説明

ジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体を含有する固形製剤

【課題】式(A)のジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有し、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤等の提供。
【解決手段】遮光剤を含有する皮膜またはカプセルを含む固形製剤等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体を含有する固形製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬、動物用薬等の有効成分を含有する固形製剤は、それを使用する環境や保存する環境において、安定であることが望まれている。固形製剤に含有される有効成分によっては、光に対して不安定な場合があり、これまで遮光皮膜を備えた固形製剤とすることで、光に対しても安定となることが知られている。該製剤として、例えば、セルチンドールを含有する素製剤と、遮光剤として酸化チタンを含有する皮膜からなる固形製剤(特許文献1等参照)、有効成分を含有する素製剤と、酸化チタンに替えてタルク/硫酸バリウムを含有する皮膜からなる錠剤(特許文献2参照)等が報告されている。しかしながら、各有効成分においてはさまざまな因子によって不安定化が起こりうるので、光に対して不安定な有効成分を含有する固形製剤に、遮光皮膜を施しただけでは安定化が充分ではない場合や、逆に遮光皮膜を施したことにより不安定化が増す場合もあり、有効成分が安定に製剤化できるか否かを、固形製剤を製造する前に予測することは困難である。
【0003】
一方、式(I)
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、Aは、単結合、-CH=CH-または(CH2)n-(式中、nは1〜3の整数を表す)を表し、R1およびR2は同一または異なって水素または低級アルキルを表すか、または隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]で表されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体(以下化合物(I)という)が、抗アレルギー作用および抗炎症作用を示し、鼻アレルギー、喘息等のアレルギー疾患および蕁麻疹等の皮膚疾患に有用であることが知られており(特開昭63-10784号公報参照)、糖およびセルロースをベースとした化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩含有製剤にクロスカルメロースナトリウム等のセルロース誘導体を添加することで、安定化した固形製剤が得られることが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第97/39752号パンフレット
【特許文献2】特開2002-212104号公報
【特許文献3】特開平11-35460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有し、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)〜(15)に関する。
(1) 式(I)
【化2】

[式中、Aは、単結合、-CH=CH-または(CH2)n-(式中、nは1〜3の整数を表す)を表し、R1およびR2は同一または異なって水素または低級アルキルを表すか、または隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]で表されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する素製剤と、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上の遮光剤を含有する皮膜またはカプセルを含む固形製剤。
(2) 遮光剤が酸化チタン、黄色三二酸化鉄および三二酸化鉄から選ばれる1つ以上の物質である前記(1)記載の固形製剤。
(3)素製剤に含有されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩の量が、素製剤100重量部に対して0.05〜5重量部である前記(1)または(2)記載の固形製剤。
(4) 素製剤が、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体から選ばれる1つ以上の物質を含有する素製剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5) 素製剤が、糖、セルロースおよびセルロース誘導体を含有する素製剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(6) 糖が、乳糖および白糖から選ばれる1つ以上の物質である前記(4)または(5)記載の固形製剤。
(7) 素製剤が核部と、核部の外側に位置するジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する核被覆層とを含む素製剤であり、該核被覆層に含有されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩の量が、核被覆層100重量部に対して0.05〜5重量部である前記(1)または(2)記載の固形製剤。
(8) 素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤であり、該核部がジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有し、該核被覆層がジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体およびその薬学的に許容される塩を含有しないことを特徴とする前記(1)、(2)または(7)記載の固形製剤。
(9) 核被覆層が、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体から選ばれる1つ以上の物質を含有する核被覆層である前記(7)または(8)記載の固形製剤。
(10) 核被覆層が、糖と、デンプンおよび/または難水溶性無機塩との組み合わせを含有する核被覆層である前記(7)または(8)記載の固形製剤。
(11) 糖が、乳糖および白糖から選ばれる1つ以上の物質である前記(9)または(10)記載の固形製剤。
(12) 固形製剤の形状が細粒剤または顆粒剤である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の固形製剤。
(13) 固形製剤の形状が錠剤またはカプセル剤である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の固形製剤。
(14) 前記(12)記載の固形製剤を含有する粒子状製剤、マルチプルユニット錠またはドライシロップ剤。
(15) 体積平均粒子径が5〜150μmである式(I)
【化3】

[式中、Aは、単結合、-CH=CH-または(CH2)n-(式中、nは1〜3の整数を表す)を表し、R1およびR2は同一または異なって水素または低級アルキルを表すか、または隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]で表されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体またはその薬学的に許容される塩と添加剤とを混合または造粒する工程を含む素製剤の製造方法により製造できる素製剤と、遮光剤を含有する皮膜またはカプセルを含む固形製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有し、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
式(I)の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等があげられる。隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えばピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、N-メチルピペラジニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、インドリル、イソインドリル等があげられる。
【0011】
化合物(I)の薬学的に許容される塩は、例えば薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩があげられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
【0012】
本発明で使用される化合物(I)は、特開昭63-10784号公報に開示された方法で、またはそれに準じて製造することができる。化合物(I)の中でも、AがCH2であり、R1およびR2がともにCH3である化合物が好ましく、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の好ましい具体例としては、式(A)
【0013】
【化4】

【0014】
で表される(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩(以下化合物(A)という)があげられる。
また、本発明の固形製剤の製造において、使用される化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で5〜150μmであるのが好ましく、20〜120μmであるのがより好ましく、40〜100μmであるのがさらに好ましい。
【0015】
本発明の固形製剤は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有する素製剤と、遮光剤を含有する皮膜またはカプセルを含む固形製剤である。本発明の固形製剤における素製剤とは、例えばコーティングされることが可能な製剤等のことである。該素製剤の形状は特に限定されないが、散剤、細粒剤、顆粒剤または錠剤の形状であることが好ましい。本明細書において、散剤、細粒剤または顆粒剤の形状の素製剤を素顆粒といい、錠剤の形状の素製剤を素錠という。
【0016】
本発明の固形製剤における素製剤は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の他に、他の有効成分および/または添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等およびそれらの組み合わせがあげられ、好ましくは糖(例えば乳糖、白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等)、デンプン誘導体(例えばヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)等およびそれらの組み合わせがあげられる。該添加剤は、平衡含水率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である添加剤の中から選択することがより好ましい。該添加剤を組み合わせて用いる場合には、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、デンプン誘導体のヒドロキシプロピルスターチまたはカルボキシメチルスターチナトリウム、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることが好ましく、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることがさらに好ましく、糖(具体的には白糖等)を主として用いることが最も好ましい。糖を主として用いる場合には、セルロースおよびセルロース誘導体と組み合わせることが好ましく、乳糖または白糖を主として用いる場合には、結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムと組み合わせることがより好ましい。
【0017】
賦形剤としては、例えば糖(例えば乳糖、白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)等があげられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、好ましくは、糖、デンプン、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等) から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくは、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等) から選ばれる1つ以上の物質があげられる。
【0018】
崩壊剤として例えばセルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン等)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、クロスポビドン、ベントナイト等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0019】
結合剤として例えばセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、セルロース(例えば結晶セルロース等)、デンプン(例えばα化デンプン等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0020】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0021】
本発明における遮光剤は、固形製剤に通常用いられ、遮光効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン、酸化ケイ素等があげられ、好ましくは、酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素等があげられ、さらに好ましくは、酸化チタン、酸化鉄 (具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等)等があげられ、最も好ましくは、酸化チタンがあげられる。酸化チタンは、ルチル型およびアナターゼ型のいずれの結晶形でもよく、その粒子径についても特に限定されない。本発明において遮光剤は2種以上併せて用いてもよく、色相の異なる2種以上の遮光剤を併せて用いることが好ましい。遮光剤を2種以上併せて用いる場合の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは、酸化チタンと、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン、酸化ケイ素等との組み合わせがあげられ、より好ましくは、酸化チタンと、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素等との組み合わせがあげられ、さらに好ましくは、酸化チタンと、酸化鉄 (具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等)との組み合わせがあげられる。
【0022】
本発明の固形製剤における皮膜は、前記素製剤の外側を覆う皮膜であり、前記遮光剤を含有するコーティング組成物を該素製剤にコーティングして形成される皮膜のことである。該コーティング組成物は、前記遮光剤の他に、例えばコーティング基剤、可塑剤、結合剤等のコーティング剤を含有していてもよく、該コーティング剤は、それぞれ2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
コーティング基剤としては、例えば胃溶性フィルムコーティング剤、腸溶性フィルムコーティング剤、徐放性フィルムコーティング剤等があげられ、胃溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、プルラン等の多糖類等があげられ、腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS等のアクリル酸系高分子、セラック等の天然物等があげられ、徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えばエチルセルロース等のセルロース系高分子、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー等のアクリル酸系高分子等があげられる。
【0024】
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、ブチルフタリルブチルグリコレート、グリセリルカプリル酸エステル等のエステル;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール等があげられる。
【0025】
結合剤およびその他のコーティング剤としては、例えば乳糖、白糖、タルク、炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、カルナバロウ等があげられる。
【0026】
本発明の固形製剤におけるカプセルは、前記遮光剤の他に、例えばカプセル基剤、可塑剤等の成分を含有していてもよく、該成分は、それぞれ2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
カプセル基剤としては、例えばゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、寒天等があげられ、可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、ブチルフタリルブチルグリコレート、グリセリルカプリル酸エステル等のエステル;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール等があげられ、その他の前記カプセルに含まれる成分としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、アラビアゴム、カルナバロウ等があげられる。
【0028】
本発明の固形製剤は、例えば化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有する素製剤を製造する工程と、遮光剤を含有するコーティング組成物を該素製剤にコーティングして皮膜を有する固形製剤を製造する工程かまたは遮光剤を含有するカプセルに該素製剤を充填して固形製剤を製造するカプセル充填工程とが含まれる製造方法によって製造することができる。
【0029】
以下、本発明の固形製剤の製造方法について、形状ごとに詳細に説明する。ただし、以下の製造方法は、例を示すものであって本発明の固形製剤の製造方法を限定するものではない。
【0030】
[錠剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が錠剤である固形製剤は、例えば化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と添加剤を粉末のまま混合するか、または成分の一部を造粒物とした後に残りの成分を混合する工程、得られた混合物を打錠することにより素錠を製造する工程、次いで遮光剤を含有するコーティング組成物を該素錠にコーティングして皮膜を有する錠剤を製造する工程を含む製造方法で製造することができる。
【0031】
造粒物の製造は、例えば湿式造粒法、乾式造粒法等により行うことができる。湿式造粒法としては、例えば押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒装置、転動流動層造粒装置等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等があげられるが、より具体的には、例えば化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および添加剤を混合し、得られた混合物に溶媒または結合剤溶液を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法等があげられる。溶媒としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、これらの混合溶媒等があげられるが、中でも水が好ましく、結合剤溶液としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、これらの混合溶媒等に結合剤を溶解したものがあげられるが、結合剤の水溶液が最適である。乾式造粒法としては、例えば市販の乾式造粒機を用いフレークを製造するか、打錠機によってスラッグ錠を製造し、得られたフレークまたはスラッグ錠を市販の解砕機または整粒機で破砕することで造粒物を得る破砕造粒法等があげられる。また、好ましくはそれぞれの造粒物は、適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の粒子径を有するようにされる。
【0032】
素錠は、例えば各成分を混合機等で混合した混合物か、または成分の一部を前記造粒物とした後に残りの成分を混合機で混合した混合物を、圧縮打錠機を用いて打錠することにより製造することができるが、打錠の際の打錠圧は、例えば3〜30kNの範囲から適当に選択できる。素錠の重量は特に制限されないが、例えば1錠あたり30〜3000mgである。
【0033】
皮膜を有する錠剤は、例えば遮光剤を含有するコーティング組成物を溶媒(前記溶媒と同義)に溶解および/または分散させて、前記素錠にコーティングして製造することができる。コーティングは、例えば従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置、転動流動型コーティング装置等を用いて行われる。
【0034】
[顆粒剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が顆粒剤である固形製剤は、例えば化合物(I)またはその薬学的に許容される塩のみ、または化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と添加剤とを造粒して素顆粒を製造する工程、次いで遮光剤を含有するコーティング組成物を該素顆粒にコーティングして皮膜を有する顆粒剤を製造する工程を含む製造方法で製造することができる。
【0035】
該形状が顆粒剤である固形製剤は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよく、その粒子径は、通常用いられる任意の粒子径(例えば、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、約0.4〜約2.0mm)である。素顆粒は、例えば前記錠剤の製造方法における造粒物の製造と同様にして製造することができる。
【0036】
皮膜を有する顆粒剤は、例えば遮光剤を含有するコーティング組成物を溶媒(前記溶媒と同義)に溶解および/または分散させて、前記素顆粒にコーティングして製造することができる。コーティングは、例えば従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置、転動流動型コーティング装置、遠心転動型コーティング装置等を用いて行われる。
【0037】
[散剤または細粒剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が散剤である固形製剤は、一般的な散剤であればいずれでもよく、例えば30号(500μm)ふるいを通過しないものが全量の5%以下であるものが好ましい。
本発明の固形製剤のうち、形状が細粒剤である固形製剤は、一般的な細粒剤であればいずれでもよく、例えば30号(500μm)ふるいを通過しないものが全量の5%以下で、200号(75μm)ふるいを通過するものが全量の10%以下であるものが好ましい。
【0038】
本発明の固形製剤のうち、形状が散剤または細粒剤である固形製剤は、例えば前記顆粒剤の製造方法と同様にして製造し、各工程において適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の粒子径にすることで製造することができる。
【0039】
[カプセル剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状がカプセル剤である固形製剤は、前記散剤または細粒剤、顆粒剤、錠剤の各製造方法において得られる素製剤を、遮光剤を含有するカプセル殼に充填することにより製造することができる。
【0040】
また、本発明の固形製剤の好ましい形態の1つとして、素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤である固形製剤があげられる。該核部はコーティングされることが可能な製剤のことであって、該核被覆層は該核部に化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩および/または添加剤(前記添加剤と同義)をコーティングして形成される被覆層のことである。また、該核部が芯部と芯被覆層から構成されていてもよい。
【0041】
核部としては、例えば前記錠剤、前記顆粒剤、前記散剤または細粒剤の各製造方法において得られる素製剤か、市販の球形シード粒子等を用いることができる(ただし、核部が芯部と芯被覆層からなる場合の核部は、芯部を前記錠剤、前記顆粒剤、前記散剤または細粒剤の各製造方法における素製剤と同様に製造するか、市販の球形シード粒子等を芯部として用い、後記の核被覆層と同様に芯部に芯被覆層の成分をコーティングして製造することができ、核被覆層における好ましい形態は、それぞれ芯被覆層の好ましい形態でもある)。球形シード粒子は、例えば、精製白糖、白糖・トウモロコシデンプン混合物、乳糖・結晶セルロース混合物、結晶セルロース等からなり、該シード粒子の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、一般に180〜1180μmである。
【0042】
核被覆層は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および/または添加剤(前記添加剤と同義)をパウダーコーティング法またはスプレーコーティング法、好ましくはパウダーコーティング法によって、核部にコーティングして製造することができる。パウダーコーティング法によってコーティングする場合には、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および/または添加剤(前記添加剤と同義)を混合して粉末散布剤とし、溶媒(前記溶媒と同義)または結合剤溶液(前記結合剤溶液と同義)をスプレーしながら、該粉末散布剤を散布して核部に積層させてコーティングすればよく、この際、例えば回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置、転動造粒装置、転動流動層造粒装置等が用いられる。
【0043】
前記粉末散布剤としての添加剤としては、好ましくは、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、デンプン誘導体のヒドロキシプロピルスターチまたはカルボキシメチルスターチナトリウム、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等)から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくは、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等) から選ばれる1つ以上の物質があげられ、最も好ましくは糖(具体的には白糖等)があげられる。前記粉末散布剤における添加剤を組み合わせて用いる場合には、糖、デンプン、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることが好ましく、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることがさらに好ましく、糖(具体的には白糖等)を主として用いることが最も好ましい。糖を主として用いる場合には、デンプンおよび/または難水溶性無機塩と組み合わせることが好ましく、乳糖または白糖を主として用いる場合には、トウモロコシデンプン、タルクまたは軽質無水ケイ酸と組み合わせることがより好ましい。前記粉末散布剤における添加剤は、平衡含水率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である添加剤の中から選択することが好ましく、該粉末散布剤の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、約100μm以下であるのが好ましく、約50μm以下であるのがより好ましく、約40μm以下であるのがさらに好ましい。糖を主として用いる場合に、デンプンおよび/または難水溶性無機塩と組み合わせることおよび該粉末散布剤の粒子径が、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下であることは、素製剤の製造において、該素製剤を高収率で得る観点からも好ましい。
【0044】
また、スプレーコーティング法によってコーティングする場合は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩および/または添加剤を、溶媒(前記溶媒と同義)または結合剤溶液(前記結合剤溶液と同義)に溶解または懸濁させて、核部にスプレーすることによりコーティングすればよく、この際、前記顆粒剤の製造方法における皮膜を有する顆粒剤の製造工程で使用されるのと同様の機器が用いられる。核被覆層は1つの層に限らず複数の層で形成されていてもよい。この場合、各層に用いる成分の種類および/または配合量を変えてもよい。
【0045】
核部は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよいが、核被覆層および皮膜が均一に形成されやすいように、球形であるのが好ましい。この点で、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と添加剤の混合物を練合(攪拌造粒装置等による)し、押し出し造粒(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)を行った後に球形化整粒(回転円板型整粒装置、遠心転動型造粒装置、転動流動層造粒装置等による)して製造した核部か、球形のシード粒子を芯部として用い、該芯部に芯被覆層の成分(有効成分を含有する)をコーティングして製造した核部か、球形のシード粒子である核部がより好ましく、球形のシード粒子を芯部として用い、該芯部に芯被覆層の成分(有効成分を含有する)をコーティングして製造した核部がさらに好ましい。該核部の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で180〜1180μmであるのが好ましく、300〜650μmであるのがより好ましい。
【0046】
素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤である場合の素製剤は、前記錠剤、前記顆粒剤、前記散剤または細粒剤の各製造方法での素製剤と同様に遮光剤を含有するコーティング組成物でコーティングするか、または必要により打錠末とともに打錠した後、前記錠剤の製造方法における素製剤と同様に遮光剤を含有するコーティング組成物でコーティングするかして、遮光剤を含有する皮膜を有する散剤、細粒、顆粒剤または錠剤とすることができる。
【0047】
本発明における遮光剤を含有する皮膜において、皮膜中の遮光剤の量は、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上であるが、0.8〜50重量部であるのが好ましく、1〜25重量部であるのがより好ましい。また、遮光剤として、酸化チタンまたは酸化チタンと酸化鉄 (具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等)との組み合わせを用いた場合には、酸化チタンまたは酸化チタンと酸化鉄とで、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上であるのが好ましく、0.8〜50重量部であるのがより好ましく、1〜25重量部であるのがさらに好ましい。
【0048】
素製剤に対する皮膜量は、素製剤100重量部に対して1〜1000重量部であるのが好ましく、1.5〜100重量部であるのがより好ましく、1.5〜50重量部であるのがさらに好ましい。素製剤にコーティングするための遮光剤を含有するコーティング組成物を溶媒に溶解および/または分散させるときの該コーティング組成物の濃度は、一般に0.1〜50重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのがより好ましい。
【0049】
本発明の固形製剤における素製剤中の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の量は、素製剤100重量部に対して0.05〜5重量部であるのが好ましい。
【0050】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が素製剤全体に等しく分布する場合には、素製剤中の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の量が、素製剤100重量部に対して0.05〜5重量部であるのがより好ましく、0.05〜2.5重量部であるのがさらに好ましい。また、素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤である場合、核被覆層中の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の量が核被覆層での全成分100重量部に対して0.05〜5重量部であり、核部中に残りの化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有するか、または核被覆層中に化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有せず、核部中に化合物(I)またはその薬学的に許容される塩のすべてを含有することがより好ましく、核被覆層中に化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有せず、核部中に化合物(I)またはその薬学的に許容される塩のすべてを含有することがさらに好ましい。前述したように本発明の固形製剤における素製剤では、核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含み、該核被覆層中に有効成分を含有せず、該核部中に有効成分のすべてを含有することが好ましいが、この場合、皮膜中の成分や製剤外部の空気や湿度との接触による有効成分の安定性の低下や、有効成分が製剤外部に移動して失われることもより抑制することができる。
【0051】
本発明の固形製剤中に含まれる各添加剤の量は、製剤における一般的な使用の量の範囲内で構わない。また、結合剤を結合剤溶液として用いる場合には、結合剤溶液中の結合剤の濃度は、一般に0.1〜50重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのがより好ましく、本発明の固形製剤は結合剤溶液のスプレーにより添加された結合剤の他に、粉末で添加された結合剤を含有していてもよい。
【0052】
素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤である場合の素製剤における、核被覆層(核部が芯部と芯被覆層からなる場合の芯被覆層も同様である)の量は、該核被覆層を有する素製剤の製造をパウダーコーティング法で行う場合は、素製剤100重量部に対して5〜90重量部であるのが好ましく、10〜75重量部であるのがより好ましく、10〜50重量部であるのがさらに好ましい。該核被覆層の量が5重量部以上では、核部全体を粉末散布剤でコーティングすることがより容易となり、90重量部以下では、細粒剤または顆粒剤として適正な粒子サイズの素製剤をより製造しやすい。一方、スプレーコーティング法で行う場合には、核被覆層の量は、素製剤100重量部に対して0.1〜90重量部であるのが好ましく、0.5〜50重量部であるのがより好ましく、1〜30重量部であるのがさらに好ましい。
【0053】
本発明の固形製剤は、経口投与できればいかなる形状のものでもよいが、中でも、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形状であるのが好ましく、細粒剤または顆粒剤の形状であるのがより好ましい。また、本発明の固形製剤をカプセルに充填して、本発明の固形製剤を含有するカプセル剤や、必要により他の添加剤等とともに混合および/または造粒して本発明の固形製剤を含有する粒子状製剤またはドライシロップ剤や、本発明の固形製剤を含有するマルチプルユニット錠としてもよい。
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
表1に示す顆粒剤A〜Cを以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒(ノンパレル-103、32〜42メッシュ、フロイント産業製、以下同じ)150gに、流動層造粒コーティング装置(Flow coater-Mini、フロイント産業製、以下同じ)を用いて、化合物(A)(協和発酵製)0.75g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達製、以下同じ)0.375gおよびタルク0.375gを蒸留水に溶解および分散させたスプレー液75gをスプレーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;表1の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒150gにFlow coater-Miniを用いて、素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で5.8重量部(顆粒剤A)、11.6重量部(顆粒剤B)および23.2重量部(顆粒剤C)になるまでそれぞれスプレー液をスプレーコーティングすることにより顆粒剤を得た。
【実施例2】
【0056】
表1に示す顆粒剤D〜Fを以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒900gに、遠心転動型造粒装置(CF-360, CFグラニュレーター360、フロイント産業製、以下同じ)を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)(協和発酵製、粉砕して体積平均粒子径をおよそ60μmとした、以下同じ) 6gと白糖粉末(日局精製白糖、三井製糖製、以下同じ)294gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;表1の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒800gにCF-360を用いて、素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で5.8重量部(顆粒剤D)、11.6重量部(顆粒剤E)および23.2重量部(顆粒剤F)になるまでそれぞれスプレー液をスプレーコーティングすることにより顆粒剤を得た。
【0057】
比較例1
実施例1と同様にして素顆粒を得た。
【0058】
比較例2
実施例2で同様にして素顆粒を得た。
【0059】
【表1】

【0060】
試験例1(光安定性試験)
実施例1〜2および比較例1〜2で得た各顆粒剤および各素顆粒を用い、光安定性試験を行った。光安定性試験は、シャーレ上に各顆粒剤または各素顆粒を均一に配置して、25℃、相対湿度60%の恒温槽内で白色蛍光灯5000Lux光を10日間(120万Lux・hr)照射することにより行った。曝光後、サンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより化合物(A)の類縁物質生成量を求めた。光安定性試験の結果を表2に示す。
高速液体クロマトグラフィー条件
カラム;Inertsil C8 4.6×250mm GL Sciences Inc.
カラム温度;40℃付近の一定温度
移動相;0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH3.5) : アセトニトリル = 550mL : 450mL + ラウリル硫酸ナトリウム 2.3g
検出方法 :紫外線吸光光度法 (波長299nm)
【0061】
【表2】

【0062】
表2より、遮光剤(酸化チタン、黄色三二酸化鉄および三二酸化鉄)を素製剤100重量部に対して0.6重量部以上含有する皮膜を有する実施例1で得られた各顆粒剤では、皮膜のない比較例1で得られた素顆粒と比較して、曝光下における類縁物質(B)の顕著な抑制が認められた。同様に実施例2で得られた各顆粒剤では、比較例2で得られた素顆粒と比較して、曝光下における類縁物質(B)の顕著な抑制が認められ、化合物(A)を含有する素製剤を、遮光剤を含有する皮膜でコーティングすることは、化合物(A)を含有する固形製剤の光安定性の改善に大きな効果があることが明らかとなった。なお、類縁物質(B)は化合物(A)の幾何異性体であり、光異性化により生成し、固形製剤において遮光保存下では生じない。
【実施例3】
【0063】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒1080gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末114gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;表3の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒800gにCF-360を用いて、スプレー液を素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で17.4重量部になるまでスプレーすることにより顆粒剤を得た。
【実施例4】
【0064】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒900gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末294gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例5】
【0065】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末594gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例6】
【0066】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末114gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末480gをパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例7】
【0067】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末294gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末300gをパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例8】
【0068】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末78gとトウモロコシデンプン(Starch1500、カラコン製、以下同じ)36gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末336gとトウモロコシデンプン144gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例9】
【0069】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末113gと軽質無水ケイ酸(サンリシア350、富士シリシア化学製)1gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末475gと軽質無水ケイ酸5gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例10】
【0070】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末108gとタルク(リスブラン、キハラ化成製、以下同じ)6gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末456gとタルク24gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;実施例3と同様にして顆粒剤を得た。
【0071】
【表3】

【0072】
試験例2(光安定性試験)
実施例3〜10で得た各顆粒剤を用い、光安定性試験を行った。光安定性試験は、シャーレ上に各顆粒剤を均一に配置して、25℃、相対湿度60%の恒温槽内で昼白色光(D65)ランプ1000Lux光を50日間(120万Lux・hr) 照射することにより行った。曝光後、サンプリングを行い、試験例1と同様に高速液体クロマトグラフィーにより化合物(A)の類縁物質生成量を求めた。光安定性試験の結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4より、実施例3〜10で得られた顆粒剤のいずれにおいても、曝光下において類縁物質(B)の生成が顕著に抑制されていることが認められ、いずれも優れた顆粒剤であることが明らかとなった。
【実施例11】
【0075】
表5に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒2000gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5.9重量%)をスプレーしながら、化合物(A)23.55gと白糖粉末[前記白糖を粉砕機(サンプルミルKIIWG-1F、不二パウダル製)を用いて粉砕し、体積平均粒子径を約30μmにした、以下同じ]368.8gと軽質無水ケイ酸(アドソリダー101、フロイント産業製、以下同じ)2.83gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5.9重量%)をスプレーしながら、白糖粉末1587.8gと軽質無水ケイ酸12.25gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。(以上の素顆粒の製造を3回繰り返した)
得られた素顆粒を通風乾燥機(VD-1000SJ、日東理科工業株式会社)で乾燥後、振動篩502CBH(不二パウダル製)を用いて分級(355〜820μm)した。得られた素顆粒は高収率(分級収率96%)であった。
遮光剤を含有する皮膜を有する顆粒剤;表5の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒9300gに流動層造粒乾燥機(フローコータFLO-15EX、フロイント産業製)を用いて、素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で17.4重量部になるまでスプレー液をスプレーコーティングすることにより顆粒剤を得た。
得られたコーティング顆粒を、振動篩502CBH(不二パウダル製)を用いて分級(355〜850μm、分級収率96%)し、軽質無水ケイ酸をコーティング顆粒99.9%重量部あたり0.1%重量部添加して混合し製剤を得た。
【0076】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含有し、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)


で表される(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩を含有する素製剤と、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上の酸化チタン、黄色三二酸化鉄および三二酸化鉄から選ばれる1つ以上の物質を含有する皮膜またはカプセルを含む固形製剤。
【請求項2】
素製剤が、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体から選ばれる1つ以上の物質を含有する素製剤である1記載の固形製剤。
【請求項3】
素製剤が、糖、セルロースおよびセルロース誘導体を含有する素製剤である請求項1記載の固形製剤。
【請求項4】
糖が、乳糖および白糖から選ばれる1つ以上の物質である請求項2または3記載の固形製剤。
【請求項5】
素製剤が核部と、核部の外側に位置する核被覆層とを含む素製剤であり、該核部が(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩を含有し、該核被覆層が(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩を含有しないことを特徴とする請求項1記載の固形製剤。
【請求項6】
核被覆層が、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体から選ばれる1つ以上の物質を含有する核被覆層である請求項5記載の固形製剤。
【請求項7】
核被覆層が、糖と、デンプンおよび/または難水溶性無機塩との組み合わせを含有する核被覆層である請求項5記載の固形製剤。
【請求項8】
糖が、乳糖および白糖から選ばれる1つ以上の物質である請求項6または7記載の固形製剤。
【請求項9】
固形製剤の形状が細粒剤または顆粒剤である請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。

【公開番号】特開2013−47231(P2013−47231A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212220(P2012−212220)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2006−512140(P2006−512140)の分割
【原出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】