説明

ジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール、その製造方法およびポリエチレングリコール修飾リポソーム

【課題】2本のPEG鎖を有する、ジアシルグリセロールと結合した、高純度でリポソームの安定性を向上させる、ポリエチレングリコール誘導体を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール。
(式(1)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。Rは炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。Xは分岐型ポリエチレングリコールとジアシルグリセロールのリンカー部位であり、式(2)で表される。)
(式(2)中、Yはエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合またはカーボネート結合を表す。l、mは0〜6の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール、その製造方法およびポリエチレングリコール修飾リポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームはリン脂質から構成される脂質二重膜によって形成される、数10nm-数100nmのカプセルであり、その中に薬剤を安定に内包することができる。このようなリポソームの一つにその表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾させたPEGリポソームがある。PEGリポソームは、表面のPEG鎖が形成する水和層とPEG鎖自体の立体障害により、オプソニンのような血清たんぱくや、単核細胞系に属する細胞との相互作用が抑制され、高い血中滞留性を実現することができる。特に高い血中滞留性が要求される抗がん剤のデリバリーにおいては、PEGリポソームであるDOXIL(登録商標)が上市されており、その有用性が実証されている。
【0003】
一方、近年、研究が盛んに行われているsiRNA等の核酸デリバリー分野でもPEG化リポソームは有力なキャリアの一つとして考えられている。siRNAは病原タンパク質の産生を抑制する核酸医薬品であり、副作用が少なく、大量合成が容易であるという利点があり、次世代の高機能医薬品として期待が高まっている。しかし、siRNAは体内の酵素によって、血中で容易に分解されるため、siRNA単独の使用は困難であり、siRNAをデリバリーするDDS技術が不可欠である。siRNAのリポソームによるデリバリーにおいては、一般に核酸を安定化させるために、リポソームにカチオン性脂質等を過剰量添加し核酸と静電的なコンプレックスを形成させ、更に細胞への取り込みを増大させるために、コンプレックス全体での電荷をカチオン性としている。
【0004】
PEGリポソームの構成材料の1つとしては、リン脂質PEGが使われるが、これはアニオン性を示すリン酸基を有しており、薬物の種類によっては内包に悪影響を与えることがある(特許文献1、非特許文献1)。特に上記のsiRNAを含む、全体としてカチオン性を示すコンプレックスの内包には望ましくない場合があり、そのため電荷を持たない脂質PEGが注目され、この脂質PEGをリポソームの構成材料に用いたときにリポソームが優れた安定性、体内動態を示すという報告がなされている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6586001号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】THE JOURNAL OF PHARMACOLOGY ANDEXPERIMENTAL THERAPEUTICS Vol.328 No.1 321-330
【非特許文献2】Molecular Therapy Vol.17 No.5 872-879
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PEG鎖1本の非電荷脂質PEGはsiRNAのキャリアとして実績を残しているが、リポソームの安定性を含め、未だ幾つかの課題が残っている。特にリポソームの安定性を更に向上させることは、医療業での利用上、特に重要である。
【0008】
本発明の課題は、2本のPEG鎖を有する、ジアシルグリセロールと結合した、高純度で、かつリポソームの安定性を向上させる、ポリエチレングリコール誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開発者らは、分岐型ポリエチレングリコールを用いることにより、直鎖型より高いリポソームの安定性を有する、ジアシルグリセロールと結合したポリエチレングリコールを開発した。
【0010】
更には分岐型ポリエチレングリコールの導入に、特徴的な構造を有する、ジオール化合物からエチレンオキサイド付加させることを主な特徴とする製法を用いることにより、安定なエーテルリンカーを有しかつ非常に高純度な、ジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール誘導体を開発した。
【0011】
すなわち、本発明は、式(1)で表されるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールに係るものである。
【化1】



(式(1)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
は炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。
Xは分岐型ポリエチレングリコールとジアシルグリセロールのリンカー部位であり、式(2)で表される。
【化2】



(式(2)中、Yはエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合またはカーボネート結合を表す。l、mは0〜6の整数である。)
【0012】
また、本発明は、後述の工程(A)、(B)、(C)および(D)を含むことを特徴とする、式(3)で表されるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールの製造方法に係るものである。
【化3】



(式(3)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
は炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の技術によって得られた、ジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール誘導体は、ジアシルグリセロールと結合した直鎖型ポリエチレングリコールと比較して、有意に高い、リポソームの安定性を実現した。
【0014】
また、本分岐型ポリエチレングリコール誘導体は、DDS素材として望ましい極めて高い純度で製造することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明におけるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールとは、2本のポリエチレングリコール鎖を有する構造とジアシルグリセロールを有する構造がリンカーを介して結合した化合物であり、直鎖型のポリエチレングリコールと比較して、安定性に優れたリポソームを作製することができる。
【0016】
上記のジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールは前記式(1)で表される。
【0017】
Xは、分岐型ポリエチレングリコールとジアシルグリセロールのリンカー部位であり、前記式(2)で表される。
【0018】
Yは、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合またはカーボネート結合である。最も好ましくは化学的に安定なエーテル結合である。l、mはリンカー部位のアルキル基の炭素数を表し、0≦l、m≦6を満たす。好ましくはl、m≦3であり、最も好ましくはl=0、m=0である。
【0019】
式(1)中のRは、炭素数1〜7の炭化水素基を表す。Rの炭素数は、4以下が更に好ましく、1以下が一層好ましい。炭化水素基は、好ましくはアルキル基、芳香族基であり、特に好ましくはアルキル基である。具体的な炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、ベンジル基が挙げられる。最も好ましくはメチル基である。
【0020】
式(1)中のRは、炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。Rの炭素数は、13〜17が好ましく、17が更に好ましい。Rは、飽和及び不飽和炭化水素であってよく、また直鎖又は分岐鎖であってよい。また、Rは脂肪酸RCOOH由来のものであるが、RCOとしては、飽和及び不飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトイレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好ましい。
【0021】
(中間体の合成)
本発明の中間体は次のように製造できる。まず、ジグリセリンとアセトンを反応させ、有機溶剤と水を用いた抽出精製により、式(4)で表される1,2-イソプロピリデンジグリセリンを得ることができる。この化合物は公知である。
【化4】



【0022】
次いで、工程(A)〜(C)によって中間体を得る。
工程(A): ソジウムメチラート、金属ナトリウム、金属カリウムまたはt-ブトキシカリウムを触媒とし、式(4)で表される化合物にエチレンオキサイドを付加し、下記式(5)のポリエチレングリコール誘導体を得る。
【化5】



(式(5)において、nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
【0023】
このようにエチレンオキシド付加重合反応を用いることで、高収率で、かつカラム精製することなく、工業的に適した方法で、高純度の分岐型ポリアルキレングリコール誘導体を製造することができる。
このエチレンオキサイド付加重合体は次のような方法で製造することができる。トルエン、もしくは無溶媒中、金属ナトリウムや金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム-t-ブトキシドのアルカリ条件下、オキシエチレンを重合させて得ることができる。
【0024】
工程(B): 式(5)のポリエチレングリコール誘導体中のエチレンオキサイド基末端水酸基の水素原子を炭化水素基に置換することによって、下記式(6)のポリエチレングリコール誘導体を得る。
【化6】


(式(6)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
【0025】
ここで、例えば、Rがメチル基である化合物は、式(8)の構造式を有する。
【化7】



【0026】
工程(C): 式(6)のポリエチレングリコール誘導体をpH1.0-3.0で酸加水分解し、式(7)のポリエチレングリコール誘導体を中間体として得る。
【化8】



(式(7)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
【0027】
すなわち、環状アセタール基の脱保護は、酢酸、リン酸、塩酸、硫酸等の酸にてpH1.0-3.0に調整して水溶液中で反応させ、式(7)で表される化合物を得る。脱保護時のpHが低すぎるとポリアルキレングリコール鎖の分解、グリセロールの2,3位のエーテル結合の切断によるポリアルキレングリコール鎖の遊離が起きる。
【0028】
ここで、例えば、Rがメチル基である中間体は、式(9)の構造式を有する。
【化9】



【0029】
(中間体から式(3)の化合物の合成)
次の工程(D)によって、式(7)のポリエチレングリコール誘導体中の末端水酸基と脂肪酸とを脱水縮合させ、式(3)の分岐型ポリエチレングリコールを得る。
すなわち、2個の水酸基を有する式(7)で表される化合物と脂肪酸を、触媒を用いて縮合させて、式(3)で表されるジアシルグリセロールがエーテルを介して結合した分岐型ポリエチレングリコール誘導体が得られる。
【0030】
用いる脂肪酸RCOOHとしてはカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトイレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和及び不飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸が挙げられる。
【0031】
(リポソーム)
本発明の脂質PEG誘導体を含むリポソームは、核酸、医薬、生理活性物質を内包させることができる。これらの核酸、医薬の種類は特に限定されていない。本発明の脂質PEGのリポソームへの配合量は遺伝子の発現や医薬を発効させるのに十分な量であればよい。
【0032】
核酸としては、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド等が挙げられる。例えば、siRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、酵素、サイトカイン等がある。
【0033】
核酸を内包する場合の1つの例示的な実施形態において、リポソームは、本発明の脂質PEG誘導体と、中性脂質(例えば、ジアシルフォスファチジルコリン)と、ステロール(例えば、コレステロール)と、カチオン性脂質(例えば、アミン性脂質)との混合物を含む。
【0034】
本発明の脂質PEG誘導体を含むリポソームの形態は特に限定されないが、例えば、脂質混合物をクロロホルム等の有機溶剤に溶解し、エバポレーターによって脱溶剤し乾固させた形態や、脂質混合物を水系溶剤に分散した形態、水系溶剤に分散したリポソームを凍結乾燥させた形態が挙げられる。
【0035】
水系溶剤を使用するときは、単なる水を用いてもよいし、少量のアルコール等を含む混合溶剤であってもよい。好ましくは、局方注射用水、蒸留水等が用いられる。この時、水系溶剤に生理活性物質や、タンパク質、緩衝物質や各種の塩、血漿等を溶解させ、溶液状としたものであってもよい。
【0036】
脂質混合物を水系溶剤に分散した形態としては、特に限定されないが、分散液をホモジナイザーや高圧噴射乳化機等を使用して乳化させたり、エクストラルーダーやリポナイザー等により粒径の揃ったリポソームとして得ることが出来る。
【0037】
脂質混合物と核酸、医薬との混合物が水系溶媒に分散した形態の製造方法としては公知の方法で行うことができ、適宜選択することができる。製造方法としてはこれらに限定されないが、例えば、脂質混合物と核酸、医薬の混合物を水系溶剤に添加し、ホモジナイザー等の乳化機、超音波乳化機、高圧噴射乳化機等により乳化させる方法、脂質乾燥物に核酸、医薬を含む水系溶剤を添加して乳化する方法、水系溶媒に分散したリポソームに核酸、医薬を含む水系溶媒を添加する方法、水系溶剤に分散させたリポソームに核酸、医薬を含む水系溶媒を添加する方法が挙げられる。
【0038】
リポソームの大きさ(粒子径)を制御したい場合には、さらに孔径のそろったメンブランフィルターを用いて、高圧力下でエクストルーダー等を使用して押し出し濾過等を行ってもよい。また、リポソームの粒子径は、50〜500nmが好ましく、50〜300nmが更に好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中の化合物の分析、同定には1H NMR、GPC及びTOF-MSを用いた。
【0040】
<1H-NMRの分析方法>
1H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM-ECP400、JNM-ECP600を用いた。NMR測定値における積分値は理論値である。
【0041】
<GPCの分析方法>
GPC分析では、GPCシステムとしてSHODEX GPC STSTEM-11を用い、下記条件にて測定を行った。
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min
カラム:SHODEX KF-801, KF-803, KF-804(I.D. 8mm×30cm)
カラム温度:40℃
検出器:RI ×8
サンプル量:1mg/g,
100μL リファレンスにはトリエチレングリコール、PEG4000、PEG20000を用いた。
GPC測定値には、高分子量不純物と低分子不純物を、溶出曲線の変曲点からベースラインを垂直に切って除いたメーンピークの解析値、及び溶出開始点から溶出終了点までのピーク全体での解析値を併記した。
Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量、Mpはピークトップ分子量を表す。
【0042】
<TOF-MSの分析方法>
TOF-MS分析では、Bruker製 autoflexIII)を用いた。サンプルのマトリックスに1,8,9-Anthracenetriol、リファレンスにAngiotensin II[M+H]1+
Mono 分子量1046.5418、Somatostain
28[M+H]1+Mono 分子量3147.4710を用いた。
【0043】
(実施例1)
式(1)の化合物の合成(R1=メチル基、R=炭素数17の炭化水素、1本当たりのポリエチレングリコール鎖の分子量約1000の場合)
【0044】
(式(4)の化合物の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した3000mL丸底フラスコへジグリセリン807g、アセトン1614g(5.7mol eq.)、トリフルオロ酢酸(1mol%)を加え、25℃で3時間反応させた。反応後、トリエチルアミン(5mol%)で中和を行い、アセトンを濃縮した。その後、ヘキサン(1600g)水(1600g)を添加し、ヘキサン/水抽出をした。ヘキサン層を除去し、新たなヘキサン(1600g)を加え、ヘキサン/水抽出をした。この抽出を合計5回行った。ヘキサン層を除去した後、水層に食塩533gを溶解させ、クロロホルム(1600g)を加え、25%食塩水/クロロホルム抽出をした。水層を除去し、新たな25%食塩水を加え、25%食塩水/クロロホルム(1600g)抽出をした。この抽出を合計5回行った。クロロホルム層を濃縮した。濃縮液に窒素を吹き込みながら40℃にて減圧乾燥をし、式(4)で表される1,2-イソプロピリデンジグリセリン147g(モル収率 27%)を得た。
1H-NMR(DMSO, 内部標準TMS) δ(ppm):
1.26, 1.31(3H, 3H, s C(CH3)2)
3.30−3.66(8H, m C(CH3)2OCHH,
-CH2-O-CH2-, CH2OH,
CH(OH))
3.96-3.98(1H, t, C(CH3)2OCHH)
4.14-4.17(1H, m, C(CH3)2OCH)
4,46-4.48(1H, t, CH2OH)
4.62-4.63(1H, m, CH(OH))
【0045】
(工程(A))
1,2-イソプロピリデンジグリセリン 50g(0.24mol)、脱水トルエン202g、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液3.56g(0.018mol, 7.5mol%)を5Lオートクレーブに仕込み、60℃に昇温した後、窒素を吹き込みながら、真空度を100mHgにし、脱メタノールを30分間行った。系内を窒素置換後、100℃に昇温し、 0.5MPa以下の圧力でエチレンオキサイド499g(11.3mol)を加えた後、2時間30分間反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキサイドガスを除去後、70℃に冷却して、下記式(10)の化合物を得た。
【0046】
【化10】



1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS) δ(ppm):
1.36, 1.41(3H, 3H, s C(CH3)2)
3.44-3.75(200H, m, -CH2O(CH2CH2O)nH, CHO(CH2CH2O)nH,
C(CH3)2OCHH
-CH2OCH2-),
4.03-4.06(1H, t, C(CH3)2OCHH),
4.25(1H, m, C(CH3)2OCH)
GPC分析;
<メインピーク>
数平均分子量(Mn):1996
重量平均分子量(Mw):2058
多分散度:1.031
ピークトップ分子量(Mp):2067
<ピーク全体>
数平均分子量(Mn):1922 重量平均分子量(Mw):2019

多分散度:1.051
TOF-MS 2312.9
【0047】
(工程(B))
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean-stark管、及び冷却管を付した500mL丸底フラスコへ上記式(10)の化合物を100g(43mmol)、2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール0,10g(0.45mmol)、トルエン300gを仕込み、加熱還流させ、水分を共沸除去した。40℃に冷却後、トリエチルアミン15.1g(149mmol)、メタンスルホン酸クロリド14.0g(122mmol)を加え、40℃にて3時間反応させた。その後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液50.4g(260mmol)加え、13時間反応させた。続いて、窒素を吹き込みながら減圧にして脱メタノールを40℃にて行った。トルエン100g、2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール0,1g(0.45mmol)を加えた後、ろ過を行った。トルエンを濃縮後、500mL丸底フラスコに移送し、フラスコ内のトルエン量が約300gになるまで、加熱還流させ、水分を除去した。40℃に冷却後、トリエチルアミン15.1g(149mmol)、メタンスルホン酸クロリド14.0g(122mmol)を加え、40℃にて3時間反応させた。その後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液50.4g(260mmol)加え、4時間反応させた。続いて、窒素を吹き込みながら減圧にして脱メタノールを40℃にて行った。トルエン100g、2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール0,10g(0.45mmol)を加えた。25%食塩水500gを用いて、50℃にてトルエン/水抽出をした。この水洗を合計2回行った。トルエン層をろ過後、濃縮をした。内容量が600gになるようにトルエンを添加し、10℃以下に冷却をした後にヘキサン600gを添加し、10℃以下にて晶析をした。結晶をろ別後、ヘキサン800g、,2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール0.16g(0.73mmol)を加え、結晶を洗浄し、下記式(11)の化合物84g (収率84%)を得た。
【0048】
【化11】



1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS) δ(ppm):
1.36, 1.41(3H, 3H, s C(CH3)2)
3.38(6H, s, -CH2O(CH2CH2O)nCH3, -CHO(CH2CH2O)nCH3,)
3.44-3.75(200H,m, -CH2(CH2CH2O)nCH3, CHO(CH2CH2O)nCH3,
C(CH3)2OCHH
-CH2OCH2-),
4.03-4.06(1H, t, C(CH3)2OCHH),
4.23-4.26(1H, m, C(CH3)2OCH)
GPC分析;
<メインピーク>
数平均分子量(Mn):2119 重量平均分子量(Mw):2181
多分散度:1.029 ピークトップ分子量(Mp):2181
<ピーク全体>
数平均分子量(Mn):2108 重量平均分子量(Mw):2232

多分散度:1.059
【0049】

(工程(C))
1Lビーカーに上記式(11)の化合物40g(17mmol)、注射用水500gを入れ、式(11)の化合物を溶解させた後、85%リン酸水溶液を添加し、溶液のpHを1.8に調整した。続いて、昇温して50℃にて1時間30分間、酸加水分解を行った。加水分解後、400g/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH7.0に中和した。クロロホルム200gを添加し、水/クロロホルム抽出をした。この抽出を2回行った。その後、クロロホルム層を濃縮し、トルエン200gに溶解し、硫酸マグネシウム12gを添加し、25℃にて脱水を行った。ろ過後、容器を120gのトルエンで洗浄後、トルエン溶液を10℃以下まで冷却した。続いてヘキサン240gを添加し、10℃以下にて晶析を行った。結晶をろ別後、ヘキサン240gを加え、結晶を洗浄し、下記式(12)の化合物34g(収率85%)を得た。
【0050】
【化12】



1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS) δ(ppm):
δ3.38(6H, s, -CH2O(CH2CH2O)nCH3, -CHO(CH2CH2O)nCH3,)
3.49-3.85(202H, m, -CH2O(CH2CH2O)nCH3, CHO(CH2CH2O)nCH3,
-CH2OCH2-, CH2OH-CH(OH
)-),
GPC分析;
<メインピーク>
数平均分子量(Mn):2062 重量平均分子量(Mw):2120
多分散度:1.028 ピークトップ分子量(Mp):2115
<ピーク全体>
数平均分子量(Mn):2070 重量平均分子量(Mw):2178

多分散度:1.052
【0051】
(工程(D))
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、及び冷却管を付した100mL丸底フラスコへステアリン酸4.0g(14mmol)、トルエン32gを仕込み、40℃まで昇温させ、ステアリン酸を溶解させた。続いて、ジシクロへキシルカルボジイミド2.3g(11mmol)、上記式(12)の化合物8.0g(3.5mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン0.425g(3.5mmol)を添加した後、60℃に昇温した。60℃にて1時間30分間反応させた後、ろ過、濃縮を行った。その後、アセトニトリル40gに溶解し、ヘキサン160gを添加し、ヘキサン/アセトニトリル抽出を行う。ヘキサン層を除去して、新たなヘキサン160gを添加し、再度へキサン/アセトニトリル抽出を行う。この抽出を合計5回行う。アセトニトリル層を濃縮した後、酢酸エチル45gに溶解し、吸着剤「キョワード700」(協和化学工業株式会社製)にてN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを吸着処理により除去した。ろ過後、濃縮を行い、下記式(13)の化合物7.2g(モル収率73%)を得た。
【0052】
【化13】



1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS) δ(ppm):
δ0.86-0.90(6H, t, -CHCO2CH2CH2(CH2)14CH3,
-CH2CO2CH2CH2(CH2)14CH3),
1.15-1.35(56H, m, -CHCO2CH2CH2(CH2)14CH3,
-CH2CO2CH2CH2(CH2)14CH3),
1.55-1.65((4H, m -CHCO2CH2CH2(CH2)14CH3,
-CH2CO2CH2CH2(CH2)14CH3),
2.27-2.32(4H, m , -CHCO2CH2CH2(CH2)14CH3,
-CH2CO2CH2CH2(CH2)14CH3),
3.38(6H, s, -CH2O(CH2CH2O)nCH3, -CHO(CH2CH2O)nCH3 ),
3.49-3.85(199H, m, -CH2O(CH2CH2O)nCH3, CHO(CH2CH2O)nCH3,
-CH2OCH2-,)
4.11-4.16(1H, m, -CHHCO2CH2CH2(CH2)14CH3)
4.31-4.34(1H, d, -CHHCO2CH2CH2(CH2)14CH3)
5.18-5.20(1H, m, -CHCO2CH2CH2(CH2)14CH3)
【0053】
得られた式(13)の化合物は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=85/15、90/10)にて展開後、ヨウ素発色にて確認したところ、純度は98%以上であった(リファレンスとして分子量2,000の末端メトキシのポリエチレングリコールを使用)。
【0054】
残存脂肪酸の分析は、TLC(薄層クロマトグラフィー:クロロホルム/メタノール=99/5)にて、展開し、リン酸硫酸銅の発色にて分析した。その結果、残存ステアリン酸は0.05%以下であった。
【0055】
(リポソームとしの評価)
水添大豆ホスファジルコリン 6.059g(7.7mmol)、コレステロール1.0g(2.6mmol)をクロロホルムに溶解させた後、エバポレーターにより溶剤を留去し、さらに6時間真空乾燥させた。この脂質乾燥物0.07gを秤量し、水20mLを加えて、水和させ、湯浴につけながらボルテックスミキサーにて軽く撹拌した。この脂質分散液を0.2μmの孔径のポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて、サイジングを行い、リポソーム液を調製した(0.2μm×2回)。該リポソーム液を5セット調製し、それぞれをリポソーム液(i)、(ii)とした。
【0056】
(実施例A)
別に工程(D)で得られた式(13)で表される、ジステアリルグリセロールと結合した、分岐型メチルポリエチレングリコール0.072g(2.57×10-2mmol)を水5mLに溶解させておき、分散液(5.1mM)を調製した。この分散液をリポソーム(i)に添加し、60℃で1時間撹拌し、分岐型ポリエチレングリコール修飾リポソーム(A)を調整した(脂質濃度 4mM、 PEG濃度 1mM)。
【0057】
(比較例B)
下記式(14)で表される化合物(ポリエチレングリコール分子量2000)を0,068g(2.57×10-2mmol)を水5mLに溶解させておき、分散液(5.1mM)を調製した。この分散液(ii)に添加し、60℃で1時間撹拌し、直鎖型ポリエチレングリコール修飾リポソーム(B)を調整した(脂質濃度 4mM、PEG濃度 1mM)。
【0058】
【化14】



【0059】
(ポリエチレングリコール修飾リポソームの安定性の検討)
ポリエチレングリコール修飾リポソームの安定性を評価するため、実施例A、比較例Bで得られた2つのポリエチレングリコール修飾リポソームを、40℃の低温恒温器(LTI-700E: EYELA)に入れ、1、2、3ヶ月での安定性を評価した。結果を表に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
40℃でのポリエチレングリコール修飾リポソームの安定性評価の結果、本願発明のジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールを含む、実施例Aのポリエチレングリコール修飾リポソーム(A)は、3ヶ月経過後も安定であった。
【0062】
一方、従来の直鎖型ポリエチレングリコールを使用したポリエチレングリコール修飾リポソームは、2ヶ月で凝集していた。
【0063】
以上より、本願発明のジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールを含むポリエチレングリコール修飾リポソームは、従来の直鎖型ポリエチレングリコールを使用したリポソームよりも安定性の高いことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコール。
【化15】



(式(1)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
は炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。
Xは分岐型ポリエチレングリコールとジアシルグリセロールのリンカー部位であり、式(2)で表される。
【化16】



(式(2)中、Yはエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合またはカーボネート結合を表す。l、mは0〜6の整数である。)
【請求項2】
前記式(2)において、Yがエーテル結合である、請求項1記載の分岐型ポリエチレングリコール。
【請求項3】
前記式(2)において、l=0、m=0である、請求項1または2記載の分岐型ポリエチレングリコール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の分岐型ポリエチレングリコールを含む、ポリエチレングリコール修飾リポソーム。
【請求項5】
下記の工程(A)、(B)、(C)および(D)を含むことを特徴とする、式(3)で表されるジアシルグリセロールと結合した分岐型ポリエチレングリコールの製造方法。
【化17】



(式(3)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
は炭素数9〜21のアルキル基またはアルケニル基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)

工程(A): 下記式(4)で表される化合物にエチレンオキサイドを付加し、下記式(5)のポリエチレングリコール誘導体を得る工程;
【化18】



【化19】



(式(5)において、nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
工程(B): 式(5)のポリエチレングリコール誘導体中のエチレンオキサイド基末端水酸基の水素原子を炭化水素基に置換することによって、下記式(6)のポリエチレングリコール誘導体を得る工程;
【化20】



(式(6)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
工程(C): 式(6)のポリエチレングリコール誘導体をpH1.0-3.0で酸加水分解し、式(7)のポリエチレングリコール誘導体を得る工程;
【化21】



(式(7)中、Rは炭素数1〜7の炭化水素基である。
nはポリエチレングリコール鎖の平均付加モル数であり、10≦n≦100である。)
工程(D): 式(7)のポリエチレングリコール誘導体中の末端水酸基と脂肪酸とを脱水縮合させ、前記式(3)の分岐型ポリエチレングリコールを得る工程。

【公開番号】特開2013−100492(P2013−100492A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229620(P2012−229620)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】