説明

スイッチ装置用ばね構造体

【課題】 スイッチ装置において部品点数を削減できるばね構造体を提供する。
【解決手段】 押ボタン2の操作により接断される押ボタンスイッチ1において、スイッチケース3内に固定された固定接点55aに対して接離可能な可動接点55bを一端に有し、例えば略中央部に屈曲部550aを有する略L字状の第1の板ばね550と、一端が第1の板ばね550の可動接点55b側と逆側に連結され、例えば略中央部に屈曲部551aを有するとともに、他端がスイッチケース3内に設けられた第1の当接指51Aに当接し得る略U字状の第2の板ばね551とから、スイッチ装置としての押ボタンスイッチ1の接点を付勢するためのばね構造体を構築する。この場合、第2の板ばね551の他端が第1の当接指51Aに当接することにより、第1の板ばね550の可動接点55bが固定接点55aに接触するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押ボタンスイッチやリレー等のスイッチ装置のためのばね構造体に関し、詳細には、スイッチ装置の部品点数を削減するための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工作機械などの機械設備の制御パネルには、異常発生時に機械を緊急停止させるための非常停止用押ボタンスイッチが設けられている。このような押ボタンスイッチにおいて、例えば特開2003−303527号公報に示すものでは、仮にスイッチが破損した場合でも接点同士が接触状態に戻るのを回避するためのいわゆる「セーフティポテンシャル(登録商標:以下同様)構造」が付加されている。
【0003】
すなわち、前記公報の図1、図2に示すように、押ボタン(5)を収容するボタン収容部(9)には、押ボタン(5)の下部に設けられた円筒体(45)をスイッチケース(3)の側(図示下側)に付勢する圧縮ばね(55)と、円筒体(45)の下部に連結された連動体(23)の下部に配置され、連動体(23)をスイッチケース(3)の下方(図示下方)に付勢する圧縮ばね(31)とが設けられている。
【0004】
この場合には、圧縮ばね(55)の弾性反発力により、円筒体(45)を介して連動体(23)が図示下方に付勢されるとともに、圧縮ばね(31)の弾性反発力により、連動体(23)が図示下方に付勢されており、これにより、可動接点(21)が固定接点(17)から開離する側に付勢されている。
【0005】
このため、押ボタン(5)の押込操作により、可動接点(21)が固定接点(17)から開離すると、各圧縮ばね(55)、(31)の変形量が減少して、各圧縮ばね(55)、(31)が所有していた弾性エネルギーが低下する。すなわち、各圧縮ばね(55)、(31)の接点開離後の弾性エネルギーは、接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。
【0006】
したがって、前記公報に示す押ボタンスイッチにおいては、仮にスイッチが破損した場合でも、接点が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、押ボタンスイッチとしての「セーフティポテンシャル機能」が発揮されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、可動接点を固定接点から開離する側に付勢するばねを接点とは切り離して別に設ける必要があるため、部品点数が増え、その結果、製造コストおよび組立コストが増大するという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、スイッチ装置において部品点数を削減でき、製造コストおよび組立コストを低減できるばね構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、内蔵された接点をオン/オフするスイッチ装置において、接点を付勢するためのばね構造体であって、スイッチ装置内に固定された固定接点に対して接離可能な可動接点を一端に有し、当該一端と他端の間に屈曲部を有する略L字状の第1の板ばねと、一端が第1の板ばねの可動接点と逆側に連結され、当該一端と他端の間に屈曲部を有するとともに、他端が装置内に設けられた当接部に当接し得る略U字状の第2の板ばねとを備えており、第2の板ばねの他端が当接部に当接することで、第1の板ばねの可動接点が固定接点に接触するようになっている。
【0010】
この場合には、固定接点に接離可能な可動接点がばね構造体の第1の板ばねの一端に設けられるので、接点を付勢するためのばねを接点とは切り離して別に設ける必要がなくなり、また、第1の板ばね自体が接点を有する導電板として機能し得るようになり、これにより、スイッチ装置の部品点数を削減でき、製造コストおよび組立コストを低減できるようになる。なお、この場合、接点をシングルブレーク構造にすることができるので、接点数を削減できる。
【0011】
さらに、この場合には、第1、第2の板ばねからばね構造体が構成されるので、単一の板ばねから構成する場合に比べて、ばねの変位時にばねに作用する応力を分散でき、これにより、各板ばねに作用する応力を軽減できる。
【0012】
しかも、この場合には、第1の板ばねのみならず、第2の板ばねにも屈曲部が設けられるので、これらの屈曲部を用いて第1、第2の板ばねのばねこわさ(ばね定数)を調整でき、これにより、第1の板ばねの一端に設けられた可動接点の開離のタイミングを調整できる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1において、第1、第2の板ばねが、可動接点を固定接点から開離する側に付勢している。
【0014】
この場合には、スイッチ装置内の当接部が第2の板ばねの他端に当接して接点が接触した状態においても、第1、第2の板ばねには、可動接点を固定接点から開離する側に付勢力が作用している。このため、仮にスイッチ装置が破損した場合でも、可動接点が再び固定接点に接触するのを防止できる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項2において、第1、第2の板ばねの変位が零のときに、第1の板ばねの可動接点が固定接点から開離するように設けられている。
【0016】
この場合には、第1、第2の板ばねの変位が零のときに第1の板ばねの可動接点を固定接点から確実に開離させることができ、これにより、仮にスイッチ装置が破損した場合でも、可動接点が再び固定接点に接触するのを確実に防止できる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、第1、第2の板ばねの各屈曲部の少なくともいずれか一方が、略L字形状の角部または略U字形状の湾曲部から外方に膨出する円弧状部から構成されている。
【0018】
この場合には、第1、第2の板ばねの円弧状部の曲率半径を適宜設定することにより、第1、第2の板ばねのばねこわさを調整できる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項4において、第1、第2の板ばねの各屈曲部が、略L字形状の角部および略U字形状の湾曲部からそれぞれ外方に膨出する円弧状部から構成されており、第1の板ばねの円弧状部の曲率半径が、前記第2の板ばねの前記円弧状部の曲率半径と異なっている。
【0020】
請求項5の発明によれば、例えば第1の板ばねの円弧状部の曲率半径が第2の板ばねの円弧状部の曲率半径よりも大きくなっている場合には、第1の板ばねの円弧状部の曲げ剛性が第2の板ばねの円弧状部の曲げ剛性よりも小さくなっており、第1の板ばねの円弧状部が、第2の板ばねの円弧状部よりも曲げ変形しやすくなっている。この場合、スイッチ装置内の当接部が第2の板ばねの他端に当接した際には、第2の板ばねよりも第1の板ばねの方が変形しやすい。これにより、接点の開離のタイミングを調整できる。
【0021】
これとは逆に、第2の板ばねの円弧状部の曲率半径が第1の板ばねの円弧状部の曲率半径よりも大きくなっている場合には、第2の板ばねの円弧状部の曲げ剛性が第1の板ばねの円弧状部の曲げ剛性よりも小さくなっており、第2の板ばねの円弧状部が、第1の板ばねの円弧状部よりも曲げ変形しやすくなっている。この場合、スイッチ装置内の当接部が第2の板ばねの他端に当接した際には、第2の板ばねの方が第1の板ばねよりも変形しやすい。これにより、接点の開離のタイミングを調整できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係るスイッチ装置用ばね構造体によれば、固定接点に接離可能な可動接点をばね構造体の第1の板ばねの一端に設けたので、接点を付勢するためのばねを接点とは切り離して別に設ける必要がなくなり、また、この場合、第1の板ばね自体が接点を有する導電板として機能し得るようになり、これにより、スイッチ装置の部品点数を削減でき、製造コストおよび組立コストを低減できるようになる。しかも、この場合、第1、第2の板ばねからばね構造体を構成するようにしたので、単一の板ばねから構成する場合に比べて、ばねの変位時にばねに作用する応力を分散でき、これにより、各板ばねに作用する応力を軽減できる。さらに、この場合、第1の板ばねのみならず、第2の板ばねにも屈曲部を設けるようにしたので、これらの屈曲部を用いて第1、第2の板ばねのばねこわさを調整でき、これにより、第1の板ばねの一端に設けられた可動接点の開離のタイミングを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチの初期位置における中心線縦断面図、(b)は(a)の押ボタンスイッチにおいて接点を通る縦断面図である。
【図2】図1(b)のスイッチケース部分の拡大図である。
【図2A】図2におけるばね構造体の拡大図である。
【図3】(a)は本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチのボタン予備押し位置における中心線縦断面図、(b)は(a)の押ボタンスイッチにおいて接点を通る縦断面図である。
【図4】(a)は本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチのフック乗り越え直前における中心線縦断面図、(b)は(a)の押ボタンスイッチにおいて接点を通る縦断面図である。
【図5】(a)は本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチのフック乗り越え直後であってロック直前における中心線縦断面図、(b)は(a)の押ボタンスイッチにおいて接点を通る縦断面図である。
【図6】本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチにおいてロック直前のスライダ移動により各板ばねの変位が零となった瞬間における接点を通る縦断面拡大部分図である。
【図7】(a)は本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチのロック状態における中心線縦断面図、(b)は(a)の押ボタンスイッチにおいて接点を通る縦断面図である。
【図8】本発明の一実施例によるばね構造体が適用された押ボタンスイッチの分解組立図である。
【図9】前記押ボタンスイッチ(図8)における接点ユニットの分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図9は本発明の一実施例によるばね構造体を示しており、ここでは、ばね構造体が適用されたスイッチ装置として、非常停止用押ボタンスイッチを例にとっている。
【0025】
図1(a)、(b)および図8に示すように、押ボタンスイッチ1は、操作者が操作する押ボタン2と、押ボタン2を保持するスイッチケース3と、スイッチケース3内に収容され、押ボタン2の押込操作にともなってスイッチケース内部に進入し得るように設けられた操作軸4と、スイッチケース3内に収容され、操作軸4の先端に係止された接点ユニット5とを備えている。
【0026】
押ボタン2は、キャップ状の部材であって、その内部には、穴2aが中央に形成されるとともに、穴2aの外周側に環状溝2b、2cが形成されている。穴2aおよび環状溝2b間には、環状突起2Aが形成されている。また、穴2a内の一部には、係合突起2Bが設けられている。スイッチケース3は、両端が開口する円筒状の段付部材であって、押ボタン2の環状溝2c内に挿入される大径の筒状部30と、筒状部30に一体に形成され、筒状部30よりも小径の筒状部31とを有している。筒状部30の内部には、半径方向内方に突出する突起部30aが形成されている。筒状部30の外周面には、押ボタン内部への水の浸入を防止するための防水パッキン35が装着されている。筒状部31の外周面の一部には、雄ねじ部が形成されており、この雄ねじ部にロックナット36が螺合している。また筒状部30の段付面にはガスケット37が装着されている。
【0027】
押ボタンスイッチ1を工作機械等の制御パネル10に取り付けるには、制御パネル10に貫通形成された取付孔10aにスイッチケース3の筒状部31を挿入するとともに、制御パネル10の内部からロックナット36を締め付け、制御パネル10をロックナット36およびガスケット37間で挟持することにより行なう。
【0028】
操作軸4は、軸方向に延びる中空の軸部40と、軸部40の略中央部から外周に張り出すフランジ部41とを有している。軸部40の一端は、押ボタン2の穴2a内に挿入されている。また、軸部40の一端には、半径方向の係合凹部40Bが形成されている。係合凹部40Bには、押ボタン2の係合突起2Bが係合している。軸部40の他端には、半径方向外方に突出する突起部40aと、半径方向内方に突出する突起部40bとが形成されている。突起部40aは、図1(a)、(b)に示す初期位置において、スイッチケース3の筒状部30の突起部30aに係合している。軸部40の略中央部には、半径方向外方に突出する一対の突起部40cが形成されている。各突起部40cは、円周上に例えば均等間隔で配置されている。各突起部40cの軸方向両端には、それぞれ傾斜面40c、40cが形成されている。フランジ部41には、押ボタン2の環状溝2bと対向する環状溝41aが形成されている。これらの環状溝2b、41aには、コイルスプリング6が装着されている。
【0029】
スイッチケース3の筒状部30の内部には、トリガースプリング7が設けられている。トリガースプリング7は、図8に示すように、開口を有する環状部70と、環状部70の開口両端部から環状部70の内方に向かってフック状に折り曲げられかつそれぞれ直線状に延びるとともに平行に配設された一対のフック部71とから構成されている。各フック部71は、図1(a)、(b)に示す初期位置において、操作軸4の突起部40cの傾斜面40cに図示下方から当接している。
【0030】
接点ユニット5は、スイッチケース3の筒状部31の内部に固定された筒状のベース50と、ベース50の内部に軸方向スライド自在に支持されたスライダ51とを有している。スライダ51の一端には、軸部52が形成されており、軸部52の先端には、半径方向外方に突出する突起部52aが形成されている。突起部52aは、図1(a)、(b)に示す初期位置において、操作軸4の軸部40の突起部40bに係合している。これにより、スライダ51は、押ボタン2の操作に連動してスイッチケース内をスライドし得るようになっている。
【0031】
ベース50には、図9に示すように、一対の固定端子55A、56Aと、これらの固定端子にそれぞれ対向配置された一対の可動端子55B、56Bとが設けられている。各固定端子55A、56Aは、ベース50に固定された略L字状の部材であって、ベース50内の端部に設けられかつベース50内に固定配置される固定接点55a、56aを有している。可動端子55B、56Bは、ベース50内において固定接点55a、56aに対して接離可能に設けられた可動接点55b、56bを有している。また、ベース50には、軸方向に配設されたコイルスプリング8が設けられており、図1(a)に示すように、コイルスプリング8の一端はスライダ51の底壁部に圧接し、他端はスイッチケース3の筒状部31の内壁部に圧接している。このコイルスプリング8は、スライダ51を図示下方に付勢するための付勢手段として設けられているが、あくまで補助的なものである。
【0032】
図2および図2Aに示すように、固定端子55Aは、比較的厚肉の帯板状導電性部材をL字状に折り曲げることにより構成されており、固定接点55aは、ベース50内において軸方向と略直交する方向に延びる固定片55Aに設けられている。なお、固定端子56Aについても同様の構成を有しており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0033】
可動端子55Bは、一端に可動接点55bを有しかつ当該一端と他端の間(ここでは略中央部)に屈曲部550aを有するとともに、略L字状に配設された比較的薄肉の帯板状導電性部材からなる第1の板ばね550と、一端が第1の板ばね550の可動接点55b側と逆側に連結されかつ当該一端と他端の間(ここでは略中央部)に屈曲部551aを有する略U字状の第2の板ばね551とから構成されている。
【0034】
第1の板ばね550において、屈曲部550aからベース50の内部に向かって直線状に延びる可動片550は、実質的に軸方向の可撓性(ばね性)を有している。また、第2の板ばね551は、第1の板ばね550の一部を切り欠いた後これを略U字状に折り曲げることにより構成されており、第2の板ばね551において屈曲部551aからベース50の内部に向かって直線状に延びる可動片551は、実質的に軸方向の可撓性(ばね性)を有している。なお、可動端子56Bについても同様の構成を有しており、ここでの詳細な説明は省略する。可動接点55bは、図1(a)、(b)、図2、図2Aに示すように接点が接続された初期位置において、第1の板ばね550のばね性によって固定接点55aから開離する側に付勢されている。すなわち、第1の板ばね550は、接点の開離付勢手段として機能している。
【0035】
その一方、スライダ51には、図1(b)、図2、図9に示すように、第1の板ばね550の可動片550および第2の板ばね551の可動片551を挟んで一方の側(押ボタン2から離れた側)に配置され、可動片551に当接することで可動接点55bを固定接点55aに接触させる第1の当接指51Aと、第1の板ばね550の可動片550および第2の板ばね551の可動片551を挟んで他方の側(押ボタン2に近い側)に配置され、可動片550に当接することで可動接点55bを固定接点55aから開離させる第2の当接指51Bとが設けられている。
【0036】
図1(b)、図2に示す初期位置においては、スライダ51の第1の当接指51Aが第2の板ばね551の可動片551に当接して可動片551が図示上方に変位しており、これにより、第1の板ばね550の可動片550が図示上方に変位して、可動接点55bが固定接点55aに接触している。なお、このとき、第1の当接指51Aが可動片551に当接せずに可動片551が変位零の状態においては、第1の板ばね550の可動片550も変位零のままであり、可動接点55bは固定接点55aから開離した状態におかれるようになっている。
【0037】
図2Aに明確に示されるように、第1の板ばね550の屈曲部550aは、略L字形状の角部から外方に膨出する円弧状部から構成されており、同様に、第2の板ばね551の屈曲部551aは、略U字状の湾曲部から外方に膨出する円弧状部から構成されている。また、この例では、第1の板ばね550の屈曲部550aを構成する円弧状部の曲率半径が、第2の板ばね551の屈曲部551aを構成する円弧状部の曲率半径よりも大きくなっている。
【0038】
次に、上述のように構成された押ボタンスイッチ1の作動について、図1ないし図7を用いて時系列的に説明する。
【0039】
〔初期位置〕
押ボタン2を押し込んでいない、押ボタンスイッチ1の初期位置においては、図1(a)を用いて説明したように、トリガースプリング7の各フック部71(図8参照)が、操作軸4の突起部40cの図示下側の傾斜面40cに図示下方から当接している。また、図1(b)、図2を用いて説明したように、スライダ51の第1の当接指51Aが、第2の板ばね551の可動片551に当接して可動片551が図示上方に変位しており、これにより、第1の板ばね550の可動片550が図示上方に変位して、可動接点55bが固定接点55aに接触している。
【0040】
このとき、第1の板ばね550の可動片550先端の可動接点55bは、第1の板ばね550のばね性により、固定接点55aから開離する側に付勢されている。すなわち、この場合、第1の当接指51Aが第2の板ばね551の可動片551に当接せずに可動片551が変位零の状態においては、第1の板ばね550の可動片550も変位零のままであり、可動接点55bは固定接点55aから開離した状態におかれるようになっている。
【0041】
〔ボタン予備押し位置〕
次に、前記初期位置から押ボタン2のみを少し押し込んだ、ボタン予備押し位置においては、図3に示すように、コイルスプリング6のばね力に抗して押ボタン2が図示下方に押し込まれており、押ボタン2の環状突起2Aが操作軸4のフランジ部41に当接しているが、このとき、操作軸4は図示下方に押し込まれておらず、操作軸4およびスライダ51の軸方向位置は、前記初期位置から変化していない。
【0042】
このため、トリガースプリング7の各フック部71と操作軸4の突起部40cの傾斜面40cとの位置関係、第2の板ばね551の可動片551の変位量、第1の板ばね550の可動片550の変位量、ならびに、可動接点55bと固定接点55aとの接触状態および接圧は、前記初期位置から変化していない。
【0043】
〔フック乗り越え直前位置〕
前記ボタン予備押し位置からさらに押ボタン2を押し込むと、図4に示すようなフック乗り越え直前位置に移行する。このとき、押ボタン2とともに、操作軸4が図示下方に若干量押し込まれており、これにより、操作軸4の各突起部40cの各傾斜面40cがトリガースプリング7の各フック部71を半径方向外方に拡径しており、その結果、トリガースプリング7の各フック部71が操作軸4の各突起部40cの各傾斜面40cから今にも外れようとする位置、別の言い方をすれば、各フック部71が各傾斜面40cを今にも乗り越えようとする位置(フック乗り越え直前位置)に移動している。
【0044】
また、このとき、押ボタン2の押込操作にともなって、操作軸4とともにスライダ51が図示下方に若干量押し込まれており、これにより、スライダ51の第1の当接指51Aに当接する第2の板ばね551の可動片551の変位量が減少し、第1の板ばね550の可動片550の変位量も減少して、可動接点55bおよび固定接点55a間の接圧は減少するものの、この場合においても、第2の板ばね551の可動片551の変位によって第1の板ばね550の可動片550が変位しており、可動接点55bと固定接点55aとの接触状態は維持される。
【0045】
〔フック乗り越え直後位置〕
前記フック乗り越え直前位置からさらに押ボタン2を押し込むと、図5に示すようなフック乗り越え直後位置に移行する。このとき、押ボタン2とともに、操作軸4が図示下方に若干量押し込まれており、これにより、操作軸4の各突起部40cの各傾斜面40cがトリガースプリング7の各フック部71を半径方向外方にさらに拡径しており、その結果、トリガースプリング7の各フック部71が操作軸4の各突起部40cの各傾斜面40cから外れた直後の位置、別の言い方をすれば、各フック部71が各傾斜面40cを乗り越えた直後の位置(フック乗り越え直後位置)に移動している。
【0046】
また、このとき、押ボタン2の押込操作にともなって、操作軸4とともにスライダ51が図示下方に若干量押し込まれたことにより、スライダ51の第1の当接指51Aに当接する第2の板ばね551の可動片551の変位量が前記フック乗り越え直前位置からさらに減少するが、この場合においても、第2の板ばね551の可動片551の変位によって第1の板ばね550の可動片550が変位しており、可動接点55bと固定接点55aとの接触状態および接圧は維持される。
【0047】
なお、上述したフック乗り越え直前位置から前記フック乗り越え直後位置においても、押ボタン2の押込操作にともなって圧縮変形していたコイルスプリング6の弾性反発力が操作軸4に作用している。また、第1、第2の板ばね550、551の変形にともなう弾性復元力により、スライダ51が図示下方に付勢されている。
【0048】
〔板ばね変位零位置〕
前記フック乗り越え直後位置においてトリガースプリング7の各フック部71が操作軸4の各突起部40cの各傾斜面40cから外れた瞬間に、コイルスプリング6の弾性反発力、および第1、第2の板ばね550、551の弾性復元力、ならびにコイルスプリング8の補助的な弾性反発力により、操作軸4が図示下方に移動する。これにより、スライダ51の第1の当接指51Aが第2の板ばね551の可動片551から離れ、その結果、図6に示すように、押ボタンスイッチ1は、第1、第2の板ばね550、551の変位が零の位置(板ばね変位零位置)に移行する。このとき、第1、第2の板ばね550、551は、スライダ51の第1、第2の当接指51A、51Bの間で自由長(つまり変位零)の状態におかれている。また、このとき、可動接点55bと固定接点55aとの間には隙間eが形成され、接点が非接触状態となって、押ボタンスイッチ1がオフになる。これにより、工作機械等が非常停止する。
【0049】
〔ロック状態位置〕
図4に示すフック乗り越え直前位置から押ボタン2が押し込まれると、押ボタンスイッチ1は、フック乗り越え直後位置(図5参照)および板ばね変位零位置(図6参照)を経由して、図7に示すロック状態位置に移行する。
【0050】
このロック状態位置においては、図7に示すように、コイルスプリング6の弾性反発力により、操作軸4が図6の位置(図示せず)からさらに図示下方に移動しており、このとき、突起部40cの図示上側の傾斜面40cがトリガースプリング7の各フック部71に対向する位置に移動する。これにより、拡径していたトリガースプリング7の各フック部71が弾性復元力により縮径して元の状態に戻ろうとして、各フック部71が突起部40cの傾斜面40cに当接する。また、このとき、スライダ51も図6の位置からさらに図示下方に移動しており、これにより、スライダ51の第2の当接指51Bが第1の板ばね550に図示上方から当接して、第1の板ばね550の可動片550を図示下方に変位させる。これにより、可動接点55bが固定接点55aから開離される。
【0051】
この場合には、ロック状態位置において、スライダ51の第2の当接指51Bの当接による可動片550の弾性変形により第1、第2の板ばね550、551に蓄えられる弾性エネルギーは、初期位置において、スライダ51の第1の当接指51Aの当接による各可動片550、551の弾性変形により第1、第2の板ばね550、551に蓄えられていた弾性エネルギーよりも、はるかに小さくなるように設定されている。これにより、押ボタンスイッチ1が破損した場合でも接点同士が接触状態に戻るのを回避でき、セーフティポテンシャル機能が維持されている。
【0052】
〔復帰動作〕
上述のようにして、一旦押込操作された押ボタン2を元の初期位置に復帰させるには、図7のロック状態位置から押ボタン2を引き出せばよい。ロック状態位置において、操作軸4は、図示上端の係合凹部40Bが押ボタン2の係合突起2Bに係合しており、押ボタン2の引出操作にともなって、操作軸4も図示上方に移動する。このとき、トリガースプリング7の各フック部71は操作軸4の突起部40cの図示上側の傾斜面40cに沿って拡径しつつ半径方向外方に移動し、各フック部71がさらに拡径して傾斜面40cから外れると、押ボタン2および操作軸4がさらに図示上方に移動する。そして、操作軸4の突起部40cの図示下側の傾斜面40cがトリガースプリング7の各フック部71に対向する位置まで移動すると、拡径していた各フック部71がその弾性復元力により縮径して、各フック部71が操作軸4の突起部40cの傾斜面40cに当接する。
【0053】
また、操作軸4の移動にともない、各突起部40bおよび52a間の係合を介して、スライダ51も図示上方に移動する。このとき、板ばね変位零位置に戻るまでは、第1の板ばね550がその弾性反発力により元の位置に戻ろうとして、第1の板ばね550の可動片550が図示上方に変位する。その後、第2の板ばね551の可動片551に対する第1の当接指51Aの押付力により、まず、円弧状部の曲率半径の大きい第1の板ばね550の可動片550が図示上方に変位する。そして、可動接点55bが固定接点55aに接触した後、今度は円弧状部の曲率半径の小さい第2の板ばね551の可動片551が図示上方に変位する。このようにして、押ボタンスイッチ1が初期位置に復帰する。
【0054】
このような本実施例によれば、固定接点55a、56aに接離可能な可動接点55b、56bがばね構造体の第1の板ばね550の一端に設けられるので、接点を付勢するためのばねを接点とは切り離して別に設ける必要がなくなり、また、第1の板ばね550自体が接点を有する導電板として機能し得るようになり、これにより、押ボタンスイッチ1の部品点数を削減でき、製造コストおよび組立コストを低減できるようになる。さらに、第1、第2の板ばね550、551からばね構造体が構成されるので、単一の板ばねから構成する場合に比べて、ばねの変位時にばねに作用する応力を分散でき、これにより、各板ばね550、551に作用する応力を軽減できる。
【0055】
また、第1の板ばね550のみならず、第2の板ばね551にも屈曲部が設けられるので、これらの屈曲部550a、551aを用いて第1、第2の板ばね550、551のばねこわさ(ばね定数)を調整でき、これにより、第1の板ばね550の一端に設けられた可動接点55b、56bの開離のタイミングを調整できる。
【0056】
さらに、第1の板ばね550の一端に可動接点55bまたは56bが設けられるので、接点をシングルブレーク構造にすることができ、これにより、接点数を削減できる。
【0057】
しかも、スイッチケース3内の第1の当接指51Aが第2の板ばね551の他端に当接して接点が接触した状態においても、第1、第2の板ばね550、551には、可動接点55b、56bを固定接点55a、56aから開離する側に付勢力が作用しているので、仮にスイッチが破損した場合でも、可動接点55b、56bが再び固定接点55a、56aに接触するのを防止できる。
【0058】
また、可動接点55b、56bの付勢手段が第1、第2の板ばね550、551という2種類の板ばねから構成されるので、単一の板ばねから構成する場合に比べて、ばねの変位時にばねに作用する応力を分散でき、これにより、各板ばね550、551に作用する応力を軽減できるばかりでなく、各板ばね550、551のばねこわさを適宜設定することにより、可動接点55b、56bの開離のタイミングを調整できる。
【0059】
しかも、この場合、第1、第2の板ばね550、551の各屈曲部550a、551aが、略L字形状の角部または略U字形状の湾曲部から外方に膨出する円弧状部から構成されているので、各円弧状部の曲率半径を適宜設定することにより、第1、第2の板ばねのばねこわさを調整できる。
【0060】
本実施例に示すように、例えば第1の板ばね550の円弧状部の曲率半径を第2の板ばね551の円弧状部の曲率半径よりも大きくした場合には、第1の板ばね550の円弧状部の曲げ剛性が第2の板ばね551の円弧状部の曲げ剛性よりも小さくなり、第1の板ばね550の円弧状部が、第2の板ばね551の円弧状部よりも曲げ変形しやすくなる。この場合、スイッチケース3内の第1の当接指51Aが第2の板ばね551の可動片551の先端に当接したとき、第2の板ばね551よりも第1の板ばね550の方が変形しやすくなっている。これにより、接点の開離のタイミングを調整できる。
【0061】
これとは逆に、第2の板ばね551の円弧状部の曲率半径を第1の板ばね550の円弧状部の曲率半径よりも大きくした場合には、第2の板ばね551の円弧状部の曲げ剛性が第1の板ばね550の円弧状部の曲げ剛性よりも小さくなり、第2の板ばね551の円弧状部が、第1の板ばね550の円弧状部よりも曲げ変形しやすくなる。この場合、スイッチケース3内の第1の当接指51Aが第2の板ばね551の可動片551の先端に当接したとき、第2の板ばね551の方が第1の板ばね550よりも変形しやすくなっている。これにより、接点の開離のタイミングを調整できる。
【0062】
また、前記実施例では、第1、第2の板ばね550、551の各屈曲部550a、551aの双方を、外方に膨出する円弧状部から構成した例を示したが、円弧状部は、これらの屈曲部550a、551aのいずれか一方に設けるようにしてもよい。
【0063】
この場合においても、接点の開離のタイミングを調整できるとともに、円弧状部が設けられた側の板ばねの当該円弧状部において、曲げ応力を低減できる。
【0064】
なお、前記実施例では、第1の当接指51Aを第2の板ばね551の可動片551に当接させることにより、可動接点55bを固定接点55aに接触させるようにしており、このため、接圧用のばねが不要になる。
【0065】
また、前記実施例では、本発明によるばね構造体が適用されるスイッチ装置として、非常停止用押ボタンスイッチを例にとって説明したが、本発明は、非常停止用スイッチに限らず、常閉接点を押込操作により開離する一般の常閉スイッチのほか、常開スイッチやセレクタスイッチ、カムスイッチ、安全スイッチにも適用でき、さらに、リレーにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、押ボタンスイッチやリレー等のスイッチ装置に好適であり、とくに、部品点数の削減によりコストの低減を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0067】
1: 押ボタンスイッチ(スイッチ装置)

51: スライダ
51A: 第1の当接指(当接部)

55a、56a: 固定接点
55b、56b: 可動接点
550: 第1の板ばね
550a: 屈曲部
551: 第2の板ばね
551a: 屈曲部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2003−303527号公報(図1、図2参照)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵された接点をオン/オフするスイッチ装置において、接点を付勢するためのばね構造体であって、
前記スイッチ装置内に固定された固定接点に対して接離可能な可動接点を一端に有し、当該一端と他端の間に屈曲部を有する略L字状の第1の板ばねと、
一端が前記第1の板ばねの前記可動接点と逆側に連結され、当該一端と他端の間に屈曲部を有するとともに、前記他端が前記スイッチ装置内に設けられた当接部に当接し得る略U字状の第2の板ばねとを備え、
前記第2の板ばねの前記他端が前記当接部に当接することで、前記第1の板ばねの前記可動接点が前記固定接点に接触するようになっている、
ことを特徴とするスイッチ装置用ばね構造体。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1、第2の板ばねは、前記可動接点を前記固定接点から開離する側に付勢している、
ことを特徴とするスイッチ装置用ばね構造体。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1、第2の板ばねは、当該各板ばねの変位が零のときに、前記可動接点が前記固定接点から開離するように設けられている、
ことを特徴とするスイッチ装置用ばね構造体。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1、第2の板ばねの前記各屈曲部の少なくともいずれか一方は、前記略L字形状の角部または前記略U字形状の湾曲部から外方に膨出する円弧状部から構成されている、
ことを特徴とするスイッチ装置用ばね構造体。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1、第2の板ばねの前記各屈曲部は、前記略L字形状の角部および前記略U字形状の湾曲部からそれぞれ外方に膨出する円弧状部から構成されており、前記第1の板ばねの前記円弧状部の曲率半径は、前記第2の板ばねの前記円弧状部の曲率半径と異なっている、
ことを特徴とするスイッチ装置用ばね構造体。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108582(P2011−108582A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265045(P2009−265045)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】