説明

スターリングエンジン

【課題】キネマチック型スターリングエンジンにおいて、作動部空間の圧力波形が歪なため前記作動部平均圧力がクランク室中間圧よりも低下し、差圧を生じる傾向がある。該圧力のアンバランスにより、機械損を不本意に増大せしめ、時には、ピストンの焼け付きやエンジン振動による騒音の原因をもたらすことが判明した。また、フリーピストン型スターリングエンジンでは、該圧力アンバランスにより、パワーピストン14の往復動の中心位置が移動し、可動部材がシリンダー壁と不本意に衝突する。このため、パワーピストンの両側にかかる平均圧を略一致させることが重要となる。
【解決手段】パワーピストンをはさむ作動空間12とバッファー空間30とを結ぶ気体流路24の途中にオリフィス27と一方向弁25を直列に配置した圧力バランス制御弁40を設けることにより、バッファー空間中間圧と作動空間平均圧を略一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリングエンジンに関し、特に、500℃程度の中温熱源、或いは、液化LNG(ー162℃)でも動作するスターリングエンジン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2削減が産業界および一般家庭に課せられてきている。その解決策の一つとして、自動車の排気ガス、セラミックなどの窯業炉、熱処理炉、および、ごみ処理炉等で500℃前後の中温排熱の電気への変換利用が急務となっている。また、液化天然ガスは海水でガス化して都市ガスとして利用しているがその低温(ー162℃)を利用しての発電転換の要求も高い。

これらの中温排熱および低温排熱の利用を可能にできるエンジンとして注目をされているのがスターリングエンジン発電機である。
【0003】
スターリングエンジンは一種の外燃機関であり、どのような熱源にも対応できるのが特徴である。そして、シリンダー内の高圧の作動ガスを低温空間から高温空間へ、また、高温空間から低温空間へ移動せしめるためのディスプレーサピストンと該ディスプレーサピストンの往復動に伴って発生する圧力変動を受けて外部に仕事として取り出すためのパワーピストンの2個のピストンが相対位相を保ちながら発電機に連結されている。
ディスプレーサピストンとパワーピストンがクランク機構を介して発電機と連結され、一定の位相差を維持しながら同軸上を往復動するように構成されたキネマチック型では、前記パワーピストンを境界としてディスプレーサピストンが動作する空間を作動部と称し、該ディスプレーサの軸方向の往復動に伴い、変動圧力が発生する。該作動部側変動圧とパワーピストンのクランク室側またはバッファー空間の中間圧力との繰り返しの差圧を受けて動力を発生するのが一般的なスターリングエンジンである。
特に、500℃程度の中温熱源、或いは、液化LNG(−162℃)でも確実に動作するように機械損失を極力抑える構成となっているスターリングエンジンの場合、前記パワーピストンは、ピストンシールを有せず、また、シリンダーと直接接触往復動する。そして、前記パワーピストンとシリンダーの接触抵抗を軽減するために接触面にDLCコーティングを施したスターリングエンジンが考案されている。
【0004】
【特許文献1】特許公開2009−257250
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなキネマチック型スターリングエンジンでは、前記作動部の圧力波形はサイン波形ではなく、少し、歪な形状をしている。(図3)特に、パワーピストンとシリンダーが直接接触しながら、往復動するスターリングエンジンでは、作動空間の平均的な圧力はクランク室の平均圧力より低くなる傾向となる。つまり、作動空間の圧力が高い時に前記パワーピストンとシリンダーの隙間からクランク室に作動ガスが洩れる量が作動空間の圧力がクランク室圧より低くなった時に、前記パワーピストンとシリンダーの隙間から作動部へ作動ガスが洩れる量を上回る結果、このような圧力アンバランスを生じる。この傾向は、ピストンとシリンダーのクリアランスや精度によっても微妙に変るし、作動部の温度および環境温度によっても変化する。更に、該圧力アンバランスは、パワーピストンの往復動において、不本意な荷重変動をもたらし、エンジンの振動を増大せしめ、尚且つ、パワーピストンの摺動抵抗を増大せしめ、最悪の状態ではパワーピストンの焼き付きを起こす。
本発明は、キネマチック型スターリングエンジンにおいて、前記作動部平均圧力とクランク室または、バッファー空間の中間圧が略同じになるようにするプレッシャーバランス制御手段を設け、パワーピストンの往復動において不本意な荷重変動がかからないようにしたことを特徴とするスターリングエンジンを提供するものである。
クランク機構を有しないフリーピストン型スターリングエンジンにおいては、該圧力アンバランスにより、パワーピストンの往復動の中心位置が移動し、パワーピストン、ディスプレーサピストンおよびシリンダー壁と不本意に衝突することを回避するものである。
【0006】
図5は、一般的なキネマチック型スターリングエンジン発電機本体の基本構成を示す。スターリングエンジン発電機本体1は同軸上に配置されたパワーピストン14とディスプレーサピストン13に連結されたディスプレーサロッド15を所定の位相差で駆動するクランク機構16とフライホイール17からなる駆動部、および、始動時はモータとして作動し、エンジン自立後は発電機として作動するモータ兼発電機18、そして、前記ディスプレーサピストン13と同心軸上に配置された熱交換器類である冷却器4、再生器5および加熱器6を有する作動部で構成されている。
【0007】
ハウジング2には、スターリングエンジンのシリンダー3と、電動モータ及び発電機として機能するモータ兼発電機18が固定され、両者が後述するようにクランク機能16を介して互いに連結されている。シリンダー3内にはディスプレーサピストン13が収容され、高温空間11と低温空間である作動空間12が形成され、両空間の間を作動流体が再生器5を介して周期的に移動しつつディスプレーサピストン13をシリンダー3の軸方向に往復移動せしめるとともに、ディスプレーサピストン13と同軸上に配置されたパワーピストン14がシリンダー3の軸方向に往復移動するように構成されている。シリンダー3は加熱器6および支持筺体8と溶接接合されており、シリンダー3内でのディスプレーサピストン13の往復移動軌跡の全長に亘り、シリンダー3の内壁面とディスプレーサピストン13の外壁面との間に一定の環状間隙を維持するように、ディスプレーサピストン13がパワーピストン14に軸方向移動可能に支持されている。
【0008】
金属網等によって筒状に形成された再生器5が上記環状間隙内に配置され、シリンダー3内でのディスプレーサピストン13の往復移動中、作動流体に対し一定の間隙の環状の通路7を維持するように、再生器5がディスプレーサピストン13に支持されている。上記作動流体は気体であり、本実施例ではヘリウムガスが用いられているが、空気を用いることとしてもよい。
【0009】
シリンダー3の中間部の外壁面にはリング部材10が嵌合されるとともにシールリングを介して液密的に固定されている。シリンダー3の周囲に配置された冷却器4には冷却媒体流入部20及び冷却媒体流出部21が設けられており、冷却媒体(たとえば水)が冷却媒体流入部20から導入され、冷却媒体流出部21から排出されるように構成されており、これらにより冷却器4が構成され、シリンダー3内に低温空間である作動空間12が形成される。一方、シリンダーには複数の集熱フィンを有する加熱器が設けられており、これらの集熱フィンを介して熱源(図示せず)によって加熱器が加熱され、シリンダー3内に高温空間11が構成される。このように、高温空間11と低温空間である作動空間12の間に再生器が位置するように再生器5を装着しディスプレーサピストン13がシリンダー3内に収容されている。このようにして、高温空間11と低温空間である作動空間12の作動流体が再生器5を介して周期的に移動しつつディスプレーサピストン13がシリンダー3の軸方向に往復移動し得る構成が実現する。
【0010】
ディスプレーサピストン13にはディスプレーサロッド15が固着されており、このディスプレーサロッド15がパワーピストン14を貫通してシリンダー外に延出し、ディスプレーサピストン13はパワーピストン14に軸方向移動可能に支持されている。
パワーピストン14にはクランクアーム19の一端が揺動自在に支持されており、その他端に回転可能に支持されたリンク23が回転可能に支持されたプレート22に対し、ディスプレーサロッド15の先端部に揺動自在に支持されたリンク23が、揺動自在に連結されており、これらによってクランク機構16が構成され、フライホイール17を介してモータ兼発電機18に連結されている。クランク機構16側のパワーピストン14の空間はクランク室9であり、モータ兼発電機18およびシリンダー3を固定するハウジング2内に収容されている。クランク室9はパワーピストン14のバッファー空間30とつながっており、両空間の気体圧力は同圧力である。
モータ兼発電機18は、たとえば永久磁石同期電動機によって構成され、スターリングエンジン起動時は起動用電動モータとして機能し、起動時を過ぎた時は発電機として機能する。
【0011】
図3は、図5に示す従来のスターリングエンジンにおける作動空間12の圧力とクランク室9すなわち上記バッファー空間30の気体の圧力の関係を示すグラフである。横軸はクランク回転角を示し、1サイクル分の作動ガス圧の変化を示す。縦軸は気体の圧力値を示す。曲線36はスターリングエンジンの作動ガス圧変化を示す。31はクランク室中間圧の圧力値、32は作動空間平均圧、33は作動ガス圧最大値とクランク室中間圧の差圧、34は作動ガス圧最小値とクランク室中間圧の差圧、35は作動空間ガス圧最低値とバッファー空間中間圧の差圧である。35はクランク室中間圧と作動空間平均圧の差圧である。該差圧35は、パワーピストン14とシリンダー3内壁の隙間によっても微妙に変化するが、このようなキネマチック型のスターリングエンジンにおいては作動空間平均圧がクランク室中間圧に比べて2割〜5割低い値となり、パワーピストンを境に圧力のアンバランスを生じる。
【0012】
該圧力のアンバランスがある場合には、パワーピストン13の往運動と復運動の時のクランク機構にかかる荷重変動が増大する。そして、前記荷重変動はクランク機構によりパワーピストンに作用するサイドフォースに大きな変動をもたらし、機械損を不本意に増大せしめ、時には、ピストンの焼け付きやエンジン振動による騒音の原因をもたらすことが判明した。本発明では、パワーピストン13の往運動と復運動の時のクランク機構にかかる荷重変動のアンバランスを解消するため、作動空間の平均圧力とクランク室または、バッファー空間の中間圧を略一致させることを課題とする。
【0013】
また、フリーピストン型スターリングエンジンにおいても、パワーピストン14にかかる両端の平均圧力がアンバランスの場合には、該平均圧を等しくするように、パワーピストン14の往復動する中心位置が移動する。結果、パワーピストン14と相対的な位相差を保って往復動するディスプレーサピストン13に対し接触したり、デイスプレーサピストン13の端部が加熱器6の内部と接触することがあり、安全上にも問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する手段として、スターリングエンジンのクランク室またはバッファー空間の平均圧すなわち上記クランク室中間圧と作動空間平均圧の相対差を変えるための圧力バランス制御弁を設けることにより、作動空間平均圧とクランク室中間圧を略一致させることとする。実施例1では、パワーピストンに形成され、作動空間とクランク室またはバッファー空間を結ぶ気体流路の途中に一方向弁と該一方向弁の背面側に固定オリフィスを直列に配列したことを特徴とする圧力バランス制御弁を設ける。
実施例2では、作動空間とクランク室を結ぶ気体流路をエンジン外部に形成し、気体流路の途中に一方向弁と該一方向弁の背面側に固定オリフィス或いは可変オリフィスを直列に配列したことを特徴とする圧力バランス制御弁を設ける。可変オリフィスでは、上記クランク室中間圧と作動空間平均圧の差を任意に変えることが可能となる。つまり、オリフィスを絞ることでクランク室中間圧は作動空間平均圧を上回り、オリフィスを開放するとクランク室から作動空間に移動するガス量が増大し、結果的には、作動空間平均圧がクランク室中間圧を上回るようにする制御が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスターリングエンジンでは、作動空間平均圧とクランク室中間圧を略一致させることにより、パワーピストンの両面かかる差圧による不本意な荷重のアンバランスが解消される。荷重をバランスさせることにより、エンジンの振動および騒音が軽減される。また、クランク機構を有するキネマチック型においては、パワーピストンに作用するサイドフォースが軽減されて機械的摩擦によるエネルギーロスが少なくなり、エンジン出力がアップする。作動ガス圧力1MPa以下で500℃以下の中温排熱で動作する比出力の高いスターリングエンジンの実現に貢献する。更に、ピストンにかかる変動荷重が軽減されることでピストンの焼け付きを回避できる。
フリーピストン型スターリングエンジンにおいては、パワーピストンの往復動の中心位置が一定となり、可動部の部材の衝突など干渉の無い安全で低騒音なスターリングエンジンが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はスターリングエンジンの実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】図2はスターリングエンジンの実施方法を示した説明図である。(実施例2)
【図3】図3は従来のスターリングエンジンの作動空間圧とクランク室圧の関係の説明図である。
【図4】図4は本発明によるスターリングエンジンの作動空間圧とクランク室圧の相対差を調整する説明図である。(実施例)
【図5】図5はスターリングエンジンの従来例を示した説明図である。(従来例)
【図6】図6はスターリングエンジンの実施方法を示した説明図である。(実施例3)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、クランク機構を有し、パワーピストンとシリンダーが直接接触しながら往復動するキネマチック型のスターリングエンジンにおいて最も高い効果が期待でき、エンジン出力効率向上、エンジン騒音低減及びピストンの焼き付き防止を図ることができる。また、高速回転が要求されるフリーピストンのスターリングエンジンで可動部材の不本意な衝突防止と安全性などに優れた効果を発揮する。産業界および一般家庭に課せられてきているCO2削減策の一つとして、自動車の排気ガス、セラミックスなどの窯業炉、熱処理炉、および、ごみ処理炉等で500℃前後の中温排熱の電気への変換利用に本発明によるスターリングエンジンが適用可能である。また、液化天然ガスは海水でガス化して都市ガスとして利用しているがその低温(ー162℃)を利用しての発電転換の要求にも本発明のスターリングエンジンが活用できる。これらの中温排熱および低温排熱の利用を可能にできるエンジンとして本発明によるスターリングエンジン発電機が貢献できる。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明によるキネマチック型スターリングエンジンの全体構成を示したものである。図5の構成と異なるところのみ以下に説明する。圧力バランス制御弁40は作動空間12とクランク室9またはバッファー空間30とを結ぶ気体流路24の途中に直列に設けた一方向弁25と可変オリフィス27から成る。一方向弁25は、気体流路24を塞ぐ弁となるボール29とボール29に適切な押圧を印加するスプリング28から成る。通常はバッファー空間30のほうが作動空間平均圧よりも2割〜5割だけ高圧であるため、一方向弁25は作動空間の圧力低下とならないようにバッファー空間30から作動空間13側にのみ気体流入する向きに設置する。
【0019】
図1では圧力バランス制御弁40はシリンダー5またはハウジング2の外部に設けられている。可変オリフィス27は一方向弁25と直列に配置され、作動空間12とバッファー空間30の間の相対的圧力差に応じてバッファー空間のクランク室中間圧が作動空間側に流入し、作動空間12とバッファー空間30の相対圧力を小さくする方向に調整される。クランク室中間圧と作動空間平均圧の差が小さくなるにつれて、パワーピストンにかかる圧力のアンバランスが解消される。可変オリフィス27のオリフィス径調整方法としては、径の異なるオリフィスを交換する方法、オリフィス径を絞る方法などが可能である。
【0020】
図4は、作動空間平均圧32とクランク室中間圧31の相対的圧力差の調整方法を説明するための図である。固定オリフィスを交換するなどしてオリフィス径を調整することによりクランク室中間圧31と作動空間平均圧32の相対差を調整することができる。オリフィス径を大きくするに従って、クランク室中間圧は37の方向に低下し、作動空間平均圧32はクランク室圧より高くなる方向にシフトする。逆にオリフィス径を絞って小さくするに従ってクランク室中間圧は38の方向に上昇し、クランク室中間圧31と作動空間平均圧の差は縮小する。
【0021】
次に、圧力バランス制御弁40をシリンダー3の外部に設けることのメリットについて述べる。エンジン外部の熱環境変化が大きい場合には、スターリングエンジンのクランク室平均圧と作動空間平均圧は、シリンダーとパワーピストン14のクリアランスによる影響、そして、エンジン外部の温度環境や高温部の熱源の温度変動の影響を受ける場合がある。そのような環境変化に応じてバッファー空間平均圧と作動空間平均圧の相対差を簡易に加減するためには、図1の実施例に示すように該圧力バランス制御弁40をシリンダーの外部に配置し、オリフィス径を調整することにより、容易に調整できる効果がある。
【実施例2】
【0022】
図2の実施例は、固定オリフィス26を有する圧力バランス制御弁40をパワーピストン14に設けた実施例である。スターリングエンジンの外部環境が比較的安定している使用環境では、上記圧力バランス制御弁をパワーピストン14の内部に配置することにより、機械摩耗損の少ない高エネルギー効率のスターリングエンジンを、少ない部品点数で小型のスターリングエンジンとして実現できる。
【実施例3】
【0023】
図6は、本発明をフリーピストン型スターリングエンジンに適用し他の実施例である。本実施例におけるシリンダー3内の構成は図1の実施例と実質的に同じであり、実質的に同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。本実施例ではケースa47とケースb48が接合されてハウジングが形成されおり、両ケースの接合部に支持板49が固定されている。ケースb48には支持部材43が固着されており、支持部材43は、シリンダー3の内壁面に連続してシリンダー内壁面を形成するシリンダーを形成する。このシリンダー3にはパワーピストン14が摺動自在に収容される。支持部材49のシリンダー周りには、コイル46及びヨーク44が固着されており、これらと対向するように、ケースb48の内壁面にヨークが固着されている。これらのヨークの間に環状の磁石45が介装されてリニアモータ発電機が構成されて、パワーピストン14の往復動に追従した磁石45の軸方向移動に応じて発電し、コイル46から電力が出力される。
【0024】
パワーピストン14の先端には先端プレート50が固着され、この先端プレート50の外周部に上記磁石45が装着されているので、パワーピストン14の軸方向往復動に応じてリニアモータ発電機が発電することになる。一方、ディスプレーサピストン13に固着されているディスプレーサーロッド15は、パワーピストン14を貫通し、先端プレート50に固着されており、先端プレート50とプレート42が支持板49を介して並行に配置されている。プレート42と先端プレート50の両側にはコイルスプリング51が配設され、それぞれ上記ハウジングに対してフローティング状態で支持されている。而して、本実施例ではコイル46、上記ヨークおよび磁石45によってリニアモータ発電機が構成され、スターリングエンジンの始動時は電動モータのスタータとして作動するとともに、自立運転時には発電機及び負荷調整機として機能する。
【0025】
図6において、作動空間12の作動空間平均圧とバッファー空間30のバッファー空間中間圧を比較した場合、バッファー空間中間圧のほうが約3割ほど高くなる傾向はキネマチック型スターリングエンジンと同じである。パワーピストン14にかかる両端の平均圧力がアンバランスの場合には、上記実施例1で述べたように、パワーピストン14の往復動の中心位置が移動する。このため、デイスプレーサピストン13の端部が加熱器6の内部と接触することがある。図6に示すように、バッファー空間30のバッファー空間中間圧と作動空間平均圧を略同一にする手段として、本発明による圧力バランス制御弁40をシリンダー3の外部に設けている。気体流路24はバッファー空間30内の可動物と干渉しないように設けられており、バッファー空間30の圧力を作動空間12側へ一方向に流す機能を有する。可変オリフィス27を加減することにより、パワーピストン14の往復動の不本意な中心位置の移動を調整し、デイスプレーサピストン13の端部と加熱器6の内部との衝突を防止し、より低騒音で安全なフリーピストン型のスターリングエンジンを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、スターリングエンジンに関し、中温排熱および低温排熱の利用を目的にしたスターリングエンジン発電機に有効に利用でき、500℃以下の熱源、或いは、液化LNG(ー196℃)で動作し、排熱回収発電するスターリングエンジン発電機に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 スターリングエンジン発電機本体
2 ハウジング
3 シリンダー
4 冷却器
5 再生器
6 加熱器
7 通路
8 支持筺体
9 クランク室
10 リング部材
11 高温空間
12 作動空間
13 ディスプレーサピストン
14 パワーピストン
15 ディスプレーサーロッド
16 クランク機構
17 フライホイール
18 モータ兼発電機
19 クランクアーム
20 冷却媒体流入部
21 冷却媒体流出部
22 プレート
23 リンク
24 気体流路
25 一方向弁
26 固定オリフィス
27 可変オリフィス
28 スプリング
29 ボール
30 バッファー空間
31 プレッシャーバランス制御をしていない場合のクランク室圧中間圧
32 作動空間平均圧とクランク室中間圧の差圧
33 作動ガス圧最大値とクランク室中間圧の差圧
34 作動ガス圧最小値とクランク室中間圧の差圧
35 クランク室中間圧と作動空間平均圧の差圧
36 差動ガス圧の変化
37 オリフィス径を大きくした場合のクランク室中間圧の変化の方向
38 オリフィス径を小さくした場合のクランク室中間圧の変化の方向
39 作動ガス圧最小値
40 圧力バランス制御弁
42 プレート
43 支持部材
44 ヨーク
45 磁石
46 コイル
47 ケースa
48 ケースb
49 支持板
50 先端プレート
51 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器を備えるシリンダー、シリンダー内の作動空間を介して配置されシリンダーの軸方向に往復動するディスプレーサピストンとパワーピストン、ディスプレーサピストンに設けられた再生器、ディスプレーサピストンに固定されシリンダーの軸方向に可動なロッドを有するスターリングエンジンにおいて、パワーピストンをはさむ作動空間とバッファー空間とを結ぶ気体流路の途中にオリフィスと一方向弁を直列に配置した圧力制御弁を有することを特徴とするスターリングエンジン。
【請求項2】
圧力バランス制御弁をシリンダーの外部に配置したことを特徴とする請求項1のスターリングエンジン。
【請求項3】
圧力バランス制御弁をパワーピストンに配置したことを特徴とする請求項1のスターリングエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163688(P2011−163688A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28328(P2010−28328)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(301010892)百瀬機械設計株式会社 (16)