説明

ジョークラッシャ

【課題】歯板の十分な位置精度を確保するとともに、歯板の取り付け作業を容易化することができるジョークラッシャを提供する。
【解決手段】破砕装置フレーム31と、この破砕装置フレーム31に固定した固定歯32と、この固定歯32との間に破砕室38を形成し固定歯32に対して揺動する動歯33とを備えたジョークラッシャ30において、固定歯32及び動歯33は、破砕作業時に被破砕物に直接接触する歯板32a,33aと、歯板32a,33aを取り付ける歯板フレーム35,37とを備えており、歯板フレーム35,37は、歯板32a,33aの取り付け時に歯板32a,33aの幅方向の位置を案内する案内部87と、歯板32a,33aを支持するシート部88と、歯板32a,33aの幅方向の動きを拘束する拘束部89とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石等の被破砕物を破砕するジョークラッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャは、対向設置された固定歯と動歯の間のV字状の破砕室に岩石等の被破砕物を投入し、固定歯に対する動歯の揺動運動によって被破砕物を破砕する形式の破砕装置である。一般にジョークラッシャの動歯及び固定歯は磨耗により消耗するため、破砕時に被破砕物と直接接触する歯板部分は交換部品になっている。この種のものの中に、動歯の歯板とその支持部材(スイングジョー)の互いの対向面の下端の両側部に設けた直方体状の凹凸部が係合して歯板の幅方向のズレを規制する構成が開示されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−170507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置では、前述したように歯板の下部に直方体状の凹凸部を2箇所設けており、凹部の天井面を凸部の上面に載せることで歯板を支持するとともに、凹部の歯板の幅方向(以下、単に幅方向)の外側を向く面と凸部の内側を向く面とで歯板の幅方向への位置ずれを防止している。
【0005】
しかしながら、凹凸部は直方体状であって幅方向に対向する凹凸部の対向面は互いに鉛直に延びており、歯板を下ろして支持部材に取り付ける際に幅方向の位置精度が悪いと嵌らないため、凹凸部を係合させる作業には慎重を要する。しかも、ジョークラッシャの破砕室(動歯及び固定歯間の空間)は狭隘であり、歯板の取り付け作業時には作業者はジョークラッシャの上で作業せざるを得ないところ、上記凹凸部は歯板の下端部に設置されているが故に両者が嵌り合う状況を作業者が目視しながら作業を進めることが難しい。そのため、歯板の取り付け作業には必要以上に時間と労力を要している。
【0006】
本発明の目的は、歯板の十分な位置精度を確保するとともに、歯板の取り付け作業を容易化することができるジョークラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、破砕装置フレームと、この破砕装置フレームに固定した固定歯と、この固定歯との間に破砕室を形成し前記固定歯に対して揺動する動歯とを備えたジョークラッシャにおいて、前記固定歯及び前記動歯は、破砕作業時に被破砕物に直接接触する歯板と、この歯板を取り付ける歯板フレームとを備えており、前記歯板フレームは、前記歯板の取り付け時にこの歯板の幅方向の位置を案内する案内部と、前記歯板を支持するシート部と、前記歯板の幅方向の動きを拘束する拘束部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記案内部が、前記歯板側に設けたテーパ形状又はアール形状の被案内面に接触するとともに当該被案内面に形状が対応する案内面を備えており、前記歯板フレームの下部に設置されていることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記歯板の前記歯板フレームとの対向面が、当該面の中心について点対称に形成されていることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記案内部が、前記シート部及び前記拘束部を兼ねていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯板の十分な位置精度を確保するとともに、歯板の取り付け作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャを備えた破砕機の全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャを備えた破砕機の全体構造を表す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャの内部構造を表す側断面図であって動歯が作業位置にある状態を表した図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャの内部構造を表す側断面図であって作業位置よりも固定歯から動歯が離間した状態を表した図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の側面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図であって可動歯板を離して図示しスイングジョーの歯板取り付け面を表した図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図であってスイングジョーを離して図示し可動歯板の裏面を表した図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャにおける可動歯板のスイングジョーへの取り付け方法を模式的に表した第1の図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャにおける可動歯板のスイングジョーへの取り付け方法を模式的に表した第2の図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図であって可動歯板を離して図示しスイングジョーの歯板取り付け面を表した図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図であってスイングジョーを離して図示し可動歯板の裏面を表した図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るジョークラッシャにおける可動歯板のスイングジョーへの取り付け方法を模式的に表した第1の図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るジョークラッシャにおける可動歯板のスイングジョーへの取り付け方法を模式的に表した第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るジョークラッシャを備えた破砕機の全体構造を表す側面図、図2はその平面図である。以下の説明において、図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0015】
図1及び図2に示した破砕機は、例えばビル解体時に搬出されるコンクリート塊や道路補修時に排出されるアスファルト塊等の建設現場で発生する大小様々な建設廃材、産業廃棄物、若しくは岩石採掘現場や切羽で採掘される岩石・自然石等を被破砕物とし、これら被破砕物を受け入れて破砕するものである。本実施の形態の破砕機は、走行体1とこの走行体1に搭載した破砕機能構成部2とを備えており、走行体1によって自力走行することができるようになっている。但し、このような自走式の破砕機に限らず、牽引走行可能な破砕機や定置式の破砕機にも本発明は適用可能である。
【0016】
走行体1は、左右の走行装置3、及び走行装置3の上部に設けた本体フレーム4で構成されている。走行装置3は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の両端に設けた従動輪6及び駆動輪7、従動輪6及び駆動輪7に掛け回した履帯8、並びに駆動輪7の軸に出力軸が連結された走行用駆動装置9を備えている。本体フレーム4はトラックフレーム5上に設けられており、前後にほぼ水平に延在している。
【0017】
破砕機能構成部2は、被破砕物を受け入れるホッパ10、ホッパ10に受け入れた被破砕物を粒度選別し後段工程に供給する振動フィーダ20、振動フィーダ20から供給された被破砕物を破砕する破砕装置であるジョークラッシャ30、ジョークラッシャ30で破砕した破砕物等を機外に搬出するコンベヤ40、及び機体各所に搭載した作動装置の動力源等を内蔵した動力装置(パワーユニット)50を備えている。
【0018】
ホッパ10は、上方に向かって拡開した枠状の部材であり、本体フレーム4の後方部分の上部に設けた支持部材11に対して支持ポスト12,13を介して固定されている。図2に示したように、このホッパ10は、振動フィーダ20の上部の左右両側部及び後部を囲う一方で、振動フィーダ20の前部すなわちジョークラッシャ30との対向部は開放している。
【0019】
振動フィーダ20は、本実施の形態ではグリズリフィーダであり、ホッパ10の下方でジョークラッシャ30の後方に位置していて、その枠型の本体(フィーダ本体)21がホッパ10とは別個にスプリング22を介して支持部材11に支持されている。フィーダ本体21の内部には、図2に示すように、投入される被破砕物を受け止めるパンデッキ23が後半部分に、被破砕物を粒度選別する櫛歯状の篩部材(グリズリ)24が前半部分に設けられている。そしてフィーダ本体21の下部には、このフィーダ本体21を振動させる加振機(フィーダ用駆動装置)26が固定されている。また、篩部材24の下方にはこれら篩部材24から篩い落とされた細粒分をコンベヤ40上に導くシュート29が設けられている。
【0020】
ジョークラッシャ30は、ホッパ10及び振動フィーダ20の前方に位置し、本体フレーム4の前後方向中央部に支持されている。詳細は後で図3等を用いて説明するが、このジョークラッシャ30には固定歯及び動歯が備えられており、下方に向かって縮径するこれら固定歯及び動歯の間の空間が破砕室を画定している。動歯のスイングジョーは上端部がフライホイール(図示せず)に連結されており、フライホイールにジョークラッシャ用駆動装置(図示せず)の回転動力が伝達されると、フライホイールの回転運動が動歯の揺動運動に変換され、これにより固定歯に対して概略前後方向に動歯が揺動するようになっている。
【0021】
また、ジョークラッシャ30の周囲にはメンテナンスフロア60が設けられている。メンテナンスフロア60は、本体フレーム4の上部に設けられていて、ジョークラッシャ30の左右両側の前後に延びる部分と、ジョークラッシャ30及び動力装置50の間の左右の延びる部分とを有しており、平面視で開口を後方に向けたコの字状に展開されている。このメンテナンスフロア60は、そのジョークラッシャ30の左右に位置する部分の後端部が振動フィーダ20の近傍まで延在していて、振動フィーダ20の前部の左右に臨んでいる。ホッパ10の左右の壁面の前部は前方に向かって高さを減じるように上縁部が斜めに形成されており、作業者がメンテナンスフロア60と篩部材24との間を用意に行き来する際にホッパ10が障害とならないようになっている。メンテナンスフロア60上の縁部には柵61が設置されている。なお、機体の左右の側部の少なくとも一方には、メンテナンスフロア60に上がるための梯子62が設けられている。この梯子62は、履帯8の上方からメンテナンスフロア60まで立ち上がっている。
【0022】
コンベヤ40は、本体フレーム4等に吊り下げられたコンベアフレーム41、コンベアフレーム41の両端に設けた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)、従動輪及び駆動輪に掛け回したコンベアベルト44、及び駆動輪を回転駆動させるコンベヤ用駆動装置(図示せず)等を備えている。コンベヤ用駆動装置によって駆動輪が回転駆動されると、従動輪との間に掛け回されたコンベアベルト44が循環駆動する。このコンベヤ40は、左右のトラックフレーム5の間でシュート29及びジョークラッシャ30の下方(履帯8の後端部付近)の位置から前方に延び、動力装置50の下方位置(履帯8の前端部付近)で屈曲して斜めに立ち上がり、その傾斜角度を保ったまま動力装置50の前端下部付近を通って機体の全高付近まで延在している。
【0023】
コンベヤ40の上方には、排出する破砕物中の鉄筋等の磁性異物を除去する磁選機45が備えられている。この磁選機45は、動力装置50の前部に設けたアーム部材46から吊り下げられており、駆動輪及び従動輪(ともに図示せず)と、これら駆動輪及び従動輪巻き回されてコンベヤ40の延在方向と直交する方向(左右方向)に循環駆動する磁選機ベルト49と、駆動輪及び従動輪の間の磁選機ベルト49に覆われた空間に設けられた磁力発生手段(図示せず)とを備えている。
【0024】
動力装置50は、本体フレーム4の前側部分の上部に支持されており、ジョークラッシャ30よりも前方側に位置している。特に図示していないが、この動力装置50内には、本破砕機の動力源となるエンジンや、エンジンによって駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出された圧油の流通方向や流量を制御して対応の油圧アクチュエータに供給する制御弁装置等が備えられている。
【0025】
図3及び図4はジョークラッシャ30の内部構造を表す側断面図で、図3は動歯が作業位置にある状態、図4は作業位置よりも固定歯から動歯が離間した状態をそれぞれ表している。
【0026】
図3及び図4において、ジョークラッシャ30は、本体フレーム4に固定した破砕装置フレーム31、破砕装置フレーム31に固定した固定歯32、固定歯に対して揺動する動歯33、及び動歯33が作業位置となるように当該動歯33の下部を裏側(この場合前方)から支持するトグルプレート34を備えている。
【0027】
固定歯32は、破砕装置フレーム31に固定された歯板フレーム35と、この歯板フレーム35の前面(動歯33側)に取り付けられた固定歯板32aとを備えている。また動歯33は、破砕装置フレーム31にフライホイール(図示せず)の偏心軸36を介して揺動自在に取り付けた歯板フレームを兼ねるスイングジョー37、及びこのスイングジョー37の後面(固定歯32側)に取り付けられた可動歯板33aを備えている。
【0028】
固定歯板32a及び可動歯板33aは、破砕作業時に被破砕物に直接接触する磨耗部品であって交換部品である。これら固定歯板32a及び可動歯板33aは互いに対向して配置され、下方に向かって縮径するV字状の破砕室38を間に形成している。この破砕室38に供給された被破砕物は動歯33の揺動運動により固定歯32及び動歯33によって挟圧されて破砕される。ジョークラッシャ30から排出される破砕物の粒度は、破砕室38の排出間口、つまり固定歯板32aと可動歯板33aとの間の最小間隙、具体的には下端部の間隙により規定される。図3及び図4では図示していないが、破砕装置フレーム31にはチークプレート41a,41bが交換可能に取り付けられ、このチークプレート41a,41bが破砕室38の左右の側壁を構成する。
【0029】
また、動歯33を挟んで破砕室38と反対側(図3中右側)の空間には、例えば破砕室38で異物の噛み込み等が起こる等して過負荷が生じた場合に破砕装置30の構成要素を過大な荷重から保護する過負荷保護装置70が設置されている。この過負荷保護装置70は、スイングジョー37に過剰な破砕反力が作用した場合、図3の作業状態から縮退し図4のように破砕室38を開放するジャッキ71を備えている。
【0030】
ジャッキ71は破砕装置フレーム31に固定されており、そのロッド72の先端部とスイングジョー37の前面下部にはそれぞれトグルシート73,74が設けられている。トグルシート73,74には、介在するトグルプレート34の両端が当接している。そして、ジャッキ71の下部とスイングジョー37の前面の下端近傍の部分とは、油圧シリンダ75(図4参照、図3では図示省略)によって連結されている。この油圧シリンダ75によってスイングジョー37の下端部がジャッキ71側に付勢されており、トグルプレート34がトグルシート73,74間に挟み込まれて保持されている。なお、本実施の形態では、油圧シリンダ75によってスイングジョー37をジャッキ71側に付勢する構成を採ったが、油圧シリンダ75に代えてスプリングによってスイングジョー37をジャッキ71側に付勢する構成としても良い。
【0031】
図5は動歯33の斜視図、図6は側面図である。
【0032】
これらの図に示したように、可動歯板33aは、破砕室38に臨む面(固定歯板32aとの対向面、以下「破砕面」)が山81及び谷82を複数交互に連続させた波型形状に形成されている。山81及び谷82は、それぞれ上下方向に延びていて可動歯板33aの幅方向(左右方向)に並んでおり、水平面で切断した断面で見ると山81及び谷82の頂部は所定の曲率を持ったR形状を有している。また、本実施の形態においては、可動歯板33aの破砕面は、側面視(図6の図示)において中央部に比べて上部及び下部が破砕室38側に若干出た凹形状に形成されている。固定歯板32aの構成もほぼ同様である。
【0033】
可動歯板33aの支持構造について説明する。まず、歯板フレームを兼ねるスイングジョー37の下端部は、可動歯板33aを受ける受け部材83になっている。受け部材83はインロー構造によってスイングジョー37に破砕室38側から嵌合しており、本実施の形態の場合、受け部材83をスイングジョー本体に対してボルト・ナット84で締結しているが、着脱部品とする代わりにスイングジョー本体と一体に形成することもできる。また、スイングジョー37の歯板取り付け部の上部には楔部材85が備えられている。この楔部材85はボルト86によってスイングジョー37に対して進退するようになっている。ボルト86の進行軸は、動歯33の側面視(図6の図示)において、スイングジョー37の歯板取り付け面90(図6参照)の法線に対してスイングジョー37に向かって下方に傾斜しており、ボルト86を締め込むことによって楔部材85がスイングジョー37に向かって斜めに下降し、楔部材85によって受け部材83との間に挟み込むようにして可動歯板33aが把持固定される。なお、この段落で説明した歯板の支持構造については、固定歯板32aについても同様である。
【0034】
図7は可動歯板33aを離して図示しスイングジョー37の歯板取り付け面90を見せた動歯33の斜視図、図8はスイングジョー37を離して図示し可動歯板33aの裏面33bを見せた動歯33の斜視図である。
【0035】
図7に示したように、歯板フレームを兼ねるスイングジョー37には、可動歯板33aを取り付ける時に可動歯板33aの幅方向の位置を案内する案内部87、可動歯板33aの荷重を支持するシート部88、及び可動歯板33aの幅方向の動きを拘束する拘束部89が備えられている。本実施の形態では、案内部87及びシート部88は受け部材83に、拘束部89はスイングジョー本体に設けられている。一方、図8に示したように、可動歯板33aの裏面33bはスイングジョー37の歯板取り付け面90に対応した形状をしており、それぞれ案内部87、シート部88及び拘束部89に対応する被案内部91、着座部92及び被拘束部93を備えている。
【0036】
シート部88は、受け部材83の前面に位置し歯板取り付け面90から破砕室38側に突出しており、上面が可動歯板33aの着座部92が着座するシート面88aになっている。シート面88aは、動歯33の幅方向に延在しており、動歯33の側方から見ると、スイングジョー37の歯板取り付け面90の法線に対して前方に向かって下方に傾斜している。一方、シート部88に対応する可動歯板33aの着座部92は、可動歯板33aの裏面33bから破砕室38側に退避した凹部であり、その天井面がスイングジョー37のシート面88aに着座する着座面92aになっている。着座面92aは、動歯33の幅方向に延在しており、動歯33の側方から見ると、可動歯板33aの裏面33bの法線に対して前方に向かって下方に傾斜している。したがって、シート面88aに着座面92aが着座した状態では、可動歯板33aの自重や楔部材85からの押圧力によってスイングジョー37の歯板取り付け面90に可動歯板33aの裏面33bが押し当てられるようになっている。
【0037】
案内部87は、シート部88から上方に突出した凸部であり、スイングジョー37の幅方向における位置は必ずしも限定されないが、本実施の形態では中央に位置している。この案内部87は、2つの案内面87a,87b(図7参照)を有している。案内面87a,87bは、案内部87の左右の側部に設けられており、上方に向かってスイングジョー37の幅方向の中央側に傾斜したテーパ面で形成されている。一方の可動歯板33aの被案内部91は着座面92aに設けた凹部であり、案内面87a,87bに対応して傾斜した2つの被案内面91a,91bを有している。被案内面91a,91bは、被案内部91の左右の側部に設けられており、上方に向かってスイングジョー37の幅方向の中央側に傾斜したテーパ面で形成されている。すなわち、案内面87a,87bは、可動歯板33aの被案内面91a,91bに形状が対応していて、可動歯板33aをスイングジョー37に取り付ける際に下ろしていくと、被案内面91a,91bに接触して可動歯板33aの幅方向位置が案内される。このとき、シート部88からの案内部87の高さは、着座面92aからの被案内部91の深さ寸法以下、案内部87の下端部の幅は被案内部91の下端部の幅寸法以下に設定してあり、着座面92aがシート面88aに着座した状態においては、案内部87の各面が、被案内部91の各面に丁度接触するか、或いは被案内部91の各面との間に若干の隙間があく。
【0038】
なお、本実施の形態では案内面87a,87b及び被案内面91a,91bをテーパ形状とした場合を例に挙げて説明したが、ガイド機能を果たせば足りるため、例えばアール面形状(弧状の曲面)とすることもできる。
【0039】
拘束部89は、スイングジョー37の歯板取り付け面90から破砕室38側に突出した凸部であり、動歯33の幅方向を向く2つの面が、可動歯板33aの左右方向の動きを拘束する拘束面89a,89bとなっている。拘束面89a,89bは、歯板取り付け面90に直交する鉛直面である。一方の可動歯板33aの被拘束部93は、可動歯板33aの裏面33bから破砕室38側に退避した凹部であり、動歯33の幅方向両側の面が、上記拘束面89a,89bと接触する被拘束面93a,93bとなっている。被拘束面93a,93bは、可動歯板33aの裏面33bに直交する鉛直面である。拘束部89は、動歯33の幅方向の幅寸法が被拘束部93の幅に合わせてあるが、被拘束部93への嵌め込みができるように被拘束部93に対してマイナス公差、又はこれに準じて幅方向へのガタツキが抑えられる程度の寸法差に加工されている。拘束部89の縦方向の寸法は、被拘束部93の縦方向の寸法に対して小さく設定されており、可動歯板33aがスイングジョー37に取り付けられた状態で拘束部89の上下には被拘束部93の上下の面との間に多少の間隙があくようにしてある。
【0040】
なお、歯板取り付け面90における拘束部89の位置、ひいては可動歯板33aにおける被拘束部93の位置は必ずしも限定されるものではないが、本実施の形態において、拘束部89及び被拘束部93は、それぞれ歯板取り付け面90及び可動歯板33aの裏面33bの中心に位置している。そして、可動歯板33aの裏面33bは、その中心について点対称に形成されている。すなわち、可動歯板33aの裏面33bは、中心に拘束部92を有するとともに、被案内部92及び着座部92を上下に有している。破砕作業によって可動歯板33aの破砕面は特に排出口(下端部)付近が磨耗するところ、磨耗が進行した際には可動歯板33aを上下反転させてスイングジョー37に取り付けられるようになっている。
【0041】
なお、以上の歯板の幅方向位置の案内構成、及び幅方向の動きの拘束構成は、固定歯32側にも適用可能である。
【0042】
次に、上記構成の破砕機の動作を説明する。
【0043】
油圧ショベル等により被破砕物を投入すると、投入された被破砕物はホッパ10によって振動フィーダ20上に導かれる。加振機26によってフィーダ本体21とともに加振されるパンデッキ23上の被破砕物は振動によって前方の篩部材24に搬送される。篩部材24では、この篩部材24の選別粒径よりも小さな成分(ズリや土砂等)が篩部材24の隙間から落下し、被破砕物と分離されてシュート29を介してコンベヤ40上の後端付近に導かれる。一方、篩部材24の選別粒径よりも大きな被破砕物は、篩部材24上を通過してジョークラッシャ30に供給される。ジョークラッシャ30に供給された被破砕物は、固定歯32と動歯33とに挟圧されて出口隙間に応じた所定の粒径に破砕処理される。ジョークラッシャ30から排出された破砕物はコンベヤ40上に導かれ、シュート29を介して導かれた細粒分と合流し、コンベヤ40によって前方(図1中右側)に搬送されて機外に排出される。
【0044】
なお、コンベヤ40による搬出の途中、破砕物等に鉄筋等の磁性異物が混入している場合には、磁性異物が磁選機45によって吸着除去される。磁選機45においては、コンベヤ40上の破砕物等に対して磁選機ベルト49越しに作用させる磁力発生手段からの磁力によって磁性異物を磁選機ベルト49に吸着し、循環駆動する磁選機ベルト49によってコンベヤ40の側方に磁性異物を搬送し落下させる。
【0045】
また、本実施の形態では篩部材24から落下した細粒分をシュート29を介して破砕物と合流させる場合を例示したが、シュート29の下部に機体側方に延びるサイドコンベヤを取り付ける場合があり、この場合には、細粒分は破砕物とは別に機体側方に排出される。
【0046】
ここで、図9及び図10は可動歯板33aのスイングジョー37への取り付け方法を模式的に表した図である。
【0047】
可動歯板33aをスイングジョー37に取り付ける場合、歯板取り付け面90よりも破砕室38側に出たスイングジョー37の上部の構造物を避けて、図9に二点鎖線で示したように歯板取り付け面90に対して斜めに可動歯板33aを下ろしていき、まず、図10のように受け部材83に可動歯板33aの下端部を載せる。そして、受け部材83を支点にして可動歯板33aをスイングジョー37に向かって倒していって裏面33bを歯板取り付け面90に接触させ、楔部材85で可動歯板33aの上部を押えて可動歯板33aを固定する。固定歯板32aの取り付け作業も基本的に同じである。
【0048】
本実施の形態によれば、まず歯板フレームを兼ねるスイングジョー37に案内部87を設けたことにより、図9の状態から図10の状態に至る過程において、可動歯板33aの被案内部91を協働して当該可動歯板33aが幅方向に案内され、シート部88に着座部92が着座した時には可動歯板33aの幅方向位置が所定の位置に定まる。シート部88に着座部92が着座することによって可動歯板33aの高さ位置も所定位置に定まるので、図10の状態から可動歯板33aを歯板取り付け面90に倒していくと、スイングジョー38及び可動歯板33aそれぞれ拘束部89及び被拘束部93が互いに円滑に嵌合する。
【0049】
このように可動歯板33aを大体の幅方向位置において下ろしていけば、可動歯板33aが幅方向に位置決め(センタリング)されてシート部88に着座するため、ジョークラッシャの上部に居てスイングジョー37と可動歯板33aとが嵌まり合う様子を作業者が確認し難い状況下でも、可動歯板33aの幅方向の位置決め作業に慎重を要さず、その後の拘束部89及び被拘束部93の嵌め合わせも単に可動歯板33aを倒すだけでできる。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、歯板の幅方向及び上下方向の十分な位置精度を確保するとともに、歯板の取り付け作業を容易化することができる。これにより、歯板交換時間を短縮し交換作業の労力を軽減することができ、ジョークラッシャの稼動停止時間を短縮し作業効率を向上させることができる。また、歯板の幅方向及び上下方向の動きを強固に拘束することができるので、破砕作業中の歯板フレームに対する歯板のズレ動きも抑制することができる。
【0051】
図11は本発明の第2の実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた動歯の斜視図であって可動歯板33aを離して図示しスイングジョー37の歯板取り付け面90を見せた図、図12はスイングジョー37を離して図示し可動歯板33aの裏面33bを見せた図である。これらの図は図7及び図8に対応しており、既出図面と同様の部分には既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0052】
図11及び図12に示したように、本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、案内部が、シート部及び拘束部を機能的に兼ねている点である。本実施の形態における案内部94は、歯板取り付け面90から破砕室38側に突出した受け部材83の前面を切り欠いて形成した凹部であり、スイングジョー37の幅方向における位置は必ずしも限定されないが、本実施の形態では中央に位置している。案内部94の可動歯板33aとの対向面は、スイングジョー37の歯板取り付け面90と面一(歯板取り付け面90との段差がない)又は歯板取り付け面90よりも破砕室38と反対側に若干退避しており、歯板取り付け面90と平行である。案内部94は、2つの案内面94a,94b(図11参照)を有している。案内面94a,94bは、案内部94の左右の側部に設けられており、下方に向かってスイングジョー37の幅方向の中央側に傾斜したテーパ面で形成されている。また、案内部94は受け部材83の後面(破砕室38側の面)を左右に分断していて、案内面94a,94bは、受け部材83の上面から下面に至るまで直線的かつ平滑に延在している。
【0053】
一方、図12に示すように、可動歯板33aの裏面33bの下部には案内部94に対応する被案内部95が設けられている。この被案内部95の裏面33bの下端部に下方に凸形状に形成した凸部であり、そのスイングジョー37との対向面は裏面33bに連続している。但し、被案内部95の下端位置は可動歯板33aの破砕面の下端位置よりも高位置であり、破砕室38側から見て被案内部95が破砕面から出ることはない。被案内部95は、案内面94a,94bに対応して傾斜した2つの被案内面95a,95bを有している。被案内面95a,95bは、被案内部95の左右の側部に設けられており、下方に向かってスイングジョー37の幅方向の中央側に傾斜したテーパ面で形成されている。すなわち、スイングジョー37側の案内面94a,94bは、可動歯板33aの被案内面95a,95bに形状が対応していて、可動歯板33aをスイングジョー37に取り付ける際に下ろしていくと、被案内面95a,95bに接触して可動歯板33aの幅方向位置が案内される。また、被案内面95a,95bは、被案内部95の上端から下端に至るまで直線的かつ平滑に延在しており、その傾斜角は案内面94a,94bの傾斜角にそれぞれ合わせてある。
【0054】
このとき、本実施の形態において、受け側である案内部94の上端部の幅は被案内部95の上端部の幅寸法よりも小さく設定してある。そのため、案内面94a,94bに被案内面95a,95bが密着した状態では、受け部材83の上面が可動歯板33aに接触することはなく、案内面94a,94bで可動歯板33aの重量が支持される。また、案内面94a,94bと被案内面95a,95bとが隙間なく密着することで、可動歯板33aの左右方向の動きも拘束される。このような原理により、本実施の形態の案内部94は、シート部及び拘束部の役割を兼ねている。
【0055】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0056】
なお、以上の歯板の幅方向位置の案内構成、及び幅方向の動きの拘束構成は、固定歯32側にも適用可能である。
【0057】
図13及び図14は本実施の形態における可動歯板33aのスイングジョー37への取り付け方法を模式的に表した図である。
【0058】
可動歯板33aをスイングジョー37に取り付ける場合、歯板取り付け面90よりも破砕室38側に出たスイングジョー37の上部の構造物を避けて、図13に二点鎖線で示したように歯板取り付け面90に対して斜めに可動歯板33aを下ろしていく。すると、被案内部95が案内部94の内側を下降し、可動歯板33aの位置が幅方向に偏っている場合には、被案内面95a又は95bが案内面94a又は94bに当たって可動歯板33aの幅方向位置が中央に向けてガイドされ、もう一方の被案内面95b又は95aが案内面94b又は94aに接触すると、可動歯板33aのセンタリングが完了する(図14の状態)。そして、案内面94a,94bと被案内面95a,95bとの接触部を支点にして可動歯板33aをスイングジョー37に向かって倒していき、可動歯板33aの裏面33bを歯板取り付け面90に接触させる。この状態で、案内面94a,94bと被案内面95a,95bとが広く密着し、可動歯板33aの重量が案内面94a,94bで安定的に支持され、また可動歯板33aの幅方向の動きもガタツキなく拘束される。後は、楔部材85で可動歯板33aの上部を押えて可動歯板33aを固定する。
【0059】
このように、歯板フレームを兼ねるスイングジョー37に案内部94を設けたことにより、図13の状態から図14の状態に至る過程において、可動歯板33aの被案内部95を協働して当該可動歯板33aが幅方向に案内され、被案内部95a,95bが案内面94a,94bに双方接触した時には可動歯板33aの幅方向位置が所定の位置に定まる。また、被案内部95a,95bが案内面94a,94bにすることによって可動歯板33aの高さ位置も所定位置に定まり、なおかつ可動歯板33aの幅方向への動きも確りと拘束される。したがって、可動歯板33aを大体の幅方向位置において下ろしていけば、可動歯板33aが幅方向に位置決め(センタリング)されて案内面94a,94bに着座するため、ジョークラッシャの上部に居てスイングジョー37と可動歯板33aとが嵌まり合う様子を作業者が確認し難い状況下でも、可動歯板33aの幅方向の位置決め作業に慎重を要さず、さらに幅方向への可動歯板33aの動きの拘束や上下方向の位置決めも同時に行える。
【0060】
よって、本実施の形態によっても、歯板の幅方向及び上下方向の十分な位置精度を確保するとともに、歯板の取り付け作業を容易化することができる。これにより、歯板交換時間を短縮し交換作業の労力を軽減することができ、ジョークラッシャの稼動停止時間を短縮し作業効率を向上させることができる。また、歯板の幅方向及び上下方向の動きを強固に拘束することができるので、破砕作業中の歯板フレームに対する歯板のズレ動きも抑制することができる。
【0061】
なお、以上においては、可動歯板33a及び固定歯板32aの破砕面は、側面視(図6の図示)において中央部に比べて上部及び下部が破砕室38側に若干出た凹形状に形成されている場合を例に挙げて説明したが、これには限られない。例えば、側面視で中央部に比べて上部及び下部が破砕室38から退避した凸形状に形成されている場合、側面視で上部から下部まで平らな形状に形成されている場合にも本発明は適用可能であり、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0062】
30 ジョークラッシャ
31 破砕装置フレーム
32 固定歯
32a 固定歯板(歯板)
33 動歯
33a 可動歯板(歯板)
35 歯板フレーム
37 スイングジョー(歯板フレーム)
38 破砕室
87 案内部
87a,b 案内面
88 シート部
89 拘束部
91 被案内部
91a,b 被案内面
94 案内部(シート部、拘束部)
94a,b 案内面
95 被案内部
95a,b 被案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕装置フレームと、この破砕装置フレームに固定した固定歯と、この固定歯との間に破砕室を形成し前記固定歯に対して揺動する動歯とを備えたジョークラッシャにおいて、
前記固定歯及び前記動歯は、破砕作業時に被破砕物に直接接触する歯板と、この歯板を取り付ける歯板フレームとを備えており、
前記歯板フレームは、前記歯板の取り付け時にこの歯板の幅方向の位置を案内する案内部と、前記歯板を支持するシート部と、前記歯板の幅方向の動きを拘束する拘束部とを備えている
ことを特徴とするジョークラッシャ。
【請求項2】
前記案内部が、前記歯板側に設けたテーパ形状又はアール形状の被案内面に接触するとともに当該被案内面に形状が対応する案内面を備えており、前記歯板フレームの下部に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のジョークラッシャ。
【請求項3】
前記歯板の前記歯板フレームとの対向面が、当該面の中心について点対称に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のジョークラッシャ。
【請求項4】
前記案内部が、前記シート部及び前記拘束部を兼ねていることを特徴とする請求項2又は3に記載のジョークラッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−111522(P2013−111522A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259589(P2011−259589)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】