説明

スイッチング電源装置

【課題】従来よりも損失を低減することができ、瞬時停電時や負荷急変時でも負荷に対して要求電圧を安定的に供給可能なスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1Aは、交流電圧VINをスイッチング素子SW、SWで直接スイッチングして生じさせたスイッチング電圧VSWを一次巻線Tに供給し、二次巻線Tに誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部2Aと、誘起電圧を整流平滑する二次側整流平滑部3Aと、二次側整流平滑部3Aから出力された電圧を所望の二次側出力電圧Vに変換するDC/DCコンバータ部4とを備え、絶縁型PFC部2Aは、二次側出力電圧Vの直流成分に基づいてフィードバック制御され、DC/DCコンバータ部4は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータであり、二次側出力電圧Vの交流成分に基づいてフィードバック制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入力される交流電圧を負荷に供給すべき所定の直流電圧に変換して出力するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプロセッサ等の半導体集積回路を駆動するスイッチング電源装置には、低出力電圧化、大出力電流化、高効率化といったことが求められている。これらの要求を満足するよう設計された従来のスイッチング電源装置としては、例えば、非特許文献1に記載のスイッチング電源装置が知られている。
【0003】
図7に示すように、この従来のスイッチング電源装置1Dは、商用交流電圧等の交流電圧VINを2つのスイッチング素子SW、SWで直接スイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧VSWをトランスTの一次巻線Tに供給し、二次巻線Tに誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部2Dと、該誘起電圧を整流および平滑することにより得た二次側出力電圧Vを負荷に供給する二次側整流平滑部3Dとを備えている。また、スイッチング電源装置1Dでは、出力電圧検出部5D、絶縁部6およびスイッチング制御部7Dにより、二次側出力電圧Vが所望の電圧(負荷の要求電圧)となるようにスイッチング素子SW、SWがフィードバック制御される。
【0004】
このスイッチング電源装置1Dによれば、商用ブリッジダイオードおよび絶縁型DC/DCコンバータ部を備えた一般的なスイッチング電源装置よりも損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐藤守男,トランジスタ技術SPECIAL増刊“グリーン・エレクトロニクス No.1 高効率・低雑音の電源回路設計”,第1章 交流電流スイッチング電源の設計と試作,CQ出版社,2010年4月1日発行,p.14−15(図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このスイッチング電源装置1Dは、交流電圧VINを出力する外部電源側において瞬時停電が発生した場合に二次側出力電圧Vを要求電圧に維持することができなかった。また、スイッチング電源装置1Dは、交流電圧VINがゼロ付近となる時間帯で上記フィードバック制御が機能しないため、負荷の急変に対する応答性が悪く、二次側出力電圧Vにオーバーシュートおよびアンダーシュートが生じやすかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、従来の一般的なスイッチング電源装置よりも損失を低減することができ、しかも瞬時停電時や負荷急変時においても負荷に対して要求電圧を安定的に供給し続けることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置は、外部から入力された交流電圧をスイッチング素子で直接スイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧をトランスの一次巻線に供給し、該トランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部と、誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部と、二次側整流平滑部から出力された電圧を所望の二次側出力電圧に変換するDC/DCコンバータ部とを備え、絶縁型PFC部は、二次側出力電圧の直流成分に基づいてフィードバック制御され、DC/DCコンバータ部は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータであり、二次側出力電圧の交流成分に基づいてフィードバック制御されることを特徴とする。
【0009】
この構成では、二次側出力電圧の交流成分を安定化するDC/DCコンバータ部が二次側に備えられており、該交流成分は絶縁されることなくDC/DCコンバータ部に直接的にフィードバックされる。また、DC/DCコンバータ部は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータである。したがって、この構成によれば、瞬時停電や負荷急変に伴って二次側出力電圧が変動した場合においても、DC/DCコンバータ部が昇圧/降圧動作をすることにより該変動を直ちに修正することができ、負荷に対して要求電圧を安定的に供給し続けることができる。
【0010】
また、この構成では、DC/DCコンバータ部で直流成分の安定化を行う必要がないので、DC/DCコンバータ部を構成する各素子(昇圧/降圧動作に欠かせないチョークコイル等)に流れる電流はリプル電流のみとなる。したがって、この構成によれば、絶縁型DC/DCコンバータ部を備えた従来の一般的なスイッチング電源装置よりも、DC/DCコンバータ部における損失を低減することができる。
【0011】
上記第1実施形態に係るスイッチング電源装置は、上記トランスが第1のトランスと第2のトランスとを有し、上記絶縁型PFC部が、第1のトランスに直列に接続された一組のスイッチング素子からなる第1のスイッチング部により交流電圧をスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧を第1のトランスの一次巻線に供給し、該第1のトランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる第1の絶縁型PFC回路と、第2のトランスに直列に接続された一組のスイッチング素子からなる第2のスイッチング部により交流電圧をスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧を第2のトランスの一次巻線に供給し、該第2のトランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる第2の絶縁型PFC回路とを有し、第1の絶縁型PFC回路および第2の絶縁型PFC回路は、第1のスイッチング部と第2のスイッチング部とが交互にON/OFFするようにインターリーブ制御されるよう構成されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、二次側出力電圧のリプル電圧(交流成分)を低減することができるので、DC/DCコンバータ部における充放電電流による損失をさらに低減することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置は、外部から入力された交流電圧を一次側整流平滑部で整流および平滑し、該整流および平滑後の電圧をスイッチング素子でスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧をトランスの一次巻線に供給し、該トランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部と、誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部と、二次側整流平滑部から出力された電圧を所望の二次側出力電圧に変換するDC/DCコンバータ部とを備え、絶縁型PFC部は、二次側出力電圧の直流成分に基づいてフィードバック制御され、DC/DCコンバータ部は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータであり、二次側出力電圧の交流成分に基づいてフィードバック制御されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1実施形態に係るスイッチング電源装置と同様に、瞬時停電や負荷急変に伴う二次側出力電圧の変動を直ちに修正し、負荷に対して要求電圧を安定的に供給し続けることができる。
【0015】
また、この構成では、絶縁型PFC部が一次側整流平滑部を有しているので、スイッチング電圧の極性が反転することはない。したがって、この構成によれば、トランスをフライバック動作させる際にスイッチング素子のデューティ比を広い範囲で可変とすることができるので、外部から入力される交流電圧(入力電圧)の許容電圧範囲を広くすることができる。
【0016】
ここで、上記各実施形態におけるDC/DCコンバータ部は、高電位ラインにドレインが接続された第1のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子のソースにドレインが接続され、ソースが低電位ラインに接続された第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたチョークコイルと、チョークコイルの他端と低電位ラインの間に接続された第1のコンデンサと、高電位ラインおよび低電位ラインの間に接続された第2のコンデンサと、二次側出力電圧の交流成分に基づいて、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を制御するスイッチング制御部とで構成することができる。
【0017】
また、スイッチング制御部にフィードバックされた交流成分が正の場合は、第1のスイッチング素子が該スイッチング制御部の制御下でスイッチングし、第2のコンデンサの蓄積電荷で第1のコンデンサを充電する降圧型DC/DCコンバータとして動作し、スイッチング制御部にフィードバックされた交流成分が負の場合は、第2のスイッチング素子が該スイッチング制御部の制御下でスイッチングし、第1のコンデンサの蓄積電荷で第2のコンデンサを充電する昇圧型DC/DCコンバータとして動作するように上記DC/DCコンバータ部を構成することで、比較的容易に双方向DC/DCコンバータを実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の一般的なスイッチング電源装置よりも損失を低減することができ、しかも瞬時停電時や負荷急変時においても負荷に対して要求電圧を安定的に供給し続けることができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】DC/DCコンバータ部の具体的一例を示す回路図である。
【図3】DC/DCコンバータ部の等価回路図であって、(A)は降圧型DC/DCコンバータとして動作する場合の等価回路図、(B)は昇圧型DC/DCコンバータとして動作する場合の等価回路図である。
【図4】本発明に係るスイッチング電源装置の電圧波形である。
【図5】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の変形例を示す回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図7】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置を示す。同図に示すように、スイッチング電源装置1Aは、外部から入力された交流電圧VINをスイッチング素子SW、SWで直接スイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧VSWをトランスTの一次巻線Tに供給し、該トランスTの二次巻線Tに誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部2Aと、二次巻線Tの誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部3Aと、二次側整流平滑部3Aから出力された電圧を所望の二次側出力電圧Vに変換するDC/DCコンバータ部4と、スイッチング素子SW、SWをフィードバック制御するための出力電圧検出部5、絶縁部6およびスイッチング制御部7Aとを備えている。
【0022】
絶縁型PFC部2Aにおいては、トランスTの一次巻線T、スイッチング素子SWおよびスイッチング素子SWからなる直列回路が交流電圧VINを出力する外部交流電源に並列接続されている。スイッチング素子SW、SWは、基本的にいずれか一方がON状態となり、他方がOFF状態となるよう制御される。スイッチング素子SW、SWとしては、同図に示すFETの他、バイポーラトランジスタ、IGBTも使用することができる。但し、スイッチング素子SW、SWとして、バイポーラトランジスタ、IGBTを使用する場合には、別途バイポーラトランジスタ、IGBTと並列にダイオードを接続する必要がある。
【0023】
交流電圧VINが“正”の場合は、スイッチング素子SWがON状態、スイッチング素子SWがOFF状態とされる。これにより、外部交流電源から流れ込んできた電流は、一次巻線T、スイッチング素子SW、スイッチング素子SWのダイオードを順次通って流れ、スイッチング電圧VSWの極性は“正”となる。一方、交流電圧VINが“負”の場合は、スイッチング素子SWがOFF状態、スイッチング素子SWがON状態とされる。これにより、外部交流電源から流れ込んできた電流は、スイッチング素子SW、スイッチング素子SWのダイオード、一次巻線Tを順次通って流れ、スイッチング電圧VSWの極性は“負”となる。
【0024】
つまり、スイッチング電源装置1Aでは、スイッチング電圧VSWが正負両方の極性をとり得る。したがって、二次巻線Tの誘起電圧も正負両方の極性をとり得る。
【0025】
二次側整流平滑部3Aは、誘起電圧の極性に応じていずれか一方が電流を流す2つのダイオードと平滑コンデンサとを有する。2つのダイオードは、それぞれアノードが二次巻線Tの端部に接続され、カソードが高電位ライン8Hに接続されている。二次巻線Tのセンタータップは、低電位ライン8Lが接続されている。また、平滑コンデンサは、高電位ライン8Hと低電位ライン8Lの間に接続されている。
【0026】
出力電圧検出部5は、検出した二次側出力電圧Vを直流成分と交流成分とに分離する分離部を内包し、DC/DCコンバータ部4には二次側出力電圧Vの交流成分のみがフィードバックされる。また、絶縁型PFC部2Aのスイッチング素子SW、SWを制御するスイッチング制御部7Aには、絶縁部6によって絶縁された後の直流成分がフィードバックされる。
【0027】
一次側と二次側の絶縁を確保しつつ、二次側出力電圧Vに基づいて一次側に備えられた絶縁型PFC部2Aをフィードバック制御するためには、フォトカプラ等からなる絶縁部6の存在が必要不可欠である。一方、DC/DCコンバータ部4は二次側に備えられているので、絶縁することなく、二次側出力電圧Vの交流成分を直接的にフィードバックすることができる。
【0028】
DC/DCコンバータ部4は、スイッチング制御部9(図2)の制御下で、昇圧型のDC/DCコンバータとしても降圧型のDC/DCコンバータとしても動作する双方向DC/DCコンバータとなっている。DC/DCコンバータ部4は、例えば、図2に示す構成とすることで、比較的容易に双方向DC/DCコンバータを実現することができる。
【0029】
すなわち、DC/DCコンバータ部4は、高電位ライン8Hにドレインが接続された第1のスイッチング素子Qと、第1のスイッチング素子Qのソースにドレインが接続され、ソースが低電位ライン8Lに接続された第2のスイッチング素子Qと、第1および第2のスイッチング素子Q、Qの接続点に一端が接続されたチョークコイルLと、チョークコイルLの他端と低電位ライン8Lの間に接続された第1のコンデンサCと、第1および第2のスイッチング素子Q、Qに対して負荷側において高電位ライン8Hおよび低電位ライン8Lの間に接続された第2のコンデンサCと、第1および第2のスイッチング素子Q、Qを制御するスイッチング制御部9とを備えている。このうち、第2のコンデンサCは、二次側整流平滑部3Aの平滑コンデンサを兼ねていることが部品点数削減の観点から好ましい。
【0030】
スイッチング制御部9は、フィードバックされてきた二次側出力電圧Vの交流成分の極性(正/負)および絶対値の多寡に基づいて、第1および第2のスイッチング素子Q、Qを制御する。本実施形態において、第1および第2のスイッチング素子Q、QはいずれもFETであるが、これに代えてバイポーラトランジスタ、IGBTを使用することもできる。
【0031】
DC/DCコンバータ部4にフィードバックされてきた交流成分が“正”の場合、すなわち二次側出力電圧Vが負荷の要求電圧よりも高い場合、スイッチング制御部9は、二次側整流平滑部3Aの出力電圧を低下させるべくDC/DCコンバータ部4を降圧型のDC/DCコンバータとして動作させる。この場合は、DC/DCコンバータ部4を、第2のコンデンサCと第1のスイッチング素子Qとの接続点(高電位ライン8H)を入力、チョークコイルLと第1のコンデンサCとの接続点を出力とする等価回路として取り扱うことができる(図3(A)参照)。
【0032】
同図に示すように、降圧型のDC/DCコンバータとして動作する場合は、スイッチング制御部9の制御下で第1のスイッチング素子QがON/OFFを繰り返し、第2のコンデンサCに蓄積されていた電荷を第1のコンデンサCに移動させる。これにより、第2のコンデンサCは放電し、両端電圧(=二次側出力電圧V)が低下する。一方、第1のコンデンサCは充電され、両端電圧が上昇する。なお、第2のスイッチング素子QはOFFのままであり、同期整流のためのダイオードとみなすことができる。
【0033】
DC/DCコンバータ部4にフィードバックされてきた交流成分が“負”の場合、すなわち二次側出力電圧Vが負荷の要求電圧よりも低い場合、スイッチング制御部9は、二次側整流平滑部3Aの出力電圧を上昇させるべくDC/DCコンバータ部4を昇圧型のDC/DCコンバータとして動作させる。この場合は、DC/DCコンバータ部4を、チョークコイルLと第1のコンデンサCとの接続点を入力、第2のコンデンサCと第1のスイッチング素子Qとの接続点(高電位ライン8H)を出力とする等価回路として取り扱うことができる(図3(B)参照)。
【0034】
同図に示すように、昇圧型のDC/DCコンバータとして動作する場合は、スイッチング制御部9の制御下で第2のスイッチング素子QがON/OFFを繰り返し、第1のコンデンサCに蓄積されていた電荷を第2のコンデンサCに移動させる。これにより、第1のコンデンサCは放電し、両端電圧が低下する。一方、第2のコンデンサCは充電され、両端電圧(=二次側出力電圧V)が上昇する。なお、第1のスイッチング素子QはOFFのままであり、同期整流のためのダイオードとみなすことができる。
【0035】
一方、前記の通り、絶縁型PFC部2Aは二次側出力電圧Vの直流成分に基づいてフィードバック制御される。このため、図4に示すように、二次側整流平滑部3Aの出力電圧は、瞬時停電や負荷急変に伴って変動するものの、その直流成分は予め負荷の要求電圧に一致している。したがって、DC/DCコンバータ部4は、二次側整流平滑部3Aの出力電圧を降圧または昇圧することにより、瞬時停電や負荷急変に伴うAC的な変動のみを修正すればよい。
【0036】
言い換えると、スイッチング電源装置1Aでは、負荷の要求電圧と二次側出力電圧Vとの間にずれが生じた場合に、直流成分の安定化を担当する絶縁型PFC部2Aと、交流成分の安定化を担当するDC/DCコンバータ部4とが協働することにより、二次側出力電圧Vが負荷の要求電圧に維持される。なお、当然ながら、絶縁型PFC部2Aは力率改善のための波形整形も行う。
【0037】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Aでは、交流成分の安定化を担当するDC/DCコンバータ部4が二次側に備えられているので、絶縁することなく二次側出力電圧Vの交流成分をDC/DCコンバータ部4(スイッチング制御部9)に直接的にフィードバックすることができる。したがって、スイッチング電源装置1Aによれば、二次側出力電圧Vの変動に対する応答性を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Aでは、DC/DCコンバータ部4で直流成分の安定化を行う必要がないので、DC/DCコンバータ部4を構成する第1および第2のスイッチング素子Q、Q並びにチョークコイルLに流れる電流は交流成分の電流(リプル電流)のみとなる。したがって、スイッチング電源装置1Aによれば、絶縁型DC/DCコンバータを使用した従来の一般的なスイッチング電源装置に比べて、DC/DCコンバータ部4における損失を低減することができる。
【0039】
(変形例)
第1実施形態に係るスイッチング電源装置1Aは、種々の変形例が考えられる。例えば、図5に示すスイッチング電源装置1Bは、並列に接続された第1の絶縁型PFC部2Bおよび第2の絶縁型PFC部2B’からなるインターリーブ回路で絶縁型PFC部が構成されている。
【0040】
このうち、第1の絶縁型PFC部2Bにおいては、第1のトランスTの一次巻線Ta1、スイッチング素子SWa1およびスイッチング素子SWa2からなる直列回路が交流電圧VINを出力する外部交流電源に並列接続されている。スイッチング素子SWa1、SWa2は、基本的にいずれか一方がON状態となり、他方がOFF状態となるよう制御される。この変形例では、一組のスイッチング素子SWa1およびSWa2が本発明の「第1のスイッチング部」として機能する。
【0041】
同様に、第2の絶縁型PFC部2B’においても、第2のトランスTの一次巻線Tb1、スイッチング素子SWb1およびスイッチング素子SWb2からなる直列回路が交流電圧VINを出力する外部交流電源に並列接続されている。第2の絶縁型PFC部2B’のスイッチング素子SWb1、SWb2も、基本的にいずれか一方がON状態となり、他方がOFF状態となるよう制御される。この変形例では、一組のスイッチング素子SWb1およびSWb2が本発明の「第2のスイッチング部」として機能する。
【0042】
二次側整流平滑部3Bは、第1の絶縁型PFC部2B側の二次巻線Ta2にアノードが接続された2つのダイオードと、第2の絶縁型PFC部2B’側の二次巻線Tb2にアノードが接続された2つのダイオードとを有する。各ダイオードのカソードは高電位ライン8Hに接続され、各二次巻線Ta2、Tb2のセンタータップは低電位ライン8Lに接続されている。また、平滑コンデンサは、高電位ライン8Hと低電位ライン8Lの間に接続されている。
【0043】
スイッチング制御部7Bは、二次側出力電圧Vの直流成分に基づいて、第1の絶縁型PFC部2Bのスイッチング素子SWa1、SWa2、および第2の絶縁型PFC部2B’のスイッチング素子SWb1、SWb2を制御する。具体的には、交流電圧VINが“正”の期間(図5中の上側ラインがプラス、下側ラインがマイナス極性の期間)は、第1の絶縁型PFC部2B側のスイッチング素子SWa1および第2の絶縁型PFC部2B’側のスイッチング素子SWb1は、スイッチング制御部7Bによる制御に基づき、デットタイム(両方のスイッチング素子がOFF状態となっている期間)を挟みながら交互にON/OFF動作を繰り返すことで、インターリーブ動作を行う。一方、交流電圧VINが“負”の期間(図5中の上側ラインがマイナス、下側ラインがプラス極性の期間)は、第1の絶縁型PFC部2B側のスイッチング素子SWa2および第2の絶縁型PFC部2B’側のスイッチング素子SWa2は、スイッチング制御部7Bによる制御に基づき、デットタイムを挟みながら交互にON/OFF動作を繰り返すことで、インターリーブ動作を行う。
【0044】
図5に示していない他の構成要素(DC/DCコンバータ部4、出力電圧検出部5、絶縁部6)については、第1実施形態のものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
この変形例に係るスイッチング電源装置1Bによれば、二次側出力電圧Vのリプル電圧(交流成分)が低減されるので、DC/DCコンバータ部4における充放電電流による損失をさらに低減することができる。また、スイッチング電源装置1Bによれば、第1および第2の絶縁型PFC部2B、2B’のスイッチング素子SWa1、SWa2、SWb1、SWb2に流れる電流量が約1/2になるので、絶縁型PFC部における損失を半減することもできる。
【0046】
[第2実施形態]
図6に、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置を示す。同図に示すように、スイッチング電源装置1Cは、外部から入力された交流電圧VINを一次側整流平滑部で整流および平滑し、該整流および平滑後の電圧をスイッチング素子SWでスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧VSWをトランスTの一次巻線Tに供給し、該トランスTの二次巻線Tに誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部2Cと、二次巻線Tの誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部3Cと、二次側整流平滑部3Cから出力された電圧を所望の二次側出力電圧Vに変換するDC/DCコンバータ部4と、スイッチング素子SWをフィードバック制御するための出力電圧検出部5、絶縁部6およびスイッチング制御部7Cとを備えている。
【0047】
図1との比較から明らかなように、スイッチング電源装置1Cは、絶縁型PFC部2Aではなく絶縁型PFC部2Cを備えている点と、二次側整流平滑部3Aではなく二次側整流平滑部3Cを備えている点と、スイッチング制御部7Aではなくスイッチング制御部7Cを備えている点において、スイッチング電源装置1Aと相違している。
【0048】
本実施形態に係るスイッチング電源装置1Cによれば、一次側整流平滑部の商用ブリッジダイオードによって交流電圧VINが整流されるので、絶縁型PFC部2Cにおけるスイッチング素子SWおよび二次側整流平滑部3Cにおけるダイオードが1つでよく、部品点数を削減できるとともに、スイッチング制御部7Cを簡素化することができる。
【0049】
また、このスイッチング電源装置1Cでは、スイッチング電圧VSWの極性が反転することがないので、トランスTをフライバック動作させる際にスイッチング素子SWのデューティ比を広い範囲(ほぼゼロ〜75%程度)で可変とすることができ、交流電圧VINの許容電圧範囲を広くすることができる。
【0050】
なお、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Cは、商用ブリッジダイオードの分だけスイッチング電源装置1Aよりも損失が大きい点に注意が必要である。
【0051】
以上、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した具体的な形態に限定されるものではなく、当業者であれば、種々の変形例を想到し得ることは自明である。
【符号の説明】
【0052】
1A、1B、1C スイッチング電源装置
2A、2B、2B’、2C 絶縁型PFC部
3A、3B、3C 二次側整流平滑部
4 DC/DCコンバータ部
5 出力電圧検出部
6 絶縁部
7A、7B、7C スイッチング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された交流電圧をスイッチング素子で直接スイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧をトランスの一次巻線に供給し、該トランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部と、
前記誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部と、
前記二次側整流平滑部から出力された電圧を所望の二次側出力電圧に変換するDC/DCコンバータ部と、
を備え、
前記絶縁型PFC部は、前記二次側出力電圧の直流成分に基づいてフィードバック制御され、
前記DC/DCコンバータ部は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータであり、前記二次側出力電圧の交流成分に基づいてフィードバック制御される、
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記トランスは、第1のトランスと第2のトランスとを有し、
前記絶縁型PFC部は、
前記第1のトランスに直列に接続された一組のスイッチング素子からなる第1のスイッチング部により前記交流電圧をスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧を前記第1のトランスの一次巻線に供給し、該第1のトランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる第1の絶縁型PFC回路と、
前記第2のトランスに直列に接続された一組のスイッチング素子からなる第2のスイッチング部により前記交流電圧をスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧を前記第2のトランスの一次巻線に供給し、該第2のトランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる第2の絶縁型PFC回路と
を有し、
前記第1の絶縁型PFC回路および前記第2の絶縁型PFC回路は、前記第1のスイッチング部と前記第2のスイッチング部とが交互にON/OFFするようにインターリーブ制御されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
外部から入力された交流電圧を一次側整流平滑部で整流および平滑し、該整流および平滑後の電圧をスイッチング素子でスイッチングし、該スイッチングにより生じさせたスイッチング電圧をトランスの一次巻線に供給し、該トランスの二次巻線に誘起電圧を生じさせる絶縁型PFC部と、
前記誘起電圧を整流および平滑する二次側整流平滑部と、
前記二次側整流平滑部から出力された電圧を所望の二次側出力電圧に変換するDC/DCコンバータ部と、
を備え、
前記絶縁型PFC部は、前記二次側出力電圧の直流成分に基づいてフィードバック制御され、
前記DC/DCコンバータ部は、降圧および昇圧の両動作が可能な双方向DC/DCコンバータであり、前記二次側出力電圧の交流成分に基づいてフィードバック制御される、
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータ部は、
高電位ラインにドレインが接続された第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子のソースにドレインが接続され、ソースが低電位ラインに接続された第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の接続点に一端が接続されたチョークコイルと、
前記チョークコイルの他端と前記低電位ラインの間に接続された第1のコンデンサと、
前記高電位ラインおよび前記低電位ラインの間に接続された第2のコンデンサと、
前記二次側出力電圧の交流成分に基づいて、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータ部は、
前記スイッチング制御部にフィードバックされた交流成分が正の場合は、前記第1のスイッチング素子が前記スイッチング制御部の制御下でスイッチングし、前記第2のコンデンサの蓄積電荷で前記第1のコンデンサを充電する降圧型DC/DCコンバータとして動作し、
前記スイッチング制御部にフィードバックされた交流成分が負の場合は、前記第2のスイッチング素子が前記スイッチング制御部の制御下でスイッチングし、前記第1のコンデンサの蓄積電荷で前記第2のコンデンサを充電する昇圧型DC/DCコンバータとして動作する、
ことを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228073(P2012−228073A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93669(P2011−93669)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】