説明

スピーカーフレーム

【課題】スピーカーユニットの骨格として十分な剛性を有し、かつ、軽量なスピーカーフレームを提供すること。
【解決手段】樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含み、該芯材の表面を被覆する表面材層とを有する、スピーカーフレーム。好ましくは、樹脂発泡体は、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーフレームに関する。より詳細には、軽量で優れた強度を有するスピーカーフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ等の電子機器用スピーカーにおいては、機器の薄型化および軽量化に伴い、さらなる軽量化が求められている。また、車載用スピーカーにおいても、環境対応のため、燃費向上等を目的として、さらなる軽量化が求められている。
【0003】
従来のスピーカーにおいては、磁気回路の磁石として主にフェライトが用いられていたので、該磁石を含む磁気回路が最も重い部品であった。しかしながら、上記要望の下、近年のスピーカーにおいては、磁気回路の磁石として軽量な希土類磁石が使用されており、その結果、スピーカーフレームが最も重い部品となっている。したがって、スピーカーフレームの軽量化が強く望まれている。
【0004】
スピーカーフレームは、磁気回路に対して、振動系(振動板およびボイスコイル)および支持系(エッジおよびダンパー)の位置を正確に保持するという役割を有する。したがって、スピーカーフレームには、スピーカーユニットの骨格としての剛性が要求される。このようなスピーカーフレームの形成材料としては、冷延鋼板、アルミニウム合金等の金属材料が主流であるが、成形の自由度が高く、金属材料に比べて軽量であることからABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料も採用されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記従来の材料で形成されたスピーカーフレームは、軽量化が不十分であり、特に車載用としてはさらなる軽量化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−119791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、スピーカーユニットの骨格として十分な剛性を有し、かつ、軽量なスピーカーフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、スピーカーフレームが提供される。該スピーカーフレームは、樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含み、該芯材の表面を被覆する表面材層とを有する。
好ましい実施形態においては、上記表面材層が、強化材をさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記表面材層の厚みが、0.3mm以上である。
好ましい実施形態においては、上記樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスピーカーフレームは、樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含み、該芯材の表面を被覆する表面材層とを有するので、スピーカーユニットの骨格として十分な剛性を有し得、かつ、重量が大幅に低減され得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.スピーカーフレーム
本発明のスピーカーフレームは、樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含み、該芯材の表面を被覆する表面材層とを有する。本発明のスピーカーフレームは、樹脂発泡体からなるきわめて軽量な芯材と表面材層との2層構造をとるので、密度が大幅に低減され得る。また、芯材の表面全体が熱硬化性樹脂で被覆されているので、十分な剛性を有し得る。
【0011】
本発明のスピーカーフレームの厚みは、好ましくは2.0〜60mm、さらに好ましくは3.0〜30mmである。スピーカーフレームの厚みがこのような範囲内であれば、スピーカーユニットの骨格として十分な剛性を有し得る。なお、スピーカーフレームは、部位によって求められる剛性に差があり、厚みが一定でない場合がある。その場合、上記スピーカーフレームの厚みは、スピーカーフレーム全体の平均厚みを意味する。
【0012】
B.芯材
芯材は、樹脂発泡体からなる。芯材の厚みは、目的等に応じて適切に設定され得る。芯材の厚みは、好ましくは2.0〜60mm、さらに好ましくは3.0〜30mmである。芯材の厚みがこのような範囲内であれば、スピーカーフレームの重量を大幅に低減し得る。
【0013】
上記樹脂発泡体の密度は、好ましくは0.01〜0.1g/cm、さらに好ましくは0.01〜0.08g/cmである。樹脂発泡体の密度がこのような範囲内であれば、スピーカーフレームの重量が大幅に低減され得る。
【0014】
上記樹脂発泡体における気泡の発泡倍率は、好ましくは5〜90倍、さらに好ましくは15〜60倍、特に好ましくは20〜60倍である。発泡倍率がこのような範囲内であれば、軽量でありながら剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。
【0015】
上記樹脂発泡体を形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、後述する蒸気加熱発泡法により発泡可能なTgを有する熱可塑性樹脂や、発泡成形性が高く、かつ、適度な剛性を有する熱硬化性樹脂が採用され得る。このような樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、および、これらのブレンド物またはアロイ化物が好ましく例示される。軽量、かつ、表面材層との接着性に優れた樹脂発泡体を形成し得るからである。ウレタン系樹脂は、さらに常温で発泡性を有するという利点も有する。また、環境適応の観点から、ポリ乳酸等の生分解性プラスチックを用いてもよい。好ましくは、ポリ乳酸は、トウモロコシのような農作物またはバイオマス原料から製造される。
【0016】
上記芯材には、必要に応じて、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施され得る。表面処理を施すことにより、表面材層との接着性が向上し得る。表面処理条件は、上記樹脂の種類等に応じて適切に設定され得る。
【0017】
上記芯材の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。芯材は、例えば、炭化水素ガス等の発泡剤を含む樹脂粒子を発泡させて形成される。詳しくは後述する。
【0018】
C.表面材層
表面材層は、熱硬化性樹脂を含み、上記芯材の表面を被覆する。好ましくは、表面材層は、芯材の表面の実質的に全体を被覆する。表面材層の厚みは、所望される剛性等に応じて、適切に設定され得る。表面材層の厚みは、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.45mm以上である。表面材層の厚みがこのような範囲内であれば、軽量でありながら剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記芯材の厚みに対する表面材層の厚みの合計(放射面側の表面材層とその反対側の表面材層との厚みの合計)の割合は、0.1%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10%である。このような割合であれば、軽量でありながら剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。
【0020】
表面材層に含まれる熱硬化性樹脂としては、任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得る。好ましくは、表面硬度およびヤング率が高く、上記芯材との接着性に優れた熱硬化性樹脂が採用され得る。また、操作性の観点から、硬化前は流動性が高く、液状を呈することが好ましい。表面材層に含まれる熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、およびウレタン系樹脂が好ましい。
【0021】
表面材層は、好ましくは上記樹脂に加えて強化材をさらに含む。強化材を含むことにより、さらに剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。強化材としては、繊維状・粒子状・鱗片状等の任意の適切な材料が用いられ得る。なかでも、繊維状の強化材は、剛性の向上効果が高く、好ましい。
【0022】
1つの実施形態においては、強化材として、織布および/または不織布が用いられ得る。この場合、強化材は、織布および/または不織布の単一層であってもよく、織布および/または不織布の積層体であってもよい。
【0023】
上記織布の織構造としては、任意の適切な構造が採用され得る。例えば、平織、綾織、朱子織、これらの組み合わせが挙げられる。織布の面密度は、織構造や用いる繊維の性質(例えば、機械的特性、繊維径、繊維長)等により適宜選択されるが、代表的には50〜200g/mである。このような範囲の面密度は、剛性の向上効果が大きく、成形性にも優れるからである。
【0024】
上記不織布は任意の適切な方法により形成され得る。不織布の形成方法の代表例としては、水などの流体を用いる湿式製法、機械的に短繊維をランダムに絡ませる乾式製法等が挙げられる。湿式製法が好ましい。機械的特性の異方性を小さく抑えることができ、成形性が良好な不織布が得られるからである。不織布の目付け(面密度)は目的に応じて変化し得るが、代表的には10〜100g/mである。
【0025】
上記織布または不織布を形成する繊維は、長繊維であってもよく、短繊維であってもよい。また、有機繊維であってもよく、無機繊維であってもよい。好ましくは高弾性率繊維が用いられ得る。非常に優れた剛性を有するスピーカーフレームが得られ得るからである。高弾性率繊維の代表例としては、炭素繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維が挙げられる。
【0026】
好ましくは、高弾性率繊維は撚りがかかっていない繊維(無撚繊維)である。無撚繊維を用いることにより、単位面積当たりの厚みを極端に薄くすることが可能であり、その結果、軽量、かつ非常に優れた剛性を有するスピーカーフレームを得ることができる。
【0027】
別の実施形態においては、強化材として、ガラス繊維、高弾性率繊維等の繊維や、酸化チタン、タルク、マイカ等の微粒子が用いられ得る。この場合、強化材の含有量は、上記熱硬化性樹脂100重量部に対し、好ましくは10〜50重量部である。
【0028】
表面材層は、必要に応じて、任意の添加剤をさらに含み得る。添加剤の1つの例としては、離型剤が挙げられる。表面材層が離型剤を含むことにより、製造工程における金型からの離型性に優れるので生産効率が向上し得る。また、金型表面に塗布される外部離型剤と異なり、スピーカーフレーム表面への移行がないので、優れた表面状態が得られ得る。離型剤の種類および含有量は、上記熱硬化性樹脂の種類等に応じて適切に選択され得る。添加剤の別の例としては、収縮防止剤、難燃剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
上記表面材層の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。表面材層は、例えば、上記形成材料を混合して得られる表面材層形成用樹脂組成物を、所定の空隙をもって上記芯材が設置された金型内に注入し、樹脂を硬化させることによって形成され得る。その際、該樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤を含み得る。硬化剤の種類および含有量は、上記熱硬化性樹脂の種類等に応じて適切に選択され得る。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシアクリレート系樹脂または不飽和ポリエステル系樹脂の場合、樹脂100重量部に対してt−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物を0.5〜5重量部添加することが好ましい。
【0030】
D.スピーカーフレームの製造方法
上記スピーカーフレームは、任意の製造方法によって製造され得る。例えば、加熱により発泡成形する場合、蒸気孔を有する発泡成形用金型内に発泡剤を含む樹脂粒子を充填し、所定の発泡条件で発泡成形することにより、樹脂発泡体からなる芯材が形成される。発泡剤を含む樹脂粒子としては、予め所定の発泡倍率で予備発泡させた予備発泡粒子を用いてもよい。予備発泡粒子の形状は、任意の適切な形状が採用され得る。具体的には、ビーズ状、ペレット状、球状等が挙げられる。予備発泡粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20mm、さらに好ましくは0.1〜2mmである。予備発泡粒子としては、市販品を用いてもよい。
【0031】
上記発泡条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。加熱媒体としては、代表的には蒸気および/または空気が挙げられる。加熱媒体の温度は、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃である。加熱媒体の圧力は、好ましくは0.1〜3.0kg/cm、さらに好ましくは0.5〜2.0kg/cmである。最終的な発泡倍率は、好ましくは5〜90倍、さらに好ましくは15〜60倍、特に好ましくは20〜60倍である。
【0032】
ウレタン系樹脂のように常温で発泡成形する場合は、発泡成形用金型内に芯材の形成材料を注入し、重合および発泡を同時に進行させればよい。
【0033】
次いで、所望のスピーカーフレームの形状に相当する金型(代表的には、マッチドダイ金型)内に芯材を設置する。その後、金型内面と芯材表面との空隙を埋めるように上記表面材層形成用樹脂組成物を注入し、金型を閉じてから加熱硬化することにより、表面材層が形成される。このようにして、本発明のスピーカーフレームが得られる。硬化時間を短縮する観点から、金型は予め加熱されていてもよい。金型は、コア型(放射面側)とキャビティー型(放射面の反対側)との一対の型からなり、芯材を設置した場合にその表面全体に対して所定の空隙を有するように設計されているので、該空隙に該樹脂組成物を注入して硬化させることにより、芯材表面全体を等しい厚みの樹脂層で覆うことができる。
【0034】
表面材層の加熱硬化条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。加熱温度は、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜110℃である。加熱時間は、好ましくは1〜30分、さらに好ましくは5〜15分である。また、表面材層は、芯材に該樹脂組成物をスプレー等で塗布して、乾燥・硬化して形成してもよい。
【0035】
強化材として織布および/または不織布を用いる場合は、金型内に設置する芯材の少なくとも一部を覆うように、例えば、金型のコア型および/またはキャビティー型の内壁に沿うように織布または不織布を配置してから、芯材を配置し、上記樹脂組成物を注入・硬化すればよい。同様に、強化材として織布および/または不織布を用いる場合は、芯材の少なくとも一部を覆うように織布又は不織布を配置してから上記樹脂組成物を塗布して、乾燥・硬化させてもよい。また、強化材として繊維、微粒子等を用いる場合は、上記樹脂組成物中にこれらを混合し、金型内に注入・硬化すればよい。同様に、強化材として繊維、微粒子等を用いる場合は、上記樹脂組成物中にこれらを混合し、芯材に該樹脂組成物をスプレー等で塗布して、乾燥・硬化して形成してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量(質量)基準である。
【0037】
[実施例1]
炭化水素ガスを吸収させた細粒状ポリスチレンビーズ(直径:約2mm)を所定の形状の蒸気成形用金型内に、その容積の約2%となるように充填した。次いで、100〜120℃の蒸気を該金型内に注入して5分間保持し、その後、冷却することにより、発泡倍率が約60倍である発泡ポリスチレンからなる芯材を得た。得られた芯材の密度は0.018g/cmであった。
【0038】
エポキシアクリレート(ディーエイチ・マテリアル社製、製品名「アクアライトFH−865」) 100部と、離型剤(Axel Plastics Research Laboratories社製、製品名「モールドウィズINT−EQ6」) 3部と、有機過酸化物(日油社製、製品名「パーロイルIB」) 1.5部とを混合して、表面材層形成用樹脂組成物を得た。
【0039】
上記芯材表面全体に対して0.13mmのクリアランスを有するスピーカーフレーム形状のマッチドダイ金型を70℃に加熱し、該金型内に上記芯材を設置した。次いで、金型内に芯材表面全体を覆うように上記樹脂組成物を注入した後、約70℃で10分加熱することにより樹脂を硬化させて、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム1を得た。
【0040】
[実施例2]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.30mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム2を得た。
【0041】
[実施例3]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.45mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム3を得た。
【0042】
[実施例4]
マッチドダイ金型のコア型およびキャビティー型の内壁に沿うようにアラミド繊維の不織布(帝人社製、製品名「テクノーラ」、面密度30g/m)を配置したこと、および、マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.60mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 15mmのスピーカーフレーム4を得た。得られたスピーカーフレーム4においては、芯材の表面が不織布とエポキシアクリレートとによって覆われていた。
【0043】
[実施例5]
下記のようにして得た芯材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム5を得た。
【0044】
炭化水素ガスを吸収させた細粒状ポリプロピレンビーズ(直径:約2mm)を所定の形状の蒸気成形用金型内に、その容積の約2%となるように充填した。次いで、100〜120℃の蒸気を該金型内に注入して5分間保持し、その後、冷却することにより、発泡倍率が約45倍である発泡ポリプロピレンからなる樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の密度は0.020g/cmであった。次いで、得られた樹脂発泡体の表面にプラズマ処理を施して、芯材を得た。プラズマ処理は、プラズマ処理装置(春日電機社製、製品名「PS−601C型」)を用い、樹脂発泡体表面から3cmの距離で2cm/secの速度で往復処理することにより行った。処理後の樹脂発泡体(芯材)の表面エネルギーは、48dyne/cmであった。
【0045】
[実施例6]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.45mmにしたこと以外は実施例5と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム6を得た。
【0046】
[実施例7]
表面材層形成用樹脂組成物として、不飽和ポリエステル(ジャパンコンポジット社製、製品名「N−350L」) 100部と、離型剤(Axel Plastics Research Laboratories社製、製品名「モールドウィズINT−EQ6」) 3部と、有機過酸化物(日油社製、製品名「パーオクタO」) 1.5部とを混合して得た表面材層形成用樹脂組成物を用いたこと、および、マッチドダイ金型における加熱温度を100℃としたこと以外は実施例5と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム7を得た。
【0047】
[実施例8]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.45mmにしたこと以外は実施例7と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム8を得た。
【0048】
[実施例9]
下記のようにして得た芯材を用いたこと、および、芯材を設置する際のマッチドダイ金型の温度を約20℃としたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム9を得た。
【0049】
ポリオールとイソシアネート化合物と触媒と発泡剤と整泡剤との混合物を、所定の形状の成形用金型に注入し、重合と発泡とを同時に進行させることにより、硬質発泡ウレタンからなる芯材を得た。得られた芯材の密度は0.076g/cmであった。
【0050】
[実施例10]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.30mmにしたこと以外は実施例9と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム10を得た。
【0051】
[実施例11]
マッチドダイ金型の芯材表面全体に対するクリアランスを0.45mmにしたこと以外は実施例9と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム11を得た。
【0052】
[比較例1]
マッチドダイ金型のキャビティー型と芯材表面とのクリアランスを0.45mmとし、コア型と芯材表面との間のクリアランスを0mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレームc1を得た。得られたスピーカーフレームc1においては、放射側表面は芯材が露出しており、その反対側表面のみ表面材層が形成されていた。
【0053】
[比較例2]
ABS樹脂ペレット(東レ社製、製品名「トヨラック450Y」)を射出成形することにより、平均厚み 3mmとした以外はスピーカーフレーム1と同じ形状のスピーカーフレームc2を得た。
【0054】
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂ペレット(プライムポリマー社製、製品名「K7000」)を射出成形することにより、平均厚み 3mmとした以外はスピーカーフレーム1と同じ形状のスピーカーフレームc3を得た。
【0055】
[実施例12]
炭化水素ガスを吸収させた細粒状ポリ乳酸ビーズ(直径:約2mm)を所定の形状の蒸気成形用金型内に、その容積の約5%となるように充填した。次いで、100〜120℃の蒸気を該金型内に注入して5分間保持し、その後、冷却することにより、発泡倍率が約20倍である発泡ポリ乳酸からなる芯材を得た。得られた芯材の密度は0.058g/cmであった。
【0056】
表面材層形成用樹脂組成物として、ポリオールとイソシアネート化合物と触媒とを含む硬質ウレタン塗料を用いた。この硬質ウレタン塗料を50℃に加熱し、芯材表面に平均0.25mm厚となるように塗布し、乾燥・硬化したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム12を得た。
【0057】
[実施例13]
塗布厚みを0.5mmにしたこと以外は実施例12と同様にして、平均厚み 10mmのスピーカーフレーム13を得た。
【0058】
上記実施例および比較例で得たスピーカーフレームのヤング率、密度、および内部損失を、同様の製造方法で得た試験片(断面形状が10mm(厚み)×10mm(幅)×15mm(長さ))を用いて定法により求めた。なお、曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の積として求められ、断面形状が同じ場合はヤング率に比例するため、比率で比較した。結果を表1〜4に示す。さらに、実施例12で得られた発泡ポリ乳酸芯材を所定形状に切り出し、90℃および100℃でそれぞれ96時間放置した後の寸法変化率を測定したところ、−0.1%および−0.2%ときわめて良好であった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表1〜3からわかるとおり、本発明のスピーカーフレームは、きわめて軽量な樹脂発泡体を芯材とし、その表面が十分な剛性を有する熱硬化性樹脂層で覆われているので、スピーカーユニットの骨格として十分な剛性を有しつつ、従来のスピーカーフレーム(比較例2および3)よりも大幅に軽量化されている。例えば、口径16cmのスピーカーの場合に、比較例1のフレームの重量は約120gであり、磁気回路を含むスピーカーの全重量は約230gである。一方で、実施例1のフレームの重量は約45gであり、磁気回路を含むスピーカーの全重量は約120gである。このように本発明のスピーカーフレームは、スピーカーを大幅に軽量化できる。このような効果は、表面材層が強化材を含む場合に、顕著に奏されている。また、スピーカーフレームの曲げ剛性は、スピーカーフレーム表面全体の圧縮または膨張に対する抗力に大きく依存すると考えられ、比較例1のように芯材の表面を部分的に覆った場合には十分な剛性が得られなかった。
【0064】
さらに、表4からわかるとおり、本発明のスピーカーフレームは、生分解性プラスチックであるポリ乳酸を用いて、上記と同様の非常に優れた特性を実現できる。したがって、優れた特性を有し、かつ、廃棄時の環境負担を大幅に低減することができるスピーカーフレームを得ることができる。さらに、ポリ乳酸は、トウモロコシのような農作物あるいはバイオマスのような非石油原料から製造することができるので、廃棄時のみならず製造時の環境負担も大幅に軽減することができる。より具体的には、非石油原料由来のポリ乳酸は、いわゆるカーボンニュートラルであり、地球温暖化防止に貢献し得る。加えて、上記のように、発泡ポリ乳酸芯材は、高温における寸法安定性がきわめて優れており、耐熱性が要求される用途にきわめて好適であり、かつ、磁気回路からの熱に対してもきわめて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のスピーカーフレームは、車載用のスピーカーに特に好適に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含み、該芯材の表面を被覆する表面材層とを有する、スピーカーフレーム。
【請求項2】
前記表面材層が、強化材をさらに含む、請求項1に記載のスピーカーフレーム。
【請求項3】
前記表面材層の厚みが、0.3mm以上である、請求項1または2に記載のスピーカーフレーム。
【請求項4】
前記樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む、請求項1から3のいずれかに記載のスピーカーフレーム。

【公開番号】特開2011−10283(P2011−10283A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114226(P2010−114226)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】