説明

スイッチング電源装置

【課題】塵埃による影響を低減し、回路部品を効率よく冷却することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】ケース11内にコイル、或いは/及び、トランスの入力側巻線32A、及び、出力側巻線32Bと、入力側巻線32A、出力側巻線32Bに流れる電流を制御するスイッチング素子31と、を含む回路部品を実装した基板30を備え、2次側の出力電圧に基づいてスイッチング素子31のスイッチングを制御するスイッチング電源装置10において、ケース11の内部を部品収容室50と風路55とに仕切るヒートシンク25を備え、部品収容室50に基板30を収め、回路部品のうち少なくともスイッチング素子31をヒートシンク25の部品収容室50側の表面27Aに接触させた状態で基板30に実装し、風路55に沿って風を流しヒートシンク25を介してスイッチング素子31を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子と、コイル、或いは/及び、トランスと、を有するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング素子と、コイル、或いは/及び、トランスとを含む回路部品を基板に実装して備えるスイッチング電源装置では、複数の放熱フィンを有するヒートシンクを備え、当該ヒートシンクに発熱の大きなスイッチング素子等の回路部品を固定して、この放熱フィンを介して回路部品が発する熱を放熱させている。この種のスイッチング電源装置では、放熱フィンをスイッチング電源装置の外部にむき出しにして外部に放熱することが考えられるが、放熱効率を向上するためにはケースの大型化が避けられない。そのため、スイッチング電源装置の小型化への要求に対応するために、吸気ファン、或いは/及び、吐出ファンを用いてケース内に空気を流して、強制空冷方式により回路部品を冷却すると共に、ケース内の高温の空気を外部に吐出して放熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−124322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸気ファン、或いは/及び、吐出ファンを用いてケース内に空気を流して、強制空冷方式により回路部品を冷却した場合、吸気ファン、或いは/及び、吐出ファンで、周囲から空気と一緒に微小金属片や埃等の塵埃がスイッチング電源装置内部に吸い込まれて、これらの塵埃がスイッチング電源装置内部にたまりやすくなる。電源内部に微小金属片や埃等の塵埃が蓄積すると、外部要因の故障の発生確率が高くなり、スイッチング電源装置は、短寿命となる可能性があるという問題があった。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、塵埃による影響を低減し、回路部品を効率よく冷却することができるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ケース内にコイル、或いは/及び、トランスの入力側巻線、及び、出力側巻線と、前記入力側巻線、出力側巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子と、を含む回路部品を実装した基板を備え、2次側の出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング電源装置において、前記ケースの内部を部品収容室と風路とに仕切るヒートシンクを備え、前記部品収容室に前記基板を収め、前記回路部品のうち少なくとも前記スイッチング素子を前記ヒートシンクの部品収容室側の表面に接触させた状態で前記基板に実装し、前記風路に沿って風を流し前記ヒートシンクを介して前記スイッチング素子を冷却することを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記ヒートシンクに、前記部品収容室と風路に貫通する貫通孔を設け、前記貫通孔を介して前記風路を流れる風を前記部品収容室に導入し、この導入された風で、前記基板に実装された回路部品を冷却する構成としても良い。また、前記基板には、前記風路の吸込み側に前記入力側巻線を設け、前記風路の吐き出し側に前記出力側巻線を設けた構成としても良い。また、前記ケースの部品収容室に、前記風路に風を流すファンを配置した構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケース内にコイル、或いは/及び、トランスの入力側巻線、及び、出力側巻線と、前記入力側巻線、出力側巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子と、を含む回路部品を実装した基板を備え、2次側の出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング電源装置において、前記ケースの内部を部品収容室と風路とに仕切るヒートシンクを備え、前記部品収容室に前記基板を収め、前記回路部品のうち少なくとも前記スイッチング素子を前記ヒートシンクの部品収容室側の表面に接触させた状態で前記基板に実装し、前記風路に沿って風を流し前記ヒートシンクを介して前記スイッチング素子を冷却するため、ヒートシンクを風路を流れる風で冷却して、ヒートシンクの部品収容室側の表面に接触するスイッチング素子を効率よく放熱させることができると共に、ヒートシンクでケースの部品収容室側と、風路と、を仕切ることができるため、回路部品を実装した基板が収容されるケースの部品収容室側へ塵埃が入り込むのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は下面図、(E)は平面図である。
【図2】スイッチング電源装置の内部構成を示す図であり、(A)は断面図、(B)は吸気側側面板を破線で示した透視図である。
【図3】ヒートシンクの平面図である。
【図4】ケース内部の風の流れを示す断面図である。
【図5】別の実施形態のスイッチング電源装置の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は下面図、(E)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るスイッチング電源装置10の構成を示す図であり、図1(A)は、スイッチング電源装置10の正面図、図1(B)は、スイッチング電源装置10の左側面図、図1(C)は、スイッチング電源装置10の右側面図、図1(D)は、スイッチング電源装置10の下面図である。スイッチング電源装置10は、詳細については後述するが、入力側巻線32A、及び、出力側巻線32Bを有するコイル、或いは/及び、トランスと、コイル、或いは/及び、トランスの入力側巻線32A、出力側巻線32Bに流れる電流を制御する半導体素子(スイッチング素子)31と、を備える。スイッチング電源装置10は、2次側の出力電圧に基づいて、半導体素子31のスイッチングを制御して、入力された電力を、入力側巻線32A、及び、出力側巻線32Bから構成されるコイル、或いは/及び、トランスで電力変換する電力変換装置であり、例えば、放電灯点灯装置として好適に用いることができる。
【0010】
図1(A)〜図1(D)に示すように、スイッチング電源装置10は、略筒形のケース11を備え、ケース11は、アルミ材により形成されるケース本体12、側面板13,14から構成される。ケース本体12は、ケース11の前面12A、背面12B、天面12C、及び、底面12Dを形成する。ケース11は、ケース本体12によって、左右に開口する略筒状に形成され、この左右の開口を塞ぐように、側面板13,14が取り付けられる。
【0011】
ケース本体12の前面12A、及び、背面12Bには、ケース本体12の長さL方向に亘って複数の凹部16A、凸部16Bが上下に並べられている。凹部16A、及び、凸部16Bは放熱フィンの役割を果たし、ケース本体12は、これらの凹部16A、及び、凸部16Bによって表面積が広くなるため、ケース本体12を介してケース11内部の熱をケース11の外部に放熱し易い構成となっている。
【0012】
側面板13,14の高さ寸法H2は、ケース本体12の高さ寸法H1よりも大きく形成される。また、側面板13,14の下端は略L字状に折り曲げられて脚部13A,14Aが形成される。スイッチング電源装置10は、ケース11の各側面にそれぞれ取付られた側面板13,14の脚部13A,14Aが、任意の設置面に載置されて設置される。スイッチング電源装置10は、底面12Dが、設置面から側面板13,14の高さ寸法H2と、ケース本体12の高さ寸法H1の差分だけ浮いた状態で設置される。
【0013】
ケース11の一方の側面を形成する側面板13には、図1(C)に示すように、スイッチング電源装置10をオン/オフする電源スイッチ18Aと、電源を接続するインプット側接続器18Bと、スイッチング電源装置10で変換された電力を対象機器へと供給する配線を接続するアウトプット側接続器18Cと、が備えられる。また、側面板13には、ケース11内に周囲の空気を導入するための側面側吸気口22Aが形成される。側面側吸気口22Aは、縦長楕円形状に形成されて、側面板13の下部に、ケース11の幅W方向に複数並べて設けられる。
【0014】
ケース11の他方の側面を形成する側面板14には、図1(B)に示すように、ケース11内の空気をケース11の外部に吐き出すための吐出口17が、側面板14の略中央に形成されている。側面板14には、吐出口17に対向させて吐出ファン21が取り付けられ、この吐出ファン21の駆動によって、ケース11内の空気が吐出側側面板14に設けられた吐出口17から吐き出されると共に、負圧によって、吸気側側面板13に形成された側面側吸気口22Aを介してケース11の周囲から空気がケース11内に導かれる。吐出口17は、底面12Dに形成された複数の細長孔形状の吹出孔17Aから構成されている。各吹出孔17Aは、短軸の長さが指などが入り込まない大きさ(数ミリ)に設定されている。この構成によれば、吹出口17を介して吐出ファン21に指などが触れてけがをすることを防止することができる。
【0015】
底面12Dには、図1(D)に示すように、吸気側側面板13側の端部に、縦長楕円形状の底面側吸気口22Bが、ケース11の幅W方向に複数並べて設けられる。底面12Dは、前述したように、スイッチング電源装置10が設置された状態で、設置面から側面板13,14の高さ寸法H2と、ケース本体12の高さ寸法H1の差分だけ浮いた状態となり、底面側吸気口22Bからもケース11の周囲から空気を吸い込んで、ケース11内に導入することができる。
【0016】
図2(A)に示すように、スイッチング電源装置10は、ケース11内に、回路部品を実装した基板30と、ケース11の内部を部品収容室50と風路55とに仕切るヒートシンクと、を備える。部品収容室50には、基板30が収められている。基板30は、ケース11の前面12A、及び、背面12Bと略平行に、ケース11の長さL(図1参照)方向に沿って配置される。基板30は、背面12Bから所定の絶縁距離分だけ離した位置で、背面12B側に寄せて配設される。ヒートシンク25は、ケース11の下部側に、基板30と略直角にケース11の長さL方向(図1参照)に沿って配置される。ケース11内には、基板30の他に複数枚の基板が収容される構成でも良く、すくなくとも、ヒートシンク25と略直角に配置される基板30には、ヒートシンク25に実装される後述の半導体素子31が実装されている。
【0017】
ヒートシンク25は、熱伝導率が高く、軽量なアルミ材から形成され、幅寸法W2は、ケース11の内側寸法W1と略同じに形成される。ヒートシンク25は、ヒートシンク本体27と、ヒートシンク本体27から幅方向に両外側に向かって延びる、腕部28A,28Bと、を備える。腕部28A,28Bは、ヒートシンク本体27の長さ方向に亘って形成される。腕部28A,28Bの端部には嵌合部29A,29Bがそれぞれ形成される。
この構成によれば、ケース11、及び、ヒートシンク25を軽量なアルミ材から形成することができるため、スイッチング電源装置10の質量を軽くすることができる。
【0018】
ケース11は、ケース本体12の前面12A、及び、背面12Bの内壁に、ケース11の長さ方向に亘ってケース本体12と一体に形成された一対のレール部12E,12Eを備える。レール部12E,12Eは、前面12A、及び、背面12Bから、ケース11内側に向かって略コの字上に形成され、ケース本体12の両側面側に開放されたレールである。ヒートシンク25は、レール部12E,12Eに腕部28A,28Bの端部に形成された嵌合部29A,29Bを嵌合させて、ケース本体12の側面側からスライドさせて、ケース本体12に取り付けることができる。また、腕部28A,28Bには、ヒートシンク25を側面板13,14にねじ等で固定するための固定部28C,28Cが形成されている。
【0019】
ケース11の内部には、このヒートシンク25と、底面12Dとの間に、ケース11の部品収容室50からヒートシンク25によって仕切られた空間である風路55が形成される。ヒートシンク25は、ヒートシンク本体27の風路55側に対向する面である裏面27Bに複数のフィン26を備える。フィン26は、ヒートシンク本体27の長さ方向に亘って設けられ、ヒートシンク本体27の裏面27Bは、これらのフィン26により表面積が広くなる。図2(B)は、スイッチング電源装置10の透視図であり、説明の便宜上、吸気側側面板13を破線で示した図である。図2(B)に示すように、吸気側側面板13に形成された側面側吸気口22Aは、高さ寸法H3が、ヒートシンク本体27の裏面27Bと底面12Dとの離間距離と略同じに設定されている。また、側面側吸気口22Aは、互いに隣接するフィン26間に配置されている、幅寸法W3が、互いに隣接するフィン26間の離間距離と略同じに設定される。これらの構成によれば、側面側吸気口22Aからケース11内に導入した空気を、裏面27Bに沿って、フィン26が通風抵抗となることなく、風路を流すことができ、効率よくヒートシンク25を冷却することができる。また、側面側吸気口22Aからケース11内に導かれた空気が、風路55ではなく、部品収容室50に側面側吸気口22Aから直接導かれるのを防ぐことができる。
【0020】
また、図示は省略したが、脚部13A,14Aによって、スイッチング電源装置10の設置面から浮いた状態で配設された底面12Dに設けられた底面側吸気口22Bは、側面側吸気口22Aと同様に、互いに隣接するフィン26間に配置されるとともに、幅寸法が、互いに隣接するフィン26間の離間距離と略同じに設定される。
ケース11の背面12B側に延びる腕部28Bには、ヒートシンク25に基板30の下部30Aをねじ等で固定するためのヒートシンク側基板固定部25Aが設けられる。また、ケース本体12の天面12Cには、ケース11の部品収容室50に向かって形成された基板レール12Fが設けられる。基板30は、この基板レール12Fに上端部32が嵌合し、ヒートシンク側基板固定部25Aに下部30Aがねじ等によって固定されてケース11内に収容される。
【0021】
また、ヒートシンク25は、腕部28Bに、風路55側に形成された小フィン26Aを備える構成であっても良い。腕部28Bは、基板30を固定するために腕部28Aよりも大きく形成されている。小フィン26Aにより、腕部28Bの風路55側の表面積が広くなるため、腕部28Bと底面12Dとの間の風路55を流れる風を有効的に利用して、ヒートシンク25の冷却効率を向上することができる。
吸気側側面板13には、この小フィン26Aに対応する小吸気口22Cが形成される。小吸気口22Cは、高さ寸法H4が、腕部28Bの風路55側の面と底面12Dとの離間距離と略同じに設定されている。また、小吸気口22Cは、隣接する小フィン26A間に配置され、幅寸法W4が、互いに隣接する小フィン26A間の離間距離と略同じに設定される。
底面12Dには、図示は省略したが、隣接するフィン26間と同様に、小フィン26A間に、底面側吸気口22Bが設けられている構成であっても良い。
【0022】
ヒートシンク25と、基板30とは、ケース11内に収容される前に、まず、ケース11の外部で、ヒートシンク25のヒートシンク側基板固定部25Aと、基板30の下部30Aと、をねじ等によって固定することで、互いに略L字状に連結される。ケース11の外部で略L字状に連結されたヒートシンク25と、基板30とは、ケース本体12の側面開口部から、レール部12E,12Eにヒートシンク25を、基板レール12Fに基板30の上端部32をスライドさせて、ケース11内に取り付けられる。図3は、基板30が連結されたヒートシンク25の平面図である。この図3では、説明の便宜上、基板30に半導体素子31のみを実装しているが、基板30には、後述するように、入力側巻線32A、出力側巻線32B、電流検出用抵抗33,33A、電解コンデンサ34、フィルムコンデンサ35、半導体素子31を制御する制御回路36などの各種回路部品が実装される。
【0023】
基板30には、図3に示すように、複数の半導体素子31が実装される。これらの半導体素子31は、オン/オフ動作を繰り返す半導体スイッチング素子を含み、発熱が大きい。基板30に実装される回路部品のうち、少なくとも半導体素子31は、ヒートシンク本体27の部品収容室50側の表面27Aに接触させた状態で基板30に実装され、ヒートシンク25に熱的に接合されている。この構成によれば、半導体素子31の発熱をヒートシンク25に伝熱して、ヒートシンク25を介して放熱させることにより、半導体素子31の温度上昇を抑制することができる。
【0024】
また、ヒートシンク25の表面27Aには、サーマルプロテクタ40が取り付けられ、このサーマルプロテクタ40でヒートシンク25の表面27Aの温度を検出している。サーマルプロテクタ40は、安全制御に用いられ、サーマルプロテクタ40で検出される表面27Aの温度が予め設定されている温度範囲を超えた場合には、スイッチング電源装置10は強制的にオフされる構成になっている。これにより、スイッチング電源装置10が、吐出ファン21の故障等による何らかの不具合から過熱状態になるのを防止することができ、スイッチング電源装置10の安全性を向上することができる。
【0025】
ヒートシンク25には、ヒートシンク本体27に、部品収容室50と風路55に貫通する複数の貫通孔24が設けられている。これらの貫通孔24は、ヒートシンク本体27の幅方向に1列に並べられるとともに、各列を互いに所定間隔を空けて複数列並べられる。また、ヒートシンク本体27の幅方向に1列に並べられる各貫通孔24は、裏面27Bに設けられた隣接するフィン26間に配置されている。貫通孔24は、ヒートシンク25をケース11に取り付けたときに、吸気側に配設される吸気側貫通孔24Aと、ケース11の略中央周辺に配設される中央側貫通孔24Bと、吐出側に配設される吐出側貫通孔24Cとを有する。
【0026】
吸気側貫通孔24Aは、底面12Dに設けられた底面側吸気口22Bの垂直方向からは、ケース11の内側にずらした位置に形成される。中央側貫通孔24Bは、ケース11の略中央、及び、ケース11の略中央と、前述した吸気側貫通孔24Aとの略中間位置にヒートシンク本体27の幅方向に一列に並べて設けられる。吐出側貫通孔24Cは、ヒートシンク本体27の吐出側に、複数列設けられ、吸気側貫通孔24A、中央側貫通孔24B、吐出側貫通孔24Cの孔数の割合は、それぞれ略3:2:6に設定されている。
【0027】
図4中に示した矢印は、ケース11内に導かれる空気の流れ、つまり、ケース11内の風の流れを示す。図4に示すように、側面側吸気口22A、及び、底面側吸気口22Bからケース11内に吸い込まれた空気は、風路55内をヒートシンク25の裏面27Bを沿って、吐出側側面板14に向かって流れる。
ケース11内は、吐出ファン21の駆動によって負圧となり、側面側吸気口22A、及び、底面側吸気口22Bからケース11内に空気が導かれる。
【0028】
吐出ファン21は、ケース11の部品収容室50に配置され、ケース11内に導かれた空気は、風路55から、ヒートシンク25に設けられた部品収容室50と風路55に貫通する貫通孔24を通って部品収容室50に引き込まれる。貫通孔24は、吸気側貫通孔24A、中央側貫通孔24B、吐出側貫通孔24Cから構成される。吐出側貫通孔24Cの数は、吸気側貫通孔24A、或いは、中央側貫通孔24Bの数よりも多く設定されるため、吐出側貫通孔24Cの通風抵抗が、吸気側貫通孔24A、或いは、中央側貫通孔24Bよりも低くなる。これによって、風路55内に導かれた空気は、一部が吸気側貫通孔24A、及び、中央側貫通孔24Bを介して部品収容室50に引き込まれながら、その大半は、通風抵抗の低い吐出側貫通孔24Cの方へと、ヒートシンク25の裏面27Bに沿って流れて、導かれる。
【0029】
このように、ケース11内に側面側吸気口22A、及び、底面側吸気口22Bから空気を導いて、風路55内の風をヒートシンク25の裏面27Bに沿って流すことができ、ヒートシンク25を空冷によって冷却することで、ヒートシンク25の表面27Aに接触させた状態で基板30に実装した半導体素子31からの発熱を効率よく放熱させて、半導体素子31を冷却することができる。また、半導体素子31が発した熱をヒートシンク25を介して吸熱し高温となった風路55を流れる空気は、吐出側貫通孔24Cを介して部品収容室50に導かれて、吐出口17からケース11の外部に排出される。これにより、半導体素子31が発した熱を吸熱した高温の空気を、基板30に実装された回路部品に影響を与えることなくケース11外に排出することができる。また、半導体素子31が発した熱を放熱させる役割を果たすヒートシンク25は、ケース11の外部にむき出しにされることなく、ケース11内に収容されるため、高温となるヒートシンク25に直接手などが触れる心配がなく、スイッチング電源装置10は、家庭用としても安全に使用することができる。
【0030】
風路55内に導かれた空気の一部は、吸気側貫通孔24A、及び、中央側貫通孔24Bを介して部品収容室50に引き込まれる。基板30には、風路55の吸込み側に入力側巻線32Aが設けられる。入力側巻線32Aは、コモンモードコイル、及び、昇圧チョッパー用チョークコイルの2種類から構成されている。また、基板30には、風路55の吐き出し側に出力側巻線32Bが設けられる。出力側巻線32Bは、降圧チョッパー用チョークコイル、及び、高圧パルス発生用チョークコイルの2種類から構成される。
部品収容室50に吸気側貫通孔24Aを介して風路55の吸込み側から引き込まれた空気は、基板30に設けられた入力側巻線32Aを空冷によって冷却する。また、部品収容室50に中央側貫通孔24Bを介して風路55から引き込まれた空気は、基板30に設けられた制御回路等を空冷によって冷却する。
【0031】
この構成によれば、風路55の吸込み側に設けられたヒートシンク25の吸気側貫通孔24Aから、部品収容室50に引き込まれた低温の空気で基板30に設けられた入力側巻線32A、つまり、電源の1次側の回路部品を冷却するため、半導体素子31が発した熱を吸熱する前の低温の空気で入力側巻線32Aを冷却することができ、少ない風量でも効率よ電源の1次側の回路部品を冷却することができる。
また、ヒートシンク25の中央側に形成された中央側貫通孔24Bからも空気を風路55から部品収容室50に導くため、部品収容室50を流れる風の風量を風路55の吐き出し側に向かうにしたがって増やすことができる。これにより、風路55の吐き出し側に設けられた出力側巻線32B(電源の2次側の回路部品)に流す風量を増やすことができ、電源の1次側の回路部品が発した熱を吸熱し空気温度が上昇していても電源の2次側の回路部品を十分に冷却することができる。
【0032】
ところで、ヒートシンク25に設けられた部品収容室50と風路55に貫通する貫通孔24を通って、風路55から部品収容室50に導かれる空気は、略水平方向に風路55内を流れる空気に対して、風向きを略90度変えて、略垂直方向に部品収容室50に吸引される。底面側吸気口22Bを介してケース11内に導かれた空気が、吸気側貫通孔24Aから部品収容室50に吸引される場合であっても、吸気側貫通孔24Aは、底面側吸気口22Bの垂直方向からずらした位置に形成されるため、底面側吸気口22Bを介してケース11内に導かれた空気は、風路55で水平方向に風向が変えられた後に、吸気側貫通孔24Aから部品収容室50に吸引される。
【0033】
ケース11内には、側面側吸気口22A、及び、底面側吸気口22Bを介して周囲から、空気とともに塵埃が浸入する場合がある。ケース11内に侵入した塵埃が、基板30に実装された回路部品に付着、或いは、堆積すると、回路部品の過熱や、電気回路のショート等の問題となる場合がある。しかしながら、上述した本実施形態の構成によれば、ヒートシンク25に設けられた部品収容室50と風路55に貫通する貫通孔24から部品収容室50に導かれる空気の流れは、風路55内を流れる空気の流れと風向が変わるため、これらの塵埃が、貫通孔24を介して部品収容室50に空気とともに導かれるのを防止することができ、ケース11内に侵入した塵埃は、回路部品が取り付けられていない風路55内に蓄積される。これにより、回路部品を実装した基板30が収容される部品収容室50に塵埃が浸入し、蓄積することがないため、塵埃の影響(外部要因)によるスイッチング電源装置10の故障の発生確率を低減することができる。
【0034】
<別の実施形態>
上述の実施形態では、吐出ファン21をケース11の部品収容室50に配置したが、この別の実施形態では、吐出ファン121はケース111の底面112Dに取り付けられて、風路55側に配置されている。
図5は、別の実施形態のスイッチング電源装置100の構成示す図であり、ケース11内部の風の流れを模式的に示している。なお、図5では、図1に示すスイッチング電源装置10と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図示は省略するが、図3に示したヒートシンク25の表裏を貫通する貫通孔24は、この別の実施形態のヒートシンクには設けられてない構成でも良く、その他のスイッチング電源装置100の内部構造は、図2、図3、及び、図4に示すスイッチング電源装置10と同様であり、説明は省略する。
【0035】
この別の実施形態では、吐出口117は、ケース11の底面を形成する底面112Dに形成される。吐出口117は、底面112Dの、吸気口22Bが形成された一端側112Eとは反対の他端側112Fに形成される。風路55の内部には、吐出口117に対向させて吐出ファン121が設けられる。吐出ファン121の駆動により、風路55内には、図5(A)に示したように、吸込口22A,22Bを介して周囲から吸い込まれた空気が、吐出口117に向かって流れる風の流れが形成される。この風路55内を流れる風は、ケース11内に収容されるヒートシンク25の裏面27B(図2参照)に沿って流れ、ヒートシンク25の表面27Aに接合された半導体素子31を冷却する。また、吐出口117は、底面112Dに形成された複数の細長孔形状の吹出孔117Aから構成されている。各吹出孔117Aは、短軸の長さが指などが入り込まない大きさ(数ミリ)に設定されている。この構成によれば、吹出口117を介して吐出ファン121に指などが触れてけがをすることを防止することができる。
【0036】
例えば、基板30に実装される回路部品のうち、ヒートシンク25に接合される回路部品以外の回路部品は耐熱部品により構成される等の理由により、空気をケース11の部品収容室50に引き込む必要がない場合には、吐出ファン121は、図5に示したように、底面112Dに形成した吐出口117に対向させて風路55側に配置することができる。この構成によれば、風路55内をヒートシンク25の裏面27Bに沿って流れる風で、ヒートシンク25の表面27Aに接合された半導体素子31を冷却する事ができるとともに、基板30が収容されたケース11の部品収容室50に空気と共に塵埃が浸入するのを防止することができる。
【0037】
また、吐出口117は、例えば、風路55に対向する位置で、側面板14に設けることも考えられるが、この場合、風路55の高さを所定高さに抑えるために、容量の小さな吐出ファンをケース11の幅方向に複数並べて設ける必要があり、部品点数が増加する。本実施形態では、吐出口117を、スイッチング電源装置100の設置面よりも浮かせて配置される底面112Dに設けたため、風路55の高さを大きくすることなく、1つの吐出ファン121で十分な容量を得ることができる吐出ファン121をこの吐出口117に対向させて配設することができる。
【0038】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、吐出口17,117に対向させて吐出ファン21,121をそれぞれ設け風路55内に空気を引き込んで風を流す構成としたが、これに限らず、送風口にファンを備え、風路55内に空気を押し込んで風を流す構成であっても良いし、或いは、送風口、及び、吐出口の両方にファンを備える構成であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
10、100 スイッチング電源装置
11、111 ケース
21 吐出ファン
22A、22B 吸気口
25 ヒートシンク
27A 表面
27B 裏面
30 基板
31 半導体素子(スイッチング素子)
32A 入力側巻線
32B 出力側巻線
50 部品収容室
55 風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内にコイル、或いは/及び、トランスの入力側巻線、及び、出力側巻線と、前記入力側巻線、出力側巻線に流れる電流を制御するスイッチング素子と、を含む回路部品を実装した基板を備え、2次側の出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング電源装置において、
前記ケースの内部を部品収容室と風路とに仕切るヒートシンクを備え、
前記部品収容室に前記基板を収め、前記回路部品のうち少なくとも前記スイッチング素子を前記ヒートシンクの部品収容室側の表面に接触させた状態で前記基板に実装し、
前記風路に沿って風を流し前記ヒートシンクを介して前記スイッチング素子を冷却することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクに、前記部品収容室と風路に貫通する貫通孔を設け、前記貫通孔を介して前記風路を流れる風を前記部品収容室に導入し、この導入された風で、前記基板に実装された回路部品を冷却することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記基板には、前記風路の吸込み側に前記入力側巻線を設け、前記風路の吐き出し側に前記出力側巻線を設けたことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記ケースの部品収容室に、前記風路に風を流すファンを配置したことを特徴とする請求項1又は3に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−27247(P2013−27247A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162403(P2011−162403)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】