説明

スペクトラム分析装置のバンド切り換えスイッチ

【課題】
アイソレーションを向上させて周波数特性の乱れを防止したバンド切り換えスイッチ11を提供することにより、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度の向上させる。
【解決手段】
スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより高い周波数では、低域スイッチ部52を第2の出力端子52cに切り換えて所定周波数fcより高い周波数成分を低域終端器53で終端するように制御するスイッチ制御部23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム分析装置のバンド切り換えスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトラム分析装置は、スペクトラムアナライザとも呼ばれ、入力された被測定信号Xの周波数成分を分析する装置である。近年では、ほぼ直流から数十GHzまでの広帯域にわたって連続して分析を行うスペクトラム分析装置が知られている。
【0003】
ほぼ直流から数十GHzまで周波数分析を行うにあたり、スペクトラム分析装置内部に構成された1つのデバイスで全ての周波数をカバーできるものではなく、分析する周波数によって使用可能なデバイスはまちまちである。
【0004】
スペクトラム分析装置内部において、たとえば同調周波数を可変できる中心周波数可変バンドパスフィルタを実現するためのデバイスとして、YIG(Yttrium Iron Garnet)を用いたYTF(YIG Tuned Filter)が挙げられる。
【0005】
このYTFの同調周波数は、例として4GHzから50GHzまでといった範囲に限定されている。このため、ほぼ直流から4GHz以下の周波数の分析を行うときのデバイスとしてYTFを用いるのではなく、4GHz近傍を遮断周波数としたローパスフィルタを用いている。すなわち、ほぼ直流から4GHzまでと、4GHzから50GHzまでといったバンド分けを行っている。
【0006】
このように、所定周波数fcより低いバンドと、所定周波数fcより高いバンドとにバンド分けを行っているが、そのためにはスペクトラム分析装置内部では所定周波数fcを境にして入力された被測定信号Xをバンド切り換えスイッチ11を用いて、それぞれのバンド毎に用意されたデバイスが使用できるように被測定信号Xの経路を切り換える必要がある。たとえば下記特許文献1の図2に開示されるスペクトラムアナライザのスイッチや、下記特許文献2の図1に開示される分波回路が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−12974号公報
【特許文献2】特開2005−210607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、それぞれのバンド毎に用意されたデバイスが使用できるよう、被測定信号Xの経路を切り換えるために、一般に図7に示すようなバンド切り換えスイッチ11が用いられている。バンド切り換えスイッチ11は、直流からたとえば数十GHzまでに対応し、オンになった経路に対しては高周波損失が小さく、またオフになった経路に対しては被測定信号Xを遮断すべく高周波信号の漏れを小さくしてアイソレーションを確保する構成とされている。
【0009】
しかしながら、このバンド切り換えスイッチ11はアイソレーションが不十分な場合があり、所定周波数fcより低いバンドをオンの経路としているときに、オフとなっているfcより高いバンドの経路に所定周波数fcより低いバンドの被測定信号Xが漏れることがあった。
【0010】
同様に、所定周波数fcより高いバンドをオンの経路としているときに、オフとなっている所定周波数fcより低いバンドの経路に所定周波数fcより高いバンドの被測定信号Xが漏れることがあった。
【0011】
また、それぞれのバンド毎に用意されたデバイスが使用できるよう、被測定信号Xの経路を切り換えるために、図8に示すようにローパスフィルタ51とハイパスフィルタ55を用いて、それぞれのフィルタの遮断周波数が重複しないように構成することで、所定周波数fc近傍を境としてバンド切り換えスイッチ11と等価な動作をさせる手法も考えられている。
【0012】
しかしながら、スペクトラム分析装置100では、それぞれのフィルタの遮断周波数が所定周波数fc近傍で重複しないように構成すると、所定周波数fc近傍では被測定信号Xがローパスフィルタ51とハイパスフィルタ55の双方を通過しにくい周波数帯が生じ、その周波数帯ではスペクトラム分析が低感度にしか行えず、ダイナミックレンジの狭いスペクトラム分析装置100となってしまう。
【0013】
そこで、所定周波数fc近傍の被測定信号Xの減衰を抑え、所定周波数fc近傍のスペクトラム分析を高感度に行えるように、所定周波数fc近傍において図8のローパスフィルタ51とハイパスフィルタ55の通過帯域がオーバラップするようにすることも考えられる。すなわち、図5に示す周波数特性のように、ローパスフィルタ51の遮断周波数flは、バンドを切り換える所定周波数fcより高い周波数とし、ハイパスフィルタ55の遮断周波数fhは、所定周波数fcより低い周波数として、ローパスフィルタ51とハイパスフィルタ55の通過帯域がオーバラップするようにしている。
【0014】
しかしながら、所定周波数fc近傍では被測定信号Xがローパスフィルタ51とハイパスフィルタ55の双方のフィルタを通過するので、バンド切り換えスイッチ11の低域出力端子54および高域出力端子58の両方に所定周波数fc近傍の被測定信号Xが出力されてしまう。つまり、所定周波数fcより低いバンドの経路には、所定周波数fc近傍の被測定信号Xが漏れ出し、また所定周波数fcより高いバンドの経路には、所定周波数近傍fcの被測定信号Xが漏れ出すことになる。すなわち、所定周波数fc近傍においてはバンド切り換えスイッチ11として不十分なアイソレーションとなってしまう。
【0015】
バンド切り換えスイッチ11の後段に存在する所定周波数fcより低いバンドの経路には、所定周波数fcより低いバンドにのみ対応したデバイス、たとえば低域用ローパスフィルタ12が接続されている。このため、所定周波数fcより低いバンドの経路に漏れた所定周波数fcより高いバンドの被測定信号Xは低域用ローパスフィルタ12で反射されてバンド切り換えスイッチ11に戻り、再度バンド切り換えスイッチ11から反射されて低域用ローパスフィルタ12に向かうことを繰り返すとともに、バンド切り換えスイッチ11の不十分なアイソレーションにより所定周波数fcより高いバンドの経路に混入し、所定周波数fcより高いバンドの周波数特性に乱れを生じさせる。
【0016】
また、バンド切り換えスイッチ11の後段に存在する所定周波数fcより高いバンドの経路には、所定周波数fcより高いバンドにのみ対応したデバイス、たとえば高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14、具体的にはYTFが接続されている。このため、所定周波数fcより高いバンドの経路に漏れた所定周波数fcより低いバンドの被測定信号XはYTFで反射されてバンド切り換えスイッチ11に戻り、再度バンド切り換えスイッチ11から反射されてYTFに向かうことを繰り返すとともに、バンド切り換えスイッチの不十分なアイソレーションにより所定周波数fcより低いバンドの経路に混入し、所定周波数fcより低いバンドの周波数特性に乱れを生じさせる。
【0017】
このように、この所定周波数fcより低いバンドの周波数特性の乱れ、所定周波数fcより高いバンドの周波数特性の乱れは、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を低下させる問題があり、解決が望まれていた。
【0018】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、アイソレーションを向上させて周波数特性の乱れを防止したバンド切り換えスイッチ11を提供することにより、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度の向上を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のスペクトラム分析装置(100)は、被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
前記ハイパスフィルタの後段に接続される高域出力端子(58)と、
前記入力端子の後段に前記ハイパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
低域共通端子(52a)、第1の出力端子(52b)および第2の出力端子(52c)を有し、前記ローパスフィルタから前記低域共通端子に入力される信号を前記第1の出力端子または前記第2の出力端子のいずれかに出力する低域スイッチ部(52)と、
前記低域スイッチ部の前記第1の出力端子に接続される低域出力端子(54)と、
前記低域スイッチ部の前記第2の出力端子に接続される低域終端器(53)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より高い周波数では、前記低域スイッチ部を前記第2の出力端子に切り換えて前記所定周波数より高い周波数成分を前記低域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
上記した目的を達成するために、請求項2記載のスペクトラム分析装置(100)は、被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
前記ローパスフィルタの後段に接続される低域出力端子(54)と、
前記入力端子の後段に前記ローパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
高域共通端子(56a)、第3の出力端子(56b)および第4の出力端子(56c)を有し、前記ハイパスフィルタから前記高域共通端子に入力される信号を前記第3の出力端子または前記第4の出力端子のいずれかに出力する高域スイッチ部(56)と、
前記高域スイッチ部の前記第3の出力端子に接続される高域出力端子(58)と、
前記高域スイッチ部の前記第4の出力端子に接続される高域終端器(57)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より低い周波数では、前記高域スイッチ部を前記第4の出力端子に切り換えて前記所定周波数より低い周波数成分を前記高域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたことを特徴とする。
【0021】
上記した目的を達成するために、請求項3記載のスペクトラム分析装置(100)は、被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
低域共通端子(52a)、第1の出力端子(52b)および第2の出力端子(52c)を有し、前記ローパスフィルタから前記低域共通端子に入力される信号を前記第1の出力端子または前記第2の出力端子のいずれかに出力する低域スイッチ部(52)と、
前記低域スイッチ部の前記第1の出力端子に接続される低域出力端子(54)と、
前記低域スイッチ部の前記第2の出力端子に接続される低域終端器(53)と、
前記入力端子の後段に前記ローパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
高域共通端子(56a)、第3の出力端子(56b)および第4の出力端子(56c)を有し、前記ハイパスフィルタから前記高域共通端子に入力される信号を前記第3の出力端子または前記第4の出力端子のいずれかに出力する高域スイッチ部(56)と、
前記高域スイッチ部の前記第3の出力端子に接続される高域出力端子(58)と、
前記高域スイッチ部の前記第4の出力端子に接続される高域終端器(57)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より高い周波数では、前記低域スイッチ部を前記第2の出力端子に切り換えて前記所定周波数より高い周波数成分を前記低域終端器で終端し、かつ前記所定周波数より低い周波数では、前記高域スイッチ部を前記第4の出力端子に切り換えて前記所定周波数より低い周波数成分を前記高域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより低いバンドの経路に所定周波数fcより高いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを低減することが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより高いバンドの経路に所定周波数fcより低いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを低減することが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより低いバンドの経路に所定周波数fcより高いバンドの信号が漏れることを防止でき、かつ所定周波数fcより高いバンドの経路に所定周波数fcより低いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを極小とすることが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るバンド切り換えスイッチの構成例を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係るバンド切り換えスイッチを適用したスペクトラム分析装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係るバンド切り換えスイッチの別の構成例を示す概略ブロック図である。
【図4】本発明に係るバンド切り換えスイッチのさらなる別の構成例を示す概略ブロック図である。
【図5】本発明に係るバンド切り換えスイッチのローパスフィルタとハイパスフィルタの周波数特性例を示す図である。
【図6】本発明に係るスペクトラム分析装置の表示画面例を示す図である。
【図7】従来のバンド切り換えスイッチの構成例を示す概略ブロック図である。
【図8】従来のバンド切り換えスイッチの別の構成例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0027】
(第1の実施形態)
まず、本発明に係るバンド切り換えスイッチ11を用いたスペクトラム分析装置100の構成について、図1、図2、図3および図4を参照しながら説明する。
【0028】
図2に示すように、本例のスペクトラム分析装置100は、可変減衰器10、バンド切り換えスイッチ11、低域用ローパスフィルタ12、低域用周波数変換部13、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14、高域用周波数変換部15、中間周波数用スイッチ16、A/D変換部17、信号処理部18、表示制御部19、表示部20、操作部21、制御部22、スイッチ制御部23を備えている。
【0029】
操作部21は、表示部20の表示画面上における装置駆動に必要な設定項目の設定をするために、たとえばキーボード、ボタン、マウス、タッチパネル等の入力デバイスで構成される。操作部21では、たとえば下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW:Resolution Band Width)、可変減衰器10の減衰量を示す可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータを操作、入力可能としている。操作部21からたとえば可変減衰器減衰量85が入力されると、制御部22は可変減衰器10が操作部21から入力された減衰量になるよう、可変減衰器10に対して制御信号を出力している。
【0030】
スペクトラム分析装置100には、被測定信号Xが被測定信号入力端子Cから入力される。被測定信号入力端子Cの後段には、可変減衰器10が接続されている。
【0031】
可変減衰器10は、被測定信号Xを任意の減衰量で減衰させる。可変減衰器10は、被測定信号Xの過大なレベルにより後段にある低域用周波数変換部13、高域用周波数変換部15で歪みが生じてスペクトラム分析のダイナミックレンジが低下することを防ぐために設けられている。
【0032】
可変減衰器10の減衰量は、可変減衰器減衰量85として、表示部20に表示される。なお、可変減衰器10は、減衰量ゼロの設定も可能である。可変減衰器10の後段には、バンド切り換えスイッチ11が接続されている。
【0033】
バンド切り換えスイッチ11は、被測定信号Xに対し、予め定められた所定周波数fcより低いバンド(以下、低域とも称する)と、予め定められた所定周波数fcより高いバンド(以下、高域とも称する)の経路を切り換えるために備えられている。
【0034】
ここで、予め定められた所定周波数fcとは、バンド分けの境目となる周波数であり、スペクトラム分析装置100の設計時に決定される。高域に用いる高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14の実現手段となるYTFの同調周波数は、たとえば4GHzから50GHzまでといった範囲に限定されているので、これに対応して低域に用いる低域用ローパスフィルタ12の遮断周波数はたとえば4GHz近傍とする。このように、低域と高域のそれぞれに使用可能なデバイスの仕様などを考慮して、予め定められた所定周波数fcをたとえば4.0GHzとして設計する。
【0035】
図1、図3および図4に示すように、本発明のバンド切り換えスイッチ11は、切り換え対象である被測定信号Xが入力される入力端子49、予め定められた所定周波数fcよりも低い周波数成分を出力するための低域出力端子54、予め定められた所定周波数fcよりも高い周波数成分を出力するための高域出力端子58、ローパスフィルタ51、ハイパスフィルタ55を含んでいる。入力端子49の後段には、ローパスフィルタ51と、ハイパスフィルタ55とが分岐点50を介して並列に接続されている。
【0036】
さらに、バンド切り換えスイッチ11は、低域スイッチ部52と低域終端器53との組合せ、高域スイッチ部56と高域終端器57との組合せの少なくともいずれかを含んでいる。
【0037】
ローパスフィルタ51およびハイパスフィルタ55は、高周波特性に優れたキャパシタ、インダクタ、抵抗といった素子を用い、それぞれのフィルタは所望の遮断周波数fl、fhとなるように、公知のフィルタ技術によりキャパシタ、インダクタ、抵抗の値および回路が構成されている。特に数GHzから数十GHzといった高い周波数では、低損失を実現し、また製造時のバラツキを低減させるために、プリントパターンや薄膜にてキャパシタ、インダクタ、抵抗を実現している。
【0038】
ここで、図5に示すようにローパスフィルタ51の周波数特性は予め定められた所定周波数fcよりも高い周波数が遮断周波数flになるように構成され、ハイパスフィルタ55の周波数特性は予め定められた所定周波数fcよりも低い周波数が遮断周波数fhとなるように構成されている。
【0039】
具体的には、バンド分けの境目となる周波数、すなわち予め定められた所定周波数fcをたとえば4.0GHzとしたとき、ローパスフィルタ51の遮断周波数flをたとえば4.2GHzと設計し、ハイパスフィルタ55の遮断周波数fhをたとえば3.8GHzと設計し、これらの遮断周波数fl、遮断周波数fhになるようにキャパシタ、インダクタ、抵抗といった素子の値を決定する。
【0040】
ここで、4.0GHzよりやや高い周波数の被測定信号X、たとえば4.3GHzの信号は、ローパスフィルタ51を少しの減衰量で通過できるため、4.0GHzより低いバンドをオンの経路としているときにもローパスフィルタ51の出力側には4.3GHzの信号が出力されている。
【0041】
仮に、ローパスフィルタ51の出力側が低域出力端子54に直接接続されていた場合、低域出力端子54の後段には4.0GHz以下の周波数にのみ対応した低域用ローパスフィルタ12が接続されているので、4.3GHzの信号に対して反射が生じてバンド切り換えスイッチ11の低域出力端子54に戻り、再度ローパスフィルタ51の出力端から反射されて低域用ローパスフィルタ12に向かうことを繰り返して、4.0GHzより高いバンドの経路に混入し、4.0GHzより高いバンドの周波数特性に乱れを生じさせる。
【0042】
そこで、本発明では4.0GHzより高いバンドをオンの経路としているときには、低域スイッチ部52を第2の出力端子52cに切り換えて、ローパスフィルタ51の出力側に生じた4.0GHzより高い周波数成分を低域終端器53で終端するようにしている。その結果、オフとなっている4.0GHzより低いバンドの経路に4.0GHzより高いバンドの信号が漏れることを阻止している。
【0043】
低域スイッチ部52は、低域共通端子52a、第1の出力端子52b、第2の出力端子52cからなる。また、高域スイッチ部56は、高域共通端子56a、第3の出力端子56b、第4の出力端子56cからなる。
【0044】
低域スイッチ部52および高域スイッチ部56は、オンになった経路に対して被測定信号Xを伝達するスイッチであり、直流からたとえば数十GHzまでに対応した機械的に接点を断続させてオンオフするスイッチ構造や、ダイオードなどの半導体素子をバイアス回路によってオンオフするスイッチ構造により構成される。オンになった経路に対しては高周波損失が小さく、またオフになった経路に対しては被測定信号Xを遮断すべく高周波信号の漏れを小さくしてアイソレーションを確保する構成とされている。なお、低域スイッチ部52および高域スイッチ部56は、スイッチ制御部23からの制御により、オンオフ動作を行っている。
【0045】
低域終端器53および高域終端器57は、たとえば無誘導抵抗などの高周波特性に優れた公知の抵抗素子を用いており、そのインピーダンスはバンド切り換えスイッチ11が使用される線路のインピーダンスと同じとされ、たとえば50Ωである。
【0046】
スイッチ制御部23は、たとえばCPUやROM、RAM等のマイクロコンピュータで構成され、予め定められた所定周波数fcを境に、バンド切り換えスイッチ11の入力端子49に入力された被測定信号Xを後段の低域用ローパスフィルタ12または高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14のいずれかに切り換えている。なお、スイッチ制御部23は制御部22に包含させた構成とされていてもよい。
【0047】
具体的には、操作部21から設定された下限周波数80(Start)と、上限周波数81(Stop)との掃引区間を掃引するが、掃引する際に予め定められた所定周波数fcを跨ぐときにバンド切り換えスイッチ11を切り換えている。
【0048】
低域用ローパスフィルタ12は、バンド切り換えスイッチ11の低域出力端子54の後段に接続されている。予め定められた所定周波数fcをたとえば4.0GHzまでと設計している場合、4.0GHzより高い周波数の高周波信号を減衰させることにより、後段の低域用周波数変換部13でのイメージ妨害の防止を図っている。
【0049】
低域用周波数変換部13は、低域用ローパスフィルタ12の後段に接続されている。低域用周波数変換部13は、低域用ローパスフィルタ12を通過した信号と、図示しない局部発振器からの信号とを図示しない混合器によって混合し、所望の低域用中間周波数へと変換する。
【0050】
高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14は、バンド切り換えスイッチ11の高域出力端子58の後段に接続されている。予め定められた所定周波数fcをたとえば4.0GHzまでと設計している場合、4.0GHzより低い周波数の高周波信号と、4.0GHzより高い周波数の高周波信号であっても選択された中心周波数以外の高周波信号を減衰させることにより、後段の高域用周波数変換部15での後段でのイメージ妨害の防止を図っている。
【0051】
高域用周波数変換部15は、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14の後段に接続されている。高域用周波数変換部15は、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14を通過した信号と、図示しない局部発振器からの信号とを図示しない混合器によって混合し、所望の高域用中間周波数へと変換する。
【0052】
中間周波数用スイッチ16は、低域用周波数変換部13および高域用周波数変換部15の後段に接続されている。中間周波数用スイッチ16は、低域用周波数変換部13によって所望の低域用中間周波数へと変換された低域用中間周波数信号と、高域用周波数変換部15によって所望の高域用中間周波数へと変換された高域用中間周波数信号のいずれかを、後段のA/D変換部17に入力するために切り換えている。この切り換えは、予め定められた所定周波数fcにて行われるようになっている。すなわち、バンド切り換えスイッチ11を切り換えるタイミングと同じタイミングで切り換えを行う。
【0053】
A/D変換部17は、中間周波数用スイッチ16から入力された低域用中間周波数信号または高域用中間周波数信号のアナログ信号に対し、後段の信号処理部18でデジタル信号処理が行えるようにアナログ信号からデジタル信号への変換を行う。
【0054】
信号処理部18は、A/D変換部17から入力されたデジタル信号に対し、スペクトラム分析を行うために検波処理、平均化処理、対数増幅処理などを行う。
【0055】
表示制御部19における表示制御例としては、表示部20に表示するための任意に設定された下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータ、入力された被測定信号Xのスペクトラム分析結果の波形82の表示、スペクトラム分析結果に対して任意の周波数におけるレベルを表示するマーカ84、図示しない任意の選択された周波数範囲における電力の表示などの表示制御がある。
【0056】
表示部20は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示機器で構成され、表示制御部19の制御に基づく表示内容を表示している。表示部20に表示される表示内容としては、たとえば図6に示すように下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータ、入力された被測定信号Xのスペクトラム分析結果の波形82の表示を行う。
【0057】
制御部22は、たとえばCPUやROM、RAM等のマイクロコンピュータで構成され、操作部21から下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータが入力されると、入力されたパラメータに基づいて制御対象と値を解析し、スペクトラム分析装置100を構成する各部の駆動制御を行っている。また、スペクトラム分析に必要なパラメータに合わせて低域用周波数変換部13および高域用周波数変換部15のそれぞれの局部発振器の発振周波数の制御、A/D変換部17、信号処理部18、表示制御部19の制御を行っている。
【0058】
次に、上述したスペクトラム分析装置100における動作の一例、特に低域スイッチ部52の動作について図1および図2を参照しながら説明する。なお、スペクトラム分析に必要なパラメータの設定、表示を行う際に用いる画面の表示構成としては、図6に示す表示例とする。
【0059】
ユーザは、スペクトラム分析装置100において、操作部21を用いて下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータを操作、入力する。
【0060】
操作部21からは、分析する下限周波数80(Start)としてたとえば1.0GHz、上限周波数81(Stop)としてたとえば6.0GHzを入力する。これにより、被測定信号Xに対して1.0GHzから6.0GHzまでの掃引区間の周波数範囲でスペクトラム分析を行う設定となる。制御部22は、この下限周波数80(Start)と、上限周波数81(Stop)とを図示しない記憶部に記憶する。
【0061】
また、操作部21からは、分解能帯域幅83(RBW)をたとえば10kHzと入力する。これにより、スペクトラム分析をする際の分解能が10kHzとなる。なお、分解能帯域幅83(RBW)は、たとえば1Hzから数十MHzまでの値を任意に設定可能である。一般的に、分解能帯域幅83(RBW)を狭くすれば狭い間隔で隣接した周波数成分を分離して分析できるが測定時間が長くなる傾向があり、分析したい被測定信号Xの性質や分析目的によって分解能帯域幅83(RBW)を適切に設定する。制御部22は、この分解能帯域幅83(RBW)を図示しない記憶部に記憶する。
【0062】
少なくとも下限周波数80(Start)と、上限周波数81(Stop)と、分解能帯域幅83(RBW)とが設定されると、スペクトラム分析装置100は被測定信号Xの分析を開始する。本例では制御部22からの掃引開始の信号に基づいて、設定された下限周波数80(Start)の1.0GHzから上限周波数81(Stop)の6.0GHzまでの掃引区間を掃引する。
【0063】
ここで、予め定められた所定周波数fc、すなわちバンド分けの境目となる周波数は4.0GHzとして設計したものとして説明する。この場合、制御部22は図示しない記憶部に記憶された1.0GHzから6.0GHzまでの掃引区間を、1.0GHzから4.0GHzまでの周波数と、4.0GHzから6.0GHzまでの周波数に分割して制御するように構成されている。
【0064】
1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、制御部22はスイッチ制御部23に対して4.0GHzより低い周波数を掃引している旨の信号を出力する。また、4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、制御部22はスイッチ制御部23に対して4.0GHzより高い周波数を掃引している旨の信号を出力する。
【0065】
スイッチ制御部23は、制御部22からの1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の低域スイッチ部52に対し、第1の出力端子52bに切り換えて4.0GHzより低い周波数成分を低域出力端子54に出力するように制御する。これにより、ローパスフィルタ51を通過した4.0GHzより低い周波数成分は、そのまま低域出力端子54に出力される。
【0066】
また、スイッチ制御部23は、制御部22からの4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の低域スイッチ部52に対し、第2の出力端子52cに切り換えて4.0GHzより高い周波数成分を低域終端器53で終端するように制御する。これにより、ローパスフィルタ51を通過した4.0GHzより高い周波数成分は低域終端器53で終端され、低域出力端子54に出力されることはない。対して、ハイパスフィルタ55を通過した4.0GHzより高い周波数成分は、そのまま高域出力端子58に出力される。
【0067】
そして、1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、バンド切り換えスイッチ11を経由した被測定信号Xは低域用ローパスフィルタ12に入力され、たとえば4.0GHzより高い周波数の高周波信号を減衰させてから、低域用周波数変換部13に入力する。
【0068】
低域用周波数変換部13は、低域用ローパスフィルタ12を通過した信号と、低域用周波数変換部13に含まれる図示しない局部発振器からの信号とを図示しない混合器によって混合し、所望の低域用中間周波数へと変換する。
【0069】
ここで、局部発振器の発振周波数は可変可能であり、低域用ローパスフィルタ12を通過した信号が予め定められた中間周波数に変換されるよう、制御部22からの制御信号によって発振周波数を可変して掃引を実現している。たとえば、中間周波数が500MHzの場合、低域用ローパスフィルタ12を通過した信号、すなわち被測定信号Xの周波数が1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、局部発振器の発振周波数は1.5GHzから4.5GHzの間を発振し、低域用ローパスフィルタ12を通過した信号と局部発振器の発振周波数の差分の信号が常に中間周波数500MHzとなるようにしている。
【0070】
また、4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、バンド切り換えスイッチ11を経由した被測定信号Xは高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14に入力され、たとえば中心周波数5.0GHz以外の高周波信号(掃引している中心周波数以外の高周波信号)を減衰させて、高域用周波数変換部15に入力する。
【0071】
高域用周波数変換部15は、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14を通過した信号と、高域用周波数変換部15に含まれる図示しない局部発振器からの信号とを図示しない混合器によって混合し、所望の高域用中間周波数へと変換する。
【0072】
ここで、局部発振器の発振周波数は可変可能であり、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14を通過した信号が予め定められた中間周波数に変換されるよう、制御部22からの制御信号によって発振周波数を可変して掃引を実現している。たとえば、中間周波数が1.0GHzの場合、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14を通過した信号、すなわち被測定信号Xの周波数が4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引しているときには、局部発振器の発振周波数は3.0GHzから5.0GHzの間を発振し、高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ14を通過した信号と局部発振器の発振周波数の差分の信号が常に中間周波数1.0GHzとなるようにしている。
【0073】
なお、スペクトラム分析装置100の構成によっては、低域用中間周波数と、高域用中間周波数とが同一周波数になるように局部発振器の周波数を適宜構成してもよい。
【0074】
中間周波数用スイッチ16は、低域用周波数変換部13および高域用周波数変換部15の後段に接続されている。中間周波数用スイッチ16は、低域用周波数変換部13によって500MHzに変換された低域用中間周波数信号と、高域用周波数変換部15によって1.0GHzに変換された高域用中間周波数信号のいずれかを、後段のA/D変換部17に入力するために切り換えている。この切り換えは、バンド分けの境目となる所定周波数fcで行っており、本例では4.0GHzで切り換えを行っている。なお、中間周波数用スイッチ16で切り換える低域用中間周波数はたとえば500MHz、高域用中間周波数はたとえば1.0GHzとしたが、この程度の低い周波数であれば従来のスイッチ構造であってもアイソレーションが十分に確保できる。
【0075】
A/D変換部17は、中間周波数用スイッチ16から入力された低域用中間周波数信号または高域用中間周波数信号のアナログ信号に対し、後段の信号処理部18でデジタル信号処理が行えるようにアナログ信号からデジタル信号への変換を行う。具体的には、中間周波数信号に対して十分に高いサンプリング周波数にてサンプリングして公知の標本化を行い、入力されたアナログの中間周波数信号を公知の量子化、符号化を行ってデジタル信号に変換する。
【0076】
信号処理部18は、A/D変換部17から入力されたデジタル信号に対し、スペクトラム分析を行うために検波処理、平均化処理、対数増幅処理などを行う。検波処理は、たとえば包絡線検波処理、必要に応じてポジティブピーク、ネガティブピークの検波処理などである。平均化処理は、指定された掃引区間において複数回掃引された検波結果に対して平均を求める。対数増幅処理は、幅広いダイナミックレンジの信号を対数圧縮して表示するために、検波された信号のレベルに対して、対数表示するために対数増幅を行っている。そして、検波処理、平均化処理、対数増幅処理などの結果を表示するために表示制御部19に処理結果を出力する。
【0077】
表示制御部19は、信号処理部18から出力された検波処理、平均化処理、対数増幅処理などの結果を、入力された被測定信号Xのスペクトラム分析結果の波形82となるように、たとえば縦軸をレベル、横軸を周波数として波形描画する処理を行って表示部20に表示する。その他に、下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要なパラメータ、スペクトラム分析結果の波形82に対して任意の周波数におけるレベルを表示するマーカ84、選択された任意の周波数範囲における電力の表示などの表示制御を行う。
【0078】
このように、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより低いバンドの経路に所定周波数fcより高いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを低減することが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、上述したスペクトラム分析装置100における動作の別の一例、特に高域スイッチ部56の動作について図3を参照しながら説明する。
【0080】
ここで、スペクトラム分析装置100における下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要な動作および制御部22の動作は、低域スイッチ部52の説明と同様であるので、記載を省略する。
【0081】
高域スイッチ部56に固有の動作を説明する。スイッチ制御部23は、制御部22からの1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の高域スイッチ部56に対し、第4の出力端子56cに切り換えて4.0GHzより低い周波数成分を高域終端器57で終端するように制御する。これにより、ハイパスフィルタ55を通過した4.0GHzより低い周波数成分は高域終端器57で終端され、高域出力端子58に出力されることはない。対して、ローパスフィルタ51を通過した4.0GHzより低い周波数成分は、そのまま低域出力端子54に出力される。
【0082】
また、スイッチ制御部23は、制御部22からの4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の高域スイッチ部56に対し、第3の出力端子56bに切り換えて4.0GHzより高い周波数成分を高域出力端子58に出力するように制御する。これにより、ハイパスフィルタ55を通過した4.0GHzより高い周波数成分は、そのまま高域出力端子58に出力される。
【0083】
このように、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより高いバンドの経路に所定周波数fcより低いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを低減することが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【0084】
(第3の実施形態)
次に、上述したスペクトラム分析装置100における動作の別の一例、低域スイッチ部52および高域スイッチ部56を併用した動作について図4を参照しながら説明する。
【0085】
ここで、スペクトラム分析装置100における下限周波数80(Start)、上限周波数81(Stop)、分解能帯域幅83(RBW)、可変減衰器減衰量85などのスペクトラム分析に必要な動作および制御部22の動作は、低域スイッチ部52および高域スイッチ部56の説明と同様であるので、記載を省略する。
【0086】
低域スイッチ部52と高域スイッチ部56を併用したときの固有の動作を説明する。スイッチ制御部23は、制御部22からの1.0GHzから4.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の低域スイッチ部52に対し、第1の出力端子52bに切り換えて4.0GHzより低い周波数成分を低域出力端子54に出力するように制御する。これにより、ローパスフィルタ51を通過した4.0GHzより低い周波数成分は、そのまま低域出力端子54に出力される。
【0087】
同時に、スイッチ制御部23は、バンド切り換えスイッチ11の高域スイッチ部56に対し、第4の出力端子56cに切り換えて4.0GHzより低い周波数成分を高域終端器57で終端するように制御する。これにより、ハイパスフィルタ55を通過した4.0GHzより低い周波数成分は高域終端器57で終端され、高域出力端子58に出力されることはない。
【0088】
また、スイッチ制御部23は、制御部22からの4.0GHzから6.0GHzまでの周波数を掃引している旨の信号を受けると、バンド切り換えスイッチ11の低域スイッチ部52に対し、第2の出力端子52cに切り換えて4.0GHzより高い周波数成分を低域終端器53で終端するように制御する。これにより、ローパスフィルタ51を通過した4.0GHzより高い周波数成分は低域終端器53で終端され、低域出力端子54に出力されることはない。
【0089】
同時に、スイッチ制御部23は、バンド切り換えスイッチ11の高域スイッチ部56に対し、第3の出力端子56bに切り換えて4.0GHzより高い周波数成分を高域出力端子58に出力するように制御する。これにより、ハイパスフィルタ55を通過した4.0GHzより高い周波数成分は、そのまま高域出力端子58に出力される。
【0090】
このように、スペクトラム分析装置100の周波数を掃引しているときに、所定周波数fcより低いバンドの経路に所定周波数fcより高いバンドの信号が漏れることを防止でき、かつ所定周波数fcより高いバンドの経路に所定周波数fcより低いバンドの信号が漏れることを防止しているので、周波数特性の乱れを極小とすることが可能となり、スペクトラム分析装置100のレベル測定確度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0091】
10…可変減衰器
11…バンド切り換えスイッチ
12…低域用ローパスフィルタ
13…低域用周波数変換部
14…高域用中心周波数可変バンドパスフィルタ
15…高域用周波数変換部
16…中間周波数用スイッチ
17…A/D変換部
18…信号処理部
19…表示制御部
20…表示部
21…操作部
22…制御部
23…スイッチ制御部
49…入力端子
50…分岐点
51…ローパスフィルタ
52低域スイッチ部
52a…低域共通端子
52b…第1の出力端子
52c…第2の出力端子
53…低域終端器
54…低域出力端子
55…ハイパスフィルタ
56…高域スイッチ部
56a…高域共通端子
56b…第3の出力端子
56c…第4の出力端子
57…高域終端器
58…高域出力端子
80…下限周波数
81…上限周波数
82…分析結果波形
83…分解能帯域幅(RBW)
84…マーカ
85…可変減衰器減衰量
100…スペクトラム分析装置
X…被測定信号
C…被測定信号入力端子
fc…バンド切り換え周波数(所定周波数)
fl…ローパスフィルタの遮断周波数
fh…ハイパスフィルタの遮断周波数


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
前記ハイパスフィルタの後段に接続される高域出力端子(58)と、
前記入力端子の後段に前記ハイパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
低域共通端子(52a)、第1の出力端子(52b)および第2の出力端子(52c)を有し、前記ローパスフィルタから前記低域共通端子に入力される信号を前記第1の出力端子または前記第2の出力端子のいずれかに出力する低域スイッチ部(52)と、
前記低域スイッチ部の前記第1の出力端子に接続される低域出力端子(54)と、
前記低域スイッチ部の前記第2の出力端子に接続される低域終端器(53)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より高い周波数では、前記低域スイッチ部を前記第2の出力端子に切り換えて前記所定周波数より高い周波数成分を前記低域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたスペクトラム分析装置。
【請求項2】
被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
前記ローパスフィルタの後段に接続される低域出力端子(54)と、
前記入力端子の後段に前記ローパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
高域共通端子(56a)、第3の出力端子(56b)および第4の出力端子(56c)を有し、前記ハイパスフィルタから前記高域共通端子に入力される信号を前記第3の出力端子または前記第4の出力端子のいずれかに出力する高域スイッチ部(56)と、
前記高域スイッチ部の前記第3の出力端子に接続される高域出力端子(58)と、
前記高域スイッチ部の前記第4の出力端子に接続される高域終端器(57)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より低い周波数では、前記高域スイッチ部を前記第4の出力端子に切り換えて前記所定周波数より低い周波数成分を前記高域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたスペクトラム分析装置。
【請求項3】
被測定信号Xを予め定められた所定周波数で低域と高域に切り換えを行うバンド切り換えスイッチ(11)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記低域の前記被測定信号の周波数を低域用中間周波数に変換する低域用周波数変換部(13)と、
前記バンド切り換えスイッチで切り換えられた前記高域の前記被測定信号の周波数を高域用中間周波数に変換する高域用周波数変換部(15)とを備え、
前記低域用中間周波数と前記高域用中間周波数に変換された前記被測定信号のスペクトラムを分析するスペクトラム分析装置(100)であって、
前記バンド切り換えスイッチは、前記スペクトラム分析装置の前記被測定信号を入力する入力端子(49)と、
前記入力端子の後段に接続され、前記所定周波数よりも高い周波数を遮断周波数としたローパスフィルタ(51)と、
低域共通端子(52a)、第1の出力端子(52b)および第2の出力端子(52c)を有し、前記ローパスフィルタから前記低域共通端子に入力される信号を前記第1の出力端子または前記第2の出力端子のいずれかに出力する低域スイッチ部(52)と、
前記低域スイッチ部の前記第1の出力端子に接続される低域出力端子(54)と、
前記低域スイッチ部の前記第2の出力端子に接続される低域終端器(53)と、
前記入力端子の後段に前記ローパスフィルタと並列に接続され、前記所定周波数よりも低い周波数を遮断周波数としたハイパスフィルタ(55)と、
高域共通端子(56a)、第3の出力端子(56b)および第4の出力端子(56c)を有し、前記ハイパスフィルタから前記高域共通端子に入力される信号を前記第3の出力端子または前記第4の出力端子のいずれかに出力する高域スイッチ部(56)と、
前記高域スイッチ部の前記第3の出力端子に接続される高域出力端子(58)と、
前記高域スイッチ部の前記第4の出力端子に接続される高域終端器(57)とから構成され、
前記スペクトラム分析装置の周波数を掃引しているときに、前記所定周波数より高い周波数では、前記低域スイッチ部を前記第2の出力端子に切り換えて前記所定周波数より高い周波数成分を前記低域終端器で終端し、かつ前記所定周波数より低い周波数では、前記高域スイッチ部を前記第4の出力端子に切り換えて前記所定周波数より低い周波数成分を前記高域終端器で終端するように制御するスイッチ制御部(23)とをさらに備えたスペクトラム分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96841(P2013−96841A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239941(P2011−239941)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)