説明

スピーカー用ホーンおよびこれを用いたホーンスピーカー

【課題】 小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルで再生する狭指向性を実現するスピーカー用ホーンを提供する。
【解決手段】 スピーカー用ホーンは、スピーカー振動板の前面側に一方端が連結するスロート部と、スロート部の他方端に連結するホーン部と、を備えるスピーカー用ホーンであって、スロート部が、ホーン部と連結する他方端に矩形開口を有し、ホーン部が、スロート部の矩形開口が出現するスロート連結部と、矩形開口を焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面と、スロート連結部ならびに反射曲面を狭持するように配置される第1平面部および第2平面部と、を備え、第1平面部および第2平面部により規定されるスリット開口が、スロート部の矩形開口の高さh1と略等しい高さh2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー振動板の前面側に取り付けて、放射音波の指向性を制御するスピーカー用ホーンおよびこれを用いたホーンスピーカーに関し、特に、小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルを実現しようとする狭指向性のスピーカー用ホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカーが放射する再生音波の指向性を制御するために、ホーン、または、反射板をスピーカー振動板の前面側に取り付ける場合がある。スピーカーの指向特性を制御する手段には、指向性の制御の目的や、スピーカー種類への対応により、様々な種類や方式がある。なかでも、特定の聴取位置において高い音声再生レベルを実現しようとする狭指向性を図るものには、様々な方式が提案されている。
【0003】
例えば、狭指向性のスピーカーとして、内面が二つの焦点をもつ回転楕円面の一部をなす面を少なくとも部分的に有する反射体と、二つの焦点を結んだ線上にて反射体に近い方の焦点の位置もしくはその近傍で音声を上記反射体に照射する音源とを備え、反射体は吸振材により成る支持層の内面に硬度の高い材料の反射層を有している音響装置がある(特許文献1)。
【0004】
また、ホーンスピーカーでは、ドライバユニットが一端に接続されたのど部と、のど部の他端に連続して形成されたベル部とからなり、のど部が略平行に形成された第1の一対ののど部壁面と、所定の角度で拡開する第2の一対ののど部壁面とにより矩形の断面を形成するように構成され、ベル部が第1の一対ののど部壁面に連続して形成されて水平方向に対応して一定の角度で拡開する第1の一対のベル部壁面と、第2の一対ののど部壁面に連続して形成されて垂直方向に対向して曲線状に拡開する第2の一対のベル部壁面と、により矩形状の断面を形成するように構成された拡声器ホーンがある(特許文献2)。
【0005】
また、音響効果をあげるホーンを備え、スピーカーの最小開口よりも狭い開口を有する場所にもスピーカーを取り付け可能にする目的で、一端を矩形状に開口した第1の開口部と、他端を円状に開口した第2の開口部と、第1の開口部と第2の開口部間を曲面状に連続して繋げた内壁と、第1の開口部の開口面積と第2の開口部の開口面積とをほぼ同一とするとともに、内壁の直角方向の断面開口面積と夫々の開口部の開口面積とをほぼ同一とするホルダを形成し、第2の開口部にスピーカーを装着してスピーカーの音波を第1の開口から放出するスピーカー取付ホルダがある(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】実公平8−7440号公報
【特許文献2】実公昭64−6638号公報
【特許文献3】実開平4−121197号公報
【0007】
しかしながら、特許文献1のような略パラボラ状の反射体を設ける場合には、狭指向性のスピーカーとして大型のものになりやすいという欠点がある。また、特許文献2、または、特許文献3のようなスピーカーの前面側に取り付けるものであっても、任意の方向に高い音声再生レベルを実現する狭指向性のスピーカーとするには、十分でない場合があるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スピーカー用ホーンおよびこれを用いたホーンスピーカーであって、スピーカー振動板の前面側に取り付けることで、小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルで再生する狭指向性を実現するスピーカー用ホーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスピーカー用ホーンは、スピーカー振動板の前面側に一方端が連結するスロート部と、スロート部の他方端に連結するホーン部と、を備えるスピーカー用ホーンであって、スロート部が、ホーン部と連結する他方端に矩形開口を有し、ホーン部が、スロート部の矩形開口が出現するスロート連結部と、矩形開口を焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面と、スロート連結部ならびに反射曲面を狭持するように配置される第1平面部および第2平面部と、を備え、第1平面部および第2平面部により規定されるスリット開口が、スロート部の矩形開口の高さh1と略等しい高さh2を有する。
【0010】
好ましくは、本発明のスピーカー用ホーンは、ホーン部のスロート連結部が、第1平面部、第2平面部、および、反射曲面とともスリット開口を規定する第3平面部と、第3平面部に略直交しスロート部の矩形開口が設けられる第4平面部と、を備え、第4平面部ならびに矩形開口が、第3平面部により遮られて、その奥側でスリット開口から直接視されない位置に配置されている。
【0011】
また、好ましくは、本発明のスピーカー用ホーンは、ホーン部のスロート連結部が、第4平面部と反射曲面とを連結する第5平面部をさらに備え、第5平面部が、第3平面部に対して略平行に設けられ、放物線断面の頂部において反射曲面と連結している。
【0012】
さらに、好ましくは、本発明のスピーカー用ホーンは、ホーン部のスロート連結部を構成する第3平面部と、第4平面部と、第5平面部と、が、反射曲面の反射率よりも低い反射率の吸音部材をさらに有する。
【0013】
また、好ましくは、本発明のスピーカー用ホーンは、スロート部の一方端が、スピーカー振動板に対応する円形開口である。
【0014】
また、好ましくは、本発明のホーンスピーカーは、上記のスピーカー用ホーンと、スピーカー振動板を有するスピーカーと、を備える。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明のスピーカー用ホーンは、スピーカー振動板の前面側に一方端が連結するスロート部と、スロート部の他方端に連結するホーン部と、を備える。このスピーカー用ホーンは、スピーカー振動板を有するスピーカーをさらに備えて、本発明のホーンスピーカーを構成する。例えば、スロート部は、その一方端が、円形のスピーカー振動板に対応する円形開口であっても、ホーン部と連結する他方端に矩形開口を有し、ホーン部は、この矩形開口の高さh1と略等しい高さh2を有するスリット開口を有する。したがって、このスピーカー用ホーンは、ホーンスピーカー全体の大きさが小型であり、任意の方向に高い音声再生レベルを実現する狭指向性のスピーカー用ホーンである。
【0017】
スピーカー用ホーンのホーン部は、スロート部の矩形開口が出現するスロート連結部と、矩形開口を焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面と、スロート連結部ならびに反射曲面を狭持するように略平行に配置される第1平面部および第2平面部と、を備えている。したがって、スロート連結部および反射曲面と、第1平面部および第2平面部と、が、反射曲面を含むホーン部の音道を規定する。音道の出口であるスリット開口は、スロート部の矩形開口の高さh1と略等しい高さh2であるので、第1平面部および第2平面部に挟まれて細長い開口になる。
【0018】
また、スピーカー用ホーンのホーン部では、放物線断面を有する反射曲面により、スリット開口から放射される音波が任意方向に進行する。反射曲面は、第1平面部および第2平面部と略平行であってその断面形状を規定する断面平面上において、放物線の一部として形成された断面形状を有する。つまり、反射曲面は、その放物線の焦点に、スピーカー振動板から導かれる音波が放射されるスロート部の矩形開口を設けているので、スリット開口から放射される音波が任意方向に進行しやすくなる。なお、反射曲面が有する放物線の形状は、楕円形に置き換えても良い。
【0019】
ここで、スロート部は、ホーン部と連結する他方端にスリット開口の高さh2と略等しい高さh1を有する矩形開口を有しているので、ホーン部の音道がスリット状であっても、任意方向以外の方向での音圧レベル上昇を抑制することができ、より好ましい指向特性を実現することができる。すなわち、スロート部の矩形開口と、ホーン部の入り口部分であるスロート連結部との間で、高さ方向の寸法が一致して音響インピーダンスの変化がより少なくなるので、その結果、音波の反射が少なくなり、ホーン部の音道の内部で乱れのない音波が進行しやすくなる。したがって、本発明のスピーカー用ホーンを用いるホーンスピーカーは、小型であっても任意の方向に高い音声再生レベルを実現する狭指向性を示す。
【0020】
反射曲面は、放物線断面の押出材を、スロート部の矩形開口の高さh1と略等しい高さh3になるように切断して形成してもよい。なお、第1平面部および第2平面部は、ホーン部の音道内部での定在波の発生を抑制するように、平行ではなくスリット開口側に開くように対峙していても良い。したがって、反射曲面の高さh3は、スロート部の矩形開口の高さh1以下であり、また、スリット開口の高さh2以下であってもよい。
【0021】
具体的には、ホーン部は、スロート連結部を有し、このスロート連結部は、第1平面部、第2平面部および反射曲面とともにスリット開口を規定する第3平面部と、第3平面部に略直交しスロート部の矩形開口が設けられる第4平面部と、を備え、第4平面部ならびに矩形開口が、第3平面部により遮られて、第3平面部の奥側、つまり、音道の内部側でスリット開口から直接視されない位置に配置されているのが好ましい。このようなスピーカー用ホーンにすることで、狭指向性を得るべき周波数帯域において、スロート部の矩形開口から放射される直接音が、スリット開口から放射されなくなるので、反射曲面の形状を設計することで、任意の方向に強い狭指向性を実現することができる。
【0022】
なお、スロート連結部は、第4平面部と反射曲面とを連結する第5平面部をさらに備え、第5平面部が、第3平面部に対して略平行に設けられ、放物線断面の頂部において反射曲面と連結していてもよい。また、これらの第3平面部と、第4平面部と、第5平面部と、が、反射曲面の反射率よりも低い反射率の吸音部材をさらに有していてもよい。ホーン部の音道を規定するスロート連結部が、強い反射を生じる場合には、反射によるピーク・ディップが再生周波数特性上に出現しやすくなるので、反射率の低い吸音性に優れるスロート連結部にすることで、ピーク・ディップを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスピーカー用ホーンは、スピーカー振動板の前面側に取り付けることで、小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルで再生する狭指向性を実現するスピーカー用ホーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のスピーカー用ホーンは、スピーカー振動板の前面側に取り付けることで、小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルで再生する狭指向性を実現するという目的を、スピーカー振動板の前面側に一方端が連結するスロート部と、スロート部の他方端に連結するホーン部と、を備えるスピーカー用ホーンであって、スロート部が、ホーン部と連結する他方端に矩形開口を有し、ホーン部が、スロート部の矩形開口が出現するスロート連結部と、矩形開口を焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面と、スロート連結部ならびに反射曲面を狭持するように配置される第1平面部および第2平面部と、を備え、第1平面部および第2平面部により規定されるスリット開口が、スロート部の矩形開口の高さh1と略等しい高さh2を有するようにすることにより、実現した。
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーンおよびこれを用いたホーンスピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーン3を用いたホーンスピーカー1を説明する図である。図1(a)は、ホーンスピーカー1を説明する上面図であり、図1(b)は、その正面図である。また、図2は、このホーンスピーカー1の断面図である。また、図3は、ホーンスピーカー1を構成するスピーカー2およびスロート部4を説明する部分拡大図であり、図3(a)は正面図であり、図3(b)はその側方断面図であり、図3(c)は背面図である。なお、説明に不要な他の内部構造等は、省略している。
【0027】
本実施例のホーンスピーカー1では、音声信号を音声に変換するスピーカー2がスピーカー用ホーン3に取り付けられている。後述するように、スピーカー用ホーン3は、全高を抑えたスリット開口5sとパラボラ状の反射曲面7とを有している。ホーンスピーカー1は、パラボラ状の反射壁面を含むホーンを備えるものとしては小型のスピーカーであっても、正面方向の聴取点P0において高い音声再生レベルで再生が可能になり、一方で指向角度θが大きくなる方向の聴取点Pxにおいて低い音声再生レベルとなる狭指向性を実現することができる。
【0028】
スピーカー2は、逆ドーム状の円形振動板2sを備える口径約3cmの動電型スピーカーであり、磁気回路が有する磁気空隙に配置されたボイスコイルに音声信号電流が供給されると、ボイスコイルには駆動力が発生する。その結果、ボイスコイルが巻回されたボビンと連結するスピーカー振動板2sが振動し、音波が放射される。スピーカー2の前面側には、スピーカー用ホーン3のスロート部4の円形開口4cを有する一方端が連結する。
【0029】
スピーカー用ホーン3は、スピーカー2が取り付けられるスロート部4と、スロート部4をその音道内部に収容するように取り付けるホーン部5と、から構成される。図示するように、スロート部4は、ホーン部5に連結する他方端が矩形開口4sを有する。矩形開口4sは、円形開口4cとほぼ同程度かそれ以上の開口面積を有する矩形状の開口であって、スロート部4の断面形状は、円形開口4cから矩形開口4sに至るにつれて連続的に変化する。本実施例では、矩形開口4は、幅が約5.0mmであり、その高さh1は、約46.6mmである。本実施例のスロート部4は、円形開口4cの中心点と矩形開口4sを規定する中心点が一致するようにされている。
【0030】
ホーン部5は、スロート部4の矩形開口4sが取り付けられるスロート連結部6と、矩形開口4sを焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面7と、スロート連結部6ならびに反射曲面7を狭持するように略平行に配置される第1平面部8および第2平面部9と、を備えている。その結果、スロート連結部6および反射曲面7と、第1平面部8および第2平面部9と、が、反射曲面7を含むホーン部5の音道を規定する。また、スリット開口5sは、スロート連結部6ならびに反射曲面7と、第1平面部8および第2平面部9と、により規定される音道の出口であり、第1平面部8および第2平面部9に挟まれる細長い開口になる。本実施例では、スリット開口5sの幅は約415.0mmであり、その高さh2は、約50.0mmである。したがって、スリット開口5sの高さh2は、スロート部4の矩形開口4sの高さh1と略等しい高さを有する。なお、スリット開口5sには、正面方向から見ると、その中央部分にスロート連結部6に連結するスロート部およびスピーカー2が露出する。
【0031】
ホーン部5を構成する反射曲面7は、スロート連結部6を介して取り付けられるスロート部4の矩形開口4sを焦点の位置とする放物線断面を有しているので、図2に示すように、スリット開口5sから放射される音波が聴取点P0の方向に進行し、その結果、本実施例のホーンスピーカー1は、狭指向性を実現することができる。反射曲面7は、ABS等の熱可塑性樹脂、又は、アルミ合金等の金属の放物線断面を有する押出材を、スロート部4の矩形開口4sの高さh1と略等しい高さh3になるように切断して形成することができる。なお、ホーン部5の奥行きは、約110.0mmである。
【0032】
また、本実施例のホーン部5を構成する第1平面部8および第2平面部9は、ホーン部5の音道内部での定在波の発生を抑制するように、平行ではなく交叉する角度が約5°になる関係であり、音道の奥側からスリット開口5s側に至るにつれて開くように対峙している。したがって、反射曲面7の高さh3は、スリット開口5sの高さh2を上限として変化する。ただし、スロート部4の矩形開口4sが出現するスロート連結部6が、スリット開口5sの近くに設けられているので、反射曲面7の高さh3は、スロート部4の矩形開口4sの高さh1以下になる。なお、第1平面部8および第2平面部9は、平行であっても良いが、本実施例のように交叉する角度が約3°から〜約10°の範囲であれば、ホーンスピーカー1は、良好な音響特性と小型化とを両立することができる。
【0033】
スロート部4は、ホーン部5と連結する他方端にスリット開口5sの高さh2と略等しい高さh1を有する矩形開口4sを有しているので、スロート部4の円形開口4cに相当する円形開口を設ける場合に比較して、高さ方向の寸法が一致することにより音響インピーダンスの変化がより少なくなる。その結果、音波の反射が少なくなり、ホーン部5の音道の内部で波面の乱れが少ない音波が進行しやすくなる。したがって、本発明のスピーカー用ホーン3を用いるホーンスピーカー1は、小型であっても任意の方向に高い音声再生レベルを実現する狭指向性を示す。本実施例の場合には、ホーン部5の寸法に比べて音波の波長が相対的に短くなる0.8kHz以上において、狭指向性が実現される。
【0034】
なお、スピーカー用ホーン3を構成するスロート部4およびホーン部5は、樹脂等の成形品で一体に形成されていてもよく、また、スピーカー用ホーン3の音道を上下に分離してするように、第1平面部8を含む上側部材と、第2平面部9を含む下側部材とに分けて、これらを結合して構成しても良い。
【実施例2】
【0035】
図4は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーン13を用いたホーンスピーカー11を説明する図である。図4(a)は、ホーンスピーカー11を説明する上面図であり、図4(b)は、その正面図である。また、図5は、このホーンスピーカー11の断面図である。また、図6は、ホーンスピーカー11を構成するスピーカー12およびスロート部14を説明する部分拡大図であり、図6(a)は正面図であり、図6(b)はその側方断面図であり、図6(c)は背面図である。なお、説明に不要な他の内部構造等は、省略している。
【0036】
本実施例のホーンスピーカー11は、先の実施例の場合と同様に、音声信号を音声に変換するスピーカー12がスピーカー用ホーン13に取り付けられている。後述するように、スピーカー用ホーン13は、全高を抑えたスリット開口15sとパラボラ状の反射曲面17とを有しており、先の実施例の場合の約半分の大きさである。ホーンスピーカー11は、さらに小型のスピーカーであっても、正面方向の聴取点P0において高い音声再生レベルで再生が可能になり、一方で指向角度θの絶対値が大きくなる方向の聴取点Pxにおいて低い音声再生レベルとなる狭指向性を実現することができる。
【0037】
なお、本実施例のスピーカー12は、先の実施例におけるスピーカー2と同じスピーカーであるので、説明を省略する。スピーカー12の前面側には、スピーカー用ホーン13のスロート部14の円形開口14cを有する一方端が連結する。なお、スロート部14の円形開口14cは、図6(c)に点線で図示するスロート部14の内側での部分である。
【0038】
スピーカー用ホーン13は、スピーカー12が取り付けられるスロート部14と、スロート部14をその音道内部に収容するように取り付けるホーン部15と、から構成される。図示するように、スロート部14は、ホーン部15に連結する他方端が矩形開口14sを有する。矩形開口14sは、幅が約5.0mmであり、その高さh1は、約46.6mmである。スロート部14の断面形状は、円形開口14cから矩形開口14sに至るにつれて連続的に変化し、円形開口14cの中心点と矩形開口14sを規定する中心点が一致せずに、矩形開口14sが一方向に寄るようにオフセットされている。本実施例では、スピーカー12の磁気回路部分と、ホーン部15のスロート連結部16とが干渉しないようにして、スロート部14の矩形開口14をホーン部15のスロート連結部16に出現させる。
【0039】
ホーン部15は、スロート部14の矩形開口14sが取り付けられるスロート連結部16と、矩形開口14sを焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面17と、スロート連結部16ならびに反射曲面17を狭持するように略平行に配置される第1平面部18および第2平面部19と、を備えている。その結果、スロート連結部16および反射曲面17と、第1平面部18および第2平面部19と、が、反射曲面17を含むホーン部15の音道を規定する。また、スリット開口15sは、スロート連結部16ならびに反射曲面17と、第1平面部18および第2平面部19と、により規定される音道の出口であり、第1平面部18および第2平面部19に挟まれる細長い開口になる。本実施例では、スリット開口15sの幅は約200.0mmであり、その高さh2は、約50.0mmである。したがって、スリット開口15sの高さh2は、スロート部14の矩形開口14sの高さh1と略等しい高さを有する。なお、正面方向から見ると、スロート連結部16の外側には、連結するスロート部14およびスピーカー12が露出する。
【0040】
ホーン部15を構成する反射曲面17は、スロート連結部16を介して取り付けられるスロート部14の矩形開口14sを焦点の位置とする放物線断面を有しているので、図5に示すように、スリット開口15sから放射される音波が聴取点P0の方向に進行し、その結果、本実施例のホーンスピーカー1は、狭指向性を実現することができる。なお、ホーン部15の奥行きは、約102.0mmである。本実施例のホーン部15は、先の実施例のホーン部5に比較してスリット開口15sの面積が小さくなるものの、約20°傾けた反射曲面17を構成することで、ホーン部15の奥行きを大きくすること無く広い反射曲面17を構成することができ、聴取点P0の方向で音声再生レベルが高い狭指向性を実現することができる。
【0041】
スロート部14は、ホーン部15と連結する他方端にスリット開口15sの高さh2と略等しい高さh1を有する矩形開口14sを有しているので、スロート部14の円形開口4cに相当する円形開口を設ける場合に比較して、高さ方向の寸法が一致することにより音響インピーダンスの変化がより少なくなる。その結果、音波の反射が少なくなり、ホーン部15の音道の内部で波面の乱れが少ない音波が進行しやすくなる。したがって、本発明のスピーカー用ホーン13を用いるホーンスピーカー11は、小型であっても任意の方向に高い音声再生レベルを実現する狭指向性を示す。本実施例の場合には、ホーン部15の寸法に比べて音波の波長が相対的に短くなる1.7kHz以上において、狭指向性が実現される。
【0042】
また、先の実施例と同様に、ホーン部15を構成する第1平面部18および第2平面部19は、ホーン1部5の音道内部での定在波の発生を抑制するように、平行ではなく交叉する角度が約5°になる関係であり、音道の奥側からスリット開口5s側に至るにつれて開くように対峙している。したがって、反射曲面17の高さh3は、スリット開口15sの高さh2を上限として変化する。
【0043】
ただし、本実施例では、ホーン部15のスロート連結部16が、第1平面部18、第2平面部19および反射曲面17と、ともにスリット開口15sを規定する第3平面部20と、第3平面部20に略直交しスロート部14の矩形開口14sが設けられる第4平面部21と、を備える。また、第5平面部22は、第3平面部20に対して略平行に設けられ、放物線断面の頂部において反射曲面17と連結する。その結果、この第4平面部21ならびに矩形開口14sは、第3平面部20により遮られて、その奥側でスリット開口15sから直接視されない位置に配置されている。
【0044】
これらのスロート連結部16を構成する第3平面部20と、第4平面部21と、第5平面部22の表面には、反射曲面17の反射率よりも低い反射率の吸音部材23が備えられている。具体的には、本実施例の吸音部材23は、約1.7kHz以上で吸音率が高くなる厚さ約1.0mmのフェルトであり、あるいは、発泡ウレタンや、グラスウール等の吸音性に優れる吸音材であればよい。また、吸音部材23に代えて、スロート連結部16付近の音導部分に吸音材を詰め込んでもよい。
【0045】
このようなスピーカー用ホーン13にすることで、本実施例のホーンスピーカー11は、狭指向性を得るべき周波数帯域において、スロート部14の矩形開口14sから放射される直接音が、スリット開口15sから放射されなくなり、強い狭指向性を実現することができる。すなわち、本実施例の場合には、スロート連結部16を、上記の第3平面部20と、第4平面部21と、第5平面部22から構成するようにしたので、スロート部14の矩形開口14sが、反射曲面17の放物線断面の頂部に向いている。その結果、矩形開口14sから放射される直接音が、スリット開口15sから放射されにくくなる。また、ホーン部15の音道を規定するスロート連結部16が、吸音部材23を備えて強い反射波を生じないので、再生周波数特性上に出現しやすいピーク・ディップを抑制することができる。
【0046】
図7は、本実施例のスピーカー用ホーン13を備えるホーンスピーカー11において、聴取点P0の方向である正面(0°方向)音圧レベルを基準にして各指向角度θの方向の聴取点Pxでの音圧レベルのレベル差を表す周波数特性である。つまり、図7(a)は、図5における指向角度θが−30°の場合と、−50°の場合と、を表すグラフであり、図7(b)は、図5における指向角度θが+30°の場合と、+60°の場合と、+90°の場合と、を表すグラフである。
【0047】
ホーンスピーカー11では、正面方向の聴取点P0において高い音声再生レベルで再生が可能な狭指向性を実現することができる。つまり、図7のグラフに示すように、指向角度θの絶対値が大きくなる方向の聴取点Pxにおいて、中高音域の周波数帯域の音声再生レベルが、聴取点P0の方向である正面(0°方向)音圧レベルを基準にして、次第に低下する。具体的には、約2.8kHz〜20kHzの平均レベルが、正面(0°方向)音圧レベルを基準にして、指向角度θが−30°の場合に約−9.4dB、指向角度θが−50°の場合に約−14.4dB、指向角度θが+30°の場合に約−10.7dB、指向角度θが+60°の場合に約−18.9dB、指向角度θが+90°の場合に約−22.4dB、それぞれ低下する。すなわち、ホーンスピーカー11は、小型であっても、任意の方向に高い音声再生レベルで再生する狭指向性を実現することができる。
【0048】
なお、本実施例のスピーカー用ホーン13では、先の実施例のスピーカー用ホーン13の場合と同様に、音道を形成する第1平面部18および第2平面部19の内側面を反射率の高い面としているが、このような場合に限られない。反射曲面17を除いて、スピーカー用ホーン13の音道を形成する第1平面部18および第2平面部19の内側面に、上記のいずれかの吸音部材23をさらに備えてもよい。ピーク・ディップを抑制して、さらに滑らかな音圧周波数特性を実現できる。
より高い音声再生レベルを実現しながらも、ピーク・ディップを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスピーカー用ホーンは、ホーンスピーカーのみならず、音波を音声信号に変換するマイクロホンにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーン3を用いたホーンスピーカー1を説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるホーンスピーカー1の断面図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態によるホーンスピーカー1を構成するスピーカー2およびスロート部4を説明する部分拡大図である。(実施例1)
【図4】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーン13を用いたホーンスピーカー11を説明する図である。(実施例2)
【図5】本発明の他の好ましい実施形態によるホーンスピーカー11の断面図である。(実施例2)
【図6】本発明の他の好ましい実施形態によるホーンスピーカー11を構成するスピーカー12およびスロート部14を説明する部分拡大図である。(実施例2)
【図7】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ホーン13を備えるホーンスピーカー11において、正面音圧レベルを基準にして各指向角度θの方向での音圧レベルのレベル差を表す周波数特性である。(実施例2)
【符号の説明】
【0051】
1、11 ホーンスピーカー
2、12 スピーカー
3、13 ホーン
4、14 スロート部
5、15 ホーン部
6、16 スロート連結部
7、17 反射曲面
8、18 第1平面部
9、19 第2平面部
20 第3平面部
21 第4平面部
22 第5平面部
23 吸音部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカー振動板の前面側に一方端が連結するスロート部と、該スロート部の他方端に連結するホーン部と、を備えるスピーカー用ホーンであって、
該スロート部が、該ホーン部と連結する該他方端に矩形開口を有し、
該ホーン部が、該スロート部の該矩形開口が出現するスロート連結部と、該矩形開口を焦点の位置とする放物線断面を有する反射曲面と、該スロート連結部ならびに該反射曲面を狭持するように配置される第1平面部および第2平面部と、を備え、該第1平面部および該第2平面部により規定されるスリット開口が、該スロート部の該矩形開口の高さh1と略等しい高さh2を有する、
スピーカー用ホーン。
【請求項2】
前記ホーン部の前記スロート連結部が、前記第1平面部、前記第2平面部、および、前記反射曲面とともに前記スリット開口を規定する第3平面部と、該第3平面部に略直交し前記スロート部の前記矩形開口が設けられる第4平面部と、を備え、
該第4平面部ならびに該矩形開口が、該第3平面部により遮られて、その奥側で該スリット開口から直接視されない位置に配置されている、
請求項1に記載のスピーカー用ホーン。
【請求項3】
前記ホーン部の前記スロート連結部が、前記第4平面部と前記反射曲面とを連結する第5平面部をさらに備え、該第5平面部が、前記第3平面部に対して略平行に設けられ、前記放物線断面の頂部において該反射曲面と連結している、
請求項2に記載のスピーカー用ホーン。
【請求項4】
前記ホーン部の前記スロート連結部を構成する前記第3平面部と、前記第4平面部と、前記第5平面部と、が、前記反射曲面の反射率よりも低い反射率の吸音部材をさらに有する、
請求項2または3に記載のスピーカー用ホーン。
【請求項5】
前記スロート部の前記一方端が、前記スピーカー振動板に対応する円形開口である、
請求項1から4のいずれかに記載のスピーカー用ホーン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のスピーカー用ホーンと、前記スピーカー振動板を有するスピーカーと、を備えるホーンスピーカー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−136248(P2010−136248A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312031(P2008−312031)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】