説明

スイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システム

【課題】簡易な構成で使用者のスイング特性を分析し、使用者のスイング特性に合わせたシャフト調子を選定することができるスイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムを提供する。
【解決手段】測定装置100は、歪ゲージ131と、ベンディングポイントの位置に対応するベンディングポイント想定値を演算する処理部150と、処理部150からの出力値を表示可能な表示部112とを備え、処理部150は、使用者のスイング中の第1時点における歪ゲージ131の計測値と、第1時点よりもインパクト時に近い第2時点における歪ゲージ131の計測値とに基づいて、ベンディングポイント想定値を算出し、処理部150には、ベンディングポイント想定値を、シャフト調子を示す推奨シャフト調子出力値に変換する変換データが予め格納され、処理部150は、算出されたベンディングポイント想定値に対応する推奨シャフト調子出力値を表示部112に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムに関し、特に、使用者に適したシャフト調子の選定を支援するスイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトには、種々の特性があり、ゴルファは自分に適した特性を有するゴルフクラブシャフトを選択する必要がある。ゴルフクラブシャフトの種々の特性のうち、シャフト質量、フレックスおよびシャフト調子(FLEX POINT)を適切に選定することで、殆どの場合、各々のゴルファに適したクラブシャフトを選定することが可能である。ところが、シャフト質量、フレックスおよびシャフト調子は、それぞれ独立して設計することが可能であることから、これらの組合わせは無数にあり、各々のゴルファに適したゴルフクラブシャフトを選定することは容易ではなかった。
【0003】
シャフトのフレックス(EI:曲げ剛性)に着目したゴルフクラブシャフト選定システムとしては、特許第3061640号公報に記載されたものなどが挙げられる。ここでは、個々のゴルファのスイング時間、スイングスピード(クラブヘッド速度)、クラブヘッド加速度およびシャフトの歪み量のいずれかを測定するか、または、上記測定項目を測定するとともにヘッドスピードを測定することが開示されている。
【0004】
また、シャフトの曲げ剛性分布(EI分布)に着目したゴルフクラブシャフト選定システムとしては、特開2004−129687号公報に記載されたものなどが挙げられる。ここでは、スイング中のシャフトの変形挙動を測定するシャフト挙動測定手段と、シャフトのEI分布を算出するシャフトEI算出手段と、スイング中のシャフトの変形形状を計算するシャフト形状計算手段とを有する第1解析システムと、ゴルファのスイングを解析分類するスイング分類手段を有する第2解析システムとを備え、上記スイング中の上記シャフトの変形挙動を解析するとともに、上記ゴルファのスイングを分類し、上記ゴルファにとって最適なシャフトを選定することが開示されている。
【0005】
また、シャフトのねじれ剛性(トルク)に着目したゴルフクラブシャフト選定システムとしては、特開2001−70482号公報に記載されたものなどが挙げられる。ここでは、個々のゴルファのスイング中のシャフトの歪み量を測定するかあるいは歪み量を測定すると同時に、ヘッドスピードを測定することが開示されている。
【0006】
また、ねじり歪みの測定方法の他の例としては、特開2003−205053号公報に記載されたものなどが挙げられる。ここでは、ゴルフクラブのスイング中にシャフトに生じるねじり歪みを計測し、計測したねじり歪みの時刻歴データにより、シャフトのねじり挙動を含むシャフトの動的評価をすることが開示されている。
【0007】
また、スイング時のトウダウン量に着目したゴルフクラブシャフト選定システムとしては、特開2003−284802号公報に記載されたものなどが挙げられる。ここでは、サンプル用のゴルフクラブをスイングした時のシャフトにかかる曲げモーメント分布を計測し、その計測されたデータとシャフトの曲げ剛性分布から、インパクト直前におけるクラブヘッドのトウ側が下がる向きへのシャフトの撓み量である「トウダウン量」を含む5つの要素を算出し、その算出結果に基づいて、ゴルファに対してより適切な、または、最適なシャフトを選択する方法が開示されている。
【0008】
また、上記「トウダウン量」の測定方法の他の例としては、特許3549334号公報に記載されたものが挙げられる。ここでは、ゴルフクラブのトウダウン量を測定する場合に、テレビカメラや光学的検知手段を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3061640号公報
【特許文献2】特開2004−129687号公報
【特許文献3】特開2001−70482号公報
【特許文献4】特開2003−205053号公報
【特許文献5】特開2003−284802号公報
【特許文献6】特許3549334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のシャフトの選択システム等においては、ハイスピードカメラ等を要し、簡易な構成で使用者のスイング特性を分析し、使用者のスイング特性に適したシャフト調子を選定することはできない。
【0011】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な構成で使用者のスイング特性を分析し、使用者のスイング特性に合わせたシャフト調子を選定することができるスイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るスイング分析装置は、長手方向を有するシャフト、およびシャフトの一端に設けられたヘッド部を含むゴルフクラブをスイングする使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置である。そして、ゴルフクラブのシャフトに設けられ、シャフトのトウダウン方向の歪みを測定可能なトウダウン用歪みゲージと、シャフトのベンディングポイントの位置に対応するベンディングポイント想定値を演算する搭載演算部と、搭載演算部からの出力値を表示可能な搭載表示部とを備える。さらに、上記搭載演算部は、使用者のスイング中の第1時点におけるトウダウン用歪みゲージの計測値と、第1時点よりも前の第2時点におけるトウダウン用歪みゲージの計測値とに基づいて、ベンディングポイント想定値を算出する。上記搭載演算部には、ベンディングポイント想定値を推奨シャフト調子出力値に変換する変換データが予め格納され、推奨シャフト調子出力値は、シャフトのベンディングポイント想定値を示す出力値であって、搭載演算部は、算出されたベンディングポイント想定値に対応する推奨シャフト調子出力値を搭載表示部に出力する。
【0013】
好ましくは、上記トウダウン用歪みゲージは、シャフトの他端から304mmの位置と、他端から381mmの位置との間に設けられる。
【0014】
好ましくは、上記トウダウン用歪みゲージは搭載演算部に継続して計測値を出力し、搭載演算部は、トウダウン用歪みゲージから継続して出力される計測値の変動率が、所定値を超えたときをインパクト時として検出する。さらに、上記搭載演算部は、検出したインパクト時より10ms前の時点と100ms前の時点との間に、第1時点を設定し、検出したインパクト時より100ms前の時点と、200ms前の時点との間に、第2時点を設定する。
【0015】
好ましくは、上記シャフトの飛球方向の歪みを検知可能な飛球方向用歪みゲージをさらに備え、搭載演算部は、飛球方向用歪みゲージからの計測値とトウダウン方向用歪みゲージからの計測値に基づいて、シャフトの最大撓み量を算出する。上記搭載演算部には、シャフトの最大撓み量を、使用者のスイングテンポを示すスイングテンポ出力値に変換する変換データが格納され、搭載演算部は、算出した最大撓み量に基づいて、スイングテンポ出力値を算出し、搭載表示部は算出されたスイングテンポ出力値を表示する。
【0016】
本発明に係るスイング分析装置は、他の局面では、長手方向を有するシャフト、およびシャフトの一端に設けられたヘッド部を含むゴルフクラブをスイングする使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置である。そして、上記シャフトに設けられ、長手方向に間隔をあけて配置された第1加速度センサおよび第2加速度センサと、第1加速度センサおよび第2加速度センサからの出力に基づいて、シャフトの回転半径を演算可能な搭載演算部と、搭載演算部の演算結果を表示する搭載表示部とを備える。上記搭載演算部には、シャフトの回転半径を、使用者のコック角度に変換する変換データが格納され、搭載演算部は、算出したヘッド部の速度から使用者のコック角度を算出し、搭載演算部は、算出されたコック角度を表示する。本発明に係るゴルフクラブシャフト選定システムは、上記スイング分析装置と、スイング分析装置からの出力に基づいて、使用者に適したシャフトを選定する外部演算部と、外部演算部からの出力を表示する外部表示部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムによれば、使用者のスイング特性に適合するシャフトを選定することができ、さらに、装置およびシステム自体の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ゴルフクラブ選定システの概略構成を示す模式図である。
【図2】測定装置の斜視図である。
【図3】測定装置の斜視図である。
【図4】歪ゲージの配置状態を模式的に示す平面図である。
【図5】ゴルフプレーヤが打球する直前の様子を飛球方向から見た模式図である。
【図6】ゴルフプレーヤが打球する直前の様子を側方からから見た模式図である。
【図7】測定装置の断面図である。
【図8】測定装置内部の分解斜視図である。
【図9】基板の側面図である。
【図10】処理部が歪ゲージから受信した出力電圧に基づいて、歪ゲージが装着された位置におけるトウダウン方向の歪みを算出した結果を示すグラフである。
【図11】シャフトの軸方向に間隔をあけて3つの歪ゲージが装着されたゴルフクラブの斜視図である。
【図12】スイングのトップ時からインパクト後までの間における歪ゲージからの出力に基づいて計算された各歪み量を示すグラフである。
【図13】歪ゲージが検知した歪み量と歪みゲージが検知した歪み量との出力値の差cと、b/aの相関関係を示すグラフである。
【図14】仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。
【図15】外部演算部に格納され、「スイングテンポ出力値」と「ヘッド速度V」とに基づいて、選定するシャフトのフレックスを導出するデータをグラフで示したものである。
【図16】図15に示すグラフに、表7に示すシャフト質量とヘッドスピードとの関係を上書きしたものである。
【図17】外部表示部の画面の正面図であり、外部支援装置の操作画面を示す。
【図18】コックアングルと、インパクト直前におけるシャフトの回転半径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態に係るスイング分析装置およびゴルフクラブ選定システムについて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、ゴルフクラブ選定システム600の概略構成を示す模式図である。この図1に示すように、ゴルフクラブ選定システム600は、ゴルフクラブ200に装着される測定装置(スイング測定装置)100と、測定装置100とは別に設けられた外部支援装置500とを備えている。
【0021】
ゴルフクラブ200は、シャフト202と、シャフト202の一端に設けられたヘッド203と、シャフト202の他端に設けられたグリップ201とを備えている。
【0022】
外部支援装置500は、外部演算部502と、外部演算部502の演算結果を表示する外部表示部503と、外部演算部502にデータ等を入力可能な外部入力部501とを備えている。
【0023】
測定装置100は、使用者のインパクト直前の「ヘッドスピード」と、スイング中の最大しなり量を示す「スイングテンポ」と、インパクト直前の「前反り角度」と、インパクト直前の「トウダウン量」と、インパクト直前の「しなり速度」と、スイング中の2つの時点における歪み量によって求められる「ベンディングポイント想定値e(=b/a)」とを算出する。
【0024】
測定装置100は、算出した「ヘッドスピード」と、「スイングテンポ」と、「前反り角度」と、「トウダウン量」と、「しなり速度」と、「ベンディングポイント想定値e」から算出される「推奨シャフト調子出力値f」とを、測定装置100の表示部に表示するようにしてもよい。
【0025】
測定装置100によって算出された「ヘッドスピード」、「スイングテンポ」と、「前反り角度」、「トウダウン量」、「しなり速度」、およびベンディングポイント想定値eを変換することで得られる「推奨シャフト調子出力値f」は、外部支援装置500に入力される。なお、入力方法としては、オペレータが外部入力部501を用いて、測定装置100の表示部に表示された結果を入力してもよく、さらには、無線または有線で測定装置100から自動的に外部支援装置500に入力するようにしてもよい。
【0026】
外部支援装置500には、「スイングテンポ」に基づいてシャフトの「シャフト調子」を選択するデータと、「ヘッドスピード」と「スイングテンポ」からシャフトの「フレックス」を選定ためのデータと、「トウダウン量」と「前反り角度」とからシャフトの「剛性分布」を設定するデータと、「ヘッドスピード」から「シャフト質量」を選択するデータとが格納されている。
【0027】
そして、外部支援装置500は、入力された上記データに基づいて、使用者に適したシャフト調子、フレックス、シャフトの剛性分布およびシャフト質量を算出する。
【0028】
そして、外部支援装置500は、選択されたシャフト調子、フレックス、およびシャフト質量を表示すると共に、これらに適合するシャフト名を表示する。これにより、使用者は、自己に適したシャフトを得ることができる。
【0029】
測定装置100は、ゴルフクラブ200(グリップ201)の上端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)に位置する部分に測定装置100の重心Qが位置するようにシャフト202に装着されている。
【0030】
ゴルフクラブ200は、グリップ201の端部から14インチ(約360mm)のところで重量バランスがとれており、この部分に重り等を装着してもゴルフクラブ200全体の重量バランスに大きな影響がない。
【0031】
このため、上記の位置に測定装置100を装着することで、測定装置100が装着される前後において、ゴルフクラブ200の特性が大きく変化することが抑制されている。
【0032】
図2および図3は、測定装置100の斜視図である。これら、図2および図3に示すように、測定装置100は、内部に加速度センサおよび歪みゲージ等を収容するケース110と、ヘッド速度等を表示する表示部112と、電源スイッチ114と、リセットボタン113とを備えている。そして、ケース110は、上部ケーシング115および下部ケーシング116とを含み、これら上部ケーシング115および下部ケーシング116によって、ゴルフクラブ200のシャフト202が挿入される挿入孔111および挿入孔117が規定されている。なお、挿入孔111および挿入孔117の内径は、シャフト202の外径よりも大きくなるように形成されており、スイング時にシャフト202が撓ったとしても、シャフト202が挿入孔111および挿入孔117の内周面と接触することが抑制されている。
【0033】
図1に示すように、測定装置100は、ケース110内に設けられ、シャフト202に装着された2つの歪ゲージ(飛球方向用歪みゲージ)130および歪ゲージ(トウダウン用歪みゲージ)131とを備えている。
【0034】
図4は、シャフト202の軸方向から平面視した平面図であり、歪ゲージ130と、歪ゲージ131の配置状態を模式的に示す。この図4に示すように、歪ゲージ130は、シャフト202の周面のうち、飛球方向(X軸方向)に対して垂直となる部分に配置され、歪ゲージ131は、この飛球方向と直交する方向(Y方向)に対して垂直となる部分に貼付されている。なお、好ましくは、歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)の位置、特に、グリップ側端部から約14インチ(約360mm)の位置に設けるのが好ましい。
【0035】
歪ゲージ130と、歪ゲージ131とは、シャフト202の周方向に90度離れるように設けられている。
【0036】
図5および図6は、ゴルフプレーヤが打球する直前の様子を示す。そして、図5は、飛球方向から見た様子を示し、図6は、側方から見た様子を示す。ここで、図5に示すように、ゴルフクラブ200のスイング中、ゴルフクラブ200が振り下ろされた際に、シャフト202の中心軸線Pからシャフト202の先端およびヘッド203が遠心力によって、地面方向に垂れ下がる。そして、この垂れ下がる方向(Y軸方向)を「トウダウン方向」とする。
【0037】
そして、歪ゲージ131は、シャフト202のうち歪ゲージ131が装着された位置のY軸方向の(トウダウン方向)の歪みを測定する。歪ゲージ130は、シャフト202のうち、歪ゲージ130が装着された位置のX軸方向(飛球方向)の歪みを測定する。
【0038】
図7は、測定装置100の断面図であり、図8は、測定装置100内部の分解斜視図である。これら図7および図8に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面上に装着されている。測定装置100は、シャフト202の周面上に設けられ、たとえば、ポリエステル等の弾性変形可能な緩衝部材128と、バンド127によって緩衝部材128を介してシャフト202に固定された基板支持部126と、この基板支持部126の上面上にボルトによって固定された基板125とを備えている。
【0039】
基板支持部126は、シャフト202の外表面形状に沿って湾曲し、シャフト202および緩衝部材128を受け入れ可能な湾曲部124と、湾曲部124の側辺部に連設された平坦部123とを備えている。平坦部123上に、基板125が固定されている。そして、平坦部123の側辺部は、上部ケーシング115と下部ケーシング116とによって挟持されており、上部ケーシング115と下部ケーシング116とは互いにボルトによって固定されている。
【0040】
図9は、基板125の側面図である。図8および図9に示すように、測定装置100は、基板125の主表面129B上に半田等によって装着された加速度センサ120,121と、基板125の主表面129A上に装着された表示部112と、各種データ演算処理を行う搭載演算部150と、リセットボタン113とを備えている。なお、搭載演算部150、表示部112、およびリセットボタン113が設けられた基板125の主表面129Aに対して、反対側に位置する主表面129B上に加速度センサ120および加速度センサ121が設けられている。
【0041】
搭載演算部150には、歪ゲージ130および歪ゲージ131からの信号(出力電圧)が送信されている。なお、歪ゲージ130および歪ゲージ131は、少なくとも使用者がスイングの開始時からスイング終了するまでの間、信号を搭載演算部150に送信し続けている。具体的には、電源スイッチ114がONとなり、OFFとなるまでの間、搭載演算部150に信号を送信している。搭載演算部150は、歪ゲージ130および歪ゲージ131から送信された出力信号を記憶部170に格納する。
【0042】
図10から図13を用いて、インパクト直前におけるベンディングポイントの位置を示す「推奨シャフト調子出力値f」の算出方法について説明する。
【0043】
図10は、搭載演算部150が歪ゲージ131から受信した出力電圧に基づいて、歪ゲージ131が装着された位置におけるトウダウン方向の歪みを算出した結果を示すグラフである。図10に示すグラフにおいて、T0は、インパクト時を示し、T3は、スイングのトップ時を示す。搭載演算部150は、歪ゲージ131から入力される出力電圧の変化率が所定値以上となったときをインパクト時として判定する。
【0044】
そして、インパクト時点T0から、たとえば、30ms前の時点を第1検出時点T1とし、たとえば、インパクト時点T0から150ms前の時点を第2検出時点T2とする。なお、第1検出時点T1および第2検出時点T2は、上記値に限られず、第1検出時点T1は、インパクト時点T0から数十ms後の時点であればよく、さらに、第2検出時点T2は、百数十ms後であればよい。具体的には、検出したインパクト時点T0より10ms前の時点と100ms前の時点との間に、第1検出時点T1を設定し、検出したインパクト時点T0より100ms前の時点と、200ms前の時点との間に、第2検出時点T2を設定する。インパクト時点T0から近い時点を第1検出時点T1とすることで、ボールと当接する時の歪ゲージ131の出力値に近い出力値を得ることができる。そして、第1検出時点T1とインパクト時点T0との間の時間は、第1検出時点T1と第2検出時点T2との間の時間よりも短くなっている。
【0045】
搭載演算部150は、記憶部170に格納されたデータを読み出して、第1検出時点T1における歪み量(−d)を算出し、さらに、第2検出時点T2における歪み量(a)を算出する。そして、搭載演算部150は、下記数式(1)に基づいて、ベンディングポイント想定値eを算出する。
【0046】
【数1】

【0047】
そして、記憶部170には、下記表1に示すように、各種ベンディングポイント想定値eに対応する推奨シャフト調子出力値fが格納されている。
【0048】
ここで、ベンディングポイント想定値eは、シャフトのトウダウン方向の変形状態を示すパラメータであり、具体的には、推奨シャフト調子出力値fが小さい程、シャフトの先端部が大きく変形していることを示しており、推奨シャフト調子出力値fが大きいほど、シャフトの手元側の方が大きく変形していることを示す。なお、ベンディングポイント想定値e(=b/a)が、なぜ、インパクト直前におけるシャフトの変形状態と関連性があるのかについては、後述する。
【0049】
推奨シャフト調子出力値fは、シャフトの変形状態を捉えやすくするために設定された表示方法の1つであって、推奨シャフト調子出力値fは、表1に示すような1〜9の整数に限られない。
【0050】
【表1】

【0051】
搭載演算部150は、推奨シャフト調子出力値fを算出すると、算出された推奨シャフト調子出力値fを上記表1に示すような変換データを用いて、その結果を表示部112に出力する。そして、搭載演算部150によって算出された推奨シャフト調子出力値fは、図1に示す外部支援装置500の外部演算部502に入力される。外部演算部502の記憶部には、下記表2に対応するデータが格納されている。
【0052】
【表2】

【0053】
そして、外部演算部502は、入力されたシャフト調子出値fに対応するシャフト調子を外部表示部503に表示する。
【0054】
ここで、ベンディングポイント想定値e(推奨シャフト調子出力値f)と、シャフトの変形状態との相関関係について説明する。
【0055】
使用者のスイング時におけるシャフトの変形状態を正確に把握するには、たとえば、シャフト202の軸方向に間隔をあけて複数の歪みゲージを装着し、この複数の歪みゲージからの出力に基づいてベンディングポイントを予測する方法が考えられる。
【0056】
具体的には、シャフト202の長手方向中央部を挟むように、2つの歪みゲージを装着する。そして、手元側の歪みゲージが検知した歪み量の方が、ヘッド部側に設けられた歪みゲージが検知した歪み量より大きい場合には、シャフト202の長手方向中央部よりもヘッド部側で大きく曲がっていることが分かる。その一方で、ヘッド部側に設けられた歪みゲージが検知した歪み量の方が、手元側に設けられた歪みゲージが検出した歪み量の方が大きい場合には、シャフトの中央部よりも手元側でシャフトが大きく曲がっていることが分かる。
【0057】
図11は、シャフト202の軸方向に間隔をあけて3つの歪ゲージ131,132,133が装着されたゴルフクラブ200の斜視図である。
【0058】
この図11に示すように、シャフト202には、歪ゲージ131と、シャフト202のヘッド203側の先端部に設けられた歪みゲージ133と、この先端部より20cmグリップ201側に設けられた歪みゲージ132とが装着されている。なお、歪ゲージ131,132,133は、いずれも、シャフト202のトウダウン方向の歪みを測定可能となるようにシャフト202に装着されている。
【0059】
そして、図12は、スイングのトップ時からインパクト後までの間における歪ゲージ131,132,133からの出力に基づいて計算された各歪み量を示すグラフである。
【0060】
そして、図12において、曲線C1は、シャフト202の先端部に設けられた歪みゲージ133からの出力を示す。曲線C2は、シャフト202の先端部から20cm手元側に装着された歪みゲージ132の出力を示す。曲線C4は、歪ゲージ131からの出力を示す。
【0061】
そして、インパクト直前における歪みゲージ132の出力と、インパクト直前における歪ゲージ131の出力に基づいて、インパクト時よりも30ms前におけるベンディングポイント(使用者がスイングすることでシャフトに生じる最大撓み位置(屈曲の頂点位置))を把握することができる。
【0062】
そして、歪ゲージ131によって検出された歪み量と、歪みゲージ132によって検出された歪み量との差cが正の場合には、ベンディングポイントは、下記表3に示すように、シャフト202の先端部(ヘッド203)側に位置しており、上記差cが、負の場合にはベンディングポイントは、手元側に位置していることが分かる。
【0063】
【表3】

【0064】
すなわち、シャフトの中央部より手元側に設けられた歪ゲージ131と、シャフトの中央部からヘッド203側に設けられた歪みゲージ132の歪み量を比較することで、ベンディングポイントを正確に把握することができる。
【0065】
図13は、歪ゲージ131が検知した歪み量と歪みゲージ132が検知した歪み量との出力値の差cと、上記b/aの相関関係を示すグラフである。
【0066】
この図13においては、複数のプレーヤが上記3つの歪ゲージ131,132,133が装着されたゴルフクラブ200を用いて複数回試打する。そして、各歪ゲージ131,132,133からの出力値に基づいて、上記差cと、b/aとを算出し、図13に示すグラフ上にプロットした結果である。
【0067】
この図13に示すように、yを(b/a)とし、xをcとすると、R2(決定係数2乗)=0.8754:y=2.3127e−0014xと近似することができる。特に、上記図13に示されるように「b/a」が0.75以上2以下の範囲においては、「c」と「a/b」との間に非常に高い相関関係があることが分かる。
【0068】
このため、歪ゲージ131が検知した歪み量と歪みゲージ132が検知した歪み量との出力値の差cと、上記b/aとの間には、強い相関関係があることが分かる。従って、「b/a」を用いて、スイング中におけるベンディングポイントを正確に把握することができることが分かる。そして、「b/a」は、1つの歪ゲージ131を用いて算出することができ、測定装置100の製造コストの低廉化を図ることができる。
【0069】
スイングテンポは、「切り返しの速さ」と「コック解放の強さ」とによって決まり、スイング中の「しなり量」で表すことができる。そして、スイングテンポの速い使用者は、しなり量も大きくなり、スイング中、シャフトのしなり量は、トップ時に最大となる。このため、スイングテンポを示すパラメータとして「最大撓み量εmax」を採用することができ、スイングテンポが速い使用者程、「最大撓み量εmax」が大きくなる。本発明の実施の形態に係る測定装置100においては、使用者のスイングテンポとして、シャフトの「最大撓み量」を採用している。
【0070】
ここで、スイング中に生じるシャフトの最大撓み量の算出方法について説明する。図1および図4において、測定装置100は、歪ゲージ131および歪ゲージ130を備え、歪ゲージ131は、トウダウン方向のシャフト202の歪みを測定し、さらに、歪ゲージ130は飛球方向のシャフト202の歪みを測定する。
【0071】
そして、歪ゲージ131および歪ゲージ130は、いずれも、スイング開始からスイング終了までの間、搭載演算部150に信号を出力し続けており、出力結果は記憶部170に全て格納されている。
【0072】
このため、歪ゲージ131によって算出されるトウダウン方向の歪み量(εy)と、歪ゲージ130によって算出される飛球方向の歪み(εx)から、シャフト202の撓み量(ε)を下記数式(2)から算出することができる。
【0073】
【数2】

【0074】
搭載演算部150は、時々刻々の撓み量εを算出し、記憶部170に格納する。そして、上記数式(2)から算出される撓み量の最大値を「最大撓み量εmax」として記憶部170に格納する。記憶部170には、下記表4に示すように、「最大撓み量εmax」に対応する「スイングテンポ出力値」が予め格納されている。
【0075】
そして、測定時には、搭載演算部150は、歪ゲージ130および歪ゲージ131から出力された出力値に基づいて、「最大撓み量εmax」を算出し、算出された「最大撓み量εmax」に対応するスイングテンポ出力値を表示部112に表示する。
【0076】
そして、測定装置100によって出力されたスイングテンポ出力値は、外部支援装置500の外部演算部502に入力される。
【0077】
【表4】

【0078】
外部支援装置500は、入力されたスイングテンポ出力値および後述するヘッドスピードとによって、選定するシャフトのフレックスを決定する。
【0079】
ここで、シャフトの選定に寄与するスイングテンポ出力値は、歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力によって算出されており、歪ゲージ131は、「スイングテンポ出力値」および「推奨シャフト調子出力値f」の算出に寄与する。
【0080】
このように、シャフトの選定をするための各種パラメータを算出する際に、歪ゲージ131からの出力値を兼用することで、測定装置100の部品点数の低減が図られている。
【0081】
ここで、インパクト直前におけるヘッドスピードの算出方法について説明する。
図8および図9に示すように、測定装置100は、シャフト202の軸方向に間隔をあけて設けられた加速度センサ120および加速度センサ121を備えている。
【0082】
測定装置100は、この2つの加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて、インパクト直前のヘッドスピードを算出する。
【0083】
本実施の形態に係る測定装置100においては、ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングすると、時々刻々において、ゴルフクラブ200は、図1に示す中心軸線P上に位置する仮想回転中心Oを中心として円運動していると仮定した上で、ヘッドスピードを算出する。なお、仮想回転中心Oは、スイングの姿勢に合わせて移動する。
【0084】
そして、ヘッド203とボールとのインパクト時を検出し、インパクト時においても、ゴルフクラブ200が仮想回転中心Oを中心として円運動しているものとして、インパクト時における各加速度センサ120および加速度センサ121が検出する各加速度から、ヘッド203の中心点Rの仮想速度を算出する。その一方で、予め、ゴルフクラブ200が円運動するものとして算出したときの中心点Rの仮想速度と、当該スイング時において、他の測定機器によって実測したヘッド203の速度(スイング速度)との相関関係を算出しておき、仮想速度を実測した速度に一致または近似させるための補正関数を算出する。そして、測定時にゴルフプレヤーがスイングすることで、算出された上記仮想速度を、上記補正関数で補正し、実測値に近似されたヘッド速度を算出する。
【0085】
図1を用いて、上記仮想速度の算出方法について具体的に説明する。図1において、加速度センサ120と加速度センサ121とは、中心軸線P方向に配列しており、互いに、中心軸線P方向にセンサ間距離r3離れている。加速度センサ120は、仮想回転中心Oから中心軸線P方向に中心線距離r2離れた位置に装着されている。また、加速度センサ121は、仮想回転中心Oから中心線距離r1離れた位置に装着されている。そして、ヘッド203のフェースの中心点Rと、加速度センサ120とは、中心軸線P方向に中心線距離L離れている。
【0086】
ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングして、インパクト時におけるゴルフクラブ200の回転角速度をωとする。さらに、加速度センサ120が検出した加速度をα2とし、加速度センサ121が検出した加速度をα1とすると、下記の数式(3)および数式(4)の式が成立する。さらに、中心点Rにおける仮想速度Vhは、下記数式(4)によって示すことができる。
【0087】
【数3】

【0088】
【数4】

【0089】
【数5】

【0090】
そして、上記数式(3)〜数式(5)からω、r1およびr2の項を消去することで、仮想速度Vhは、下記数式(6)によって表すことができる。
【0091】
【数6】

【0092】
ここで、中心線距離Lおよびセンサ間距離r3は、測定装置100によって決定されるものであり、既知の値である。α1およびα2は、各加速度センサ120および加速度センサ121によって測定することができる。
【0093】
したがって、加速度センサ120および加速度センサ121の出力値によって、仮想速度Vhを算出することができる。
【0094】
図14は、仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。この図14を用いて、仮想速度Vhを実測値に近似させる補正式の算出方法について説明する。なお、図14に示すグラフにおいて、横軸は、中心点Rの実測した速度(スイング速度)を示し、縦軸は、加速度センサ120,121からの出力値に基づいて、上記数式(6)の式から算出した仮想速度Vhである。
【0095】
この図14に示すように、ゴルフクラブ200をスイングすることで、加速度センサ120と加速度センサ121からの出力値を、上記数式(6)に代入して、算出したときの算出値(仮想速度Vh)と、当該スイング時における中心点Rの速度を別の測定機器によって実測した実測値とについて、複数サンプリングする。そして、この図14に示すように、各結果から下記数式(7)に示すような近似式を導出することができる。なお、実測値を測定する測定機器としては、たとえば、モーションアナリシス社製MAC-3D動作解析システム等を採用する。
【0096】
【数7】

【0097】
なお、この数式(7)に示される近似式は、例示であって、これに限られない。また、近似方法も、1次近似に限られず、2次近似の多項式近似、対数近似、指数近似等であってもよい。
【0098】
そして、上記数式(7)のような補正データ(近似式)が格納された測定装置100を用いて、実際にヘッド速度を測定する際には、まず、加速度センサ120,121または歪ゲージ130,131からの出力に基づいて、インパクト時を検出する。
【0099】
そして、インパクト直前における加速度センサ120,121からの出力に基づいて、仮想速度Vhを算出し、上記数式(7)に示す近似式に代入することで、正確なインパクト直前のヘッド速度Vを算出することができる。
【0100】
ここで、歪ゲージ130および歪ゲージ131から搭載演算部150は「スイングテンポ出力値」が算出されている。
【0101】
そして、図1に示す外部支援装置500の外部演算部502には、算出された「スイングテンポ出力値」と算出された「ヘッド速度V」とに基づいて、選定するシャフトのフレックスを選択するデータが格納されている。
【0102】
図15は、外部演算部502に格納され、「スイングテンポ出力値」と「ヘッド速度V」とに基づいて、選定するシャフトのフレックスを導出するデータをグラフで示したものである。
【0103】
この図15に示すように、算出されたヘッドスピードと、スイングテンポ出力値とに基づいて、使用者に適したフレックスを選択する。たとえば、ヘッドスピードが遅く、スイングテンポ出力値が小さい使用者に対しては、比較的柔らいL/LRフレックスやRフレックス等が選択される。その一方で、ヘッドスピードが速く、スイングテンポ出力値が高い使用者には、SフレックスやSX/XLフレックスやSフレックス等の比較的硬いフレックスが選択される。
【0104】
測定装置100は、使用者のスイングのインパクト直前の「前反り角度」と「トウダウン量」とを算出し、外部支援装置500は算出された「前反り角度」と「トウダウン量」とに基づいて使用者に適したシャフトの剛性分布(EI分布)を算出し、その結果を表示部に表示する。
【0105】
ここで、「前反り角度」は、歪ゲージ130が検出するX方向(飛球方向)の歪み量から算出される。なお、「トウダウン量」は、歪ゲージ131によって検出される。そして、測定装置100は、インパクト直前に歪ゲージ130が検知した飛球方向の歪み量εxを前反り値KAに変換する。なお、前反り値KAは、0〜9の整数である。同様に、測定装置100は、歪ゲージ131によって検知されたトウダウン方向のεyをトウダウン値TDに変換する。トウダウン値TDも0〜9の整数である。
【0106】
下記表5および表6は、外部支援装置500の外部演算部502に格納されたデータであって、表5は、歪み量εxを前反り値KAに変換するデータを示し、表6は、歪みεyを上記のトウダウン値TDに変換するデータを示す。そして、外部演算部502は、前反り値KAおよびトウダウン値TDを表示部112に表示する。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
そして、外部支援装置500の外部演算部502には、入力された「前反り値KA」と「トウダウン値TD」とに基づいて、シャフトの剛性分布(EI分布)を設定するデータが格納されている。具体的には、下記表7によって示されるデータが格納されている。
【0110】
【表7】

【0111】
なお、上記表7において、「→」は、測定装置100が装着されているシャフトの剛性から変えないことを意味する。「↑」は、剛性をあげることを意味する。「↓」は、剛性を下げることを意味する。
【0112】
そして、外部支援装置500の外部演算部502には、入力されたスイングスピードに基づいて、シャフト質量を選定するデータが格納されている。表8は、このシャフト質量を選定するためのデータであり、外部演算部502に格納されている。
【0113】
【表8】

【0114】
そして、外部演算部502は、入力されたヘッドスピードに基づいて、シャフト質量を選択する。図16は、上記図15に示すグラフに、表7に示すシャフト質量とヘッドスピードとの関係を上書きしたものである。
【0115】
この図16に示すグラフ示されるように、「スイングテンポ出力値」と「ヘッドスピード」とに基づいて、「シャフト質量」、「フレックス」および「シャフト調子」を選定することができる。
【0116】
さらに、測定装置100は、下記式8に示す式に基づいて、「しなり速度」を算出する。
【0117】
なお、下記式8において、εx(t0−26ms)は、インパクト時より26ms前におけるトウダウン方向の歪み量を意味する。εx(t0−6ms)は、インパクト時より6ms前の時点におけるシャフトの飛球方線方向の歪み量を意味する。
【0118】
一般に、中級〜上級のゴルファの「しなり速度」の平均値は2.5m/s程度である。この値が過大であると打球方向が安定しなくなり、過小であるとインパクト時のヘッドスピードが低下する。したがって、「しなり速度」は、たとえば、1.5m/s以上3.5m/s以下程度であることが好ましい。
【0119】
【数8】

【0120】
そして、搭載演算部150は、上記数式(8)によって算出された「しなり速度」を0〜9の整数で示される「しなり速度出力値RF」に変換する。搭載演算部150には、「しなり速度」を0〜9の整数に変換するための変換データが格納されている。そして、搭載演算部150は、実際の測定により算出された「しなり速度」を変換して、「しなり速度出力値RF」を算出し、表示部112は、算出されたしなり速度出力値RFを表示する。
【0121】
そして、たとえば、「しなり速度」が過大であると評価された場合は、シャフトを硬く(フレックスをアップ)する。これにより、「しなり速度」が抑制され、「打点のばらつき」を抑制することが可能になる。
【0122】
図17は、外部表示部503の画面の正面図であり、外部支援装置500の操作画面を示す。この図17に示す例においては、ヘッドスピードが「88」、スイングテンポ出力値「5」、トウダウン値TD「5」、前反り値KA「7」、(b/a)が「5」と入力されてる。
【0123】
その結果、「フレックス」が「S」、シャフト質量が「110〜120」、ベンディングポイント「Mid」のシャフトが選定されている。具体的には、シャフト名「Nippon1150 S」が選択されている。
【0124】
(実施の形態2)
図18を用いて、本実施の形態2に係るゴルフクラブシャフトの選定システムについて説明する。
【0125】
図18は、コックアングルと、インパクト直前におけるシャフトの回転半径との関係を示すグラフである。コックアングルとは、使用者の手首部において、ゴルフクラブ200と使用者の腕とによって成す角度である。
【0126】
そして、撮影装置等を用いて、使用者が打球するときのインパクト直前のコックアングルを測定する。インパクト直前におけるシャフトの回転半径Rは、測定装置100によって算出されたヘッドスピードと、上記数式(4)および数式(5)に基づいて算出することができる。採取した結果が図18のプロットとして示されている。
【0127】
そして、コックアングルをyとし、インパクト直前のシャフトの回転半径をxとすると、y=グリップ201.57x−102.13:R2(決定係数2乗)=0.8648と近似することができる。
【0128】
このため、測定装置100によってインパクト直前におけるシャフトの回転半径を算出し、そのインパクト直前における使用者のコックアングルを予測することができることが分かる。そして、記憶部170には、ヘッドスピードからコックアングル算出する上記式またはこれに対応するデータが格納されている。そして、搭載演算部150は、算出されたヘッドスピードに基づいて、インパクト直前のコックアングルを算出する。そして、表示部112は、算出されたコックアングルを表示する。
【0129】
そこで、ゴルフクラブ選定システム600においては、測定装置100によって算出されたヘッドスピードに基づいて、シャフトの回転半径を算出する。そして、この算出された回転半径に基づいて、使用者に推薦するシャフト質量およびフレックスを設定する。
【0130】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、スイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムに適用することができ、特に、使用者に適したシャフト調子の選定を支援するスイング分析装置およびゴルフクラブシャフト選定システムに好適である。
【符号の説明】
【0132】
100 測定装置、110 ケース、111 挿入孔、112 表示部、113 リセットボタン、114 電源スイッチ、115 上部ケーシング、116 下部ケーシング、120,121 加速度センサ、130,131 歪ゲージ、132,133 ゲージ、150 処理部、170 記憶部、200 ゴルフクラブ、201 グリップ、202 シャフト、203 ヘッド、500 外部支援装置、501 外部入力部、502 外部演算部、503 外部表示部、600 ゴルフクラブ選定システム、O 仮想回転中心、P 中心軸線、R 中心点、r1,r2 中心線距離、r3 センサ間距離、T0 インパクト時点、T1,T2 検出時点、TD トウダウン値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有するシャフト、および前記シャフトの一端に設けられたヘッド部を含むゴルフクラブをスイングする使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、
前記ゴルフクラブのシャフトに設けられ、前記シャフトのトウダウン方向の歪みを測定可能なトウダウン用歪みゲージと、
前記シャフトのベンディングポイントの位置に対応するベンディングポイント想定値を演算する搭載演算部と、
前記搭載演算部からの出力値を表示可能な搭載表示部と、
を備え、
前記搭載演算部は、使用者のスイング中の第1時点における前記トウダウン用歪みゲージの計測値と、前記第1時点よりも前の第2時点における前記トウダウン用歪みゲージの計測値とに基づいて、前記ベンディングポイント想定値を算出し、
前記搭載演算部には、前記ベンディングポイント想定値を推奨シャフト調子出力値に変換する変換データが予め格納され、
前記推奨シャフト調子出力値は、前記シャフトの前記ベンディングポイント想定値を示す出力値であって、
前記搭載演算部は、算出された前記ベンディングポイント想定値に対応する前記推奨シャフト調子出力値を前記搭載表示部に出力する、スイング分析装置。
【請求項2】
前記トウダウン用歪みゲージは、前記シャフトの他端から304mmの位置と、前記他端から381mmの位置との間に設けられた、請求項1に記載のスイング分析装置。
【請求項3】
前記トウダウン用歪みゲージは前記搭載演算部に継続して計測値を出力し、
前記搭載演算部は、前記トウダウン用歪みゲージから継続して出力される計測値の変動率が、所定値を超えたときをインパクト時として検出し、
前記搭載演算部は、検出した前記インパクト時より10ms前の時点と100ms前の時点との間に、前記第1時点を設定し、検出した前記インパクト時より100ms前の時点と、200ms前の時点との間に、前記第2時点を設定する、請求項1または請求項2に記載のスイング分析装置。
【請求項4】
前記シャフトの飛球方向の歪みを検知可能な飛球方向用歪みゲージをさらに備え、
前記搭載演算部は、前記飛球方向用歪みゲージからの計測値と前記トウダウン方向用歪みゲージからの計測値に基づいて、前記シャフトの最大撓み量を算出し、
前記搭載演算部には、前記シャフトの最大撓み量を、使用者のスイングテンポを示すスイングテンポ出力値に変換する変換データが格納され、
前記搭載演算部は、算出した前記最大撓み量に基づいて、前記スイングテンポ出力値を算出し、前記搭載表示部は算出された前記スイングテンポ出力値を表示する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイング分析装置。
【請求項5】
長手方向を有するシャフト、および前記シャフトの一端に設けられたヘッド部を含むゴルフクラブをスイングする使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、
前記シャフトに設けられ、前記長手方向に間隔をあけて配置された第1加速度センサおよび第2加速度センサと、
前記第1加速度センサおよび前記第2加速度センサからの出力に基づいて、前記シャフトの回転半径を演算可能な搭載演算部と、
前記搭載演算部の演算結果を表示する搭載表示部とを備え、
前記搭載演算部には、前記シャフトの回転半径を、使用者のコック角度に変換する変換データが格納され、
前記搭載演算部は、算出した前記ヘッド部の速度から使用者のコック角度を算出し、
前記搭載演算部は、算出された前記コック角度を表示する、スイング分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のスイング分析装置と、
前記スイング分析装置からの出力に基づいて、使用者に適したシャフトを選定する外部演算部と、
前記外部演算部からの出力を表示する外部表示部とを備えた、ゴルフクラブシャフト選定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−187749(P2010−187749A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32805(P2009−32805)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)