説明

スイッチング電源装置

【課題】補助巻線がなくても二次側直流電圧よりも電圧値が高い制御用直流電圧を容易に生成することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るスイッチング電源装置1は、二次巻線Tに接続された主直流化回路2と、一次側回路2のスイッチングに対する動作が主直流化回路3とは対称的となるように二次巻線Tに接続された制御用直流化回路4と、二次側直流電圧Vの供給ライン上に介装された出力遮断手段Qと、外部指令信号に応じて出力遮断手段Qを導通状態と非導通状態とに切り替える遮断制御手段Qと、二次側直流電圧Vの電圧値が予め設定された設定電圧値に維持されるよう、一次側回路2のスイッチングを帰還制御するスイッチング制御部5とを備え、二次側直流電圧Vの設定電圧値が、制御用直流電圧Vの電圧値よりも低く設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部指令信号に応じて、負荷に対する電力供給を遮断するか否かが切り替わるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の消費電力に対する各国の規制は、年々厳しくなってきている。例えば、欧州では、エネルギー使用製品に対して「EuP指令」による電力使用量などの環境配慮設計が義務付けられる。また、米国の消費電力規格である「ENERGY STAR」も、規制値(上限)が引き下げられてきている。このような消費電力に対する規制は今後もさらに厳しくなっていくことが予想される。
【0003】
上記規制に適合するために、電源分野においては、外部指令信号に応じて負荷に対する電力供給を遮断するか否かが切り替わるスイッチング電源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスイッチング電源装置では、負荷に供給すべき主出力電圧の供給ライン上にPch型のMOSFETが介装されており、外部指令信号としての省電力制御信号EMに基づいてこのMOSFETを非導通状態とすることで、負荷への電力供給が遮断される。
【0004】
ところで、上記スイッチング電源装置で使用されているPch型のMOSFETは、一般にNch型のMOSFETに比べてオン抵抗が大きく、損失の増大を招くという問題がある。また、Nch型のMOSFETと同程度のオン抵抗を有するPch型のMOSFETは高価なので、該MOSFETを採用すると部品コストが増大してしまう。このため、Pch型のMOSFETの代わりにNch型のMOSFETを用い、このNch型のMOSFETにより電力供給を遮断するスイッチング電源装置も種々検討されている。
【0005】
かかるスイッチング電源装置としては、例えば、図2に示すスイッチング電源装置100がある。同図に示すように、このスイッチング電源装置100は、一次側直流電圧VをスイッチングしてトランスTの二次巻線Tに交流電圧を誘起させる一次側回路2、該交流電圧を整流および平滑して負荷11に供給する二次側直流電圧Vを生成する主整流平滑回路3、および二次側直流電圧Vの供給ライン上に介装されたスイッチ素子Q(Nch型のMOSFET)の他、スイッチ素子Qを制御するために必要となる、二次側直流電圧Vよりも電圧値が高い制御用直流電圧Vを生成するための補助巻線Tおよび制御用整流平滑回路6を備えている。
【0006】
このスイッチング電源装置100は、Lレベルの外部指令信号が入力されるとスイッチ素子Qがオフし、制御用整流平滑回路6から出力された電流が抵抗R、RおよびRを流れる。これにより、抵抗Rの電圧降下が発生、すなわちスイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧が増大し、スイッチ素子Qがオン状態(導通状態)となる。
【0007】
一方、このスイッチング電源装置100は、Hレベルの外部指令信号が入力されるとスイッチ素子Qがオンし、制御用整流平滑回路6から出力された電流がスイッチ素子Qを介して基準電位ラインに流れる。このため、スイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧が低下し、スイッチ素子Qがオフ状態(非導通状態)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−206982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2に示す従来のスイッチング電源装置100は、二次側直流電圧Vよりも電圧値が高い制御用直流電圧Vを生成するために補助巻線Tが必要となるので、トランスTの大型化が避けられないという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、補助巻線がなくても二次側直流電圧よりも電圧値が高い制御用直流電圧を容易に生成することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、トランスの一次側に設けられたスイッチ素子により一次側直流電圧をスイッチングしてトランスの二次巻線に交流電圧を誘起させる一次側回路と、二次巻線の一方端側に接続され、交流電圧を直流化することで二次側直流電圧を生成して負荷に供給する主直流化回路と、二次側直流電圧の電圧値が予め設定された設定電圧値に維持されるよう、一次側回路のスイッチ素子を帰還制御するスイッチング制御部とを備え、外部指令信号に応じて、負荷に対する二次側直流電圧の供給を遮断するか否かを切り替えるスイッチング電源装置であって、
スイッチ素子のスイッチングに対する動作が主直流化回路とは対称的となるように、二次巻線の他方端側に接続され、交流電圧を直流化して制御用直流電圧を生成する制御用直流化回路と、導通状態と非導通状態とに切り替えられることで、負荷に対する二次側直流電圧の供給/供給停止を切り替える出力遮断手段と、外部指令信号に応じて制御用直流電圧が出力遮断手段に入力されるか否かを切り替えることにより、出力遮断手段を導通状態と非導通状態とに切り替える遮断制御手段とをさらに備え、設定電圧値が、制御用直流電圧の電圧値よりも低く設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成では、二次巻線の一方端側に接続された主直流化回路と、スイッチングに対する動作が主直流化回路とは対称的となるように二次巻線の他方端側に接続された制御用直流化回路とが備えられているので、スイッチングの状態が切り替わる度に主直流化回路および制御用直流化回路が交互に動作し、二次側直流電圧および制御用直流電圧が生成される。また、二次側直流電圧の電圧値は、制御用直流電圧の電圧値よりも低く設定された設定電圧値に維持される。したがって、この構成によれば、トランスに補助巻線を設けなくても、二次側直流電圧よりも電圧値が高い制御用直流電圧を容易に生成することができる。
【0013】
上記スイッチング電源装置は、出力遮断手段が、ドレイン端子が主直流化回路に接続され、ソース端子が負荷に接続され、かつゲート端子が制御用直流化回路に接続されたNch型のMOSFETである場合に特に有益である。
【0014】
上記スイッチング電源装置の主直流化回路は、例えば、二次巻線の一方端にアノードが接続された主ダイオードと、主ダイオードのカソードと二次巻線の他方端との間に接続された主平滑コンデンサとで構成することができる。また、制御用直流化回路は、例えば、二次巻線の他方端にアノードが接続された制御用ダイオードと、制御用ダイオードのカソードと二次巻線の他方端との間に接続された制御用平滑コンデンサとで構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補助巻線がなくても二次側直流電圧よりも電圧値が高い制御用直流電圧を容易に生成することができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
図1に、本発明に係るスイッチング電源装置1を示す。同図に示すように、スイッチング電源装置1は、直流電源10から供給された一次側直流電圧VをスイッチングしてトランスTの二次巻線Tに交流電圧を誘起させる一次側回路2を備えている。一次側回路2は、トランスTの一次巻線Tおよびスイッチ素子Qを有し、スイッチ素子Qの制御端子は後述するスイッチング制御部5に接続されている。直流電源10としては、例えば、商用交流電圧を整流および平滑する回路が考えられるが、本発明では直流電源10の構成は特に限定されない。
【0019】
この他、スイッチング電源装置1は、主整流平滑回路3(本発明の「主直流化回路」に相当)、制御用整流平滑回路4(本発明の「制御用直流化回路」に相当)、出力遮断手段としてのスイッチ素子Q、遮断制御手段としてのスイッチ素子Q、および二次側の状況に応じて一次側回路2におけるスイッチングを帰還制御するスイッチング制御部5を備えている。
【0020】
主整流平滑回路3は、トランスTの二次巻線Tに接続され、該二次巻線Tに誘起された交流電圧を整流および平滑して負荷11に供給するための二次側直流電圧Vを生成する。主整流平滑回路3は、二次巻線Tの一方端にアノードが接続された主ダイオードDと、主ダイオードDのカソードおよび二次巻線Tの他方端の間に接続された主平滑コンデンサCとを有する。
【0021】
制御用整流平滑回路4は、一次側回路2のスイッチングに対する動作が主整流平滑回路3とは対称的となるようにトランスTの二次巻線Tに接続され、該二次巻線Tに誘起された交流電圧を整流および平滑してスイッチ素子Qを制御するための制御用直流電圧Vを生成する。制御用整流平滑回路4は、二次巻線Tの他方端にアノードが接続された制御用ダイオードDと、制御用ダイオードDのカソードおよび二次巻線Tの他方端の間に接続された制御用平滑コンデンサCとを有する。後述するが、本発明に係るスイッチング電源装置1では、制御用直流電圧Vの電圧値が二次側直流電圧Vの電圧値よりも必ず高くなる。
【0022】
出力遮断手段としてのスイッチ素子Qは、二次側直流電圧Vの供給ライン上に介装されている。より詳しくは、スイッチ素子QはNch型のMOSFETであり、ドレイン端子が主ダイオードDのカソードに接続され、ソース端子が負荷11に接続され、かつゲート端子が抵抗RおよびRを介して制御用ダイオードDのカソードに接続されている。また、スイッチ素子Qのゲート端子とソース端子の間には抵抗Rが接続されている。
【0023】
スイッチ素子Qがオン状態(導通状態)になると、該スイッチ素子Qを介して二次側直流電圧Vが負荷11に供給される。一方、スイッチ素子Qがオフ状態(非導通状態)になると、負荷11に対する二次側直流電圧Vの供給は遮断される。
【0024】
遮断制御手段としてのスイッチ素子QはNPN型のトランジスタであり、コレクタ端子が抵抗RおよびRの接続点に接続され、エミッタ端子が二次巻線Tの他方端に接続されている。スイッチ素子Qのエミッタ端子は、負荷11にも接続されている。また、スイッチ素子Qのベース端子には、外部から供給された外部指令信号が入力される。
【0025】
外部指令信号は、二次側直流電圧Vの供給を遮断しない通常モードにおいてはLレベルである。Lレベルの外部指令信号が入力されると、スイッチ素子Qはオフし、制御用整流平滑回路4の出力電流が抵抗R、R、Rを流れ、抵抗Rにおける電圧降下の発生、すなわち、スイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧が増大する。その結果、スイッチ素子Qはオンする。
【0026】
一方、二次側直流電圧Vの供給を遮断する省電力モードにおいては、外部指令信号はHレベルである。Hレベルの外部指令信号が入力されると、スイッチ素子Qはオンし、制御用整流平滑回路4の入力と出力とが短絡された状態となる。その結果、スイッチ素子Qのゲート−ソース間電圧が低下し、スイッチ素子Qはオフする。
【0027】
スイッチング制御部5は、二次側直流電圧Vの電圧値に応じて一次側回路2のスイッチ素子Qをオン状態またはオフ状態に制御する。より詳しくは、スイッチング制御部5は、予め設定された目標電圧値(本発明の「設定電圧値」に相当)と二次側直流電圧Vの電圧値とを比較し、二次側直流電圧Vの電圧値の方が高い場合はスイッチ素子Qのオン期間を短くし、目標電圧値の方が高い場合はスイッチ素子Qのオン期間を長くする。この帰還制御により、二次側直流電圧Vの電圧値は目標電圧値に維持される。
【0028】
なお、目標電圧値は、“一次側直流電圧Vの電圧値×N”(ただし、NはトランスTの巻数比)よりも低く設定されている。
【0029】
スイッチング制御部5の制御下でスイッチ素子Qがオンすると、制御用整流平滑回路4の制御用ダイオードDがオンし、制御用平滑コンデンサCが充電される。この動作が繰り返されることにより、制御用直流電圧Vの電圧値は、“一次側直流電圧Vの電圧値×N”まで上昇する。
【0030】
一方、このとき、主整流平滑回路3の主ダイオードDはオンしないので、主平滑コンデンサCは充電されない。負荷11に対する電力供給は、主平滑コンデンサCが放電することにより行われる。主平滑コンデンサCが放電すると、二次側直流電圧Vの電圧値は低下する。
【0031】
スイッチング制御部5の制御下でスイッチ素子Qがオフすると、主整流平滑回路3の主ダイオードDがオンし、主平滑コンデンサCが充電される。この動作が繰り返されることにより二次側直流電圧Vの電圧値は上昇するが、スイッチング制御部5による帰還制御が行われているので、二次側直流電圧Vの電圧値は目標電圧値を超えることはない。
【0032】
一方、このとき、制御用整流平滑回路4の制御用ダイオードDはオンしないので、制御用平滑コンデンサCは充電されない。制御用平滑コンデンサCは、抵抗R、RおよびR、または抵抗Rおよびスイッチ素子Qを介して放電する。しかしながら、抵抗RおよびRは高抵抗なので、放電による制御用直流電圧Vの電圧値の低下は微小である。つまり、制御用直流電圧Vの電圧値は、一旦“一次側直流電圧Vの電圧値×N”まで上昇すると、その後はほとんど変動しない。
【0033】
以上をまとめると、本発明に係るスイッチング電源装置1では、制御用直流電圧Vの電圧値が“一次側直流電圧Vの電圧値×N”に維持され、二次側直流電圧Vの電圧値が目標電圧値に維持される。また、目標電圧値は“一次側直流電圧Vの電圧値×N”よりも低く設定されている。したがって、本発明に係るスイッチング電源装置1によれば、補助巻線を有していないトランスTを用いているにもかかわらず、二次側直流電圧Vよりも高い電圧値を有する制御用直流電圧Vを容易に生成することができる。
【0034】
以上、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例が存在することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 スイッチング電源装置
2 一次側回路
3 主整流平滑回路(主直流化回路)
4 制御用整流平滑回路(制御用直流化回路)
5 スイッチング制御部
10 直流電源
11 負荷
主ダイオード
制御用ダイオード
主平滑コンデンサ
制御用平滑コンデンサ
スイッチ素子
スイッチ素子(出力遮断手段)
スイッチ素子(遮断制御手段)
一次側直流電圧
二次側直流電圧
制御用直流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次側に設けられたスイッチ素子により一次側直流電圧をスイッチングして前記トランスの二次巻線に交流電圧を誘起させる一次側回路と、前記二次巻線の一方端側に接続され、前記交流電圧を直流化することで二次側直流電圧を生成して負荷に供給する主直流化回路と、前記二次側直流電圧の電圧値が予め設定された設定電圧値に維持されるよう、前記一次側回路のスイッチ素子を帰還制御するスイッチング制御部とを備え、外部指令信号に応じて、前記負荷に対する前記二次側直流電圧の供給を遮断するか否かを切り替えるスイッチング電源装置であって、
前記スイッチ素子のスイッチングに対する動作が前記主直流化回路とは対称的となるように、前記二次巻線の他方端側に接続され、前記交流電圧を直流化して制御用直流電圧を生成する制御用直流化回路と、
導通状態と非導通状態とに切り替えられることで、前記負荷に対する前記二次側直流電圧の供給/供給停止を切り替える出力遮断手段と、
前記外部指令信号に応じて前記制御用直流電圧が前記出力遮断手段に入力されるか否かを切り替えることにより、前記出力遮断手段を導通状態と非導通状態とに切り替える遮断制御手段と
をさらに備え、
前記設定電圧値が、前記制御用直流電圧の電圧値よりも低く設定されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記出力遮断手段は、ドレイン端子が前記主直流化回路に接続され、ソース端子が前記負荷に接続され、かつゲート端子が前記制御用直流化回路に接続されたNch型のMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記主直流化回路は、前記二次巻線の一方端にアノードが接続された主ダイオードと、前記主ダイオードのカソードと前記二次巻線の他方端との間に接続された主平滑コンデンサとを有し、
前記制御用整流平滑回路は、前記二次巻線の前記他方端にアノードが接続された制御用ダイオードと、前記制御用ダイオードのカソードと前記二次巻線の前記他方端との間に接続された制御用平滑コンデンサとを有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−81333(P2013−81333A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221038(P2011−221038)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】