スポットサイズ変換器、半導体光素子、及びそれらの製造方法
【課題】光遷移領域において伝搬損失が抑制される構造とすることにより、変換特性が向上されるスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、ことを特徴とする。
【解決手段】下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子を備えるレーザモジュールに、例えば、光ファイバが接続される。その場合、レーザモジュールが出射するレーザ光を、効率的に光ファイバに結合することが重要である。半導体レーザ素子の出射面において光導波路での光閉じ込めが強い場合、レーザ光の遠視野像(Far Field Pattern:以下、FFPと記す)が広がってしまい、光ファイバとの結合効率が低減してしまう。また、光導波路での光閉じ込めが、縦方向と横方向のうち、一方が強く、他方が弱い場合は、それに応じて、FFPが、一方の方向に広く他方の方向に狭い楕円形状となり、円形の断面形状を有する光ファイバとの結合効率は低下する。それゆえ、光導波路での光閉じ込めが適度に緩和されるとともに、縦方向と横方向とが近い強度で光閉じ込めされることにより、FFPが適度に狭くかつ円形に近い形状に調整するのが望ましい。
【0003】
光導波路での光閉じ込めを緩和し、半導体レーザ素子のFFPを調整するために、スポットサイズ変換器が用いられる。例えば、非特許文献1及び非特許文献2に、メサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器を備える半導体レーザ素子が開示されている。図12は、従来技術に係るメサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。図の背面がレーザ光の入射面であり、図の前面がレーザ光の出射面である。半導体レーザ素子が埋込型構造(Buried Hetero-Structure:以下、BH構造と記す)を有する場合に、半導体レーザ素子の出射側にスポットサイズ変換器を備え、スポットサイズ変換器は、コア層112を含むメサストライプ構造のメサ幅がレーザ光の出射方向に沿って小さくなるテーパー構造を有している。メサストライプ構造の両側が埋込層で埋め込まれるBH構造となっていることにより、かかる形状のコア層112の周縁がクラッド層111に囲われる。コア層112に閉じ込められていた光は、メサ幅が小さくなるのに伴って、周りのクラッド層111に染み出すので、導波路を伝搬する光のモードフィールドが縦方向にも横方向にも広がり、FFPを縦方向にも横方向にも狭くすることができる。
【0004】
また、非特許文献2に、膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器を備える半導体レーザ素子が開示されている。図13は、従来技術に係る膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。図12と同様に、図の前面がレーザ光の出射面であり、コア層112の周縁がクラッド層111に囲われている。図13に示すスポットサイズ変換器は、コア層112の層厚がレーザ光の出射方向に沿って徐々に小さくなるテーパー構造を有している。コア層112に閉じ込められていた光が、層厚が小さくなる(層が薄くなる)のに伴って、周りのクラッド層111に染み出すために、図12に示すスポットサイズ変換器と同様に、光のモードフィールドが広がり、FFPを狭くすることが出来る。
【0005】
さらに、例えば、特許文献1及び非特許文献2に、上部コア層と下部コア層の2層のコア層から形成されるデュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器が開示されている。上部コア層の屈折率は下部コア層の屈折率より高く、上部コア層のメサ幅は、図12に示すコア層112と同様に、レーザ光の出射方向に沿って小さくなる。これに対して、下部コア層のメサ幅はレーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。スポットサイズ変換器の入射側では、光の閉じ込めは、屈折率が大きい上部コア層において強く、上部コア層のメサ幅が小さくなるのに伴って、光が上部コア層から下部コア層に遷移する。下部コア層の屈折率は上部コア層の屈折率により低いことから、下部コア層に遷移した光の閉じ込めは弱くなり、スポットサイズ変換器の出射側では、光のモードフィールドは広がり、FFPを狭くすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−102651号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Electronics Letters,vol.30,No.11,857−859頁,1994年
【非特許文献2】Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,vol. 3,No. 6,1308−1320頁, 1997年
【非特許文献3】Optical Fiber Communication Conference 2011、OWD7,2011年3月
【非特許文献4】IEEE Photonics Technology Letters,vol.5,No. 7,735−738頁,1993年
【非特許文献5】Journal of Quantum Electronics、vol. 43,No. 9,798−803頁,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器及び膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器において、スポットサイズ変換器の出射面での光のモードフィールドは、コア層112の形状やコア層112の先端からレーザ光の出射面までの距離などに依存するので、それらを高精度に制御する必要がある。とくに、膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の製造工程において、コア層112の結晶成長時に誘電体マスクを用いた選択成長効果を利用する場合、マスク形状や成長条件の制御は困難である。これに対して、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器では、出射面での光のモードフィールドは下部コア層の屈折率やメサ幅、膜厚に主に依存するので、レーザ光のスポットサイズの制御性の観点では、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器が望ましい。
【0009】
一般に、スポットサイズ変換器を配置する際に生じるスポットサイズ変換器の挿入損失は、モードフィールドが変換される際の遷移損失と、導波路伝搬時に発生する伝搬損失とに分類できる。デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器において、上部コア層から下部コア層に光が遷移する領域を光遷移領域として、光遷移領域の長さをLとすると、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器の光遷移領域における伝搬損失[dB]は、−10Log{exp(−αL)}(数式1とする)で表される。ここで、α[cm−1]は単位長さあたりの損失である。
【0010】
数式1に示す通り、Lが減少するのに伴い、伝搬損失は減少するので、Lは出来る限り小さくするのが、伝搬損失を低減する観点からは望ましい。しかし、光遷移領域の長さLを小さくする(光遷移領域を短くする)と、上部コア層から下部コア層へのモード変換が急峻となり、遷移損失が増加する。遷移損失を低減するためには、モード変換が緩やかであるのが望ましい。すなわち、光遷移領域において、出射方向に沿って上部コア層のメサ幅がゆっくりと小さくなり下部コア層のメサ幅がゆっくりと大きくなるのが望ましい。モード変換が緩やかであれば遷移損失は無視できるほどに小さい。よって、遷移損失を軽減する観点からは、光遷移領域の長さLは大きくする(光遷移領域を長くする)のが望ましく、光遷移領域の長さLを小さくするのには限界がある。
【0011】
それゆえ、光遷移領域の所定の長さLにおいて、スポットサイズ変換器の挿入損失を低減するためには、数式1に示す通り、単位長さあたりの損失αを低減させて伝搬損失を低減させる必要がある。スポットサイズ変換器の素子長を低減する技術について、特許文献1に開示されているが、単位長さあたりの損失αを低減させる技術については開示も示唆もされていない。
【0012】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光遷移領域において伝搬損失が抑制される構造とすることにより、変換特性が向上されるスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るスポットサイズ変換器は、下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、ことを特徴とする。
【0014】
(2)上記(1)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含み、さらに、前記光遷移領域において前記半絶縁性半導体層の上側にp型の第2の半導体クラッド層が形成されてもよい。
【0015】
(3)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低くてもよい。
【0016】
(4)上記(3)に記載の半導体光素子であって、前記スポットサイズ変換器の前記光遷移領域における前記多層構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面と、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面とは、等しい高さとなっていてもよい。
【0017】
(5)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、前記上部コア層に接する活性層を含むメサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層の上側に積層される半導体層の層厚が、前記半導体レーザ素子の前記活性層の上側に積層される半導体層の層厚より大きくてもよい。
【0018】
(6)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、電流によって光導波路の屈折率を変化させて選択する波長が制御される波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積されてもよい。
【0019】
(7)上記(6)に記載の半導体光素子であって、前記波長選択フィルタは、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層と、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層との間に生じる光の遷移により、光の波長を選択してもよい。
【0020】
(8)上記(7)に記載の半導体光素子であって、前記波長選択フィルタの選択波長帯域より狭い選択波長帯域を有する第2の波長選択フィルタと、光を発光する利得部と、光の位相を調整する位相調整部とが、前記半導体基板上にモノリシックにさらに集積されてもよい。
【0021】
(9)上記(2)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記n型半導体基板、前記半絶縁性半導体層、前記第1の半導体クラッド層、及び前記第2の半導体クラッド層は、InP系材料によって形成されてもよい。
【0022】
(10)上記(9)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記第1の半導体クラッド層には、亜鉛がドーパントとして添加され、前記半絶縁性半導体層には、ルテニウムがドーパントとして添加されてもよい。
【0023】
(11)本発明に係るスポットサイズ変換器の製造方法は、下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器の製造方法であって、前記上部コア層の形状に対応する上部メサマスクを前記下部コア層と前記上部コア層を含む多層の上面に形成する上部メサマスク形成工程を含むとともに、前記上部コア層及び前記下部コア層を所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程と、前記上部メサマスクの、少なくとも前記光遷移領域に対応する部分を除去する、上部メサマスク除去工程と、前記多層を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記光遷移領域において、前記多層の両側に加えて上側に前記半絶縁性半導体層が形成される、埋め込み工程と、を含んでいてもよい。
【0024】
(12)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含むとともに、前記埋め込み工程の後に、p型の第2の半導体クラッド層を積層する、クラッド層形成工程を、さらに含んでいてもよい。
【0025】
(13)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記デュアルメサ形成工程は、前記上部マスクと異なる材料からなる下部メサマスクを前記上部メサマスクの上側に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、前記下部メサマスクを除去する、下部メサマスク除去工程と、前記上部メサマスクをマスクとして前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去するとともに、前記第1エッチング工程で前記所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0026】
(14)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記デュアルメサ形成工程は、下部メサマスクを前記多層の上面に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、前記上部メサマスクをマスクとして、前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、をさらに含み、前記上部メサマスク形成工程において、前記下部メサマスクの一部を除去することにより、前記上部メサマスクにしてもよい。
【0027】
(15)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(12)に記載のスポットサイズ変換器と、メサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記埋め込み工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記メサストライプ構造の両側に前記半絶縁性半導体層が形成され、前記クラッド層形成工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造の上側に前記p型の第2の半導体クラッド層を積層してもよい。
【0028】
(16)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(13)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層より低く、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程におけるエッチングで行ってもよい。
【0029】
(17)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(14)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低く、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程におけるエッチングで行い、前記第2のメサストライプ構造の上側に配置される部分を前記第2のメサストライプ構造の上面まで除去する工程を、前記第2エッチング工程におけるエッチングで行ってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、光遷移領域において伝搬損失が抑制される構造とすることにより、変換特性が向上されるスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の構造を示す模式上面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図2D】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式上面図である。
【図3B】本発明の第2の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【図4A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式上面図である。
【図4B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子のLGLCフィルタ部の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7C】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7D】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7E】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8C】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8D】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8E】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の形態に係る集積半導体レーザ素子の特性を示す図である。
【図10A】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図10B】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図11A】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図11B】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図12】従来技術に係るメサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【図13】従来技術に係る膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る実施形態について、以下に、詳細な説明をする。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。なお、以下に示す図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1の構造を示す模式図である。当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1は、図1に示す通り、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器であり、スポットサイズ変換器1は、上部コア層12と下部コア層13を含む複数層が積層される多層構造を有している。詳細については後述する通り、2層のコア層の周縁がクラッド層11に囲われている。また、スポットサイズ変換器1において、図の背面側よりレーザ光が上部コア層12に入射し、上部コア層12を伝搬する光が下部コア層13に遷移し、スポットサイズ変換器1は、図の前面側より、スポットサイズが変換されたレーザ光を出射する。すなわち、図1に示す背面が入射端面51であり、前面が出射端面52である。光遷移領域において、多層構造は、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造からなるデュアルメサ構造となっており、上部コア層12を含む上部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って小さくなっている。これに対して、下部コア層13を含む下部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。上部コア層12の屈折率は、下部コア層13の屈折率より大きい。
【0034】
図2Aは、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の構造を示す模式上面図である。図2Aには、スポットサイズ変換器1を上方から見たときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12との平面的な重なりが模式的に表されている。便宜上、スポットサイズ変換器1の上方から見て、右から順に、入射光伝搬領域、光遷移領域、出射光伝搬領域とする。
【0035】
図2Aに示す通り、入射端面51から出射端面52へレーザ光の出射方向に沿って、上部コア層12は、等幅で延伸し、途中から、幅は徐々に小さくなりながら延伸し、出射端面52の近傍で消滅している。ここで、光遷移領域とは、上方から見て平面的に、上部コア層12の幅が細くなり始める箇所から消滅する箇所までの領域である。入射光伝搬領域は、入射端面51から上部コア層12の幅が細くなり始める箇所まで、出射光伝搬領域は、上部コア層12の先端から出射端面52まで、である。図2Aには、光遷移領域の長さがLとして表されている。一方、下部コア層13は、入射端面51から出射端面52へレーザ光の出射方向に沿って、入射光伝搬領域において、上部コア層12とほぼ等しい幅であってかつ等幅で延伸し、光遷移領域の始まりから幅が徐々に大きくなりながら延伸し、出射光伝搬領域においては、等しい幅で延伸し、出射端面52に至っている。
【0036】
図2B乃至図2Dは、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の断面図である。図2Bには、図2Aに示すIIB−IIB線の断面が、図2Cには、図2Aに示すIIC−IIC線の断面が、図2Dには、図2Aに示すIID−IID線の断面が、それぞれ示されている。図2Dに示す断面は、スポットサイズ変換器1の入射端面51でのメサ断面図に等しく、スポットサイズ変換器1が有する多層構造の基本多層となっており、BH構造となっている。
【0037】
図2Dに示す通り、入射光伝搬領域において、n型InP基板21上に、n型の下部コア層13、n型のInPエッチング停止層22、i型の上部コア層12、p型のInP第1クラッド層23(複数層)が、この順に積層されている。上部に位置するInP第1クラッド層23から、上部コア層12、InPエッチング停止層22、下部コア層13と、n型InP基板21の一部に亘って、メサストライプ構造が形成されている。下部コア層13の屈折率はInPの屈折率よりも高く、上部コア層12の屈折率よりも低い。よって、n型InP基板21は2層のコア層に対してクラッド層として機能している。さらに、下部コア層13の層厚は上部コア層12の層厚よりも小さい。よって、当該メサストライプ構造において、上部コア層12における光の閉じ込めは、下部コア層13における光の閉じ込めよりも強く、入射端面51より入射した光が伝搬する主となる光導波路は上部コア層12となる。例えば、2層のコア層にInGaAsPを用いた場合は、上部コア層12の組成波長を下部コア層13の組成波長よりも長波長側となるように、各コア層を形成すればよい。なお、ここでは、上部コア層12は意図的にドーパントが添加されていないi型としているが、スポットサイズ変換器としてはこれに限定されることはなく、n型であってもよい。
【0038】
上部コア層12と下部コア層13とを含む当該メサストライプ構造の両側が、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれている。上部コア層12の屈折率及び下部コア層13の屈折率はともに、半絶縁性InP埋め込み層24の屈折率より高く、半絶縁性InP埋め込み層24は2層のコア層に対してクラッド層として機能している。半絶縁性InP埋め込み層24の上面は、メサストライプ構造の最上層から外側に斜面となって広がっており、さらに外側において平面となっている。そして、メサストライプ構造の最上層と半絶縁性InP埋め込み層24の上面とを覆って、p型のInP第2クラッド層25が形成されている。よって、上部コア層12と下部コア層13の周りには、図1に示す通り、クラッド層11が形成されている。
【0039】
図2Cに示す通り、光遷移領域において、上部コア層12と下部コア層13とを含む多層構造は、図2Dに示すメサストライプ構造とは異なる構造となっており、当該多層構造は、光遷移領域において、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造からなるデュアルメサ構造である。ここで、上部メサストライプ構造は、InP第1クラッド層23から、上部コア層12、InPエッチング停止層22の一部までであり、下部メサストライプ構造は、InPエッチング停止層22の残りの部分から、下部コア層13、n型InP基板21の一部までである。光遷移領域において、レーザ光の出射方向に沿って、上部コア層12を含む上部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って小さくなっている。これに対して、下部コア層13を含む下部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。かかる構造を、デュアルメサテーパー構造と呼ぶが、デュアルメサテーパー構造では、レーザ光の出射方向に沿って伝搬する光に対して、上部コア層12における光の閉じ込めが徐々に弱くなる。その結果、上部コア層12から下部コア層13に光が遷移し、下部コア層13に閉じ込められる光の割合が徐々に大きくなる。
【0040】
当該多層構造の両側が、図2Dと同様に、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれているが、図2Dとは異なり、さらに、当該多層構造の上側にも半絶縁性InP埋め込み層24が形成されている。すなわち、光遷移領域において、当該多層構造の両側と上側が、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれている。そして、半絶縁性InP埋め込み層24の上面を覆って、p型のInP第2クラッド層25が形成されている。よって、上部コア層12の上側には、InP第1クラッド層23、半絶縁性InP埋め込み層24、InP第2クラッド層25が順に積層されている。
【0041】
図2Bに示す通り、出射光伝搬領域において、n型InP基板21上に、多層構造は、前述の下部メサストライプ構造のみとなっており、上部コア層12は配置されていない。光遷移領域において、光が上部コア層12から下部コア層13に遷移しており、出射光伝搬領域における主たる光導波路は、下部コア層13となっている。ここで、前述の通り、下部コア層13の屈折率は上部コア層12の屈折率より小さく、下部コア層13の層厚は上部コア層12の層厚より小さい。それゆえ、出射光伝搬領域の下部コア層13における光の閉じ込めは、入射光伝搬領域の上部コア層12における光閉じ込めよりも弱く、クラッド層11への光の縦方向及び横方向への染み出しはともに大きくなっている。それゆえ、出射端面52におけるモードフィールドは、縦方向及び横方向へともに広がっている。それゆえ、スポットサイズ変換器1より出射するレーザ光のFFPを狭くすることが出来る。
【0042】
前述の通り、伝搬損失を軽減する観点からは、光遷移領域の長さLを小さくするのが望ましいが、遷移損失を抑制するために所定の長さが必要であり、長さLを小さくするのには制限がある。光遷移領域の所定の長さLであるとき、スポットサイズ変換器1の挿入損失を軽減するために、数式1に示す通り、スポットサイズ変換器1が単位長さあたりの損失αを低減させる構造を有しているのが望ましい。スポットサイズ変換器1に入射するレーザ光の波長が1.55μmであるとき、スポットサイズ変換器1の多層構造にある上部コア層12や下部コア層13を、例えば、組成波長が1.4μm以下のInGaAsPで形成すると、1.55μmの光の吸収は小さく、上部コア層12及び下部コア層13はほぼ透明であると言ってもよい。例えば、上部コア層12の組成波長を1.4μmとし、下部コア層13の組成波長を1.2μm〜1.3μmとすればよい。かかる場合には、単位長さあたりの損失αは、コア層の周りに配置されるp型InP層での価電子帯吸収(Inter Valence Band Absorption:以下、IVBAと記す)によって決まる。それゆえ、光遷移領域において、上部コア層12及び下部コア層13を含む複数層が積層される多層構造の両側のみならず上側に、半絶縁性InP埋め込み層24を配置することにより、半絶縁性InP埋め込み層24のさらに上側に形成されるp型のInP第2クラッド層25を遠ざけることが出来ており、p型のInP第2クラッド層25において発生するIVBAを抑制することが出来ている。
【0043】
当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の光遷移領域において、上部コア層12及び下部コア層13の近傍には、下側にn型InP基板21が、両側と上方には、半絶縁性InP埋め込み層24が配置されており、p型InP層は、上部コア層12の上側に配置されるp型のInP第1クラッド層23のみである。なお、半絶縁性InP埋め込み層24の半絶縁性InPやn型InP基板21のn型InPは、吸収損失が無視出来るほどに小さい。さらに、p型のInP第1クラッド層23の層厚は小さいので、上部コア層12及び下部コア層13の近傍に、吸収損失となるp型InP層の配置が抑制されている。
【0044】
また、同様に、出射光遷移領域においても、下部コア層13の近傍には、下側にn型InP基板21が、上側にInPエッチング停止層22が、両側と上方に、半絶縁性InP埋め込み層24がそれぞれ配置されており、吸収損失となるp型InP層が配置されておらず、吸収損失が抑制されている。
【0045】
後述する通り、スポットサイズ変換器を、半導体変調器や半導体波長可変フィルタなどの光機能素子、又は半導体レーザ素子と、同一の半導体基板上にモノリシックに集積する素子を作製する場合など、他の製造工程により、多層構造に積層される複数層にp型の半導体層を積層することがある。かかる場合などにより、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器の上部コア層の上側に、p型の半導体層を配置される場合であっても、スポットサイズ変換器における挿入損失が低減される。
【0046】
半導体光素子がInP系材料によって形成される場合、半絶縁性半導体埋め込み層には、Fe(鉄)をドーパントとして添加したFeドープInPがよく用いられている。しかしながら、FeドープInPは、p型InP層のドーパントとして用いられるZn(亜鉛)と相互拡散が大きいため、p型InP層から半絶縁性InP埋め込み層へZnが拡散するので、Znが拡散した半絶縁性InP層においても光の吸収損失が発生してしまう。それゆえ、半絶縁性半導体層のドーパントとして、Znとの相互拡散が抑制されているRu(ルテニウム)を用いるのが、吸収損失抑制の観点から望ましい。半絶縁性半導体埋め込み層として、Ruがドーパントとして添加されるRuドープInPを用いる場合、p型InPとの接触面においても、Znの拡散が著しく低減されるので、絶縁性半導体埋め込み層における光の吸収損失は抑制される。p型InPのドーパントがZnと異なる材料である場合は、半絶縁性InPのドーパントとして、当該ドーパントとの相互拡散が小さい材料を選択すればよい。
【0047】
なお、光遷移領域における伝搬損失をさらに低減するために、p型のInP第1クラッド層23を除去すればよいが、さらにそのための工程が必要となる。当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1においては、製造工程において積層されるp型のInP第1クラッド層23を残すことによって、製造工程を増大させることなく、光遷移領域における伝搬損失を低減することが出来ている。また、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1において、半導体はInP系材料を用いているが、他の半導体材料を用いて作製されてもよいことは言うまでもない。
【0048】
次に、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の主な製造工程について説明する。最初に、n型InP基板21に、例えば分子線エピタキシャル成長法を用いて、順に、InGaAsPからなる下部コア層13、InPエッチング停止層22、InGaAsPからなる上部コア層12、InP第1クラッド層23、からなる多層を積層する(多層形成工程)。
【0049】
続いて、多層形成工程によって形成した多層を上述の通り、所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程を行う。デュアルメサ形成工程の一例として、まず、多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、下部コア層13の上述の形状に対応するパターンマスク(下部メサマスク)を形成し、これをマスクとして、InP第1クラッド層23、上部コア層12、InPエッチング停止層22、下部コア層13、及びn型InP基板21の一部までエッチングを行うことにより、下部メサストライプ構造の側面を形成する。次に、下部メサマスクを除去し、InP第1クラッド層23の上側に、上部コア層12の上述の形状に対応するパターンマスク(上部メサマスク)を形成(上部メサマスク形成工程)し、これをマスクとして、InP第1クラッド層23、上部コア層12、InPエッチング停止層22の一部までエッチングを行うことにより、上部メサストライプ構造を形成する。
【0050】
デュアルメサ形成工程の後、上部メサマスクのうち、光遷移領域及び出射光伝搬領域に形成される部分を除去し(上部メサマスク除去工程)、多層を半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込む(埋め込み工程)。入射光伝搬領域に形成される上部メサマスクは除去されず、かかる上部メサマスクにより、図2Dに示す通り、多層の両側に半絶縁性InP埋め込み層24が形成され、半絶縁性InP埋め込み層24の上面は、外側に斜面となって広がっており、さらに外側において平面となっている。これに対して、光遷移領域及び出射光伝搬領域に形成される上部メサマスクは除去されているので、図2B及び図2Cに示す通り、多層の両側に加えて上側に半絶縁性InP埋め込み層24が形成される。
【0051】
そして、入射光伝搬領域に残存する上部メサマスクを除去し、さらに、p型のInP第2クラッド層25を積層し(クラッド層形成工程)、スポットサイズ変換器1が作製される。
【0052】
以上、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1について説明した。スポットサイズ変換器1のデュアルメサテーパー構造は、これに限定されることなく、いろいろな形状が考えられる。例えば、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の光遷移領域において、上部コア層12の幅が徐々に小さくなり始める箇所と、下部コア層13の幅が徐々に大きくなり始める箇所は同じであるが、異なっていてもよい。この場合、光遷移領域の入射側の端部は、上部コア層12の幅が徐々に小さくなり始める箇所とする。また、例えば、光遷移領域における光の遷移が十分な場合など、出射光遷移領域の長さは小さくてもよいし、また、出射光遷移領域を設けず、光遷移領域の出射側の端部が、出射端面52であってもよい。この場合、上部コア層12の出射側の先端は出来る限り細くなっているのが望ましく、プロセスの作製限界に設計するのが望ましいが、これに限定されることはない。なお、これらの場合であっても、上部メサマスク除去工程において、上部メサマスクの光遷移領域に対応する部分を除去すればよい。
【0053】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る半導体光素子は、スポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子2である。ここでは、半導体レーザは1.55μm帯のファブリペロー型レーザであり、多重量子井戸層32にはInGaAsP系材料を用いている。
【0054】
図3Aは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の構造を示す模式上面図である。図3Aには、集積半導体レーザ素子2を上方からみたときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12とのスポットサイズ変換器部3における平面的な重なりが模式的に表されている。また、利得部4の上面に形成されるp型電極31が示されているが、さらに、利得部4における光導波路が模式的に表されている。
【0055】
スポットサイズ変換器部3の構造は、第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1と基本的に同じであるが、入射光伝搬領域は、第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1と比べて非常に短くなっているか、又は、設けられていない。
【0056】
図3Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の構造を示す模式断面図である。図3Bには、図3Aの横方向に延びる光導波路の中心を貫く断面が示されている。半導体レーザの利得部4は、井戸層と障壁層がともにInGaAsP系材料を用いて形成される多重量子井戸層32を備えている。利得部4は、n型InP基板21上に、多重量子井戸層32を含むメサストライプ構造が形成され、メサストライプ構造の両側が半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれているBH構造をしている。メサストライプ構造の上側には、p型のInP第2クラッド層25、p型コンタクト層33、さらに、p型電極31が形成され、n型InP基板21の裏面にはn型電極34が形成されている。
【0057】
スポットサイズ変換器部3の上部コア層12も同様にInGaAsP系材料を用いて形成されており、バットジョイント成長により、多重量子井戸層32と上部コア層12は光学的に接続されており、光導波路を形成している。すなわち、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12に接する半導体レーザの利得部4の活性層は、多重量子井戸層32である。なお、上部コア層12及び多重量子井戸層32の上側にはInP第1クラッド層23が形成されているが、InP第1クラッド層23はInP第2クラッド層25と比べて薄いので、図3Bには図示されていない。
【0058】
スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、伝搬する光が上部コア層12から下部コア層13に遷移する際に、光のモードフィールドが広がり、上部コア層12の上側にも光の染み出しが発生する。光のモードフィールドが広がり、利得部4のp型コンタクト層33やp型電極31と接触すると、損失が増大する要因となってしまう。かかる問題は、一般には、半導体レーザの多層構造の上側に配置されるp型クラッド層の層厚を大きくすることにより回避されるが、半導体レーザの素子抵抗が増大し素子特性を劣化させることとなる。
【0059】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2のスポットサイズ変換器部3には、上部コア層12の両側と上方に、半絶縁性InP埋め込み層24が配置されていることにより、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、上部コア層12の上側に積層される半導体層は、InP第1クラッド層23、半絶縁性InP埋め込み層24、InP第2クラッド層25からなる複数の半導体層(クラッド層)であり、これら半導体層の層厚の合計(長さD2)は、半導体レーザの利得部4の活性層である多重量子井戸層32の上側に積層される半導体層(p型クラッド層)の層厚の合計より大きくなっている(厚くなっている)。これにより、半導体レーザの利得部4のp型クラッド層の層厚を増大させることなく、かかる問題を回避することが出来ている。なお、スポットサイズ変換器部3において、入射端面側と出射端面側とでは、InP第2クラッド層25の上面の高さは異なっているが、出射光伝搬領域(出射端面)の下部コア層13の上側に位置する複数の半導体層(クラッド層)の層厚の合計(長さD1)も、光遷移領域の上部コア層12の上側に位置する複数の半導体層(クラッド層)の層厚の合計(長さD2)も、ほぼ同じであり、光のモードフィールドが半導体レーザの利得部4に広がることを抑制している。
【0060】
次に、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の主な製造工程について簡単に説明する。スポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とを、n型InP基板21上に形成するが、同一層上で共通する材料によって作製される層については、同一の工程で積層すればよい。図3Bに示す通り、利得部4の多重量子井戸層32とスポットサイズ変換器部3の上部コア層12は構成が異なっているので、別々に積層される。エッチングについても同様であり、共通の工程でエッチングを行えばよい。
【0061】
さらに、埋め込み工程において、スポットサイズ変換器部3の多層構造とともに、半導体レーザの利得部4のメサストライプ構造を、半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込み、利得部4のメサストライプ構造の両側を半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込み、BH構造とする。そして、クラッド層形成工程において、スポットサイズ変換器部3とともに、利得部4のメサストライプ構造の上側にInP第2クラッド層25を積層する。利得部4の上面にp型コンタクト層33、p型電極31を形成し、n型InP基板21の裏面にn型電極34を形成し、集積半導体レーザ素子2は作製される。
【0062】
以上の通り、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2は、スポットサイズ変換器部3を形成する工程と、半導体レーザの利得部4を形成する工程とのうち、作製プロセスに共通となっている工程が含まれている。作製プロセスを共通とすることにより、工程やそれにかかるコストの増大を抑制しつつ作製することが出来る。また、ホトリソグラフィー工程やエッチング工程などをスポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とで別々に行うプロセスにおいては、位置ずれなどが発生する可能性があるところ、作製プロセスを共通にすることにより、位置ずれの発生なども抑制され、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0063】
なお、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の半導体レーザは、ファブリペロー型のレーザとしたが、他の構造の半導体レーザ、例えば、DFB(Distributed Bragg Grating)レーザやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザなどであってもよい。また、当該実施形態において、半導体光素子は、スポットサイズ変換器と半導体レーザがともに同一基板上に集積される集積半導体レーザ素子2としたが、半導体レーザに限定されることはなく、半導体変調器や半導体波長可変フィルタなどの光機能素子がともに同一基板上に集積されてもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る半導体光素子は、スポットサイズ変換器部3と波長可変レーザ部6とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子5である。波長可変レーザ部6は、LGLC(Lateral Grating assisted Co-directional Coupler)型の波長可変レーザであり、当該波長可変レーザの構造については、非特許文献3に記載されている。
【0065】
図4Aは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の構造を示す模式上面図である。図4Aに示す通り、集積半導体レーザ素子2の波長可変レーザ部6には、光の出射側から順に、DBR部7、光を発生する利得部4、光の位相を調整する位相調整部8、LGLCフィルタ部9が配置されている。集積半導体レーザ素子5の出射側の端面には前方端面膜36が、反対側の端面には後方端面膜37が、それぞれ形成されており、後方端面膜37は反射膜(ミラー)として機能している。図4Aには、集積半導体レーザ素子5を上方からみたときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12とのスポットサイズ変換器部3における平面的な重なりが模式的に表されている。また、波長可変レーザ部6の各部位それぞれの上面に形成されるp型電極31が示されている。さらに、波長可変レーザ部6における光導波路が模式的に表されているが、DBR部7、位相調整部8、及びLGLCフィルタ部9の光導波路は、上部コア層12(第1のコア層)である。LGLCフィルタ部9には、さらにもう1本の光導波路が形成されており、下部コア層13(第2のコア層)である。ここで、前者は高屈折率導波路、後者は低屈折率導波路である。LGLCフィルタ部9において、高屈折率光導波路は、横方向に延伸しているが、後方の端面付近で、屈曲しており、後方端面膜37に及んでいる。これに対して、低屈折率光導波路は、後方の端面より垂直に位相調整部8へ延伸し、境界付近において屈曲し、位相調整部8に及んでいる。
【0066】
図4Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の構造を示す模式断面図である。図4Bには、図4Aの横方向に延びる光導波路(高屈折率光導波路)の中心を貫く断面が示されている。なお、前述の通り、高屈折率光導波路は、後方の端面付近で屈曲しているが、光導波路の中心に沿った断面なので、図4Bの右端にも上部コア層12及び下部コア層13が表されている。
【0067】
図4Bに示す通り、下部コア層13は、集積半導体レーザ素子5の後方の端面から前方の端面に亘って、延伸しており、また、利得部4の光導波路は前述の通り多重量子井戸層32であるが、それ以外の部位においては、後方の端面から位相調整部8に亘って、また、DBR部7からスポットサイズ変換器部3の光遷移領域に亘って、上部コア層12が延伸している。
【0068】
図5は、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のLGLCフィルタ部9の断面図である。図5に示す断面は、図4Aに示すV−V線の断面を図の右側から見た場合を表している。LGLCフィルタ部9では、屈折率が異なる光導波路が平行に並んだ方向性結合器型構造が形成されており、図5の左側に位置する第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)が高屈折率光導波路である。また、図5に示す通り、第1のメサストライプ構造の右側(側方)に並んで、第2のメサストライプ構造が形成されており、第2のメサストライプ構造の下部コア層13(第2のコア層)が低屈折率光導波路である。第1のメサストライプ構造にはさらに下部コア層13を含んでおり、第1のメサストライプ構造は2層のコア層を含んでいる。また、第2のメサストライプ構造の上面の高さは、第1のメサストライプ構造の上部コア層12と下部コア層の間に位置しており、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)の下面より低い。
【0069】
屈折率の高い高屈折率光導波路に光が入射されると、所定の条件を満たす波長の光のみが、屈折率の低い低屈折率光導波路に遷移する。ここで、所定の条件とは、波長がΛ×(nh−hl)(数式2とする)となるときである。なお、Λは高屈折率光導波路の回折格子周期、nhは高屈折率光導波路の有効屈折率、nlは低屈折率光導波路の有効屈折率である。回折格子は高屈折率光導波路の導波路幅を伝搬方向に周期的に変化させることで形成される。高屈折率光導波路に電流を注入し、高屈折率光導波路の実効的な屈折率を変化させることで、遷移する光の波長を制御することが出来、波長選択フィルタとしての透過波長を制御することが出来る。
【0070】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のLGLCフィルタ部9は、高屈折率光導波路を形成する第1のコア層と、低屈折率光導波路を形成する第2のコア層を用いることにより、波長選択フィルタとしている。ここで、LGLCフィルタ部9では高屈折率光導波路と低屈折率光導波路とが横方向に並んで形成されているが、非特許文献4に開示されているように、高屈折率光導波路と低屈折率光導波路とが縦方向に並んで形成されている波長選択フィルタがある。いずれであっても、このように、2層のコア層を用いる半導体素子を、2層のコア層を有するデュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器と、同一基板上にモノリシックに集積される半導体光素子とすることにより、製造工程の増大を抑制しつつ、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0071】
なお、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(高屈折率光導波路)は、図4Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3、DBR部7、利得部4、位相調整部8と、図4Aの横方向に延びる1本の光導波路を形成しており、活性層は、利得部4が多重量子井戸層32で、それ以外の部位が上部コア層12である。さらに、第1のメサストライプ構造から延伸する1本の光導波路は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12に接続され、波長可変レーザ部6が出射するレーザ光がスポットサイズ変換器部3の上部コア層12へ入射される。すなわち、スポットサイズ変換器部3へ入射する光の光軸上に、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)は配置されている。LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造と、スポットサイズ変換器部3の入射端面のメサストライプ構造は同一の構造である。位相調整部8及びDBR部7のメサストライプ構造も、同一の構造である。利得部4のメサストライプ構造も、活性層が多重量子井戸層32でありこの点において異なっているが、それ以外については同一である。よって、LGLCフィルタ部9の上部コア層12及び下部コア層13は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12及び下部コア層13と、同じプロセス工程でそれぞれ形成されるので、それぞれ同じ組成で形成されると言っても良い。また、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12と下部コア層13とを含む複数層と同じ多層を有しており、両部位の上部コア層12は同一層上に形成されていると言っても良い。第1のメサストライプ構造が有する多層は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層と同一層状に同じ組成で形成される上部コア層12(第1のコア層)を含んでいれば、該複数層の一部と重なっているだけでもよい。下部コア層13についても同様である。同様に、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層は、スポットサイズ変換器部3の複数層の一部と同じ多層を有しており、両部位の下部コア層13は同一層上に形成されていると言ってもよい。
【0072】
次に、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の主な製造工程について説明する。図6、図7A乃至図7E、及び、図8A乃至図8Eは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の製造工程の過程を示す断面図である。なお、図7A乃至図7Eは、LGLCフィルタ部9の断面を、図8A乃至図8Eは、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における断面を、それぞれ示している。
【0073】
最初に、n型InP基板21に、順に、下部コア層13、InPエッチング停止層22、上部コア層12、InP第1クラッド層23からなる多層を積層する(多層形成工程)。図6は、多層形成工程後の断面図であり、スポットサイズ変換器部3の断面と、LGLCフィルタ部9の断面とを示している。その際、同一層上で共通する材料によって作製される層については、同一の工程で積層すればよい。図4A及び図4Bに示す通り、InPエッチング停止層22の上側に、スポットサイズ変換器部3、DBR部7、位相調整部8、LGLCフィルタ部9には、上部コア層12が形成され、利得部4には、多重量子井戸層32が形成されており、別々に積層される。
【0074】
続いて、多層形成工程によって形成された多層より、各部位のメサストライプ構造を形成する。ここで、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造を形成する工程が、デュアルメサ形成工程である。当該工程の特徴は、2段階に分けてエッチングを行っている点である。各部位のメサ構造を形成する工程について、以下に説明する。
【0075】
多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、所定の形状のパターンマスクを形成する。ここで、所定の形状とは、2個の島形状からなる。一方の島形状は、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造から、スポットサイズ変換器部3の上部メサストライプ構造に至るまでの、光導波路の形状に対応している。すなわち、図4Aに、上部コア層12として示されている2つの領域と、該領域の間に模式的に示されている光導波路領域(多重量子井戸層32の形状)である。他方の島形状は、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の領域であり、図4Aに、該一方の領域の上側に示されている下部コア層13の形状に対応している。パターンマスクをマスクとしてエッチングを行って上部コア層12が所望の形状となるように、当該所定の形状を決定すればよい。かかるパターンマスクが、図7Aには、第1のメサストライプ構造に対応するマスク41(第1のマスク)と、第2のメサストライプ構造に対応するマスク41(第2のマスク)として、示されている。また、かかるパターンマスクのうち、スポットサイズ変換器部3の領域が図8Aに示す通り上部メサマスク42であり、また、上部メサマスク42を形成する工程が上部メサマスク形成工程である。
【0076】
次に、上部メサマスク42の上側に、上部メサマスク42と異なる材料からなる下部メサマスク43を所定の形状に形成する(下部メサマスク形成工程)。なお、下部メサマスク43が図8Aに示されている。下部メサマスク43の所定の形状とは、スポットサイズ変換器部3の下部メサストライプ構造に対応しており、図4Aのスポットサイズ変換器部3の領域に、上部コア層12として示されている領域及び下部コア層13として示される領域に対応している。
【0077】
続いて、多層に形成されているパターンマスクをマスクとして、所定の深さまで1段階目のエッチングを行う。1段階目のエッチングは例えばドライエッチングである。図7Aに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41(第1のマスク及び第2のマスク)をマスクとして、該マスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する。図8Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、下部メサマスク43をマスクとして、下部メサマスク43の周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する(第1エッチング工程)。なお、図7A及び図8Aに示す通り、所定の深さとは、ここでは、InP第1クラッド層23の一部までの深さである。
【0078】
第1エッチング工程の後、下部メサマスク43を除去する(下部メサマスク除去工程)。ここで、上部メサマスク42と下部メサマスク43は、上述の通り、マスクの材料が異なるので、エッチングレートの選択比が大きいエッチングを行うことにより、上部メサマスク42を残すことが出来る。
【0079】
下部メサマスク除去工程の後、残存しているパターンマスクをマスクとして2段階目のエッチングを行う。ここで、2段階目のエッチングは例えばドライエッチングである。図7Bに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41をマスクとして、該マスクの周縁を、該所定の深さから下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する。かかる工程により、第1のメサストライプ構造が形成される。また、第2のメサストライプ構造については、後の工程で除去する多層上部が、第2のメサストライプ構造の上に配置される構造となっている。図8Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、上部メサマスク42をマスクとして、上部メサマスク42の周縁を多層の上面(InP第1クラッド層23の上面)からInPエッチング停止層22の一部まで、すなわち、上部コア層12と下部コア層13との間まで、エッチングにより除去することにより、上部メサストライプ構造を形成する。また、第1エッチング工程で所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去することにより、下部メサストライプ構造を形成する(第2エッチング工程)。第2エッチング工程では、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における多層構造は、第1エッチング工程で発生した段差を維持して、エッチングを行うので、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造とが当該工程後に完成する。第1エッチング工程における所定の深さは、第2エッチング工程において、上部メサストライプ構造の両側をInPエッチング停止層22の途中までエッチングをして上部メサストライプ構造を形成するときに、下部メサストライプ構造の両側が下部コア層13より低い深さまでエッチングされるよう、決定すればよい。なお、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造がここで完成し、デュアルメサ形成工程が終了する。
【0080】
ここで、スポットサイズ変換器部3とLGLCフィルタ部9とは、共通するプロセスでエッチングを行っており、両部位のメサの深さは同じである。LGLCフィルタ部9において、メサストライプ構造の両側のn型InP基板21の表面の高さと、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造の両側のn型InP基板21の表面の高さは、等しくなっている。図7Bに示す通り、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造の上部コア層12上面のn型InP基板21表面からの高さD3と、図8Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12上面のn型InP基板21表面からの高さD4とは、等しくなっている。同様に、LGLCフィルタ部9の第1メサストライプ構造の両側に埋め込まれる半絶縁性InP埋め込み層24の下面と、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造の両側に埋め込まれる半絶縁性InP埋め込み層24の下面とは、等しい高さとなっている。
【0081】
第2エッチング工程の後、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の上側に残存する多層上部を除去する(メサ上部除去工程)。すなわち、第2のメサストライプ構造に対応して形成されていたマスク41(第2のマスク)を除去し、かかる多層についてエッチングを行い、InPエッチング停止層22の一部まで除去することにより、第2のメサストライプ構造が形成される(図7C)。なお、所定の形状のパターンマスクより、スポットサイズ変換器部3に配置される領域(上部メサマスク42)を除去して(図8C)、各部位のメサ構造を形成する工程が終了する。
【0082】
各部位のメサ構造を形成する工程の後に、各部位のメサ構造を、半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込む(埋め込み工程)。スポットサイズ変換器部3のInP第1クラッド層23の上面にマスクが配置しておらず、図8Dに示す通り、半絶縁性InP埋め込み層24がInP第1クラッド層23の上側にも形成される。これに対して、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造のInP第1クラッド層23の上面にはマスク41(第1のマスク)が配置しているので、図7Dに示す通り、半絶縁性InP埋め込み層24が第1のメサストライプ構造の両側に広がって形成されている。なお、LGLCフィルタ部9の第2のメサとライプ構造のInP第1クラッド層23の上面にはマスクが配置されておらず、スポットサイズ変換器部3と同様に、半絶縁性InP埋め込み層24がInP第1クラッド層23の上側にも形成される。
【0083】
埋め込み工程の後、残存するパターンマスクを除去し、p型のInP第2クラッド層25を積層する(クラッド層形成工程)。図7D及び図8Dは、クラッド層形成工程後の状態を示している。さらに、半導体基板の上面に、p型コンタクト層33とp型電極31を、半導体基板の下面に、n型電極34を形成し(電極形成工程)し、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5が作製される。図7E及び図8Eは、電極形成工程後の状態を示している。
【0084】
以上、当該実施形態に係る製造方法について説明した。当該実施形態に係る製造方法の特徴は、スポットサイズ変換器部3において下部メサマスク43をマスクとして、下部メサマスク43の周縁をエッチングにより除去する第1エッチング工程と、上部メサマスク42をマスクとして、上部メサマスク42の周縁をエッチングにより除去する第2エッチング工程とで、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造(と第2メサストライプ構造の上側に多層上部が配置される構造)を形成しているところにある。前述の通り、作製プロセスに共通の工程を含むことにより、工程やそれにかかるコストの増大を抑制しつつ作製することが出来、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0085】
なお、波長可変レーザ部6の出射側に配置されるDBR部7の活性層である上部コア層12と、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12とが、同一プロセスで形成されるので、端面における位置ずれなどが生じておらず、素子としての特性が向上している。
【0086】
次に、当該実施形態の製造方法で作製された集積半導体レーザ素子5の特性について説明する。ここで、スポットサイズ変換器部3の入射端面での上部コア層12及び下部コア層13のメサ幅を1μmとし、図4Aの出射側に配置される出射光伝搬領域を設けず、光遷移領域のみとした。スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、上部コア層12のメサ幅を、入射端面における1μmから出射方向に沿って徐々に小さくし、出射端面において0.2〜0.5μmのいずれかまで小さくしている。一方、下部コア層13のメサ幅を入射端面における1μmから出射方向に沿って徐々に大きくし、出射端面において1.8μm〜4μmのいずれかまで大きくしている。なお、スポットサイズ変換器部3の全長(光遷移領域の長さL)を100μmとしている。
【0087】
図9は、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の特性を示す図である。図9に、上部コア層12の出射端面におけるメサ幅をd[μm]、下部コア層13の出射端面におけるメサ幅を1.8μmとして、上部コア層12の異なるd[μm]に対するFFP[°]が示されている。VFFPは、半導体基板に垂直な方向(縦方向:積層方向)のFFPであり、HFFPは、半導体基板に平行な方向(横方向)のFFPである。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のVFFPの計算値を実線で、HFFPの計算値を破線で示すとともに、VFFPの実測値をシンボル◇で、HFFPの実測値をシンボル□で示している。また、比較例として、スポットサイズ変換器部を備えていない集積半導体LGLCレーザ素子について、VFFPの実測値をシンボル◆で、HFFPの実測値をシンボル■で示している。
【0088】
図9に示す通り、スポットサイズ変換器を備えていない集積半導体LGLCレーザ素子では、FFPが縦方向に60°、横方向に50°と大きい値となっているのに対して、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5は、20°程度にまで狭小化することができている。さらに、FFPの実測値が計算値とほぼ一致していることから、当該実施形態に係る製造方法によって、所望の特性を有する集積半導体レーザ素子5の作製が可能であることがわかる。
【0089】
一般に、光通信の伝送容量は年々増大の傾向にあり、これに対応して高速かつ大容量の伝送技術として波長分割多重(WDM)システムが実用化され始めている。WDMはITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)によって標準化された波長間隔(たとえば、波長間隔0.8nmもしくは0.4nm)の波長信号光を多重して1本の光ファイバ内に同時に伝送するシステムであり、ファイバ1本あたりの伝送容量を増やすことが可能である。
【0090】
このシステムを実現するためには、波長の異なる多数の半導体レーザダイオード(以下、レーザと略す)と、それを駆動するモジュール化された装置(以下、モジュールと略す)が必要であった。各レーザを製造するには、該レーザの波長に対応した組成波長となる
活性層をそれぞれ結晶成長させる必要があり、また、モジュールも該レーザの波長に対応してそれぞれ製造する必要があった。製造コストが高くなること、モジュールの在庫管理が煩雑であることから、通信キャリアや装置ベンダーにとってはコストのかかるモジュールであった。そこで、1種類のモジュールで波長を自由に変えられる波長可変レーザモジュールがあれば、必要なレーザは1種類若しくは少ない種類で足りるので、製造コストの低減及び在庫管理の煩雑さも解消できる。このレーザモジュールの実現には、所望の波長範囲(たとえば、中長距離通信の一般的な波長帯であるC−bandやL−band)で発振波長が可変である波長可変レーザが必要である。仮にC−bandの波長帯域を40nm、波長間隔0.4nmとした場合、100種類の異なる波長を1種類のレーザから切り換え発振させる必要があり、波長可変レーザには、広波長帯域に亘って安定した波長制御性が求められている。さらに、波長可変レーザは固定波長レーザの代替であるため、固定波長レーザと同程度のコストが望ましく、更に、レーザモジュールの小型・低消費電力化が望ましい。
【0091】
波長可変レーザに備えられる波長選択フィルタは、消費電力、波長変動量の観点から電流注入によるプラズマ効果を用いる場合が一般的である。すなわち、かかる波長選択フィルタでは、活性層に電流を注入し、電流量に応じて屈折率が変化することにより、波長選択フィルタが選択する光の波長が制御される。非特許文献5に、回折格子型の波長選択フィルタを用いた波長可変レーザが開示されているが、数nmの波長変化量を数十mAの電流注入で実現させるためには、屈折率を0.01前後変化させる必要がある。このように少ない電流で大きな屈折率変化を与えるためには、波長選択フィルタの光導波路となる活性層の層厚を大きくすることが望ましいが、活性層の層厚を大きくすると、層厚方向(縦方向)の光の閉じ込めをさらに強めることを意味しており、縦方向のFFPを拡大させる原因になる。
【0092】
以上、説明した通り、電流注入によって選択する波長が制御される波長選択フィルタを備える波長可変レーザには、活性層の層厚が大きいことによる縦方向の光の閉じ込めが大きいという問題を有しているところ、本発明を適用して、本発明に係るスポットサイズ変換器と、波長可変レーザとを、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子とすることにより、より顕著な効果が得られる。前述の通り、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器は2層のコア層を有しているので、波長選択フィルタも、高屈折率導波路と低屈折率導波路とを有し、それぞれを構成する2層のコア層を有しているものが望ましい。波長選択フィルタがLGLCフィルタのように、互いに横方向に並ぶ2本の光導波路に互いに異なる屈折率のコア層が用いられているのが、さらに望ましく、当該実施形態に係る製造方法を用いることで、製造工程においてプロセス工程をより共通にすることが出来る。
【0093】
また、一般に、波長可変レーザには、光を発生する利得部(ゲイン)と、出射方向に沿って該利得部の前後に配置される2個の反射特性を有する波長選択フィルタが配置される。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のように、光の出射側に、スポットサイズ変換器のような素子を配置する場合、該利得部の前方に配置する波長選択フィルタは、反射特性によって光の波長を選択する反射型の波長選択フィルタが望ましく、例えば、DBRである。これに対して、該利得部の後方に配置する波長選択フィルタは、反射型の波長選択フィルタであっても、透過特性によって光の波長を選択する透過型の波長選択フィルタであってもよい。透過型の波長選択フィルタを用いる場合には、素子の後方端面に反射膜を配置することにより、透過型の波長選択フィルタと反射膜とで、所望の反射特性を有する波長選択フィルタが構成できる。なお、当該実施形態に係るLGLCフィルタは透過型の波長選択フィルタである。透過型の波長選択フィルタと反射膜とで一つの反射特性を有する波長選択フィルタを構成するが、それらが隣り合って配置されている必要はない。すなわち、利得部の後方に隣り合って、透過型の波長選択フィルタと反射膜が配置されてもいいし、透過型の波長選択フィルタと反射膜の間に他の素子が挿入されていてもよい。さらに、透過型の波長選択フィルタが利得部の前方に配置されていても、該透過型の波長選択フィルタと後方端面の反射膜で、1つの反射特性を有する波長選択フィルタを構成することができる。そして、2個の波長選択フィルタの少なくとも一方を、選択する波長が可変である波長選択フィルタを用いることにより、波長可変レーザが実現される。選択する波長が可変である波長選択フィルタの波長選択帯域が広く、他方の波長選択フィルタの波長選択帯域が狭くするとよい。当該実施形態に係る波長可変レーザ部6は、LGLCフィルタ部9が透過型の波長選択フィルタで、波長選択帯域が広く、DBR部7は、反射型の波長選択フィルタで、波長選択帯域が狭い。
【0094】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る半導体光素子は、第3の実施形態に係る半導体光素子と基本的な構造は同じであり、スポットサイズ変換器部3と波長可変レーザ部6とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子5である。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5は、その製造方法が第3の実施形態と異なっている。
【0095】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の主な製造工程について説明する。図10Aと図10B、及び、図11Aと図11Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の製造工程の過程を示す断面図である。なお、図10Aと図10Bは、LGLCフィルタ部9の断面を、図11Aと図11Bは、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における断面を、それぞれ示している。
【0096】
n型InP基板21に多層を積層する多層形成工程は、第3の実施形態と同じである(図6)が、多層形成工程によって形成された多層より各部位のメサストライプ構造を形成する工程が、第3の実施形態と異なっている。各部位のメサ構造を形成する工程について、以下に説明する。
【0097】
第3の実施形態と同様に、多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、所定の形状のパターンマスクを形成する。所定の形状とは、2個の島形状からなるが、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造からスポットサイズ変換器部3に延伸する一方の島形状が第3の実施形態と異なっており、所定の形状のパターンマスクのスポットサイズ変換器部3における領域の形状は、上部メサストライプ構造ではなく下部メサストライプ構造の形状に対応している。すなわち、図4Aのスポットサイズ変換器部3の領域に、上部コア層12として示されている領域及び下部コア層13として示されている領域に対応しており、第3の実施形態における下部メサマスク43の領域と同じである。かかるパターンマスクが、図10Aには、図7Aと同様に、第1のメサストライプ構造に対応するマスク41(第1のマスク)と、第2のメサストライプ構造に対応するマスク41として、示されている。また、かかるパターンマスクのうち、スポットサイズ変換器部3の領域が、図11Aには、下部メサマスク44として、示されている。第3の実施形態と異なり、かかるパターンマスクで、スポットサイズ変換器部3に下部メサマスク43を形成している(下部マスク形成工程)。
【0098】
続いて、多層に形成されているパターンマスクをマスクとして、下部コア層13より低い深さまで1段階目のエッチングを行う。ここで、1段階目のエッチングは、例えばドライエッチングである。図10Aに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41(第1のマスク及び第2のマスク)をマスクとして、該マスクの周縁をそれぞれ下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する。かかる工程により、第1のメサストライプ構造が形成され、第2のメサストライプ構造については、後の工程で除去する多層上部が第2のメサストライプ構造の上に配置される構造となっている。すなわち、かかる工程で、第3の実施形態における2段階目のエッチング工程の後(図7B)と同様の状態となっている。また、図11Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、下部メサマスク44をマスクとして、該マスクの周縁を下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する(第1エッチング工程)。第3の実施形態と異なり、第1エッチング工程により、下部メサストライプ構造の下部コア層13が所定の形状に形成されている。
【0099】
第1エッチング工程の後、公知のホトリソグラフィーによって、スポットサイズ変換器部3に形成される下部メサマスク44の一部を除去することにより、上部メサマスク45とする(上部メサマスク形成工程)。ここで上部メサマスク45の形状は、図4Aのスポットサイズ変換器部3の上部コア層12の形状に対応している。その際、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造に対応するマスク41(第2のマスク)を除去する。
【0100】
上部メサマスク形成工程の後、残存しているパターンマスクをマスクとして2段階目のエッチングを行う。ここで、2段階目のエッチングは、例えばウェットエッチングである。図11Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3において、上部メサストライプ構造に対応する上部メサマスク45をマスクとして、該マスクの周縁を、多層の上面(InP第1クラッド層23の上面)からInPエッチング停止層22の一部まで、すなわち、上部コア層12と下部コア層13との間まで、エッチングにより除去する(第2エッチング工程)ことにより、上部メサストライプ構造を形成する。かかる多層が除去されたことにより、下部メサストライプ構造が形成される。この際、図10Bに示す通り、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層上部が除去され、第2のストライプ構造が形成される。その後の工程については、第3の実施形態に係る製造工程と同じであるので、省略する。
【0101】
当該実施形態に係る製造方法の特徴は、スポットサイズ変換器部3において下部メサマスク44をマスクとして、下部メサマスク44の周縁をエッチングにより除去する第1エッチング工程で、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造(と第2メサストライプ構造の上側に多層上部が配置される構造)を形成し、さらに、スポットサイズ変換器部3において上部メサマスク45をマスクとして、上部メサマスク45の周縁をエッチングにより除去する第2エッチング工程で、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層上部を除去することにより、第1の実施形態より工程数をさらに減じて、スポットサイズ変換器部3とLGLCフィルタ部9とを形成することが出来ている。
【0102】
以上、本発明に係るスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及び、それらの製造法について説明した。本発明は、上記実施形態に限定されることなく、広く適用することが出来ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0103】
1 スポットサイズ変換器、2 集積半導体レーザ素子、3 スポットサイズ変換器部、4 利得部、5 集積半導体レーザ素子、6 波長可変レーザ部、7 DBR部、8 位相調整部、9 LGLCフィルタ部、11 クラッド層、12 上部コア層、13 下部コア層、21 n型InP基板、22 InPエッチング停止層、23 InP第1クラッド層、24 半絶縁性InP埋め込み層、25 InP第2クラッド層、31 p型電極、32 多重量子井戸層、33 p型コンタクト層、34 n型電極、36 前方端面膜、37 後方端面膜、41 マスク、42 上部メサマスク、43,44 下部メサマスク、45 上部メサマスク、51 入射端面、52 出射端面、111 クラッド層、112 コア層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子を備えるレーザモジュールに、例えば、光ファイバが接続される。その場合、レーザモジュールが出射するレーザ光を、効率的に光ファイバに結合することが重要である。半導体レーザ素子の出射面において光導波路での光閉じ込めが強い場合、レーザ光の遠視野像(Far Field Pattern:以下、FFPと記す)が広がってしまい、光ファイバとの結合効率が低減してしまう。また、光導波路での光閉じ込めが、縦方向と横方向のうち、一方が強く、他方が弱い場合は、それに応じて、FFPが、一方の方向に広く他方の方向に狭い楕円形状となり、円形の断面形状を有する光ファイバとの結合効率は低下する。それゆえ、光導波路での光閉じ込めが適度に緩和されるとともに、縦方向と横方向とが近い強度で光閉じ込めされることにより、FFPが適度に狭くかつ円形に近い形状に調整するのが望ましい。
【0003】
光導波路での光閉じ込めを緩和し、半導体レーザ素子のFFPを調整するために、スポットサイズ変換器が用いられる。例えば、非特許文献1及び非特許文献2に、メサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器を備える半導体レーザ素子が開示されている。図12は、従来技術に係るメサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。図の背面がレーザ光の入射面であり、図の前面がレーザ光の出射面である。半導体レーザ素子が埋込型構造(Buried Hetero-Structure:以下、BH構造と記す)を有する場合に、半導体レーザ素子の出射側にスポットサイズ変換器を備え、スポットサイズ変換器は、コア層112を含むメサストライプ構造のメサ幅がレーザ光の出射方向に沿って小さくなるテーパー構造を有している。メサストライプ構造の両側が埋込層で埋め込まれるBH構造となっていることにより、かかる形状のコア層112の周縁がクラッド層111に囲われる。コア層112に閉じ込められていた光は、メサ幅が小さくなるのに伴って、周りのクラッド層111に染み出すので、導波路を伝搬する光のモードフィールドが縦方向にも横方向にも広がり、FFPを縦方向にも横方向にも狭くすることができる。
【0004】
また、非特許文献2に、膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器を備える半導体レーザ素子が開示されている。図13は、従来技術に係る膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。図12と同様に、図の前面がレーザ光の出射面であり、コア層112の周縁がクラッド層111に囲われている。図13に示すスポットサイズ変換器は、コア層112の層厚がレーザ光の出射方向に沿って徐々に小さくなるテーパー構造を有している。コア層112に閉じ込められていた光が、層厚が小さくなる(層が薄くなる)のに伴って、周りのクラッド層111に染み出すために、図12に示すスポットサイズ変換器と同様に、光のモードフィールドが広がり、FFPを狭くすることが出来る。
【0005】
さらに、例えば、特許文献1及び非特許文献2に、上部コア層と下部コア層の2層のコア層から形成されるデュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器が開示されている。上部コア層の屈折率は下部コア層の屈折率より高く、上部コア層のメサ幅は、図12に示すコア層112と同様に、レーザ光の出射方向に沿って小さくなる。これに対して、下部コア層のメサ幅はレーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。スポットサイズ変換器の入射側では、光の閉じ込めは、屈折率が大きい上部コア層において強く、上部コア層のメサ幅が小さくなるのに伴って、光が上部コア層から下部コア層に遷移する。下部コア層の屈折率は上部コア層の屈折率により低いことから、下部コア層に遷移した光の閉じ込めは弱くなり、スポットサイズ変換器の出射側では、光のモードフィールドは広がり、FFPを狭くすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−102651号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Electronics Letters,vol.30,No.11,857−859頁,1994年
【非特許文献2】Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,vol. 3,No. 6,1308−1320頁, 1997年
【非特許文献3】Optical Fiber Communication Conference 2011、OWD7,2011年3月
【非特許文献4】IEEE Photonics Technology Letters,vol.5,No. 7,735−738頁,1993年
【非特許文献5】Journal of Quantum Electronics、vol. 43,No. 9,798−803頁,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器及び膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器において、スポットサイズ変換器の出射面での光のモードフィールドは、コア層112の形状やコア層112の先端からレーザ光の出射面までの距離などに依存するので、それらを高精度に制御する必要がある。とくに、膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の製造工程において、コア層112の結晶成長時に誘電体マスクを用いた選択成長効果を利用する場合、マスク形状や成長条件の制御は困難である。これに対して、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器では、出射面での光のモードフィールドは下部コア層の屈折率やメサ幅、膜厚に主に依存するので、レーザ光のスポットサイズの制御性の観点では、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器が望ましい。
【0009】
一般に、スポットサイズ変換器を配置する際に生じるスポットサイズ変換器の挿入損失は、モードフィールドが変換される際の遷移損失と、導波路伝搬時に発生する伝搬損失とに分類できる。デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器において、上部コア層から下部コア層に光が遷移する領域を光遷移領域として、光遷移領域の長さをLとすると、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器の光遷移領域における伝搬損失[dB]は、−10Log{exp(−αL)}(数式1とする)で表される。ここで、α[cm−1]は単位長さあたりの損失である。
【0010】
数式1に示す通り、Lが減少するのに伴い、伝搬損失は減少するので、Lは出来る限り小さくするのが、伝搬損失を低減する観点からは望ましい。しかし、光遷移領域の長さLを小さくする(光遷移領域を短くする)と、上部コア層から下部コア層へのモード変換が急峻となり、遷移損失が増加する。遷移損失を低減するためには、モード変換が緩やかであるのが望ましい。すなわち、光遷移領域において、出射方向に沿って上部コア層のメサ幅がゆっくりと小さくなり下部コア層のメサ幅がゆっくりと大きくなるのが望ましい。モード変換が緩やかであれば遷移損失は無視できるほどに小さい。よって、遷移損失を軽減する観点からは、光遷移領域の長さLは大きくする(光遷移領域を長くする)のが望ましく、光遷移領域の長さLを小さくするのには限界がある。
【0011】
それゆえ、光遷移領域の所定の長さLにおいて、スポットサイズ変換器の挿入損失を低減するためには、数式1に示す通り、単位長さあたりの損失αを低減させて伝搬損失を低減させる必要がある。スポットサイズ変換器の素子長を低減する技術について、特許文献1に開示されているが、単位長さあたりの損失αを低減させる技術については開示も示唆もされていない。
【0012】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光遷移領域において伝搬損失が抑制される構造とすることにより、変換特性が向上されるスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るスポットサイズ変換器は、下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、ことを特徴とする。
【0014】
(2)上記(1)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含み、さらに、前記光遷移領域において前記半絶縁性半導体層の上側にp型の第2の半導体クラッド層が形成されてもよい。
【0015】
(3)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低くてもよい。
【0016】
(4)上記(3)に記載の半導体光素子であって、前記スポットサイズ変換器の前記光遷移領域における前記多層構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面と、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面とは、等しい高さとなっていてもよい。
【0017】
(5)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、前記上部コア層に接する活性層を含むメサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層の上側に積層される半導体層の層厚が、前記半導体レーザ素子の前記活性層の上側に積層される半導体層の層厚より大きくてもよい。
【0018】
(6)本発明に係る半導体光素子は、上記(2)に記載のスポットサイズ変換器と、電流によって光導波路の屈折率を変化させて選択する波長が制御される波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積されてもよい。
【0019】
(7)上記(6)に記載の半導体光素子であって、前記波長選択フィルタは、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層と、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層との間に生じる光の遷移により、光の波長を選択してもよい。
【0020】
(8)上記(7)に記載の半導体光素子であって、前記波長選択フィルタの選択波長帯域より狭い選択波長帯域を有する第2の波長選択フィルタと、光を発光する利得部と、光の位相を調整する位相調整部とが、前記半導体基板上にモノリシックにさらに集積されてもよい。
【0021】
(9)上記(2)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記n型半導体基板、前記半絶縁性半導体層、前記第1の半導体クラッド層、及び前記第2の半導体クラッド層は、InP系材料によって形成されてもよい。
【0022】
(10)上記(9)に記載のスポットサイズ変換器であって、前記第1の半導体クラッド層には、亜鉛がドーパントとして添加され、前記半絶縁性半導体層には、ルテニウムがドーパントとして添加されてもよい。
【0023】
(11)本発明に係るスポットサイズ変換器の製造方法は、下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器の製造方法であって、前記上部コア層の形状に対応する上部メサマスクを前記下部コア層と前記上部コア層を含む多層の上面に形成する上部メサマスク形成工程を含むとともに、前記上部コア層及び前記下部コア層を所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程と、前記上部メサマスクの、少なくとも前記光遷移領域に対応する部分を除去する、上部メサマスク除去工程と、前記多層を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記光遷移領域において、前記多層の両側に加えて上側に前記半絶縁性半導体層が形成される、埋め込み工程と、を含んでいてもよい。
【0024】
(12)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含むとともに、前記埋め込み工程の後に、p型の第2の半導体クラッド層を積層する、クラッド層形成工程を、さらに含んでいてもよい。
【0025】
(13)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記デュアルメサ形成工程は、前記上部マスクと異なる材料からなる下部メサマスクを前記上部メサマスクの上側に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、前記下部メサマスクを除去する、下部メサマスク除去工程と、前記上部メサマスクをマスクとして前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去するとともに、前記第1エッチング工程で前記所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0026】
(14)上記(11)に記載のスポットサイズ変換器の製造方法であって、前記デュアルメサ形成工程は、下部メサマスクを前記多層の上面に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、前記上部メサマスクをマスクとして、前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、をさらに含み、前記上部メサマスク形成工程において、前記下部メサマスクの一部を除去することにより、前記上部メサマスクにしてもよい。
【0027】
(15)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(12)に記載のスポットサイズ変換器と、メサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記埋め込み工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記メサストライプ構造の両側に前記半絶縁性半導体層が形成され、前記クラッド層形成工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造の上側に前記p型の第2の半導体クラッド層を積層してもよい。
【0028】
(16)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(13)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層より低く、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程におけるエッチングで行ってもよい。
【0029】
(17)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、上記(14)に記載のスポットサイズ変換器と、前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低く、前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程におけるエッチングで行い、前記第2のメサストライプ構造の上側に配置される部分を前記第2のメサストライプ構造の上面まで除去する工程を、前記第2エッチング工程におけるエッチングで行ってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、光遷移領域において伝搬損失が抑制される構造とすることにより、変換特性が向上されるスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及びそれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の構造を示す模式上面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図2D】本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器の断面図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式上面図である。
【図3B】本発明の第2の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【図4A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式上面図である。
【図4B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子のLGLCフィルタ部の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7C】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7D】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図7E】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8A】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8B】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8C】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8D】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図8E】本発明の第3の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の形態に係る集積半導体レーザ素子の特性を示す図である。
【図10A】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図10B】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図11A】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図11B】本発明の第4の実施形態に係る集積半導体レーザ素子の製造工程の過程を示す断面図である。
【図12】従来技術に係るメサ幅テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【図13】従来技術に係る膜厚テーパー型のスポットサイズ変換器の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る実施形態について、以下に、詳細な説明をする。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。なお、以下に示す図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1の構造を示す模式図である。当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1は、図1に示す通り、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器であり、スポットサイズ変換器1は、上部コア層12と下部コア層13を含む複数層が積層される多層構造を有している。詳細については後述する通り、2層のコア層の周縁がクラッド層11に囲われている。また、スポットサイズ変換器1において、図の背面側よりレーザ光が上部コア層12に入射し、上部コア層12を伝搬する光が下部コア層13に遷移し、スポットサイズ変換器1は、図の前面側より、スポットサイズが変換されたレーザ光を出射する。すなわち、図1に示す背面が入射端面51であり、前面が出射端面52である。光遷移領域において、多層構造は、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造からなるデュアルメサ構造となっており、上部コア層12を含む上部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って小さくなっている。これに対して、下部コア層13を含む下部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。上部コア層12の屈折率は、下部コア層13の屈折率より大きい。
【0034】
図2Aは、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の構造を示す模式上面図である。図2Aには、スポットサイズ変換器1を上方から見たときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12との平面的な重なりが模式的に表されている。便宜上、スポットサイズ変換器1の上方から見て、右から順に、入射光伝搬領域、光遷移領域、出射光伝搬領域とする。
【0035】
図2Aに示す通り、入射端面51から出射端面52へレーザ光の出射方向に沿って、上部コア層12は、等幅で延伸し、途中から、幅は徐々に小さくなりながら延伸し、出射端面52の近傍で消滅している。ここで、光遷移領域とは、上方から見て平面的に、上部コア層12の幅が細くなり始める箇所から消滅する箇所までの領域である。入射光伝搬領域は、入射端面51から上部コア層12の幅が細くなり始める箇所まで、出射光伝搬領域は、上部コア層12の先端から出射端面52まで、である。図2Aには、光遷移領域の長さがLとして表されている。一方、下部コア層13は、入射端面51から出射端面52へレーザ光の出射方向に沿って、入射光伝搬領域において、上部コア層12とほぼ等しい幅であってかつ等幅で延伸し、光遷移領域の始まりから幅が徐々に大きくなりながら延伸し、出射光伝搬領域においては、等しい幅で延伸し、出射端面52に至っている。
【0036】
図2B乃至図2Dは、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の断面図である。図2Bには、図2Aに示すIIB−IIB線の断面が、図2Cには、図2Aに示すIIC−IIC線の断面が、図2Dには、図2Aに示すIID−IID線の断面が、それぞれ示されている。図2Dに示す断面は、スポットサイズ変換器1の入射端面51でのメサ断面図に等しく、スポットサイズ変換器1が有する多層構造の基本多層となっており、BH構造となっている。
【0037】
図2Dに示す通り、入射光伝搬領域において、n型InP基板21上に、n型の下部コア層13、n型のInPエッチング停止層22、i型の上部コア層12、p型のInP第1クラッド層23(複数層)が、この順に積層されている。上部に位置するInP第1クラッド層23から、上部コア層12、InPエッチング停止層22、下部コア層13と、n型InP基板21の一部に亘って、メサストライプ構造が形成されている。下部コア層13の屈折率はInPの屈折率よりも高く、上部コア層12の屈折率よりも低い。よって、n型InP基板21は2層のコア層に対してクラッド層として機能している。さらに、下部コア層13の層厚は上部コア層12の層厚よりも小さい。よって、当該メサストライプ構造において、上部コア層12における光の閉じ込めは、下部コア層13における光の閉じ込めよりも強く、入射端面51より入射した光が伝搬する主となる光導波路は上部コア層12となる。例えば、2層のコア層にInGaAsPを用いた場合は、上部コア層12の組成波長を下部コア層13の組成波長よりも長波長側となるように、各コア層を形成すればよい。なお、ここでは、上部コア層12は意図的にドーパントが添加されていないi型としているが、スポットサイズ変換器としてはこれに限定されることはなく、n型であってもよい。
【0038】
上部コア層12と下部コア層13とを含む当該メサストライプ構造の両側が、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれている。上部コア層12の屈折率及び下部コア層13の屈折率はともに、半絶縁性InP埋め込み層24の屈折率より高く、半絶縁性InP埋め込み層24は2層のコア層に対してクラッド層として機能している。半絶縁性InP埋め込み層24の上面は、メサストライプ構造の最上層から外側に斜面となって広がっており、さらに外側において平面となっている。そして、メサストライプ構造の最上層と半絶縁性InP埋め込み層24の上面とを覆って、p型のInP第2クラッド層25が形成されている。よって、上部コア層12と下部コア層13の周りには、図1に示す通り、クラッド層11が形成されている。
【0039】
図2Cに示す通り、光遷移領域において、上部コア層12と下部コア層13とを含む多層構造は、図2Dに示すメサストライプ構造とは異なる構造となっており、当該多層構造は、光遷移領域において、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造からなるデュアルメサ構造である。ここで、上部メサストライプ構造は、InP第1クラッド層23から、上部コア層12、InPエッチング停止層22の一部までであり、下部メサストライプ構造は、InPエッチング停止層22の残りの部分から、下部コア層13、n型InP基板21の一部までである。光遷移領域において、レーザ光の出射方向に沿って、上部コア層12を含む上部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って小さくなっている。これに対して、下部コア層13を含む下部メサストライプ構造のメサ幅は、レーザ光の出射方向に沿って大きくなっている。かかる構造を、デュアルメサテーパー構造と呼ぶが、デュアルメサテーパー構造では、レーザ光の出射方向に沿って伝搬する光に対して、上部コア層12における光の閉じ込めが徐々に弱くなる。その結果、上部コア層12から下部コア層13に光が遷移し、下部コア層13に閉じ込められる光の割合が徐々に大きくなる。
【0040】
当該多層構造の両側が、図2Dと同様に、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれているが、図2Dとは異なり、さらに、当該多層構造の上側にも半絶縁性InP埋め込み層24が形成されている。すなわち、光遷移領域において、当該多層構造の両側と上側が、半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれている。そして、半絶縁性InP埋め込み層24の上面を覆って、p型のInP第2クラッド層25が形成されている。よって、上部コア層12の上側には、InP第1クラッド層23、半絶縁性InP埋め込み層24、InP第2クラッド層25が順に積層されている。
【0041】
図2Bに示す通り、出射光伝搬領域において、n型InP基板21上に、多層構造は、前述の下部メサストライプ構造のみとなっており、上部コア層12は配置されていない。光遷移領域において、光が上部コア層12から下部コア層13に遷移しており、出射光伝搬領域における主たる光導波路は、下部コア層13となっている。ここで、前述の通り、下部コア層13の屈折率は上部コア層12の屈折率より小さく、下部コア層13の層厚は上部コア層12の層厚より小さい。それゆえ、出射光伝搬領域の下部コア層13における光の閉じ込めは、入射光伝搬領域の上部コア層12における光閉じ込めよりも弱く、クラッド層11への光の縦方向及び横方向への染み出しはともに大きくなっている。それゆえ、出射端面52におけるモードフィールドは、縦方向及び横方向へともに広がっている。それゆえ、スポットサイズ変換器1より出射するレーザ光のFFPを狭くすることが出来る。
【0042】
前述の通り、伝搬損失を軽減する観点からは、光遷移領域の長さLを小さくするのが望ましいが、遷移損失を抑制するために所定の長さが必要であり、長さLを小さくするのには制限がある。光遷移領域の所定の長さLであるとき、スポットサイズ変換器1の挿入損失を軽減するために、数式1に示す通り、スポットサイズ変換器1が単位長さあたりの損失αを低減させる構造を有しているのが望ましい。スポットサイズ変換器1に入射するレーザ光の波長が1.55μmであるとき、スポットサイズ変換器1の多層構造にある上部コア層12や下部コア層13を、例えば、組成波長が1.4μm以下のInGaAsPで形成すると、1.55μmの光の吸収は小さく、上部コア層12及び下部コア層13はほぼ透明であると言ってもよい。例えば、上部コア層12の組成波長を1.4μmとし、下部コア層13の組成波長を1.2μm〜1.3μmとすればよい。かかる場合には、単位長さあたりの損失αは、コア層の周りに配置されるp型InP層での価電子帯吸収(Inter Valence Band Absorption:以下、IVBAと記す)によって決まる。それゆえ、光遷移領域において、上部コア層12及び下部コア層13を含む複数層が積層される多層構造の両側のみならず上側に、半絶縁性InP埋め込み層24を配置することにより、半絶縁性InP埋め込み層24のさらに上側に形成されるp型のInP第2クラッド層25を遠ざけることが出来ており、p型のInP第2クラッド層25において発生するIVBAを抑制することが出来ている。
【0043】
当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の光遷移領域において、上部コア層12及び下部コア層13の近傍には、下側にn型InP基板21が、両側と上方には、半絶縁性InP埋め込み層24が配置されており、p型InP層は、上部コア層12の上側に配置されるp型のInP第1クラッド層23のみである。なお、半絶縁性InP埋め込み層24の半絶縁性InPやn型InP基板21のn型InPは、吸収損失が無視出来るほどに小さい。さらに、p型のInP第1クラッド層23の層厚は小さいので、上部コア層12及び下部コア層13の近傍に、吸収損失となるp型InP層の配置が抑制されている。
【0044】
また、同様に、出射光遷移領域においても、下部コア層13の近傍には、下側にn型InP基板21が、上側にInPエッチング停止層22が、両側と上方に、半絶縁性InP埋め込み層24がそれぞれ配置されており、吸収損失となるp型InP層が配置されておらず、吸収損失が抑制されている。
【0045】
後述する通り、スポットサイズ変換器を、半導体変調器や半導体波長可変フィルタなどの光機能素子、又は半導体レーザ素子と、同一の半導体基板上にモノリシックに集積する素子を作製する場合など、他の製造工程により、多層構造に積層される複数層にp型の半導体層を積層することがある。かかる場合などにより、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器の上部コア層の上側に、p型の半導体層を配置される場合であっても、スポットサイズ変換器における挿入損失が低減される。
【0046】
半導体光素子がInP系材料によって形成される場合、半絶縁性半導体埋め込み層には、Fe(鉄)をドーパントとして添加したFeドープInPがよく用いられている。しかしながら、FeドープInPは、p型InP層のドーパントとして用いられるZn(亜鉛)と相互拡散が大きいため、p型InP層から半絶縁性InP埋め込み層へZnが拡散するので、Znが拡散した半絶縁性InP層においても光の吸収損失が発生してしまう。それゆえ、半絶縁性半導体層のドーパントとして、Znとの相互拡散が抑制されているRu(ルテニウム)を用いるのが、吸収損失抑制の観点から望ましい。半絶縁性半導体埋め込み層として、Ruがドーパントとして添加されるRuドープInPを用いる場合、p型InPとの接触面においても、Znの拡散が著しく低減されるので、絶縁性半導体埋め込み層における光の吸収損失は抑制される。p型InPのドーパントがZnと異なる材料である場合は、半絶縁性InPのドーパントとして、当該ドーパントとの相互拡散が小さい材料を選択すればよい。
【0047】
なお、光遷移領域における伝搬損失をさらに低減するために、p型のInP第1クラッド層23を除去すればよいが、さらにそのための工程が必要となる。当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1においては、製造工程において積層されるp型のInP第1クラッド層23を残すことによって、製造工程を増大させることなく、光遷移領域における伝搬損失を低減することが出来ている。また、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1において、半導体はInP系材料を用いているが、他の半導体材料を用いて作製されてもよいことは言うまでもない。
【0048】
次に、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の主な製造工程について説明する。最初に、n型InP基板21に、例えば分子線エピタキシャル成長法を用いて、順に、InGaAsPからなる下部コア層13、InPエッチング停止層22、InGaAsPからなる上部コア層12、InP第1クラッド層23、からなる多層を積層する(多層形成工程)。
【0049】
続いて、多層形成工程によって形成した多層を上述の通り、所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程を行う。デュアルメサ形成工程の一例として、まず、多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、下部コア層13の上述の形状に対応するパターンマスク(下部メサマスク)を形成し、これをマスクとして、InP第1クラッド層23、上部コア層12、InPエッチング停止層22、下部コア層13、及びn型InP基板21の一部までエッチングを行うことにより、下部メサストライプ構造の側面を形成する。次に、下部メサマスクを除去し、InP第1クラッド層23の上側に、上部コア層12の上述の形状に対応するパターンマスク(上部メサマスク)を形成(上部メサマスク形成工程)し、これをマスクとして、InP第1クラッド層23、上部コア層12、InPエッチング停止層22の一部までエッチングを行うことにより、上部メサストライプ構造を形成する。
【0050】
デュアルメサ形成工程の後、上部メサマスクのうち、光遷移領域及び出射光伝搬領域に形成される部分を除去し(上部メサマスク除去工程)、多層を半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込む(埋め込み工程)。入射光伝搬領域に形成される上部メサマスクは除去されず、かかる上部メサマスクにより、図2Dに示す通り、多層の両側に半絶縁性InP埋め込み層24が形成され、半絶縁性InP埋め込み層24の上面は、外側に斜面となって広がっており、さらに外側において平面となっている。これに対して、光遷移領域及び出射光伝搬領域に形成される上部メサマスクは除去されているので、図2B及び図2Cに示す通り、多層の両側に加えて上側に半絶縁性InP埋め込み層24が形成される。
【0051】
そして、入射光伝搬領域に残存する上部メサマスクを除去し、さらに、p型のInP第2クラッド層25を積層し(クラッド層形成工程)、スポットサイズ変換器1が作製される。
【0052】
以上、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1について説明した。スポットサイズ変換器1のデュアルメサテーパー構造は、これに限定されることなく、いろいろな形状が考えられる。例えば、当該実施形態に係るスポットサイズ変換器1の光遷移領域において、上部コア層12の幅が徐々に小さくなり始める箇所と、下部コア層13の幅が徐々に大きくなり始める箇所は同じであるが、異なっていてもよい。この場合、光遷移領域の入射側の端部は、上部コア層12の幅が徐々に小さくなり始める箇所とする。また、例えば、光遷移領域における光の遷移が十分な場合など、出射光遷移領域の長さは小さくてもよいし、また、出射光遷移領域を設けず、光遷移領域の出射側の端部が、出射端面52であってもよい。この場合、上部コア層12の出射側の先端は出来る限り細くなっているのが望ましく、プロセスの作製限界に設計するのが望ましいが、これに限定されることはない。なお、これらの場合であっても、上部メサマスク除去工程において、上部メサマスクの光遷移領域に対応する部分を除去すればよい。
【0053】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る半導体光素子は、スポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子2である。ここでは、半導体レーザは1.55μm帯のファブリペロー型レーザであり、多重量子井戸層32にはInGaAsP系材料を用いている。
【0054】
図3Aは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の構造を示す模式上面図である。図3Aには、集積半導体レーザ素子2を上方からみたときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12とのスポットサイズ変換器部3における平面的な重なりが模式的に表されている。また、利得部4の上面に形成されるp型電極31が示されているが、さらに、利得部4における光導波路が模式的に表されている。
【0055】
スポットサイズ変換器部3の構造は、第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1と基本的に同じであるが、入射光伝搬領域は、第1の実施形態に係るスポットサイズ変換器1と比べて非常に短くなっているか、又は、設けられていない。
【0056】
図3Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の構造を示す模式断面図である。図3Bには、図3Aの横方向に延びる光導波路の中心を貫く断面が示されている。半導体レーザの利得部4は、井戸層と障壁層がともにInGaAsP系材料を用いて形成される多重量子井戸層32を備えている。利得部4は、n型InP基板21上に、多重量子井戸層32を含むメサストライプ構造が形成され、メサストライプ構造の両側が半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込まれているBH構造をしている。メサストライプ構造の上側には、p型のInP第2クラッド層25、p型コンタクト層33、さらに、p型電極31が形成され、n型InP基板21の裏面にはn型電極34が形成されている。
【0057】
スポットサイズ変換器部3の上部コア層12も同様にInGaAsP系材料を用いて形成されており、バットジョイント成長により、多重量子井戸層32と上部コア層12は光学的に接続されており、光導波路を形成している。すなわち、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12に接する半導体レーザの利得部4の活性層は、多重量子井戸層32である。なお、上部コア層12及び多重量子井戸層32の上側にはInP第1クラッド層23が形成されているが、InP第1クラッド層23はInP第2クラッド層25と比べて薄いので、図3Bには図示されていない。
【0058】
スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、伝搬する光が上部コア層12から下部コア層13に遷移する際に、光のモードフィールドが広がり、上部コア層12の上側にも光の染み出しが発生する。光のモードフィールドが広がり、利得部4のp型コンタクト層33やp型電極31と接触すると、損失が増大する要因となってしまう。かかる問題は、一般には、半導体レーザの多層構造の上側に配置されるp型クラッド層の層厚を大きくすることにより回避されるが、半導体レーザの素子抵抗が増大し素子特性を劣化させることとなる。
【0059】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2のスポットサイズ変換器部3には、上部コア層12の両側と上方に、半絶縁性InP埋め込み層24が配置されていることにより、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、上部コア層12の上側に積層される半導体層は、InP第1クラッド層23、半絶縁性InP埋め込み層24、InP第2クラッド層25からなる複数の半導体層(クラッド層)であり、これら半導体層の層厚の合計(長さD2)は、半導体レーザの利得部4の活性層である多重量子井戸層32の上側に積層される半導体層(p型クラッド層)の層厚の合計より大きくなっている(厚くなっている)。これにより、半導体レーザの利得部4のp型クラッド層の層厚を増大させることなく、かかる問題を回避することが出来ている。なお、スポットサイズ変換器部3において、入射端面側と出射端面側とでは、InP第2クラッド層25の上面の高さは異なっているが、出射光伝搬領域(出射端面)の下部コア層13の上側に位置する複数の半導体層(クラッド層)の層厚の合計(長さD1)も、光遷移領域の上部コア層12の上側に位置する複数の半導体層(クラッド層)の層厚の合計(長さD2)も、ほぼ同じであり、光のモードフィールドが半導体レーザの利得部4に広がることを抑制している。
【0060】
次に、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の主な製造工程について簡単に説明する。スポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とを、n型InP基板21上に形成するが、同一層上で共通する材料によって作製される層については、同一の工程で積層すればよい。図3Bに示す通り、利得部4の多重量子井戸層32とスポットサイズ変換器部3の上部コア層12は構成が異なっているので、別々に積層される。エッチングについても同様であり、共通の工程でエッチングを行えばよい。
【0061】
さらに、埋め込み工程において、スポットサイズ変換器部3の多層構造とともに、半導体レーザの利得部4のメサストライプ構造を、半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込み、利得部4のメサストライプ構造の両側を半絶縁性InP埋め込み層24によって埋め込み、BH構造とする。そして、クラッド層形成工程において、スポットサイズ変換器部3とともに、利得部4のメサストライプ構造の上側にInP第2クラッド層25を積層する。利得部4の上面にp型コンタクト層33、p型電極31を形成し、n型InP基板21の裏面にn型電極34を形成し、集積半導体レーザ素子2は作製される。
【0062】
以上の通り、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2は、スポットサイズ変換器部3を形成する工程と、半導体レーザの利得部4を形成する工程とのうち、作製プロセスに共通となっている工程が含まれている。作製プロセスを共通とすることにより、工程やそれにかかるコストの増大を抑制しつつ作製することが出来る。また、ホトリソグラフィー工程やエッチング工程などをスポットサイズ変換器部3と半導体レーザの利得部4とで別々に行うプロセスにおいては、位置ずれなどが発生する可能性があるところ、作製プロセスを共通にすることにより、位置ずれの発生なども抑制され、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0063】
なお、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子2の半導体レーザは、ファブリペロー型のレーザとしたが、他の構造の半導体レーザ、例えば、DFB(Distributed Bragg Grating)レーザやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザなどであってもよい。また、当該実施形態において、半導体光素子は、スポットサイズ変換器と半導体レーザがともに同一基板上に集積される集積半導体レーザ素子2としたが、半導体レーザに限定されることはなく、半導体変調器や半導体波長可変フィルタなどの光機能素子がともに同一基板上に集積されてもよい。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る半導体光素子は、スポットサイズ変換器部3と波長可変レーザ部6とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子5である。波長可変レーザ部6は、LGLC(Lateral Grating assisted Co-directional Coupler)型の波長可変レーザであり、当該波長可変レーザの構造については、非特許文献3に記載されている。
【0065】
図4Aは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の構造を示す模式上面図である。図4Aに示す通り、集積半導体レーザ素子2の波長可変レーザ部6には、光の出射側から順に、DBR部7、光を発生する利得部4、光の位相を調整する位相調整部8、LGLCフィルタ部9が配置されている。集積半導体レーザ素子5の出射側の端面には前方端面膜36が、反対側の端面には後方端面膜37が、それぞれ形成されており、後方端面膜37は反射膜(ミラー)として機能している。図4Aには、集積半導体レーザ素子5を上方からみたときの、下部コア層13と、下部コア層13の上方に配置される上部コア層12とのスポットサイズ変換器部3における平面的な重なりが模式的に表されている。また、波長可変レーザ部6の各部位それぞれの上面に形成されるp型電極31が示されている。さらに、波長可変レーザ部6における光導波路が模式的に表されているが、DBR部7、位相調整部8、及びLGLCフィルタ部9の光導波路は、上部コア層12(第1のコア層)である。LGLCフィルタ部9には、さらにもう1本の光導波路が形成されており、下部コア層13(第2のコア層)である。ここで、前者は高屈折率導波路、後者は低屈折率導波路である。LGLCフィルタ部9において、高屈折率光導波路は、横方向に延伸しているが、後方の端面付近で、屈曲しており、後方端面膜37に及んでいる。これに対して、低屈折率光導波路は、後方の端面より垂直に位相調整部8へ延伸し、境界付近において屈曲し、位相調整部8に及んでいる。
【0066】
図4Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の構造を示す模式断面図である。図4Bには、図4Aの横方向に延びる光導波路(高屈折率光導波路)の中心を貫く断面が示されている。なお、前述の通り、高屈折率光導波路は、後方の端面付近で屈曲しているが、光導波路の中心に沿った断面なので、図4Bの右端にも上部コア層12及び下部コア層13が表されている。
【0067】
図4Bに示す通り、下部コア層13は、集積半導体レーザ素子5の後方の端面から前方の端面に亘って、延伸しており、また、利得部4の光導波路は前述の通り多重量子井戸層32であるが、それ以外の部位においては、後方の端面から位相調整部8に亘って、また、DBR部7からスポットサイズ変換器部3の光遷移領域に亘って、上部コア層12が延伸している。
【0068】
図5は、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のLGLCフィルタ部9の断面図である。図5に示す断面は、図4Aに示すV−V線の断面を図の右側から見た場合を表している。LGLCフィルタ部9では、屈折率が異なる光導波路が平行に並んだ方向性結合器型構造が形成されており、図5の左側に位置する第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)が高屈折率光導波路である。また、図5に示す通り、第1のメサストライプ構造の右側(側方)に並んで、第2のメサストライプ構造が形成されており、第2のメサストライプ構造の下部コア層13(第2のコア層)が低屈折率光導波路である。第1のメサストライプ構造にはさらに下部コア層13を含んでおり、第1のメサストライプ構造は2層のコア層を含んでいる。また、第2のメサストライプ構造の上面の高さは、第1のメサストライプ構造の上部コア層12と下部コア層の間に位置しており、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)の下面より低い。
【0069】
屈折率の高い高屈折率光導波路に光が入射されると、所定の条件を満たす波長の光のみが、屈折率の低い低屈折率光導波路に遷移する。ここで、所定の条件とは、波長がΛ×(nh−hl)(数式2とする)となるときである。なお、Λは高屈折率光導波路の回折格子周期、nhは高屈折率光導波路の有効屈折率、nlは低屈折率光導波路の有効屈折率である。回折格子は高屈折率光導波路の導波路幅を伝搬方向に周期的に変化させることで形成される。高屈折率光導波路に電流を注入し、高屈折率光導波路の実効的な屈折率を変化させることで、遷移する光の波長を制御することが出来、波長選択フィルタとしての透過波長を制御することが出来る。
【0070】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のLGLCフィルタ部9は、高屈折率光導波路を形成する第1のコア層と、低屈折率光導波路を形成する第2のコア層を用いることにより、波長選択フィルタとしている。ここで、LGLCフィルタ部9では高屈折率光導波路と低屈折率光導波路とが横方向に並んで形成されているが、非特許文献4に開示されているように、高屈折率光導波路と低屈折率光導波路とが縦方向に並んで形成されている波長選択フィルタがある。いずれであっても、このように、2層のコア層を用いる半導体素子を、2層のコア層を有するデュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器と、同一基板上にモノリシックに集積される半導体光素子とすることにより、製造工程の増大を抑制しつつ、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0071】
なお、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(高屈折率光導波路)は、図4Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3、DBR部7、利得部4、位相調整部8と、図4Aの横方向に延びる1本の光導波路を形成しており、活性層は、利得部4が多重量子井戸層32で、それ以外の部位が上部コア層12である。さらに、第1のメサストライプ構造から延伸する1本の光導波路は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12に接続され、波長可変レーザ部6が出射するレーザ光がスポットサイズ変換器部3の上部コア層12へ入射される。すなわち、スポットサイズ変換器部3へ入射する光の光軸上に、第1のメサストライプ構造の上部コア層12(第1のコア層)は配置されている。LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造と、スポットサイズ変換器部3の入射端面のメサストライプ構造は同一の構造である。位相調整部8及びDBR部7のメサストライプ構造も、同一の構造である。利得部4のメサストライプ構造も、活性層が多重量子井戸層32でありこの点において異なっているが、それ以外については同一である。よって、LGLCフィルタ部9の上部コア層12及び下部コア層13は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12及び下部コア層13と、同じプロセス工程でそれぞれ形成されるので、それぞれ同じ組成で形成されると言っても良い。また、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12と下部コア層13とを含む複数層と同じ多層を有しており、両部位の上部コア層12は同一層上に形成されていると言っても良い。第1のメサストライプ構造が有する多層は、スポットサイズ変換器部3の上部コア層と同一層状に同じ組成で形成される上部コア層12(第1のコア層)を含んでいれば、該複数層の一部と重なっているだけでもよい。下部コア層13についても同様である。同様に、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層は、スポットサイズ変換器部3の複数層の一部と同じ多層を有しており、両部位の下部コア層13は同一層上に形成されていると言ってもよい。
【0072】
次に、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の主な製造工程について説明する。図6、図7A乃至図7E、及び、図8A乃至図8Eは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の製造工程の過程を示す断面図である。なお、図7A乃至図7Eは、LGLCフィルタ部9の断面を、図8A乃至図8Eは、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における断面を、それぞれ示している。
【0073】
最初に、n型InP基板21に、順に、下部コア層13、InPエッチング停止層22、上部コア層12、InP第1クラッド層23からなる多層を積層する(多層形成工程)。図6は、多層形成工程後の断面図であり、スポットサイズ変換器部3の断面と、LGLCフィルタ部9の断面とを示している。その際、同一層上で共通する材料によって作製される層については、同一の工程で積層すればよい。図4A及び図4Bに示す通り、InPエッチング停止層22の上側に、スポットサイズ変換器部3、DBR部7、位相調整部8、LGLCフィルタ部9には、上部コア層12が形成され、利得部4には、多重量子井戸層32が形成されており、別々に積層される。
【0074】
続いて、多層形成工程によって形成された多層より、各部位のメサストライプ構造を形成する。ここで、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造を形成する工程が、デュアルメサ形成工程である。当該工程の特徴は、2段階に分けてエッチングを行っている点である。各部位のメサ構造を形成する工程について、以下に説明する。
【0075】
多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、所定の形状のパターンマスクを形成する。ここで、所定の形状とは、2個の島形状からなる。一方の島形状は、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造から、スポットサイズ変換器部3の上部メサストライプ構造に至るまでの、光導波路の形状に対応している。すなわち、図4Aに、上部コア層12として示されている2つの領域と、該領域の間に模式的に示されている光導波路領域(多重量子井戸層32の形状)である。他方の島形状は、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の領域であり、図4Aに、該一方の領域の上側に示されている下部コア層13の形状に対応している。パターンマスクをマスクとしてエッチングを行って上部コア層12が所望の形状となるように、当該所定の形状を決定すればよい。かかるパターンマスクが、図7Aには、第1のメサストライプ構造に対応するマスク41(第1のマスク)と、第2のメサストライプ構造に対応するマスク41(第2のマスク)として、示されている。また、かかるパターンマスクのうち、スポットサイズ変換器部3の領域が図8Aに示す通り上部メサマスク42であり、また、上部メサマスク42を形成する工程が上部メサマスク形成工程である。
【0076】
次に、上部メサマスク42の上側に、上部メサマスク42と異なる材料からなる下部メサマスク43を所定の形状に形成する(下部メサマスク形成工程)。なお、下部メサマスク43が図8Aに示されている。下部メサマスク43の所定の形状とは、スポットサイズ変換器部3の下部メサストライプ構造に対応しており、図4Aのスポットサイズ変換器部3の領域に、上部コア層12として示されている領域及び下部コア層13として示される領域に対応している。
【0077】
続いて、多層に形成されているパターンマスクをマスクとして、所定の深さまで1段階目のエッチングを行う。1段階目のエッチングは例えばドライエッチングである。図7Aに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41(第1のマスク及び第2のマスク)をマスクとして、該マスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する。図8Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、下部メサマスク43をマスクとして、下部メサマスク43の周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する(第1エッチング工程)。なお、図7A及び図8Aに示す通り、所定の深さとは、ここでは、InP第1クラッド層23の一部までの深さである。
【0078】
第1エッチング工程の後、下部メサマスク43を除去する(下部メサマスク除去工程)。ここで、上部メサマスク42と下部メサマスク43は、上述の通り、マスクの材料が異なるので、エッチングレートの選択比が大きいエッチングを行うことにより、上部メサマスク42を残すことが出来る。
【0079】
下部メサマスク除去工程の後、残存しているパターンマスクをマスクとして2段階目のエッチングを行う。ここで、2段階目のエッチングは例えばドライエッチングである。図7Bに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41をマスクとして、該マスクの周縁を、該所定の深さから下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する。かかる工程により、第1のメサストライプ構造が形成される。また、第2のメサストライプ構造については、後の工程で除去する多層上部が、第2のメサストライプ構造の上に配置される構造となっている。図8Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、上部メサマスク42をマスクとして、上部メサマスク42の周縁を多層の上面(InP第1クラッド層23の上面)からInPエッチング停止層22の一部まで、すなわち、上部コア層12と下部コア層13との間まで、エッチングにより除去することにより、上部メサストライプ構造を形成する。また、第1エッチング工程で所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去することにより、下部メサストライプ構造を形成する(第2エッチング工程)。第2エッチング工程では、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における多層構造は、第1エッチング工程で発生した段差を維持して、エッチングを行うので、上部メサストライプ構造と下部メサストライプ構造とが当該工程後に完成する。第1エッチング工程における所定の深さは、第2エッチング工程において、上部メサストライプ構造の両側をInPエッチング停止層22の途中までエッチングをして上部メサストライプ構造を形成するときに、下部メサストライプ構造の両側が下部コア層13より低い深さまでエッチングされるよう、決定すればよい。なお、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造がここで完成し、デュアルメサ形成工程が終了する。
【0080】
ここで、スポットサイズ変換器部3とLGLCフィルタ部9とは、共通するプロセスでエッチングを行っており、両部位のメサの深さは同じである。LGLCフィルタ部9において、メサストライプ構造の両側のn型InP基板21の表面の高さと、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造の両側のn型InP基板21の表面の高さは、等しくなっている。図7Bに示す通り、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造の上部コア層12上面のn型InP基板21表面からの高さD3と、図8Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12上面のn型InP基板21表面からの高さD4とは、等しくなっている。同様に、LGLCフィルタ部9の第1メサストライプ構造の両側に埋め込まれる半絶縁性InP埋め込み層24の下面と、スポットサイズ変換器部3のデュアルメサ構造の両側に埋め込まれる半絶縁性InP埋め込み層24の下面とは、等しい高さとなっている。
【0081】
第2エッチング工程の後、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の上側に残存する多層上部を除去する(メサ上部除去工程)。すなわち、第2のメサストライプ構造に対応して形成されていたマスク41(第2のマスク)を除去し、かかる多層についてエッチングを行い、InPエッチング停止層22の一部まで除去することにより、第2のメサストライプ構造が形成される(図7C)。なお、所定の形状のパターンマスクより、スポットサイズ変換器部3に配置される領域(上部メサマスク42)を除去して(図8C)、各部位のメサ構造を形成する工程が終了する。
【0082】
各部位のメサ構造を形成する工程の後に、各部位のメサ構造を、半絶縁性InP埋め込み層24で埋め込む(埋め込み工程)。スポットサイズ変換器部3のInP第1クラッド層23の上面にマスクが配置しておらず、図8Dに示す通り、半絶縁性InP埋め込み層24がInP第1クラッド層23の上側にも形成される。これに対して、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造のInP第1クラッド層23の上面にはマスク41(第1のマスク)が配置しているので、図7Dに示す通り、半絶縁性InP埋め込み層24が第1のメサストライプ構造の両側に広がって形成されている。なお、LGLCフィルタ部9の第2のメサとライプ構造のInP第1クラッド層23の上面にはマスクが配置されておらず、スポットサイズ変換器部3と同様に、半絶縁性InP埋め込み層24がInP第1クラッド層23の上側にも形成される。
【0083】
埋め込み工程の後、残存するパターンマスクを除去し、p型のInP第2クラッド層25を積層する(クラッド層形成工程)。図7D及び図8Dは、クラッド層形成工程後の状態を示している。さらに、半導体基板の上面に、p型コンタクト層33とp型電極31を、半導体基板の下面に、n型電極34を形成し(電極形成工程)し、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5が作製される。図7E及び図8Eは、電極形成工程後の状態を示している。
【0084】
以上、当該実施形態に係る製造方法について説明した。当該実施形態に係る製造方法の特徴は、スポットサイズ変換器部3において下部メサマスク43をマスクとして、下部メサマスク43の周縁をエッチングにより除去する第1エッチング工程と、上部メサマスク42をマスクとして、上部メサマスク42の周縁をエッチングにより除去する第2エッチング工程とで、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造(と第2メサストライプ構造の上側に多層上部が配置される構造)を形成しているところにある。前述の通り、作製プロセスに共通の工程を含むことにより、工程やそれにかかるコストの増大を抑制しつつ作製することが出来、集積素子としての特性を向上させることが出来る。
【0085】
なお、波長可変レーザ部6の出射側に配置されるDBR部7の活性層である上部コア層12と、スポットサイズ変換器部3の上部コア層12とが、同一プロセスで形成されるので、端面における位置ずれなどが生じておらず、素子としての特性が向上している。
【0086】
次に、当該実施形態の製造方法で作製された集積半導体レーザ素子5の特性について説明する。ここで、スポットサイズ変換器部3の入射端面での上部コア層12及び下部コア層13のメサ幅を1μmとし、図4Aの出射側に配置される出射光伝搬領域を設けず、光遷移領域のみとした。スポットサイズ変換器部3の光遷移領域において、上部コア層12のメサ幅を、入射端面における1μmから出射方向に沿って徐々に小さくし、出射端面において0.2〜0.5μmのいずれかまで小さくしている。一方、下部コア層13のメサ幅を入射端面における1μmから出射方向に沿って徐々に大きくし、出射端面において1.8μm〜4μmのいずれかまで大きくしている。なお、スポットサイズ変換器部3の全長(光遷移領域の長さL)を100μmとしている。
【0087】
図9は、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の特性を示す図である。図9に、上部コア層12の出射端面におけるメサ幅をd[μm]、下部コア層13の出射端面におけるメサ幅を1.8μmとして、上部コア層12の異なるd[μm]に対するFFP[°]が示されている。VFFPは、半導体基板に垂直な方向(縦方向:積層方向)のFFPであり、HFFPは、半導体基板に平行な方向(横方向)のFFPである。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のVFFPの計算値を実線で、HFFPの計算値を破線で示すとともに、VFFPの実測値をシンボル◇で、HFFPの実測値をシンボル□で示している。また、比較例として、スポットサイズ変換器部を備えていない集積半導体LGLCレーザ素子について、VFFPの実測値をシンボル◆で、HFFPの実測値をシンボル■で示している。
【0088】
図9に示す通り、スポットサイズ変換器を備えていない集積半導体LGLCレーザ素子では、FFPが縦方向に60°、横方向に50°と大きい値となっているのに対して、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5は、20°程度にまで狭小化することができている。さらに、FFPの実測値が計算値とほぼ一致していることから、当該実施形態に係る製造方法によって、所望の特性を有する集積半導体レーザ素子5の作製が可能であることがわかる。
【0089】
一般に、光通信の伝送容量は年々増大の傾向にあり、これに対応して高速かつ大容量の伝送技術として波長分割多重(WDM)システムが実用化され始めている。WDMはITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)によって標準化された波長間隔(たとえば、波長間隔0.8nmもしくは0.4nm)の波長信号光を多重して1本の光ファイバ内に同時に伝送するシステムであり、ファイバ1本あたりの伝送容量を増やすことが可能である。
【0090】
このシステムを実現するためには、波長の異なる多数の半導体レーザダイオード(以下、レーザと略す)と、それを駆動するモジュール化された装置(以下、モジュールと略す)が必要であった。各レーザを製造するには、該レーザの波長に対応した組成波長となる
活性層をそれぞれ結晶成長させる必要があり、また、モジュールも該レーザの波長に対応してそれぞれ製造する必要があった。製造コストが高くなること、モジュールの在庫管理が煩雑であることから、通信キャリアや装置ベンダーにとってはコストのかかるモジュールであった。そこで、1種類のモジュールで波長を自由に変えられる波長可変レーザモジュールがあれば、必要なレーザは1種類若しくは少ない種類で足りるので、製造コストの低減及び在庫管理の煩雑さも解消できる。このレーザモジュールの実現には、所望の波長範囲(たとえば、中長距離通信の一般的な波長帯であるC−bandやL−band)で発振波長が可変である波長可変レーザが必要である。仮にC−bandの波長帯域を40nm、波長間隔0.4nmとした場合、100種類の異なる波長を1種類のレーザから切り換え発振させる必要があり、波長可変レーザには、広波長帯域に亘って安定した波長制御性が求められている。さらに、波長可変レーザは固定波長レーザの代替であるため、固定波長レーザと同程度のコストが望ましく、更に、レーザモジュールの小型・低消費電力化が望ましい。
【0091】
波長可変レーザに備えられる波長選択フィルタは、消費電力、波長変動量の観点から電流注入によるプラズマ効果を用いる場合が一般的である。すなわち、かかる波長選択フィルタでは、活性層に電流を注入し、電流量に応じて屈折率が変化することにより、波長選択フィルタが選択する光の波長が制御される。非特許文献5に、回折格子型の波長選択フィルタを用いた波長可変レーザが開示されているが、数nmの波長変化量を数十mAの電流注入で実現させるためには、屈折率を0.01前後変化させる必要がある。このように少ない電流で大きな屈折率変化を与えるためには、波長選択フィルタの光導波路となる活性層の層厚を大きくすることが望ましいが、活性層の層厚を大きくすると、層厚方向(縦方向)の光の閉じ込めをさらに強めることを意味しており、縦方向のFFPを拡大させる原因になる。
【0092】
以上、説明した通り、電流注入によって選択する波長が制御される波長選択フィルタを備える波長可変レーザには、活性層の層厚が大きいことによる縦方向の光の閉じ込めが大きいという問題を有しているところ、本発明を適用して、本発明に係るスポットサイズ変換器と、波長可変レーザとを、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子とすることにより、より顕著な効果が得られる。前述の通り、デュアルメサテーパー型のスポットサイズ変換器は2層のコア層を有しているので、波長選択フィルタも、高屈折率導波路と低屈折率導波路とを有し、それぞれを構成する2層のコア層を有しているものが望ましい。波長選択フィルタがLGLCフィルタのように、互いに横方向に並ぶ2本の光導波路に互いに異なる屈折率のコア層が用いられているのが、さらに望ましく、当該実施形態に係る製造方法を用いることで、製造工程においてプロセス工程をより共通にすることが出来る。
【0093】
また、一般に、波長可変レーザには、光を発生する利得部(ゲイン)と、出射方向に沿って該利得部の前後に配置される2個の反射特性を有する波長選択フィルタが配置される。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5のように、光の出射側に、スポットサイズ変換器のような素子を配置する場合、該利得部の前方に配置する波長選択フィルタは、反射特性によって光の波長を選択する反射型の波長選択フィルタが望ましく、例えば、DBRである。これに対して、該利得部の後方に配置する波長選択フィルタは、反射型の波長選択フィルタであっても、透過特性によって光の波長を選択する透過型の波長選択フィルタであってもよい。透過型の波長選択フィルタを用いる場合には、素子の後方端面に反射膜を配置することにより、透過型の波長選択フィルタと反射膜とで、所望の反射特性を有する波長選択フィルタが構成できる。なお、当該実施形態に係るLGLCフィルタは透過型の波長選択フィルタである。透過型の波長選択フィルタと反射膜とで一つの反射特性を有する波長選択フィルタを構成するが、それらが隣り合って配置されている必要はない。すなわち、利得部の後方に隣り合って、透過型の波長選択フィルタと反射膜が配置されてもいいし、透過型の波長選択フィルタと反射膜の間に他の素子が挿入されていてもよい。さらに、透過型の波長選択フィルタが利得部の前方に配置されていても、該透過型の波長選択フィルタと後方端面の反射膜で、1つの反射特性を有する波長選択フィルタを構成することができる。そして、2個の波長選択フィルタの少なくとも一方を、選択する波長が可変である波長選択フィルタを用いることにより、波長可変レーザが実現される。選択する波長が可変である波長選択フィルタの波長選択帯域が広く、他方の波長選択フィルタの波長選択帯域が狭くするとよい。当該実施形態に係る波長可変レーザ部6は、LGLCフィルタ部9が透過型の波長選択フィルタで、波長選択帯域が広く、DBR部7は、反射型の波長選択フィルタで、波長選択帯域が狭い。
【0094】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る半導体光素子は、第3の実施形態に係る半導体光素子と基本的な構造は同じであり、スポットサイズ変換器部3と波長可変レーザ部6とが同一の半導体基板上に集積された集積半導体レーザ素子5である。当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5は、その製造方法が第3の実施形態と異なっている。
【0095】
当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の主な製造工程について説明する。図10Aと図10B、及び、図11Aと図11Bは、当該実施形態に係る集積半導体レーザ素子5の製造工程の過程を示す断面図である。なお、図10Aと図10Bは、LGLCフィルタ部9の断面を、図11Aと図11Bは、スポットサイズ変換器部3の光遷移領域における断面を、それぞれ示している。
【0096】
n型InP基板21に多層を積層する多層形成工程は、第3の実施形態と同じである(図6)が、多層形成工程によって形成された多層より各部位のメサストライプ構造を形成する工程が、第3の実施形態と異なっている。各部位のメサ構造を形成する工程について、以下に説明する。
【0097】
第3の実施形態と同様に、多層の最上層であるInP第1クラッド層23の上側に、所定の形状のパターンマスクを形成する。所定の形状とは、2個の島形状からなるが、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造からスポットサイズ変換器部3に延伸する一方の島形状が第3の実施形態と異なっており、所定の形状のパターンマスクのスポットサイズ変換器部3における領域の形状は、上部メサストライプ構造ではなく下部メサストライプ構造の形状に対応している。すなわち、図4Aのスポットサイズ変換器部3の領域に、上部コア層12として示されている領域及び下部コア層13として示されている領域に対応しており、第3の実施形態における下部メサマスク43の領域と同じである。かかるパターンマスクが、図10Aには、図7Aと同様に、第1のメサストライプ構造に対応するマスク41(第1のマスク)と、第2のメサストライプ構造に対応するマスク41として、示されている。また、かかるパターンマスクのうち、スポットサイズ変換器部3の領域が、図11Aには、下部メサマスク44として、示されている。第3の実施形態と異なり、かかるパターンマスクで、スポットサイズ変換器部3に下部メサマスク43を形成している(下部マスク形成工程)。
【0098】
続いて、多層に形成されているパターンマスクをマスクとして、下部コア層13より低い深さまで1段階目のエッチングを行う。ここで、1段階目のエッチングは、例えばドライエッチングである。図10Aに示す通り、LGLCフィルタ部9においては、2個のマスク41(第1のマスク及び第2のマスク)をマスクとして、該マスクの周縁をそれぞれ下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する。かかる工程により、第1のメサストライプ構造が形成され、第2のメサストライプ構造については、後の工程で除去する多層上部が第2のメサストライプ構造の上に配置される構造となっている。すなわち、かかる工程で、第3の実施形態における2段階目のエッチング工程の後(図7B)と同様の状態となっている。また、図11Aに示す通り、スポットサイズ変換器部3においては、下部メサマスク44をマスクとして、該マスクの周縁を下部コア層13より低い深さまでエッチングにより除去する(第1エッチング工程)。第3の実施形態と異なり、第1エッチング工程により、下部メサストライプ構造の下部コア層13が所定の形状に形成されている。
【0099】
第1エッチング工程の後、公知のホトリソグラフィーによって、スポットサイズ変換器部3に形成される下部メサマスク44の一部を除去することにより、上部メサマスク45とする(上部メサマスク形成工程)。ここで上部メサマスク45の形状は、図4Aのスポットサイズ変換器部3の上部コア層12の形状に対応している。その際、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造に対応するマスク41(第2のマスク)を除去する。
【0100】
上部メサマスク形成工程の後、残存しているパターンマスクをマスクとして2段階目のエッチングを行う。ここで、2段階目のエッチングは、例えばウェットエッチングである。図11Bに示す通り、スポットサイズ変換器部3において、上部メサストライプ構造に対応する上部メサマスク45をマスクとして、該マスクの周縁を、多層の上面(InP第1クラッド層23の上面)からInPエッチング停止層22の一部まで、すなわち、上部コア層12と下部コア層13との間まで、エッチングにより除去する(第2エッチング工程)ことにより、上部メサストライプ構造を形成する。かかる多層が除去されたことにより、下部メサストライプ構造が形成される。この際、図10Bに示す通り、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層上部が除去され、第2のストライプ構造が形成される。その後の工程については、第3の実施形態に係る製造工程と同じであるので、省略する。
【0101】
当該実施形態に係る製造方法の特徴は、スポットサイズ変換器部3において下部メサマスク44をマスクとして、下部メサマスク44の周縁をエッチングにより除去する第1エッチング工程で、LGLCフィルタ部9の第1のメサストライプ構造(と第2メサストライプ構造の上側に多層上部が配置される構造)を形成し、さらに、スポットサイズ変換器部3において上部メサマスク45をマスクとして、上部メサマスク45の周縁をエッチングにより除去する第2エッチング工程で、LGLCフィルタ部9の第2のメサストライプ構造の多層上部を除去することにより、第1の実施形態より工程数をさらに減じて、スポットサイズ変換器部3とLGLCフィルタ部9とを形成することが出来ている。
【0102】
以上、本発明に係るスポットサイズ変換器、それを備える半導体光素子、及び、それらの製造法について説明した。本発明は、上記実施形態に限定されることなく、広く適用することが出来ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0103】
1 スポットサイズ変換器、2 集積半導体レーザ素子、3 スポットサイズ変換器部、4 利得部、5 集積半導体レーザ素子、6 波長可変レーザ部、7 DBR部、8 位相調整部、9 LGLCフィルタ部、11 クラッド層、12 上部コア層、13 下部コア層、21 n型InP基板、22 InPエッチング停止層、23 InP第1クラッド層、24 半絶縁性InP埋め込み層、25 InP第2クラッド層、31 p型電極、32 多重量子井戸層、33 p型コンタクト層、34 n型電極、36 前方端面膜、37 後方端面膜、41 マスク、42 上部メサマスク、43,44 下部メサマスク、45 上部メサマスク、51 入射端面、52 出射端面、111 クラッド層、112 コア層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、
前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、
一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、
前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、
ことを特徴とするスポットサイズ変換器。
【請求項2】
前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含み、
さらに、前記光遷移領域において前記半絶縁性半導体層の上側にp型の第2の半導体クラッド層が形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項3】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低い、
ことを特徴とする、半導体光素子。
【請求項4】
前記スポットサイズ変換器の前記光遷移領域における前記多層構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面と、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面とは、等しい高さとなっている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の半導体光素子。
【請求項5】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、前記上部コア層に接する活性層を含むメサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、
前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層の上側に積層される半導体層の層厚が、前記半導体レーザ素子の前記活性層の上側に積層される半導体層の層厚より大きい、
ことを特徴とする、半導体光素子。
【請求項6】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、電流によって光導波路の屈折率を変化させて選択する波長が制御される波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子。
【請求項7】
前記波長選択フィルタは、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層と、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層との間に生じる光の遷移により、光の波長を選択する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の半導体光素子。
【請求項8】
前記波長選択フィルタの選択波長帯域より狭い選択波長帯域を有する第2の波長選択フィルタと、
光を発光する利得部と、
光の位相を調整する位相調整部とが、
前記半導体基板上にモノリシックにさらに集積される請求項7に記載の半導体光素子。
【請求項9】
前記n型半導体基板、前記半絶縁性半導体層、前記第1の半導体クラッド層、及び前記第2の半導体クラッド層は、InP系材料によって形成される、
ことを特徴とする、請求項2に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項10】
前記第1の半導体クラッド層には、亜鉛がドーパントとして添加され、前記半絶縁性半導体層には、ルテニウムがドーパントとして添加される、
ことを特徴とする、請求項9に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項11】
下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、
前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、
一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器の製造方法であって、
前記上部コア層の形状に対応する上部メサマスクを前記下部コア層と前記上部コア層を含む多層の上面に形成する上部メサマスク形成工程を含むとともに、前記上部コア層及び前記下部コア層を所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程と、
前記上部メサマスクの、少なくとも前記光遷移領域に対応する部分を除去する、上部メサマスク除去工程と、
前記多層を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記光遷移領域において、前記多層の両側に加えて上側に前記半絶縁性半導体層が形成される、埋め込み工程と、
を含むことを特徴とする、スポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項12】
前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含むとともに、
前記埋め込み工程の後に、p型の第2の半導体クラッド層を積層する、クラッド層形成工程を、さらに含む、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項13】
前記デュアルメサ形成工程は、
前記上部マスクと異なる材料からなる下部メサマスクを前記上部メサマスクの上側に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、
前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、
前記下部メサマスクを除去する、下部メサマスク除去工程と、
前記上部メサマスクをマスクとして前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去するとともに、前記第1エッチング工程で前記所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、
をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項14】
前記デュアルメサ形成工程は、
下部メサマスクを前記多層の上面に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、
前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、
前記上部メサマスクをマスクとして、前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、
をさらに含み、
前記上部メサマスク形成工程において、前記下部メサマスクの一部を除去することにより、前記上部メサマスクにする、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載のスポットサイズ変換器と、メサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記埋め込み工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記メサストライプ構造の両側に前記半絶縁性半導体層が形成され、
前記クラッド層形成工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造の上側に前記p型の第2の半導体クラッド層を積層する、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層より低く、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程におけるエッチングで行う、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低く、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程におけるエッチングで行い、
前記第2のメサストライプ構造の上側に配置される部分を前記第2のメサストライプ構造の上面まで除去する工程を、前記第2エッチング工程におけるエッチングで行う、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【請求項1】
下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、
前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、
一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器であって、
前記光遷移領域において、前記多層構造の両側と上側が、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている、
ことを特徴とするスポットサイズ変換器。
【請求項2】
前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含み、
さらに、前記光遷移領域において前記半絶縁性半導体層の上側にp型の第2の半導体クラッド層が形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項3】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低い、
ことを特徴とする、半導体光素子。
【請求項4】
前記スポットサイズ変換器の前記光遷移領域における前記多層構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面と、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造の両側に配置される前記半絶縁性半導体層の下面とは、等しい高さとなっている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の半導体光素子。
【請求項5】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、前記上部コア層に接する活性層を含むメサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子であって、
前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層の上側に積層される半導体層の層厚が、前記半導体レーザ素子の前記活性層の上側に積層される半導体層の層厚より大きい、
ことを特徴とする、半導体光素子。
【請求項6】
請求項2に記載のスポットサイズ変換器と、電流によって光導波路の屈折率を変化させて選択する波長が制御される波長選択フィルタとが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子。
【請求項7】
前記波長選択フィルタは、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層と、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層との間に生じる光の遷移により、光の波長を選択する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の半導体光素子。
【請求項8】
前記波長選択フィルタの選択波長帯域より狭い選択波長帯域を有する第2の波長選択フィルタと、
光を発光する利得部と、
光の位相を調整する位相調整部とが、
前記半導体基板上にモノリシックにさらに集積される請求項7に記載の半導体光素子。
【請求項9】
前記n型半導体基板、前記半絶縁性半導体層、前記第1の半導体クラッド層、及び前記第2の半導体クラッド層は、InP系材料によって形成される、
ことを特徴とする、請求項2に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項10】
前記第1の半導体クラッド層には、亜鉛がドーパントとして添加され、前記半絶縁性半導体層には、ルテニウムがドーパントとして添加される、
ことを特徴とする、請求項9に記載のスポットサイズ変換器。
【請求項11】
下部コア層と、前記下部コア層より屈折率が大きい上部コア層と、を含む複数層が積層される多層構造が、n型半導体基板上に形成され、
前記多層構造は、光遷移領域において、光の出射方向に沿って前記上部コア層の幅が徐々に小さくなり、前記下部コア層の幅が徐々に大きくなっており、
一方の端面より入射される光が、前記上部コア層を伝搬し、前記光遷移領域において光が前記上部コア層から前記下部コア層へ遷移し、さらに、前記下部コア層を伝搬して、他方の端面より出射する、スポットサイズ変換器の製造方法であって、
前記上部コア層の形状に対応する上部メサマスクを前記下部コア層と前記上部コア層を含む多層の上面に形成する上部メサマスク形成工程を含むとともに、前記上部コア層及び前記下部コア層を所定の形状に形成するデュアルメサ形成工程と、
前記上部メサマスクの、少なくとも前記光遷移領域に対応する部分を除去する、上部メサマスク除去工程と、
前記多層を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記光遷移領域において、前記多層の両側に加えて上側に前記半絶縁性半導体層が形成される、埋め込み工程と、
を含むことを特徴とする、スポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項12】
前記複数層は、前記上部コア層の上側にp型の第1の半導体クラッド層を含むとともに、
前記埋め込み工程の後に、p型の第2の半導体クラッド層を積層する、クラッド層形成工程を、さらに含む、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項13】
前記デュアルメサ形成工程は、
前記上部マスクと異なる材料からなる下部メサマスクを前記上部メサマスクの上側に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、
前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を所定の深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、
前記下部メサマスクを除去する、下部メサマスク除去工程と、
前記上部メサマスクをマスクとして前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去するとともに、前記第1エッチング工程で前記所定の深さまでエッチングを行った領域をさらに前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、
をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項14】
前記デュアルメサ形成工程は、
下部メサマスクを前記多層の上面に前記下部コア層の形状に対応して形成する下部メサマスク形成工程と、
前記下部メサマスクをマスクとして、前記下部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記下部コア層より低い深さまでエッチングにより除去する、第1エッチング工程と、
前記上部メサマスクをマスクとして、前記上部メサマスクの周縁を前記多層の上面から前記上部コア層と前記下部コア層との間までエッチングにより除去する、第2エッチング工程と、
をさらに含み、
前記上部メサマスク形成工程において、前記下部メサマスクの一部を除去することにより、前記上部メサマスクにする、
ことを特徴とする、請求項11に記載のスポットサイズ変換器の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載のスポットサイズ変換器と、メサストライプ構造を有する半導体レーザ素子とが、同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記埋め込み工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造を半絶縁性半導体層で埋め込み、前記メサストライプ構造の両側に前記半絶縁性半導体層が形成され、
前記クラッド層形成工程において、前記スポットサイズ変換器の前記多層とともに、前記半導体レーザ素子の前記メサストライプ構造の上側に前記p型の第2の半導体クラッド層を積層する、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層より低く、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程におけるエッチングで行う、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載のスポットサイズ変換器と、
前記スポットサイズ変換器へ入射する光の光軸上に配置される第1のメサストライプ構造と該第1のメサストライプ構造の側方に並んで形成される第2のメサストライプ構造とを有する波長選択フィルタとが、
同一の半導体基板上にモノリシックに集積される半導体光素子の製造方法であって、
前記第1のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記上部コア層と同じ組成で形成される第1のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造は、前記スポットサイズ変換器の前記下部コア層と同じ組成で形成される第2のコア層を含み、
前記第2のメサストライプ構造の上面は前記第1のコア層の下面より低く、
前記波長選択フィルタの前記第1のメサストライプ構造及び前記第2のメサストライプ構造にそれぞれ対応して形成される第1のメサマスク及び第2のメサマスクの周縁を前記第2のコア層より低い深さまでエッチングにより除去する工程を、前記第1エッチング工程におけるエッチングで行い、
前記第2のメサストライプ構造の上側に配置される部分を前記第2のメサストライプ構造の上面まで除去する工程を、前記第2エッチング工程におけるエッチングで行う、
ことを特徴とする、半導体光素子の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−4688(P2013−4688A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133575(P2011−133575)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】
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