説明

スカム除去装置

【課題】トラフによって形成された流路に流入するスカム混入水を適切な流量にすることが可能なスカム除去装置を提供する。
【解決手段】スカム除去装置10は、沈殿池1の外部に向かって延在し、スカムが混入したスカム混入水が流入する流路124を形成するトラフ12と、上端部分11aが前記水面から没した堰11と、トラフ12に閉塞可能に設けられ、堰11の上端部分11aを越えたスカム混入水が流路124に流入する際に通過する流入口125とを備え、流入口125は、流路124に流入するスカム混入水の流量を、ポンプ161の汲み上げ流量以下に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿池の水面に浮かぶスカムを除去するスカム除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設に設けられる沈殿池には、水面にスカムが浮遊してしまうことがある。スカムが水面に浮遊していると浄化処理の妨げになるため、スカムを除去するスカム除去装置を沈殿池に設けることがある。このスカム除去装置として、上端部分が水面に浮かんだ堰と、その堰の上端部分を所定のタイミングで水没させる機構と、上端部分が水没した堰を越えたスカム混入水を沈殿池の外部に向けて流す流路を形成するトラフとを備えたものが存在する。このようなスカム除去装置として、たとえば特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。流路を流れて沈殿池の外部に流されたスカム混入水は、ポンプによって汲み上げられ、スカムを取り除く所定の処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−305325号公報
【特許文献2】特開平9−131589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載されたスカム除去装置は、堰の上端部分を水没させたときの、水面からその上端部分までの距離によって流路に流入するスカム混入水の流量が定まるものである。しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されたスカム除去装置では、上端部分が水面に浮かんだ堰を所定のタイミングで機構によって水中に下げてその堰の上端部分を水没させている。このため、その機構の動作精度や摩耗による劣化などによって、上端部分が水没した堰の上端部分から水面までの距離が変化してしまうという問題がある。特に、特許文献2に記載されたスカム除去装置は、堰の上端部分を水没させる機構を水中に設けている。このため、水中の汚物によって機構の動作が阻害され、堰の水没動作が不安定になってしまう可能性がある。さらに、特許文献1や特許文献2に記載されたスカム除去装置では、流路に流入するスカム混入水の流量とスカム混入水を汲み上げるポンプの汲み上げ流量との関係が考慮されていない。このため、ポンプの汲み上げ流量を越えたスカム混入水が流路に流入し、スカム混入水が流路から溢れてスカムを沈殿池から除去できなくなってしまう虞がある。また、流路に流入したスカム混入水をポンプを用いないで自然流下によりスカム除去装置の外に排出する場合もある。この場合も、自然流下によってスカム除去装置の外に排出される流量を越えたスカム混入水が流路に流入すると、スカム混入水が流路から溢れてスカムを沈殿池から除去できなくなってしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、トラフによって形成された流路に流入するスカム混入水を適切な流量にすることが可能なスカム除去装置を備えたスカム除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明のスカム除去装置は、沈殿池の水面に浮かぶスカムが混入したスカム混入水を該沈殿池の外部に向けて流すスカム除去装置において、
前記沈殿池の外部に向かって延在し、スカム混入水が流入する流路を形成するトラフと、
前記沈殿池の外部に設けられ、前記流路を通って流れてきたスカム混入水をこのスカム除去装置の外に排出する排出手段と、
上端部分が前記水面から没した堰と、
前記トラフに閉塞可能に設けられ、前記堰の上端部分を越えたスカム混入水が前記流路に流入する際に通過する流入口とを備え、
前記流入口は、前記流路に流入するスカム混入水の流量を、前記排出手段が排出する流量以下に制限するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明のスカム除去装置によれば、水面から堰の上端部分までの距離が変動しても、流路に流入するスカム混入水は前記流入口によって流量が制限されるので、スカム混入水が流路から溢れてしまうことを防止できる。
【0008】
本発明のスカム除去装置において、前記堰は、前記沈殿池の水位が変化しても前記水面から所定距離水中に没した位置に上端部分を維持するものであり、
前記流入口は、前記上端部分を越えるスカム混入水の流量以上の流量のスカム混入水が通過可能なものであることを特徴とする。
【0009】
こうすることで、水位の変化にかかわらず水面から一定の深さまでの水をスカムとともに流路に流入させ、流路に流入するスカム混入水のスカム混入率を高めることができる。
【0010】
また、本発明のスカム除去装置において、前記流入口は、前記トラフが延在する方向に沿って複数の開口に分割されたものであってもよい。
【0011】
さらに、本発明のスカム除去装置において、前記流入口を閉塞する蓋体を備え、
前記蓋体は、前記流入口を通過して前記流路に流入するスカム混入水の流量を調整可能なものであることが好ましい。
【0012】
流路に流入するスカム混入水の流量を調整することで、水面から堰の上端部分までの距離が何らかの原因で変動しても、その変動した距離に応じて、スカム混入水が流路に流入する流量を適切な量とすることができる。
【0013】
また、流入口を複数の開口に分割すると、蓋体を小さくして蓋体に生じる歪みを小さすることが可能になり、蓋体による流入口の密閉性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスカム除去装置によれば、トラフによって形成された流路に流入するスカム混入水を適切な流量にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるスカム除去装置10が設置された沈殿池1の一例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB部を拡大して示したB部拡大図である。
【図4】図3に示す堰と、トラフと、接続部材と、蓋体の概略斜視図である。
【図5】トラフと蓋体を図3における左側から見た側面図である。
【図6】スカムピットを示す断面図である。
【図7】他の実施形態のスカム除去装置におけるスカムピットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態であるスカム除去装置10が設置された沈殿池1の一例を示す平面図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図1では、図2に示す汚泥掻寄機30を省略している。また、図1および図2では、図3に示す開閉機構15を省略している。
【0018】
図1に示すように、沈殿池1は、一対の側壁1aと、上流壁1bと、下流壁1cによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。この沈殿池1は、図1において左側から沈殿池1に流入した水に含まれる汚泥やスカムを取り除くためのものである。汚泥とスカムが取り除かれた水は、図1において右側に配置された排水樋40を通って図示しない排水路に流れ、沈殿池1の外部に排水される。以下、図1における左方向を上流方向と称し、図1における右方向を下流方向と称することがある。また、図1における上下方向を幅方向と称することがある。
【0019】
図2に示すように、この沈殿池1には、スカム除去装置10と、汚泥掻寄機30と、排水樋40と、汚泥ピット50とが設けられている。汚泥掻寄機30は、沈殿池1の幅方向両端部に設けられ、沈殿池1内を循環運動する一対のチェーン31と、その一対のチェーン31の間に掛け渡された複数のフライト板32と、各チェーン31毎に4つ配置されたスプロケット33とを備えている。スプロケット33のうちの一つは、図示しないモータによって図2において時計回りに回転駆動されている。チェーン31は、スプロケット33の回転に伴って図2において時計回りに回転している。フライト板32も、チェーン31とともに図2において時計回りに回転している。沈殿池1の池底部に沈殿した汚泥は、沈殿池1の池底部近傍において沈殿池1の上流方向に移動しているフライト板32によって汚泥ピット50に掻き寄せられる。汚泥ピット50に掻き寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池1の外部に排出される。また、沈殿池1の水面Wの近傍で、沈殿池1の下流方向に移動しているフライト板32は、上端部が水面から突出し、下端部が水中に没している。沈殿池1の水面Wに浮かんだスカムは、沈殿池1の水面W近傍にあるフライト板32によって後述する堰11に向けて移送される。
【0020】
図3は、図2のB部を拡大して示したB部拡大図である。また、図4は、図3に示す堰11と、トラフ12と、接続部材13と、蓋体14の概略斜視図である。また、図5は、トラフ12と蓋体14を図3における左側から見た側面図である。
【0021】
図3に示すように、スカム除去装置10は、堰11と、トラフ12と、堰11およびトラフ12を接続する接続部材13と、蓋体14と、蓋体14を開閉する開閉機構15と、スカムピット16とを備えている。
【0022】
図3および図4に示すように、接続部材13は、固定板131と、側板132と、シール部材133と、堰用ヒンジ134とから構成されている。固定板131は、板底部分131aと、その板底部分131aの幅方向両端部に設けられた一対の側板部分131bとから構成されている。また、シール部材133は、底面部分133aと、その底面部分133aの幅方向両端部に設けられた一対の側面部分133bとから構成されている。なお、図3では紙面と直交する方向が幅方向となる。また、側板132は、堰11の幅方向両端面に溶接された一対の金属板である。固定板131は、金属板を曲げ加工したものである。固定板131の下流方向の端面は、接合部分から水が進入できないように溶接によりトラフ12に接合されている。シール部材133における下流方向の端部は、接着部分から水が進入できないように固定板131に接着されている。このシール部材133は、ゴム製のシート材で構成されている。なお、シール部材133を構成する部材は、軟性を有するシート材であればよく、たとえばビニル樹脂製のシート材であってもよい。
【0023】
堰11は、内部に空間を有する三角柱形状部分11bと、その三角柱形状部分11bから下流方向に突出した突出面部分11cとから構成されている。また、堰11の幅方向両端面は、一対の側板132によって覆われており、堰11の三角柱形状部分11bの内部に水が進入できないように堰11と各側板132とは溶接によって接合されている。なお、堰11と側板132とを、たとえば一枚の金属板を曲げ加工することで一体に成形してもよい。
【0024】
シール部材133の側面部分133bにおける上流方向の端部は、接着部分から水が進入できないように側板132に接着されている。また、シール部材133の底面部分133aにおける上流方向の端部は、接着部分から水が進入できないように堰11の突出面部分11cに接着されている。堰11の突出面部分11cは、堰用ヒンジ134によって回転自在に固定板131の板底部分131aに取り付けられている。この堰用ヒンジ134は、シール部材133の底面部分133aを挟み込むように、堰11の突出面部分11cと固定板131の板底部分131aに図示しないボルトで固定されている。図4に示すように、シール部材133の側面部分133bは、堰11の回転動作を妨げないようにジャバラ状に折りたたまれている。
【0025】
堰11は、水面Wから所定距離水中に没するように浮力が調整されたものである。堰11の浮力によって、沈殿池1の水位にかかわらず水面Wから堰11の上端部分11aまでの距離は常に一定に維持されている。本実施形態では、上端部分11aが水面Wから25mmの距離水中に没するように堰11の浮力が調整されている。以下の説明では、水面Wから堰11の上端部分11aまでの距離を呑み込み水深と称する。たとえば、図3の二点鎖線で示す位置に水面Wの位置(沈殿池1の水位)が変動した場合、堰11は、水面Wの変動に伴い二点鎖線で表す位置に移動する。従って、呑み込み水深は常に25mmになる。
【0026】
堰11の上端部分11aよりも下流側の上面と接続部材13の内側面によって、堰11を越えた沈殿池の水が溜まる呑込領域130が形成されている。固定板131の側板部分131bの上端部分とシール部材133の側面部分133bの上端部分と側板132の上端部分それぞれは、水面Wよりも上に突出している。このため、固定板131の側板部分131b、シール部材133の側面部分133bまたは側板132を越えて沈殿池1の水が呑込領域130に進入することはない。すなわち、堰11の上端部分11aを越えた水のみが、呑込領域130に流入可能な構成になっている。この構成によって、沈殿池1の水面W付近に存在するスカムを効率よく呑込領域130に流入させることができる。
【0027】
トラフ12は、上流側側板12aと、下流側側板12bと、上流側側板12aと下流側側板12bを繋ぐ底板12cとを備えており、図3に示すように、上方が開口した略コの字形状をしている。上流側側板12aと下流側側板12bと底板12cとは一枚の金属板を曲げ加工して成形したものであるが、それぞれ別体で成形して溶接などで接合したものであってもよい。トラフ12は、沈殿池1の幅方向に延在しており、トラフ12の内周面によって、スカムが混入したスカム混入水を沈殿池1の外部に向けて流す流路124が形成されている。また、トラフ12は沈殿池1の外部に設けられたスカムピット16(図1参照)まで延在している。トラフ12の底板12cは、沈殿池1の外部に向かってほんの少し下方に傾斜している。図3に示すように、トラフ12の上流側側板12aの上側部分は、上方に向かって下流方向に約15度傾斜した傾斜面となっている。その傾斜面には、堰11の上端部分11aを越えたスカム混入水が流路124に流入する際に通過する流入口125が設けられている。
【0028】
図5に示すように、トラフ12の上流側側板12aには、下辺と側辺をつなぐ部分にR部を有する略長方形状をした3つの流入口125が、幅方向に並べて設けられている。流入口125は、1つであってもよいが、3つに分割することで各流入口125を閉塞する各蓋体14を小さくすることができる。蓋体14が大きいと、蓋体14に生じる歪みが大きくなりやすい。蓋体14を小さくし、蓋体14に生じる歪みを小さくすることで蓋体14による流入口125の密閉性を高めることができる。この流入口125の上辺は、沈殿池1の水位が最も高くなったときの水面W(図5において実線で表した水位)が位置する面よりも、上になる位置に設けられている。また、流入口125の下辺は、沈殿池1の水位が最も低くなったときの水面W(図5において二点鎖線で表した水位)が位置する面よりも、下になる位置に設けられている。なお、図示しない管理システムによって沈殿池1に流入する水の流量は管理されており、沈殿池1の水面Wの位置の変動は最大50mm程度である。
【0029】
流入口125からは、堰11の上端部分11aを越えて呑込領域130に流入するスカム混入水の流量以上の流量のスカム混入水が、流路124に通過可能である。すなわち、3つの流入口125の合計開口面積を、堰11の幅方向の長さに呑み込み水深を乗じた面積以上の面積となるようにしている。このような開口面積にすることで、流路124に流入するスカム混入水の、スカムの混入率を高めることができる。これは、蓋体14を開放したときに、呑込領域130に流入するスカム混入水の流量以上の流量のスカム混入水が呑込領域130から流入口125を通過して流出し、呑込領域130に存在するスカム混入水の水位が下がるからである。スカム混入水の水位が下がると、沈殿池1の水面W付近に浮かんだスカムを効率的に呑込領域130に流入させることができ、また呑込領域130の水面付近のスカム混入水をより多く流入口125から流路124に流入させることができる。
【0030】
なお、流入口125上辺と下辺の間の距離hは、呑み込み水深(ここでは25mm)の1.5倍以上とすることが望ましい。このようにすることで、流入口125の幅方向の長さを短くしても流路124に流入するスカム混入水の流量を確保できる。流入口125の幅方向の長さを短くした場合、蓋体14に必要な幅方向の長さが短くなり、幅方向の歪みの小さな蓋体14を使用して高い密閉性で流入口125を閉塞することができるようになる。
【0031】
図4に示すように、流入口125には、その側辺と下辺を取り囲む様にパッキン126が設けられている。蓋体14によって流入口125を閉塞したときに、蓋体14とパッキン126が接触するので、蓋体14と流入口125の間の密閉性を高めることができる。なお、このパッキン126は、蓋体14との接触部分が中空円柱状をしたPパッキンである。
【0032】
各流入口125を開閉する3つの蓋体14は、取付高さ調整用の台座147を介してトラフ12の上流側側板12aに固定された蓋体用ヒンジ141によって回転自在に上流側側板12aに取り付けられている。蓋体14は、水面Wよりも高い位置に上端部を有している。また蓋体14が流入口125を閉塞した状態では、蓋体14の下端部は水面Wよりも低い位置にある。蓋体14は、流入口125を閉塞している状態において水中に没している下側部分を、水面側である上方に移動するように回転させることで流入口125を開放する構成である。この構成とすることで、蓋体14を少し開くだけで、呑込領域130に溜まったスカム混入水を、流路124に流入させることができる。
【0033】
図3に示すように、蓋体14には、その蓋体14を開閉する開閉機構15が接続されている。この開閉機構15は、3つの蓋体14それぞれに1つづつ設けられている。開閉機構15は、電動弁151と、貯水タンク152と、支点153、第1リンク154、第2リンク155、第3リンク156とから構成されている。第3リンク156は、蓋体14に対して回転自在に連結されており、各リンクそれぞれはお互いに回転自在に連結されている。電動弁151には、下水処理場で処理を施した水を送る配管が接続されており、電動弁151を開くと、配管から貯水タンク152に水が供給される。貯水タンク152は、図示しない小孔が下部に設けられている。この小孔は、貯水タンク152内の水を少量づつ排出するためのものである。貯水タンク152の水が少なくなると、貯水タンク152の重さによって生じる回転モーメントが減少して第1リンク154が図3において反時計回りに回動し、開閉機構15および蓋体14は図3で実線で示した位置になる。
【0034】
電動弁151は、図示しないタイマからの信号に応じて、たとえば1時間間隔で3分間開放される。なお、タイマを調整することで、この時間間隔と開放する時間は任意に設定できる。各蓋体14に接続された開閉機構15は、同一のタイマからの信号に応じて自動的に動作するものであり、3つの開閉機構15はほぼ同時に開閉動作する。なお、各蓋体14それぞれに開閉機構15を設けずに、一つの開閉機構15で3つの蓋体14を同時に動作させる構成としてもよい。電動弁151を開放すると、貯水タンク152に水が流入し、その流入した水によって貯水タンク152の重量が増加する。貯水タンク152の重量が所定量を超えると、支点153を中心にして第1リンク154が図3において時計回りに回転し、第2リンク155と第3リンク156が上方に持ち上がる。そして、蓋体用ヒンジ141の回転中心を中心として図3に破線で示す位置に蓋体14が回転し、流入口125は開放される。開放された流入口125から流路124に流入したスカム混入水は、図1に示すスカムピット16に流れていく。
【0035】
図6は、スカムピット16を示す断面図である。
【0036】
スカムピット16は、スカムピット16の底面近傍に吸い込み口162を有するポンプ161を備えている。このポンプ161は、スカムピット16に溜まったスカム混入水を汲み上げてスカム除去装置の外に排出するものである。すなわち、本実施形態におけるポンプ161は、本発明の排出手段の一例に相当し、このポンプ161までがスカム除去装置であって、ポンプ161よりも下流側がスカム除去装置の外に相当する。スカムは水面に浮きやすいため、スカムを効率的に汲み上げるためには吸い込み口162が設けられている位置にスカム混入水の水面がくることが望ましい。本実施形態の3つの流入口125から流路124に流入するスカム混入水の合計流量は、ポンプ161が汲み上げる汲み上げ流量以下となるように制限されている。すなわち、3つの流入口125の合計開口面積を、流路124に流入するスカム混入水の合計流量がポンプ161によって汲み上げられる汲み上げ流量以下となるような面積にしている。この流入口125を設けることで、流路124に流入するスカム混入水の流量を制限し、スカムピット16内のスカム混入水の水面を吸い込み口162のある位置に維持することができる。また、スカム混入水が流路124から溢れて沈殿池1に逆流してしまうことも確実に防止できる。 以上説明したように、本実施形態のスカム除去装置10によれば、トラフ12によって形成された流路124に流入するスカム混入水を適切な流量にすることができる。また、本実施形態のスカム除去装置10では、貯水タンク152に流入する水によって蓋体14を開閉駆動しているので、蓋体14を開閉するアクチュエータなどの新たな動力源を必要としない(いわゆる無動力)。また、堰11の浮力によって呑み込み水深を一定にしているので、蓋体14を開放するだけで水面から一定の深さまでの水をスカムとともに一定の流量で流路に流入させることができる。
【0037】
本実施形態のスカム除去装置からは、沈殿池の水面に浮かぶスカムが混入したスカム混入水を該沈殿池の外部のポンプに向けて流すスカム除去装置において、前記沈殿池の外部に向かって延在し、スカム混入水が流入する流路を形成するトラフと、上端部分が前記水面から没した堰と、前記トラフに閉塞可能に設けられ、前記堰の上端部分を越えたスカム混入水が前記流路に流入する際に通過する流入口とを備え、前記流入口は、前記流路に流入するスカム混入水の流量を、前記ポンプの汲み上げ流量以下に制限するものであることを特徴とするスカム除去装置といった発明思想を導きだすことができる。なお、この発明思想においては、スカム除去装置が、必ずしもスカムピット16を備えている必要はない。
【0038】
次に、他の実施形態のスカム除去装置10について説明する。以下の実施形態の説明では、先の実施形態のスカム除去装置10の説明と重複する説明は省略する。
【0039】
図7は、他の実施形態のスカム除去装置10におけるスカムピット16を示す断面図である。
【0040】
先の実施形態は、ポンプ161を用いてスカムピット16内のスカム混入水をスカム除去装置の外に排出したが、この実施形態では、排出口165からの自然流下によってスカム混入水をスカム除去装置の外に排出している点が異なる。図7に示すように、スカムピット16の底面には、本発明の排出手段の一例に相当する排出口165が設けられている。この実施形態のスカム除去装置では、この排出口165までがスカム除去装置であって、排出口165よりも下流側がスカム除去装置の外に相当する。また、本実施形態では、3つの流入口125から流路124に流入するスカム混入水の合計流量は、排出口165からスカム除去装置の外に排出されるスカム混入水の流量以下となるように制限されている。すなわち、3つの流入口125の合計開口面積を、排出口165の開口面積以下となるような面積にしている。なお、本実施形態では、排出口165をスカムピット16の底面に設けたが、スカムピット16の側面に設けてもよい。
【0041】
この実施形態でも、先の実施形態と同一の効果が得られる。また、ポンプ161を用いないので、消費電力が低減される。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、貯水タンク152に流入した水によって貯水タンク152の重量を変化させて蓋体14を開閉動作させる開閉機構15を設けたが、モータなどのアクチュエータで蓋体14を開閉動作させてもよい。また、所定位置に移動したときのフライト板32の動きを利用して蓋体14を開閉動作させてもよい。また、回転式の蓋体14を設ける例を説明したが、流入口125によって形成される平面に沿って移動するスライド式の蓋体14としてもよい。さらに、スライド式の蓋体14のスライド方向の位置をアクチュエータを用いて位置制御する構成としてもよい。スライド式の蓋体14の位置を位置制御することで、流路124に流入するスカム混入水の流量を任意に調整できる。たとえば、スカムピット16内のスカム混入水の水量に応じて蓋体14の位置を位置制御することで、流路124に流入するスカム混入水の流量を調整してもよい。また、たとえば、呑み込み水深が何らかの原因で変動した場合、その変動した呑み込み水深に応じて蓋体14の位置を位置制御して、流路124に流入するスカム混入水の流量を調整してもよい。また、本実施形態では、堰11の浮力によって呑み込み水深を一定としているが、堰11とは別体の水面に浮かぶフロートを設け、そのフロートに堰11を吊り下げる構造としてもよい。なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 沈殿池
10 スカム除去装置
11 堰
12 トラフ
124 流路
125 流入口
14 蓋体
15 開閉機構
161 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の水面に浮かぶスカムが混入したスカム混入水を該沈殿池の外部に向けて流すスカム除去装置において、
前記沈殿池の外部に向かって延在し、スカム混入水が流入する流路を形成するトラフと、
前記沈殿池の外部に設けられ、前記流路を通って流れてきたスカム混入水をこのスカム除去装置の外に排出する排出手段と、
上端部分が前記水面から没した堰と、
前記トラフに閉塞可能に設けられ、前記堰の上端部分を越えたスカム混入水が前記流路に流入する際に通過する流入口とを備え、
前記流入口は、前記流路に流入するスカム混入水の流量を、前記排出手段が排出する流量以下に制限するものであることを特徴とするスカム除去装置。
【請求項2】
前記堰は、前記沈殿池の水位が変化しても前記水面から所定距離水中に没した位置に上端部分を維持するものであり、
前記流入口は、前記上端部分を越えるスカム混入水の流量以上の流量のスカム混入水が通過可能なものであることを特徴とする請求項1に記載のスカム除去装置。
【請求項3】
前記流入口は、前記トラフが延在する方向に沿って複数の開口に分割されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のスカム除去装置。
【請求項4】
前記流入口を閉塞する蓋体を備え、
前記蓋体は、前記流入口を通過して前記流路に流入するスカム混入水の流量を調整可能なものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載のスカム除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−232257(P2012−232257A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102382(P2011−102382)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508165490)アクアインテック株式会社 (51)
【Fターム(参考)】