説明

シール用ゴム組成物の製造方法、シール用ゴム組成物およびシール

【課題】優れた耐ブリスタ性を示すシールが得られるシール用ゴム組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】未架橋ゴムおよび架橋剤を含むシール用ゴム組成物の製造方法であって、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物を70〜110℃の温度で混練する混練工程を有することを特徴とするシール用ゴム組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール用ゴム組成物の製造方法、シール用ゴム組成物およびシールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車載エアコン用コンプレッサーなどでは、主に、代替フロンであるHFC(ハイドロフルオロカーボン)−134aが冷媒として使用されている。そのため車載エアコン用コンプレッサーのシールには、HFC−134aと接触しても発泡割れ(ブリスタ)を起こしにくい耐ブリスタ性に優れたシールが使用される。
【0003】
HFC−134aに対する耐ブリスタ性に優れたシールに用いるシール用ゴム組成物としては、例えば、特許文献1〜7に記載されている。特許文献1〜7に記載されているように、このようなシール用ゴム組成物には、主に、HFC−134aに対する耐ブリスタ性に優れた水素化ニトリルゴム(HNBR)および/またはエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)が使用されている。特にEPDMは、HNBRよりもHFC−134aに対する耐ブリスタ性に優れており、さらに安価であるというメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2942093号公報
【特許文献2】特許第2942498号公報
【特許文献3】特許第2954878号公報
【特許文献4】特許第3344187号公報
【特許文献5】特許第3804413号公報
【特許文献6】特開2002−212362号公報
【特許文献7】特開2005−139949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HFC−134aには温暖化係数(GWP)が高いという欠点がある。そのため欧州連合(EU)では、温暖化防止のためにHFC−134aの段階的廃止が開始され、2017年以後は新車へのHFC−134aの使用が禁止される予定である。そのため低GWP冷媒の開発・研究が進められている。
【0006】
HFC−134aに代わる低GWP冷媒として、デュポン社が開発したHFO(ハイドロフルオロオレフィン)−1234yfが注目されている。しかし、EPDMを用いたゴム組成物は、HFC−134aに対して優れた耐ブリスタ性を発揮するが、HFO−1234yfに対する耐ブリスタ性が不充分である。
【0007】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、優れた耐ブリスタ性を示すシールが得られるシール用ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、未架橋ゴムおよび架橋剤を含むシール用ゴム組成物の製造方法において、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物の混練を70〜110℃の温度で行えば、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性が向上することを見出し、本発明を完成した。本発明の特徴は以下の通りである。
【0009】
[1] 未架橋ゴムおよび架橋剤を含むシール用ゴム組成物の製造方法であって、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物を70〜110℃の温度で混練する混練工程を有することを特徴とするシール用ゴム組成物の製造方法。
[2] さらに、前記混練工程の後に、前記混練工程の混練の温度よりも低い温度で未架橋ゴム組成物を混練する混練工程を有することを特徴とする上記[1]に記載の製造方法。
[3] 未架橋ゴム100質量部に対して1〜15質量部の金属酸化物を使用する上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 未架橋ゴム100質量部に対して20〜200質量部の補強剤を使用する上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
[5] 70〜110℃の温度での混練時間が、3〜20分である上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の製造方法。
[6] 未架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を含む上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の製造方法。
[7] 車載エアコン用コンプレッサーのシールに使用されるシール用ゴム組成物を製造する上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の製造方法。
[8] 前記車載エアコン用コンプレッサーが、HFO−1234yfを使用するものである上記[7]に記載の製造方法。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の製造方法によって得られたシール用ゴム組成物。
[10] 上記[9]に記載のシール用ゴム組成物を架橋することによって得られたシール。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によって製造されたシール用ゴム組成物から、耐ブリスタ性が向上したシールを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、未架橋ゴムおよび架橋剤を含むシール用ゴム組成物の製造方法であって、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物を70〜110℃の温度で混練する混練工程を有することを主要な特徴とする。以下では前記未架橋ゴム組成物の混練において「70〜110℃の温度範囲内で混練する工程」を「加熱混練工程」と略称することがある。加熱混練工程における混練の温度が70℃よりも低くても、また110℃よりも高くても、耐ブリスタ性が向上しない。加熱混練工程における混練の温度は、好ましくは80℃以上(より好ましくは90℃以上)、好ましくは100℃以下である。なお加熱混練工程における混練の温度は、混練中の未架橋ゴム組成物の温度である。
【0012】
製造するシール用ゴム組成物が熱安定性に劣る(例えば、揮発、熱分解しやすい)配合剤を含むものである場合、熱安定性に劣る配合剤を含まず、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物を70〜110℃の温度で混練する混練工程の後に、前記混練工程の混練の温度より低い温度(例えば熱安定性に劣る配合剤に係る問題が生じない温度以下)に冷却し、残りの配合剤を添加して、前記混練工程の混練の温度より低い温度(例えば熱安定性に劣る配合剤に係る問題が生じない温度以下)で混練する混練工程(以下「二次混練工程」と略称することがある)を、さらに有してもよい。例えば、二次混練工程で使用する配合剤を有機過酸化物系の架橋剤とした場合、二次混練工程の混練の温度は、架橋剤の熱分解開始温度以下(より好ましくは110℃未満、さらに好ましくは70℃未満)とするとよい。また、二次混練工程の混練の温度は好ましくは10℃以上である。二次混練工程の混練の温度が10℃以上であると、混練加工性が良好な硬さとなる傾向にある。なお、二次混練工程の温度の意味は、加熱混練工程の場合と同じである。
【0013】
加熱混練工程および二次混練工程の混練の温度は、未加硫ゴム組成物を混練してなる混練物を加熱することによって達成してもよく、または加熱せずに混練物のせん断に伴う発熱を利用することによって達成してもよい。例えばニーダーを用いる混練時に混練物に生じるせん断発熱を、利用することが出来る。
【0014】
加熱混練工程の混練の時間は、好ましくは3分以上(より好ましくは5分以上)、好ましくは20分以下(より好ましくは15分以下、さらに好ましくは12分以下)である。なお、加熱混練工程の混練の時間は、混練中の未架橋ゴム組成物の温度が上記範囲内である時間を意味する。
【0015】
二次混練の時間は、好ましくは3分以上(より好ましくは5分以上)、好ましくは20分以下(より好ましくは15分以下)である。二次混練の時間の意味は、加熱混練の場合と同じである。
【0016】
混練は、オープンロール、ニーダー、インターミックスまたはバンバリーミキサなどを用いて行うことができる。これらの中でオープンロールおよびニーダーが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法で用いる未架橋ゴムとしては、例えば、水素化ニトリルゴム(HNBR)およびエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などを挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。未架橋ゴムは、好ましくはEPDMを含み、より好ましくは1種または2種以上のEPDMである。
【0018】
EPDMのジエン成分(以下「第三成分」と称することがある)は、好ましくはエチリデンノルボルネン(ENB)またはジシクロペンタジエン(DCPD)であり、より好ましくはENBである。EPDM中の第三成分の含有量は、好ましくは3質量%以上(より好ましくは4質量%以上)、好ましくは15質量%以下(より好ましくは8質量%以下)である。またEPDM中のエチレン含有量は、好ましくは40質量%以上(より好ましくは50質量%以上)、好ましくは70質量%以下(より好ましくは60質量%以下)である。
【0019】
EPDMのムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は、好ましくは20以上(より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上)、好ましくは110以下(より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下)である。ML1+4(125℃)が20以上であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールにおいて耐ブリスタ性の向上が顕著となる傾向があり、ML1+4(125℃)が30以上であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性がHFC−134aおよびHFO−1234yf用シールに適合するレベルに向上する傾向がある。一方ML1+4(125℃)が100以下であると、ゴム組成物の流動性が向上し、シール製造時の加工性が向上する傾向がある。ここでML1+4(125℃)は、125℃でラージローターを用い、予熱1分および回転開始後4分にムーニー粘度計で測定したムーニー粘度である。
【0020】
未架橋ゴムがEPDMのみからなる場合、上記好適範囲のムーニー粘度を有するEPDMの含有量は、未架橋ゴム中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。EPDMの含有量が、未加硫ゴム中60質量%以上であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性がHFC−134aおよびHFO−1234yf用シールに適合する高いレベルに向上する傾向がある。
【0021】
架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤は、硫黄系の架橋剤でも、有機過酸化物系の架橋剤でもよく、好ましくは、有機過酸化物系の架橋剤である。有機過酸化物系の架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス−t−ブチルパーオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキサイド、ジ(t−ブチルパーオキシ)ジ−イソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシルヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが、これらを用いて製造したシール用ゴム組成物から得られるシールにおいて耐ブリスタ性の向上が顕著となる傾向があるため好ましく、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが、これらを用いて製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性がHFC−134aおよびHFO−1234yf用シールに適合する高いレベルに向上する傾向があるため、より好ましい。また、混練時の作業性向上のため、無機物(例えば炭酸カルシウム、シリカなど)に有機過酸化物系の架橋剤を含浸した粉体(架橋剤担持体ともいう)を用いても良い。この場合、架橋剤の配合量は、前記粉体中の有機過酸化物系の架橋剤の量に相当する。
【0022】
架橋剤の使用量(2種以上使用する場合はその合計量)は、架橋剤の種類により異なるが、例えば、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上(より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上)、好ましくは10質量部以下(より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下)である。架橋剤の使用量が未架橋ゴム100質量部に対して0.5〜10質量部であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの圧縮永久ひずみが向上し、且つ耐ブリスタ性の向上が顕著となる傾向にある。
【0023】
本発明の製造方法では金属酸化物を用いても良い。金属酸化物は、好ましくはアルカリ性金属酸化物であり、より好ましくは酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウムであり、さらに好ましくは酸化亜鉛である。金属酸化物を使用する場合、その量は、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは15質量部以下(より好ましくは10質量部以下)である。金属酸化物の配合量が未架橋ゴム100質量部に対して1〜15質量部であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの圧縮永久ひずみおよび耐ブリスタ性が向上する傾向にある。
【0024】
補強剤としては、天然ケイ酸(タルク、ろう石、カオリンクレー、焼成クレーなど)、ケイ酸塩類、炭酸塩類(重質炭酸カルシウム、軟質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、グラファイト、黒鉛など)などが挙げられる。これらの中でカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、SAFカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、HAFカーボンブラック、MAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、GPFカーボンブラック、SRFカーボンブラックなどのファーネスブラック、FTカーボンブラック、MTカーボンブラックなどのサーマルブラック、アセチレンブラックまたはチャネルブラックなどが挙げられる。これらの中でファーネスブラックが好ましく、SRF、FEFがより好ましく、SRFがさらに好ましい。補強剤を使用する場合、その量は、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは20質量部以上(より好ましくは30質量部以上)、好ましくは200質量部以下(より好ましくは150質量部以下)である。補強剤の配合量が未架橋ゴム100質量部に対して20〜200質量部であると、製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性が向上する傾向にある。
【0025】
本発明の製造方法では、未架橋ゴムおよび架橋剤、並びに必要に応じて金属酸化物および補強剤を含む未架橋ゴム組成物に、さらに、その他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤は、本発明の効果が阻害されない限り、ゴム分野で公知のあらゆるものを使用することができる。その他の添加剤としては、例えば、共架橋剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、安定剤、カップリング剤などが挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、発泡剤を添加すると、製造したシールがスポンジゴムとなってしまう。スポンジゴムは、ソリッドゴム(非発泡体ゴム)と比較すると、それから得られるシールの密封性や耐ブリスタ性がはるかに劣るものとなる。そのため、本発明の製造方法では、発泡剤は添加しないことが好ましい。
【0026】
老化防止剤としては、例えばアミン系老化防止剤(アミン−ケトン系老化防止剤(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体など)、芳香族第二級アミン系老化防止剤(4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなど)など)、フェノール系老化防止剤(モノフェノール系老化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなど)、ビスフェノール系老化防止剤(2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)など)など)、ベンズイミダゾール系老化防止剤(4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなど)などが挙げられる。これらの中で、アミン系老化防止剤が好ましく、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンがより好ましい。老化防止剤を使用する場合、その量は、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上(より好ましくは1質量部以上)、好ましくは5質量部以下(より好ましくは3質量部以下)である。
【0027】
加工助剤としては、例えばステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ステアリン酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)、ステアリルアミン、低分子量ポリエチレングリコール、高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中で、ステアリン酸が好ましい。加工助剤を使用する場合、その量は、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上(より好ましくは0.3質量部以上)、好ましくは5質量部以下(より好ましくは3質量部以下)である。
【0028】
上記混練によって得られた本発明のシール用ゴム組成物を架橋することによって、シールを製造することができる。架橋は、該分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、圧縮成形機または加硫プレスなどを用いて、混練物をプレス架橋(加硫)してもよい。プレス架橋の温度は、好ましくは120〜200℃(より好ましくは150〜185℃)であり、時間は、好ましくは2〜30分(より好ましくは10〜20分)である。
【0029】
本発明の製造方法によって得られたシール用ゴム組成物から、耐ブリスタ性が向上したシールが得られる。従って、本発明は、上記製造方法によって得られたシール用ゴム組成物、および該シール用ゴム組成物を架橋してなるシールも提供する。本発明のシール用ゴム組成物を架橋してなるシールを、車載エアコン用コンプレッサーのシールとして使用することが好ましい。
【0030】
耐ブリスタ性は下記実施例に記載の方法によって測定することができる。本発明の製造方法から製造したシール用ゴム組成物から得られるシールの耐ブリスタ性について、HFC−134aおよびHFO−1234yfのいずれに対しても、ブリスタの個数(最大値)は、好ましくは3個以下、より好ましくは0個である。
【0031】
本発明のシールの硬さ(タイプA)は、好ましくは60以上(より好ましくは65以上)、好ましくは85以下(より好ましくは75以下)である。特に硬さが75以下であるシールは、機器本体に組み込みやすい。また本発明のシールの伸びは、好ましくは100%以上、より好ましくは180%以上、さらに好ましくは200%以上である。伸びが100%以上であるシールは機器装着時に破断する虞が低く、180%以上であるシールは、機器本体に装着性が良好であり、200%以上であるシールは、機器本体に容易に装着することができる。本発明のシールの100%モジュラスは、好ましくは3MPa以上であり、引張強さは、好ましくは15MPa以上、より好ましくは18MPa以上であり、圧縮永久ひずみは、好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下である。なお、これら物性の値は、いずれも、下記実施例に記載の方法によって測定した値である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0033】
1.使用原料
実施例で使用した原料を以下に記載する。
【0034】
(1)EPDM(未架橋ゴム)
・JSR社製「EP27」(ML1+4(125℃):105、第三成分:ENB、第三成分含有量:15質量%、エチレン含有量:57質量%)
・三井化学社製「EPT3045」(ML1+4(125℃):25、第三成分:ENB、第三成分含有量:4.5質量%、エチレン含有量:56質量%)
・三井化学社製「EPT3070」(ML1+4(125℃):47、第三成分:ENB、第三成分含有量:4.5質量%、エチレン含有量:58質量%)
・三井化学社製「EPT1070」(ML1+4(125℃):48、第三成分:DCPD、第三成分含有量:4.0質量%、エチレン含有量:57質量%)
・ダウ・ケミカル社製「ノーデルIP4640」(ML1+4(125℃):40、第三成分:ENB、第三成分含有量:4.9質量%、エチレン含有量:55質量%)
【0035】
(2)架橋剤担持体
・アルケマ吉富社製「ルペロックス101XL」(炭酸カルシウム:シリカ=50質量%:50質量%の混合物に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを45質量%の量で含浸させた粉体、ルペロックス101XLの配合量の45質量%が架橋剤の配合量に相等する):架橋剤担持体
【0036】
(3)その他の添加剤
(i)老化防止剤
・大内新興化学工業社製「ノクラック224S」(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
(ii)補強剤
・東海カーボン社製「シーストG−S」(SRFカーボンブラック)
・東海カーボン社製「シーストG−SO」(FEFカーボンブラック)
(iii)金属酸化物:酸化亜鉛
(iv)加工助剤:ステアリン酸
【0037】
2.シール用ゴム組成物の製造
下記表1に示す量で原料を配合して未架橋ゴム組成物を調製し、オープンロールを用いてこれを下記表2および3に示す温度および時間で混練することによって、シール用ゴム組成物の製造を調製した。
【0038】
なお、シール用ゴム組成物No.5は、架橋剤以外の原料を100℃で5分間オープンロールで混練し、次いで23℃まで下げてから、架橋剤を添加して、50℃以下で20分間、オープンロールで混練することによって調製した。
【0039】
3.シール物性測定用シートの製造
得られたシール用ゴム組成物を、プレス圧型機を用いて170℃および表2および3に示す時間でプレス架橋することによって、シール物性測定用シートを調製した。
【0040】
4.シールの物性測定
得られたシール物性測定用シートの物性を、以下のようにして測定した。結果を下記表2および3に示す。
【0041】
(1)硬さ
得られたシール物性測定用シートから直径25mmで厚さ6mmの円柱状試験片を作製し、JIS K 6253:1997におけるデュロメーター硬さ(タイプA)試験により測定した。
(2)100%モジュラス
得られたシール物性測定用シートから、JIS K 6251:2010におけるダンベル状3号形の試験片を作製し、JIS K 6251:2010における所定伸び引張応力試験により、伸び100%時の引張応力を測定した。
(3)引張強さ
得られたシール物性測定用シートから、JIS K 6251:2010におけるダンベル状3号形の試験片を作製し、JIS K 6251:2010における引張強さ試験により、引張強さを測定した。
(4)伸び
得られたシール物性測定用シートから、JIS K 6251:2010におけるダンベル状3号形の試験片を作製し、JIS K 6251:2010における切断時伸び試験により、伸びを測定した。
(5)比重
得られたシール物性測定用シートから、50×50mm角で厚さ2mmの試験片を作製し、ASTM D297−93(2006)により、比重を測定した。
(6)圧縮永久ひずみ
得られたシール物性測定用シートからJIS K 6262:2006における大型試験片を用いて、JIS K 6262:2006における圧縮永久ひずみ試験により、圧縮永久ひずみを測定した。圧縮条件を150℃×70時間とし、圧縮率を25%とした。
(7)耐ブリスタ性
得られたシール物性測定用シートからシート状試験片(長さ:50mm、幅:20mm、厚さ:2mm)を作製した。この試験片を、HFC−134aまたはHFO−1234yfに40℃で24時間浸漬した後、取り出して、オーブン中で、150℃で1時間熱処理した。熱処理後の試験片の表面に発生したブリスタの個数を目視で計数した。この試験を3回行った。3回の試験中、ブリスタの個数の最大値が3個以下のものを耐ブリスタ性に優れると評価した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法によれば、耐ブリスタ性が向上したシールが得られるシール用ゴム組成物を、その配合組成を変えることなく製造することができる。このシールは、車載エアコン用コンプレッサーのシールとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未架橋ゴムおよび架橋剤を含むシール用ゴム組成物の製造方法であって、未架橋ゴムを含む未架橋ゴム組成物を70〜110℃の温度で混練する混練工程を有することを特徴とするシール用ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記混練工程の後に、前記混練工程の混練の温度よりも低い温度で未架橋ゴム組成物を混練する混練工程を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
未架橋ゴム100質量部に対して1〜15質量部の金属酸化物を使用する請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
未架橋ゴム100質量部に対して20〜200質量部の補強剤を使用する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
70〜110℃の温度での混練時間が、3〜20分である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
未架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
車載エアコン用コンプレッサーのシールに使用されるシール用ゴム組成物を製造する請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記車載エアコン用コンプレッサーが、HFO−1234yfを使用するものである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたシール用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のシール用ゴム組成物を架橋することによって得られたシール。

【公開番号】特開2013−95906(P2013−95906A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242687(P2011−242687)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】