説明

スピーカーキャビネット並びにこれらを用いたスピーカーおよびスピーカーシステム

【課題】 スピーカーキャビネットからの放射音の音圧レベルをさらに高め、楽器用木質材料の板材の特質を引き出したうえで全体としてまとまった音質を備えたスピーカーキャビネット、並びに、これらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーを提供し、さらに、複数のスピーカーから構成されるスピーカーシステムとする場合であっても、好ましい音声・音場再生が可能なスピーカーシステムを提供する。
【解決手段】 本発明のスピーカーキャビネットは、スピーカーユニット取付部を備える表板と、表板に向かって右側面方向の右側板と、表板に向かって左側面方向の左側板と、を備えるスピーカーキャビネットであって、表板が、繊維板もしくはパーティクルボードの板材から構成され、右側板および左側板が、表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーキャビネット、並びに、これらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカー、および、これらから構成されるスピーカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーは、スピーカーキャビネットに取り付けられたスピーカーユニットに音声信号を印加することにより音を再生する。スピーカーシステムは、例えば複数の音声信号チャンネルを有するステレオ音声信号再生またはマルチチャンネルサラウンド音声信号再生の場合には、これらのスピーカーを左右2本一組あるいは5本一組にして構成される。スピーカーでは、印加された音声信号によりスピーカーユニットが駆動されると、スピーカーユニットの駆動の反作用により、スピーカーキャビネットを構成する各面の板材(スピーカーキャビネットを構成するそれぞれの板)が振動し、各面の板から音が放射される。なかでも木質製のスピーカーキャビネットを構成するそれぞれの板は、板を構成する材料、板の幅・厚み等に依存して特定の固有振動数で振動するので、それぞれの板が特有の音色を有する。
【0003】
スピーカーユニットから再生される音に比べて、スピーカーキャビネットを構成するそれぞれの板から放射される音は音圧レベルが低いが、スピーカー全体の再生音質に与える影響は大きいので、従来から木質製のスピーカーキャビネットを構成する各面の板材の選定もしくは板材の形状等に工夫がなされている。すなわち、スピーカーキャビネットの板材には、多くの場合にはMDFボード(中密度繊維板)と呼ばれる繊維板、もしくはパーティクルボードが使用される一方で、一部の場合には、スプルース、マホガニー、といった楽器用木質材料の板材が用いられることがある。
【0004】
従来には、スピーカーキャビネットからの放射音がスピーカー全体の再生音質に好ましい影響を与えるようにスピーカーキャビネットを構成するものがある。例えば、スピーカーキャビネットを構成する6つの面から任意に選択した2つの面のピッチ周波数の比が、協和音とみなされる周波数比に相当するように設定するものがある(特許文献1)。また、楽器材料等からなるスピーカーキャビネットの振動を阻害しないように、線接触で保持するようにしたスピーカースタンドを備えるスピーカーがある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−299169号公報 (第1図)
【特許文献2】実開平6−23394号公報 (第1図)
【0006】
しかしながら、従来技術のスピーカーキャビネット、並びに、これらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカー、および、これらから構成されるスピーカーシステムに関しては、再生音質の改善では不十分な点がある。すなわち、スピーカー全体の再生音質に好ましい影響を与えるように、スピーカーキャビネットからの放射音の音圧レベルをさらに高めることが求められている。また、楽器用木質材料の板材を使用する場合であっても、個々の楽器用木質材料の特質を引き出し、さらに全体としてまとまった音質を備えるスピーカーキャビネットとする必要がある。加えて、複数のスピーカーから構成されるスピーカーシステムとする場合には、専ら多く用いられるステレオ音声信号再生またはマルチチャンネルサラウンド音声信号再生の場合に良好な音声・音場再生が可能なスピーカーキャビネットが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スピーカーキャビネット、並びに、これらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカー、および、これらから構成されるスピーカーシステムに関し、スピーカーキャビネットからの放射音の音圧レベルをさらに高め、楽器用木質材料の板材の特質を引き出したうえで全体としてまとまった音質を備えたスピーカーキャビネット、並びに、これらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーを提供し、さらに、複数のスピーカーから構成されるスピーカーシステムとする場合であっても、好ましい音声・音場再生が可能なスピーカーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスピーカーキャビネットは、スピーカーユニット取付部を備える表板と、表板に向かって右側面方向の右側板と、表板に向かって左側面方向の左側板と、を備えるスピーカーキャビネットであって、表板が、繊維板もしくはパーティクルボードの板材から構成され、右側板および左側板が、表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される。
【0009】
好ましくは、本発明のスピーカーキャビネットは、右側板および左側板を構成する板材が、楽器用木質材料のスプルース、シトカスプルース、イングルマンスプルース、シダー、エゾマツ、ローズウッド、インディアンローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ココボロ、ニューハカランダ、マホガニー、サペリ、ホンジュラスマホガニー、コア、メイプル、ウォルナット、バスウッド、アッシュ、エボニー、セン、アルダー、ブビンガもしくはオバンコールのいずれかから選択される。
【0010】
さらに好ましくは、本発明のスピーカーキャビネットは、左側板を構成する板材が、楽器用木質材料のいずれかから選択された右側板の板材と、異なる楽器用木質材料から選択される。
【0011】
また、本発明のスピーカーは、上記のいずれかのスピーカーキャビネットと、表板のスピーカーユニット取付部に取り付けられるスピーカーユニットと、から構成される。
【0012】
また、本発明のスピーカーシステムは、上記の第1スピーカーと、上記の第2スピーカーと、を少なくとも含む一組のスピーカーシステムであって、第1スピーカーの右側板を構成する板材が、第2スピーカーの前記左側板の板材と等しく、第1スピーカーの左側板を構成する板材が、第2スピーカーの前記右側板の板材と等しい。
【0013】
以下、本発明の作用について説明する。
【0014】
本発明のスピーカーキャビネットは、繊維板もしくはパーティクルボードの板材から構成される表板に、スピーカーユニットを取り付けるスピーカーユニット取付部を備える。スピーカーユニット取付部は、代表的には、表板にスピーカーユニットのフレームが固着され得て、かつ、磁気回路が収まる孔寸法で設けられた貫通孔からなるスピーカーユニット取付孔であって、振動を発生するスピーカーユニットを強固に固定し、かつ、その重量を支えるために、繊維板もしくはパーティクルボードの板材の板厚は厚く選択される。スピーカーキャビネットは、表板に向かって右側面方向の右側板と、表板に向かって左側面方向の左側板と、を備え、これら右側板および左側板は、表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される。代表的には、右側板および左側板は、楽器用木質材料のスプルース、シトカスプルース、イングルマンスプルース、シダー、エゾマツ、ローズウッド、インディアンローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ココボロ、ニューハカランダ、マホガニー、サペリ、ホンジュラスマホガニー、コア、メイプル、ウォルナット、バスウッド、アッシュ、エボニー、セン、アルダー、ブビンガもしくはオバンコールのいずれかである。
【0015】
スピーカーユニットの駆動の反作用により、スピーカーキャビネットを構成する表板、右側板および左側板が振動し、音が放射される。板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される右側板および左側板は、表板から伝わった振動により振動し、スピーカー全体の再生音質に好ましい影響を与える。すなわち、板厚の厚い表板については、繊維板もしくはパーティクルボードに固有の音を放射させずにスピーカーユニットを強固に固定することができる一方で、板厚の厚い表板に比べて振動しやすい右側板および左側板は、楽器用木質材料に特有の音色を放射させることができる。また、スピーカーユニットが取り付けられる表板は、振動する面積が少ないのに比べて、右側板および左側板は、スピーカーキャビネットの設計により大きな振動面積を確保できる。その結果、スピーカーキャビネット全体として、スピーカーキャビネットからの放射音の音圧レベルをさらに高めることができる。
【0016】
ここで、板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される右側板および左側板から放射される音は、表板に取り付けられたスピーカーユニットから正面方向に放射される音に対して、左右方向へ放射される。すなわち、スピーカーの正面に位置する聴取者には、スピーカーキャビネットから放射される音は、スピーカーユニットからの直接音に対して、左右方向からの間接音として到来する。したがって、本発明のスピーカーキャビネットを備えるスピーカーの右側板および左側板からの放射音は、楽器用木質材料に特有の音色を備えることに加え、両耳聴の聴取者にとって広がり感や響き感を強調し、スピーカー全体の再生音質にさらに好ましい影響を与えることができる。
【0017】
好ましくは、スピーカーキャビネットの左側板を構成する板材は、楽器用木質材料のいずれかから選択された右側板の板材と、異なる楽器用木質材料から選択される。例えば、右側板の板材が比較的軟らかいマホガニーであるならば、左側板を構成する板材に比較的固いローズウッドを選択する。このように、固さや物性値(例えば、密度、曲げ強度、内部損失、等)が異なる種類の違う楽器用木質材料を選択することで、楽器用木質材料に特有の音色を生かして組み合わせたスピーカーキャビネットおよびこれらを用いた全体としてまとまった音質を備えるスピーカーが実現される。加えて、左右方向からの間接音が異なることになるので、両耳聴の聴取者にとっては両耳間の相関が更に下がるので、広がり感や響き感がより強調される。
【0018】
さらに、スピーカーキャビネットの右側板の板材と左側板とを異なる楽器用木質材料から選択した場合には、スピーカーユニットを表板のスピーカーユニット取付部に取り付けたスピーカーは、いわば左右非対称の構成をとることになる。したがって、好ましくは、本発明のスピーカーを複数で組にしたスピーカーシステムは、第1スピーカーと、第2スピーカーと、を少なくとも含み、第1スピーカーの右側板を構成する板材が、第2スピーカーの前記左側板の板材と等しく、第1スピーカーの左側板を構成する板材が、第2スピーカーの前記右側板の板材と等しくなるように選択される。
【0019】
例えば、左右2本一組で構成されるステレオ音声信号再生用スピーカーシステムの場合、聴取者の右前方に第1スピーカーが、そして聴取者の左前方に第2スピーカーが配置され、かつ、第1スピーカーの右側板および第2スピーカーの左側板がマホガニーであるならば、第1スピーカーの左側板および第2スピーカーの右側板にはマホガニーとは異なる板材(例えばローズウッド)が選択される。このようにすることで、本発明のスピーカーシステムは、ステレオ音声信号再生やマルチチャンネル音声信号再生の場合に、スピーカーシステム全体としての広がり感や響き感を左右対称にでき、スピーカーシステムの内側(第1スピーカーと第2スピーカーの間)とスピーカーシステムの外側とで異なる広がり感や響き感を実現できることから、さらに好ましい音場再生が可能になる。また、左右のスピーカー配置を入れ替えることで、広がり感や響き感が異なる音場再生も可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピーカーキャビネット並びにこれらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーは、スピーカーキャビネットからの放射音の音圧レベルをさらに高め、楽器用木質材料の板材の特質を引き出したうえで全体としてまとまった音質を再生することができる。さらに、本発明の複数のスピーカーから構成されるスピーカーシステムは、好ましい音声・音場再生が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のスピーカーキャビネット並びにこれらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーは、好ましい音声・音場再生を可能とするという目的を、スピーカーキャビネットが、スピーカーユニット取付部を備える表板と、表板に向かって右側面方向の右側板と、表板に向かって左側面方向の左側板と、を備えるスピーカーキャビネットであって、表板が、繊維板もしくはパーティクルボードの板材から構成され、右側板および左側板が、表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成されるようにすることにより、実現した。
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネット並びにこれらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーおよびスピーカーシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネット10について説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)はSec.A−A’の断面図、図1(c)はSec.B−B’の断面図である。本発明のスピーカーキャビネット10は、スピーカーユニット取付孔11aおよび11bを備える表板11と、表板に向かって右側面方向の右側板12と、表板に向かって左側面方向の左側板13と、裏板14と、天板15と、底板16と、を備える。
【0024】
スピーカーキャビネット10の表板11のスピーカーユニット取付孔11aには高音域再生用のツィーター(図示しない)が、スピーカーユニット取付孔11bには低音域再生用のウーファー(図示しない)が、それぞれ取り付けられ、スピーカー1(図示しない)を構成する。スピーカーユニットの表板11への固定には、比較的長い木ねじやボルト/ナット等の固定手段が用いられ、スピーカーユニット取付孔11aおよび11bの周囲には、それぞれ4カ所の木ねじの下穴が設けられる。なお、表板11には少なくとも一つのスピーカーユニットが取り付けられればよく、取り付けられるスピーカーの個数および種類に限定されない。
【0025】
代表的には、スピーカーキャビネット10は直方体状であり、本実施例では、外形寸法が、幅120mm、高さ200mm、奥行き150mmの直方体である。スピーカーキャビネット10の表板11、裏板14、天板15および底板16は、MDFの板材であり、表板11の板厚は20mm、裏板14、天板15および底板16の板厚は15mmである。一方、右側板12および左側板13は、表板11、裏板14、天板15および底板16よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材であって、ここでは、右側板12は板厚5mmのマホガニーの板材、左側板13は板厚5mmのローズウッドの板材である。なお、MDF、マホガニーおよびローズウッドの物性値は、次の通りである。
【0026】
MDF 密度:0.45kg/m、曲げ強度: 300kg/cm
マホガニー 密度:0.66kg/m、曲げ強度: 900kg/cm
ローズウッド 密度:0.80kg/m、曲げ強度:1300kg/cm
【0027】
楽器用木質材料であるマホガニーおよびローズウッドは、MDFよりも密度が高く、曲げ強度が大きく、さらに、マホガニーの方がローズウッドよりも密度が低く、曲げ強度も小さくて比較的軟らかい。また、スピーカーキャビネット10に用いられるMDFは15mm以上の板厚であるのに対して、マホガニーの右側板12およびローズウッドの左側板13は、ともに板厚5mmである。したがって、スピーカーユニットの駆動の反作用で生じる振動に起因する放射音は、MDFの表板11、裏板14、天板15および底板16では小さく、マホガニーの右側板12およびローズウッドの左側板13では、比較的に大きくなる。
【0028】
図2は、スピーカーキャビネット10の振動放射音について説明する図である。スピーカーユニットの代わりに音を放射せず振動のみを生じる加振器をMDFの表板11に取り付けて、図2(a)はマホガニーの右側板12の近傍で、図2(b)はローズウッドの左側板13の近傍で、放射音圧を測定した結果である。なお、図2(c)は比較例としてスピーカーキャビネットの右側板12および左側板13を、MDFの板厚9mmの板材に換えた場合の近傍放射音圧を測定した結果である。このように、比較例の板厚の厚いMDFの場合に対して、本発明の薄い板厚のマホガニーの場合およびローズウッドの場合の方が共に音圧が高くすることができる。加えて、マホガニー、ローズウッドは物性値の違いにより周波数特性が相互に異なることから、本発明のスピーカーキャビネット10では、良く響く楽器用木質材料の板材の特質を引き出した音声・音場再生が可能になる。
【0029】
図3は、本発明のスピーカーキャビネット10にスピーカーユニットを取り付けたスピーカー1を、左右2本一組で構成したステレオ音声信号再生用スピーカーシステム100について説明する図である。スピーカーシステム100は、聴取者3の右前方に配置される第1スピーカー1Rと、聴取者の左前方に配置される第2スピーカー1Lとから構成され、第1スピーカー1Rにはステレオ信号の右チャンネル信号が、第2スピーカー1Lにはステレオ信号の左チャンネル信号が供給される。
【0030】
ここで、第1スピーカー1Rと第2スピーカー1Lには、同一のスピーカー1を使用してもよいが、スピーカーキャビネット10の右側板12の板材と左側板13とを異なる楽器用木質材料から選択した場合には、スピーカーユニットを表板11のスピーカーユニット取付孔11aおよび11bに取り付けたスピーカー1は、いわば左右非対称の構成をとることになる。したがって、例えば、第1スピーカー1Rの右側板12がマホガニーであるならば、第2スピーカー1Lの左側板13は、同じくマホガニーとすることが好ましい。また、第1スピーカー1Rの左側板13がローズウッドである場合には、第2スピーカー1Lの右側板12は、同じくローズウッドとすることが好ましい。スピーカーシステム100は、ステレオ音声信号再生の場合に、スピーカーシステム全体としての広がり感や響き感を左右対称にできる。また、左右のスピーカー配置を入れ替えることで、広がり感や響き感が異なる音場再生も可能になる。
【0031】
これらスピーカーキャビネット10の右側板12の板材と左側板13は、表板11よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成されればよく、マホガニー、ローズウッドに限定されない。代表的には、他の楽器用木質材料のスプルース、シトカスプルース、イングルマンスプルース、シダー、エゾマツ、ローズウッド、インディアンローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ココボロ、ニューハカランダ、マホガニー、サペリ、ホンジュラスマホガニー、コア、メイプル、ウォルナット、バスウッド、アッシュ、エボニー、セン、アルダー、ブビンガもしくはオバンコールのいずれかであればよい。より好ましくは、例えば、マホガニーとローズウッド、マホガニーとメイプルといった組合せや、ギター、バイオリンまたはピアノといった共鳴部を備える楽器に使用される楽器用木質材料の組合せとすることにより、さらに好ましい音場再生が可能になる。また、楽器用木質材料の板材の薄さは、表板11、裏板14、天板15および底板16のいずれかよりも薄ければよく、好ましくは、表板の半分以下の薄さであればよい。
【0032】
また、右側板12の板材と左側板13の板材とは、異なる楽器用木質材料から選択することが望ましいが、同じ楽器用木質材料を選択してもよい。同じ楽器用木質材料を選択した場合であっても、板厚や補強材料により強度が異なる結果、振動放射音の特性が大きく異なるものであってもよい。また、表板11は、スピーカーユニットが取り付けられる部分がMDFの板材であればよく、他の楽器用木質材料を併用してもよい。裏板14、天板15および底板16についても、MDF等の繊維板に限らず、パーティクルボードや、他の楽器用木質材料であってもよい。
【実施例2】
【0033】
図4は、本発明のスピーカーキャビネット20にスピーカーユニットを取り付けたスピーカー2を、5本一組で構成したマルチチャンネル音声信号再生用スピーカーシステム200について説明する図である。スピーカーシステム200は、聴取者3の正面前方に配置される中央スピーカー2Cと、聴取者3の右前方に配置される右スピーカー2Rと、聴取者の左前方に配置される左スピーカー2Lと、聴取者3の右後方(もしくは右側方)に配置される右サラウンドスピーカー2RSと、聴取者の左後方(もしくは左側方)に配置される左サラウンドスピーカー2LSと、から構成され、中央スピーカー2Cにはセンターチャンネル信号が、右スピーカー2Rには右チャンネル信号が、左スピーカー2Lには左チャンネル信号が、右サラウンドスピーカー2RSには右サラウンドチャンネル信号が、左サラウンドスピーカー2LSには左サラウンドチャンネル信号が、供給される。5本のそれぞれのスピーカー2は、表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成された右側板および左側板を備えるスピーカーキャビネットからなるので、より好ましいサラウンド音場再生が可能になる。
【0034】
ここで、より好ましくは、聴取者3に左右対称なサラウンド音場を再生するために、スピーカーシステム200は、全体として聴取者3に対して左右対称の構成となることが望ましい。したがって、例えば、右スピーカー2Rの右側板がマホガニーであるならば、左スピーカー2Lの左側板は、同じくマホガニーとすることが好ましい。また、右スピーカー2Rの左側板がローズウッドである場合には、左スピーカー2Lの右側板は、同じくローズウッドとすることが好ましい。また、センタースピーカー2Cについては、右側板及び左側板をともにローズウッドにすることが好ましい。さらに、同様に、右サラウンドスピーカー2RSの右側板がローズウッドであるならば、左サラウンドスピーカー2LSの左側板は、同じくローズウッドとすることが好ましく、そして、右サラウンドスピーカー2RSの左側板がマホガニーである場合には、左サラウンドスピーカー2LSの右側板は、同じくマホガニーとすることが好ましい。スピーカーシステム200は、マルチチャンネル音声信号再生の場合に、スピーカーシステム200全体としての広がり感や響き感を左右対称にできる。
【0035】
スピーカーシステム200のそれぞれのスピーカーキャビネットの右側板の板材と左側板の板材の組合せは、上記実施例に限られない。右側板の板材と左側板の板材が同一の楽器用木質材料であってもよい。特に、聴取者3の正面に配置されるセンタースピーカー2Cは、右側板の板材と左側板の板材が同一であるのが好ましい。また、右側板の板材と左側板の板材は、板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成されればよく、マホガニー、ローズウッドに限定されない。代表的には、他の楽器用木質材料のスプルース、シトカスプルース、イングルマンスプルース、シダー、エゾマツ、ローズウッド、インディアンローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ココボロ、ニューハカランダ、マホガニー、サペリ、ホンジュラスマホガニー、コア、メイプル、ウォルナット、バスウッド、アッシュ、エボニー、セン、アルダー、ブビンガもしくはオバンコールのいずれかであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のスピーカーキャビネット並びにこれらのスピーカーキャビネットを用いたスピーカーおよびスピーカーシステムは、家庭用のステレオ再生、もしくはマルチチャンネルサラウンド再生に限られず、車載用のオーディオ機器や、映画館等の音響再生設備にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネットについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネットの振動放射音について説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0038】
1 スピーカー
2 スピーカー
3 聴取者
10 スピーカーキャビネット
11 表板
12 右側板
13 左側板
14 裏板
15 天板
16 底板
20 スピーカーキャビネット
100 スピーカーシステム
200 スピーカーシステム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーユニット取付部を備える表板と、該表板に向かって右側面方向の右側板と、該表板に向かって左側面方向の左側板と、を備えるスピーカーキャビネットであって、
該表板が、繊維板もしくはパーティクルボードの板材から構成され、
該右側板および該左側板が、該表板よりも板厚の薄い楽器用木質材料の板材から構成される、
スピーカーキャビネット。
【請求項2】
前記右側板および前記左側板を構成する板材が、
楽器用木質材料のスプルース、シトカスプルース、イングルマンスプルース、シダー、エゾマツ、ローズウッド、インディアンローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、マダガスカルローズウッド、ココボロ、ニューハカランダ、マホガニー、サペリ、ホンジュラスマホガニー、コア、メイプル、ウォルナット、バスウッド、アッシュ、エボニー、セン、アルダー、ブビンガもしくはオバンコールのいずれかから選択される、
請求項1に記載のスピーカーキャビネット。
【請求項3】
前記左側板を構成する板材が、
前記楽器用木質材料のいずれかから選択された右側板の板材と、異なる前記楽器用木質材料から選択される、
請求項2に記載のスピーカーキャビネット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のスピーカーキャビネットと、前記表板のスピーカーユニット取付部に取り付けられるスピーカーユニットと、
から構成されるスピーカー。
【請求項5】
請求項4に記載の第1スピーカーと、請求項4に記載の第2スピーカーと、を少なくとも含む一組のスピーカーシステムであって、
該第1スピーカーの右側板を構成する板材が、該第2スピーカーの前記左側板の板材と等しく、
該第1スピーカーの左側板を構成する板材が、該第2スピーカーの前記右側板の板材と等しい、
スピーカーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−174312(P2006−174312A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366966(P2004−366966)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】