説明

ステッピングモータの制御装置

【課題】ハーフブリッジドライブ回路のPWM信号入力部に入力する信号を制御することによって、ステッピングモータを回転フリーの状態に制御できるステッピングモータの制御装置を提供する。
【解決手段】マイクロプロセッサ(CPU)10からフリー信号が信号線16を介してPWM信号生成回路11に入力されると、PWM信号生成回路11は、すべての相について、ハーフブリッジドライブ回路5のPWM信号入力部にPWM信号のONレベルに相当する制御信号を出力することにより、上段FET21をONに下段FET22をOFFにするとともに、当該制御信号の出力を維持することにより、ブートストラップコンデンサ53を放電させて上段FETをターンオフさせ、上下段FETがOFFにされてステッピングモータMが回転フリーの状態に制御する。その後回転駆動前に、PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号を所定時間出力することで充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモータは回転軸の角度を正確に位置決めできる電動機として知られており、ミシンにも多く用いられている。ステッピングモータにはその構成によって多くの種類があるが、一般的には二つのコイルが互いに異なる励磁タイミングで励磁されることで駆動する2相ステッピングモータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に従来のバイポーラ型2相ステッピングモータの制御装置が記載されている。その一例につき図5を参照して説明する。
図5に示すようにバイポーラ型2相ステッピングモータMに、2相のモータ駆動電流を出力するブリッジ回路2が駆動電流出力線1を介して接続される。ブリッジ回路2には上段FET21と下段FET22とが直列に接続されたブリッジが2相分構成される。ブリッジ回路2の上段FET21と下段FET22とに相反的なスイッチング電圧を印加するハーフブリッジドライブ回路5が接続される。3は上段FET21へのスイッチング電圧入力線、4は下段FET22へのスイッチング電圧入力線である。ハーフブリッジドライブ回路5は積算回路7から入力される信号に基づき動作する。6はハーフブリッジドライブ回路5への信号線である。積算回路7には、マイクロプロセッサ(CPU)10からの動作/停止信号が信号線8を介して、PWM信号生成回路11からのPWM信号が信号線9を介してそれぞれ入力される。また、マイクロプロセッサ(CPU)10からのアナログ量による電流値指令信号が信号線12を介してPWM信号生成回路11に入力される。
【0004】
PWM信号生成回路11からの電流値指令信号に基づきPWM信号生成回路11がデューティー比を制御してPWM信号を生成し積算回路7に出力する。マイクロプロセッサ(CPU)10からの動作信号が信号線8を介して積算回路7に入力されている期間にあっては、PWM信号はハーフブリッジドライブ回路5にそのまま入力され、ハーフブリッジドライブ回路5が入力されたPWM信号に基づき上段FET21と下段FET22とに相反的なスイッチング動作を駆動し、これによりブリッジ回路2から2相のモータ駆動電流が出力されモータMが電流値指令信号に応じた駆動電流値で動作する。このとき、ハーフブリッジドライブ回路5は、PWM信号のON時に上段FET21をONに、下段FET22をOFFにし、PWM信号のOFF時に上段FET21をOFFに、下段FET22をONにすることで、モータ駆動電源に接続されたブリッジ回路2によりモータ駆動電流を生成させる。なお、モータ駆動電流値は駆動電流出力線1に付設された電流検出部13により検出され信号線14を介してPWM信号生成回路11に入力されてフィードバック制御される。また、図5において破線15内に示されるマイクロプロセッサ(CPU)10と、PWM信号生成回路11は1つのICで実現されている場合もある。
【0005】
マイクロプロセッサ(CPU)10からの停止信号が信号線8を介して積算回路7に入力されている期間にあっては、積算回路7からハーフブリッジドライブ回路5にOFF信号が常時入力され、上段FET21がOFFに、下段FET22がONにされて、モータMは停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−095148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上説明した従来のステッピングモータの制御装置にあっては、モータMの停止時にはモータMは常にブレーキ動作となる。これは上段FET21がOFFに、下段FET22がONにされて、モータMの巻線はすべてGNDに接続された状態となり、電磁的にブレーキ力が生じるからである。
ステッピングモータがブレーキ動作であると、人の手によって動かすには、大きな力が必要であり、ステッピングモータが搭載された機械の調整時などの必要時にモータを人の手で動かすことの妨げとなるという問題がある。
ステッピングモータを回転フリーにするためには、ステッピングモータの電源をOFFにするか、出力を停止する、すなわち、上段FET及び下段FETをともにOFFにする機能が付いたドライバICが実装されたハーフブリッジドライブ回路を使用するなどの方法がある。前者にあっては、個々のステッピングを別々にフリーにするために回路が複雑化する。したがって、どちらの方法でもハードウエアの変更によりコストが余計にかかるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、ハーフブリッジドライブ回路のPWM信号入力部に入力する信号を制御することによって、ステッピングモータを回転フリーの状態に制御できるステッピングモータの制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、ステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動電流を生成する上段及び下段のスイッチング素子を有したブリッジ回路と、
前記上段のスイッチング素子のスイッチング駆動電源を充電するブートストラップ回路及びPWM信号入力部を有し、前記PWM信号入力部に入力されるPWM信号に従って、前記上下段のスイッチング素子を相反的にスイッチング駆動するハーフブリッジドライブ回路と、
を備えたステッピングモータ駆動機構に対し、前記PWM信号入力部に制御信号を出力して前記ステッピングモータを制御するステッピングモータの制御装置において、
前記PWM信号入力部にPWM信号を出力して前記ステッピングモータの回転を制御する回転駆動制御手段と、
すべての相について、前記PWM信号入力部に前記PWM信号のONレベルに相当する制御信号を出力することにより、前記上段のスイッチング素子をONに、前記下段のスイッチング素子をOFFにするとともに、当該ONレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、前記スイッチング駆動電源を放電させて前記上段のスイッチング素子をONからOFFに変化させ、前記上段及び下段のスイッチング素子がともにOFFにされて前記ステッピングモータの回転がフリーにされた状態に制御する回転フリー制御手段と、
を備えるステッピングモータの制御装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記回転フリー制御手段により前記ステッピングモータの回転がフリーにされた状態から、前記回転駆動制御手段により前記ステッピングモータの回転を制御するにあたり、前記回転駆動制御手段の発動に先だって、すべての相について、前記PWM信号入力部に前記PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号を出力することにより、前記下段のスイッチング素子をONにし、当該PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、前記スイッチング駆動電源を充電させて、前記上段のスイッチング素子のスイッチング駆動が可能な状態に制御する復帰制御手段を備える請求項1に記載のステッピングモータの制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
ステッピングモータの駆動電流を生成するブリッジ回路をNMOS出力(上下段ともNchMOSを配置したもの)で構成する場合、上段NchMOSの駆動用の昇圧回路としてブートストラップ回路が一般的に利用されている。
ブートストラップ回路は、スイッチング駆動電源(コンデンサ)の一電極をモータ出力に接続している。このため、下段のスイッチング素子のON期間(この時上段のスイッチング素子はOFF)にスイッチング駆動電源の充電を行う。また、上段のスイッチング素子のON期間(この時下段のスイッチング素子はOFF)にスイッチング駆動電源が放電し、さらに、モータ回転駆動時には充放電を繰り返す。
本発明によれば、すべての相について、ハーフブリッジドライブ回路のPWM信号入力部にPWM信号のONレベルに相当する制御信号を出力することにより、まずは上段のスイッチング素子をONに、下段のスイッチング素子をOFFにする。さらに当該ONレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、スイッチング駆動電源を放電させて上段のスイッチング素子をON駆動できないレベルまで降圧することにより上段のスイッチング素子をONからOFFに変化させる(ターンオフさせる)。その結果、上段及び下段のスイッチング素子がともにOFFにされる。上段及び下段のスイッチング素子がともにOFFにされると、ステッピングモータの巻線はモータ電源及びGNDの双方から切り離され、回転に対しての巻線による電磁的負荷がかからない回転がフリーにされた状態となる。
以上のようにして本発明によれば、ハーフブリッジドライブ回路のPWM信号入力部に入力する信号を制御することによって、ステッピングモータを回転フリーの状態に制御でき、ハーフブリッジドライブ回路以降の構成になんら変更を加えることなく、ステッピングモータを回転フリーの状態に制御する機能を獲得できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るステッピングモータ駆動機構及びその制御装置を示したブロック回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るステッピングモータ駆動機構を構成するブリッジ回路とハーフブリッジドライブ回路の内部を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るステッピングモータの制御装置による制御フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るステッピングモータの制御装置において処理される信号の時間変化の一例を示す信号波形図である。
【図5】従来の一例に係るステッピングモータ駆動機構及びその制御装置を示したブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0014】
図1に示すように本実施形態におけるステッピングモータ駆動機構は、図5に示して上述した従来例と同様に、バイポーラ型2相ステッピングモータMと、2相のモータ駆動電流を出力するブリッジ回路2と、ブリッジ回路2の上段FET21と下段FET22とに相反的なスイッチング電圧を印加するハーフブリッジドライブ回路5とを備える。対応する要素に同じ符号を付して説明を省略する。1は駆動電流出力線、3は上段FET21へのスイッチング電圧入力線、4は下段FET22へのスイッチング電圧入力線である。6はハーフブリッジドライブ回路5への信号線であり、ハーフブリッジドライブ回路5のPWM信号入力部に接続されている。
【0015】
ブリッジ回路2は、ステッピングモータMの駆動電流を生成する上段及び下段のスイッチング素子として、上段FET21及び下段FET22を有する。図2においては1相分のみを図示して簡略化している。上段FET21及び下段FET22はそれぞれ図示の通りNチャネルMOSFETで、並列ダイオードが付属する。
図2に示すように、ハーフブリッジドライブ回路5は、ハーフブリッジドライバIC51と、ブートストラップ充電回路52と、ブートストラップコンデンサ53とを有する。ブートストラップ充電回路52とブートストラップコンデンサ53とによりブートストラップ回路が構成される。
上段FET21をターンオンするためのスイッチング電圧を得るためのスイッチング駆動電源となるブートストラップコンデンサ53が駆動電流出力線1とハーフブリッジドライバIC51とに接続されている。
ハーフブリッジドライブ回路5は、PWM信号入力部に入力されるPWM信号に従って、上段FET21と下段FET22とを相反的にスイッチング駆動する。
【0016】
また、本実施形態におけるステッピングモータの制御装置は、図5に示して上述した従来例と同様に、マイクロプロセッサ(CPU)10と、PWM信号生成回路11と、電流検出部13とを備える。対応する要素に同じ符号を付して説明を省略する。8はマイクロプロセッサ(CPU)10から出力される動作/停止信号の信号線であり、この動作/停止信号はPWM信号生成回路11に入力される。マイクロプロセッサ(CPU)10からのアナログ量による電流値指令信号が信号線12を介してPWM信号生成回路11に入力される。
図1において破線15内に示されるマイクロプロセッサ(CPU)10及びPWM信号生成回路11よりなる構成は、1つのICで実現可能である。
【0017】
以上の点従来技術と同様である。しかし、本実施形態においては上述の従来例と異なり、マイクロプロセッサ(CPU)10からの出力される動作/フリー信号が信号線16を介してPWM信号生成回路11に入力され、以下に説明するようにモータMを回転フリーの状態に制御できる点で異なっている。
図1において破線15内に示されるマイクロプロセッサ(CPU)10及びPWM信号生成回路11よりなる構成は、従来技術と同様にPWM信号入力部にPWM信号を出力してステッピングモータMの回転を制御する回転駆動制御手段と、ステッピングモータMの回転にブレーキが作用した状態に制御するブレーキ停止制御手段とを構成し、従来技術と異なりステッピングモータMの回転がフリーにされた状態に制御する回転フリー制御手段と、上段のスイッチング素子のスイッチング駆動が可能な状態に制御する復帰制御手段とを構成する本制御装置の中枢部分である。
【0018】
図3のフローチャートに示すように、PWM信号生成回路11は、入力されるモータ制御信号である動作/停止信号(信号線8)、動作/フリー信号(信号線16)及び電流値指令信号(信号線12)に従って処理する。
PWM信号生成回路11は、モータ制御信号が入力されると(ステップS1)、停止信号があるか否か判断する(ステップS2)。
停止信号がある場合(ステップS2でYes)、PWM信号生成回路11は停止制御(ブレーキ停止制御手段としての制御)S3を実行する。停止制御S3においてPWM信号生成回路11は、信号線6にOFF信号を出力する(すべての相について)。これは全期間OFFのPWM信号を出力することに相当する。したがって、ハーフブリッジドライブ回路5にOFF信号が常時入力され、上段FET21がOFFに、下段FET22がONにされて、モータMは停止し、上述した従来例と同様にこのモータMの停止時にはモータMは常にブレーキ動作となる。
【0019】
ステップS2でNoの場合、PWM信号生成回路11はフリー信号があるか否か判断する(ステップS4)。
フリー信号がある場合(ステップS4でYes)、PWM信号生成回路11はフリー制御(回転フリー制御手段としての制御)S5を実行する。フリー制御S5においてPWM信号生成回路11は、信号線6にON信号を出力する。これは全期間ONのPWM信号を出力することに相当する。これは、すべての相について行い、このON信号がハーフブリッジドライブ回路5に入力された直後、上段FET21はONに、下段FET22はOFFになる(このとき、モータMはモータ電源側に接続されてモータMはブレーキ動作となる)。それと同時にブートストラップコンデンサ53の放電が開始される。このON信号の出力を数十ミリ秒程度以上維持すると、ブートストラップコンデンサ53の放電が進行して上段FET21をON駆動できないレベルまで降圧する。すると、上段FET21にターンオン電圧が印加できないので、上段FET21はONからOFFに変化する。その結果、上段FET21及び下段FET22がともにOFFになる。上段FET21及び下段FET22がともにOFFにされると、ステッピングモータMはモータ電源及びGNDの双方から切り離され、回転に対して電磁的負荷がかからない回転がフリーにされた状態となる。
【0020】
ステップS4でNoの場合、PWM信号生成回路11は、電流値指令信号に従ったPWM信号をPWM信号入力部に出力してモータMの回転を制御するが、これに先立ち、直前に入力されたモータ制御信号にフリー信号があったか否か判断する(ステップS6)。
ステップS6でYesの場合、フリー制御S5の実行によりブートストラップコンデンサ53が放電されていて上段FET21をスイッチング駆動できないおそれがあるため、PWM信号生成回路11は、上段FET21を良好にスイッチング駆動するために十分な電圧までブートストラップコンデンサ53を充電するためのブートストラップ充電制御(復帰制御手段としての制御)S7を実行する。ブートストラップ充電制御S7においてPWM信号生成回路11は、信号線6にOFF信号を出力する。これは全期間OFFのPWM信号を出力することに相当する。これは、すべての相について行い、このOFF信号がハーフブリッジドライブ回路5に入力されると、下段FET22はONになる(このとき、上段FET21はOFF、モータMはGND側に接続されてモータMはブレーキ動作となる)。それと同時にブートストラップコンデンサ53の充電が開始される。このOFF信号の出力を十マイクロ秒程度以上維持すると、ブートストラップコンデンサ53の充電が進行して上段FET21を十分にON駆動できるレベルまで昇圧する。これにより、ハーフブリッジドライブ回路5を、上段FET21のスイッチング駆動が可能な状態に復帰させる。
【0021】
ステップS6でNoの場合は直ちに、ステップS6でYesの場合はブートストラップ充電制御S7により上段FET21のスイッチング駆動が可能な状態に復帰させた後、PWM信号生成回路11は、電流値指令信号に従ったPWM信号をPWM信号入力部に出力してモータMの回転を制御するモータ通常制御(回転駆動制御手段としての制御)S8を実行する。これにより、ステッピングモータは、電流値指令信号に従った電流値で回転、停止(停止は電流値指令信号に係る電流値が0の場合)が制御される。
【0022】
本実施形態のステッピングモータの制御装置による制御方法は以上のとおりである。本制御方法に従った種々の制御動作につき、図4を参照しながら確認する。
図4(a)は、信号線16に通電する動作/フリー信号の信号波形の一例である。図4(b)は、信号線12に通電する電流値指令信号の信号波形の一例である。図4(c)は、信号線8に通電する動作/停止信号の信号波形の一例である。図4(d)は、図4(a)(b)(c)に示されたモータ制御信号に従ったPWM信号の波形である。動作/フリー信号と、動作/停止信号は2値信号である。ここでは、HIGH信号を動作信号に、LOW信号をそれぞれフリー信号と停止信号に割り当てている。
【0023】
期間T1〜T3においては、図4(a)(c)の信号が双方とも動作信号であるため、図3のフローチャートに従って確認してもわかるように、PWM信号によるモータ通常制御S8が実行される。電流値指令信号に係る電流値が期間T1では大である場合を、期間T3では0である場合を、期間T2ではその間の電流値である場合を示した。
期間T1では電流値を大とするため、PWM信号のデューティー比が大きくなっている。すなわち、ON期間が長くなっている。これに対し期間T2では期間T1より低い電流値とするため、期間T1よりデューティー比が小さくなっている。
期間T3では電流値を0とするため、全期間OFF信号(デューティー比が0)となっている。その結果、上段FET21がすべてOFF、下段FET22がすべてONとなってモータMはGNDに接続されてブレーキ動作となる。
【0024】
期間T4においては、図4(a)がフリー信号、図4(c)が動作信号、図4(b)にあっては前半が電流値0、後半が電流値大の指令信号である。図3のフローチャートに従って確認してもわかるように、フリー制御S5が実行される。そのため、期間T4では図4(d)のPWM信号が全期間ON信号となっている。これによりモータMが回転フリーの状態に変遷することは上述したとおりである。
【0025】
期間T4から期間T5に移行する時点において、図4(a)のフリー信号が動作信号に変わる。この期間T5では、直前のモータ制御信号にフリー信号があったので、図3のフローチャートに従って確認してもわかるように、ブートストラップ充電制御S7が実行される。そのため、期間T5では図4(d)のPWM信号が全期間OFF信号となっている。
【0026】
期間T5は予め設定された一定期間で終了する。その期間はブートストラップコンデンサ53を十分に充電できる期間として設定されるものである。
期間T5が終了して次の期間T6になると、電流値大の指令信号が依然として出力されているので、期間T1と同じくPWM信号によるモータ通常制御S8が実行される。
【0027】
期間T7においては、図4(c)に示すように停止信号が出力されている。停止信号が出力されると、他のモータ制御信号(図4(a)及び(b))が如何なる信号であろうと、強制的にブレーキ状態での停止制御(図3のフローチャートのS3)が実行される。したがって、フリー信号と停止信号が同時に出力されても、停止制御が実行される。これは図3のフローチャートにおいて判断分岐ステップS2でYesとなって必ず停止制御S3に移行することに対応する。
【0028】
上記実施形態によれば、
ステッピングモータMと、
ステッピングモータMの駆動電流を生成する上段及び下段のスイッチング素子21、22を有したブリッジ回路2と、
上段のスイッチング素子21のスイッチング駆動電源(コンデンサ53)を充電するブートストラップ回路(52,53)及びPWM信号入力部6を有し、PWM信号入力部6に入力されるPWM信号に従って、上下段のスイッチング素子21、22を相反的にスイッチング駆動するハーフブリッジドライブ回路5と、
を備えたステッピングモータ駆動機構に対し、PWM信号入力部6に制御信号を出力してステッピングモータMを制御するステッピングモータの制御装置において、
PWM信号入力部6にPWM信号を出力してステッピングモータMの回転を制御する回転駆動制御手段(CPU10、PWM信号生成回路11)と、
すべての相について、PWM信号入力部6にPWM信号のONレベルに相当する制御信号を出力することにより、上段のスイッチング素子21をONに、下段のスイッチング素子22をOFFにするとともに、当該ONレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、スイッチング駆動電源を放電させて上段のスイッチング素子21をONからOFFに変化させ、上段及び下段のスイッチング素子21、22がともにOFFにされてステッピングモータMの回転がフリーにされた状態に制御する回転フリー制御手段(10、11)と、を備えているので、ハーフブリッジドライブ回路のPWM信号入力部に入力する信号を制御することによって、ステッピングモータMを回転フリーの状態に制御できる。
【0029】
また、回転フリー制御手段(10、11)によりステッピングモータの回転がフリーにされた状態から、回転駆動制御手段(10、11)によりステッピングモータの回転を制御するにあたり、回転駆動制御手段の発動に先だって、すべての相について、PWM信号入力部6にPWM信号のOFFレベルに相当する制御信号を出力することにより、下段のスイッチング素子22をONにし、当該PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、スイッチング駆動電源53を充電させて、上段のスイッチング素子21のスイッチング駆動が可能な状態に制御する復帰制御手段(10、11)を備えているので、ステッピングモータMの回転がフリーにされた状態から、ステッピングモータMの回転を制御する状態に容易に変更できる。
【0030】
以上説明した本発明の一実施形態の構成及び制御内容は具体例に過ぎず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上記実施形態においては、制御装置の中枢部分を、マイクロプロセッサ(CPU)10とPWM信号生成回路11の2つのブロックに分けて説明したが、ブロック分けやブロック名に拘泥することなく、上述した回転駆動制御手段と、回転フリー制御手段と、復帰制御手段とを制御装置に構成すれば足りる。必要により従来と同じくブレーキ停止制御手段を構成する。
【符号の説明】
【0031】
1 駆動電流出力線
2 ブリッジ回路
21 上段FET
22 下段FET
5 ハーフブリッジドライブ回路
51 ハーフブリッジドライバIC
52 ブートストラップ充電回路
53 ブートストラップコンデンサ
11 PWM信号生成回路
M 2相ステッピングモータ
S3 停止制御(ブレーキ動作状態で停止)
S5 フリー制御(回転フリー状態で停止)
S7 ブートストラップ充電制御(復帰制御)
S8 モータ通常制御(PWM信号による回転駆動制御)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動電流を生成する上段及び下段のスイッチング素子を有したブリッジ回路と、
前記上段のスイッチング素子のスイッチング駆動電源を充電するブートストラップ回路及びPWM信号入力部を有し、前記PWM信号入力部に入力されるPWM信号に従って、前記上下段のスイッチング素子を相反的にスイッチング駆動するハーフブリッジドライブ回路と、
を備えたステッピングモータ駆動機構に対し、前記PWM信号入力部に制御信号を出力して前記ステッピングモータを制御するステッピングモータの制御装置において、
前記PWM信号入力部にPWM信号を出力して前記ステッピングモータの回転を制御する回転駆動制御手段と、
すべての相について、前記PWM信号入力部に前記PWM信号のONレベルに相当する制御信号を出力することにより、前記上段のスイッチング素子をONに、前記下段のスイッチング素子をOFFにするとともに、当該ONレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、前記スイッチング駆動電源を放電させて前記上段のスイッチング素子をONからOFFに変化させ、前記上段及び下段のスイッチング素子がともにOFFにされて前記ステッピングモータの回転がフリーにされた状態に制御する回転フリー制御手段と、
を備えるステッピングモータの制御装置。
【請求項2】
前記回転フリー制御手段により前記ステッピングモータの回転がフリーにされた状態から、前記回転駆動制御手段により前記ステッピングモータの回転を制御するにあたり、前記回転駆動制御手段の発動に先だって、すべての相について、前記PWM信号入力部に前記PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号を出力することにより、前記下段のスイッチング素子をONにし、当該PWM信号のOFFレベルに相当する制御信号の出力を維持することにより、前記スイッチング駆動電源を充電させて、前記上段のスイッチング素子のスイッチング駆動が可能な状態に制御する復帰制御手段を備える請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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