説明

スタンド付き電子機器

【課題】簡単な機構で、機器本体の設置角度の選択が可能であり、そして、選択した設置角度にて機器本体を確実に保持することができるスタンド付き電子機器を提供する。
【解決手段】電話機2は、リアケース12と、リアケース12に回動可能に接続されたスタンド8とを備えており、リアケース12は、背壁29の中央に設けられた膨出部30と、膨出部30の両側面に突設された一対の回動軸32と、背壁29における回動軸32にそれぞれ隣接する位置に形成された凹所38とを有し、スタンド8は、一対の主脚50と、両主脚50を連結する補助脚52とを有し、各主脚50は、先端部に主脚50の長手方向に突出して設けられ、凹所38内のV字溝46と係合する係合爪56と、先端部の内側面62に形成されたガイド溝58とを含み、ガイド溝58は、主脚50の長手方向に延びるメイン溝部と、このメイン溝部に交差する方向に延びるサブ溝部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機等の電子機器に係わり、より詳しくは、電子機器の設置角度を調整するためのスタンドを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、卓上・壁掛け兼用電子機器の中には、卓上にて使用されるとき、電子機器における機器本体の設置角度を調整するためにスタンド装置を備えたものがあり、このスタンド装置は、機器本体を上下方向に回動自在に支持するベースと、このベースと機器本体との間に配置され、ベースに対して機器本体を所定の設置角度に保持するスタンドとを含む。このようなスタンド装置は、部品点数が多いため、電子機器の製造効率の低下、製造コストの増加を招く。また、スタンド装置にはベースが必要不可欠であるため、スタンド装置は電子機器における外観デザインの自由度を低下させる。
【0003】
ここで、上述のベースを省略した電子機器の1つの態様として、例えば、特許文献1に開示された卓上・壁掛け兼用電子機器が知られており、この電子機器のスタンド装置はスタンドのみを含んでいる。
【特許文献1】特開2007−96878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子機器の場合、機器本体に許容される設置角度は1つのみである。即ち、スタンドは、機器本体に回動可能に取り付けられ、機器本体の傾斜角を決定する作動位置と機器本体内の格納位置との何れかに回動して位置付けられる。それ故、使用状況等に応じて機器本体の設置角度を変更する必要が生じても、この要求に特許文献1の電子機器は対処できないという課題を有する。
【0005】
また、スタンドが作動位置にあるとき、スタンドはその基部にて、機器本体の回動規制部に当接されている。この回動規制部は作動位置から格納位置に向かう方向へのスタンドの回動を阻止する。より詳しくは、スタンドは機器本体の幅方向に移動自在であり、この幅方向に移動されることで、作動位置にて、回動規制部と当接可能となる。
しかしながら、上述したようにスタンドは機器本体の幅方向に移動自在であるから、スタンドに側方からの外力が加えられれば、スタンドが機器本体の幅方向に移動し、回動規制部から外れてしまう。このような場合、スタンドは作動位置から格納位置に向けて不用意に回動し、機器本体をその設置角度に安定して保持できないという課題を有する。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、簡単な機構で、機器本体の設置角度の選択が可能であり、そして、選択した設置角度にて機器本体を確実に保持することができるスタンド付き電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のスタンド付き電子機器は、筐体と、前記筐体の背面に配置され、前記筐体を傾斜状態で支持するためのスタンドと、前記筐体の前記背面に対して前記スタンドを回動可能に接続する回動手段と、前記筐体の背面と前記スタンドとの間に設けられ、前記筐体の背面に対する前記スタンドの角度を複数段に選択可能とし、選択段にて前記スタンドの回動をロックするロック装置とを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
また、本発明のスタンド付き電子機器は、請求項1に記載のスタンド付き電子機器において、前記回動手段は、前記筐体及び前記スタンドの一方に設けられた回動軸と、前記筐体及び前記スタンドの他方に設けられ、前記回動軸を受け入れる受け部とを含み、前記ロック装置は、前記スタンドの上端に設けられた係合爪と、前記筐体の背面に設けられ、前記係合爪と係合可能な複数の係合窪みと、前記受け部を形成するガイド溝であって、前記回動軸の相対的な移動を許容し、且つ、前記係合爪が選択された係合窪みに係合されたとき、前記回動軸の移動を阻止するガイド溝とを含む構成とすることが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、本発明のスタンド付き電子機器は、請求項2に記載のスタンド付き電子機器において、前記ガイド溝は、前記回動軸の軸線に直交する方向に延び、この方向への前記回動軸の移動を許容するメイン溝であって、前記方向と前記係合爪が前記係合窪みに対して係合する方向が一致する、メイン溝と、前記メイン溝と交差して延び、前記回動軸を受け入れたとき、前記方向への前記回動軸の移動を阻止するサブ溝とを有する構成とすることが好ましい(請求項3)。
【0010】
また、本発明のスタンド付き電子機器は、請求項1〜3の何れかに記載のスタンド付き電子機器において、前記係合窪みは、前記回動軸の軸線を中心に放射状に配置されている構成とすることが好ましい(請求項4)。
また、本発明のスタンド付き電子機器は、請求項1〜4の何れかに記載のスタンド付き電子機器において、前記筐体の背面に設けられた筐体壁掛手段と、前記スタンドに設けられたスタンド壁掛手段とを更に備える構成とすることが好ましい(請求項5)。
【0011】
具体的には、前記筐体壁掛手段は、前記筐体の背面において、電子機器が掛けられる壁面側に向かって開口した筐体壁掛孔であり、前記スタンド壁掛手段は、前記スタンドが前記筐体の背面に沿う休止位置の選択段にあるとき、前記背面とは反対側に向けて開口したスタンド壁掛孔である構成とすることが好ましい(請求項6)。
また、より具体的には、前記スタンドは、前記休止位置にあるとき、前記筐体内に差し込まれるロック爪を有する構成とすることが好ましい(請求項7)。
【0012】
また、前記ガイド溝は、L字形状をなしている構成とすることが好ましい(請求項8)。
また、前記ガイド溝は、T字形状をなしている構成とすることが好ましい(請求項9)。
更に、前記ガイド溝は、前記回動軸の移動を阻止する部位の底に他の部位よりも凹んだ凹みを有し、この凹みに前記回動軸の先端の受け入れが許容されている構成とすることがより好ましい(請求項10)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至請求項10に記載の本発明によれば、回動手段により筐体の背面に回動可能に接続されているスタンドをロック装置により筐体の背面に対する角度を複数段で選択しその選択段でロックすることができる。これにより機器本体を選択した設置角度にて確実に保持することができる。
また、請求項2に記載の本発明によれば、回動手段とロック装置とを比較的簡単な構成で得られるので、製造効率の向上、製造コストの削減が図れる。
【0014】
請求項3に記載の本発明によれば、回動軸がガイド溝のメイン溝に沿って摺動することによりスタンドが係合窪みに向かって進み、スタンドの係合爪が係合窪みと係合する。この状態で回動軸をサブ溝に進入させることにより、係合爪と係合窪みとの係合が簡単確実にロックされる。また、回動軸をサブ溝から外すことにより簡単にロックを解除することができる。このように、本発明によれば、簡単な構成で、スタンドを所定角度に確実に固定でき、しかも、その固定の解除も容易であることから、電子機器の角度の調整が容易にできる。このため、本発明は、スタンド付き電子機器において、スタンドの角度を保持するためのベース部材等の別部材を省略することができ、製造効率の向上、製造コストの削減が図れ、更に、電子機器における外観デザインの自由度の向上にも貢献する。
【0015】
更に、請求項4に記載の本発明によれば、複数の係合窪みが回動軸を中心に放射状に配置されているので、その係合窪みの位置に応じた角度だけスタンドの角度を調整することができる。このため、電子機器の角度調整の幅を広げることができる。
請求項5及び請求項6に記載の本発明によれば、壁掛手段により電子機器を壁掛け使用することができる。本発明では、スタンドにも壁掛手段を設けているので、電子機器全体としての外観デザインの自由度が確保されている。
【0016】
請求項7に記載の本発明によれば、スタンドは、更にロック爪を有しており、このロック爪が筐体内に差し込まれことにより、スタンドの回動は規制され、スタンドを休止位置の状態に確実にロックすることができる。このため、本発明では、スタンドに壁掛手段を設けても電子機器の壁掛け使用に十分耐えることができる。従って、スタンドにも壁掛孔を配設することができるので、電子機器全体としての外観デザインの自由度の向上に寄与する。
【0017】
請求項8及び9に記載の本発明によれば、ガイド溝の形態を簡易な形態とすることができ、電子機器全体としての製造効率の向上に寄与する。
請求項10に記載の本発明によれば、ガイド溝内の凹みに回動軸の先端が嵌め込まれることにより、回動軸がロック状態位置から不用意に外れることを防止でき、より確実なロックがなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るスタンド付き電子機器の実施の形態を説明する。
(実施例1)
図1は、スタンド付き電子機器の一実施例であるスタンド付き電話機を示す。
この電話機2は機器本体としての筐体4と、筐体4の前面左側部に載置された送受話器6と、筐体4の背面部に配設されたスタンド8とを備えている。ここで、図1中の電話機2に関して、矢印A方向を上方側、矢印B方向を下方側、矢印C方向を前面側、矢印D方向を背面側、矢印E方向を左方側、矢印F方向を右方側とする。
【0019】
筐体4はプラスチック材料から形成され、その前面を形成する前面パネル10と、その背面部を形成するリアケース12とを備えている。なお、筐体4内には送受話器6以外の電話機能部品(図示しない)が収容されている。
ここで、前面パネル10の表面には、図1から明らかなように、ダイヤルキー14、局線ボタン16、機能ボタン18、液晶表示器20、スピーカ音量ボタン22等が配置されている。なお、前面パネル10の左側部には、上下一対の凹部24,24が設けられ、これら凹部24は、送受話器6の受け座を形成する。また、一対の凹部24間にはその中間に多数の孔26が形成されている。これら孔26はマトリックス状に分布され、そして、筐体4内には孔26の分布域に対応した位置にスピーカが配置されている。
【0020】
リアケース12は、図2に示すように扁平な箱形状をなし、背壁29と、この背壁29を囲む周壁とを有する。背壁29と周壁との間はラウンドコーナに形成されているが、背壁29の上下の縁と周壁の上下の壁部との間のラウンドコーナは、背壁29の左右の縁と周壁の左右の壁部との間のラウンドコーナよりも大きな曲率半径を有する。
背壁29の中央には略矩形の膨出部30が設けられ、この膨出部30は背壁29の幅方向に長い。更に、膨出部30にはその中央に溝36を有し、この溝36は背壁29の上下方向(AB方向)に延びている。
【0021】
溝36内には、直方体形状の掛止ブロック40が配置されている。この掛止ブロック40は一部が溝36から背壁29上に突出している。背壁29と平行な掛止ブロック40及び膨出部30の背面は、背壁29から同一距離だけ離れている。即ち、掛止ブロック40及び膨出部30の背面は同一面内に配置されている。掛止ブロック40には、2つのロアフック孔48が形成されており、これらロアフック孔48は背壁29の上下方向に離間している。これらロアフック孔48は、壁に取り付けられたフック部材(図示せず)を係合させるために使用される。
【0022】
また、リアケース12の下側のラウンドコーナにはその両端部に一対のラバーパッド42がそれぞれ取り付けられている。これらラバーパッド42は下側のラウンドコーナに沿う円弧状をなしている。
なお、図2中、参照符号44は、モジュラーソケットの取り付け孔を示す。
そして、膨出部30にはその両側面から一対の回動軸32,32が突設され、そして、背壁29には一対の回動軸32にそれぞれ隣接して一対の凹所38が形成されている。即ち、これら凹所38は膨出部30の対応する側の側面に隣接して位置付けられている。図3からより明らかなように、各凹所38は回動軸32を中心としたアーチ形状をなし、例えば、3つのV字溝46を有する。これらV字溝46は回動軸32の軸線方向に延び、回動軸32を中心として放射状に配置されている。
【0023】
一方、前述したスタンド8は筐体4と同様にプラスチック材料から形成され、図2に示すように、前述の膨出部30をその三方から囲むことができる略U字形状をなしている。即ち、スタンド8は、一対の主脚50,50と、これら主脚50の基部を連結する補助脚52とを備えている。これら主脚50及び補助脚52は何れもプレート状をなし、その厚さは前述した膨出部30の高さに一致しているか、この高さよりも僅かに薄い。なお、図2には、スタンド8の裏面が現れている。
【0024】
より詳しくは、スタンド8の軽量化を図るため、各主脚50及び補助脚52の裏面は周壁を残して開かれて、これらの裏面にはリブ60,74がそれぞれ配置されている。これらリブ60,74は、軽量化に伴うスタンド8の強度不足を補う。
各主脚50はその先端部に係合爪56を有する。この係合爪56は主脚50の先端部からその長手方向に突出し、前述したV字溝46の1つと合致可能な三角形状、即ち、楔形状をなしている。
【0025】
更に、一対の主脚50の先端部間の間隔は、主脚50の基端部間の間隔よりも僅かに狭い。即ち、一対の主脚50は互いに平行ではなく、スタンド8の中心軸線に対し、図2中矢印G,H方向に向けて僅かに傾斜している。
更に、各主脚50の先端部にはその内側面62にガイド溝58がそれぞれ形成されている。これらガイド溝58はスタンド8の幅方向でみて互いに対向し、その詳細は図4に示されている。図4から明らかなように、ガイド溝58はL字形状をなし、2つの端を有する。より詳しくは、ガイド溝58は、主脚50の表面側に位置付けられ且つ主脚50の長手方向に延びるメイン溝部64と、このメイン溝部64に略直交するサブ溝部66とを有し、このサブ溝部66は主脚50の基端側に位置したメイン溝部64の端から主脚50の裏面側に向けて延びている。メイン溝部64及びサブ溝部66は、前述した回動軸32を受け入れ可能な大きさ、即ち、回動軸32の直径と同一又は若干広い幅を有する。
【0026】
また、ガイド溝58の両端は、回動軸32の外周に合致可能な円弧状をなしている。更に、サブ溝部66は、図5から明らかなように、メイン溝部64よりも深く円形の凹みとして形成され、この凹みはメイン溝部64内に入り込んでいる。なお、サブ溝部66の底とメイン溝部64の底との間の段差は傾斜面63に形成されている。
一方、前述した補助脚52は、図2に示すように、その裏面中央に掛止ブロック75を有し、この掛止ブロック75に前述したロアフック孔48と同様なアッパフック孔76が形成されている。
【0027】
また、補助脚52は一対のロック爪78を有する。これらロック爪78は主脚50側に位置した補助脚52の内端面から主脚50の先端部に向けて突出している。詳しくは、一対のロック爪78は掛止ブロック75の両側に配置され、補助脚52の表面と同一の面内に位置付けられている。
一対のロック爪78は前述した膨出部30内に差込み可能であり、このため、図6に示されるように、膨出部30の上端面には一対のロック爪78の挿入を許容する一対の差込み孔34が形成されている。
【0028】
前述したスタンド8は、図2中二点鎖線で示すように、一対の主脚50の間にリアケース12の膨出部30を挟み込み、そして、先端部のガイド溝58内に膨出部30の対応する側の回動軸32を受け入れた状態で、リアケース12の背面に取り付けられている。
図7は休止位置にあるスタンド8を示す。
この休止位置にて、スタンド8はその上下を逆にしてリアケース12の背面に重ね合わされて、リアケース12の膨出部30をその三方から囲んだ状態にあり、そして、回動軸32は対応する側のガイド溝58内にて、ロック位置に位置付けられている。
【0029】
ここで、ガイド溝58内での回動軸32の相対的な位置を説明する上で、便宜的にガイド溝58を3つの領域に分けて考える。すなわち、図8に示すように、サブ溝部66を領域a、メイン溝部64の補助脚52側の部分を領域b、メイン溝部64の係合爪56側の部分を領域cとしたとき、ロック位置にある回動軸32はガイド溝58の領域aに位置付けられている。それ故、スタンド8の一対の主脚50は,前述したようにスタンド8の中心軸線に対して僅かに傾斜した状態にあるから、回動軸32の先端はガイド溝59のサブ溝部66(領域a)に落ち込んだ状態にある。
【0030】
なお、回動軸32とV字溝46との間の距離や、ガイド溝58と係合爪56との間の距離は後述の説明から明らかとなる。
また、スタンド8が休止位置にあるとき、図9に示されるようにスタンド8の一対のロック爪78は矢印J方向から、前述したリアケース12における膨出部30の差込み孔34に差し込まれた状態にある。
【0031】
それ故、休止位置にあるスタンド8は、リアケース12の背壁29に沿った状態で多重にロックされている。より詳しくは、先ず、スタンド8が起立する方向(図9中矢印K方向)への回動はロック爪78により規制されている。しかも、図10及び11を参照すればより明らかなように、回動軸32(説明の都合上黒点で示している。)はガイド溝58内の領域aに位置付けられているので、ロック爪78の差込み及び抜出し方向へのスタンド8の移動は回動軸32により阻止され、ロック爪78が差込み孔34から抜け出ることはない。よって、スタンド8は、リアケース12の背面に確実に保持されている。
【0032】
更に、ガイド溝58のサブ溝部66、すなわち領域aは、図4,5から明らかなように、ガイド溝58の他の領域よりも一段凹んでいるので、回動軸32が領域aから抜け出すには、スタンド8における一対の主脚50はこれらの先端部がリアケース12の幅方向でみて互い離れるように強制的に弾性変形されなければならない。この結果、スタンド8はリアケース12の背面に確実に保持され、スタンド8がリアケース12の背面から自重により離れることはない。
【0033】
スタンド8が上述した休止位置にあるとき、電話機2は卓上に載置して使用されるか、又は、リアケース12のロアフック孔48及びアッパフック孔76を利用し、室内の壁にフックを介して引っ掛けた壁掛け状態にて使用される。
ここで、アッパフック孔76はスタンド8に備えられているが、前述したように休止位置にあるスタンド8はリアケース12の背面に確実に保持、即ち、固定されているので、スタンド8のアッパフック孔76がそのフックから外れることはない。
【0034】
電話機2が卓上にて使用される場合、使用者は、液晶表示器20が見易くなるよう電話機2の設置角度を調整することも可能である。ここでの調整は、電話機2のスタンド8をリアケース12の背面から離し、リアケース12の背面に対してスタンド8を所望の角度に保持することにより、実施される。
具体的には、上述したロック状態が解除されるが、このロック解除は以下の手順により実施される。
【0035】
先ず、スタンド8は図10及び11に示す休止位置から、図12及び13に示すように、その一対の主脚50の先端部がリアケース12の背面から離れるように、矢印L方向に持ち上げられる。このとき、ガイド溝58におけるサブ溝部66とメイン溝部64の段差が前述した傾斜面63(図4参照)に形成されているので、リアケース12の回動軸32の先端はガイド溝58の傾斜面63を相対的に押圧し、これにより、一対の主脚50は弾性変形を伴い、リアケース12の幅方向でみて外側に向けて弾性変位し、一対の主脚50における先端部間の間隔が増加される。それ故、回動軸32の先端は、ガイド溝58の領域a、即ち、サブ溝部66の凹部より抜け出し、ガイド溝58の領域bに相対的に移動する。この時点で、主脚50の長手方向へのスタンド8の移動規制が解除され、前記長手方向へのスタンド8の移動が許容される。
【0036】
この後、図14及び15に示されるように、スタンド8は矢印M方向へ移動される。これにより、回動軸32は、ガイド溝58内にて領域bから領域cへ相対的に移動し、また、ロック爪78はリアケース12の差込み孔34から抜き出されると同時に、主脚50の先端部、即ち、係合爪56がリアケース12の凹所38に対応した領域に位置付けられる。それ故、回動軸32を中心としたスタンド8の回動が許容され、図16及び図17に示すように、使用者はスタンド8を回動させることができる。
【0037】
このようなスタンド8の回動を受け、凹所38のV字溝46の中から選択した1つのV字溝46に係合爪56の先端が対向されたとき、図18及び19に示すように、スタンド8は矢印P方向に押し込まれる。それ故、スタンド8は係合爪56が選択したV字溝46に噛み合うと同時に、回動軸32は、ガイド溝58内にて領域cから領域bに相対的に移動する。
【0038】
次いで、図20及び21に示すように、係合爪56が噛み合うV字溝46を支点としてスタンド8が矢印Q方向に回動されると、回動軸32は、ガイド溝58内にて領域bから領域aに相対的に移動する。それ故、前述したように回動軸32は主脚50の長手方向へのスタンド8の移動を規制するので、係合爪56はV字溝46に噛み合った状態でロックされ、この結果、スタンド8は、リアケース12の背面に対し、選択したV字溝46により決定される角度を有した作動位置に保持、即ち、ロックされる。
【0039】
また、ガイド溝58の領域a、即ち、サブ溝部66は前述したように、ガイド溝58の他の領域よりも凹んでいるので、回動軸32がサブ溝部66に相対的に移動したとき、一対の主脚50の復元力により、ガイド溝58は回動軸32に向けて変位し、これにより、回動軸32の先端はサブ溝部66内に相対的に確実に落ち込んだ状態、即ち、ロック状態となる。それ故、スタンド8は作動位置においても、多重にロックされ、係合爪56及びV字溝46は、互いに確実に係合されている。
【0040】
以上のように、スタンド8が作動位置に移動され、この作動位置にてロックされることにより、図22に示すようにリアケース12の背面から起立した状態となる。この状態で、図1に示したように電話機2は、スタンド8により決定される設置角度にて、卓上に載置される。
また、電話機2の設置角度を変更するためにスタンド8を他の作動位置に位置付ける場合、あるいは、再度、休止位置に戻す場合は、上記の手順と逆にスタンド8のロックが解除され、スタンド8は他の作動位置又は休止位置にて、再度ロックされる。
(実施例2)
実施例2に係る電話機は、実施例1に係る電話機2と対比したとき、リアケースの形態及びスタンドの休止形態が異なり、それ以外の部分については、実施例1の電話機2と同様である。それ故、実施例2の電話機を説明するにあたり、実施例1の場合とは相違する点についてのみ、以下に説明する。
【0041】
図23は、実施例2に係るリアケース80を示している。
このリアケース80の膨出部86は、リアケース80の上部(矢印A方向側)に配置されている。膨出部86はその両側面の下部に切欠部を備えており、この切欠部は側壁96及び端壁100を有する。これら切欠部の側壁96には一対の回動軸88,88それぞれが設けられている。そして、これら回動軸88に隣接して凹所90がそれぞれ配置されている。これら回動軸88及び凹所90は、実施例1の回動軸32及び凹所38にそれぞれ対応する。また、図23から明らかなように、リアケース80の下部にも一対のラバーパッド92が取り付けられており、これらラバーパッド92は実施例1のラバーパッド42に対応する。
【0042】
図24に示すように、凹所90は、例えば、3つのV字溝94を有する。より詳しくは、V字溝94は、スタンド84の作動位置をそれぞれ規定するV字溝94a,94b,94cを含む。なお、端壁100は、斜面95を含んでいる。
スタンド84は、図23に示すように、その一対の主脚102の先端部に係合爪108をそれぞれ有し、これら係合爪108は、前述したV字溝94の1つに噛み合うことができる。
【0043】
前述した回動軸88と協働する主脚102のガイド溝110は、図25から明らかなように、T字形状をなしている。より詳しくは、ガイド溝110は、主脚102の長手方向に延びるメイン溝部114と、このメイン溝部114の略中間部分にて略直交するサブ溝部116とを有している。サブ溝部116は実施例1のサブ溝部66と対応する。そして、メイン溝部114の一端部、即ち、係合爪108から遠い側の端部114aは、図25から明らかなように、サブ溝部116と同様にメイン溝部114の底よりも更に凹んでいる。
【0044】
前述したスタンド84は、図23中二点鎖線で示すように、そのガイド溝110内にリアケース80の回動軸88をそれぞれ受け入れることによりリアケース80の背面に回動可能に取り付けられている。なお、実施例1と同様に、一対の主脚102の先端部は、スタンド84の中心軸線に対し、図23中矢印S,R方向に向けて僅かに傾斜している。
図26は、休止位置にあるスタンド84を示している。このとき、スタンド84はリアケース80の背面に重ね合わされているが、実施例1の休止位置にあるスタンド8とはその姿勢が逆向きとなっている。即ち、スタンド84はその補助脚がリアケース80の下端部に位置付けられている。
【0045】
ここでも、ガイド溝110内における回動軸88の相対的な位置を説明するために、便宜的にガイド溝110内を4つの領域に分けて考える。すなわち、図27に示すように、メイン溝部114の端部114aを領域d、メイン溝部114の係合爪108側の端部を領域e、メイン溝部114における領域d,e間の部分を領域f、サブ溝部116を領域gとする。
【0046】
スタンド84が休止位置にあるとき、図28及び29に示すように、回動軸88(説明の都合上黒点で示している。)はガイド溝110の領域dに位置付けられ、そして、係合爪108は、端壁100の斜面95に当接している。それ故、斜面95は、回動軸88回りのスタンド84の回動を規制している。また、このとき、回動軸88の先端はガイド溝110の領域d、即ち、端部114a内に落ち込んだ状態にあるので、スタンド84の係合爪108が斜面95から離れる方向へのスタンド84の移動もまた有効に防止されている。そのため、係合爪108と斜面95との係合は確実に維持され、スタンド84が不所望に動くことはない。この結果、スタンド84は休止位置にて多重にロックされ、安定して保持される。
【0047】
次に、スタンド84を休止位置から作動位置に位置付ける場合、まず、スタンド84は、図30及び31に示すように、矢印T方向へ移動される。ここでの移動は、前述した実施例1での場合と同様に、スタンド84における一対の主脚の先端部間の間隔を増加させるように、これら主脚を弾性変形させ、これより、回動軸88の先端は、ガイド溝110の領域d、即ち、端部114aから相対的に抜け出る。
【0048】
スタンド84がT方向に更に移動されると、回動軸88は、ガイド溝110の領域dから領域eへ相対的に移動する一方、スタンド84の係合爪108が斜面95から離れる。この時点で、係合爪108がV字溝94の何れとも干渉せず、スタンド84は回動軸88を中心として回動可能となる。
この後、図32及び33に示されるように、スタンド84は回動軸88を中心に回動され(矢印W方向)、スタンド84の係合爪108の先端が、V字溝94a,94b,94c中から選択した1つのV字溝と対向される。この状態で、図34及び35に示すように、スタンド84が矢印U方向へ移動されると、回動軸88がガイド溝110内にて領域eから領域fへ相対的に移動する一方、係合爪108が例えば、選択されたV字溝94bに受け入れられ、これら係合爪108及びV字溝94bが噛み合う。
【0049】
次いで、図36及び37に示すように、係合爪108が噛み合ったV字溝94bを支点としてスタンド84が矢印V方向へ回動され、作動位置に位置付けられると、回動軸88は、ガイド溝110内にて領域fから領域gへ相対的に移動し、これにより、スタンド84は、主脚102の長手方向へのスタンド84の移動を規制する。それ故、係合爪108がV字溝94bに噛み合った状態で、スタンド84は図38に示すよう作動位置に位置付けられ、この作動位置にてロックされる。ここでのスタンド84の角度はV字溝94bにより決定される。
【0050】
更に、ガイド溝110の領域g、即ち、サブ溝部116は、前述のように凹んでいるので、サブ溝部116に回動軸88が位置付けられたとき、スタンド84における両主脚102の復元力により、回動軸88の先端はサブ溝部116内に落ち込んだ状態となる。この結果、作動位置にあっても、スタンド84は多重にロックされ、安定して保持される。
なお、スタンド84を他の作動位置又は休止位置へ位置付けする場合は、上記と逆の手順で前述のロックを解除し、他の作動位置又は休止位置にてロックさせる。
【0051】
本発明は上述した実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、実施例1及び2において、回動軸がリアケースの膨出部に配置され、回動軸と協働するガイド溝がスタンドに配置されているが、これら回動軸及びガイド溝は、スタンド及び膨出部にそれぞれ配置することも可能である。更に、スタンドの形状は、膨出部を三方から囲むようなU字形状に限られるものではない。
【0052】
更に、本発明のスタンド付き電子機器は、実施例の電話機に限定されるものではなく、薄型テレビ、薄型ディスプレイ等、スタンドにより机上で使用されたり、壁掛けでも使用されるような他の電子機器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1に係るスタンド付き電話機の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係るリアケースの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2中の円h内を拡大して示す一部切欠斜視図である。
【図4】図2中の円i内を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4中のV−V線断面図である。
【図6】図2中のVI矢視図である。
【図7】実施例1に係るリアケースのスタンドが休止位置にある状態における構成を示す斜視図である。
【図8】実施例1に係るスタンドのガイド溝の構成を示す側面図である。
【図9】図2中のIX矢視図である。
【図10】実施例1におけるスタンドが休止位置にあるときのリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図11】図10中の円j内を示す拡大図である。
【図12】実施例1におけるロックを解除する際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図13】図12中の円k内を示す拡大図である。
【図14】実施例1におけるロックを解除する際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図15】図14中の円m内を示す拡大図である。
【図16】実施例1におけるスタンドが回動する際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図17】図16中の円n内を示す拡大図である。
【図18】実施例1におけるスタンドをロックする際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図19】図18中の円p内を示す拡大図である。
【図20】実施例1におけるスタンドをロックする際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図21】図20中の円q内を示す拡大図である。
【図22】実施例1に係るスタンドが起立した状態のリアケースの構成を示す斜視図である。
【図23】実施例2に係るリアケースの構成を示す分解斜視図である。
【図24】図23中の円r内を拡大して示す一部切欠斜視図である。
【図25】図23中の円s内を拡大して示す斜視図である。
【図26】実施例2に係るリアケースのスタンドが休止位置にある状態における構成を示す斜視図である。
【図27】実施例2に係るスタンドのガイド溝の構成を示す側面図である。
【図28】実施例2におけるスタンドが休止位置にあるときのリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図29】図28中の円t内を示す拡大図である。
【図30】実施例2におけるロックを解除する際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図31】図30中の円u内を示す拡大図である。
【図32】実施例2におけるスタンドが回動する際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図33】図32中の円v内を示す拡大図である。
【図34】実施例2におけるスタンドをロックする際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図35】図34中の円w内を示す拡大図である。
【図36】実施例2におけるスタンドをロックする際のリアケースとスタンドとの位置関係の概略構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図37】図36中の円x内を示す拡大図である。
【図38】実施例2に係るリアケースのスタンドが起立した状態の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
2 電話機
4 筐体
6 送受話器
8 スタンド
10 前面パネル
12 リアケース
29 背壁
30 膨出部
32 回動軸
34 差込み孔
36 溝
38 凹所
40 掛止ブロック
46 V字溝
48 ロアフック孔
50 主脚
52 補助脚
56 係合爪
58 ガイド溝
64 メイン溝部
66 サブ溝部
76 アッパフック孔
78 ロック爪
80 リアケース
84 スタンド
86 膨出部
88 回動軸
90 凹所
94 V字溝
96 側壁
100 端壁
102 主脚
110 ガイド溝
114 メイン溝部
116 サブ溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の背面に配置され、前記筐体を傾斜状態で支持するためのスタンドと、
前記筐体の前記背面に対して前記スタンドを回動可能に接続する回動手段と、
前記筐体の背面と前記スタンドとの間に設けられ、前記筐体の背面に対する前記スタンドの角度を複数段に選択可能とし、選択段にて前記スタンドの回動をロックするロック装置とを備えたことを特徴とするスタンド付き電子機器。
【請求項2】
前記回動手段は、
前記筐体及び前記スタンドの一方に設けられた回動軸と、
前記筐体及び前記スタンドの他方に設けられ、前記回動軸を受け入れる受け部とを含み、
前記ロック装置は、
前記スタンドの上端に設けられた係合爪と、
前記筐体の背面に設けられ、前記係合爪と係合可能な複数の係合窪みと、
前記受け部を形成するガイド溝であって、前記回動軸の相対的な移動を許容し、且つ、前記係合爪が選択された係合窪みに係合されたとき、前記回動軸の移動を阻止するガイド溝と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のスタンド付き電子機器。
【請求項3】
前記ガイド溝は、
前記回動軸の軸線に直交する方向に延び、この方向への前記回動軸の移動を許容するメイン溝であって、前記方向と前記係合爪が前記係合窪みに対して係合する方向が一致する、メイン溝と、
前記メイン溝と交差して延び、前記回動軸を受け入れたとき、前記方向への前記回動軸の移動を阻止するサブ溝と
を有することを特徴とする請求項2に記載のスタンド付き電子機器。
【請求項4】
前記係合窪みは、前記回動軸の軸線を中心に放射状に配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスタンド付き電子機器。
【請求項5】
前記筐体の背面に設けられた筐体壁掛手段と、
前記スタンドに設けられたスタンド壁掛手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のスタンド付き電子機器。
【請求項6】
前記筐体壁掛手段は、前記筐体の背面において、電子機器が掛けられる壁面側に向かって開口した筐体壁掛孔であり、
前記スタンド壁掛手段は、前記スタンドが前記筐体の背面に沿う休止位置の選択段にあるとき、前記背面とは反対側に向けて開口したスタンド壁掛孔であることを特徴とする請求項5に記載のスタンド付き電子機器。
【請求項7】
前記スタンドは、前記休止位置にあるとき、前記筐体内に差し込まれるロック爪を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のスタンド付き電子機器。
【請求項8】
前記ガイド溝は、L字形状をなしている請求項2〜7の何れかに記載のスタンド付き電子機器。
【請求項9】
前記ガイド溝は、T字形状をなしている請求項2〜7の何れかに記載のスタンド付き電子機器。
【請求項10】
前記ガイド溝は、前記回動軸の移動を阻止する部位の底に他の部位よりも凹んだ凹みを有し、この凹みに前記回動軸の先端の受け入れが許容されていることを特徴とする請求項2〜9の何れかに記載のスタンド付き電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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