スエード調壁紙

【課題】紙又は不織布等の基材を有する壁紙においても、良好なスエード調の外観と感触(タッチ感)を得ることができ、基材が紙製や不織布であっても良好な塗工性でスエード調の表層を形成できることができる。
【解決手段】基材上にスエード調の外観と感触を有する合成樹脂製の表層を形成した壁紙であって、表層は、基材上に塗工された樹脂ゾルを乾燥・加熱した層であって、樹脂ゾルは、塩化ビニル系ペースト樹脂を主成分として少なくとも膨張開始温度が110〜130℃の熱膨張マイクロカプセルと適量の可塑剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スエード調の外観及び感触を有する壁紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装材、内装建材などの用途に好適な装飾材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。これは、スエード調の外観と軟らかい感触を備える装飾材であって、ポリ塩化ビニルシートなどの基材の表面に、一液型ウレタン樹脂塗料などに熱膨張性のマイクロカプセル及びウレタンビーズ、シリコンビーズなどを配合した塗料を塗布し、その後、マイクロカプセルが熱膨張する温度より低い温度で乾燥して塗膜を形成し、次いで、マイクロカプセルが熱膨張する温度より高い温度で加熱してマイクロカプセルを熱膨張させ、基材上に前述した塗料によって形成される表層を積層したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−33481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術は、基材が合成樹脂であり、この合成樹脂による基材を加熱により軟化させると同時にマイクロカプセルを熱膨張させることで、表層にスエード調の凹凸を形成するものである。
【0005】
これに対して、基材が普通紙等の紙製や不織布である壁紙においても、エンボス加工を施すことなく表面に高級質感を持たせるスエード調の表層を設けることが求められている。しかしながら、単純に合成樹脂基材を有する装飾材の技術を普通紙や不織布等の基材の壁紙に適用しても良好な塗工性とスエード調の外観と感触を得ることができない問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、基材を普通紙などの紙製や不織布とした壁紙においても、良好なスエード調の外観と感触(タッチ感)を得ることができること、基材が紙製や不織布であっても良好な塗工性でスエード調の表層を形成できること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明によるスエード調壁紙は、基材上にスエード調の外観と感触を有する合成樹脂製の表層を形成した壁紙であって、前記表層は、前記基材上に塗工された樹脂ゾルを乾燥・加熱した層であって、該樹脂ゾルは、塩化ビニル系ペースト樹脂を主成分として少なくとも膨張開始温度が110〜130℃の熱膨張マイクロカプセルと適量の可塑剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する本発明によると、紙製或いは不織布などの基材を有する壁紙においても、良好なスエード調の外観と感触(スエードタッチ感)を得ることができ、基材が紙製や不織布などであっても良好な塗工性でスエード調の表層を形成できることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る壁紙は、基材と表層とを備えており、表層によってスエード調の外観と柔らかい感触(スエードタッチ感)を得ることができるものである。ここでいうスエード調とは、表面に微細な凹凸を形成することで表面の毛羽立ちを模擬した表面形態であり、表面の光沢を抑制した独特の風合いと高級感を醸し出す表面形態を指している。また、ここでは外観だけでなく、手で触ったときの感触が柔らかく、しかもかさかさした乾いた感じの無い(しっとりとした)感触を有することを併せて意味している。この感覚を以下にスエードタッチ感という。
【0010】
本発明の実施形態に係る壁紙の基材は、一例としては紙製であり、普通紙、難燃紙、無機質紙、寒冷紗(織布)などが用いられ、また他の例としては不織布であり、これら基材の表面に樹脂ゾルを塗工した表層が形成されている。
【0011】
樹脂ゾルの主成分は塩化ビニル系ペースト樹脂である。樹脂ゾルには、可塑剤と熱膨張マイクロカプセルが含有され、更に必要に応じて、安定剤、化学発泡剤、キッカー剤、充填剤、希釈剤などが添加される。塩化ビニル系ペースト樹脂としては、一般に重合度1000〜1500程度のものが好適に用いられる。
【0012】
可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)などのフタル酸エステルを用いることができる。熱膨張マイクロカプセルは、直径5〜50μmの直径を有し、加熱によって4〜30倍に体膨張するものであって、ブタンやイソブタンなどの揮発性炭化水素を内包し、その外殻が塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどによって形成されたものを用いることができる。
【0013】
壁紙は、ボリューム感、ソフトタッチ感を得るために発泡させるのが一般的である。しかし、スエードタッチを出すためのマイクロカプセルの添加量では不足するため、化学発泡剤を併用することが好ましい。また、一般的な発泡条件では、温度が高いため、樹脂層が軟化し過ぎてスエードタッチを損なうため、キッカー剤(低温で発泡させる発泡助剤)を用いる。
【0014】
化学発泡剤としては、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、重曹などが挙げられる。適切な発泡温度を持つ化学発泡剤とキッカー剤の組合せとしては、アゾ系発泡剤と亜鉛化合物の組合せが挙げられる。
【0015】
亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛などが使用できる。好ましくは、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)と酸化亜鉛の組合せが挙げられる。
【0016】
好適な添加量は、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)0.5〜3重量部、酸化亜鉛4〜10重量部であり、一般的な壁紙と比較して、化学発泡剤は少な目、キッカー剤は過剰な添加量となる。これにより、好適な発泡温度である160℃〜200℃程度で発泡させることが可能となる。
【0017】
なお、複合安定剤中に亜鉛化合物を使用することがあるが、添加量は通常0.5重量部未満であり、発泡性に大きな影響は与えない。
【0018】
本発明の実施形態では、熱膨張マイクロカプセルは、熱膨張開始温度が110℃〜130℃のものを用いる。熱膨張開始温度が低すぎると乾燥工程で熱膨張が始まってしまい、良好なスエード調の表面形態を得ることができない。また、熱膨張開始温度が高すぎると発泡不良が生じやすく、これによっても良好なスエード調の表面形態を得ることができない。好ましい例としては熱膨張開始温度が120℃のもので良好なスエード調の表面形態を得ることができた。
【0019】
また、本発明の実施形態では、一般的な塩化ビニル樹脂製壁紙において配合される配合量に対して、より多く可塑剤を配合することで、柔らかくしっとりとした感触(スエードタッチ感)を得ることができた。可塑剤の量が少ないと外観的なスエード調は得られるが表面が乾いた状態になって色調も白化してしまう。可塑剤が多すぎるとべたつき感が多くなり、壁紙としては防火性に問題が生じる。主成分の塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60〜75重量がよく、好ましくは70重量部配合することで最も良好なスエードタッチ感が得られた。
【0020】
以下に本発明の実施形態に係るスエード調壁紙の製造方法を説明する。基材(例えば、普通紙)上に前述した配合の樹脂ゾルを塗工する。樹脂ゾルは基材上全面に一様に塗工する場合もあれば、表面に形成される意匠に応じて、ベース層を塗工した後、任意の柄層を部分的に何層かに分けて塗工する場合がある。樹脂ゾルの塗工は一層を形成する毎に乾燥工程を経るようにし、塗工後の層を乾燥させ、その上に別の柄層を塗工する。全ての柄層を塗工した後に加熱処理して熱膨張マイクロカプセルを熱膨張させる。乾燥工程での温度は、マイクロカプセルの熱膨張開始温度未満とし、加熱処理工程での温度は、マイクロカプセルの熱膨張開始温度以上(110℃以上)とする。好ましくは160〜200℃となる。
【0021】
表1に本発明の実施形態に係るスエード調壁紙の実施例を示す。表1における例1〜例4が実施例であり、例5〜例8が比較例である。表における「樹脂」は塩化ビニル系ペースト樹脂、「可塑剤」はフタル酸ジイソノニル(DINP)、「MC1」は膨張開始温度が120℃の熱膨張マイクロカプセル(日本フィライト製エクスパンセル009DU80)、「MC2」は、熱膨張開始温度が90〜100℃の熱膨張マイクロカプセル(松本油脂製F−30)、「MC3」は膨張開始温度が150℃の熱膨張マイクロカプセル(松本油脂製F−85D)、「安定剤」は複合安定剤、「発泡剤」はADCA系発泡剤(大塚化学製ユニフォームAZウルトラ1035)、「キッカー剤」は酸化亜鉛(堺化学)、「充填剤」は炭酸カルシウム(日東粉化製NS#100)、希釈剤は例えば炭化水素系(ノルマルパラフィン系)の希釈剤である。表の数字は重量部である。
【0022】
各例は、主成分の塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して、「安定剤」、「発泡剤」、「キッカー剤」、「充填剤」、「希釈剤」の添加割合を一定している。また各例における熱膨張マイクロカプセルの配合割合は、種類に関わらず塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して3.4重量部にしている。例1,例5,例6では、「可塑剤」の配合割合を塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60重量部にしており、例2では、「可塑剤」の配合割合を塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して65重量部にしており、例3,例7,例8では、「可塑剤」の配合割合を塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して70重量部にしており、例4では、「可塑剤」の配合割合を塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して75重量部にしている。
【0023】
各例の樹脂ゾルを普通紙基材(例えば、85g/m2)に一様厚さ(例えば、0.1mm)で塗工し、100℃で乾燥した後、各例の熱膨張マイクロカプセルの熱膨張開始温度以上で加熱処理して、評価対象の壁紙を得た。各評価対象の表面を手で触れて、そのスエードタッチ感を評価した(「◎」:タッチ感非常に良好、「○」:タッチ感良好、「△」:タッチ感やや不良、「×」:タッチ感不良)。普通紙の基材に対する樹脂ゾルの塗工性は各例とも良好であった。
【0024】
熱膨張開始温度が120℃のマイクロカプセル「MC1」を用い、「可塑剤」の配合が塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60〜75重量部の例1〜例4は、いずれもスエードタッチ感の評価が「◎」又は「○」であった。
【0025】
「可塑剤」の配合が塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60重量部であるが、熱膨張開始温度が90〜100℃のマイクロカプセル「MC2」を用いた例5は、スエードタッチ感の評価が「×」であった。「可塑剤」の配合が塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60重量部であるが、熱膨張開始温度が150℃のマイクロカプセル「MC3」を用いた例6は、スエードタッチ感の評価が「△」であった。
【0026】
「可塑剤」の配合が塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して70重量部であるが、熱膨張開始温度が90〜100℃のマイクロカプセル「MC2」を用いた例7は、スエードタッチ感の評価が「×」であった。「可塑剤」の配合が塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して70重量部であるが、熱膨張開始温度が150℃のマイクロカプセル「MC3」を用いた例8は、スエードタッチ感の評価が「×」であった。
【0027】
以上の評価結果から明らかなように、樹脂ゾルに配合させる熱膨張マイクロカプセルの種類の選定のみ、或いは樹脂ゾルに配合させる可塑剤の配合量のみでは、普通紙や不織布からなる基材の壁紙において良好なスエードタッチ感は得られず、熱膨張マイクロカプセルの選定(膨張開始温度110〜130℃)に加えて、可塑剤の配合割合を適量(塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して60〜75重量部)にすることで、良好なスエードタッチ感が得られることが分かった。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にスエード調の外観と感触を有する合成樹脂製の表層を形成した壁紙であって、
前記表層は、前記基材上に塗工された樹脂ゾルを乾燥・加熱した層であって、
該樹脂ゾルは、塩化ビニル系ペースト樹脂を主成分として少なくとも膨張開始温度が110〜130℃の熱膨張マイクロカプセルと適量の可塑剤を含むことを特徴とするスエード調壁紙。
【請求項2】
前記可塑剤を、前記樹脂ゾルの塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対して、60〜75重量部配合させたことを特徴とする請求項1記載のスエード調壁紙。
【請求項3】
前記基材は、紙又は不織布であることを特徴とする請求項1又は2記載のスエード調壁紙。

【公開番号】特開2012−183769(P2012−183769A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49521(P2011−49521)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】