精度よく検出できると共に、微小な内容物Zの噛み込みが発生した異常品と、センターシール部SSがエンドシール部ESの一方の端部側に偏って形成された正常品とを精度よく判別することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、エンドシール部ESの両側における押圧面間の面間距離をそれぞれ計測し、これらの計測値を用いてシール状況値を算出するように構成されているため、エンドシール部ESへの内容物噛み込みが発生した異常品およびセンターシール部SSが偏って形成された正常品における、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離の各変化状況をシール状況値に顕著に現れるようにすることができるため、微小な内容物噛み込みの検知や、微小な内容物Zの噛み込みが発生した異常品とセンターシール部SSがエンドシール部ESの一方の端部側に偏って形成された正常品との区別をより精度よく行うことができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態に係るシール検査装置1を用いて袋詰製品のセンターシール部SSにおける内容物噛み込みを検知することもできる。
【0044】
また、本実施形態において、押圧部31の上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面311a,312aにそれぞれヒートシール用の加熱部を更に設ける構成を採用することもできる。このような構成を採用することにより、上部押圧部材311および下部押圧部材312によって筒状包装体Tを挟んで熱融着させてエンドシール部ESを形成すると同時に、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を各センサー部32,33によって計測することができる。この結果、このような構成を備えたシール検査装置1を図4に示すような内容物包装装置5に使用した場合において、当該内容物包装装置5を小型化することができると共に、袋詰製品を効率良く製造することが可能になる。また、エンドシール部ESを切断する切断機構を更に備えるような構成を採用することもできる。
【0045】
また、本実施形態においては、2つのセンサー部32,33を備え、上部押圧部材311と下部押圧部材312との押圧面間の面間距離を2箇所において計測し、これらの面間距離を加えたシール状況値と、予め設定したしきい値とを比較してエンドシール部ESにおける内容物噛み込みの有無を検知するように構成しているが、3つ以上のセンサー部により押圧面間の面間距離を計測して、これらの面間距離を加えたシール状況値と、このシール状況値に対応して設定されるしきい値とを比較して、内容物噛み込みを検知できるように構成してもよい。
【0046】
また、本実施形態において、シール状況値と比較されるしきい値を、複数の袋詰製品に対して算出されるシール状況値についての標準偏差に基づいて決定するように構成してもよい。例えば、図8において示すような定数と一次式とを組み合わせた回帰式によりしきい値を算出できるように構成することができる。図8においては、シール状況値の標準偏差値がσ1以下の場合には、しきい値をK1とし、標準偏差値がσ2以上の場合には、しきい値をK2とし、標準偏差値がσ1からσ2の範囲では、しきい値をK1とK2とを結ぶ一次式として設定している。なお、シール状況値の標準偏差値としきい値との回帰式は、図8に示す関係式に限定されず、定数、一次式又は二次式等の組み合わせにより適宜設定することができる。
【0047】
このような構成により、例えば、フィルム蛇行の発生により、センターシール部SSがエンドシール部ESの略中央部に形成される正常品、および、センターシール部SSがエンドシール部ESの一方の端部側に偏って形成された正常品が混在して、シール状況値のバラツキが大きくなったような場合であっても、このバラツキに対応した最適なしきい値を用いてエンドシール部ESの内容物噛み込みの検査を行うことができ、作業者によるしきい値の設定作業を省いた効率的なシール部の内容物噛み込み検査が可能になる。
【0048】
また、シール状況値の標準偏差に基づいてエンドシール部ESの密着性の良否を判断するようにしてもよい。シール状況値の標準偏差の値が、予め想定している範囲を超える値を示す場合には、エンドシール部ESのシール状態が悪化していると判断することができるので、シール状況値の標準偏差の値をモニターすることにより、エンドシール部ESにおけるシールの密着性の良否を客観的に判断することができ、エンドシール機構56のメンテナンスを行うタイミングを予測することができる。なお、シール状況値の標準偏差の値をモニターする代わりに、例えば、算出される標準偏差値がある一定の値を超えた場合に、赤色ランプを点滅させるような構成を採用してもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、各センサー部32,33が、ケーシング2の取付部23に固定されている構成を採用しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、図12(a)に示すように、下部押圧部材312の側面部に取り付ける構成を採用することもできる。このような構成を採用する場合、上部押圧部材311の側面部に、センサーヘッド32a,33aに対して対向配置される板状部材35,36を取り付ける。押圧面間の面間距離を算出するには、まず、エンドシール部ESを上部押圧部材311と下部押圧部材312とで挟み込んだ状態において、各センサーヘッド32a,33aから板状部材35,36までの距離を計測する。そして、この計測値から、エンドシール部ESを介さないで上部押圧部材311と下部押圧部材312とを押圧した場合におけるセンサーヘッド32a,33aから板状部材35,36までの距離を減じることにより行うことができる。


【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係るシール検査装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すシール検査装置のA−A断面図である。
【図3】図1に示すシール検査装置により押圧面間の面間距離を計測する方法を説明する説明図である。
【図4】図1に示すシール検査装置が使用される内容物包装装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれ、正常品、内容物噛み込みが生じている異常品、センターシール部が偏って形成された正常品のエンドシール部を上部押圧部材と下部押圧部材とで挟み込み、各センサー部で押圧面間の面間距離を計測している状態を表す概略構成断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、それぞれ、図5(a)に示す正常品、図5(b)に示す異常品、図5(c)に示すセンターシール部が偏って形成された正常品において、各センサー部で計測した押圧面間の面間距離の定性的な関係を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、図6(a)〜(c)の各場合における、各センサー部により計測された押圧面間の面間距離を加えて算出したシール状況値をそれぞれ示す図である。
【図8】シール状況値の標準偏差に基づいてしきい値を算出する際に使用する回帰式の一例を説明するための説明図である。
【図9】従来のシール部異常を検査する検査方法を説明するための説明図である。
【図10】袋詰製品のエンドシール部の断面形状を示す断面図である。
【図11】センターシール部が偏って形成された袋詰製品のエンドシール部の断面形状を示す断面図である。
【図12】図1に示すシール検査装置の変形例を示す概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 シール検査装置
3 検査装置本体
31 押圧部
311 上部押圧部材
312 下部押圧部材
311a,312a 押圧面
32,33 センサー部
34 管理装置
344 面間距離算出部
345 シール状況値算出部
346 判定部
ES エンドシール部
SS センターシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋詰製品におけるシール部への内容物噛み込みを検査するシール検査方法であって、
互いに対向する押圧面を有する一対の押圧部材で前記シール部を挟んで押圧する押圧ステップと、
前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測ステップと、
計測した複数の前記面間距離を用いて前記シール部のシール状況値を算出するシール状況値算出ステップと、
前記シール状況値と予め設定されるしきい値とを比較して内容物噛み込みの有無を判定する判定ステップとを備えるシール検査方法。
【請求項2】
前記シール状況値は、前記押圧面間の複数の面間距離を加えて算出される請求項1に記載のシール検査方法。
【請求項3】
前記計測ステップは、前記シール部の両側における前記押圧面間の面間距離をそれぞれ計測する請求項1又は2に記載のシール検査方法。
【請求項4】
前記しきい値は、複数の袋詰製品に対して算出される前記シール状況値についての標準偏差に基づいて決定される請求項1から3のいずれかに記載のシール検査方法。
【請求項5】
前記シール状況値の標準偏差に基づいて前記シール部の密着性の良否を判断する密着性判断ステップを更に備える請求項4に記載のシール検査方法。
【請求項6】
袋詰製品におけるシール部への内容物噛み込みを検査するシール検査装置であって、
互いに対向する押圧面を有し前記シール部を挟んで押圧する一対の押圧部材と、
前記押圧面間の面間距離を計測する複数の計測手段と、
計測した複数の前記面間距離を用いて前記シール部のシール状況値を算出するシール状況値算出手段と、
前記シール状況値と予め設定されるしきい値とを比較して内容物噛み込みの有無を判定する判定手段とを備えるシール検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−297099(P2007−297099A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126774(P2006−126774)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)