説明

ストッキング

【課題】ストッキングを脱ぐことなく必要に応じて容易に解放感を味わうことができ、足指の防護性や防寒性を確保し、ファッション性に優れ、体裁が良く、開閉調整のための紐やリボンが邪魔とならず、かつ足先の耐久性に優れたストッキングを提供する。
【解決手段】足袋1の先に開口を設けたストッキング本体と、足袋1の開口に沿って設けられた覆い布2と、覆い布2に挿設され前記開口を緊結しうる紐3を具備する。覆い布2には、足袋1の幅方向に亘って紐3を通す紐通し部23と、この紐通し部23よりも先側へ延伸して先側が開口となった延伸部21とが設けられ、この延伸部21を足袋1の上部側へ折り返すことで紐3を覆うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の下半身全体を覆うように装着するストッキング(パンティストッキング、タイツを含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の下半身全体を覆うストッキングは、足にフィットする伸縮性の素材からなるため、拘束感がある。また一対の袋状部が左右それぞれの足全体を覆うため、ストッキングをはいた状態では足指間に鼻緒を配した履物を履くことができず、足指の治療を行うことができない。これらに鑑みて、足先部を開放したストッキングが要求される。
【0003】
従来、ストッキング本体におけるストッキング部の足裏部の一部に周囲に解れ止め加工を施して伸縮自在の引き出し穴を設け、この引き出し穴から足指先部の挿通を自在としたストッキングが開示される(例えば、特許文献1参照)。これは、バレエの途中で足の怪我等に際しストッキングを脱ぐことなくすばやく手当てできるものとされる。
【0004】
また従来、爪先部から足部の着脱が可能な靴下として、ストッキングの足底部に開口部を形成し、縁には伸縮性のある素材をつなぎ合わせたものが開示される(例えば、特許文献2参照)。これはつめ先部から足部の着脱が可能なものとして、必要に応じて容易に足を露出し、不快感を解消するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−15705号公報
【特許文献2】特開2004−308029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらはストッキングを脱ぐことなく必要に応じて解放感を味わうことが可能である。しかしながら、上記従来の靴下あるいはストッキングは、開口部が足底にあると共に、開口部が切り離したままであったり、開閉部の折り返しカバーが重ねあわせられたままであったりして、足先まで閉じた状態にすることができなかった。このため開口自体が必要でない場合において、足指の防護性や防寒性に劣るものであった。
【0007】
また上記いずれも、開口時には足先が開口部から露出したままカバー部がひっくり返った状態のまま、あるいは、開口部より先の部分が余ったままである。また開口部が足裏以外の配置されたときは、開口を使用しない場合でも、開口となる切り離し部がそのまま露出した状態となる。このため、開口状態あるいは開口しない状態において、ファッション性に優れるとはいえず、また体裁の良いものとはいえなかった。
【0008】
またファッション性の観点から、足先に通した紐・リボンの緊縮や結び目の形成によって足先を開閉調整することが考えられる。しかしこのようなものは、結んだ後の紐やリボンが足先付近にあると歩行の邪魔となり、結び目が不要に引っ掛かったり解けたりしてしまう場合があった。
【0009】
さらに足先は歩行によって擦れたり引っ掛かったりしやすい箇所であり、開口部、その開閉機構あるいはその周辺布が破損してしまう場合があった。
【0010】
そこで本発明においては、ストッキングを脱ぐことなく必要に応じて容易に解放感を味わうことができ、また足指の防護性や防寒性を確保し、開口状態と閉口状態のいずれにおいてもファッション性に優れ、体裁が良いストッキングを提供することを課題とする。さらに開閉調整のための紐やリボンが邪魔とならず、かつ足先の開口部やその周囲が破損しにくく耐久性に優れたストッキングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では下記(1)ないし(5)の手段を講じている。
【0012】
(1)すなわち、本発明のストッキングは、
足袋1を有してこの足袋1の先部に足先を露出しうる開口を設けたストッキング本体10と、前記足袋の先部に設けられ、少なくとも足甲側を覆うと共に足先の先端が開口縁21Eとなった覆い布2と、足先の先端の開口縁21Eから所定距離をあけた位置へ環状に挿設された紐3とを具備し、足先位置が開口した開口状態O1/O2から紐3の紐端同士を緊結することで足先が閉口した閉口状態S1/S2としうるものであって、前記覆い布2には、足袋1の幅方向に亘って紐3を通す紐通し部23と、この紐通し部23よりも先側へ延伸して先側が開口縁21Eとなった延伸部21とが設けられ、この延伸部21を折り返して紐端を覆うことができることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、全開を除く開口状態O或いは閉口状態Sのいずれにおいても、折り返した延伸部1によって紐端を収納するように紐3を覆うことができる。このため、紐3の結び部3Kが不要に解けたり邪魔になったりするのを防ぐことができ、また延伸裏面21Rによって折り返した状態でもファッション性に優れ、体裁に優れたものとなる。さらにこの折り返した状態にすることで、ストッキングの開口部またはその周囲紐・リボンが通った部分やその周囲が二重の布構成となり、耐久性を有した構造となっている。
【0014】
紐3は、覆い布2を緊結する緊結量によって開口大及び開口位置を調節することができる。これにより、足指のうちまとまった任意本数だけを露出させ、残りの足指を伸縮性の覆い布2で覆うことができる。
【0015】
(2)前記(1)のストッキングにおいて、紐通し部23が、覆い布2の表面に周着されて足回りを囲う挿通体からなり、この紐通し部23の両端に、互いに近接して開口した一対の紐出し孔23Hが設けられ、紐通し部23内へ挿設された紐3の両紐端が、この紐出し孔23Hから紐通し部23の外に突出してなることが好ましい。
【0016】
紐通し部23が覆い布2の表側の面に周着されているため、覆い布2のうち紐通し部23の先側を折り返したときに、紐通し部23及び紐3が確実に隠されることとなる。このため折り返し状態での体裁を保ち、紐が不要に引っ掛かったり解けたりするのを防止することができる。
【0017】
(3)或いは前記(1)のストッキングにおいて、覆い布2が、足袋1の先側に設けられた筒体からなり、紐通し部23が、覆い布2の前記筒体の内面を亘る環状の袋体からなり、この紐通し部23には、覆われた足の甲部又は外側部に相当する位置に、一つ又は二つの紐出し孔23Hが形成され、紐通し部23内へ挿設された紐3の両紐端が、この紐出し孔23Hから覆い布2を貫通して覆い布2の表面側に突出してなることが好ましい。
【0018】
紐出し孔23Hから突出した紐3の紐端は,開口状態及び閉口状態のいずれにおいても足の甲側に露出する。ここで前記延伸部21を折り返すことで、開口状態及び平衡状態のいずれにおいても、露出していた紐3の紐端を覆い隠すことができる。また紐通し部23は環状の袋体であるため、紐通し部23上或いはその前後端を折り縁2FEとした場合でも、紐3が先側に露出することなく、良好な体裁を保つことができる。
【0019】
(4)また前記(1)〜(4)いずれかのストッキングにおいて、覆い布2は、足袋1の開口端と重なって固定された筒状の基端部22と、基端部22の先端縁に沿って略環状に形成された袋状の紐通し部23と、紐通し部23の先側へ延伸された筒状の延伸部21とから構成され、基端部22の筒長である基端長22Lは、延伸部21の筒長である延伸長21L以上であることが好ましい。
【0020】
このようなものであれば、紐通し部23付近を折り返した場合に、基端部22の基端縁22Eが、折り返した延伸部21の延伸縁21Eと同位置かそれよりも上部に位置することとなり、延伸部21を折り返した状態での覆い布2の体裁を良好なものとすることができる。とくに紐通し部23の先側縁を折り縁2FEとして折り返すことで、必ず基端部22の基端縁22Eが、折り返した延伸部21の延伸縁21Eよりも上部に位置して重ねられることとなる。上記ストッキングにおいて、覆い布2は、切り取られたストッキングの足先の全周を囲う筒状体からなることが好ましい。
【0021】
(5)また前記(1)〜(4)いずれかのストッキングにおいて、覆い布2が伸縮性のあるレース地であって一部分がストッキング地と重ねられて縫合されると共に、紐3が覆い布2の表裏面側を交互に挿通することが好ましい。
【0022】
なお紐3は扁平断面の平リボンからなり、紐端に抜け止め部31が形成されることが好ましい。特に、伸縮性を有する縫合糸で縫合されることで、ストッキング地及び覆い布の伸縮性に縫合糸が追従して伸縮することができる。
【0023】
なお上記いずれかのストッキングにおいて、紐3が伸縮性を有すると共に、紐3の両端付近が表面弾性を有する結束具によって結束され、この結束具によって緊結量を調節しうるものでもよい(図示せず)。
【0024】
覆い布2にはレース地などの任意のデザインが施される。先端の覆い布2によって開口を構成するため、体裁がよく、又開口部の強度を確保し、足先付近を保護することができる。レース地材で構成されるものであれば、足先付近の防寒機能と通気機能とを両備したものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、先端開口させた足先に覆い布2を配し、この覆い布2の周面(内周面または外周面)に沿って開閉機構である紐通し部及び紐3を設けているため、紐3の緊縮や結び目3Kを形成したり解いたりすることで、ストッキングを脱ぐことなく必要に応じて容易に解放感を味わうことができる。
【0026】
また開口した足先には、装飾布として少なくとも足甲を覆う覆い布2を設けており、その周囲に亘る紐の緊縮・解放によって開口を閉じたり開いたりさせる機構になっているため、ファッション性に優れ、体裁に優れたものとなる。さらに紐の緊結によって開口の大きさを調節でき、また伸縮性のある覆い布によって開口の位置を調節することで、必要な足指の位置へ開口部の位置をずらして必要な大きさだけ開口させ、足指の防護性や防寒性を確保することができる。
【0027】
さらに挿設した紐3よりも先側の延伸部21を折り返すことで、開口状態と閉口状態のいずれにおいてもファッション性に優れ、体裁が良いものとなる。また結び目3Kや飛び出した紐3の先を、邪魔にならないように折り返した裏延伸布21Rの下に隠すことができる。さらに延伸部21を折り返して覆い布2を重ねた状態とすることで、足先の開口部やその周囲が破損しにくく耐久性に優れたストッキングとなる。
【0028】
また、第一、第二開口状態O1、O2において覆い布2が開口部の少なくとも足の甲側全体を覆うため、覆い布2に任意のデザインを施すことでファッション性に優れ、体裁の良いストッキングを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1のストッキングの第一開口状態O1での使用状態を示す斜視説明図である。
【図2】実施例1のストッキングの第二開口状態O2での使用状態を示す斜視説明図である。
【図3】実施例1のストッキングの第一、第二閉口状態S1,S2での使用状態を示す斜視説明図である。
【図4】実施例1のストッキングの足先部分の正面図拡大図である。
【図5】図4に示す足先部分の一部破断断面図である。
【図6】本発明の実施例2のストッキングの第一開口状態O1での使用状態を示す斜視説明図である。
【図7】本発明の実施例2のストッキングの底面図を除く六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1ないし図5は、本発明の実施例1のストッキング、図6は本発明の実施例2のストッキング、図7は本発明の実施例3のストッキングをそれぞれ示す。
【0031】
<本発明のストッキングの全体構成(図7等)>
本発明のストッキングは、ストッキング本体10の2本の足袋1の先側を開口させる(1E)と共に、この開口させた袋端1Eの上に使用者の足先を覆う覆い布2を固定し、この覆い布2の先端に、使用者の五本すべての足指を露出しうる大きさの開口縁21Eを設けてなる。そして覆い布2の開口縁21Eから所定距離を延伸部21として残した中央寄りの位置に、開口部を緊結する紐3が挿設される。この紐3は覆い布2の表面または裏面に沿って環状に挿通されると共に両紐端が飛び出しており、紐3の緊縮量によって開口の大きさ及び開口位置を調節しうると共に、飛び出した紐端を結ぶことで開口量又は開閉の状態を固定する。
【0032】
(折り返し構造)
前記覆い布2には、足袋1の幅方向に亘って紐3を通す紐通し部23と、この紐通し部23よりも先側へ延伸して先側が開口となった延伸部21とが設けられる。この延伸部21を紐通し部23の前後端周辺の位置で足袋1の上部側へ折り返し、折り返し状態(O2,S2)とする。このような折り返し状態O2,S2とすることで裏延伸部21Rが露出するが、この裏延伸部21Rによって紐3を覆い隠すことができる。折り返し状態O2,S2では覆い布2が二重に構成され、かつ先側で紐を完全収容した状態となっている(図2、図3c)。
【0033】
(ストッキング本体10)
ストッキング本体10は、足にフィットする伸縮性の素材からなり、一対の足袋1の足先がそれぞれ切断されることで切断縁1Eが設けられる。切断された足袋1の先部が覆い布2の基端部21から紐通し部23までと重ねられ、紐通し部23を構成するステッチ23Sによって縫合されることで、この切断縁1Eが覆い布2に覆われる(図5)。
特に、切断縁1Eは切り離し状態のものではなく、先縁が紐通し部23の紐通し幅23Lより大きな幅の折り返し量で内側に折り返され、この折り返した辺を切断縁1Eとして覆い布2の延伸部21の基端側と重ねた状態で縫合することが好ましい。実施例1ではさらに、折り返し状態の足袋1の先部の切断縁1Eを、紐通し幅23Lを開けて幅方向に並走するステッチ23Sによって縫合することで、覆い布2と足袋1の縫合と同時に紐通し部23が形成される。
【0034】
開口部は、ストッキング本体10の足袋の切断縁1Eまたはこれよりも先に固定された覆い布2の先端である開口縁21Eによって構成される。
【0035】
(覆い布2)
覆い布2は、伸縮材で構成され、開口に沿って設けられる。少なくとも足の甲側の部分を覆うか、或いは足先の全周を覆う。実施例1〜3では覆い布2が、いわゆる筒状体からなり、切り取られたストッキングの足先の全周を囲う。覆い布2は具体的には、足袋1の先側へ向かって順に、基端部22と、緊結紐を通す紐通し部23と、これらよりも先側へ延伸する延伸部21とから構成され、これら3構成がすべて共通の一体布で形成される。
【0036】
覆い布2は、少なくとも一部分又は全部がストッキング地と重ねられて、伸縮性を有する縫合糸によってストッキング本体1に縫合される。実施例1〜3の覆い布2は伸縮性のあるレース地の布材で構成される。なお図6及び7ではレース地の模様を省略している。実施例3の覆い布2はレース地ではない伸縮布で構成される。実施例1、2の紐通し部23は、筒長方向中央寄りの位置に所定の紐通し幅をあけて並設したステッチ23Sによって形成される。実施例3の紐通し部23は、足袋1又は覆い布2の周方向へ離間形成された複数個の線状の切り込みからなる。各切り込みは、覆い布2の筒長方向に形成された短い線状の貫通孔からなる。
【0037】
(紐3)
紐3は、覆い布2の表裏面に交互に挿通された紐材である。紐3の緊結量によって覆い布2の開口の大きさ及び開口位置を調節し、これによって開口部付近を緊結する。実施例2の紐3は平リボンであり、実施例1,3,4の紐3は弾性を有する丸紐である。金属などの開口量調整ではないため、体裁に優れると共に、足への接触時に違和感が無く、容量が嵩張らない。
【0038】
また、実施例1ないし3では足の甲部のうち、足の親指と人差し指の間あるいはその付近にて両端が開放され、紐3の両端に抜け止め玉部31が形成される。実施例4では両端が結ばれて環状となっており、足の親指と人差し指の間あるいはその付近にて結束されている。両端開放位置或いは結束位置は、足の親指から人差し指の間である。これは、閉口状態、或いは全開ではない開口状態において、紐3には余り部分が生じるところ、この余り部分を、必要に応じて足の親指と人差し指の間に挟んで収容するためである。なお必ずしも挟む必要は無く、他の形態例として両端開放位置或いは結束位置が足裏に位置するものとしても良い。
【0039】
緊結手段について、実施例1ないし3では、紐3を結ぶことで緊結され、実施例4では、紐3の両端付近が結束具4の結束によって緊結される。この結束具4によって緊結量を調節しうる。以下、各構成につき実施例に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0040】
本発明の実施例1のストッキングについて、足先五指が突出した第一開口状態O1を図1に、図1の状態から延伸部21を折り返した第二開口状態O2を図2に、また図1の状態から第一閉口状態S1(図3b)を経て第二閉口状態S2(図3c)に至るまでの手順を図3に、それぞれ示す。そして第一開口状態O1にある覆い布2部分の平面状態を図4に、その高さ方向中央断面の構造を図5に、それぞれ示す。実施例1のストッキングは、足袋1を有してこの足袋の先部に足先を露出しうる開口を設けたストッキング本体10と、前記足袋1の開口に沿って設けられ、足先の周囲全体を覆う筒状の装飾レース地からなる覆い布2と、足袋1の袋環に沿って覆い布2の内面側に設けられた袋状の紐通し部21と、使用者の足甲位置に相当する上部中央にて覆い布2の構成材を貫通して設けられた一つの紐出し孔23Hと、足袋1の袋環に沿って紐通し部21内へ挿設され、紐出し孔23Hから両紐端が突出した紐3とを具備する。紐3の紐端は二重に折り返されることで抜け止め部31が構成され、足先が開口した開口状態O(O1,O2)から紐3を緊結することで足先が閉口した閉口状態S(S1,S2)とすることができるものとなっている。
【0041】
(使用方法例)
本発明のストッキングは、図1、図4、図5の第一開口状態O1のように、開口部を全開の状態にして開口が足指の根元付近となるようにすることで、足指全てを開放させることができる。この第一開口状態Oでは、ストッキング本体10を手繰り寄せて弛張の度合いを緩めることで、開口を任意の位置に調節することができる。例えば足の甲部分の中央付近でかかとまでをストッキング本体1で覆うようにすることもできるし、くるぶし付近までストッキング本体1を引き上げ、かかと以遠の足全体を出してスパッツのようにすることもできる。
【0042】
第一または第二開口状態とすることで、5本指の靴下を本発明のストッキングの上から重ね履きできる。先端の足先の部分に開口部を設けているため、開口部より先の折り返し布が存在しない。又、邪魔をしない紐3で開口を調整し、バンド等で巻くこともしないため、開口状態Oでも違和感が無く自然な感触で重ね履きできる。
【0043】
第一開口状態O1(図1)としたあと、紐通し部23の前端を折り辺として延伸部21を基端部22側へ裏返して折り返し、ストッキングを足の根元側へ手繰り寄せることで、足先が二重に覆われた第二開口状態O2となる(図2)。この第二開口状態O2では抜け止め部31が裏延伸部21Rによって覆われ、紐端が外側へ突出して引っ掛かったり邪魔になったりすることがない。また実施例1では、延伸部21の長さである延伸長21Lと基端部22の長さである基端長22Lとが同一であり、基端部22の先側に所定幅をもって連接された紐通し部23の前端を折り辺として折り返している。このため、第二開口状態では、基端部22の基端縁22Eが折り返す延伸部21の開口縁21Eさよりも必ず上部となり、覆い布2の両縁が紐通し部23の幅の分だけずれた状態となる(図2)。例えば実施例1のように、基端部22の基端縁22Eと、延伸部21の開口縁21Eを同一の曲線形状にて装飾的にカットしたものとすると、覆い布2の上縁に並行する2曲線形状があらわれ、折り返し状態が美麗なものとなり、体裁が良い。
【0044】
特に実施例1では同一の緩湾曲線を連続させて開口縁21E及び基端縁22Eを構成しており、そこに複数の小さい飾り環4を離間させて取り付けているが、この緩湾曲線の位置、及び飾り環4の取り付け位置が開口縁21E及び基端縁22Eで共通する位置となっている(図4,5)。
【0045】
また図3の第一閉口状態(b)、第二閉口状態(c)のように、紐3を引っ張って緊縛し、開口部を閉口状態Sとすることで、足指全てを覆うことができる。第一閉口状態O2(図3b)としたあと、紐通し部23の前端を折り辺として延伸部21を基端部22側へ裏返して折り返すことで、裏延伸布21Rが露出する。この裏延伸布21Rによって結び目3Kが隠されるため、結び目3Kが不要に解けたり引っ掛かったりすることがない。
【0046】
また必要に応じて、紐3を緊縛して開口部を親指位置の親指貫通大の開口状態Oにして、伸縮材からなる覆い布2を引っ張って開口の位置をずらすことで、足の親指だけ、或いは一部の任意本数の足指だけを露出させることができる。
【実施例2】
【0047】
図6に、本発明の実施例2のストッキングの第一開口状態O1での使用状態例を示す。実施例2において、紐3は平リボンからなるため、体裁がよく、また厚さが薄いため紐3による違和感を感じにくい。その他の特記しない構成および使用方法は、実施例1と同様である。
【0048】
実施例2のストッキングは、足袋1を有してこの足袋の先部に足先を露出しうる開口を設けたストッキング本体10と、前記足袋1の開口に沿って設けられ、足先の周囲全体を覆う筒状の装飾レース地からなる覆い布2と、足袋1の袋環に沿って覆い布2の周囲に沿って表面側に設けられ、両端が紐出し孔23Hとして2口開口した袋状の紐通し部23と、足袋1の袋環に沿って紐通し部21内へ挿設され、覆い布2の表面側を亘って紐出し孔23Hから両紐端が突出した紐3とを具備する。
【0049】
実施例2の紐通し部23は具体的には、覆い布2の周面を覆う透過性のある装飾布からなり、外側部を除いた周方向に沿って並行形成された2列のステッチ23Sによって形成される。ステッチ23Sは、所定の紐通し幅をあけて設けられ、紐通し部23の装飾布の中を紐3が通り、外側部の2か所の紐出し孔23Hから突出する。実施例2の紐出し孔23Hは使用者の足の外側部位置に相当する側部の近傍位置へ二つ設けられる。紐出し孔23Hを外側部に設けることで縫合が容易となる。また第一開口状態O1にて開口縁21Eが足首の上方へ位置するまで手繰り寄せ、外側部にて結び目を形成した場合など、結び目がデザイン上のポイントとなるためファッション性に優れたものとなる。
【0050】
延伸長21Lは基端長22Lより、紐通し部23の紐通し幅(2列のステッチの列間隔)分だけ短く、紐通し部23の前後いずれの位置で延伸部21を折り返しても、必ず基端縁22Eが上方に露出した状態となる。裏延伸布21Rの開口縁21Eが隠れることがなく、容易に裏返し状態を解除することができる。
【実施例3】
【0051】
図7に実施例3のストッキングの正面図、背面図、平面図、右側面図及び左側面図を、それぞれ示す。実施例3のストッキングは、2本の足袋1を有してこの足袋の先部に足先を露出しうる開口を設けたストッキング本体10と、前記足袋1の開口に沿って設けられ、足先の周囲全体を覆う筒状の装飾レース地からなる覆い布2と、足袋1の袋環に沿って覆い布2の周囲に沿って等間隔に設けられた、足長方向への線状の切り込みからなる紐通し部23と、紐通し部23の線状の切り込みへ連続的に貫通して、覆い布2の表面側及び裏面側を交互に構成材を貫通して設けられた、伸縮性を有する環状の紐3とを具備する。
実施例3の環状の紐3の任意の位置をつまんで引き上げることで紐3が緊縮して第一閉口状態S1となる。第一閉口状態で引き上げた紐3を結ぶことで開口量を固定することができる。金紐端は二重に折り返されることで抜け止め部31が構成され、足先が開口した開口状態O(O1,O2)から紐3を緊結することで足先が閉口した閉口状態S(S1,S2)とすることができるものとなっている。実施例3の場合、基端部22の基端縁22Eから紐通し部23の切り込みの先端側位置までの距離を基端長22Lとし、切り込みの先端位置から延伸部21の開口縁21Eまでの距離を延伸長21Lとする。実施例3では基端長22Lと延伸長21Lはほぼ同一である。覆い布2は伸縮性のある布で構成される。
【0052】
その他、本発明は、上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施例の各構成の組合せ或いは抽出、一部要素の除外や公知形態への置換が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のストッキングは、拘束感をやわらげるために開口部を開口させて使用するほか、本発明のストッキングをはいたままの状態でも足指間に鼻緒を配した履物(下駄、雪駄、サンダル等)を履くことができる。また足指の治療を行うことができる。また開放状態とすることで、5本指の靴下を本発明のストッキングの上から重ね履きできる。またストッキング地を変更してタイツにしたり、レギンスとして使用することも可能である。さらに股部を取り除いて先端開口した一本ずつの足袋1からなるレッグウォーマー、或いは靴下としても利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 ストッキング本体
11 開口縁
12 内部切断縁
2 覆い布
2FE 折り縁
21 延伸部
21R 裏延伸布
21L 延伸長
22 基端部
22E 基端縁
22L 基端長
23 紐通し部
23H 紐出し孔
23S ステッチ
3 緊結紐
31 抜け止め部
3K 結び部
O1 第一開口状態
O2 第二開口状態
S1 第一閉口状態
S2 第二閉口状態
4 飾り環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足袋の先部に足先を露出しうる開口を設けたストッキング本体と、前記足袋の先部に設けられ、少なくとも足甲側を覆うと共に足先の先端が開口縁となった覆い布と、足先の先端の開口縁から所定距離をあけた位置へ環状に挿設された紐とを具備し、足先位置が開口した開口状態から紐の紐端同士を緊結することで足先が閉口した閉口状態としうるものであって、前記覆い布には、足袋の幅方向に亘って紐を通す紐通し部と、この紐通し部よりも先側へ延伸して先側が開口縁となった延伸部とが設けられ、この延伸部を折り返して紐端を覆うことができることを特徴とするストッキング。
【請求項2】
紐通し部が、覆い布の表面に周着されて足回りを囲う挿通体からなり、この紐通し部の両端に、互いに近接して開口した一対の紐出し孔が設けられ、紐通し部内へ挿設された紐の両紐端が、各紐出し孔から紐通し部の外に突出してなる請求項1記載のストッキング。
【請求項3】
覆い布が、足袋の先側に設けられた筒状の布体からなり、紐通し部が、覆い布の筒内面を亘る環状の袋体からなり、この紐通し部には、覆われた足の甲部又は外側部に相当する位置に紐出し孔が形成され、紐通し部内へ挿設された紐の両紐端が、紐出し孔から覆い布を貫通して表面側に突出してなる請求項1記載のストッキング。
【請求項4】
覆い布は、足袋の開口端と重なって固定された筒状の基端部と、基端部の先端縁に沿って略環状に形成された袋状の紐通し部と、紐通し部の先側へ延伸された筒状の延伸部とから構成され、基端部の筒長である基端長は、延伸部の筒長である延伸長以上である請求項1、2又は3のいずれか記載のストッキング。
【請求項5】
覆い布が伸縮性のあるレース地であって一部分がストッキング地と重ねられて縫合されると共に、紐が覆い布の周方向の複数個所を貫通して表裏面側を交互に挿通する請求項1ないし4のいずれか記載のストッキング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−32601(P2011−32601A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180083(P2009−180083)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(307023801)
【Fターム(参考)】