説明

スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法及びスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体

【課題】 スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を除圧発泡法にて製造するに際し、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率変動が少ない製造方法を提供すること
【解決手段】 耐圧容器中に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散剤と共に分散させ、撹拌下、前記耐圧容器内に発泡剤を入れて、昇温する工程(a)、
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程(b)、
耐圧容器の一端を開放してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒を含んでなる混合物を耐圧容器内よりも低圧域に放出する工程(c)、
を含んでなる、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、
工程(c)にて、工程(a)で使用した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入することを特徴とするスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂の発泡成形体は、一般に弾性が高く、繰り返しの応力に対しても歪みの回復力が大きいという特徴のほかに、耐油性、耐割性に優れることから、包装資材として広く利用されている。しかし、剛性が低く、型内発泡成形後の発泡成形体の収縮が起こりやすく、圧縮強度が低いという短所を有している。
【0003】
このような欠点を改良する方法として、ポリエチレン系樹脂にスチレン系単量体を含浸させて重合を行って得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂からなる発泡成形体が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリエチレン系樹脂にスチレン系単量体を含浸させて重合を行うことで得られる改質熱可塑性樹脂粒子において、耐候性を向上させる目的で、ポリエチレン粒子にスチレン単量体を添加、重合及び架橋させる際に重合触媒としてベンゼン環を有しない有機過酸化物の10時間半減期温度が60℃〜105℃の開始剤を使用し、かつポリエチレン架橋剤としてベンゼン環を有しない有機化酸化物の10時間半減期温度が100℃〜125℃の開始剤を使用し、重合・架橋反応を行っている。更に、重合・架橋反応終了後に上記で得られた樹脂粒子に発泡剤を含浸させて予備発泡粒子を得る手法を開示している。
【0005】
他方で、除圧発泡法によりスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法として、例えば特許文献2が開示されている。
【0006】
しかし、除圧発泡法において工業的にスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を大量生産する場合、発泡倍率変動が大きな問題となる。除圧発泡法により工業的にスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を大量生産する場合、用いる耐圧容器容量、耐圧容器への充填率、オリフィス開口面積等にもよるが、予備発泡粒子の放出時間は概ね10分から300分程度となる。そのために、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率が時間経過と共に変化してしまうという、発泡倍率変動が起こる場合がある。
【0007】
スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率変動が大きいと、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を発泡成形体としたときに、外観が悪化するばかりか、密度分布が不均一になるために、優れた特徴の一つである耐割れ性が低下する傾向があることから、出来る限り発泡倍率変動が少ない予備発泡粒子が求められている。
【0008】
ところで、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の除圧発泡法においては、発泡倍率変動の抑制について、除圧発泡法の放出工程時における容器内の圧力保持について、外部より加圧窒素ガスを導入して容器内圧を一定に保つことが記載されている(特許文献3)。
【0009】
また、特許文献4には、除圧発泡法で得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率変動を抑制する方法として、放出工程時に、容器内温度、圧力及び容器内空間の発泡剤分圧を一定に保持しながら、ポリオレフィン系樹脂粒子と水の混合物を低圧域に放出する手法が開示されている。
【0010】
しかし、実際にはポリオレフィン系樹脂粒子の放出時工程時に容器内温度、圧力、及び容器内空間の発泡剤分圧を一定に保持した場合、粒子間の結晶状態のバラツキとそれに伴う発泡倍率変動が生じる。それを解決するために、特許文献5では、放出工程の経過時間に伴い、温度または圧力を一定に保持せず段階的あるいは連続的に昇温、昇圧させる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−126726号公報
【特許文献2】特開2006−298956号公報
【特許文献3】特公昭56−1344号公報
【特許文献4】特開昭59−30836号公報
【特許文献5】特開2002−226621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような状況に鑑み、本発明は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を除圧発泡法にて製造するに際し、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率変動が少ない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特許文献4、5に開示されている技術は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造時の発泡倍率変動抑制にかかる技術であるが、これをスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の除圧発泡時に適用しても、同じような効果は得られないことを見出した。
【0014】
上記問題を解決すべく鋭意検討したところ、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を耐圧容器中に分散剤とともに水系分散媒に分散させ、前記耐圧容器内に発泡剤を入れて加熱して、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、該耐圧容器の一端を開放してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒の混合物を耐圧容器内よりも低圧域に放出する、いわゆる除圧発泡において、該混合物を低圧域に放出している間、最初に導入した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入することで、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率変動を抑制しうることを見出し本発明の完成に至った。
【0015】
即ち本発明は以下の構成よりなる。
〔1〕 耐圧容器中に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散剤と共に分散させ、撹拌下、前記耐圧容器内に発泡剤を導入して、昇温する工程(a)、
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程(b)、
耐圧容器の一端を開放してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒を含んでなる混合物を耐圧容器内よりも低圧域に放出する工程(c)、
を含んでなる、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、
工程(c)にて、工程(a)で使用した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入することを特徴とするスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔2〕 工程(c)において、耐圧容器内の圧力を放出開始時圧力−0.08MPa以上放出開始時圧力+0.08MPa以下に保持することを特徴とする〔1〕記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔3〕 工程(c)において、耐圧容器内の温度を放出開始時温度−1.0℃以上放出開始時温度+1.0℃以下に保持することを特徴とする〔1〕または〔2〕記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔4〕 工程(a)において、水系分散媒の電気伝導率が0.00mS/m以上20.00mS/m以下であることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔5〕 工程(a)において、分散剤が難水溶性無機塩であり、該難水溶性無機塩を水系分散媒100重量部に対して0.05重量部以上3重量部以下使用することを特徴とする〔1〕〜〔4〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔6〕 工程(a)において、分散助剤として界面活性剤を水系分散媒100重量部に対して0.0001重量部以上0.2重量部以下を用いることを特徴とする〔1〕〜〔5〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔7〕 工程(a)において、発泡剤が、ブタンであり、ブタンをスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上60重量部以下使用することを特量とする〔1〕〜〔6〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔8〕 工程(a)において、昇温する速度が5℃/10分以上20℃/10分以下であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
〔9〕 工程(a)において、昇温後の耐圧容器内温度が120℃以上170℃以下であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔10〕 工程(a)において、昇温後の耐圧容器内圧力が1.5MPa(ゲージ圧)以上3.0MPa(ゲージ圧)であることを特徴とする〔1〕〜〔9〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔11〕 工程(b)において、耐圧容器内圧力が、工程(a)終了時よりも0.1MPa以上0.5MPa以下上昇するように発泡剤の追加供給を行うことを特徴とする〔1〕〜〔10〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔12〕 工程(c)において、耐圧容器の一端に備えた、開口径1mmφ〜20mmφのオリフィスを通してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を放出することを特徴とする〔1〕〜〔11〕何れかに記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
〔13〕 〔1〕〜〔12〕何れかに記載の製造方法によって得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子。
〔14〕 〔13〕記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなるスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、発泡倍率変動が少ないスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得ることが出来る。したがって、本発明のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形して得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体は、密度のムラが少なくなり、耐割れ性がより良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、
耐圧容器中に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散剤とともに分散させ、攪拌下、前記耐圧容器内に発泡剤を導入して、昇温する工程(a)、
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程(b)、
耐圧容器の一端を開放してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒を含んでなる混合物を耐圧容器内よりも低圧域に放出する工程(c)、を含んでなる。
【0018】
耐圧容器の形状及び構造としては、例えば、従来からポリオレフィン系樹脂の除圧発泡に用いられているものを使用することができ、予備発泡粒子製造時における容器圧力、容器内温度に耐えられるものであれば、特に限定されないが、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0019】
本発明における水系分散媒としては、樹脂粒子を溶解させないものであれば特に限定はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、グリセリン、エチレングリコール等が挙げられ、これらを併用しても良い。とりわけ水を使用することが好ましい。水系分散媒の使用量は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して、50重量部以上1000重量部以下であることが好ましい。
【0020】
本発明において使用する水系分散媒の電気伝導率は、0.00mS/m以上20.00mS/m以下であることが好ましい。更に好ましくは、0.02mS/m以上13.00mS/m以下である。なお、電気伝導率は、JIS K 0101(1979)の電気伝導率の項目に準拠して測定されて得られた値を採用する。
【0021】
水系分散媒の電気伝導率が20.00mS/mを超えるものを使用した場合、樹脂同士の融着を防止するために使用する分散剤を多量に添加しなければならない傾向があり、その結果、得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形したスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体は、予備発泡粒子相互間の融着が悪く、機械的強度等に劣るものとなる傾向がある。
【0022】
また、予備発泡粒子を型内発泡成形する際の予備発泡粒子相互の融着性の観点からは、電気伝導率が0.00mS/mに近いほど好ましく、0.00mS/mであると特に好ましいが、電気伝導率が0.01mS/m未満とするには著しくコストが高くなる傾向がある。従って、コストを考慮し、なおかつ予備発泡粒子を用いた型内発泡成形時の予備発泡粒子相互の融着性に優れたものとするためには、電気伝導率は0.01mS/m以上が好ましく、特に0.02mS/m以上が好ましい。一方、上限値は17.00mS/m以下が好ましく、特に13.00mS/m以下が好ましい。
【0023】
本発明において使用しうる分散剤としては、公知のものが使用しえ、例えば、第3リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、カオリン等の難水溶性無機塩が挙げられ、これらを好適に使用することができる。
【0024】
分散剤として、難水溶性無機塩を使用する場合、使用量としては、それらの種類や、スチレン改質ポリエチレン系樹脂の種類、量、発泡剤の種類などによって異なるが、通常、水系分散媒100重量部に対して、0.05重量部以上3重量部以下であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、少ない分散剤の使用量でスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を効率よく分散させるために、分散助剤を使用することが好ましい。
【0026】
分散助剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられ、これを好適に使用することが出来る。界面活性剤として具体的には、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ、高級アルコール硫酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、アルキルナフタレンスルフォン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、等が挙げられる。中でも、特に、アニオン系界面活性剤が好適である。
【0027】
分散助剤として界面活性剤を用いる場合には、それらの種類や、スチレン改質ポリエチレン系樹脂の種類、量、発泡剤の種類などによって異なるが、水系分散媒100重量部に対して、0.0001重量部以上0.2重量部以下を用いることが好ましい。
【0028】
本発明において、予備発泡粒子の発泡倍率向上と成形性向上のために、可塑剤を添加してもよい。本発明に用いる可塑剤は、特に限定されず、例えば、トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジブチル(DBA)、セバシン酸ジブチル(DBS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、リシノール酸、グリセリン等のアセチル化合物、エポキシ化大豆油、やし油等が挙げられる。
【0029】
時間が経過してもスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子中に残り、良好な成形性を得られることから、特に不揮発性の可塑剤が好ましい。不揮発性の可塑剤としては、長期保存下で殆ど揮発しないものであれば特に制限はなく、具体的には、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジブチル(DBA)、セバシン酸ジブチル(DBS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、リシノール酸、グリセリン等のアセチル化合物、エポキシ化大豆油、やし油等が挙げられる。これらの中で、特にセバシン酸ジブチルが好ましい。
【0030】
可塑剤の使用量は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3重量部以上1重量部以下である。0.1重量部より少ないと有意な発泡倍率、成形性の改善効果が得られない場合がある。また、5重量部より多いと、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の耐熱性が低下し、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体が大きく収縮する傾向がある。
【0031】
本発明において使用することが出来る発泡剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の脂肪族炭化水素類、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類等の揮発性発泡剤、窒素、炭酸ガス等の無機ガス等があげられる。また、水系分散媒に含まれている水を発泡剤として利用する方法を用いる場合もある。これらの発泡剤は併用しても何ら差し支えない。この中で、ノルマルブタン、イソブタン、及びそれらの混合ブタン等のブタンを使用することが、圧力、コストを考慮したうえで良好な発泡倍率のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得られることから好ましい。
【0032】
また、前記発泡剤の使用量は、使用するスチレン改質ポリエチレン系樹脂の種類、基材樹脂の組成、発泡剤の種類、目的とする発泡倍率等により異なり、一概には規定できないが、発泡剤として、ブタンを使用する場合、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上60重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは10重量部以上30重量部以下である。2重量部未満では十分な発泡倍率を得ることができない上に、成形性の良好なスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得ることが難しい場合がある。60重量部を超えると発泡剤含浸時の樹脂粒子の分散状態が不安定となり、樹脂同士が凝集を起こしやすい傾向がある。
【0033】
工程(a)においては、耐圧容器内に発泡剤を導入した後、耐圧容器内を昇温する。昇温する速度は、昇温する速度が5℃/10分以上25℃/10分以下であることが好ましく、より好ましくは、8℃/10分以上20℃/10分以下である。当該範囲内の速度で昇温することが昇温直後の温度の安定性と生産性の観点から好ましい。
【0034】
以上のように耐圧容器内を昇温し、昇温後の耐圧容器内温度が120℃以上170℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、130℃以上150℃以下である。120℃より低いと十分な発泡倍率を得ることができない場合があり、170℃を超えては発泡剤含浸時の樹脂粒子の分散状態が不安定となり、樹脂同士が凝集を起こしやすい傾向がある。
【0035】
また、昇温後の耐圧容器内圧力は、1.5MPa(ゲージ圧)以上3.0MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、2.0MPa(ゲージ圧)以上2.8MPa(ゲージ圧)以下であることがより好ましい。
【0036】
工程(a)の後、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程(b)に移行する。
【0037】
工程(b)においては、必要に応じて、所定の発泡圧力になるまで発泡剤が追加供給され、一定時間、通常5分以上180分以下、好ましくは10分以上60分以下、保持され、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。
【0038】
本発明において、発泡剤の追加供給は、耐圧容器内圧力が、工程(a)終了時よりも0.01MPa以上0.5MPa以下上昇するように行うことが好ましく、より好ましくは0.01MPa以上0.1MPa以下である。0.5MPaを越えて圧力が上昇する量の発泡剤を追加供給すると、スチレン改質ポリエチレン樹脂粒子へ含浸が安定するまでの時間が掛かるために、保持時間が長くなる傾向がある。また、耐圧容器内の圧力が安定し難くなる傾向がある。
【0039】
工程(b)において発泡剤が含浸されたスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒を含んでなる混合物は、耐圧容器の一端、一般的には耐圧容器の下部に設けられたバルブを開放して低圧域(通常は大気圧下)に放出され、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子となる。
【0040】
前記混合物を低圧域に放出する際、流量調整、倍率バラつき低減などの目的で、耐圧容器の一端に備えた、1〜20mmφの開口オリフィスを通して放出することが好ましい。また、発泡倍率を高くする目的で、上記低圧域を飽和水蒸気で満たす場合もある。
【0041】
本発明において、スチレン改質ポリエチレン系樹脂を低圧域に放出する間、耐圧容器内温度(発泡温度と称す場合がある)を放出開始時温度−1.0℃以上放出開始時温度+1.0℃に保持することが、発泡倍率バラツキを抑制することが出来る傾向があるため、好ましい。 本発明において、スチレン改質ポリエチレン系樹脂を低圧域に放出する間、工程(a)で使用した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入する。工程(a)で使用した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入することで発泡倍率のバラツキが低減できる。工程(c)において使用する発泡剤と工程(a)において使用した発泡剤の種類が異なると、スチレン改質ポリエチレン系樹脂を低圧域に放出する間、耐圧容器内温度、耐圧容器内圧力を一定に保持した場合でも、スチレン改質ポリエチレン系樹脂を低圧雰囲気に放出する時間に応じて、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率が変動する。
【0042】
その理由については以下のように推測している。即ち、工程(c)のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の放出途中においても、耐圧容器内に残存するスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、引き続き発泡剤の含浸/溶出を繰り返しており、このため、放出している間に耐圧容器内の圧力調整のために追加導入する発泡剤が、工程(a)で用いる発泡剤と同じものである場合、スチレン改質ポリエチレン系樹脂中の発泡剤の含浸量を一定に保ちやすく、その結果、得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率のバラツキが低減できるのではないかと推測している。好ましくは、耐圧容器内圧力(発泡圧力と称す場合がある)放出開始時圧力−0.08MPa以上放出開始時圧力+0.08MPa以下に保持することが、発泡倍率バラツキを抑制することが出来る傾向があるため、好ましい。
【0043】
本発明において使用するスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、一般的に知られている方法で製造することが出来る。
【0044】
本発明のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂粒子に対して、スチレン系単量体を好ましくは150重量部以上400重量部以下、更に好ましくは180重量部以上300重量部を含浸、重合させて得られたものである。当該範囲内であれば成形性が良好であり、得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体の耐割れ性が良好であるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子となる傾向がある。
【0045】
本発明で使用するポリエチレン系樹脂粒子を構成するポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレンの単独重合体、ポリエチレンと、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンや酢酸ビニル、アクリル酸エステル、塩化ビニル等との共重合体があげられる。これらの中でもエチレンと酢酸ビニルの共重合体が好ましい。更には、メルトフローレート(以下、MFRと表記する場合がある)が1.5g/10分以下で酢酸ビニル含有量が10重量%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。MFRが1.5g/10分を超えては耐割れ性の発現が難しくなる傾向がある。酢酸ビニルが10重量%を超えては、融点が低いため、重合時に樹脂変形を起こしやすい傾向がある。なお、MFRはJIS K 6924に準拠して測定した値である。
【0046】
前記ポリエチレン系樹脂は、あらかじめ、例えば押出し機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融することによりポリエチレン系樹脂粒子となす。形状はパウダー、ペレット状等の粒子状態であることが好ましい。これら粒子の平均粒重量は0.1mg/粒以上3mg/粒以下が好適な範囲である。0.1mg/粒より小さい場合は発泡剤の逸散が激しく高倍率化させにくくなる場合があり、3mg/粒より大きい場合は型内発泡成形時の金型への充填性が悪くなる恐れがある。この際、必要に応じて、気泡調整剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0047】
本発明に使用するスチレン系単量体としては、スチレン、およびα−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体を主成分として使用することができる。また、スチレン系誘導体と共重合が可能な成分、例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート等が挙げられ、これら各種単量体を1種または2種以上併用してもよい。更に、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体を使用することもできる。
【0048】
ポリエチレン系樹脂粒子に、スチレン系単量体を重合させるに際し、重合開始剤を使用することが好ましい。使用しうる重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができ、代表的なものとしては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。重量平均分子量は重合開始剤の量と反応温度により調整できる。
【0049】
これら重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100重量部に対して0.05重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、さらには0.1重量部以上0.5重量部以下であることが好ましい。
【0050】
本発明においてスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を重合させる方法としては、攪拌機を具備した容器内に仕込んだポリエチレン系樹脂粒子を含む水性懸濁液に、スチレン系単量体を連続的にまたは断続的に添加することにより、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸させ、重合させる方法が挙げられる。重合において、添加するスチレン系単量体の添加速度を任意に選択することで、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の重量平均分子量に調整することが可能である。重合温度は70℃以上90℃以下であると、所望の重量平均分子量であるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子が得られるため、好ましい。
【0051】
本発明においては、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子がキシレンに不溶なゲルを含んでなることが好ましい。キシレンに不溶なゲル量は、好ましく、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子中、10重量%以上50重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは15重量%以上40重量%以下である。当該範囲内であると、型内発泡成形を行う場合、高圧あるいは長時間の蒸気加熱を必要とせず、高倍率化しやすく、耐割れ性が良好なスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体が得られる傾向にある。
【0052】
なお、キシレンに不溶なゲル量は以下のようにして測定する。200メッシュの金網袋中に0.4gの予備発泡樹脂粒子を入れ、大気圧下で沸騰させたキシレン450ml中に2時間浸漬して冷却後に一旦、取り出し、更に新たな沸騰させたキシレン中に樹脂を1時間浸漬して冷却後にキシレンから取り出す。その後、同様に2時間、1時間の浸漬、溶出を繰り返し、その後、常温下で1晩液切りした後に150℃のオーブン中で1時間乾燥させ、常温まで自然冷却させ、冷却後の残留分をゲル成分とし、初期の予備発泡粒子量に対するゲル成分の量の重量比率をゲル量としている。
【0053】
キシレンに不溶なゲルを生成させるためには、架橋剤を使用することが好ましい。具体的には、10時間半減期温度が100℃以上125℃以下のラジカル種発生型架橋剤を用いることが好ましい。このようなラジカル種発生型架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド(10時間半減期温度:123℃)、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度:116℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(10時間半減期温度:102℃)、2,2−ビスーt−ブチルパーオキシブタン(10時間半減期温度:103℃)等が挙げられる。これら架橋剤は、スチレン系単量体の添加前あるいはスチレン系単量体と共に重合系に添加することが出来る。架橋反応は、重合時に行っても、除圧発泡時に行ってもよい。
【0054】
本発明においては、除圧発泡時に、キシレンに不要なゲルの50重量%以上を生成させることが好ましい。このようにゲル生成のタイミングの調整は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂の重合温度、予備発泡時の耐圧容器内の温度、架橋剤の10時間半減期温度、架橋剤の添加方法等を調整することにより、行うことが出来る。
【0055】
また、本発明の製造方法によって得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、テトラヒドロフランに可溶な成分の重量平均分子量が15万以上35万以下であることが好ましい。当該範囲内であると、型内発泡成形を行う場合、高圧あるいは長時間の蒸気加熱を必要とせず、高倍率化しやすく、耐割れ性が良好なスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体が得られる傾向にある。
【0056】
ここでテトラヒドロフランに可溶分の重量平均分子量とは、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子0.02gを常温のテトラヒドロフラン20mlに24時間浸漬させることで抽出される成分を0.2μmのフィルターでろ過したものをゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーGPC(東ソーHLC−8220GPC、検出器:RI8020、カラム:TSKgel−GMHHR×2本)により標準ポリスチレン試料を基準に求めた値である。
【0057】
このようにして得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、一般的な型内発泡成形方法によって成形され、スチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体とすることが出来る。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填し、加熱融着せしめてスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体とされる。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体は、優れた耐割れ性を示す。
【0058】
また、本発明のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、製造後、日を経て、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子中の発泡剤が1重量%以下となる、発泡剤逸散時であっても、良好な成形性を示し、得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体は良好な表面性を示す。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例をあげて説明を行うが、これによって本発明は制限されるものではない。尚、測定評価については以下の通り実施した。
【0060】
<発泡倍率>
得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を容積3000mLの容器に採取して、その樹脂重量を測定し、下式に基づいて体積が何倍になったかを算出して発泡倍率とした。
発泡倍率(倍)=3000(mL)÷樹脂重量(g)/基材樹脂密度(g/mL)
【0061】
<発泡倍率バラツキ>
放出開始から所定時間経過後にサンプリングしたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率より、以下のように判断した。
○:放出末期の発泡倍率/放出開始1分の発泡倍率=±15%以内
×:放出末期の発泡倍率/放出開始1分の初期の発泡倍率=±15%より大きい
【0062】
(スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造)
ポリエチレン系樹脂として住友化学株式会社製「エバテートF1103−1」を使用し、ポリエチレン系樹脂100重量部に対してタルク0.2重量部を混合し押出機内で溶融混合して造粒し、水中に押出した直後にカッティングすることで粒重量約1mg/粒の球状としたポリエチレン系樹脂粒子を作製した。
【0063】
続いて6Lオートクレーブに水150重量部、第3リン酸カルシウム1重量部、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ0.024重量部、ポリエチレン系樹脂粒子30重量部を懸濁させ、スチレン15重量部に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.26重量部(10時間半減期温度:74℃)、ラジカル種発生型架橋剤として、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)0.60重量部を溶解させた溶液を添加した。その後、この水系懸濁液を70℃まで昇温し、30分間維持することでポリエチレン系樹脂粒子にスチレン単量体溶液を含浸させた。更に、85℃まで昇温し、スチレン単量体55重量部を3時間40分かけて反応系中に滴下し重合を行い、更に125℃昇温して30分保持し、冷却後、洗浄・脱水・乾燥することによりスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を得た。
【0064】
(実施例1)
内容量14mの耐圧容器に電気伝導率が15mS/mの水300重量部、セバシン酸ジブチル0.5重量部、第3リン酸カルシウム2.0重量部、n−パラフィンスルホン酸ソーダ0.02重量部、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部を仕込んだ。発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)22重量部を耐圧容器に添加した後、10℃/10分の昇温速度で140℃に昇温した。昇温後の耐圧容器内の圧力は2.20MPa(ゲージ圧)であった。次いで、50分保持すると共に、発泡剤の追加供給により耐圧容器内圧力を調製し、発泡剤の含浸を進行させた。その後、2.30MPa(ゲージ圧)の発泡圧力で、オートクレーブより開口径5mmのオリフィスを通して水系分散媒と共にスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を大気圧下に放出し(以下、発泡工程と呼ぶこともある)、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。大気圧下に放出している間、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)を追加導入することにより、耐圧容器内の圧力が放出開始時圧力±0.02MPaに保持されるように調整した。放出している間の耐圧容器内の温度は放出開始時温度±0.5℃に保持した。
【0065】
ここで得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

(実施例2)
耐圧容器を内容量0.4mに変更した以外は実施例1と同様にし、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0067】
(実施例3)
仕込みのノルマルリッチブタン量を20重量部、含浸時の圧力上昇を0.3MPaとした以外は実施例2と同様にしてスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0068】
(実施例4)
スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を大気圧下に放出している間、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)を追加導入することにより、耐圧容器内の圧力を調整する際、放出開始から10分より後に耐圧容器内圧力が放出開始圧力+0.1MPaになるようにした以外は実施例1と同様にしてスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0069】
(比較例1)
発泡工程において、大気圧下に放出している間、追加導入する発泡剤を窒素に変更した以外は実施例2と同様にしてスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子は、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0070】
(比較例2)
使用する樹脂をポリプロピレン樹脂に変更した以外は実施例2と同様にしてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、実施例1と同様に評価し、表1に示した。
【0071】
実施例1と実施例2より、初期及び追加に使用する発泡剤が同等であれば、耐圧容器のスケール(=放出時間)にかかわらず得られる予備発泡粒子の発泡倍率バラツキが抑制できることがわかる。また、放出時の圧力変動幅が±0.05MPaでも問題ないことがわかる。
【0072】
実施例2と比較例1より、初期及び追加に使用する発泡剤が異なる場合、放出時間の経過と共に発泡倍率が変動し、得られる予備発泡粒子の発泡倍率バラツキが大きくなることがわかる。
【0073】
実施例2と比較例2より、ポリオレフィン樹脂を用いた場合、初期及び追加に使用する発泡剤が同一であっても、放出時間の経過と共に、発泡倍率が低下し、得られる予備発泡粒子の発泡倍率バラツキが大きくなることがわかる。
【0074】
実施例1と比較例3より、放出開始からの圧力変動が0.1MPaだと得られる予備発泡粒子の発泡倍率バラツキが大きくなることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器中に、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散剤と共に分散させ、撹拌下、前記耐圧容器内に発泡剤を導入して、昇温する工程(a)、
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程(b)、
耐圧容器の一端を開放してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と水系分散媒を含んでなる混合物を耐圧容器内よりも低圧域に放出する工程(c)、
を含んでなる、スチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、
工程(c)にて、工程(a)で使用した発泡剤と同一の発泡剤を追加導入することを特徴とするスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
工程(c)において、耐圧容器内の圧力を放出開始時圧力−0.08MPa以上放出開始時圧力+0.08MPa以下に保持することを特徴とする請求項1記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
工程(c)において、耐圧容器内の温度を放出開始時温度−1.0℃以上放出開始時温度+1.0℃以下に保持することを特徴とする請求項1または2記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
工程(a)において、水系分散媒の電気伝導率が0.00mS/m以上20.00mS/m以下であることを特徴とする、請求項1〜3何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
工程(a)において、分散剤が難水溶性無機塩であり、該難水溶性無機塩を水系分散媒100重量部に対して0.05重量部以上3重量部以下使用することを特徴とする請求項1〜4何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
工程(a)において、分散助剤として界面活性剤を水系分散媒100重量部に対して0.0001重量部以上0.2重量部以下を用いることを特徴とする請求項1〜5何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
工程(a)において、発泡剤が、ブタンであり、ブタンをスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上60重量部以下使用することを特量とする請求項1〜6何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
工程(a)において、昇温する速度が5℃/10分以上20℃/10分以下であることを特徴とする請求項1〜7何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
工程(a)において、昇温後の耐圧容器内温度が120℃以上170℃以下であることを特徴とする請求項1〜8何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項10】
工程(a)において、昇温後の耐圧容器内圧力が1.5MPa(ゲージ圧)以上3.0MPa(ゲージ圧)であることを特徴とする請求項1〜9何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項11】
工程(b)において、耐圧容器内圧力が、工程(a)終了時よりも0.1MPa以上0.5MPa以下上昇するように発泡剤の追加供給を行うことを特徴とする請求項1〜10何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
工程(c)において、耐圧容器の一端に備えた、開口径1mmφ〜20mmφのオリフィスを通してスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を放出することを特徴とする請求項1〜11何れか一項に記載のスチレン改質ポリエチレン樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12何れか一項に記載の製造方法によって得られるスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項14】
請求項13記載のスチレン改質ポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなるスチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体。

【公開番号】特開2011−16903(P2011−16903A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161859(P2009−161859)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】