説明

スポーツ用品

【課題】 本発明はスポーツ用品に係り、鮮やかな外観を長期に亘って維持できる装飾を施したスポーツ用品を提供することを目的とする。
【解決手段】 用品本体の外側に、光輝性装飾層を粘着剤層で固着して装飾層を設けると共に、該装飾層を覆って透明状クリヤー層を設けたスポーツ用品であって、前記光輝性装飾層を、光を反射する光輝性金属蒸着層と、当該光輝性金属蒸着層を覆ってその表面に取り付き、外部からの光を前記光輝性金属蒸着層へ透過し、且つ光輝性金属蒸着層の色を隠蔽する有色層とで形成すると共に、前記光輝性装飾層は、周縁部が粘着剤層を覆って立体感を有し、前記透明状クリヤー層の表面は、装飾層を設けた部分が他の部位より膨出した形状となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾を施した釣竿やリール等の釣用品、ゴルフ用品、テニスやバトミントン用品等のスポーツ用品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、従来、釣竿やリール等の釣用品、ゴルフクラブ等のゴルフ用品、テニスやバトミントンのラケット用品等の各種スポーツ用品は、外観品質向上のため、ベースとなるフィルム上にホログラム箔や物理蒸着を施した箔を貼着して、これを用品の表面に固着することが行われている。
【0003】
図4及び図5は特許文献1に開示された釣竿を示している。この従来例は、テトロン材のベース1の上に数μmの厚さのホログラム箔3を乗せて、この表面を数μmの透明状保護層5で覆い、更に、ベース1の裏面側に粘着剤層9を付着し、これを釣竿本体7の表面に固着させて装飾層11を形成している。
【0004】
そして、装飾層11とその周囲をクリヤー塗装して、釣竿本体7の表面に厚さ40〜50μm程のクリヤー層13を設けている。このクリヤー層13によって装飾層11の剥離が防止され、また、図示するようにクリヤー層13は表面張力の関係で装飾層11の上部で上方に凸な曲面形状になるため、ホログラム箔3の光輝感を凸レンズとして増幅させ、この結果、ホログラム箔3の輝きが立体的に浮き出て見え、宝石感を醸し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−182546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この従来例は、ホログラム箔3の形状保持や光輝性を維持するため、構造上、ベース1や保護層5を設けなければならなかった。
【0007】
また、ホログラム箔3を装飾層11の表面側に配置した構造上、長期に亘る使用によってホログラム箔3に色抜けが発生し易く、更に、装飾層11部分に釣竿の変形や衝撃が繰り返し作用すると、ホログラム箔3にクラックが発生する虞があった。
【0008】
このため、この従来例は、外部から視認するホログラム箔3自体の鮮やかな輝きを装飾に利用した構造上、ホログラム箔3に色抜けやクラックが発生してしまうと、光輝感が低下して商品価値が低下してしまう不具合があった。
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、鮮やかな外観を長期に亘って維持できる装飾を施したスポーツ用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる目的を達成するため、本発明は、用品本体の外側に、光輝性装飾層を粘着剤層で固着して装飾層を設けると共に、該装飾層を覆って透明状クリヤー層を設けたスポーツ用品であって、前記光輝性装飾層を、光を反射する光輝性金属蒸着層と、当該光輝性金属蒸着層を覆ってその表面に取り付き、外部からの光を前記光輝性金属蒸着層へ透過し、且つ光輝性金属蒸着層の色を隠蔽する有色層とで形成すると共に、前記光輝性装飾層は、周縁部が粘着剤層を覆って立体感を有し、前記透明状クリヤー層の表面は、装飾層を設けた部分が他の部位より膨出した形状となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明状クリヤー層が装飾層の上部で上方に凸な曲面形状になって、装飾層の光輝感を増幅させる凸レンズとして機能するため、装飾層の輝きが立体的に浮き出て見え、宝石感を醸し出すことができる。
【0012】
この結果、立体感を有する装飾層が鮮やかな外観品質を醸し出し、通常の塗装を施したゴルフクラブに比し美観に優れ意匠的に優れたゴルフクラブを提供することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、有色層の内側に金属蒸着層を蒸着した構造上、装飾層を設けるに当たり、ベースとなる形状保持のための補強フィルムを用いる必要がない利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用したゴルフクラブシャフトの一実施形態の正面図である。
【図2】装飾層の部分断面図である。
【図3】装飾シールの部分断面図である。
【図4】装飾を施した従来の釣竿の部分正面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1乃至図3は本発明をゴルフ用品に適用した一実施形態を示し、図1に於て、15は強化繊維にマトリックス樹脂を含浸したプリプレグシートを芯金に巻回し、更に、強度の向上を図るため、補強プリプレグシートを部分的に巻回した後、テーピングによる締め付け,加熱硬化,芯金除去,テープの除去,研磨,塗装等の工程を経て製造されたゴルフクラブシャフト(以下、「シャフト」という)で、図示しないグリップが取り付くシャフト15の後端側表面に装飾層17が設けられている。
【0017】
図2は装飾層17の部分断面図、図3は装飾層17をシャフト15に設ける装飾シール(粘着シート)19の部分断面図を示し、先ず、図3の装飾シール19について説明する。
【0018】
図中、21は光輝性装飾層、23は光輝性装飾層21の裏面側に取り付く粘着剤層で、光輝性装飾層21の表面に厚さ25μm程のウレタンからなる柔軟性フィルム25が張り付き、粘着剤層23に厚さ125μm程の剥離フィルム27が貼着されて装飾シール19が形成されている。
【0019】
そして、装飾シール19を使用して装飾層17を設ける場合、柔軟性フィルム25と剥離フィルム27を取り去り、粘着剤層23により光輝性装飾層21をシャフト15の表面に貼着する。
【0020】
光輝性装飾層21は、着色(例えば赤色)された透明な厚さ10〜30μm程度、特に凸状に膨出させたい場合は25〜60μm程度とした柔軟性樹脂フィルムからなる有色層29と、有色層29の裏面側に蒸着された光輝性を有する厚さ0.2μm〜2μm程の金属蒸着層31とで構成されている。有色層29を形成する柔軟性樹脂フィルムは、一例として破断伸度60%以上(好ましくは120%以上)、また、20%の伸度範囲で元の状態に復元する特性を有している。
【0021】
有色層29は外部からの光を金属蒸着層31に透過し、且つ金属蒸着層31の金属色を隠蔽する特性を有している。一方、金属蒸着層31は、有色層29を透過した光を反射させて有色層29に光輝性を与える機能を有している。
【0022】
このため、光輝性装飾層21(有色層29)を上から見たとき、通常の塗装に比し有色層29に着色された色が輝いて(光輝性を有して)視認できるようになっている。尚、有色層29に施す着色は、ゴルフクラブの製造業者や販売業者等が作りたい色合いのものが適宜選択される。
【0023】
一方、粘着剤層23は、一例として25μm程の厚さを有するアクリル系粘着剤からなり、装飾シール19の未使用時は、図3に示すように粘着剤層23によって光輝性装飾層21が剥離フィルム27に貼着されている。
【0024】
そして、柔軟性フィルム25と剥離フィルム27を取り去り、光輝性装飾層21をシャフト15の表面に貼着して装飾層17が形成されるが、例えば図1に示すように、装飾層17が複数個の図形Aを並べて形成されるとき、予め各図形Aが、夫々、個々に光輝性装飾層21と粘着剤層23とで形成されて一枚の剥離フィルム27に並べて貼着され、それらの表面を柔軟性フィルム25が張り付いている。そして、これらをシャフト15に貼り付ける場合、既述したように図形毎に柔軟性フィルム25を剥がし、これらを剥離フィルム27から剥がしてシャフト15に貼着する。
【0025】
また、剥離フィルム27に貼着された光輝性装飾層21は、装飾シール19の製造時にプレスされて光輝性装飾層21の周縁部が粘着剤層23を覆って立体感を有しており、図2に示すように各図形Aを形成する光輝性装飾層21をシャフト15に貼着したとき、光輝性装飾層21の周縁部が粘着剤層23を覆って、各図形Aの装飾層17が立体感を醸し出すようになっている。
【0026】
尚、既述したように装飾シール19の製造時に光輝性装飾層21がプレスされてその周縁部が粘着剤層23を覆うように形成される結果、光輝性装飾層21の周縁部の先端にはプレスされた薄肉な粘着剤層23が存在しており、シャフト15に貼着したとき、光輝性装飾層21の周縁部の先端はこの薄肉な粘着剤層23によってシャフト15の表面に確実に貼着されている。
【0027】
そして、図2の如く各図形Aの光輝性装飾層21をシャフト15に貼着して装飾層17を設けた後、装飾層17とその周囲にウレタン塗料,エポキシ塗料,フッ素塗料等の塗料を塗布して、透明または半透明な透明状クリヤー層33が設けられており、複数の図形Aからなる装飾層17は厚さが20μm以上80μm以下で、透明状クリヤー層33の表面は、装飾層17の上部で上方に凸な曲面形状となっている。
【0028】
本実施形態はこのように構成されており、既述したようにシャフト15の後端側表面に装飾層17を設け、更にその表面を覆って透明状クリヤー層33を設けた後、シャフト15の先端にゴルフクラブヘッドを装着し、シャフト15の後端側にグリップを装着してゴルフクラブが製造される。
【0029】
そして、例えば店頭でこのゴルフクラブを手にした購買者は、シャフト15に施された装飾層17を目にすることとなるが、透明状クリヤー層33を通して装飾層17を上から見ると、金属蒸着層31からの反射光により有色層29の色が輝いて視認される。
【0030】
而も、透明状クリヤー層33は、表面張力の関係で装飾層17の上部で上方に凸な曲面形状になるため、装飾層17の光輝感を凸レンズとして増幅させ、この結果、装飾層17の輝きが立体的に浮き出て見え、宝石感を醸し出すことができる。
【0031】
従って、通常の塗装を施したゴルフクラブに比し、装飾層17が視覚を通じて鮮やかな美観を起こさせ、外観の優れたゴルフクラブとなって購買者の購買意欲を喚起させることとなる。
【0032】
また、粘着剤層23を覆うように形成された光輝性装飾層21の周縁部の先端とシャフト15の表面との間には薄肉な粘着剤層23が介在しているため、光輝性装飾層21の周縁部の先端がシャフト15の表面に確実に貼着される。
【0033】
而も、有色層29の内側に金属蒸着層31が蒸着され、有色層29が破断伸度60%以上、且つ20%の伸度範囲で元の状態に復元する柔軟性樹脂フィルムで形成されているため、ゴルフクラブでボールを打球してシャフト15の変形や衝撃が繰り返し作用しても、有色層29の柔軟性樹脂フィルムが変形や衝撃を許容して装飾層17の剥離やめくれをより確実に防止する。
【0034】
更に、変形や衝撃が繰り返し作用して、仮に金属蒸着層31の金属粒子間に隙間や亀裂が生じることがあっても、光輝性が損なわれることがなく鮮やかな装飾層17が長期に亘って維持されることとなる。
【0035】
このように本実施形態によれば、
(a)透明状クリヤー層33が装飾層17の上部で上方に凸な曲面形状になって、装飾層17の光輝感を増幅させる凸レンズとして機能するため、装飾層17の輝きが立体的に浮き出て見え、宝石感を醸し出すことができる。
【0036】
この結果、立体感を有する装飾層17が鮮やかな外観品質を醸し出し、通常の塗装を施したゴルフクラブに比し美観に優れ意匠的に優れたゴルフクラブを提供することが可能となる。
【0037】
(b)図4及び図5の従来例では、ホログラム箔3の形状保持や光輝性を維持するためにベース1や保護層5を設けなければならなかったが、本実施形態は有色層29の内側に金属蒸着層31を蒸着した構造上、装飾層17を設けるに当たり、ベースとなる形状保持のための補強フィルムを用いる必要がない利点を有する。
【0038】
(c)変形や衝撃が繰り返し作用して、仮に金属蒸着層31の金属粒子間に隙間や亀裂が生じることがあっても光輝性が確保できるため、図4の従来例に比し長期に亘って鮮やかな外観品質を維持することが可能となる。
【0039】
(d)粘着剤層23を覆うように形成された光輝性装飾層21の周縁部の先端とシャフト15の表面との間には薄肉な粘着剤層23が介在しているため、ゴルフクラブでボールを打球してシャフト15の変形や衝撃が繰り返し作用しても、装飾層17の剥離やめくれが防止できる。
【0040】
(e)有色層29の内側に金属蒸着層31が蒸着され、有色層29が破断伸度60%以上、且つ20%の伸度範囲で元の状態に復元する柔軟性樹脂フィルムで形成されているため、ゴルフクラブでボールを打球してシャフト15の変形や衝撃が繰り返し作用しても、柔軟性樹脂フィルムが変形や衝撃を許容して装飾層17の剥離やめくれが防止できる利点を有する。
【0041】
尚、前記実施形態は、本発明をシャフトに適用したが、本発明は、釣竿やリール等の釣用品、テニスやバトミントン用品等の各種スポーツ用品に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
15・・・シャフト、17・・・装飾層、19・・・装飾シール、21・・・光輝性装飾層、23・・・粘着剤層、25・・・柔軟性フィルム、27・・・剥離フィルム、29・・・有色層、31・・・光輝性装飾層、33・・・透明状クリヤー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用品本体の外側に、光輝性装飾層を粘着剤層で固着して装飾層を設けると共に、該装飾層を覆って透明状クリヤー層を設けたスポーツ用品であって、
前記光輝性装飾層を、光を反射する光輝性金属蒸着層と、当該光輝性金属蒸着層を覆ってその表面に取り付き、外部からの光を前記光輝性金属蒸着層へ透過し、且つ光輝性金属蒸着層の色を隠蔽する有色層とで形成すると共に、
前記光輝性装飾層は、周縁部が粘着剤層を覆って立体感を有し、
前記透明状クリヤー層の表面は、装飾層を設けた部分が他の部位より膨出した形状となっていることを特徴とするスポーツ用品。
【請求項2】
前記用品本体の外側と、前記粘着剤層を覆う前記光輝性装飾層の周縁部との間に、粘着剤層が介在していることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。
【請求項3】
前記有色層は、着色され、破断伸度60%以上の柔軟性樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。
【請求項4】
前記透明状クリヤー層の表面は、前記装飾層を設けた部分が他の部位より膨出し、前記装飾層は厚さが20μm以上80μm以下で、前記光輝性装飾層の周縁部が粘着剤層を覆って装飾層が立体感を有することを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78322(P2013−78322A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252107(P2012−252107)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2008−262919(P2008−262919)の分割
【原出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】