説明

ストッキング

【課題】全方位から見て脚が細く見えるようにしたストッキングを提供すること。
【解決手段】濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされるストッキングであって、タック編又はミス編部分Mとプレーン編部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、前記タック編又はミス部分Mとプレーン編部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成される態様が、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用した際、脚を細く見せるようにしたストッキングの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着用した際、脚を細く見せるようにしたストッキングは既に公知であり、このような効果を出すために次のような方法があった。
(1)編目の大小、密度による方法(特許文献1〜3参照)。
(2)着色による方法(特許文献4,5参照)。
(3)特定の素材による方法(特許文献6参照)。
【特許文献1】特許第2928762号公報
【特許文献2】特許第3749655号公報
【特許文献3】特開平2−26901号公報
【特許文献4】実公昭42−2651号公報
【特許文献5】特開2007−146309号公報
【特許文献6】特開平10−212601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の3つの方法は、正面(前)及び背面(後)から見たときには、脚が細く見える効果を奏するものの、それ以外の方向、例えば、左右側面(横)から見たときには、そのような効果が得られないという共通の欠点があった。
本発明は、全方位から見て脚が細く見えるようにしたストッキングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために本発明は、濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされるストッキングであって、タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、前記タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成される態様が、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されていることを特徴としている。
【0005】
この構成によれば、濃淡差のあるA糸とB糸との2種類の糸の1:1の交編と、タック編又はミス編部分(粗)とプレーン編部分(密)との周方向交互配置との組み合わせによって、ストッキングの周方向の全方位で濃度の粗密を同一条件で分布形成することができ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。
また、本発明は、濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされるストッキングであって、タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、しかも、前記タック編又はミス編部分が、前記A糸のタック編又はミス編部分とB糸のタック編又はミス編部分とが前記プレーン編部分を間に挟んでストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、さらに、これら各部分の編成態様が、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されていることを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、濃淡差のあるA糸とB糸との2種類の糸の1:1の交編と、タック編又はミス編部分(密)とプレーン編部分(粗)との周方向交互配置との組み合わせによって、ストッキングの周方向の全方位で濃度の粗密を同一条件で分布形成することができ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。
前記タック編又はミス編部分は、正面(前)及び背面(後)の中央部にA糸のタック編又はミス編部分が形成され、左右両側面(横)の中央部にB糸のタック編又はミス編部分が形成されるように編成されていることを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、見た目の濃度差が、A糸タック編又はミス編部分<プレーン編部分<B糸タック編又はミス編部分の3段階の分布となり、これをストッキングの周方向の全方位で同一条件で分布形成することができ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。即ち、正面(前)及び背面(後)においては、濃染素材から成るA糸がタック編又はミス編される為、淡染素材であるB糸が表目として表れ、その結果、見た目に淡く、又、逆に左右側面(横)においては、B糸がタック編又はミス編される結果、A糸の影響を強く受けて濃く見えることになる。
【0008】
前記タック編又はミス編部分は、1コース〜数コースおきで編成されていることを特徴としている。
この構成によれば、タック編又はミス編部分が1コースおきで編成された場合と、複数コースおきで編成された場合とでプレーン編部分に対する濃淡差を変化させることができ、これによっても前記と同様に、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。
前記周方向の等分割数は、8分割又は16分割とされていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、8分割よりも16分割の方が濃淡差の周方向分布を細かくすることができ、より自然な濃淡差分布が得られ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。なお、16分割以上は、分割数が過多となり、また、8分割以下では、分割数が過少となる。
また、前記周方向の等分割数が16分割の場合においては、正面(前)及び背面(後)の中央部の両側に隣接する分割面位置にはA糸のタック編又はミス編部分が形成され、左右両側面(横)の中央部の両側に隣接する分割面位置にはB糸のタック編又はミス編部分が形成されるように編成されていることが好ましい。この構成によれば、自然な濃淡差分布が得られ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全方位から見て脚が細く見えるようにしたストッキングを提供することがでる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施形態は、図1及び図2に示すように、濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされ、かつ、1×1のタック編又はミス編部分Mとプレーン編(平編)部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成される。図2において、○印はプレーン編、×印はタック編又はミス編を示している。
上記1:1の交編とは、A糸とB糸とを1コースごとに交互に丸編機に供給して編成させることである。また、タック編とは、連続する編成運動の中で、編み針のべらを開いたままで糸掛けするので、旧編目を編み針に掛けたままで編目を作らず、次の編成運動で新しく供給した糸とともに編目を形成する編み方であって、編目の1つを次のコースの編目とともにとばしてその次のコースの編目にからませて編む組織である。また、ミス編とは、浮き編(フロート編)のことであり、この浮き編とする部分では、編針に糸掛けできないように、編針を低い位置に保持し、編地の裏に糸を浮かせて編む組織である。
【0012】
この場合、前記タック編又はミス編部分Mとプレーン編部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成される態様が、図1に示すように、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されている。上記条件を満たす周方向分割数は、4、8、16、32・・・等の2の倍数があるが、図1は8等分に分割した場合を例示している。周方向分割数は、8以下では過少であり、本発明の目的を達成できず、16以上では過多であって、目視で識別し難くなり、やはり本発明の目的を達成できなくなる。
【0013】
図1は、ストッキングを長手方向に直交する平面で切断した場合の概略横断平面図を示しており、全体が前後方向に長く、横方向に短い楕円として示している。この場合、楕円の回りの数字1〜8はストッキングの周方向の分割面の位置を表示する符号であって、各数字の位置における編組織は図2に示すような態様とされる。
即ち、数字1、3、5、7の位置では、タック編又はミス編部分Mとされ、数字2、4、6、8の位置では、プレーン編Pとされている。これは、タック編又はミス編部分Mとプレーン編部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成されることを表している。
【0014】
しかも、図2は、数字1、3、5、7の位置のタック編又はミス編部分Mにおいて、タック編又はミス編される糸は、A糸かB糸の何れか一方の糸とされるもので、その際、数字1、5の位置では、A糸がタック編又はミス編され、数字3、7の位置では、B糸がタック編又はミス編されることを表している。これは、タック編又はミス編部分Mとプレーン編部分Pとがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、しかも、前記タック編又はミス編部分Mが、前記A糸のタック編又はミス編部分MaとB糸のタック編又はミス編部分Mbとが前記プレーン編部分Pを間に挟んで周方向に交互に形成されることを表している。
【0015】
図3は、図1及び図2の数字1の位置における編組織の具体的な構成例図を示しており、A糸とB糸とが1:1で交編され、その際、A糸が1×1でタック編又はミス編されていることを表している。但し、タック編又はミス編は×印で表し、プレーン編は○印で表しており(以下、同様)、図3は、4コース分だけを例示しているが、具体的には、ストッキングの周方向の分割位置1において、この4コース分を繰り返しの1単位として複数単位がストッキングの長手方向に繰り返されるものである。
図4は、図1及び図2の数字2の位置における編組織の具体的な構成例図を示しており、この場合もA糸とB糸とが1:1で交編され、その際、A糸とB糸とは両方ともプレーン編されていることを表している。この場合も、4コース分だけを例示しているが、具体的には、ストッキングの周方向の分割位置2において、この4コース分を繰り返しの1単位として複数単位がストッキングの長手方向に繰り返されるものである。
【0016】
図5は、図1及び図2の数字3の位置における編組織の具体的な構成例図を示しており、この場合もA糸とB糸とが1:1で交編され、その際、B糸が1×1でタック編又はミス編されていることを表している。但し、図5は、4コース分だけを例示しているが、具体的には、ストッキングの周方向の分割位置3において、この4コース分を繰り返しの1単位として複数単位がストッキングの長手方向に繰り返されるものである。
図1及び図2の数字4、6、8の位置における編組織は、図4と同一である。また、図1及び図2の数字5の位置における編組織は、図3と同一とされ、数字7の位置における編組織は、図5と同一とされる。
【0017】
図6は、本発明の第2の実施形態を示しており、この場合、周方向分割数を16とした場合のストッキングの長手方向に直交する平面で切断した概略横断平面図であって、数字1〜16は、周方向の各分割位置を示している。
図7は、図6の各分割位置の編組織の概略構成例図を示すもので、タック編又はミス編は×印で表し、プレーン編は○印で表しており、A糸のタック編又はミス編はMa1、Ma2、Ma3の3種類とし、B糸のタック編又はミス編はMb1、Mb2、Mb3の3種類とし、これらは、プレーン編部分Pの両側で交互に配置している。なお、図7は、4コース分だけを例示しているが、具体的には、ストッキングの周方向の各分割位置において、この4コース分を繰り返しの1単位として複数単位がストッキングの長手方向に繰り返されるものである。また、各区分(分割位置)における編組織及びピッチの具体例は、図3〜図5を例示できる。
【0018】
前記周方向の等分割数が16分割とされた場合においては、前述のように、正面(前)及び背面(後)の中央部(分割面位置1と9)の両側に隣接する分割面位置(16と2、8と10)にはA糸のタック編又はミス編部分Ma1、Ma3が形成され、左右両側面(横)の中央部(分割面位置5と13)の両側に隣接する分割面位置(4と6、12と14)にはB糸のタック編又はミス編部分Mb1、Mb3が形成されるように編成されている。
上記各実施形態の編組織は、編機をコンピュータ制御することによって編成されるのが好ましい。
【0019】
本発明において、濃染素材からなるA糸及び淡染素材からなるB糸とは、通常の条件で染色されたとき、A糸の方がB糸よりも相対的に濃く染まる素材で構成されているという意味で使用している。具体的な素材例としては、次のものがある。
濃染素材からなるA糸
例:ポリウレタン糸(22デシテックス)を芯糸とし、吸放湿性ポリアミド糸(商品名 =キュープ 13デシテックス)をカバー糸としたシングルカバリング糸。
淡染素材からなるB糸
例:ポリウレタン糸(33デシテックス)を芯糸とし、ブライトポリアミド糸(異形断 面光沢糸 13デシテックス/5フィラメント)をカバー糸としたシングルカバリ ング糸。
【0020】
本発明の実施形態では、前記条件で編成後に染色(ブラウン系統)したが、編成前に染色した糸を使用して編成してもよい。この実施形態の糸では、カバー糸の性質の相違によって、A糸は濃く染まり、B糸は淡く染まることとなり、光沢もB糸の方がA糸よりも強いため、光の当たり具合によって濃淡の影響を受け易い。
上記第1の実施形態の構成によれば、濃淡差のあるA糸とB糸との2種類の糸の1:1の交編と、1×1のタック編又はミス編部分(粗)とプレーン編部分(密)との周方向交互配置との組み合わせによって、ストッキングの周方向の全方位で濃度の粗密(陰影のでき方)を同一条件で分布形成することができ、これによって、全方位でどこから見ても脚が細く見えるストッキングを提供することができる。
【0021】
その際、図2に示すように、正面(前)及び背面(後)の中央部にA糸のタック編又はミス編部分Maが形成され、左右両側面(横)の中央部にB糸のタック編又はミス編部分Mbが形成されるような編組織とした場合では、見た目の濃度差が、A糸タック編部分TA<プレーン編部分P<B糸タック編部分TBの3段階の分布となる。
前記タック編又はミス編部分Ma、Mbは、1×1の場合を例示しているが、3×1としてもよく、或いは、1コース〜数コースおきで編成してもよい。タック編又はミス編部分Ma、Mbが1コースおきで編成された場合と、複数コースおきで編成された場合とでプレーン編部分Pに対する濃淡差を変化させることができる。
【0022】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明は、これらの実施形態にのみ制約されるものではなく、種々変更して実施することができる。例えば、使用する糸は、例示したもの以外のものを使用してもよい。そして、対象商品としては、通常丈のストッキング(大腿部上部までのストッキング)、ショートストッキング(膝上までのストッキングや膝下までのストッキング)、パンティストッキング等を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるストッキングの概略横断平面図である。
【図2】図1における各分割位置の編組織の概略構成図である。
【図3】図1、図2の分割位置1における編組織の具体的な構成例図である。
【図4】図1、図2の分割位置2における編組織の具体的な構成例図である。
【図5】図1、図2の分割位置3における編組織の具体的な構成例図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるストッキングの概略横断平面図である。
【図7】図6における各分割位置の編組織の概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
M タック編又はミス編部分
P プレーン編部分
Ma A糸のタック編部分
Mb B糸のタック編部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされるストッキングであって、タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、前記タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成される態様が、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されていることを特徴とするストッキング。
【請求項2】
濃染素材からなるA糸と、淡染素材からなるB糸とを用いて1:1の交編とされるストッキングであって、タック編又はミス編部分とプレーン編部分とがストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、しかも、前記タック編又はミス編部分が、前記A糸のタック編又はミス編部分とB糸のタック編又はミス編部分とが前記プレーン編部分を間に挟んでストッキングの周方向に交互に形成されるように編成され、さらに、これら各部分の編成態様が、正面(前)と背面(後)の周方向分割面数と、右側面(横)と左側面(横)の周方向分割面数とが同じとなるようにストッキングの周方向を複数に等分割して編成されていることを特徴とするストッキング。
【請求項3】
前記タック編又はミス編部分は、正面(前)及び背面(後)の中央部にA糸のタック編又はミス編部分が形成され、左右両側面(横)の中央部にB糸のタック編又はミス編部分が形成されるように編成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のストッキング。
【請求項4】
前記タック編又はミス編部分は、1コース〜数コースおきで編成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のストッキング。
【請求項5】
前記周方向の等分割数は、8分割又は16分割とされていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のストッキング。
【請求項6】
前記周方向の等分割数が16分割の場合において、正面(前)及び背面(後)の中央部の両側に隣接する分割面位置にはA糸のタック編又はミス編部分が形成され、左右両側面(横)の中央部の両側に隣接する分割面位置にはB糸のタック編又はミス編部分が形成されるように編成されていることを特徴とする請求項5に記載のストッキング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84254(P2010−84254A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252977(P2008−252977)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】