説明

ジヒドロキシベンゾエートポリマーおよびその使用

本発明は、ジヒドロキシ安息香酸(DHB)誘導体からまたはレゾルシノール誘導体から形成されたポリフェノール系ポリマー、そのようなポリマーを形成するモノマー、当該ポリマーと薬剤および/または追加のポリマーとのブレンド、さらには上記のポリマー(薬剤含有もしくは薬剤非含有)もしくはブレンド(薬剤含有もしくは薬剤非含有)のいずれかから形成された、それらのいずれかでコーティングされた、それらのいずれかにより含浸された医療用デバイス、またはそれらのいずれかで作製されたカバーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロキシ安息香酸(DHB)誘導体からまたはレゾルシノール誘導体から形成されたポリフェノール系ポリマー、そのようなポリマーを形成するモノマー、当該ポリマーと薬剤および/または追加のポリマーとのブレンド、さらには上記のポリマー(薬剤含有もしくは薬剤非含有)もしくはブレンド(薬剤含有もしくは薬剤非含有)のいずれかから形成された、それらのいずれかでコーティングされた、それらのいずれかにより含浸された医療用デバイス、またはそれらのいずれかで作製されたカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生分解性および再収着性のポリマーは、特に、バルクおよび分子の性質が、永久インプラントに関連する罹患率を低減させる再収着性もしくは部分再収着性の医療製品の製造操作に適合しうるので、医薬において果たす役割が増大の一途をたどっている。こうしたポリマーはまた、一般的には、医薬製剤による部位特異的および持続放出性の薬剤送達の提供を可能にする。生分解性および再収着性のポリマーはまた、たとえば、医療用デバイス(たとえば、薬剤溶出性のステント、カテーテル、外科用メッシュ、および他のデバイス)上のコーティングとして使用され、部位特異的薬剤送達用の他の手段になりうる。さらに、こうしたタイプのポリマーは、完全再収着性物品(薬剤含有もしくは薬剤非含有)、たとえば、縫合材料、ネジ、デバイスのエンベロープおよびカバー、医療グレードのペーストまたはパテ、ならびに他の物品の形態に形成可能である。
【0003】
潜在的な医療用途は膨大な数にのぼるので、生分解性および再収着性のポリマーは、同様に多様な物理的、化学的、および生物学的な性質を有することが必要とされる。生体適合性の目的では、ポリマーは、動物およびヒトにおける使用に好適なものでなければならず、したがって、使用条件下で毒性がないものでなければならない。こうしたポリマーの分解生成物もまた、非毒性でなければならない。物理的および化学的には、ポリマーの溶解性、混和性、および放出性は、異なる医療製品ごとにさまざまな薬剤溶出性および薬剤担持性に適合することが必要とされる。たとえば、麻酔剤の送達は、数時間必要とされるにすぎないであろうし、抗生物質の送達の過程は、7〜10日間必要とされるであろうし、免疫原の送達は、数週間または数ヶ月間にわたるであろう。ポリマーの分解および再収着のタイミングの要件もまた、さまざまである。いくつかの用途では、完全な治癒および担持物の移動を達成するために、ポリマーは、その作用部位に少なくとも1年間残留することが必要とされるであろう。軟組織のような他の場合には、ポリマーの寿命は、はるかに短い持続期間(数日間、数週間、または数ヶ月間)が望ましいであろう。一方、他の場合には、ポリマーが送達媒体として機能するとき、理にかなった生理学的に適合した期間内に再収着されるかぎり、ポリマーが再収着されるまでの実際の時間は、決定的なものではないであろう。
【0004】
生分解性および再収着性のポリマーを含む医療用途に見いだされる物品、コーティング、および製剤は、高温もしくは低温、溶媒、圧力、剪断力などのさまざまな条件下で、スプレー塗布、成形、織成、スピニング、溶媒キャスティング、単純混合などのさまざまな技術を用いて、多くの方法により製造される。さらに、特定の用途が1種以上の薬剤(任意の生物学的分子を包含する)を含む場合、これらの要素は、感温性であったり、ポリマーもしくは製造時に使用される任意の溶媒への限られた溶解性を有していたり、または所与の物品、コーティング、もしくは製剤の製造プロセスとの他の不適合性を有していたりすることがある。
【0005】
起原が何であれ、製品特性の多様性は、物理的、化学的、もしくは生物学的な由来であるかを問わず、高分子化学者にポリマーの選択およびデザインという難題を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのクラスの生分解性および再収着性のポリマーは、当該技術分野で周知である。しかしながら、FDAにより承認された医療製品中に見いだされるものは、驚くほど少数である。業界がごく少数のポリマーの使用に努力を傾注する理由が何であれ、そうしたポリマーのいくつかは、固有の限界を抱えているか(たとえば、炎症反応を引き起こすことが知られているポリ乳酸ポリマーおよびポリグリコール酸ポリマー)、または製造条件もしくは医療的使用に適合しない(熱安定性もしくは引張り強度が欠如している)。したがって、医療用途の新しいクラスの生体適合性、生分解性、および再収着性のポリマーを探索する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生分解性および再収着性のジヒドロキシ安息香酸(DHB)誘導体に基づくさらにはレゾルシノール誘導体に基づく新しいクラスのポリマーを提供することにより、こうした必要性を満たす。これらの生体適合性ポリマーによれば、高分子化学者は、医療用途のますます多様化する一連のポリマーから選択することが可能になる。
【0008】
発明の概要
本発明は、さまざまな医療用途で使用するための新しいDHB由来およびレゾルシノール由来の生体適合性、生分解性、および/または再収着性のポリマーに関する。DHB由来のポリマーは、式
【化1】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Wは、O、NH、またはSであり、
Rは、水素、エステル保護基またはアミド保護基、脱離基、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して0または1であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、アルキルアリール部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む。
【0009】
好ましいDHB由来のポリマーは、WがOであり、AがC(O)−R−C(O)であり、Rが、水素、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシエーテル基、あるいは(RO((CRO)(Rであり、かつ各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであるものである。
【0010】
レゾルシノール由来のポリマーは、式
【化2】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Rは、水素、ハロ、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RC(O)OR、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して1〜4であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む。
【0011】
好ましいレゾルシノール由来のポリマーは、AがC(O)−R−C(O)であり、Rが水素または線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであるものである。
【0012】
本発明の他の態様は、本発明に係るポリマーと1種以上の薬剤とを含む組成物(制御放出または持続放出のための医薬組成物を包含する)に関する。組成物は、任意の適合性薬剤に好適であり、抗微生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗繊維化剤、および化学療法剤を含む。組成物は、マイクロスフェア、ナノスフェア、ゲル、フォーム、スキャフォールド、コーティングなどの形態をとりうる。
【0013】
本発明のさらなる態様は、1種以上の本発明に係るポリマーから作製された医療用デバイスに関する。そのようなデバイスは、デバイスの医療適応に依存して完全再収着性もしくは部分再収着性でありうる。また、デバイスを本発明に係るポリマーでコーティングすることも可能である。ポリマーから作製されたまたはポリマーでコーティングされた医療用デバイスは、1種以上の薬剤をさらに含みうる。そのようなデバイスを留置して、たとえば、部位特異的に薬剤溶出を行うことが可能である。そのようなデバイスとしては、ステント、外科用メッシュ、ペースメーカーパウチなどが挙げられる。組成物の場合と同様の一連の薬剤を本発明に係るデバイスに組み込むことが可能である。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、本発明に係るポリマーと1種以上の第2のポリマーとのブレンド、たとえば、本発明に係る2種のポリマーのブレンド、または本発明に係るポリマーと、異なるクラスのポリマーとのブレンドに関する。そのようなブレンドは、組成物およびデバイスで使用可能であり、本発明に係る薬剤をさらに含みうる。
【0015】
本発明の他のさらなる態様は、上記の請求のいずれかの医療用デバイスを患者内に留置することを含む、患者における障害または病態の治療方法に関する。前記障害は、心臓血管障害、神経障害、軟組織欠損、眼病態、解剖学的修復、解剖学的再建、解剖学的置換、または解剖学的拡張である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明
【図1】MeDHB(3,5)−15%DHBgluおよびMeDHB(2,4)gluについて生理学的分解条件下での保持質量をグラフで示している。
【図2】MeDHB(3,5)−15%DHBgluおよびMeDHB(2,4)gluについて生理学的分解条件下での質量損失をグラフで示している。
【図3】MeDHB(3,5)−15%DHBgluおよびMeDHB(2,4)gluについて生理学的分解条件下での保持分子量をグラフで示している。
【図4】3つの異なるポリマーブレンドからのミノサイクリンおよびリファンピンの放出プロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義および略号:
本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有しうる。キラル形、ジアステレオ異性形、およびラセミ形はすべて、本発明に包含される。オレフィンの幾何異性体などもまた、本明細書に記載の化合物中に存在可能であり、そのような安定な異性体はすべて、本発明で利用可能と考えられる。
【0018】
「安定な化合物」または「安定な構造」とは、本明細書中では、反応混合物からの有用な純度での単離に耐えて残存するのに、および効力のある治療剤として製剤化または使用するのに十分な程度にロバストな化合物または分子を意味する。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、文脈から明らかな場合を除いて、「アルキル」とは、指定数の炭素原子を有する分岐鎖状および直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。直線状および線状は、同義的に用いられる。本明細書中で用いられる場合、「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。置換型の場合、置換基としては、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載される追加の置換基、および本発明に係る分子の合成に適合しうる同類の置換基が挙げられうる。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、「アルケニル」とは、直線状もしくは分岐状のいずれかの構成でありかつエテニル、プロペニルなどのように1個以上の不飽和炭素−炭素二重結合を含む炭化水素鎖を意味する。「低級アルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基のことである。本明細書中で用いられる場合、「アルキニル」とは、直線状もしくは分岐状のいずれかの構成でありかつエチニル、プロピニルなどのように1個以上の炭素−炭素三重結合を含む炭化水素鎖を意味する。「低級アルキニル」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基のことである。炭素原子の数が指定されていない場合、アルキル、アルケニル、およびアルキニルとは、1〜20個の炭素原子を有することを意味する。アルキレン基およびアルケニレン基とは、それぞれ、2価のアルキル基およびアルケニル基のことである。置換型の場合、置換基としては、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載される追加の置換基、ならびに本発明に係る分子の性質および合成に適合しうる同類の置換基が挙げられうる。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、「飽和もしくは不飽和のアルキル」とは、任意の飽和度、すなわち、完全飽和(アルキルの場合)、1個以上の二重結合(アルケニルの場合)、または1個以上の三重結合(アルキニルの場合)を有するアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基のいずれかを意味する。
【0022】
アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、ノニル、デシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキレン基およびアルケニレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、プロペニレン、ブチレン、ブタジエン、ペンテン、n−ヘキセン、イソヘキセン、n−ヘプテン、n−オクテン、イソオクテン、ノネン、デセンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者は、多数の線状および分岐状の炭化水素基を熟知している。アルキニル基としては、エチニル基およびプロピニル基が挙げられる。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、「アリール」とは、少なくとも1個の芳香族炭素環を含有する任意の安定な6〜14員の単環式、二環式、もしくは三環式の環、たとえば、フェニル、ナフチル、インダニル、テトラヒドロナフチル(テトラリニル)などを意味する。置換型の場合、置換基としては、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載される追加の置換基、ならびに本発明に係る分子の性質および合成に適合しうる同類の置換基が挙げられうる。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、「アルキルアリール」とは、アリール基がアルキル基に結合されておりさらにこのアルキル基が置換基の結合点である部分を意味する。たとえば、ベンジルエステルは、フェニル環に結合されたメチレンがエステルの酸素に結合されているアルキルアリール部分を表す。この部分のアリール基は、本明細書中の定義によれば、場合により置換型でありうる。
【0025】
本明細書中で用いられる「置換型」という用語は、指定原子上の1個以上の水素が記載の基から選択された基で置換されていることを意味するが、ただし、指定原子の通常の価数を超えないものとしかつ置換で安定な化合物を生じるものとする。置換基が示されていない場合、価数は水素で満たされる。
【0026】
「ラジカル」、「基」、「官能基」、および「置換基」という用語は、いくつかの状況下では同義的に使用可能であり、化学構造をさらに記述するために一緒に使用可能である。たとえば、「官能基」という用語は、化学構造に対して鎖中、ペンダント、および/または末端でありうる化学構造可変部である化学「基」または化学「ラジカル」を意味しうる。官能基は置換型でありうる。
【0027】
「ハライド」基または「ハロ」基とは、ハロゲン原子のことであり、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、およびヨード基が包含される。「アルコキシ」という用語は、R−O−により表される少なくとも1個の酸素置換基を有するアルキル基を意味する。
【0028】
ポリ(アルキレングリコール)の例としては、ポリ(エチレンオキシド)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ならびにそれらの任意の誘導体、類似体、相同体、同族体、塩、コポリマー、および組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ポリマーおよびそのサブユニットを命名するために本明細書中で用いられる略号としては、DHB(ジヒドロキシ安息香酸)、Bz(ベンジル)、Et(エチル)、glu(グルタレート)、Me(メチル)、PEG(ポリエチレングリコール)、succ(スクシネート)、Res(レゾルシノール)、dig(ジグリコレート)が挙げられる。
【0030】
ポリマーの命名は、ポリフェノール部分(DHB誘導体またはレゾルシノール誘導体)を規定する第1の部分と反復ユニットのA部分を規定する第2の部分とを有する。
【0031】
モノマーユニットの第1の部分がエステルもしくはアミドまたは置換基である場合、その基は、一般的には、略号中で最初に列挙される。したがって、MeDHBは、エステル形すなわちジヒドロキシベンゾエートメチルエステルである。遊離酸が存在する場合(エステルではなくまたはエステルに加えて)、語頭の基は必要でない。したがって、DHBは遊離酸形である。
【0032】
名称の第2の部分は、ポリフェノール部分を重合させる基、たとえば、二酸、カーボネート、イミノカーボネートなどを規定する。したがって、特定例としては、ポリ(DHBグルタレート)、ポリ(DHBカーボネート)などが挙げられる。
【0033】
ポリフェノール部分の混合物または共重合基の混合物(たとえば2種の二酸)がポリマー中に存在する場合、名称のその部分は、2つの部分のうちの一方のパーセントの表示と共に、「co」という表記を含みうるかまたはハイフンを有しうる。たとえば、ポリ(MeDHB:10DHB−co−スクシネート)およびポリ(MeDHB−10−DTスクシネート)は、90%のジヒドロキシベンゾエートメチルエステルおよび10%のジヒドロキシ安息香酸と二酸のコハク酸との混合物を共重合することにより作製されたポリマーを意味すべく同義的に使用可能である。混合二酸の例は、ポリ(MeDHB−co−50:50PEG600−ビス−グルタレートグルタレート)である。
【0034】
本明細書中で用いられる場合、「治療上有効量」とは、疾患または病態を治療、改善、または予防する際に所望の治療効果を達成すべく宿主に投与するのに必要な薬剤または生物活性剤の量を意味する。たとえば、治療上有効量は、抗微生物活性、除痛、抗炎症活性、抗繊維化活性、細胞増殖阻害、または使用時の特定の薬剤もしくは生物学的作用剤に関連する細胞過程の調節を提供する量でありうる。治療上有効量は、公知の薬剤では文献中で入手可能であるか、または新しい薬剤もしくは公知の薬剤では文献中に見いだされる方法、技術、および規格を用いて決定可能である。
【0035】
ポリマーの説明および合成
生体適合性ポリマーとは、生きている組織もしくは生きている系に適合しうるかつ動物もしくはヒトにおけるまたは動物もしくはヒトによる使用に許容しうるポリマーのことである。したがって、生体適合性ポリマーは、いかなる有意な範囲内でもいかなる許容できない範囲内でも生理学的な害を引き起こさない。たとえば、生体適合性は、生体適合性ポリマーがいかなる炎症や免疫反応もいかなる有意量の炎症や免疫反応も引き起こさないかまたは生きている組織や系に対して毒性でも有害でもないことを示すことにより評価可能である。したがって、生体適合性ポリマーは、生きている被験体または組織において悪影響を及ぼすことなく摂取、留置、配置、または他の形での使用が可能である。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、「生分解性ポリマー」とは、加水分解作用を受けやすいか、酸化作用を受けやすいか、酵素作用を受けやすいか、またはそれらの任意の組合せである生体適合性ポリマーのことであり、そうした作用を受けたときに、ポリマーは、一部であるか全部であるかを問わず、生物学的機序により留置部位から受動的もしくは能動的に除去される成分に分解されるものとする。当然のことながら、生分解性ポリマーは、さまざまな再収着時間を有し、この時間は、たとえば、分解生成物の性質およびサイズならびに他の因子に依存しうる。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、「再収着性ポリマー」とは、その全体またはその分解生成物が、ポリマーの意図された生物学的使用に合致した生理学的に適合する時間スケールで被験体において任意の機序により(たとえば、吸収、可溶化、毛管作用、浸透、化学的作用、酵素作用、細胞作用、溶解、侵食など、またはこれらの過程の任意の組合せにより)in vivoまたは生理学的条件下で取込み可能および/または同化可能な生体適合性ポリマーのことである。
【0038】
開裂可能な骨格結合を含有し、開裂時、より小さい水溶性フラグメントを生成する再収着性ポリマーでは、そうしたフラグメントは、高分子または低分子でありうる。これらのより小さいフラグメントは、マクロファージによる取込み、細胞によるプロセシング、または他の形での生理学的使用部位における細胞環境もしくは細胞組織からの除去により指定の時間でポリマーの完全もしくは実質的に完全な再収着が行われうるサイズにさらに分解されるかまたは分解されうる(必要に応じて)。
【0039】
再収着性ポリマーが完全にもしくは実質的に再収着された状態になった時、ポリマー(必ずというわけではないが、その低分子反復ユニットまたはそのより小さい高分子フラグメント)は、被験体中にもはや存在せず検出もできない。たとえば、ポリマーが、留置された医療用デバイス上のコーティングである場合、ポリマーは、デバイス上にもはや存在せず検出もできないであろう。当然ながら、特に再収着過程の初期段階で評価した場合、部分再収着が観察されることもありうる。同様に、ポリマーが医療用デバイス(たとえば、縫合材、ステープル、デバイスカバー、インプラント、プラグ)または持続放出性組成物(たとえば、薬剤製剤もしくはワクチン担体)の形態に形成された場合、デバイスまたは組成物は、生理学的投与部位にもはや存在せず検出もできない。拘束されることを望むものではないが、成分に分解されると同時に成分の脱離または排泄が行われることによる水不溶性ポリマーから水溶性の成分またはサブユニットへの変換としてこの過程を記述することが可能である。
【0040】
再収着の時間スケールは、使用目的に依存する。本発明に係るポリマーは、生理学的条件下で迅速な再収着(たとえば数日以内)からより長期間の再収着(たとえば数週間もしくは数ヶ月間)までを提供すべく操作可能である。医療に適合した期間としては、たとえば、1〜30日間および1〜24ヶ月間、ならびにそれらの中間のすべての期間、たとえば、5日間、1〜6週間(2、3、4、6週間)、または数ヶ月間などが挙げられる。
【0041】
本発明によれば、対象のポリマーは、DHB由来またはレゾルシノール由来の生分解性および/または再収着性のポリマーである。DHB由来のポリマーでは、本発明の実施形態は、式
【化3】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Wは、O、NH、またはSであり、
Rは、水素、エステル保護基またはアミド保護基、脱離基、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して0または1であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、アルキルアリール部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む生体適合性生分解性ポリマーを提供する。
【0042】
OH基は、DHBのベンジル環上の任意の2つの位置に存在しうる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシルは2,4位に存在し、他の実施形態では、3,5位に存在する。
【0043】
いくつかの実施形態では、DHB誘導体またはレゾルシノール誘導体でWがNHである場合、WおよびRは一緒になって(DHB誘導体のとき)またはRは単独で(レゾルシノール誘導体のとき)、C〜C18アルキルアミノ、−NHCHCOR’、−NH(CHOR’、−NH(CHCHO)R’、−NH(CHCHCHO)R’、
【化4】


〔式中、qは、0〜4であり、pは、1〜5000であり、かつR’は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜C14アルキルアリール、ベンジル、および置換型ベンジルからなる群から選択される〕
からなる群から選択される。
【0044】
Rがアルキレンオキシドである場合、その基は、−CHO(CHCHO)CH−や−CHCHO(CHCHO)CHCH−のようなポリエチレングリコール鎖(PEG)または−CHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などのようなポリプロピレングリコール鎖を含む式(RO((CRO)(R(a、r、s、R、R、およびRは、以上で定義したとおりである)により表すことが可能である。同様に、Rは、式(RCO((CRO)CO(Rにより表すことが可能である。特定の実施形態では、この式は、AとしてPEGビス−スクシネート基を有するポリマーを提供する。すなわち、Aは、Rが両方ともエチレンでありかつRおよびRが一緒になってエチレン基を形成する式
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
により表すことが可能である。Rが両方ともn−プロピレンであること以外は式が同一であるならば、A部分はPEGビス−グルタレートである。
【0045】
Rはまた、保護されたヒドロキシル基、保護されたアミン基、または保護されたカルボン酸基でありうる。本発明に係る使用に加えて、いくつかの場合には、そのような保護された置換基を有するポリマーは、本発明に係る他のポリマーを調製するための中間体として使用可能である。OH基、NH基、およびCOOH基のための保護基は、当該技術分野で周知であり、いずれも、安定でありかつ本発明に係るポリマーの製造に用いられる合成法に適合しうるならば、本発明に係る使用に好適である。
【0046】
いくつかの実施形態では、Rがアリールである場合、特定的には、フェニルエステルまたはフェニルアミドを形成するフェニル基である場合、その基は、フェニル環上に存在する0〜5個の置換基を有することが可能であり、各置換基は、独立して、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、またはアルキルアリール、ヘテロ原子を含有するアルキル基またはアリール基、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アルキルオキシアミン、ニトロ、アルキルエーテル、−C(O)−R、−(RC(O)−YR10、X、保護されたヒドロキシル基、保護されたアミノ基、および保護されたカルボン酸基からなる群から選択される。ここで、bは、0または1であり、
は、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、
は、低級のアルキレンまたはアルケニレンであり、
10は、水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、もしくはアルキルアリール、または−(RC(O)ORもしくは(RO((CRO)(R(ここで、rは1〜4であり、aは1〜4であり、かつsは1〜5000である)であり、かつ
Yは、OまたはNHである。
【0047】
さらに、Rが置換型フェニル基である場合、置換基は以下のものでありうる。
(1)置換型アルキル基、たとえば、−CX、−CHX、−CHX、−RCX、−RCHX、および−RCHXとして表される基(ここで、Xはハロ基である)、好ましくは、−RCX、−RCHX、および−RCHX(ここで、RはCHCHであり、かつXはFまたはClである)。
(2)アルキルアリール基、たとえば、限定されるものではないが、トリチル基。
(3)ヘテロ原子含有アルキル基、たとえば、限定されるものではないが、トリメチルシラン、グルコサミン、またはN−ヒドロキシスクシンイミド。
(4)ヘテロ原子含有アリール基。
(5)−(RC(O)−YR10、ここで、Rは、低級のアルキレンまたはアルケニレンであり、R10は、水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、もしくはアルキルアリール、または−(RC(O)ORもしくは(RO((CRO)(Rであり、かつYはOまたはNHであり、好ましくは、YがOであるとき、bは0であり、かつR10は、水素、メチル、エチル、プロピル、もしくはベンジルであり、または他の選択肢として、bは1であり、Rはメチレンもしくはエチレンであり、かつR10は、水素、メチル、エチル、プロピル、もしくはベンジルである。
(6)−(RC(O)−YR10、ここで、Rは、低級のアルキレンまたはアルケニレンであり、R10は、水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、もしくはアルキルアリール、または−(RC(O)ORもしくは(RO((CRO)(Rであり、かつYはOまたはNHであり、好ましくは、YがNHであるとき、bは0であり、かつR10は、水素、メチル、エチル、プロピル、ベンジル、もしくは−(R11C(O)ORであり、または他の選択肢として、bは1であり、Rはメチレンもしくはエチレンであり、かつR10は、水素、メチル、エチル、プロピル、ベンジル、もしくは−(R11C(O)OR(ここで、R11は、線状もしくは分岐状の低級アルキレンである)であり、さらには、R10が−(R11C(O)ORであるとき、R11はメチレンもしくはエチレンであり、かつRはメチルもしくはエチルである。
【0048】
こうした置換型フェニルは、1個のR基を有することが可能であり、このR基は、芳香環上の任意の位置に、好ましくは2位または4位に存在可能である。2個のR基が存在する場合、一方は好ましくは芳香環上の2位に存在し他方は4位に存在する。
【0049】
本発明に係る置換基としては、記載のごとく、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロアリール、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、およびトリアルキルアンモニウム、ならびにそれらの塩および本明細書中に記載の他の基が挙げられる。これらの基は、本発明に従って示されたようなアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロアラルキル基に対する置換基でありうる。放射線不透性ポリマーを作製するために、モノマー中またはポリマー中の可能な位置に1個以上のハライド基を組み込むことが可能である。たとえば、臭素またはヨウ素は、DHB環上の置換基でありうるか、またはエステル側鎖上、アミド側鎖上、もしくはチオエステル側鎖上の置換基でありうる。
【0050】
は、二価炭化水素基であり、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型でありうる。そのような基としては、1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、アルキルアリール部分、さらにはより大きいアルキレンオキシド部分またはアリーレンオキシド部分が挙げられる(それらの基の反復ユニットの数を基準にして)。例として、Rがアルキレンオキシドである場合、その基は、−CHO(CHCHO)CH−や−CHCHO(CHCHO)CHCH−のようなポリエチレングリコール鎖(PEG)または−CHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などのようなポリプロピレングリコール鎖を含む式(RO((CRO)(R(a、r、s、R、R、およびRは、以上で定義したとおりである)により表すことが可能である。同様に、Rは、式(RCO((CRO)CO(Rにより表すことが可能である。特定の実施形態では、この式は、AとしてPEGビス−スクシネート基を有するポリマーを提供する。PEGビス−スクシネートでは、Aは、Rが両方ともエチレンでありかつRおよびRが一緒になってエチレン基を形成する式
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
により表される。Rが両方ともn−プロピレンであること以外は式が同一であるならば、A部分はPEGビス−グルタレートである。
【0051】
Aにより形成される好ましい二酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸、さらにはジグリコール酸(Rが−CHOCH−である場合)、ジオキサオクタン酸(Rが−CHOCHCHOCH−である場合)、アルキレンオキシド誘導体、たとえば、PEG、PEGビス−スクシネートなどが挙げられる。
【0052】
は、独立して、線状もしくは分岐状の低級のアルキレン基またはアルケニレン(akylenylene)基である。好ましい実施形態では、Rは、メチレン、エチレン、またはプロピレンである。
【0053】
基(RO((CRO)(R中に存在する場合、各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキル基である。たとえば、RおよびRが両方とも水素でありかつaが2である場合、その部分はエチレンである。したがって、一緒になってaの値と組み合わされて、RおよびRは、たとえば、限定されるものではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのような二価アルキル基を形成する。
【0054】
各aおよび各bの値は、独立して、整数1、2、3、もしくは4のうちの1つである。各rの値は、独立して、整数1、2、3、もしくは4のうちの1つである。
【0055】
各sの値は、独立して、約1〜約5000であり、アルキレンオキシド鎖中の反復ユニットの数を決定する。したがって、sは、1〜約10、1〜約15、1〜約20、1〜約30、1〜約40、1〜約50、1〜約75、1〜約100、1〜約200、1〜約300、1〜約500、1〜約1000、1〜約1500、1〜約2000、1〜約2500、1〜約3000、1〜約4000、および1〜約5000の範囲内でありうる。このほかに、アルキレンオキシド鎖の長さが、たとえばPEG200、PEG400、PEG600などを用いて分子量として記される場合、sは、整数である必要はなく、参照(または測定)分子量に基づくアルキレンオキシド反復ユニットの平均数を表す小数値として表現可能である。
【0056】
Aがカルボニル基−C(O)−である場合、ポリマーはポリカーボネートである。こうしたポリマーは、米国特許第5,099,060号に記載の方法をはじめとする当業者に公知の方法でホスゲンと反応させることにより調製可能である。
【0057】
Aが−C(O)−R−C(O)−である場合、Aは、骨格中の酸素と一緒になって二酸を形成する(すなわち、骨格中に存在するこうした二酸に基づくエステル基は、加水分解時に二酸を形成する)。簡潔にするために、Aは、本明細書中では二酸と記されることもある(ただし、これは、明らかに、厳密には特許請求の範囲で用いられるAの実際の定義に沿ったものではないが、文脈上明らかである)。
【0058】
Aが二酸である場合、ポリマーはポリアリーレートである。こうしたポリアリーレートでは(本発明に係る他のポリマーと同様に)、Rは、二価炭化水素基であり、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型でありうる。そのような基としては、1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、アルキルアリール部分、さらにはより大きいアルキレンオキシド部分またはアリーレンオキシド部分が挙げられる(それらの基の反復ユニットの数を基準にして)。例として、Rがアルキレンオキシドである場合、その基は、−CHO(CHCHO)CH−や−CHCHO(CHCHO)CHCH−のようなポリエチレングリコール鎖(PEG)または−CHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などのようなポリプロピレングリコール鎖を含む式(RO((CRO)(R(a、r、s、R、R、およびRは、以上で定義したとおりである)により表すことが可能である。同様に、Rは、式(RCO((CRO)CO(Rにより表すことが可能である。特定の実施形態では、この式は、AとしてPEGビス−スクシネート基を有するポリマーを提供する。PEGビス−スクシネートでは、Aは、Rが両方ともエチレンでありかつRおよびRが一緒になってエチレン基を形成する式
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
により表される。Rが両方ともn−プロピレンであること以外は式が同一であるならば、A部分はPEGビス−グルタレートである。
【0059】
Aにより形成される好ましい二酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸、さらにはジグリコール酸(Rが−CHOCH−である場合)、ジオキサオクタン酸(Rが−CHOCHCHOCH−である場合)、アルキレンオキシド誘導体、たとえば、PEG、PEGビス−スクシネート、PEGビス−グルタレートなどが挙げられる。
【0060】
ポリアリーレートの製造方法は、当該技術分野で公知である。そのような方法は、たとえば、米国特許第5,216,115号、同第5,317,077号、同第5,587,507号、同第5,670,602号、同第6,120,491号、米国再発行特許発明第37,160E号、および米国再発行特許発明第37,795E号、さらには文献、他の特許および特許出願に見いだされる。当業者であれば、本発明に係るポリマーを合成すべくこれらの手順を容易に適合化することが可能である。
【0061】
Aがイミノ基−C(=NH)−である場合、ポリマーはポリイミノカーボネートである。ポリイミノカーボネート全般およびその合成方法は、たとえば、米国特許第4,980,449号および同第5,099,060号に記載されている。
【0062】
Aが−C(O)−NH−R−NH−C(O)−である場合、本発明に係るポリマーはポリウレタンである。ポリウレタンは、当該技術分野で公知のように、たとえば、本発明に係るポリウレタンを製造すべくジオールと式O=C=N−R−N=C=Oで示されるジイソシアネートとの間の縮合反応により、調製可能である。R基は、本明細書の以上で定義したとおりである。
【0063】
Aがチオニル基−C(S)−である場合、本発明に係るポリマーはポリチオカーボネートである。このポリマーは、たとえば、当業者に公知の方法でチオホスゲンと反応させることにより調製可能である。
【0064】
本発明に係る好ましいDHB由来のポリマーは、WがOであり、AがC(O)−R−C(O)であり、Rが、水素、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシエーテル基、あるいは(RO((CRO)(Rであり、かつ各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rである定義されたポリエステルである。
【0065】
このポリマーの好ましいR基は、水素、メチル、エチル、フェニル、またはベンジルである。このポリマーの好ましいR基は、二酸であるA部分を形成し、結果として、Rは、二酸の2個のカルボニル基と一緒になった時、スクシネート、グルタレート、アジペート、スベレート、ビス−カルボキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ビス−スクシネート、ポリエチレングリコール−ビス−グルタレートを生成する。
【0066】
レゾルシノール由来のポリマーでは、本発明の実施形態は、式
【化5】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Rは、水素、ハロ、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RC(O)OR、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して1〜4であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む生体適合性生分解性ポリマーを提供する。
【0067】
以上で述べた制限内で、R、R、R、R、R、およびAのそれぞれは、本明細書の以上で定義したとおりである。
【0068】
本発明に係る好ましいレゾルシノール由来のポリマーは、AがC(O)−R−C(O)であり、Rが水素または線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであるものである。好ましいRは、水素またはメチルであり、かつ好ましいRは、二酸として2個のカルボニル基と一緒になった時、スクシネート、グルタレート、アジペート、スベレート、ビス−カルボキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ビス−スクシネート、ポリエチレングリコール−ビス−グルタレートを生成する。好ましいレゾルシノール誘導体は、レゾルシノール(1,3位にO部分を有する)およびヒドロキノン(1,4位にO部分を有する)である。
【0069】
本発明に係るポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーでありうる。たとえば、コポリマーは、WがOでありかつRがアルキル基またはベンジル基であるモノマーの混合物から形成可能である。ベンジル基を選択的に除去して遊離酸に変換することが可能であり、この遊離酸をそのまま使用するかまたは本発明に係る他のポリマーを形成すべく誘導体化することが可能である。
【0070】
ポリマーがコポリマーである場合、それは、少なくとも約0.01%〜100%、少なくとも約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12%から約30、40、50、60、75、90、95、もしくは99%までの反復モノマーユニットを範囲の任意の組合せで含有する。特定の実施形態では、ポリマー中の遊離酸形の反復ユニットの範囲は、約5〜約50%であり(すなわち、RはHであり、典型的には、Rがベンジルである中間体を介して調製される)、残りのR基は、アルキルまたは他のR置換基である。このほかに、コポリマーは、適用可能な場合、さまざまな比のA部分、たとえば、2つの異なる二酸または2つの異なるウレタンを有しうる。
【0071】
混合R基を有する本発明に係るDHB由来のポリマーの例は、ポリマー中のDHBモノマーユニットが全体で約99%のアルキルから約50%のアルキルまでの範囲内のRを有し残りのRがベンジルまたは水素であるものである。他の例は、約95%〜約80%のメチルおよび約5%〜約80%のベンジルまたは水素であるRを有する。
【0072】
二酸のAおよび混合R基を有する本発明に係るDHB由来のポリマーの例では、結果として、Rは全体で約10%〜約50%のビス−カルボキシポリエチレングリコールの範囲内にあり、残りのRはアルキレンであり、またはRは全体で約10%〜約50%のポリエチレングリコール−ビス−スクシネートまたはポリエチレングリコール−ビス−グルタレートの範囲内にあり、残りのRはアルキレンである。これらのポリマーの好ましいアルキレン基は、二酸のコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、またはスベリン酸を形成する。
【0073】
したがって、DHB由来もしくはレゾルシノール由来のモノマーユニットを含有するコポリマーである本発明に係るポリマーは、Rが可変である以外は、たとえば、Rが水素(遊離COOH基を生成する)、1種以上の異なるエステル、たとえば、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、またはアルキレンオキシド鎖もしくはエーテル鎖とのエステル、アミド、あるいは他の適合する官能基である以外は第1のモノマーユニットとほぼ同一である他のモノマーユニットを有しうる。他の選択肢として、こうしたわずかな変化を他のものと組み合わせることが可能であり、その場合、DHB由来もしくはレゾルシノール由来のモノマーユニットは、異なる置換基に可変性が存在する以外は、すなわち、A、R、R、R、および他の可変の置換基のいずれかが変更されている以外は同一でありうる。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、DHB由来もしくはレゾルシノール由来のモノマーユニットは、実質的に異なりポリフェノールではなくジフェノールでありうる。好適なジフェノールの例は、米国特許第4,980,449号、同第5,099,060号、同第5,216,115号、同第5,317,077号、同第5,587,507号、同第5,658,995号、同第5,670,602号、同第6,048,521号、同第6,120,491号、同第6,319,492号、同第6,475,477号、同第6,602,497号、同第6,852,308号、同第7,056,493号、米国再発行特許発明第37,160E号、および米国再発行特許発明第37,795E号、さらには米国特許出願公開第2002/0151668号、同第2003/0138488号、同第2003/0216307号、同第2004/0254334号、同第2005/0165203号、およびPCT国際公開第99/52962号、国際公開第01/49249号、国際公開第01/49311号、国際公開第03/091337号、および2005年11月3日出願の米国特許出願第60/733,988号に記載されている。
【0075】
ヒドロキシルの位置の簡略表記は、MeDHB(2,4)としてまたはMe−2,4DHBとして表され、両方とも、2,4−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステルに対する同義の名称である。同様に、簡略表記のEtDHB(3,5)またはEt−3,5DHBは、3,5−ジヒドロキシベンゾエートエチルエステルに対する同義の名称である。本発明に係るポリマーの例を以下に示す。
【0076】
MeDHB(2,4)−Gluは、ポリ(2,4−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステルグルタレート)である。
【0077】
MeDHB(2,4)−Subは、ポリ(2,4−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステルスベレート)である。
【0078】
MeDHB(3,5)−15%Peg600−Gluは、ポリ((3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル)−co−(15%ビス−カルボキシポリエチレングリコール600:85%グルタレート))である。
【0079】
MeDHB(3,5)−5%Peg600−Gluは、ポリ((3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル)−co−(5%ビス−カルボキシポリエチレングリコール600:95%グルタレート))である。
【0080】
MeDHB(3,5)−15%DHB−Gluは、ポリ((85%3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル:15%ジヒドロキシ安息香酸)−co−グルタレート)である。
【0081】
EtDHB(3,5)−Succは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートエチルエステルスクシネート)である。
【0082】
EtDHB(3,5)−50%PegビスSucc−アジペートは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートエチルエステル−co−(50%ポリエチレングリコール400−ビス−スクシネート:50%アジペート))である。
【0083】
MeDHB(3,5)−25%Peg8kビスSucc−Gluは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル−co−(25%ポリエチレングリコール8000−ビス−スクシネート:75%グルタレート))である。
【0084】
MeDHB(3,5)−25%Peg3350ビスSucc−Gluは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル−co−(25%ポリエチレングリコール3350−ビス−スクシネート:75%グルタレート))である。
【0085】
5−Me−レゾルシノール−グルタレートは、ポリ(5−メチルレゾルシノールグルタレート)である。
【0086】
5−Me−レゾルシノール−15%−(3,5)−DHB−グルタレートは、ポリ((85%5−メチルレゾルシノール:15%3,5−ジヒドロキシ安息香酸)−co−グルタレート)である。
【0087】
MeDHB(3,5)−10%−DHB(3,5)−スベレートは、ポリ((90%3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル:10%ジヒドロキシ安息香酸)−co−スベレート)である。
【0088】
EtDHB(3,5)−グルタレートは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートエチルエステルグルタレート)である。
【0089】
本発明に係るそのほかのポリマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0090】
MeDHB(3,5)−10PEG酸−gluは、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル−co−(10%ビス−カルボキシポリエチレングリコール600:90%グルタレート))である。
【0091】
MeDHB(3,5)−50PEGglu3は、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル−co−(25%ポリエチレングリコール3350−ビス−スクシネート:75%グルタレート))である。
【0092】
MeDHB(3,5)−10PEGglu3は、ポリ(3,5−ジヒドロキシベンゾエートメチルエステル−co−(10%ポリエチレングリコール600−ビス−スクシネート:90%グルタレート))である。
【0093】
本発明に係る好ましいポリマーとしては、MeDHB(3,5)−15%DHB−glu、MeDHB(3,5)−10PEG酸−glu、MeDHB(3,5)−50PEGglu3、およびMeDHB(3,5)−10PEGglu3が挙げられる。
【0094】
本発明に係るいくつかのポリマーおよびそれらの特性を表1に示す。MWの欄は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定されたポリマーの分子量を提供し、Tgの欄は、示差走査熱量測定法により決定されたポリマーのガラス転移温度(Tg)を提供する(融点としてmpで示される場合や未決定NDの場合を除く)。
【0095】
【表1】

【0096】
使用
本発明に係るポリマーは、ポリフェノール骨格を有するモノマーユニットを含む生体適合性生分解性ポリマーまたは生体適合性再収着性ポリマーであり、分解時間を変化させるべく操作可能である。ポリマーを、より水溶性の成分に、より急速に分解させた場合、たとえば、遊離酸モノマーを有するポリマーの場合、その結果として、特に遊離酸がアルキルエステルで置換されている同様のポリマーと比較したとき、使用時、より速い再収着が起こる。
【0097】
ポリマーの分解は、さまざまな方法で測定可能である。in vivo分解過程は、いくつかの方法でin vitroで模倣可能である。pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中37℃でポリマーコーティング付きデバイス(または主に本発明に係るポリマーから形成された組成物もしくはデバイス)をエージングすることにより、加水分解過程を再現することが可能である。酸化機序が関連する場合、同一の溶液に過酸化水素や超酸化物塩のような酸化剤を追加することが可能である。このほかに、酵素的分解過程が重要である場合、代表的酵素を溶液に添加することが可能である。当然のことながら、そのようなin vitro試験は、in vivoで作用する化学過程を模倣しうるが、動態および速度を不正確に予測する。さらに、必要に応じて、in vivo動物モデルを用いてin vivo分解挙動とin vitro分解挙動とを相関付けることが可能である。
【0098】
ポリマーの分解および再収着の測定に加えて、当業者は、同一の技術さらには他の技術を用いて薬剤放出をモニターすることが可能である。たとえば、抗生物質活性は、阻害領域アッセイにより測定可能であり、除痛は、疼痛用動物モデルで測定可能であり、それ以外も可能である。
【0099】
本発明に係るポリマーは、分解前は比較的疎水性が大きいので、このことから、薬剤放出プロファイルの操作が可能であるうえに、薬剤を可溶化させたりまたは多種多様な薬剤のリザーバーとして機能させたりするのに有用な能力が提供される。さまざまな置換基、たとえば、PEG、疎水性基、およびその他多数をポリマー上で使用しうるので、薬剤製剤化の目的にも制御放出または持続放出の目的にも合うようにポリマーを容易に操作することが可能である。したがって、当業者であれば、本発明に係る特定のポリマーを選択することにより所望の再収着時間に関連付けて、組成物、コーティング付きデバイス、または再収着性デバイス(完全再収着性であるか部分再収着性であるかを問わず)で特定の放出プロファイルを達成すべく、ポリマーの化学成分を操作することが可能である。
【0100】
したがって、本発明に係るポリマーは、医療用デバイスにコーティングしたり、完全再収着性もしくは部分再収着性の医療用デバイスを形成したり、(そのようなデバイスと併用してまたはポリマーと薬剤と他の作用剤とを含む医薬組成物の一部として)特異的に薬剤を送達したりするために生体適合性、生分解性、および/または再収着性のポリマーが必要とされるきわめて多くの生物学的使用が行われる。当然のことながら、ポリマーは、薬剤が存在しなくとも有用である。たとえば、外科用メッシュ上のポリマーコーティングは、メッシュの剛度を増大させ、それにより、留置時、より容易な取扱いを可能にし、しかも、経時により軟化して患者にとって快適なメッシュを提供する。さらに、ポリマーコーティング付きのフラットなメッシュを三次元形状に形成することが可能であり、これは外科的修復に有用でありうる。完全再収着性デバイスは、大腿骨プラグなどのように一時的な創傷閉鎖具として溶解前の時間にわたり強度を付与することが意図された縫合糸として使用可能である。
【0101】
本発明に係るポリマーのさらなる使用は、たとえば、さまざまな用途に合ったコーティング付き外科用メッシュが記載されている2007年2月8日出願の米国特許出願第11/672,929号、心拍リズム管理デバイス、神経刺激器のための、さらには他の留置可能な医療用デバイスのための、完全再収着性および部分再収着性のカバー、パウチ、バッグ、およびコーティング付きメッシュが記載されている2006年11月6日出願の米国特許出願第60/864,597号、ならびに乳房インプラント用の再収着性カバーに関する2007年3月29日出願の米国特許出願第60/908,960号および2008年3月28日出願のPCT/US08/58652号に詳細に記載されている。
【0102】
本発明に係る組成物は、次のような医療用の物品およびコーティングを形成するために使用可能である。(i)生分解性ポリマーの利点が生かされうる用途に合った十分な機械的性質を有するもの、(ii)高分子担体に由来する追加の分子を実質的に含まない薬剤を放出しうるもの、(iii)所定の放出速度および再収着速度を有するようにデザイン可能なもの、ならびに(iv)生物活性および/または生体有益性であるだけでなくポリマーから形成された医療用の物品またはコーティングの物理的性質および/または機械的性質の制御をも行う薬剤と組合せ可能なもの。
【0103】
ブレンド:
薬剤放出特性および再収着特性を操作するそのほかの方法は、ポリマーをブレンドすることである。したがって、本発明は、本発明に係るポリマーと、他の生体適合性ポリマー、好ましくは他の生分解性ポリマーとのブレンドを提供する。こうした他のポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物、たとえば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)、およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL);ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン−co−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、チロシン由来のポリアリーレート、チロシン由来のポリカーボネート、チロシン由来のポリイミノカーボネート、チロシン由来のポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリサッカリド、たとえば、ヒアルロン酸、キトサン、および再生セルロース、ならびにタンパク質、たとえば、ゼラチンおよびコラーゲン、ならびにそれらの混合物およびコポリマー、特にそのほかに上記のいずれかのPEG誘導体またはPEGブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
ブレンドを用いると、デバイスの一部分または全体でさまざまな再収着時間を有する部分再収着性デバイスおよび完全再収着性デバイスを作製する能力をはじめとする多くの利点が提供される。たとえば、部分再収着性デバイスは、経時により多孔度が増大しうるので、組織の増殖を可能にする。当業者であれば、特定の生成物の製造または特定の結果の達成のために、ブレンドするポリマーの組合せの選択およびブレンド中の各ポリマーの必要量の決定を容易に行うことが可能である。たとえば、約20°〜約40°の範囲内のTgを有するブレンドを提供することは、医療用途で特に有用である。
【0105】
本発明に係るブレンドとしては、たとえば、MeDHB(3,5)−15%DHB−gluと、MeDHB(3,5)−10PEG酸−glu、MeDHB(3,5)−50PEGglu3、およびMeDHB(3,5)−10PEGglu3のそれぞれとの配合物が挙げられる。特定のブレンドとしては、33℃のTgを有するブレンドA(20%MeDHB(3,5)−15%DHB−gluおよび80%MeDHB(3,5)−10PEG酸−glu)、23℃のTgを有するブレンドB(60%MeDHB(3,5)−15%DHB−gluおよび40%MeDHB(3,5)−50PEGglu3)、ならびに29℃のTgを有するブレンドC(20%MeDHB(3,5)−15%DHB−gluおよび80%MeDHB(3,5)−10PEGglu3)が挙げられる。
【0106】
薬剤:
本発明に係るポリマー、モノマー、およびブレンドと相溶可能な任意の1種以上の薬剤、生物学的作用剤、または活性成分は、医薬組成物または本発明に係るポリマー、モノマー、もしくはブレンドでコーティングもしくは形成された医療用デバイスに組み込み可能であるか、それらの形態に形成可能であるか、またはそれらと併用してもしくは組み合わせて使用可能である。そのような薬剤および作用剤の用量は、当該技術分野で公知である。したがって、当業者であれば、デバイスのサイズ、コーティングの厚さ、有効用量などに基づいて、送達に望まれる薬剤または作用剤の量を決定したり、所望の用途に必要とされた量を計算したりすることが可能である。
【0107】
本発明によれば、薬剤および生物学的活性剤としては、麻酔剤、抗微生物剤(抗生物質、抗菌類剤、および抗細菌剤を包含する)、抗炎症剤、繊維症阻害剤、抗瘢痕化剤、細胞増殖阻害剤、増殖因子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
本明細書中で用いられる場合、「薬剤」とは、小分子であるか大分子であるかを問わず、タンパク質、核酸などのようなすべてのタイプの治療剤が包含されるように用いられるものである。本発明に係る薬剤は、単独または組合せで使用可能である。
【0109】
非ステロイド系抗炎症剤の例としては、アセトアミノフェン、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メロキシカム、メチルサリチレート、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、およびトロラミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
麻酔剤の例としては、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、およびキシロカインが挙げられるが、これらに限定されるものではない。局所麻酔剤は、弱い抗細菌性を有し、急性疼痛および感染の防止において二重の役割を果たしうる。
【0111】
抗微生物薬剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
アミノグリコシド類、たとえば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシン。
【0113】
抗生物質、たとえば、バシトラシン、クリンダマイシン、ダプトマイシン、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニド(metronid)、ポリミキシン、リファキシミン、バンコマイシン。
【0114】
セファロスポリン類、たとえば、セファゾリン。
【0115】
マクロライド系抗生物質、たとえば、エリスロマイシン、アジスロマイシンなど。
【0116】
β−ラクタム系抗生物質、たとえば、ペニシリン類。
【0117】
キノロン類、たとえば、シプロフロキサシン。
【0118】
スルホンアミド類、たとえば、スルファジアジン。
【0119】
テトラサイクリン類、たとえば、ミノサイクリンおよびテトラサイクリン。
【0120】
他の抗生物質、たとえば、リファンピン、トリクロサン、クロルヘキシジン、シロリムス、およびエベロリムス。
【0121】
使用可能な他の薬剤としては、ケフレックス、アシクロビル、セフラジン、マルファレン(malphalen)、プロカイン、エフェドリン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、プルムバギン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物学的活性ペプチド、セフラジン、セファロチン、cis−ヒドロキシ−L−プロリン、メルファラン、ペニシリンV、ニコチン酸、ケノデオキシコール酸、クロラムブシル、および抗新生物剤、たとえば、パクリタキセル、シロリムス、5−フルオロウラシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用なタンパク質の例としては、表皮増殖因子アンタゴニストのような細胞増殖阻害剤が挙げられる。同様に、増殖刺激剤、特定的には、BMP(骨形態形成タンパク質)のような骨増殖刺激剤を、骨折治癒の誘導に使用するための組成物中に組み込むことが可能である。
【0122】
本発明に係る好ましい抗微生物剤としては、単独または組合せで、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサン、シロリムス、およびエベロリムスが挙げられる。リファンピンおよびミノサイクリンは、抗微生物剤の好ましい組合せである。
【0123】
ロイコトリエン阻害剤/アンタゴニストは、抗炎症剤であり、例としては、アシタザノラスト、イラルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト、ザフィルルカスト、およびジロイトンのようなロイコトリエンレセプターアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
医薬製剤:
本発明に係るポリマーおよびブレンドは、1種以上のそうした分子と1種以上の薬剤(活性成分として)と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物として製剤化可能である。製薬上許容される担体は、滅菌された水や油のような液体、たとえば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などのような石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源のものでありうる。医薬組成物を静脈内投与する場合、水は好ましい担体である。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液剤の液体担体として利用可能である。好適な医薬担体は周知である。薬理活性剤に加えて、組成物は、作用部位に送達すべく医薬的に使用可能な製剤の形態に活性化合物を加工するのを容易にする賦形剤および補助剤を含む好適な製薬上許容される担体を含有しうる。非経口投与に好適な製剤としては、水溶性の形態たとえば水溶性塩の形態の活性化合物の水性溶液剤が挙げられる。そのほかに、活性化合物のサスペンジョン剤を、必要に応じて油性の注射用サスペンジョン剤の形態で、投与することが可能である。好適な親油性の溶媒または媒体としては、脂肪油たとえばゴマ油、または合成脂肪酸エステルたとえばエチルオレエートもしくはトリグリセリドが挙げられる。水性の注射用サスペンジョン剤は、サスペンジョンの粘度を増大させる物質、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストランなどを含有しうる。場合により、サスペンジョン剤はまた、安定剤を含有しうる。また、細胞内に送達すべく作用剤をカプセル化するために、リポソームを使用することが可能である。
【0125】
本発明に係る全身投与用医薬製剤は、腸内投与、非経口投与、または局所投与に供すべく製剤化可能である。実際には、3つのタイプの製剤をすべて同時に使用して、活性成分の全身投与を達成することが可能である。
【0126】
経口投与に好適な製剤としては、硬質もしくは軟質のゼラチンカプセル剤、丸剤、錠剤(コーティング錠を包含する)、エリキシル剤、サスペンジョン剤、シロップ剤、または吸入剤、およびそれらの制御放出形態が挙げられる。
【0127】
本発明に係るポリマーおよびブレンドはまた、数日間、少なくとも数週間、1ヶ月間、またはそれ以上の期間にわたり哺乳動物へのそうした化合物の持続性送達を可能にする医薬組成物中に組込み可能である。そのような製剤は、米国特許第5,968,895号および同第6,180,608B1号に記載されている。
【0128】
局所投与に供する場合、溶液剤、サスペンジョン剤、ゲル剤、軟膏、または塗剤などのような任意の通常の局所製剤を利用することが可能である。そのような局所製剤の調製については、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesにより例示されるように、医薬製剤の技術分野で詳細に報告されている。局所適用に供する場合、粉末またはスプレーとして、特定的にはエーロゾルの形態で、本発明に係るポリマーおよびブレンドを投与することが可能である。活性成分は、全身投与に適合化された医薬組成物の形態で投与可能である。公知のごとく、薬剤を全身投与する場合、粉末剤、丸剤、錠剤などとして、または経口投与用のシロップ剤もしくはエリキシル剤として作製可能である。静脈内投与、腹腔内投与、または病変内投与に供する場合、注射により投与可能な溶液剤またはサスペンジョン剤として活性成分を調製することが可能である。特定の場合には、坐剤の形態でまたは皮下貯蔵用もしくは筋肉内注射用の長期放出製剤として活性成分を製剤化することが有用なこともある。一実施形態では、本発明に係るポリマーおよびブレンドは、吸入療法を容易にしうる。吸入療法に供する場合、ポリマーまたはブレンドは、活性成分と一緒になって、定量噴霧式吸入器による投与に有用な溶液形態または乾燥粉末吸入器に好適な形態をとりうる。
【0129】
医療用デバイス:
本発明に係るポリマーおよびブレンドは、任意の軟組織欠損の再建、補強、架橋、置換、修復、支持、安定化、定置、または強化のために使用される留置可能なプロテーゼにコーティングしたりまたはそうしたプロテーゼを形成したりするために使用可能である。たとえば、本発明に従って治療可能な軟組織欠損としては、限定されるものではないが、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、臍ヘルニア、腹部ヘルニア、切開創ヘルニア、筋肉内ヘルニア、横隔膜ヘルニア、腹胸部ヘルニア、および胸部ヘルニアをはじめとするヘルニアが挙げられる。プロテーゼはまた、筋肉弁の構造補強、血管完全性の提供、靭帯の修復/置換、および膀胱スリング、乳房リフト、または器官バッグ/ラップを用いて行われるような器官の支持/定置/再定置のために使用可能である。プロテーゼは、軟組織が関与する再建術、たとえば、整形外科用移植片の支持/安定化、再建外科用移植片の支持、および骨折の支持に使用可能である。
【0130】
プロテーゼは、一般的には、メッシュ、膜、またはパッチであり、例としては、織成もしくは不織のメッシュなどが挙げられる。
【0131】
このほかに、本発明に係るポリマーおよびブレンドは、ステープル、縫合糸、タック、リング、ネジなどのような創傷閉鎖補助具にコーティングしたりまたはそのような創傷閉鎖補助具を形成したりするために使用可能である。
【0132】
本発明に係るポリマーおよびブレンドはまた、留置可能な医療用デバイス用のパウチ、カバー、ポケットなどの形態に形成されたメッシュをコーティングするためにまたはそれらを形成するために使用可能である。そのような留置可能な医療用デバイスとしては、ペースメーカー、除細動器、パルス発生器のような心拍リズム管理デバイス、さらには留置可能なアクセスシステム、神経刺激器、脊髄刺激器、乳房インプラントのような他の留置可能なデバイス、または任意の他の留置可能な医療用デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。したがって、カバー、パウチ、ポケットなどは、そうしたデバイスを所定の位置に固定したり、除痛を行ったり、瘢痕化または繊維化を阻害したり、細菌の増殖または感染を阻害または予防したり、他の薬剤を留置部位に送達したりする役割を果たしうる。
【0133】
本発明に係るポリマーおよびブレンドはまた、一時的なもしくはいくらか時間の限られた治療の必要性を有する任意の留置可能もしくは挿入可能な医療用デバイスさらには永久的機能を有するもの(たとえば関節置換)と併用可能である。たとえば、そのようなポリマーは、十分な治癒期間の後に完全に再収着された状態になるとともに開存血管を残存させる完全再収着性血管ステントを形成するために使用可能である。完全再収着性ステントは、1種以上の薬剤と併用可能である。
【0134】
本発明に係るポリマーおよびブレンドが有用である医療用デバイスのより詳細な他の例としては、カテーテル(たとえば、バルーンカテーテルのような腎臓カテーテルまたは血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルター(たとえば、大静脈フィルター)、ステント(たとえば、冠血管ステント、脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、胃腸ステント、および食道ステント)、ステント移植片、脳動脈瘤フィルターコイル(たとえば、Guglilmiデタッチャブルコイルおよび金属コイル)、血管移植片、心筋プラグ、大腿骨プラグ、パッチ、ペースメーカーおよびペースメーカーリード、心臓弁、血管弁、生検デバイス、治療剤を無傷の皮膚および損傷した皮膚(たとえば、創傷)に送達するためのパッチ;軟骨、骨、皮膚、および他のin vivo組織を再生するための組織工学スキャフォールド;手術部位における縫合糸、縫合糸アンカー、吻合クリップおよび吻合リング、組織ステープル、ならびに結紮クリップ;足首、膝、および手の領域における締嵌ネジのような整形外科用固定デバイス、靭帯結合用および半月板修復用のタック、骨折固定用のロッドおよびピン、頭蓋顎顔面修復用のネジおよびプレート;抜歯後の空隙充填材や歯周外科手術後の組織再生誘導膜フィルムのような歯科用デバイス;ならびに体内に留置または挿入される種々のコーティング付き基材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
本明細書に記載の医療用デバイスのいずれかが含まれうるポリマーおよびブレンドの使用は、1種以上の薬剤との併用が可能である。
【0136】
したがって、本発明は、たとえばカバーと併用されるコーティングとしてまたは全体的もしくは部分的なデバイスとして本発明に係るポリマーまたはブレンドを含む医療用デバイスまたは医療用デバイスアセンブリーを留置することを含む、患者における障害または病態の治療方法を提供する。この方法は、患者内にデバイスを留置することにより行われ、特定的には、心臓血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼病態、または解剖学的修復、解剖学的再建、解剖学的置換、もしくは解剖学的拡張のような障害および病態に対して行われる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本方法は、ステントを留置することによりアテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離または穿孔、血管動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管および人工移植片の吻合増加、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍による閉塞、ならびにそれらの組合せを治療すべく使用される。
【0138】
他の実施形態では、本方法は、外科用メッシュを留置することによりヘルニアをはじめとする任意の軟組織欠損の再建、補強、架橋、置換、修復、支持、安定化、定置、または強化を行うべく使用される。
【0139】
さらに他の実施形態では、本方法は、カバー内もしくはパウチ内のCRMのような医療用デバイスアセンブリー、カバー内もしくはパウチ内の神経刺激器、またはカバー内もしくはパウチ内の乳房インプラントを留置すべく使用される。
【0140】
当業者であればわかるであろうが、本発明の範囲から逸脱することなく、以上に記載の本発明に種々の省略、追加、および変更を行うことが可能であり、そのような変更および変形はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲に包含されるものとする。参考文献、特許、特許出願、または他の引用文献はすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられるものとする。
【実施例】
【0141】
本発明に係るジヒドロキシベンゾエート誘導体およびポリマーの合成手順
遊離酸を含有する本発明に係るジヒドロキシベンゾエート誘導体ポリマーおよび他のポリマーは、二工程プロセスで調製可能である。第1の工程では、保護されたペンダント基を含有する前駆体ポリマーを調製する。次の工程では、ポリマー骨格を分解することなくペンダント保護基を除去する。
【0142】
工程1:前駆体ポリマーの合成
一般的手順
オーバーヘッドスターラーおよび凝縮器を備えた三つ口フラスコ中に、ジヒドロキシフェノール、二酸、およびDPTSを入れる。メチレンクロリドをフラスコに添加して内容物を撹拌する。15分後、すべての固形分が良好に分散された時、DIPCを添加して反応混合物が粘性になるまで混合物を撹拌する。メチレンクロリドおよびイソプロパノール(IPA)(または他の便利な溶媒)からの反復沈殿によりポリマーを単離することが可能である。最後に、ポリマー固体を典型的にはフード内で一晩乾燥させ、次に、真空オーブンに移して一定重量になるまで1日乾燥させる。
【0143】
特定手順:
p(Me3,5−DHB−15%3,5−BnDHB−グルタレート)
オーバーヘッドスターラーおよび凝縮器を備えた500ml三つ口フラスコ中に、3,5−DHBメチルエステル(0.1487mol、25g)、3,5−DHBベンジルエステル(0.0266mol、6.5g)、グルタル酸(0.1753mol、23.2g)、ジメチルアミノピリジニウム−パラ−トルエンスルホネート(DPTS)(0.0584mol、17.2g)を入れた。メチレンクロリド(220ml)をフラスコに添加して内容物を撹拌した。15分後、すべての固形分が良好に分散された時、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)(0.526mol、66.36g、82.13ml)を添加した。反応混合物を20〜22時間撹拌した。その時間までに粘性混合物は粘性になった。メチレンクロリドおよびIPAからの反復沈殿によりポリマーを単離した。最後に、ポリマー固体をポリプロピレントレーに移し、そしてフード内で一晩放置して乾燥させた。次に、それを40℃の真空オーブンに移して一定重量になるまで1日乾燥させた。収量:44.6g(92%)。MW=43kDa。Tg=44℃。
【0144】
工程2:保護基の除去
一般的手順:
ベンジルポリマーをDMF中に溶解させて、窒素を溶液中にバブリングする。15分後、窒素流動を停止させて、触媒を添加する。水素ガスを反応混合物中に通して、反応混合物を一晩攪拌する(ベンジルが存在しなくなるまで)。冷水中に沈殿させることによりポリマーを単離して、真空下で一定重量になるまで乾燥させる。
【0145】
特定手順
p(Me3,5−DHB−15%3,5−DHB−グルタレート)
884mlのDMFを用いることによりp(Me3,5−DHB−15Bn3,5−DHB−グルタレート)ポリマー(44.2g)を溶解させて5%溶液を作製した。窒素を透明溶液中に約30分間バブリングした。触媒(5%Pd担持BaSO)15.5g(ベンジル前駆体ポリマーを基準にして35%w/w)を1回で添加した。水素をバブリングして、撹拌を一晩継続させた。反応混合物をセライト床上で濾過した。冷水中に沈殿させることによりポリマーを単離した。濾過後、ポリマーの湿潤ケークを真空下で乾燥させた。収量:32.8g(74%)。Mw:41KDa。Tg:61℃。
【0146】
保護されたモノマーの合成
3,5−ジヒドロキシ安息香酸(17.7g、0.115モル)、重炭酸ナトリウム(11.6g、0.138モル)、およびベンジルブロミド(20.5ml、0.173モル)を、<40℃のジメチルホルムアミド中に7時間かけて攪拌導入し、そして500mlのエチルアセテートで希釈した。サスペンジョンを水(400ml)および3%重炭酸ナトリウム/14%NaCl(2×400ml)および20%NaCl(2×200ml)で抽出した。無水硫酸マグネシウムで脱水した後、透明溶液を白色固体になるまで濃縮し、この白色固体を150mlのヘキサン中で混合して濾過により単離した。真空乾燥後、17gの生成物を捕集した。シリカゲルTLC(90:10:1):(メチレンクロリド:メタノール:酢酸)は、uvおよびヨウ素による可視化でRf=0.39に単一のスポットを示す。DSC:mp=132.9℃、純度=99.0%、NMR:5.3ppm(s,2H)、6.5ppm(s,1H)、6.9ppm(s,2H)、7.4ppm(m,5H)、9.6ppm(s,2H)。
【0147】
当該技術分野で公知の方法を用いて、保護されたモノマーを誘導体化し、次に、重合反応で使用することが可能である。
【0148】
分解試験プロトコル
分子量(MW)プロファイル:時間に応じてMW減少をモニターするために、0.01M PBSまたはTween20を含む0.01M PBS(50〜100mL)と共にポリマーフィルムを37℃で振盪せずにインキュベートする。各時間点で、ポリマーサンプルを溶媒に溶解させ、濾過し、そして分析用バイアルに移してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分析に供する。
【0149】
質量損失プロファイル:質量損失分析のために、0.01M PBSまたはTween20を含む0.01M PBS(50〜100mL)と共にフィルムを37℃でインキュベートする。バイアル中の緩衝液を周期的な間隔で交換して、可溶性分解成分について分析する。各時間点で、3つの小型バイアルからの1〜2mLの緩衝液を濾過し、そして分析用バイアルに移して逆相HPLCによる分析に供する。他の選択肢として、デバイスを洗浄し、乾燥させ、そして秤量し(最終重量)、さらに原重量から最終重量を引き算することにより質量損失を決定することが可能である。
【0150】
2種のDHBポリマーの結果を図1〜3に示す。
【0151】
ポリマーブレンドからの薬剤放出。
【0152】
2008年3月28日出願の米国特許出願第12/058,060号に概説されているようにブレンドA、B、およびCを調製した。簡潔に述べると、溶媒中の指示量のポリマー、リファンピンまたはミノサイクリンをフィルム状にキャストしてフィルムを乾燥させることにより、薬剤放出試験のためのポリマーブレンドのフィルムを作製した。乾燥させたフィルムを小片にカットして、PBSの入ったバイアル中に配置した。分析のために緩衝液のアリコートを周期的に取り出して、新鮮な緩衝液で置き換えた。サンプルをHPLCにより分析して、放出されたリファンピンおよびミノサイクリンの累積量を決定した(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Wは、O、NH、またはSであり、
Rは、水素、エステル保護基またはアミド保護基、脱離基、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して0または1であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、アルキルアリール部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む生体適合性生分解性ポリマー。
【請求項2】
WがOであり、
AがC(O)−R−C(O)であり、
Rが、水素、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアルコキシエーテル基、あるいは(RO((CRO)(Rであり、かつ
各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Rが、水素、メチル、エチル、フェニル、またはベンジルである、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマー中のモノマーユニットが、全体で約99%のアルキルから約50%のアルキルまでの範囲内のRを有し、残りのRがベンジルである、請求項2に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマー中のモノマーユニットが、全体で約99%のアルキルから約50%のアルキルまでの範囲内のRを有し、残りのRが水素である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーが、約95%〜約80%のメチルおよび約5%〜約80%のベンジルであるRを有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、約95%〜約80%のメチルおよび約5%〜約80%の水素であるRを有する、請求項5に記載のポリマー。
【請求項8】
が、二酸として2個のカルボニル基と一緒になった時、スクシネート、グルタレート、アジペート、スベレート、ビス−カルボキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ビス−スクシネート、ポリエチレングリコール−ビス−グルタレートを生成する、請求項2に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコール(PEG)部分が、PEG400、PEG600、またはPEG3350である、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマー中のモノマーユニットが、全体で約10%〜約50%のビス−カルボキシポリエチレングリコールの範囲内のRを有し、残りのRがアルキレンである、請求項8に記載のポリマー。
【請求項11】
前記ポリマー中のモノマーユニットが、全体で約10%〜約50%のポリエチレングリコール−ビス−スクシネートまたはポリエチレングリコール−ビス−グルタレートの範囲内のRを有し、残りのRがアルキレンである、請求項8に記載のポリマー。
【請求項12】
が、二酸として2個のカルボニル基と一緒になった時、スクシネート、グルタレート、アジペート、またはスベレートを形成するように、前記アルキレンが選択される、請求項10または11に記載のポリマー。
【請求項13】

【化2】


〔式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=N)、C(O)−NH−R−NH−C(O)、またはC(S)であり、
Rは、水素、ハロ、線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシエーテル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基、またはシクロアルキル基、(RC(O)OR、(RO((CRO)(R、糖、医薬活性化合物、または生物学的活性化合物であり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各bは独立して1〜4であり、rは独立して1〜4であり、かつ各sは独立して1〜5000である}、
各Rは、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル部分、アルケニル部分、アルキレンオキシド部分、またはアリーレンオキシド部分、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rであり{ここで、各aは独立して1〜4であり、各rは独立して1〜4であり、かつsは1〜5000である}、
各Rは、独立して、線状もしくは分岐状の低級アルキルであり、かつ
各Rおよび各Rは、独立して、水素または線状もしくは分岐状の低級アルキルである〕
により表される1つ以上のモノマーユニットを含む生体適合性生分解性ポリマー。
【請求項14】
AがC(O)−R−C(O)であり、
Rが、水素、または線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
各Rが、独立して、2価の線状もしくは分岐状の置換型もしくは無置換型の1〜30個の炭素原子を有するアルキル、(RO((CRO)(R、または(RCO((CRO)CO(Rである、
請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
Rが水素またはメチルである、請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
が、二酸として2個のカルボニル基と一緒になった時、スクシネート、グルタレート、アジペート、スベレート、ビス−カルボキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ビス−スクシネート、ポリエチレングリコール−ビス−グルタレートを生成する、請求項14に記載のポリマー。
【請求項17】
前記モノマーユニットの芳香環上のO部分が1,3位または1,4位に存在する、請求項14に記載のポリマー。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマーと1種以上の薬剤とを含む組成物。
【請求項19】
前記1種以上の薬剤が、抗微生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗繊維化剤、およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記1種以上の薬剤が抗微生物剤である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗微生物剤が、単独または組合せのいずれかで、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記薬剤がリファンピンおよびミノサイクリンである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマーを1種以上を含む医療用デバイス。
【請求項24】
完全再収着性もしくは部分再収着性である、請求項23に記載の医療用デバイス。
【請求項25】
1種以上の薬剤をさらに含む、請求項23または24のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項26】
前記デバイスが、ステント、外科用メッシュ、デバイスカバー、またはカテーテルである、請求項23〜35のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項27】
前記デバイスが、心拍リズム管理デバイス用、神経刺激器用、または乳房インプラント用のカバーである、請求項26に記載の医療用デバイス。
【請求項28】
前記1種以上の薬剤が、抗微生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗繊維化剤、およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される、請求項23〜27のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項29】
前記1種以上の薬剤が抗微生物剤である、請求項28に記載の医療用デバイス。
【請求項30】
前記抗微生物剤が、単独または組合せのいずれかで、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される、請求項29に記載の医療用デバイス。
【請求項31】
前記薬剤がリファンピンおよびミノサイクリンである、請求項30に記載の医療用デバイス。
【請求項32】
前記デバイスの表面上のコーティングまたは前記デバイスの表面に接着されたコーティングを含む医療用デバイスであって、前記コーティングが請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマーの1層以上の層を含む、医療用デバイス。
【請求項33】
前記コーティングの1層以上の層が1種以上の薬剤をさらに含む、請求項32に記載の医療用デバイス。
【請求項34】
前記1種以上の薬剤が、抗微生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗繊維化剤、およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される、請求項33に記載の医療用デバイス。
【請求項35】
前記1種以上の薬剤が抗微生物剤である、請求項34に記載の医療用デバイス。
【請求項36】
前記抗微生物剤が、単独または組合せのいずれかで、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される、請求項35に記載の医療用デバイス。
【請求項37】
前記薬剤がリファンピンおよびミノサイクリンである、請求項36に記載の医療用デバイス。
【請求項38】
1種以上の請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマーと1種以上の第2のポリマーとを含むポリマーのブレンド。
【請求項39】
前記1種以上の第2のポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物、たとえば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)、およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL);ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン−co−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、チロシン由来のポリアリーレート、チロシン由来のポリカーボネート、チロシン由来のポリイミノカーボネート、チロシン由来のポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリサッカリド、たとえば、ヒアルロン酸、キトサン、および再生セルロース、ならびにタンパク質、たとえば、ゼラチンおよびコラーゲン、ならびにそれらの混合物およびコポリマー、特にそのほかに上記のいずれかのPEG誘導体またはPEGブレンドからなる群から選択される、請求項38に記載のブレンド。
【請求項40】
前記第2のポリマーが、ポリエチレングリコール、PLA、PLG、PLGA、またはPCLである、請求項39に記載のブレンド。
【請求項41】
前記第2のポリマーがDHB由来のポリマーである、請求項38に記載のブレンド。
【請求項42】
1種以上の薬剤をさらに含む、請求項38〜41のいずれか一項に記載のブレンド。
【請求項43】
前記1種以上の薬剤が、抗微生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗繊維化剤、およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される、請求項42に記載のブレンド。
【請求項44】
前記1種以上の薬剤が抗微生物剤である、請求項43に記載のブレンド。
【請求項45】
前記抗微生物剤が、単独または組合せのいずれかで、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される、請求項44に記載のブレンド。
【請求項46】
前記薬剤がリファンピンおよびミノサイクリンである、請求項45に記載のブレンド。
【請求項47】
先行請求項のいずれかに記載の医療用デバイスを患者内に留置することを含む、患者における障害または病態の治療方法であって、前記障害が、心臓血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼病態、または解剖学的修復、解剖学的再建、解剖学的置換、もしくは解剖学的拡張である、方法。
【請求項48】
前記デバイスがステントである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記障害が、アテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離または穿孔、血管動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管および人工移植片の吻合増加、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍による閉塞、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記デバイスが外科用メッシュである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記メッシュが、任意の軟組織欠損の再建、補強、架橋、置換、修復、支持、安定化、定置、または強化のために使用される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記軟組織欠損がヘルニアである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記デバイスが完全再収着性デバイスカバーである、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記カバーが、心拍リズム管理デバイス用、神経刺激器用、または乳房インプラント用である、請求項53に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−526189(P2010−526189A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506705(P2010−506705)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062582
【国際公開番号】WO2008/137807
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508125575)タイレックス・ファーマ・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】TYRX PHARMA INC.
【Fターム(参考)】