説明

スポーツシューズ用つま先カバー及びその取付方法

【目的】靴本体とつま先カバーの隙間に泥や砂が入らないようにする。
【構成】 靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部(16)と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部(12)を有するスポーツシューズ用つま先カバー(10)である。少なくとも前記保護部(12)が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されている。製造の容易さの観点からは、甲被部(16)及び保護部(12)を前記素材で一体形成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツシューズ用つま先カバー及びその取付方法に関する。特に、投球時につま先をグランドにこすりやすい野球のピッチャー用シューズの付属品として最適であるが、その他のスポーツシューズにおいても使用可能である。
【背景技術】
【0002】
本出願人の特許である下記特許文献1及び2では、本発明とほぼ同形状の野球靴用つま先カバーを開示している。
【特許文献1】特許第3845594号
【特許文献2】特許第3887529号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術においては、「つま先カバーは靴の甲被の一部前方を覆う甲被部16と、靴の最前方に位置する保護部12からなる。甲被部16は天然皮革から形成され、保護部12は合成樹脂(例えばウレタン樹脂)から形成されている。」「甲被部16と保護部12の接合面13は接着されている。」
【0004】
上記発明は好評を博しているが、激しいプレーの最中に靴本体とつま先カバーの隙間に泥や砂が入ることがあった。本発明はこの欠点を修正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスポーツシューズ用つま先カバーは、靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部と、シューズの最前方に位置し、本体と底部からなる保護部を有するスポーツシューズ用つま先カバーにおいて、少なくとも前記保護部が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明のスポーツシューズ用つま先カバーの取付方法は、靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部を有するつま先カバーをスポーツシューズに取り付ける方法であって、少なくとも前記保護部が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されているつま先カバーを用意する工程と、前記つま先カバーを前記軟化温度に加熱する工程と、加熱した前記つま先カバーをスポーツシューズにあてがい密着させる工程と、前記つま先カバーの温度が下がるまで放置する工程からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、つま先カバーのうち、少なくとも前記保護部が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されているので、ドライヤーや熱湯があれば誰でも軟化させることができる。軟化させたつま先カバーをシューズに取り付けると、シューズの外形にピッタリと隙間なく付着する。その結果、つま先カバーとシューズ本体の隙間がほとんど発生せず、泥や砂が入り込むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成するのは、最低限、保護部である。しかし、製造の容易さの観点からは、甲被部及び保護部を前記素材で一体形成するのが好ましい。硬度(デュロメータA硬度)は85〜98が好ましく、さらに87〜92がより好ましく、89が最も好ましい。
【0009】
保護部だけを前記素材で形成する場合には、甲被部は、例えば従来どおり、天然皮革から形成する。その場合には、甲被部と保護部を接着する必要があり、前記特許文献2の発明を採用することができる。
【0010】
軟化温度が50〜100℃であれば、誰でもドライヤー、アイロン、熱湯など容易に熱源を得られる。軟化温度が50℃よりも低いと、真夏に使用するときにも軟化してしまうので好ましくない。100℃よりも高いと一般の人が作業するのは危険である。エチレン−酢酸ビニル共重合体であれば、50〜100℃の温度帯で軟化する市販品が容易に得られる。さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、形状保持特性と感熱膨張特性ともに優れているという利点もある。
【0011】
本発明において「軟化温度」とは、温度の上昇によって弾性率が漸次小さくなり、わずかな応力によって変形するようになる温度をいい、具体的にはJISのK7206(ビカット法)に定義される熱変形温度である。
【0012】
エチレン−酢酸ビニル共重合体には、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。例えば、後述する発泡の際に、発泡体組成物の粘度を下げて発泡させやすくするために可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、シリコーン系オイル、エステル系オイル、エーテル系オイル、クマロンオイル、アスファルト、クマロン樹脂、パラフィンワックス、脂肪酸石鹸、ビスアーマイド、液状ゴム等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらを併用することも可能である。可塑剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と相溶性のあるものの中から選択することが好ましい。
【0013】
その他にも、コストダウン、補強、加工性向上、耐熱性向上等を目的として充填材を使用してもよい。充填材としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、珪酸マグネシウム、クレー、マイカ、ガラス等が挙げられるがこれらに限定されない。また、加工助剤、軟化剤、酸化防止剤等、着色剤等の一般的な高分子材料に使用される配合剤を混合してもよい。
【実施例1】
【0014】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0015】
図1は本発明のスポーツシューズ用つま先カバーの使用状態を示した斜視図である。図2は、つま先カバーを裏返した状態の正面図である。
【0016】
前記従来技術と同様に、本発明のスポーツシューズ用つま先カバー10も、靴の甲被の一部前方を覆う甲被部16と、靴の最前方に位置する保護部12からなる。甲被部16と保護部12は軟化温度50〜100℃、デュロメータA硬度89のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)により一体的に形成されている。
【0017】
保護部12は靴の正面に位置する本体12aと、靴底に位置する底面12bからなり、両者は断面L字型をなす。
【0018】
甲被部16は片方が靴紐部まで伸びて延長部16aを形成しており、この延長部16aに靴紐を通すための孔15が設けられている(図1参照)。
【0019】
このつま先カバーをシューズに取り付けるには次のような手順で行う。
(1)つま先カバーに例えばドライヤーの熱風を当てて軟化させる。
(2)軟化したつま先カバーをシューズに当てて隙間ができないように密着させる。
(3)つま先カバーの温度が下がるまで放置する。
必要があれば、さらに底面12bに釘打ちをして固定を確かなものとすることもできる。
【0020】
本発明によれば、つま先カバーがシューズに密着し、泥や砂が入るような事態が避けられる。
【実施例2】
【0021】
外観は実施例1と同じなので、便宜上、図1及び2を参照して説明する。実施例1と異なるのは、甲被部16は天然皮革で製造し、保護部12のみ軟化温度50〜100℃、デュロメータA硬度89のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)により形成していることである。
【0022】
甲被部16と保護部12を異質素材で形成するので、両者の接着に工夫する必要がある。異質素材の接着に関しては、例えば、上記特許文献2に開示されているように、次のような構成を採用することができる。
【0023】
甲被部16と保護部12の接合面13は溶着されている。合成樹脂を天然皮革に溶着させるのであるから、必ずしも高強度の接合が得られるとは限らない。そのため、接合面13の面積を広くして、接合強度を高めている。即ち、甲被部の周縁部を傾斜して切断し、その傾斜面に保護部12を溶着している。
【0024】
接合力を高めるために、甲被部16の左右両端17、18には貫通孔14が設けられている。貫通孔は、図2では、左端17に2個、右端18に3個設けられている。図3はその貫通孔14の断面状態を示したもので、貫通孔14を保護部12の樹脂12cが充填している。さらに保護部12の樹脂をつま先カバーの内側に盛り上げてストッパー12dを形成し、樹脂12cの脱落を防止して接合力が高めている。
【0025】
本発明では、さらに甲被部16と保護部12の接合力を高めるために、甲被部16に柔軟性を付与している。即ち、甲被部の延長部16aが設けられている側の保護部の一端20に薄肉部21が形成されている。このようにすることにより、この部分の甲被部16が柔軟性を有することになり、甲被部16と保護部12が外れにくくなる。薄肉部21は、この実施例では複数のくぼみであり、断面は、図4に示すように、波形となっている。
【0026】
図示しないが、薄肉部21は、例えば次のように変形することもできる。
(1)単一の広いくぼみを設ける。
(2)多数の小さな貫通孔を設ける。
(3)波形以外の断面を有する単一又は複数のくぼみを設ける。
(4)くぼみや孔ではなく、全体的に、前方に比べ側部を比較的に薄くする。
(5)薄肉部を甲被部の延長部16aが設けられている側だけでなく、その反対側にも設ける。
【0027】
このつま先カバーをシューズに取り付ける手順は実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明実施例1及び2のスポーツシューズ用つま先カバーの使用状態を示した斜視図である。
【図2】本発明実施例1及び2のつま先カバーを裏返した状態の正面図である。
【図3】本発明実施例2を示す、図2のA−A断面図である。
【図4】本発明実施例2を示す、図2のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 スポーツシューズ用つま先カバー
12 保護部
12a 保護部本体
12b 保護部底面
13 接合面
16 甲被部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部(16)と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部(12)を有するスポーツシューズ用つま先カバー(10)において、
少なくとも前記保護部(12)が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されていることを特徴とするスポーツシューズ用つま先カバー。
【請求項2】
靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部(16)と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部(12)を有するスポーツシューズ用つま先カバー(10)において、
前記保護部(12)及び前記甲被部(16)が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で一体的に形成されていることを特徴とするスポーツシューズ用つま先カバー。
【請求項3】
靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部(16)と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部(12)を有するつま先カバー(10)をスポーツシューズに取り付ける方法であって、
少なくとも前記保護部(12)が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されているつま先カバーを用意する工程と、
前記つま先カバーを前記軟化温度に加熱する工程と、
加熱した前記つま先カバーをスポーツシューズにあてがい密着させる工程と、
前記つま先カバーの温度が下がるまで放置する工程
からなることを特徴とするスポーツシューズ用つま先カバーの取付方法。
【請求項4】
靴の甲被の少なくとも一部前方を覆う甲被部(16)と、靴の最前方に位置し、本体と底部からなる保護部(12)を有するつま先カバー(10)をスポーツシューズに取り付ける方法であって、
前記保護部(12)及び前記甲被部(16)が軟化温度50〜100℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成されているつま先カバーを用意する工程と、
前記つま先カバーを前記軟化温度に加熱する工程と、
加熱した前記つま先カバーをスポーツシューズにあてがい密着させる工程と、
前記つま先カバーの温度が下がるまで放置する工程
からなることを特徴とするスポーツシューズ用つま先カバーの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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