説明

スイッチ故障検出装置及び方法

【課題】 短い判定時間で誤判定を生じることなく良好な応答性のスイッチ故障検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】 連動してON/OFFする少なくとも二つの接点の故障を検出するスイッチ故障検出装置において、前記二つの接点の全ON状態を判定する判定手段(10)と、前記判定手段の判定結果に従って所要の制御の開始を指示する制御手段(10)とを備え、前記判定手段は、前記二つの接点のうち故障していない方の接点が、ユーザ操作に応答して実際にON/OFFすることを確認してからその判定結果を確定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ故障検出装置及び方法に関し、詳しくは、複数(少なくとも二つ)の接点を備えたスイッチの故障検出装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等車両(以下、単に「車両」という。)においては、いちいち機械式の鍵を鍵穴に差し込まずに、エンジンの始動や停止を行うことができるエンジン始動装置が多用されるようになってきた。このエンジン始動装置では、運転者が所持する携帯機と車載機との間で、当該車両に割り当てられた固有の情報(以下、IDコードという)の照合を行い、コード一致の場合に、その運転者によるエンジン始動スイッチの操作に基づく、エンジンの始動や停止を許容するようになっている。
【0003】
かかる装置に用いられるエンジン始動スイッチは、鍵穴兼用のものに比べてはるかに設計の自由度が高いことから、一般的に、操作性を重視してワンタッチ式のもの、すなわち、指先によって押下操作する方式の“プッシュスイッチ”とされている。以下、この方式を用いたスイッチのことを「プッシュ式エンジン始動スイッチ」ということにする。
【0004】
ところで、電気的接点を備えたスイッチ一般にあっては、希に、接点間の融着による「ON故障」(ONのままOFFに戻らない故障)や、信号線の断線等による「OFF故障」(操作してもONにならない故障)が生じることがある。こうした故障は、とりわけ、高度な安全性が求められる車両用途のプッシュ式エンジン始動スイッチにおいて致命的であるので、有効な対策技術が求められている。
【0005】
そこで、前記の「ON故障」や「OFF故障」が生じた場合であっても、安全にエンジンの始動・停止を行うことができるようにするために、たとえば、下記の特許文献1に記載されているように、プッシュ式エンジン始動スイッチに複数の接点を設けておき、一つの接点が故障した場合には、他の接点の出力信号に基づいてスイッチのONまたはOFFを判定するようにした従来技術が知られている。
【0006】
具体的に説明すれば、下記の特許文献1には、複数接点の各スイッチ信号を論理和判定(OR判定)してエンジン始動を許容し、また、複数接点の各スイッチ信号を論理積判定(AND判定)してエンジン停止を許容するものが記載されている。さらに、同文献には、複数接点の各スイッチ信号の不一致状態が一定時間経過した場合に故障を判定し、故障と認定した入力(スイッチ信号)を判定から外す旨のことも記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−140015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の従来技術にあっては、複数の接点の状態に不一致が発生した場合で、且つ、その状態が所定時間以上継続した場合に故障と判定しているが、この手法では複数接点のいずれの接点が故障しているのか正しく判定できないという問題点がある。
【0009】
そこで本発明は、誤判定を低減したスイッチ故障検出装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスイッチ故障検出装置は、連動してON/OFFする少なくとも
二つの接点の故障を検出するスイッチ故障検出装置において、前記二つの接点の
全ON状態を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に従って所要の制御
の開始を指示する制御手段とを備え、前記判定手段は、前記二つの接点のうち故
障していない方の接点が、ユーザ操作に応答して実際にON/OFFすることを
確認してからその判定結果を確定することを特徴とする。
本発明に係るスイッチ故障検出方法は、連動してON/OFFする少なくとも
二つの接点の故障を検出するスイッチ故障検出方法において、前記二つの接点の
全ON状態を判定する判定工程と、前記判定工程の判定結果に従って所要の制御
の開始を指示する制御工程とを含み、前記判定工程は、前記二つの接点のうち故
障していない方の接点が、ユーザ操作に応答して実際にON/OFFすることを
確認してからその判定結果を確定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザによる再操作に基づいて故障を判定するようにしたので、誤判定を生じることを低減したスイッチ故障検出装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車両用エンジン始動停止装置の構成図である。
車両用エンジン始動停止装置は、車載機1と車両キー2とを含み、車両キー2は、運転者によって所持される携帯機の形態をとり、その携帯機内にキー照合用のIDコードを記憶している。
【0013】
車載機1は、スタート/ストップスイッチ(プッシュ式エンジン始動スイッチに相当)3、ACCリレー4、IGリレー5、ブレーキスイッチ6、エンジンECU7、及びこれらと接続する電源切換ECU8、並びに、報知部9を含むが、最初に、スタート/ストップスイッチ3の構成について説明する。
【0014】
図2は、スタート/ストップスイッチ3の構成図である。
スタート/ストップスイッチ3は、複数接点(少なくとも二つの接点)方式のプッシュスイッチであり、ここでは、連動してON/OFFする二つの可動接点3a、3bと、それらの可動接点3a、3bと対をなす固定接点3c〜3fと、それらの可動接点3a、3bをOFF状態に保つバネなどの弾性部材3gと、この弾性部材3gの弾性力に抗する操作入力を受けるプッシュボタン3hとを備えている。
【0015】
このような構成を有するスタート/ストップスイッチ3は、通常は、弾性部材3gの弾性力により、図示のように二つの可動接点3a、3bと各々の固定接点3c〜3fとが離接してOFF状態を保っているが、弾性部材3gの弾性力を上回る大きさの操作力がプッシュボタン3hに加えられると、二つの可動接点3a、3bと各々の固定接点3c〜3fとが接触してON状態となり、図中右側の固定接点3d、3fから取り出されるスイッチ信号SW1、SW2が、所定電位(図示の例ではHレベル相当の電源電位Vb)に変化(遷移)するようになっている。
【0016】
次に、図1に戻り、コード読み取り装置4aは、車両キー2に記憶されたIDコードを読み出して電源切換ECU8へ送信する。電源切換ECU8は、このIDコード(車両キー2から読み出されたIDコード)とROMに記憶しているIDコードとを照合し、これらが一致していれば、エンジンECU7にエンジン始動許可信号を送信する。
【0017】
電源切換ECU8は、周知のCPU、ROM、RAMからなるプログラム制御方式の制御ユニットであり、この電源切換ECU8は、スタート/ストップスイッチ3の押圧操作がなされるたびに、ACCリレー4やIGリレー5の動作状態を切替えると共に、必要の都度、報知部9から運転者に対して所定の報知音を出力する。
【0018】
また、電源切換ECU8の入力端子には、スタート/ストップスイッチ3からのスイッチ信号SW1およびSW2が入力されており、電源切換ECU8は、これらのスイッチ信号SW1およびSW2の電位が所定値以上(あるいは以下)か否かを各々判定し、所定値以上と判定した場合には、スタート/ストップスイッチ3が押されている状態であると判定する
【0019】
また、電源切換ECU8は、エンジン「始動」待機状態のときに、ブレーキペダルが踏まれている状態でスタート/ストップスイッチ3の押圧操作がなされると、コード読み取り装置4aからIDコード(車両キー2から読み出されたIDコード)を取得し、このIDコード(車両キー2から読み出されたIDコード)とROMに記憶しているIDコードとの照合結果が、一致したとの照合結果である場合には、エンジンECU7にエンジンを始動するエンジン始動信号を出力する。
【0020】
更に、電源切換ECU8は、エンジンがかかっている状態でスタート/ストップスイッチ3の押圧操作がなされたときに、IGリレー5にエンジンを停止するためのエンジン停止信号を出力する。
【0021】
ACCリレー4は、動作状態で車両のアクセサリ回路を車載バッテリーのプラス電源端子に接続し、アクセサリ回路を通電状態とする。IGリレー5は、電源切換ECU8からのエンジン始動信号にてアクセサリ回路に加えて動作状態で車両のエンジンを始動するためのスターターモータなどをプラス電源端子に接続し、スターターモータなどを通電状態とする。また、IGリレー5は、電源切換ECU8からのエンジン停止信号を取得すると、IGリレー5を非接続状態とし、スターターモータなどと車載バッテリーのプラス電源端子とを非通電状態とする。
【0022】
ブレーキスイッチ6は、ブレーキペダルの踏み込み操作がなされているときにON状態となるスイッチであり、その検出信号を電源切換ECU8へ入力する。
【0023】
エンジンECU7は、周知のCPU、ROM、RAMからなるプログラム制御方式の制御ユニットであり、このエンジンECU7は、電源切換ECU8からエンジン始動許可信号を取得すると、エンジンをスターターモータなどが始動できる状態であるエンジン始動待機状態とする。また、エンジンECU7は、電源切換ECU8からのエンジン始動信号に基づいて、スターターモータ、燃料噴射装置、点火装置の動作を開始させる。これにより、スターターモータが回転しつつエンジンに燃料が噴射され点火プラグが点火することによってエンジンを始動する。
【0024】
図3は、電源切換ECU8で実行されるスイッチ故障判定プログラムを示す図である。このプログラムでは、まず、スイッチ信号SW1がONであるか否かを判定する(ステップS1)。ONでなければ、ONになるまでそのまま待機し、ONであれば、次に、スイッチ信号SW2がONであるか否かを判定する(ステップS2)。そして、スイッチ信号SW2がONであれば、スタート/ストップスイッチ3が押されている状態(つまり、ON状態)であると判定し(ステップS3)、フローを終了するが、スイッチ信号SW2がONでなければ、故障判定を開始し(ステップS4)、再びスイッチ信号SW1がONであるか否かを判定する(ステップS5)。そして、スイッチ信号SW1がONであれば、スイッチ信号SW2がONであるか否かを判定し(ステップS6)、スイッチ信号SW2がONでなければ、ステップS5に戻る一方、スイッチ信号SW2がONであれば、故障判定を継続し(ステップS7)、報知部9を駆動し(ステップS8)、再びスイッチ信号SW1がONであるか否かを判定する(ステップS9)。
【0025】
そして、スイッチ信号SW1がONでなければ、故障判定を終了(ステップS12)してフローを完了し、スイッチ信号SW1がONであれば、スイッチ信号SW2がONであるか否かを判定し(ステップS10)、スイッチ信号SW2がONであれば、ステップS9に戻る一方、スイッチ信号SW2がONでなければ、スタート/ストップスイッチ3のON故障を判定(ステップS11)し、フローを終了する。
【0026】
一方、ステップS5の判定結果がNOの場合、つまり、スイッチ信号SW1がONでなければ、スイッチ信号SW2がONであるか否かを判定し(ステップS13)、スイッチ信号SW2がONであれば、故障判定を終了(ステップS19)してフローを完了し、スイッチ信号SW2がONでなければ、故障判定を継続し(ステップS14)、報知部9を駆動し(ステップS15)、再びスイッチ信号SW1がONであるか否かを判定する(ステップS16)。そして、スイッチ信号SW1がONでなければ、ステップS13に戻る一方、スイッチ信号SW1がONであれば、スイッチ信号SW2がONであるか否かを判定し(ステップS17)、スイッチ信号SW2がONであれば、故障判定を終了(ステップS19)してフローを完了し、スイッチ信号SW2がONでなければ、スタート/ストップスイッチ3のOFF故障を判定(ステップS18)し、フローを終了する。
【0027】
次に、故障判定処理(図3のステップS4、ステップS7及びステップS14参照)の具体例を説明する。
まず、本実施形態におけるスタート/ストップスイッチ3は、既述のとおり、通常時OFF、操作時ONのノーマリーOFFタイプで、その接点数は「2」であるため、想定される故障区分は、以下の四つになる。
【0028】
<両ON故障>
両ON故障とは、二つの可動接点3a、3bが共に固着したままOFFに戻らない故障のことをいう。この故障が発生した場合、スタート/ストップスイッチ3の機能は完全に失われる。自走不可であり、完全故障状態である。レッカー車等で工場に搬入して修理を受ける必要がある。
<片ON故障>
片ON故障とは、二つの可動接点3a、3bのいずれか一方が固着したままOFFに戻らない故障のことをいう。二つの可動接点3a、3bの他方が正常に動作しているので、半故障状態であり、正常側の接点を利用してエンジンの始動や停止を行うことができる。自走可であるが、正常側の接点もいずれ故障する可能性があるので、できるだけ早急に修理を受ける必要がある。
<両OFF故障>
両OFF故障とは、断線等により二つの可動接点3a、3bが共にONにならない故障のことをいう。スタート/ストップスイッチ3の機能は完全に失われている。自走不可であり、完全故障状態である。レッカー車等で工場に搬入して修理を受ける必要がある。
<片OFF故障>
片OFF故障とは、二つの可動接点3a、3bのいずれか一方がONにならない故障のことをいう。二つの可動接点3a、3bの他方が正常に動作しているので、半故障状態であり、正常側の接点を利用してエンジンの始動や停止を行うことができる。自走可であるが、正常側の接点もいずれ故障する可能性があるので、できるだけ早急に修理を受ける必要がある。
【0029】
これらの四つの故障区分の内、片ON故障と片OFF故障については、さらに、以下の二つのパターンに分けることができる。
<第1パターン>
プッシュ操作をする「前から」継続的に片ON故障又は片OFF故障が発生しているパターン、すなわち、事前に接点固着や断線等のトラブルが発生しているパターンである。
<第2パターン>
プッシュ操作の「最中に」片ON故障又は片OFF故障が発生するパターン、すなわち、プッシュ操作中に一時的に接点固着や断線等のトラブルが発生するパターンである。
【0030】
以下、前記の故障区分及びパターンごとの判定動作を説明する。なお、以下の説明においては、「両OFF故障」に言及しない。これは、両OFF故障が発生した場合、スタート/ストップスイッチ3を操作しても何の反応もなく、すぐに故障に気付くからである。しかも、両OFF故障の場合は、エンジンを始動できないため、安全性に直接繋がる不都合もないからである。
【0031】
まず、最初に、故障判定のために必要な次の四つの時間パラメータ(T0〜T4)を設定する。
「T0(ONずれ許容時間)」
二つの接点3a、3bの動作ずれ等を加味した時間のことである。スイッチ信号SW1、SW2の変化時点から、この時間T0を経過した後に故障判定を開始する。この時間T0はできるだけ短い方が望ましいが、実際にはスタート/ストップスイッチ3の機械的バラツキやプッシュボタン3hの押下操作速度に依存するので、これらを考慮して試行錯誤的に適正に設定すればよい。たとえば、機械的バラツキ(二つの接点3a、3bの取り付け誤差等)を最大1.5mmと仮定すれば、操作速度が60mm/sの場合はT0=25ms+αとなり、操作速度が10mm/sの場合はT0=150ms+αとなり、操作速度が50mm/sの場合はT0=300ms+αとなる。αは所定のマージンである。一般的な操作速度は60mm/s程度であるので、T0=25ms+αでも大きな不都合はないが、念のために最低操作速度のT0=300ms+αを採用することとし、さらに、α=200として、T0=500msとする。
「T1(1回目用故障判定継続時間)」
ノイズ等によるスイッチ信号SW1、SW2の瞬時的変化を排除するために用いられる1回目判定用の時間であり、たとえば、T1=100msである。スイッチ信号SW1、SW2の変化が、この時間T1を超えて継続したときに、その変化を真とし、そうでないときに、ノイズ等による偽の変化であるとして排除する。
「T2(2回目用故障判定継続時間)」
前記のT1と同様である。ただし、2回目判定用の時間である点で相違する。
「T3(OFFずれ判定時間)」
二つの接点3a、3bの動作ずれを加味したOFFずれ判定時間のことである。この時間T3は弾性部材3gのバネ力によって決まり、弾性部材3gの劣化を考慮しなければ、常に一定である。ここでは、T3=100msとする。
【0032】
(1)両ON故障の判定動作
二つのスイッチ信号SW1、SW2が長時間にわたって共にON状態を維持している場合に、スタート/ストップスイッチ3の「両ON故障」と判定する。“長時間”とは、通常の使用状況において、二つのスイッチ信号SW1、SW2が共にON状態となり得ない程度の時間のことであり、たとえば、数十秒〜数十分程度の時間のことである。
【0033】
(2)片ON故障/第1パターンの判定動作
次に、片ON故障/第1パターンの判定動作について、図を用いて説明する。
図4は、片ON故障/第1パターンのタイムチャートを示す図である。この図は、一方のスイッチ信号SW1の固定接点と可動接点が固着し、ON故障が発生した場合を想定したものである。電源切換ECU8は周期的にSW1とSW2の状態を判定している。スイッチ信号SW1の立ち上がりからT0経過後の時点t0の間、SW1がON状態かつSW2がOFF状態という不一致が継続していた場合に、故障判定を開始する。このように不一致が所定時間以上生じていても、故障判定の結論は出さない。SW1側にON故障が発生しているのかスタート/ストップスイッチ3が押下操作された状態でSW2側にOFF故障が発生しているのかの判定が未だできないからである。何か異常が発生しているものとして引き続き故障判定を継続する。さらにT1が経過した時点t1でスイッチ信号SW1がON状態であり、かつSW2がOFF状態であると判定されるが、この時点t1においても、不一致が発生しているため故障判定を継続するだけで、結論は未だ出さない。その後、運転者によるスタート/ストップスイッチ3の押下操作に応答して他方のスイッチ信号SW2が立ち上がり、その立ち上がりの時点t2からT2経過後の時点t3で、各SWの状態の判定を行う。この例においては、判定結果はSW1はON状態でありかつSW2はON状態である。また、報知部9から運転者に対して異常が発生している事および再度の押下操作を要求する。そして、運転者による押下解除操作に応答してスイッチ信号SW2が立ち下がると、その立ち下がりの時点t4からT3経過後の時点t5で各SWの状態の判定を行う。この例の場合には、SW1はON状態であり、かつSW2はOFF状態であると判定される。このように最初に各SWの不一致が判定され、その後各SWの一致が判定され、再び各SWの不一致が判定された時点で故障判定の結果が得られる。この例の場合は片ON故障(第1パターン)と判定される。さらに、報知部9からの報知に応じて再び、運転者によるスタート/ストップスイッチ3の押下操作を行い、それに応答して他方のスイッチ信号SW2が立ち上がった時点t6で、各SWの状態を判定する。この例の場合には、SW1およびSW2は共にON状態であるためスタート/ストップスイッチ3のONが確定する。
【0034】
換言すれば、この時点でSW1がOFF状態に変化していれば、スタート/ストップスイッチ3はONであるとは判定されない。
すなわち、
a)何れか一方のスイッチ信号がOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF継続による不一致が500ms(T0)以上継続で故障判定を開始し、
b)a)の後100ms(T1)以上SW状態の不一致が継続していると判定されれば故障判定を継続し、
c)b)でOFFだったスイッチ信号がOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のONが100ms(T2)以上継続している場合に故障判定を継続し、
d)c)でONしたスイッチ信号がON→OFFに変化し、かつ他のスイッチ信号のON状態100ms(T3)以上の場合に故障判定の結論が出される。
このように、各SWの状態の不一致が発生した事では、故障判定の結論は出さない。その後、運転者によってスタート/ストップスイッチ3が押されて正常なSWの状態が反転して各SWの状態が一致し、その後再び各SWの状態が不一致となった場合に「故障あり」と確定する。さらに、二度目の押下操作の時点でスタート/ストップスイッチ3の「ON」を確定することができる。
【0035】
(3)片ON故障/第2パターンの判定動作
図5は、片ON故障/第2パターンのタイムチャートを示す図である。この図は、一方のスイッチ信号SW1の接点(可動接点3a)にON故障が発生した場合を想定したものである。この場合、
a)何れか一方のスイッチ信号(ここではSW2)がON→OFFかつ他のスイッチ信号(ここではSW1)のON状態で故障判定を開始し、
b)a)の後100ms(T1)以上各SWの状態の不一致が継続していると判定されれば故障判定を継続し、
c)a)でOFFしたスイッチ信号(ここではSW2)がOFF→ONへと変化し、かつ他のスイッチ信号のONが100ms(T2)以上継続している場合に故障判定を継続し、
d)c)でONしたスイッチ信号(ここではSW2)がON→OFFへと変化し、かつ他のスイッチ信号がON状態の場合に故障判定の結論が出され、スイッチ信号=OFFを確定する。
このように、運転者によってスタート/ストップスイッチ3を2度押しすることにより、二度目の押下操作の解除からT3後に「故障あり」を確定することができると共に、スタート/ストップスイッチ3の「OFF」を確定することができる。
【0036】
(4)片OFF故障/第1パターンの判定動作
図6は、片OFF故障/第1パターンのタイムチャートを示す図である。この図は、一方のスイッチ信号SW2の接点(可動接点3b)にOFF故障が発生した場合を想定したものである。この場合、
a)両スイッチ信号のOFF確定より、正常なプッシュスイッチ信号のOFFを判定し、
b)何れか一方のスイッチ信号がOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が500ms(T0)以上継続している場合に故障判定を開始し、
c)b)の後、100ms(T1)以上各SWの状態の不一致が継続していると判定された場合に故障判定を継続し、
d)c)でONだったスイッチ信号がON→OFFに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が100ms(T2)以上継続していると判定された場合に故障判定を継続し、
e)d)でOFFしたスイッチ信号がOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が500ms(T0)以上継続していると判定された場合に故障確定すると共に、スイッチ信号=ON確定する。
このように、運転者によってスタート/ストップスイッチ3を2度押しすることにより、二度目の押下操作中に「故障あり」を確定することができると共に、スタート/ストップスイッチ3の「ON」を確定することができる。
【0037】
(5)片OFF故障/第2パターンの判定動作
図7は、片OFF故障/第2パターンのタイムチャートを示す図である。この図は、一方のスイッチ信号SW2の接点(可動接点3b)にOFF故障が発生した場合を想定したものである。この場合、
a)両スイッチ信号が共にOFF状態となったことによりプッシュスイッチ信号のOFFを判定し、
b)何れか一方のスイッチ信号がOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が500ms(T0)以上継続していると判定された場合に故障判定を開始し、
c)b)の後各SWの状態の不一致が100ms(T1)以上継続していると判定された場合に故障判定を継続し、
d)c)でONだったスイッチ信号がON→OFFに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が100ms(T2)以上継続していると判定された場合に故障判定を継続し、報知部9から報知を行い、運転者に異常が発生している事およびスイッチの押下操作を要求する。
e)d)でOFFしたスイッチ信号が運転者の再度のスイッチ押下操作に応じてOFF→ONに変化し、かつ他のスイッチ信号のOFF状態が500ms(T0)以上継続していると判定された場合に故障確定すると共に、スイッチ信号=ON確定する。
このように、運転者によってスタート/ストップスイッチ3を2度押しすることにより、二度目の押下操作中に「故障あり」を確定することができると共に、スタート/ストップスイッチ3の「ON」を確定することができる。
【0038】
以上のとおり、本実施形態では、スイッチON誤判定回避のために、複数接点の全ON状態判定(AND判定)でスタート/ストップスイッチ3の「ON」を判定して、エンジン始動等の制御を開始すると共に、当該スイッチの故障判定は、故障していない方の接点が、ユーザ操作でON/OFFすることを確認してからその判定結果を確定するようにしたから、すなわち、ユーザ操作に基づいて故障判定するようにしたから、故障の確定までの時間を短縮することができるという特有の効果が得られる。さらに、ON故障とOFF故障をより正確に判定できる。
【0039】
具体的には、プッシュスイッチ押下判定時においては、押下操作1回目はプッシュスイッチONと判定せず、再操作を促す警報(第1報知)をユーザへ通知するだけ(エンジン始動等の制御を開始しない)とし、押下操作2回目で実際の故障判定と故障の確定を行い、正常な接点の入力に従ってプッシュスイッチONと判定して制御を開始すればよい。
【0040】
また、プッシュスイッチ離し判定時においては、再押下+離す操作(離す操作2回目)で故障判定→故障確定し、正常な接点の入力でプッシュスイッチOFFと判定すればよい。
【0041】
なお、故障復帰の判定は、片ON故障検出後においては両OFFを検出したときに故障復帰を判定すればよく、また、片OFF故障検出後においては、両ONを検出したときに故障復帰を判定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】車両用エンジン始動停止装置の構成図である。
【図2】スタート/ストップスイッチ3の構成図である。
【図3】電源切換ECU8で実行されるスイッチ故障判定プログラムを示す図である。
【図4】片ON故障/第1パターンのタイムチャートを示す図である。
【図5】片ON故障/第2パターンのタイムチャートを示す図である。
【図6】片OFF故障/第1パターンのタイムチャートを示す図である。
【図7】片OFF故障/第2パターンのタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
3a 接点
3b 接点
10 電源切換ECU(判定手段、制御手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連動してON/OFFする少なくとも二つの接点の故障を検出するスイッチ故
障検出装置において、
前記二つの接点の全ON状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に従って所要の制御の開始を指示する制御手段とを備
え、
前記判定手段は、
前記二つの接点のうち故障していない方の接点が、ユーザ操作に応答して実際
にON/OFFすることを確認してからその判定結果を確定することを特徴とす
るスイッチ故障検出装置。
【請求項2】
連動してON/OFFする少なくとも二つの接点の故障を検出するスイッチ故
障検出方法において、
前記二つの接点の全ON状態を判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に従って所要の制御の開始を指示する制御工程とを含
み、
前記判定工程は、
前記二つの接点のうち故障していない方の接点が、ユーザ操作に応答して実際にON/OFFすることを確認してからその判定結果を確定することを特徴とするスイッチ故障検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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