説明

ジ(アリールアミノ)アリール化合物の製造方法及びその合成中間体

【課題】優れたEML4−ALK融合タンパク及び変異EGFRタンパクのキナーゼ活性の阻害活性を有し、癌治療用医薬組成物の有効成分として有用なジ(アリールアミノ)アリール化合物の、高収率かつ低コストであり、医薬品としての工業的生産に好適である製造方法及びその製造方法において有用な合成中間体の提供。
【解決手段】次式(19)


で示される化合物を脱ケタール化反応に付し、更に1−メチルピペラジンを作用させて還元的アミノ化反応することによって、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(以下、「式(1)の化合物」ということがある。)の製造方法及びその合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)の化合物は、優れたEML4−ALK融合タンパク及び変異EGFRタンパクのキナーゼ活性の阻害活性を有し、癌治療用医薬組成物の有効成分として有用であることが報告(特許文献1)されている。
【化1】

(本明細書の式中のMeは、メチル基を示す。以降、同様。)
特許文献1に記載された式(1)の化合物(実施例23)の製造方法は、同文献に記載された製造例及び実施例を参照すると、反応式(I)に示されるものであることが分かる。つまり、これを総括的に説明すると、2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン(以下、「式(15)の化合物」ということがある。)と、2-(イソプロピルスルホニル)アニリン(以下、「式(8)の化合物」ということがある。)を用いて、同文献の製造例7に記載の方法に準じて反応させることで、同文献の製造例22の化合物(以下、「式(14)の化合物」ということがある。)を得て、次いで、得られた製造例22の化合物と、公知の方法(例えば、国際公開第WO2005/016894号パンフレットを参照)によって製造された2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1−イル)ピペリジン-1-イル]アニリン(以下、「式(13)の化合物」ということがある。)を用いて、同文献の実施例1に記載の方法に準じて反応させることで、目的とする式(1)の化合物を製造する方法である。
【0003】
【化2】

【0004】
しかし、特許文献1に開示された式(1)の化合物の製造方法は、工業的生産に適用しようとする場合、原料の安定的な調達の面に加えて、本明細書中で後述する参考例でも示されるように、収率面においても問題を有していることから、工業的生産上、到底満足し得る方法ではなかった。
【0005】
特許文献1に開示された式(1)の化合物の製造方法は、例えば、後述するように、生成物の収率が低い工程、例えば、収率が約50%程度(場合により40%に達しないこともある)となる工程が含まれ、最終目的物である式(1)の化合物までの通算収率は、約10〜16%程度にとどまっており、収率面及びコスト面で問題を有していることから、工業的生産上、到底満足し得る方法ではなかった。また、式(15)の化合物が、安定的な調達(入手可能なスケール、製造に必要な期間)やコスト(化合物価格)の面で問題を有し、工業的生産における原料としては不適当と言わざるを得ない点、さらに、カラムクロマトグラフィーによる精製が必要となる工程(後述の参考例の第2工程、第4工程、及び第5工程)や、変異原性を示すメシル酸エステルが副生成物として生成されうる工程(後述の参考例の第5工程)を含んでいる点からも、該製造方法は、医薬品としての工業的生産上、問題がある方法と言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2009/008371号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高収率かつ低コストであり、医薬品としての工業的生産に好適である、式(1)の化合物の製造方法、及びその製造方法において有用な合成中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、式(1)の化合物の工業的な製造方法に関して鋭意検討した結果、所定の原料及び合成中間体を用いることによって、カラムクロマトグラフィーによる精製が必要な工程や、変異原性を示すメシル酸エステルが生成されうる工程を含まず、さらに、通算収率が大きく改善して高収率かつ低コストであり、医薬品としての工業的生産に好適な方法で、式(1)の化合物を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明によって、以下の式(1)の化合物の製造方法及びその合成中間体が提供される。
【0009】
[1]
式(19)
【化3】

(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Ra1及びRa2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Xは、脱離基又は-Hである。ただし、Xが-Hの場合、Ra1及びRa2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物。
[2]
Xが、ハロゲン、スルホニルオキシ基、低級アルキルスルファニル、及び低級アルカンスルホニルからなる群より選択される脱離基、又は-Hである、[1]に記載の化合物。
[3]
Xが、ハロゲン又は-Hである、[2]に記載の化合物。
[4]
Xが、Cl又は-Hであり、Ra1及びRa2がいずれもメチルである、[3]に記載の化合物。
[5]
式(20)
【化4】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Yは、ニトロ基又はアミノ基である。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物。
[6]
Rb1及びRb2がいずれもメチルである、[5]に記載の化合物。
[7]
式(3)
【化5】

(式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に1−メチルピペラジンを作用させて還元的アミノ化反応に付すことを特徴とする、
式(1)
【化6】

(式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物の製造方法。
[8]
[7]に記載の製造方法であって、式(3)の化合物が、式(4)
【化7】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を脱ケタール化反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(3)の化合物である製造方法。
[9]
[8]に記載の製造方法であって、式(4)の化合物が、式(21)
【化8】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物である製造方法。
[10]
式(5)
【化9】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Lvは、脱離基である。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を水素添加反応に付すことを特徴とする、式(4)の化合物の製造方法。
[11]
[8]に記載の製造方法であって、式(4)の化合物が、[10]に記載の製造方法により製造された式(4)の化合物である製造方法。
[12]
式(7)
【化10】

(式中、Lvは、それぞれ同一又は異なって、脱離基である。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に式(6)
【化11】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする、式(5)の化合物の製造方法。
[13]
[11]に記載の製造方法であって、式(5)の化合物が、[12]に記載の製造方法により製造された式(5)の化合物である製造方法。
[14]
[12]に記載の製造方法であって、式(7)の化合物が、式(9)
【化12】

(式中、Lvは、それぞれ同一又は異なって、脱離基である。)
の化合物に2−(イソプロピルスルホニル)アニリンを作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(7)の化合物である製造方法。
[15]
[13]に記載の製造方法であって、式(7)の化合物が、式(9)の化合物に2−(イソプロピルスルホニル)アニリンを作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(7)の化合物である製造方法。
[16]
[15]に記載の製造方法であって、式(6)の化合物が、式(22)
【化13】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物である製造方法。
[17]
[16]に記載の製造方法であって、式(22)の化合物が、式(12)
【化14】

(式中、Lgは、脱離基を示す。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に式(23)
【化15】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。)
の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付した後、水素添加反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(22)の化合物である製造方法。
【0010】
なお、本発明には、本発明化合物の塩、及びそれらを用いた製造方法も包含される。かかる塩のある態様としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0011】
また、本発明には、本発明化合物及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、結晶多形の物質、並びにそれらを用いた製造方法も包含する。さらに、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物、及びそれらを用いた製造方法も包含する。
【0012】
さらに、反応式(II)の化合物の中には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、反応式(II)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、或いはそれらの混合物、及びそれらを用いた製造方法も包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、高収率かつ低コストであり、医薬品としての工業的生産に好適である、式(1)の化合物の製造方法、及びその製造方法において有用な合成中間体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、及びIである。
【0015】
「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数1乃至6のアルキルであり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等であり、別の態様としては直鎖又は分枝状の炭素数1乃至4のアルキルであり、さらに別の態様としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルであり、さらに別の態様としてはメチルである。
【0016】
「低級アルキレン」とは、直鎖又は分枝状の炭素数1乃至6のアルキレンであり、例えばメチレン、エチレン(若しくは、ジメチレン)、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、プロピレン、メチルメチレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1,2,2-テトラメチルエチレン等である。別の態様としては、直鎖又は分枝状の炭素数1乃至4のアルキレンであり、さらに別の態様としては、ジメチレン、トリメチレンであり、さらに別の態様としては、ジメチレンである。
【0017】
本発明の式(1)の化合物の製造方法(第1工程〜第7工程)を反応式(II)に示し、以下、各工程のある態様を、第1工程〜第7工程の順に具体的に説明する。
【0018】
【化16】

【0019】
第1工程
(反応式(II)において、Lg及びLvは、脱離基であり、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルを示すか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。以下同様。)
本工程は、脱離基Lgを有する式(12)の化合物に、ピペリジン誘導体である式(11)の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付し、式(10)の化合物を製造する工程である。ここで、脱離基Lgの例としては、ハロゲンや、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基、或いは、メタンスルファニル、エタンスルファニル、n-プロパンスルファニル等の低級アルキルスルファニルや、メタンスルホニル、エタンスルホニル、n-プロパンスルホニル等の低級アルカンスルホニルが挙げられるが、ある態様としてはハロゲンであり、別の態様としてはF又はClであり、さらに別の態様としてはFである。
本工程の反応は、式(12)の化合物と式(11)の化合物とを等量若しくは一方を過剰量、ある態様としては、式(12)の化合物に対して、およそ1等量、例えば0.95〜1.20等量の式(11)の化合物を用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、ある態様としては0℃〜80℃、別の態様としては0℃〜40℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌して行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプルピル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、N,N-ジメチルホルムアミドを使用して行う。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、リチウムジイソプロピルアミド、n-ブチルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン若しくは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水素化ナトリウム等の無機塩基の存在下、ある態様としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0020】
第2工程
本工程は、ニトロ基を有する式(10)の化合物を水素添加反応に付し、還元して、アミノ基を有する式(6)の化合物を製造する工程である。
本工程の反応は、常圧から50気圧の水素雰囲気下、反応に不活性な溶媒中、式(10)の化合物を金属触媒存在下で、通常1時間〜5日間撹拌して行われる。この反応は、通常、冷却下から加熱下、ある態様としては0℃〜40℃で行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、水、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、テトラヒドロフランを使用して行う。金属触媒としては、パラジウム炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム等のパラジウム触媒、白金板、酸化白金等の白金触媒、還元ニッケル、ラネーニッケル等のニッケル触媒、ラネーコバルト等のコバルト触媒、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウム等のロジウム触媒、還元鉄等の鉄触媒等が好適に用いられるが、ある態様としては、パラジウム炭素や、白金板、酸化白金等の白金触媒、別の態様としては、パラジウム炭素を用いて行う。水素ガスの代わりに、式(10)の化合物に対して、等量若しくは過剰量のギ酸、ギ酸アンモニウム若しくはギ酸カリウム等を水素源として用いることもできる。
〔文献〕
M. Hudlicky著、「Reductions in Organic Chemistry, 2nd ed (ACS Monograph :188)」、ACS、1996年、日本化学会編「実験化学講座(第5版)」19巻(2005年)(丸善)
【0021】
第3工程
本工程は、脱離基Lvを有する式(9)の化合物に、アニリン誘導体である式(8)の化合物(2−(イソプロピルスルホニル)アニリン)を作用させて芳香族求核置換反応に付し、式(7)の化合物を製造する工程である。ここで、脱離基Lvの例としては、同一又は異なって、ハロゲンや、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基、あるいは、低級アルキルスルファニルや低級アルカンスルホニルが挙げられるが、ある態様としてはハロゲンであり、別の態様としてはF又はClであり、さらに別の態様としてはいずれもClである。
本工程の反応は、式(9)の化合物と式(8)の化合物とを等量若しくは一方を過剰量、ある態様としては、式(9)の化合物に対して、およそ1等量、例えば0.9〜1.2等量の式(8)の化合物を用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、ある態様としては0℃〜80℃、別の態様としては0℃〜40℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌して行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプルピル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、アセトンを使用して行う。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、リチウムジイソプロピルアミド、n-ブチルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン若しくは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水素化ナトリウム等の無機塩基の存在下、ある態様としては、炭酸水素ナトリウムの存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
また、上記のような塩基の存在下で反応を行なった場合、原料化合物の性質等によっては、例えば、原料化合物が分解する等、望む反応が進行しない、若しくは進行しにくい場合がある。その場合には、塩酸や臭化水素酸等の鉱酸、酢酸、プロピオン酸やトリフルオロ酢酸等の有機酸、メタンスルホン酸やp-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類の存在下で反応を行なうのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合もある。
【0022】
第4工程
本工程は、脱離基Lvを有する式(7)の化合物に、アニリン誘導体である式(6)の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付し、式(5)の化合物を製造する工程である。ここで、脱離基Lvの例としては、同一又は異なって、ハロゲンや、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基、あるいは、低級アルキルスルファニルや低級アルカンスルホニルが挙げられるが、ある態様としてはハロゲンであり、別の態様としてはF又はClであり、さらに別の態様としてはいずれもClである。
本工程の反応は、式(7)の化合物と式(6)の化合物とを等量若しくは一方を過剰量、ある態様としては、式(7)の化合物に対して、およそ1等量、例えば0.95〜1.20等量の式(6)の化合物を用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、ある態様としては0℃〜80℃、別の態様としては0℃〜40℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌して行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプルピル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、テトラヒドロフランを使用して行う。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、リチウムジイソプロピルアミド、n-ブチルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン若しくは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水素化ナトリウム等の無機塩基の存在下、ある態様としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
なお、本工程は、本工程に続く工程である、後述の第5工程及び第6工程と併せて、連続反応の工程とするのが、収率の面で有利な場合がある。
【0023】
第5工程
本工程は、脱離基Lvを有する式(5)の化合物を水素添加反応に付し、還元して、脱離基Lvを除去し、式(4)の化合物を製造する工程である。ここで、脱離基Lvの例としては、ハロゲンや、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基、あるいは、低級アルキルスルファニルや低級アルカンスルホニルが挙げられるが、ある態様としてはハロゲンであり、別の態様としてはF又はClであり、さらに別の態様としてはClである。
本工程の反応は、常圧から50気圧の水素雰囲気下、反応に不活性な溶媒中、式(5)の化合物を金属触媒存在下で、通常1時間〜5日間撹拌して行われる。この反応は、通常、冷却下から加熱下、ある態様としては0℃〜40℃で行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、水、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、テトラヒドロフランを使用して行う。金属触媒としては、パラジウム炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム等のパラジウム触媒、白金板、酸化白金等の白金触媒、還元ニッケル、ラネーニッケル等のニッケル触媒、ラネーコバルト等のコバルト触媒、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウム等のロジウム触媒、還元鉄等の鉄触媒等が好適に用いられるが、ある態様としては、パラジウム炭素や、白金板、酸化白金等の白金触媒、別の態様としては、パラジウム炭素を用いて行う。水素ガスの代わりに、式(5)の化合物に対して、等量若しくは過剰量のギ酸、ギ酸アンモニウム若しくはギ酸カリウム等を水素源として用いることもできる。
また、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基の存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
なお、本工程は、本工程に続く工程である、後述の第6工程と併せて、連続反応の工程とするのが、収率の面で有利な場合がある。
【0024】
第6工程
本工程は、ケタール基を有する式(4)の化合物を脱ケタール化反応に付し、ケトン基を有する式(3)の化合物を製造する工程である。
本工程の反応は、グリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley & Sons Inc、1999年を参照して実施することができるが、例えば、含水溶媒中、室温から加熱還流下、式(4)の化合物を酸性条件下で加水分解反応に付して行われる。
なお、反応式(II)におけるR1及びR2が、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルである態様、例えば、いずれもメチルである態様が、本工程の反応を円滑に進行させる上で、有利な場合がある。
【0025】
第7工程
本工程は、ケトン基を有する式(3)の化合物に、ピラジン誘導体である式(2)の化合物(1−メチルピペラジン)を作用させて還元的アミノ化反応に付し、式(1)の化合物を製造する工程である。
本工程の反応は、式(3)の化合物と式(2)の化合物とを等量若しくは一方を過剰量、ある態様としては、式(3)の化合物に対して、およそ2等量、例えば1.8〜2.2等量の式(2)の化合物を用い、これらの混合物を、還元剤の存在下、ある態様としては、式(3)の化合物に対して、およそ2等量、例えば1.8〜2.2等量の還元剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、-45℃から加熱還流下、好ましくは0℃〜室温において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、トルエンを使用して行う。還元剤としては、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられるが、ある態様としては、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いて行う。モレキュラーシーブス等の脱水剤、又は酢酸、塩酸、チタニウム(IV)イソプロポキシド錯体等の酸存在下、ある態様としては、酢酸存在下、別の態様としては、3.6〜4.4等量の酢酸存在下で反応を行うことが好ましい場合がある。反応によっては、式(3)の化合物と式(2)の化合物との縮合によりイミンが生成し、安定な中間体として単離できる場合がある。そのような場合には、このイミン中間体の還元反応により式(1)の化合物を得ることができる。
また、前記還元剤での処理の代わりに、酢酸、塩酸等の酸の存在下又は非存在下で、還元触媒を用いて反応を行うこともできる。この場合、反応は、常圧から50気圧の水素雰囲気下で、冷却下から加熱下で行われ、還元触媒としては、第2工程や第5工程で挙げた金属触媒等が好適に用いられるが、ある態様としては、パラジウム炭素や、白金板、酸化白金等の白金触媒、別の態様としては、パラジウム炭素を用いて行われる。また、ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、2-プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、水、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物が挙げられるが、ある態様としては、テトラヒドロフランを使用して行う。水素ガスの代わりに、ギ酸、ギ酸アンモニウム若しくはギ酸カリウム等を水素源として用いることもできる。
なお、本工程は、前記還元触媒を用いて反応を行うのが、副反応の抑制や収率の面で有利な場合がある。
〔文献〕
A. R. Katritzky及びR. J. K. Taylor著、「Comprehensive Organic Functional Group Transformations II」、第2巻、Elsevier Pergamon、2005年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0026】
反応式(II)における各化合物は、遊離化合物、その塩(例えば、その製薬学的に許容される塩)、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。反応式(II)における各化合物の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行なわれる。
【0027】
なお、反応式(II)におけるR1及びR2のある態様としては、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく(ただし、R1及びR2が一体となって、ジメチレンを形成することはない)、別の態様としては、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであり、さらに別の態様としては、いずれもメチルである。
【0028】
また、反応式(II)の第4工程及び第5工程において得られる式(5)の化合物及び式(4)の化合物をまとめて、式(24)の化合物で表す。
【化17】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Xは、脱離基又は-Hである。)
【0029】
式(24)の化合物のある態様としては、式(19)の化合物である。
【化18】

(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Ra1及びRa2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Xは、脱離基又は-Hである。ただし、Xが-Hの場合、Ra1及びRa2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。)
【0030】
式(19)の化合物のある態様としては、(1)Ra1及びRa2が、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルである化合物、別の態様としては、(2)Ra1及びRa2が、いずれもメチルである化合物、さらに別の態様としては、(3)Xが、ハロゲン、スルホニルオキシ基、低級アルキルスルファニル、及び低級アルカンスルホニルからなる群より選択される脱離基、又は-Hである化合物、さらに別の態様としては、(4)Xが、ハロゲン又は-Hである化合物、さらに別の態様としては、(5)Xが、Cl又は-Hである化合物、さらに別の態様としては、(6)上記(3)、(4)、又は(5)であり、かつ、上記(1)又は(2)である化合物、さらに別の態様としては、(7)Xが、Cl又は-Hであり、かつ、Ra1及びRa2が、いずれもメチルである化合物である。
【0031】
また、反応式(II)の第1工程及び第2工程において得られる式(10)の化合物及び式(6)の化合物をまとめて、式(25)の化合物で表す。
【化19】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Yは、ニトロ基又はアミノ基である。)
【0032】
式(25)の化合物のある態様としては、式(20)の化合物である。
【化20】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Yは、ニトロ基又はアミノ基である。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。)
【0033】
式(20)の化合物のある態様としては、Rb1及びRb2が、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルである化合物、別の態様としては、Ra1及びRa2が、いずれもメチルである化合物である。
【0034】
次に、反応式(I)で示された式(1)の化合物の公知の製造方法を参考例として、以下に具体的に示す。なお、本明細書中、「1H-NMR(CDCl3)」とは重クロロホルム中の1H-NMRにおけるピークのδ(ppm)を示し、「1H-NMR(DMSO-d6)」とはジメチルスルホキシド-d6中の1H-NMRにおけるピークのδ(ppm)を示し、「EI」とはEI-MS[M]+を示し、「ESI+」とはESI-MS[M+H]+を示し、「ESI-」とはESI-MS[M-H]-を示す。なお、「343K」との記載がある場合は、343K(70℃)での測定結果であることを示す。
【0035】
(参考例)
第1工程 1-(3-メトキシ-4ニトロフェニル)ピペリジン-4-オン(式(17)の化合物)の合成
4-フルオロ-2-メトキシ-1-ニトロベンゼン(4.00 g)、炭酸カリウム(8.00 g)及びN,N-ジメチルホルムアミド(40 mL)の混合液に、4-ピペリドン 一水和物 塩酸塩(4.40 g)を加え、70℃で一夜撹拌した。この反応混合物に水(150 mL)を加え、酢酸エチル(80 mL)で2回抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄して、1-(3-メトキシ-4ニトロフェニル)ピペリジン-4-オン(4.62 g,収率78.9%)を黄土色固体として得た。
【0036】
1H-NMR(CDCl3):2.58-2.70(4H,m),3.76-3.84(4H,m),3.98(3H,m),6.34(1H,d,J=2.5Hz),6.45(1H,dd,J=2.5,9.3Hz),8.04(1H,d,J=9.3Hz)
上記の機器データは、本工程と同様の反応によって得られた1-(3-メトキシ-4ニトロフェニル)ピペリジン-4-オンのデータを示した。
【0037】
第2工程 1-[1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン-4イル]-4-メチルピペラジン(式(16)の化合物)の合成
1-(3-メトキシ-4ニトロフェニル)ピペリジン-4-オン(4.62 g)及び1,2-ジクロロエタン(60 mL)の混合液に、N-メチルピペラジン(2.50 mL)を加え30分間撹拌した後に、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(4.78 g)を加え、室温で一夜撹拌した。この反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150 mL)を加えクロロホルム(50 mL)で2回抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール:飽和アンモニア水=30:1:0.1-15:1:0.1)で精製後、ヘキサンで洗浄して1-[1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン-4イル]-4-メチルピペラジン(4.52 g,収率73.2%)を黄色固体として得た。
【0038】
1H-NMR(CDCl3):1.55-1.70(2H,m),1.87-2.04(2H,m),2.31(3H,s),2.38-2.77(9H,m),2.89-3.05(2H,m),3.83-4.06(5H,m),6.31(1H,d,J=2.6Hz),6.42(1H,dd,J=2.6,9.4Hz),7.99(1H,d,J=9.4Hz)
【0039】
第3工程 2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン(式(13)の化合物)の合成
1-[1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン-4イル]-4-メチルピペラジン(2.18 g)及びエタノール(50 mL)の混合液に5%パラジウム炭素(600 mg)を加え、常圧水素雰囲気下、室温で8時間撹拌した。セライトで濾過した後、溶媒を減圧留去して、2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン(1.96 g,収率98.8%)を薄紫色固体として得た。
【0040】
1H-NMR(CDCl3):1.64-1.80(2H,m),1.87-1.99(2H,m),2.26-2.80(11H,m),3.36-3.63(4H,m),3.83(3H,s),6.42(1H,dd,J=2.3,8.3Hz),6.52(1H,d,J=2.3Hz),6.64(1H,d,J=8.3Hz)
EI:304
【0041】
第4工程 4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(式(14)の化合物)の合成
2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン (56.7 g)とテトラヒドロフラン(500 mL)の混合液に、2-(プロパン-2-スルホニル)アニリン(50 g)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(44.0 mL)とTHF(500 mL)の混合液を滴下し、室温で14時間攪拌した。その後、2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン(18.9 g)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(22 mL)を追加し、さらに室温で三日間攪拌した。この反応混合物に水(300 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200 mL)を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣に酢酸エチル及びジエチルエーテルを加え、析出した副生成物である固体をろ別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=1:0-1:1)での精製とジエチルエーテルでの洗浄を行い、4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(43.1 g,収率55.9%)を得た。
【0042】
1H-NMR(DMSO-d6):1.14(6H,d,J=6.8Hz),3.45-3.57(1H,m),7.52-7.60(1H,m),7.80-7.87(1H,m),7.89-7.97(2H,m),8.64(1H,s),10.17(1H,s)
【0043】
第4工程(別法) 4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(式(14)の化合物)の合成
2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン(460 mg)とテトラヒドロフラン(5 mL)の混合液に、2-(プロパン-2-スルホニル)アニリン(600 mg)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.58mL)とテトラヒドロフラン(10 mL)の混合液を滴下し、室温で3日間攪拌した。この反応混合物に水(60 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、酢酸エチル(40 mL)で2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶出液;クロロホルム)で精製し、4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(340 mg,収率36.1%)を得た。
【0044】
1H-NMR(CDCl3):1.32(6H,d,J=6.8Hz),3.16-3.28(1H,m),7.30-7.36(1H,m),7.68-7.55(1H,m),7.90-7.95(1H,m),8.50(1H,d,J=8.4Hz),8.61(1H,s),9.88(1H,br)
ESI+:313
【0045】
第5工程 N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(式(1)の化合物)の合成
2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン(29.2 g)及びエタノール(450 mL)の混合液に、メタンスルホン酸(19.0 mL)を加え、室温で15分間撹拌した後に4-クロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(30.0 g)を加え、100℃で5時間撹拌した。この反応混合物を放冷後、ジエチルエーテル(900 mL)を加え析出した固体を濾取した。得られた固体を水(300 mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えpH8とした後に、酢酸エチル(300 mL)で3回抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール:飽和アンモニア水=100:1:0-20:1:0.1)で精製後、エタノールで洗浄して、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(27.9 g,収率50.1%)を淡ベージュ色固体として得た。
【0046】
1H-NMR(CDCl3):1.31(6H,d,J=6.8Hz),1.59-1.78(2H,m),1.90-2.01(2H,m),2.24-2.80(14H,m),3.19-3.32(1H,m),3.65-3.75(2H,m),3.88(3H,s),6.50-6.59(2H,m),7.18-7.30(1H,m),7.53-7.70(2H,m),7.88(1H,dd,J=1.4,8.0Hz),8.10(1H,br),8.37(1H,br),8.53(1H,br),9.29(1H,s)
【実施例】
【0047】
次に、本発明の反応式(II)で示された式(1)の化合物の製造方法について、以下に実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明がこれら実施例に限定されることはなく、また、当業者であれば、本発明の趣旨に反しない範囲内での、当業者に自明である方法によって、適宜、修飾及び変更が出来るものであり、当然のことながら、これらも本発明に含まれる。また、出発原料である各化合物は、当業者に自明である方法によって製造できる。
(実施例)
【0048】
第1工程 4,4-ジメトキシ-1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン(R1及びR2がいずれもメチルである、式(10)の化合物)の合成
4,4-ジメトキシピペリジン一塩酸塩(35.9 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(75 mL)を混合し、この混合溶液に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(57.5 mL)を加えた。ここに別途調製した5-フルオロ-2-ニトロアニソール(30.0 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(30 mL)を室温で加えて5時間撹拌した。この反応混合物に室温で水(120 mL)を加え、4時間半撹拌した後、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をN,N-ジメチルホルムアミドと水の混合溶液(1:1)(60 mL)、水(60 mL)、さらに水(60 mL)の順で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、4,4-ジメトキシ-1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン(49.9 g、収率96.1%)を結晶として得た。
【0049】
1H-NMR(DMSO-d6):1.72-1.80(4H,m),3.14(6H,s),3.44-3.50(4H,m),3.91(3H,m),6.52(1H,d,J=2.4Hz),6.60(1H,dd,J=2.4,9.2Hz),7.88(1H,d,J=9.2Hz)
ESI+:297
【0050】
第2工程 4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリン(R1及びR2がいずれもメチルである、式(6)の化合物)の合成
4,4-ジメトキシ-1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ピペリジン(45.0 g)とテトラヒドロフラン(225 mL)を混合し、この混合溶液に5%パラジウム炭素(約50%wet品、4.5 g)を室温で加え、水素雰囲気下(2.4821 x 105 Pa)、室温で5時間半撹拌した。その後、パラジウム炭素を濾去し、テトラヒドロフラン(90 mL)で洗浄した後、濾液を全量が約90 mLになるまで減圧濃縮してスラリーを得た。このスラリーを40℃にて1時間撹拌した後,n-ヘプタン(135 mL)を加え、40℃で1時間撹拌した後、0℃まで冷却し、n-ヘプタン(405 mL)を加えて、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をテトラヒドロフラン(9 mL)とn-ヘプタン(54 mL)の混合溶液で洗浄し、減圧下40℃で乾燥して、4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリン(37.9 g、収率93.7%)を結晶として得た。
【0051】
1H-NMR(DMSO-d6):1.72-1.80(4H,m),2.90-2.97(4H,m),3.11(6H,s),3.73(3H,m),4.21(1H,br),6.30(1H,d,J=2.4,8.4Hz),6.46-6.56(2H,m)
ESI+:267
【0052】
第3工程 4,6-ジクロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(LvがいずれもClである、式(7)の化合物)の合成
シアヌル酸クロリド(25.0 g)、炭酸水素ナトリウム(13.7 g)、2-(プロパン-2-スルホニル)アニリン(29.7 g)とアセトン(200 mL)を混合し、室温で25時間撹拌した。この反応混合物に水(200 mL)を室温で加えた後、19時間撹拌して、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をアセトンと水の混合溶液(1:1)(100 mL)で洗浄後、減圧下40℃で乾燥して、4,6-ジクロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(45.1 g、収率95.8%)を結晶として得た。
【0053】
1H-NMR(CDCl3):1.32(6H,d,J=6.8Hz),3.22(1H,sept,J=6.8Hz),7.37(1H,m),7.74(1H,m),7.93(1H,m),8.44(1H,m),10.02(1H,br)
ESI-:345,347
【0054】
第4工程 6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(LvがClであり、R1及びR2がいずれもメチルである、式(5)の化合物)の合成
4,6-ジクロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(40.0 g)とテトラヒドロフラン(400 mL)を混合し、この混合溶液に4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリン(32.2 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(16.38 g)を室温で加えて4時間撹拌した。その後、酢酸イソプロピル(40 mL)、次いで炭酸カリウム(2.0 g)と水(40 mL)の混合溶液を加えて抽出した。得られた有機層を全量が約200 mLになるまで減圧濃縮し、種晶として、6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの結晶(4 mg)を接種し、約15分間撹拌してスラリーを得た。このスラリーにn-ヘプタン(200 mL)を加え、0℃まで冷却して18時間撹拌し析出した結晶を濾取した。得られた結晶をテトラヒドロフラン(40 mL)とn-ヘプタン(40 mL)の混合溶液で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(61.4 g、収率92.4%)を結晶として得た。
【0055】
1H-NMR(CDCl3):1.30(6H,d,J=6.8Hz),1.88-1.92(4H,m),3.18-3.26(1H,m),3.23(3H,s),3.87(1H,br),6.53(2H,br),7.21-7.23(1H,m),7.62(1H,br),7.88(1H,d,J=7.9Hz),8.05(1H,br),8.48(1H,br),9.41(1H,br)
ESI-:575,577
【0056】
第4工程の別法(種晶を使用しない例) 6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(LvがClであり、R1及びR2がいずれもメチルである、式(5)の化合物)の合成
4,6-ジクロロ-N-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2-アミン(23.0 g)とテトラヒドロフラン(230 mL)を混合し、この混合溶液に4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリン(18.5 g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(12.7 mL)を室温で加えて2時間撹拌した。その後、酢酸イソプロピル(57.5 mL)、次いで炭酸カリウム(5.75 g)と水(115 mL)の混合溶液を加えて抽出した。得られた有機層を減圧濃縮した。得られた残渣にテトラヒドロフラン(50 mL)を加え撹拌してスラリーを得た。このスラリーにテトラヒドロフラン(75 mL)及びn-ヘプタン(75 mL)を加えて40℃で1時間撹拌した後、0℃まで冷却し、さらに18時間撹拌した。その後、n-ヘプタン(50 mL)を加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をテトラヒドロフランとn-ヘプタンの混合溶液(5:7)(24 mL)で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(30.6 g、収率80.0%)を結晶として得た。
【0057】
1H-NMR(CDCl3):1.30(6H,d,J=6.8Hz),1.88-1.92(4H,m),3.18-3.26(1H,m),3.23(3H,s),3.87(1H,br),6.53(2H,br),7.21-7.23(1H,m),7.62(1H,br),7.88(1H,d,J=7.9Hz),8.05(1H,br),8.48(1H,br),9.41(1H,br)
ESI-:575,577
【0058】
第5工程 N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(R1及びR2がいずれもメチルである、式(4)の化合物)の合成
6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(5.0 g)、テトラヒドロフラン(45 mL)、2-プロパノール(5 mL),10%パラジウム炭素(約50%wet品、1.0 g)を混合し、この混合溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.81 mL)を加えて、水素雰囲気下(2.4821 x 105 Pa)、40℃で5時間半撹拌した。パラジウム炭素を濾去し、テトラヒドロフラン(10 mL)で洗浄し、10%食塩水(20 mL)を加え抽出した。得られた有機層を減圧濃縮した。濃縮残渣にアセトン(10 mL)、ジイソプロピルエーテル(40 mL)を加え、30分間撹拌し石種した結晶を濾取した。得られた結晶をジイソプロピルエーテル(20 mL)で洗浄し、減圧下40℃で乾燥して、N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(4.31 g、収率91.6%)を結晶として得た。
【0059】
1H-NMR(DMSO-d6,343K):1.17(6H,d,J=6.8Hz),1.80(4H,dd,J=5.5,5.7Hz),3.15(6H,s),3.21(4H,dd,J=5.5,5.7Hz),3.77(3H,s),6.50(1H,dd,J=2.5,8.7Hz),6.62(1H,d,J=2.5Hz),7.25-7.28(1H,m),7.34(1H,d,J=8.7Hz),7.58(1H,br),7.77-7.79(1H,m),8.28(1H,s),8.49(1H,br),8.63(1H,br),9.25(1H,br)
ESI+:543
【0060】
第6工程 1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(式(3)の化合物)の合成
N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(4.0 g)、テトラヒドロフラン(36 mL)、2-プロパノール(4 mL)を含む溶液に35%塩酸(1.44 g)と水(4 mL)の混合溶液を加えて、室温で17時間半撹拌した。この反応混合物に、炭酸カリウム(2.4 g)と水(4 mL)の混合溶液を加えて、抽出した。得られた有機層を減圧濃縮した。濃縮残渣にアセトン(12 mL)、水(4 mL)を加えて30分間撹拌した後、水(28 mL)を加えて1時間撹拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をアセトン(8 mL)とテトラヒドロフラン(3 mL)の混合溶液で洗浄し、減圧下40℃で乾燥して、1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(3.42 g、収率99.2%)を結晶として得た。
【0061】
1H-NMR(DMSO-d6,343K):1.17(6H,d,J=6.8Hz),2.46-2.50(4H,m),3.40(1H,sept,J=6.8Hz),3.61(4H,dd,J=6.1,6.2Hz),3.79(3H,s),6.57(1H,dd,J=2.6,8.7Hz),6.70(1H,d,J=2.6Hz),7.25-7.29(1H,m),7.38(1H,d,J=8.7Hz),7.61(1H,br),7.77-7.80(1H,m),8.28(1H,s),8.50(1H,br),8.66(1H,br),9.25(1H,br)
ESI+:497
【0062】
第5工程及び第6工程(連続工程) 1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(式(3)の化合物)の合成
6-クロロ-N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(60.0 g)、テトラヒドロフラン(540 mL)、10%パラジウム炭素(約50%wet品、4.0 g)を混合し、この混合溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.37 g)及び2-プロパノール(60 mL)を加えて、水素雰囲気下(2.4131 x 105 Pa)、40℃で7時間撹拌した。パラジウム炭素を濾去し、テトラヒドロフラン(120 mL)で洗浄して、得られた濾液に活性炭(12.0 g)を加え、室温で一晩撹拌した。その後、活性炭を濾去し、テトラヒドロフラン(120 mL)で洗浄して、N-[4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシフェニル]-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンを含む溶液を得た。この溶液に、35%塩酸(21.7 g)と水(120 mL)の混合溶液を加えて、室温で21時間半撹拌した。この反応混合物に、炭酸カリウム(35.9 g)と水(120 mL)の混合溶液を加えて、抽出した。得られた有機層に活性炭(12.0 g)を加え、16時間撹拌した後、濾過して、活性炭をテトラヒドロフラン(120 mL)で洗浄した。得られた濾液を全量が約120 mLになるまで減圧濃縮した。得られた混合物にアセトン(180 mL)を加えた後、種晶として、1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オンの結晶(60 mg)を接種して1時間撹拌した後、水(480 mL)を加えて20時間撹拌して、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をアセトン(36 mL)とテトラヒドロフラン(96 mL)の混合溶液で洗浄し、減圧下40℃で乾燥して、1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(45.7 g、収率88.5%(連続2工程での収率))を結晶として得た。
【0063】
1H-NMR(DMSO-d6,343K):1.17(6H,d,J=6.8Hz),2.46-2.50(4H,m),3.40(1H,sept,J=6.8Hz),3.61(4H,dd,J=6.1,6.2Hz),3.79(3H,s),6.57(1H,dd,J=2.6,8.7Hz),6.70(1H,d,J=2.6Hz),7.25-7.29(1H,m),7.38(1H,d,J=8.7Hz),7.61(1H,br),7.77-7.80(1H,m),8.28(1H,s),8.50(1H,br),8.66(1H,br),9.25(1H,br)
ESI+:497
【0064】
第7工程 N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(式(1)の化合物)の合成
1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(30.0 g)、メチルピペラジン(12.1 g)、トルエン(300 mL)、及び酢酸(14.51 g)を混合し、室温で1時間撹拌した。この混合溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(25.6 g)を加えて、室温で18時間撹拌した。この反応混合物に、水(90 mL)及びメタノール(30 mL)を加え、抽出して、有機層及び水層1を得た。この有機層に、水(30 mL)を加え再抽出して、水層2を得た。水層1及び水層2を混合した後、酢酸イソプロピル(300 mL)を加えて抽出した。得られた水層にメタノール(330 mL)、及び水酸化ナトリウム(12.08 g)と水(60 mL)の混合溶液を加え、種晶として、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの結晶(4.0 mg)を接種し、室温で17時間撹拌した後、水(330 mL)を加えて、さらに室温で2時間半撹拌して、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をメタノール(60 mL)と水(60 mL)の混合溶液で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(28.0 g、収率79.8%)を結晶として得た。
【0065】
1H-NMR(CDCl3):1.31(6H,d,J=6.8Hz),1.59-1.78(2H,m),1.90-2.01(2H,m),2.24-2.80(11H,m),2.30(3H,s),3.19-3.32(1H,m),3.65-3.75(2H,m),3.88(3H,s),6.50-6.59(2H,m),7.18-7.30(1H,m),7.53-7.70(2H,m),7.88(1H,dd,J=1.5,8.3Hz),8.10(1H,br),8.37(1H,br),8.53(1H,br),9.29(1H,s)
ESI+:581
【0066】
第7工程の別法1(種晶を使用しない例) N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(式(1)の化合物)の合成
1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(5.0 g)、メチルピペラジン(2.02 g)、トルエン(50 mL)、及び酢酸(1.5 mL)を混合し、室温で1時間撹拌した。この混合溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(4.72 g)を加えて、室温で18時間撹拌した。この反応混合物に、水(15 mL)及びメタノール(5 mL)を加え、抽出して、有機層及び水層1を得た。この有機層に、水(5 mL)を加え再抽出して、水層2を得た。水層1及び水層2を混合した後、酢酸イソプロピル(50 mL)を加えて抽出した。得られた水層にメタノール(55 mL)、及び水酸化ナトリウム(2.0 g)と水(10 mL)の混合溶液を加え、室温で62時間撹拌した後、水(55 mL)を加えて、さらに室温で2時間撹拌して、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をメタノール(5 mL)と水(5 mL)の混合溶液で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(4.56 g、収率78.0%)を結晶として得た。
【0067】
1H-NMR(CDCl3):1.31(6H,d,J=6.8Hz),1.59-1.78(2H,m),1.90-2.01(2H,m),2.24-2.80(11H,m),2.30(3H,s),3.19-3.32(1H,m),3.65-3.75(2H,m),3.88(3H,s),6.50-6.59(2H,m),7.18-7.30(1H,m),7.53-7.70(2H,m),7.88(1H,dd,J=1.5,8.3Hz),8.10(1H,br),8.37(1H,br),8.53(1H,br),9.29(1H,s)
ESI+:581
第7工程の別法2(還元触媒を使用した例) N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(式(1)の化合物)の合成
1-[3-メトキシ-4-({4-[2-(プロパン-2-スルホニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)フェニル]ピペリジン-4-オン(5.0 g)、テトラヒドロフラン(30 mL)、メチルピペラジン(1.81 g)、10%パラジウム炭素(約50%wet品、0.8 g)を混合し、水素雰囲気下(2.4821 x 105 Pa)、40℃で7時間撹拌した。パラジウム炭素を濾去し、テトラヒドロフラン(10 mL)で洗浄して、得られた濾液を減圧濃縮した。濃縮残渣に2-ブタノン(9 mL)を加え、60℃で30分間撹拌した後、徐冷し、30℃でn-ヘプタン(9 mL)を加え、室温で19時間撹拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を2-ブタノン(1 mL)とn-ヘプタン(1 mL)の混液で洗浄した後、減圧下40℃で乾燥して、N-{2-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}-N'-[2-(プロパン-2-スルホニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(3.09 g、収率88.0%)を結晶として得た。
【0068】
1H-NMR(CDCl3):1.31(6H,d,J=6.8Hz),1.59-1.78(2H,m),1.90-2.01(2H,m),2.24-2.80(11H,m),2.30(3H,s),3.19-3.32(1H,m),3.65-3.75(2H,m),3.88(3H,s),6.50-6.59(2H,m),7.18-7.30(1H,m),7.53-7.70(2H,m),7.88(1H,dd,J=1.5,8.3Hz),8.10(1H,br),8.37(1H,br),8.53(1H,br),9.29(1H,s)
ESI+:581
【0069】
以下に本発明の効果を示す。
実施例における本発明の製造方法の収率は、以下の表1に示すとおりである。なお、第4工程〜第7工程については、本明細書中に複数の実施例を記載しているため、表1では、これら複数の実施例のうち、反応スケールの大きい例での収率を採用して表記した。
【0070】
【表1】

【0071】
一方、参考例における、式(1)の化合物の公知の製造方法の収率は、以下の表2に示すとおりである。
【0072】
【表2】

*1:参考例の第4工程では、式(15)の化合物を、式(8)の化合物に対して、約1.5等量使用して反応を行っているため、式(8)の化合物を基準に算出した。
*2:参考例の第4工程(別法)では、式(15)の化合物と式(8)の化合物を、ほぼ等量ずつ使用して反応を行っている。表1に示した実施例における本発明の製造方法の収率は、原料であるシアヌル酸クロリド(式(9)の化合物の1態様)を基準に算出しており、対応する原料を基準とした収率で比較にするため、参考例の第4工程(別法)では、式(15)の化合物(2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン)を基準に算出した。なお、特許文献1の製造例7(参考例の第4工程に対応する製法)では、2,4-ジクロロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジンと2-(プロパン-2-スルホニル)アニリンをほぼ等量ずつ使用して反応を行っている(収率:28.3%)。
【0073】
表1と表2から、本発明の製造方法が、公知の製造方法に比較して、50%以下の収率の工程を含まず、全工程での通算収率を高く維持することができており、コスト面でも有利であり、更に、本発明の製造方法は、カラムクロマトグラフィーによる精製を全く必要せず、かつ、変異原性を示すメシルエステル生成の懸念もないという点で、式(1)の化合物の優れた、特に医薬品としての工業的生産に好適な、製造方法であることは明らかである。
【0074】
参考例の製造方法においては、特に第4工程及び第5工程の収率が低収率となっている。参考例の当該工程では、いずれも約50%程度であるのに対して、当該工程に対応する工程である、実施例における本発明の製造方法の第3工程及び第4工程では、いずれも90%を超える高収率となっており、収率が大きく改善されている。この収率の改善は、反応性の高い所定の原料及び合成中間体、特には、式(9)の化合物及び式(7)の化合物と、当該原料及び合成中間体との反応に好適な所定の合成中間体、特には、式(6)の化合物を用い、さらに反応条件、特には、塩基性度、反応温度、溶媒等について数多くの試行錯誤を繰り返した結果、遂に達成されたものである。
【0075】
なお、実施例における本発明の製造方法においては、式(9)の化合物としてシアヌル酸クロリドを原料として使用しているが、参考例の製造方法の第4工程において、式(15)の化合物(2,4-ジクロロ-1,3,5-トリアジン)に替えて、シアヌル酸クロリドを使用した場合には、次工程の第5工程において、式(13)の化合物との反応によって得られる、式(26)の化合物が極めて不安定な化合物であること、さらに、式(26)の化合物以外に、式(27)の化合物が副生成物として多量に生成することが判明した。
【化21】

【0076】
従って、参考例の第4工程の式(15)の化合物に替えて、シアヌル酸クロリドを使用し、参考例に準じた製造方法により、第4工程及び第5工程の反応を行った後に、例えば、第5工程で得られた式(26)の化合物を水素添加反応に付すこと等によりClを除去して、式(1)の化合物を製造することは非常に困難と考えられる。
以上より、高収率で式(1)の化合物を得るためには、本発明の製造方法のとおり、式(9)の化合物を原料として使用し、式(7)の化合物を得た後、式(13)の化合物ではなく、式(6)の化合物と反応させる工程を経由して、式(1)の化合物を製造する必要がある。
【0077】
また、実施例における本発明の製造方法においては、式(9)の化合物としてシアヌル酸クロリドを、式(6)の化合物として4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリンを使用しているが、シアヌル酸クロリドは、大規模なスケールで製造が可能であり、一般化成品としても量産されていることから、式(15)の化合物と比較して、原料として大量かつ安価に入手することが容易である点で、安定的な調達やコスト面で優れた化合物であり、また、4-(4,4-ジメトキシピペリジン-1-イル)-2-メトキシアニリンは、式(13)の化合物と比較して、収率が良い点(表1の第1〜2工程合算、表2の第1〜3工程合算を参照)から、工業的生産に好適であり、コスト面でも優れた化合物である。
【0078】
さらに、式(15)の化合物の調達面の問題について、以下に詳細に説明する。
当該化合物の製造方法は、反応式(III)に示される方法(Synthesis, 11, 907, 1981参照、収率69%)であるが、合成中間体のN-シアノクロロホルムアミジンは熱的に不安定であり、乾燥工程での分解や、分解による急激な発熱(消防法における危険物第5類(自己反応性物質)の危険判定線を僅かに下回る程度)が起こるため、大規模スケールにおいては、爆発等の危険性が懸念される化合物であった。また、式(15)の化合物の製造方法については、トリアジンのClの置換数を2つに制御する点で反応条件に制限があることもあり、反応式(III)に示される方法以外には式(15)の化合物を効率的に得る方法は、これまで報告されていない。以上の点より、式(15)の化合物は、大量にかつ安定的な入手の点で、工業的生産における原料としては不適当と言わざる得ない化合物であった。
【化22】

なお、式(15)の化合物は、一般化成品として大規模なスケールでは量産されておらず、反応式(III)に示される方法により委託製造した場合、当該化合物の購入価格は、シアヌル酸クロリドの市場価格の約300倍以上であった。
【0079】
以上の点より、本発明方法が公知の方法に比較して、如何に工業的に優れているかは明かである。特に、本発明製造方法により、56.3%という高い通算収率を達成することが可能になり、これにより工業的に使用可能な製造方法が確立されたということができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によって、高収率かつ低コストであり、医薬品としての工業的生産に好適な、式(1)の化合物の製造方法、及びその製造方法において有用な合成中間体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(19)
【化1】

(式中、Ra1及びRa2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Ra1及びRa2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Xは、脱離基又は-Hである。ただし、Xが-Hの場合、Ra1及びRa2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物。
【請求項2】
Xが、ハロゲン、スルホニルオキシ基、低級アルキルスルファニル、及び低級アルカンスルホニルからなる群より選択される脱離基、又は-Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、ハロゲン又は-Hである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、Cl又は-Hであり、Ra1及びRa2がいずれもメチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式(20)
【化2】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Yは、ニトロ基又はアミノ基である。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物。
【請求項6】
Rb1及びRb2がいずれもメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
式(3)
【化3】

(式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に1−メチルピペラジンを作用させて還元的アミノ化反応に付すことを特徴とする、
式(1)
【化4】

(式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法であって、式(3)の化合物が、式(4)
【化5】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を脱ケタール化反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(3)の化合物である製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、式(4)の化合物が、式(21)
【化6】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物である製造方法。
【請求項10】
式(5)
【化7】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよく、Lvは、脱離基である。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を水素添加反応に付すことを特徴とする、式(4)の化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の製造方法であって、式(4)の化合物が、請求項10に記載の製造方法により製造された式(4)の化合物である製造方法。
【請求項12】
式(7)
【化8】

(式中、Lvは、それぞれ同一又は異なって、脱離基である。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に式(6)
【化9】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、R1及びR2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする、式(5)の化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の製造方法であって、式(5)の化合物が、請求項12に記載の製造方法により製造された式(5)の化合物である製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法であって、式(7)の化合物が、式(9)
【化10】

(式中、Lvは、それぞれ同一又は異なって、脱離基である。)
の化合物に2−(イソプロピルスルホニル)アニリンを作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(7)の化合物である製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の製造方法であって、式(7)の化合物が、式(9)の化合物に2−(イソプロピルスルホニル)アニリンを作用させて芳香族求核置換反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(7)の化合物である製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法であって、式(6)の化合物が、式(22)
【化11】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物である製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の製造方法であって、式(22)の化合物が、式(12)
【化12】

(式中、Lgは、脱離基を示す。なお、式中のMeは、メチル基を示す。)
の化合物に式(23)
【化13】

(式中、Rb1及びRb2は、それぞれ同一又は異なって、低級アルキルであるか、或いは、Rb1及びRb2が一体となって、低級アルキレンを形成してもよい。ただし、Rb1及びRb2が一体となって、ジメチレンを形成することはない。)
の化合物を作用させて芳香族求核置換反応に付した後、水素添加反応に付すことを特徴とする製造方法により製造された式(22)の化合物である製造方法。

【公開番号】特開2012−153674(P2012−153674A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16110(P2011−16110)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】