説明

スライダー

【課題】第2のスライドレールを第1のスライドレールに自動的に引き寄せるばねの自由端と第2のスライドレールとの結合/解放を簡単な構造で行うことができるスライダーを提供すること。
【解決手段】
固定側の第1のスライドレール12に可動側の第2のスライドレール14を自動的に引き寄せるばね22R、22Lの自由端と第2のスライドレール14の内端14Uとが磁気的に結合され、第2のスライドレール14が所定位置まで第1のスライドレールから離反すると、ばね22R、22Lの自由端が第1のスライドレールに設けられた磁気ストッパーに磁気的に吸着されるとともに、第2のスライドレール14との磁気的結合が解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体、壁体の如き固定物体に引出しや引戸の如き可動物体を摺動自在に支持するスライダーに関し、特に、固定物体と可動物体とにそれぞれ取り付けられて相互に摺動自在に重合する少なくとも2つのスライドレールのうち固定物体側の第1のスライドレールに対して可動物体側の第2のスライドレールが所定の位置に近づくと、第2のスライドレールが第1のスライドレールに自動的に引き寄せられたり第1のスライドレールから自動的に引き離されたりするようにしたスライダーの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動物体が重合位置に自動的に引き寄せられるように構成されたスライダーを例に掲げて説明すると、このようなスライダーは、固定物体の壁(例えば、引出キャビネットの筐体の内壁)と可動物体(例えば、引出キャビネットの引出し本体)との間に取付けられ、可動物体を固定物体に引き寄せたり、可動物体を固定物体から引き離したりするのを円滑に行うことができるようにし、また可動物体を固定物体に引き寄せて両者が重合する位置に近づくと、可動物体がばねによって自動的に重合位置まで引き寄せられるようになっている。
【0003】
この種のスライダーは、固定物体に取付けられる第1のスライドレールと、この第1のスライドレールに摺動自在に係合し固定物体に対してその壁面に沿って移動する可動物体に取付けられる第2のスライドレールと、可動物体がばねに抗して固定物体から引き離されると、所定位置でばねの自由端から解放されると同時にばねの伸長状態を維持し、また第2のスライドレールを伸長状態に維持されているばねの自由端がある位置まで第1のスライドレールに引き寄せると、ばね手段の伸長状態の維持から解放して第2のスライドレールを第1のスライドレールに自動的に引き寄せるようにしたばね結合/解放手段とを備えている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1、2に開示されている従来技術のスライダーでは、このばね結合/解放手段は、第1のスライドレール側に一端(固定端)が固定され、他端(可動端又は自由端)が第2のスライドレール側に着脱自在に結合されるばね(特許文献1の符号6、特許文献2の符号14参照)の他に、このばねの自由端に保持され、可動物体の引き離し方向への第2のスライドレールの移動につれて第1のスライドレールに沿って可動物体の引き離し方向に移動するばね保持部材(特許文献1の符号3、特許文献2の符号12参照)と、第2のスライドレールが第1のスライドレールから可動物体の引き離し方向へ所定位置(ばね解放位置)まで移動すると、ばね保持部材から第2のスライドレールの結合を解放するばね解放機構とから成っている。
【0005】
しかし、従来技術のスライダーでは、ばね解放機構は、第1のスライドレール側に形成さればね保持部材の案内ピンが係入する案内溝(特許文献1の符号4、特許文献2の符号11参照)と、第2のスライドレールがばね解放位置に達するまではばね保持部材の保持溝(特許文献1の符号9、特許文献2の符号8c参照)内に第2のスライドレール側の結合ピン(特許文献1の符号5、特許文献2の符号14参照)が係入してばね保持部材と第2のスライドレールとが結合され、第2のスライドレールがばね解放位置に達すると、ばね保持部材が変位してその案内溝から第2のスライドレール側の結合ピンが脱出してばね保持部材から第2のスライドレールから解放するようにしているので、ばね結合/解放手段が複雑な構造を有するという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特公平5−23763号公報
【特許文献2】特開2004−236973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、第2のスライドレールを第1のスライドレールに引き寄せたり引き離したりするばねの自由端と第2のスライドレールとの結合/解放を簡単な構造で行うことができるスライダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題解決手段は、 固定物体に取付けられるべき第1のスライドレールと、前記第1のスライドレールに摺動自在に係合し前記固定物体に対してその壁面に沿って移動する可動物体に取付けられるべき第2のスライドレールと、前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して所定位置まで引き寄せられ又は引き離されると前記第2のスライドレールを前記第1のスライドレールに弾性的に自動的に引き寄せ又は引き離すばね手段と、前記第2のスライドレールを前記ばね手段に抗して前記第1のスライドレールから前記所定位置を越えて引き離され又は引き寄せられると、前記第2のスライドレールを前記ばね手段から解放すると同時に前記所定位置で前記ばね手段の伸長状態を維持し、また前記第2のスライドレールが前記所定位置を越えて前記第1のスライドレールに引き寄せられ又は引き離されると、前記ばね手段の伸長状態の維持を解放するばね結合/解放手段とを備えたスライダーにおいて、前記ばね結合/解放手段は、前記ばね手段の自由端に設けられて前記ばね手段の伸長と共に変位するばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレールに設けられて前記第2のスライドレールと共に移動する第2のスライドレール側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して前記所定位置に離反又は接近するまで前記ばね手段が伸長すると、前記ばね側可動磁気結合部材を磁気的に吸着して前記ばね手段の伸長状態を維持する磁気ストッパーとから成り、前記ばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材も相互に磁気的に吸着して前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して前記所定位置に達して前記ばね側可動磁気結合部材が前記磁気ストッパーに衝合するまで前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材が前記ばね側可動磁気結合部材に結合するようにしたことを特徴とするスライダーを提供することにある。
【0009】
本発明の課題解決手段において、前記ばね結合/解放手段の前記ばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレール側磁気結合部材とのいずれか一方が磁石であって他方が磁石に吸着してくっつく材料(以下磁石吸着性材料と称する)であるか、双方とも磁石とすることができ、また前記ばね側可動軸結合部材が磁石である場合には、前記磁気ストッパーは、磁石吸着性材料か磁石とすることができるが、前記ばね側可動磁気結合部材が磁石でない場合には、前記磁気ストッパーは、磁石でなければならない。
【0010】
この場合、前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材と前記磁気ストッパーとは、相互に干渉しないように前記第2のスライドレールの移動方向とは直角の方向に位置をずらせて配置されている形態とするのが好ましい。
【0011】
前記ばね手段は、1対の引っ張りばね又は1つの引っ張りばねとすることができ、更に、ばね手段は、前記引っ張りばねの収縮を緩衝するダンパーを含むことができ、前記ばね側可動磁気結合部材は、前記ダンパーの伸縮ロッドに支持されている形態とするのが好ましい。
【0012】
さもなければ、前記ばね手段は、前記引っ張りばねの伸縮を案内する案内部材を含み、この案内部材は、案内孔又は案内溝を摺動する案内杆から成り、前記ばね側可動磁気結合部材が案内杆に連結されて前記引っ張りばねの伸縮を案内するようにしてもよいし、ばね側可動磁気結合部材自体が案内孔又は案内溝を摺動してばね側可動磁気結合部材が案内部材の一部を兼ねていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記のように、第2のスライドレールを第1のスライドレールに引き寄せ又は引き離すばね手段と第2のスライドレールとの結合/解放は、ばね保持部材と結合ピンとの変位によって行う従来技術の複雑な構造を必要とすることなく、簡単な磁気結合作用で行うことができるので、スライダーを簡単な構造で安価に提供することができ、またこの結合/解放は、磁気的な結合と離反とで行われるので、ばね結合/解放を常に適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のスライダーが使用された引出しキャビネットを示し、同図(A)は引出キャビネットを閉じた状態の斜視図、同図(B)は、引出しキャビネットを若干開いた状態の斜視図である。
【図2】本発明の1実施例によるスライダーの第1と第2のスライドレールの重合状態(引出キャビネットが閉じて第2のスライドレールが第1のスライドレールに引き寄せられた状態に相応する状態)のスライダーを示し、同図(A)は、その側面図、同図(B)は、その底面図である。
【図3】第2のスライドレールが第1のスライドレールからやや引き離された状態のスライダーを示し、同図(A)は、その側面図、同図(B)は、その底面図である。
【図4】第2のスライドレールが第1のスライドレールから完全に引き離された状態(引出キャビネットが完全に開いた状態に相応する状態)のスライダーを示し、同図(A)は、その側面図、同図(B)は、その底面図である。
【図5】第2のスライドレールが第1のスライドレールから完全に引き離されているが、ばね手段が伸長状態ではなく収縮状態に戻された誤動作状態のスライダーを示し、同図(A)は、その側面図、同図(B)は、その底面図である。
【図6】同図(A)乃至(D)はそれぞれ図2乃至図5の状態の要部拡大断面の底面図である。
【図7】本発明の第2の実施例によるスライダーの図3と同じ状態を示し、同図(A)乃至(C)は、それぞれ、その側面図、底面図、要部拡大断面の底面図である。
【図8】図7のスライダーの誤動作状態を示し、同図(A)乃至(C)は、それぞれ、その側面図、底面図、要部拡大断面の底面図である。
【図9】ばね手段が1つの引っ張りばねから成っている本発明の更に他の実施例を支援し、同図(A)は、ばね手段の要部の横断面図、同図(B)は、その側面図である。
【図10】自動引き離しの形態のスライダーに本発明を適用した更に他の実施例を示すが、第2のスライダーレールが第1のスライダーレールから引き離された状態の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態によるスライダー10を述べると、このライダー10は、引出しキャビネット、引き戸式キャビネット又は建築構造物の窓、開口の引き戸等に適用することができるが、図1には、引出しキャビネット1に適用し、引出しが所定位置まで閉じられると、自動的に閉じ位置方向に引き寄せられる形態とした場合が示されている。引出しキャビネット1は、前面が開口する筐体(固定物体)2とこの筐体2内に出し入れ自在に収納される引出し本体(可動物体)3とから成っている。このような引出キャビネットに使用する場合には、左右1対のスライダー10R、10Lが用いられる。これらのスライダー10R、10Lは、筐体2の両側の相対する内壁面と引出し本体3の両側面との間に取り付けられて引出し本体3を筐体2内に引出自在に支持している。
【0016】
1対のスライダー10R、10Lは、対称的であることを除いて同じ構造を有するので、総体的にスライダー10として以下にその構造を詳細に述べる。
【0017】
スライダー10は、筐体(固定物体)2の内壁に取付けられるべき第1のスライドレール12と、この第1のスライドレール12に摺動自在に係合し筐体2に対してその壁面に沿って移動する引出し本体(可動物体)3に取付けられるべき第2のスライドレール14と、引出し本体(可動物体)3が筐体2側に所定位置まで引き寄せられると(引き込まれると)、第2のスライドレール14を第1のスライドレール12に弾性的に自動的に引き寄せるばね手段20と、第2のスライドレール14をばね手段20に抗して第1のスライドレール12から引出し本体3と筐体2との間の所定位置(これは、第1のスライドレールと第2のスライドレールとの間の所定位置でもある)を越えて引き離される(引き出されると)、第2のスライドレール14をばね手段20から解放すると同時に前記の引出し本体3と筐体2との間の所定位置(即ち第1のスライドレール12と第2のスライドレール14との間の所定位置)でばね手段20の伸長状態を維持するが第2のスライドレール14が前記所定位置を反対側に越えて第1のスライドレール12に引き寄せさられると、ばね手段20の伸長状態の維持を解放するばね結合/解放手段30とを備えている。
【0018】
図示の例では、第1のスライドレール12が外側スライドレールであり、第2のスライドレール14が内側スライドレールであるが、第1のスライドレール12が内側で第2のスライドレール14が外側であってもよい。また、図示の例では、第1と第2のスライドレール12、14の間に中間スライドレール16が設けられているが(図4参照)、この中間スライドレール16は、省略してもよい。なお、第1及び第2のスライドレール12、14は、筐体2、引出し本体3にそれぞれ取付けるのに用いられる図示しない取付けボルト用の孔を有する。
【0019】
第1のスライドレール12、第2のスライドレール14及び中間スライドレール16は、いずれも断面U字形に成形された溝形鋼の如き金属製の構造部材から成っているが、金属以外の材質であってもよい。第1のスライドレール12と中間スライドレール16とは、それらのウエブ12W、16Wが重合するように、側壁12S、16S間に配置された図示しない滑動部材(両側からボールの一部が露出するように多数のボールが間隔をあけて保持されている板状部材)によって摺動自在に嵌合され、第2のスライドレール14は、そのウエブ14Wが中間スライドレール16のウエブ16Wとは反対側に面するように、その側壁14S、16S間に配置された図示しない滑動部材(側壁12S、16S間の滑動部材と同様の構造のもの)によって相互に摺動自在に嵌合されている。
【0020】
ばね手段20は、図2乃至図5の(A)に示すように、第1のスライドレール12の左右の側壁12Sに沿って側壁12Sの内側に配置された1対の引っ張りばね22R,22Lから成っており、その一端(固定端)は、第1のスライドレール12の内端(第2のスライドレール14が離反する方向と反対側の端)に取り付けられたばね保持部材24に固定され、他端(自由端)は、ばね連結片26の両端にそれぞれ固定されている。従って、1対の引っ張りばね22R、22Lは、ばね連結片26を引っ張ったり、押し込んだりして伸縮することができる。なお、ばね手段20は、1つの引っ張りばねから成っていてもよく、この場合にも、引っ張りばねの一端(固定端)は、第1のスライドレール12の内端に適宜固定され、他端(自由端)は、後に述べるばね結合/解放手段30の可動側磁気結合部材を有する。
【0021】
ばね結合/解放手段30は、特に、図6に詳細に示されているように、ばね手段20の自由端(可動端)、図示の形態では、1対の引っ張りばね22R、22Lのばね連結片26に固定されてばね手段20の伸縮と共に変位するばね側可動磁気結合部材32と、第2のスライドレール14の内端14Uに設けられて第2のスライドレール14と共に移動する第2のスライドレール側可動磁気結合部材34と、第2のスライドレール14が第1のスライドレール12に対して所定の距離離反する所定位置までばね手段20が伸長すると、ばね側可動磁気結合部材32を磁気的に吸着してばね手段20を伸長状態に維持する磁気ストッパー36とから成り、ばね側可動磁気結合部材32と第2のスライドレール側可動磁気結合部材34も相互に磁気的に吸着して、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34は、第2のスライドレール14が第1のスライドレール12に対して所定の距離離反する所定位置でばね側可動磁気結合部材32が磁気ストッパー36に衝合するまでばね側可動磁気結合部材32に結合するようにしている。
【0022】
図示の形態では、ばね結合/解放手段30のばね側可動磁気結合部材32が磁石32Mから成っており、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34と磁気ストッパー36とが鉄等の磁石吸着性材料から成っているが、可動磁気結合部材32が鉄等の磁石吸着性材料で可動磁気結合部材34及び磁気ストッパー36の双方が磁石であってもよく、また可動磁気結合部材32、34及び磁気ストッパー36のすべてが磁石であってもよい。
【0023】
また、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34と磁気ストッパー36とは、相互に干渉しないように、第2のスライドレール14の移動方向とは直角の方向に位置をずらせて配置されているのが好ましい。図示の形態では、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34は、第2のスライドレール(鉄製)14のウエブ14Wの先端を折り曲げて形成され、磁気ストッパー36は、第1のスライドレール12のウエブ12Wの一部を切り欠き起立して形成され(図6参照)、従って、第1と第2のスライドレール12,14が所定距離離反する所定位置にあると、可動磁気結合部材34と磁気ストッパー36とは、相対する状態となる(図6(B)参照)。
【0024】
図示の形態では、更に、ばね手段20は、1対の引っ張りばね22R、22Lの間に配置されたオイル又は空気を作動流体とするダンパー28を含み、ばね側可動磁気結合部材32は、このダンパー28の伸縮ロッド28Rに支持されている。
【0025】
次に、図1乃至図5の実施例によるスライダー10の動作を図6を参照して詳細に述べると、引出しキャビネット1が閉じた状態では、スライダー10の第2のスライドレール14は、中間スライドレール16を介して第1のスライドレール12内に収納(重合)されているが(図2、図6(A)参照)、第2のスライドレール14は、ばね結合/解放手段30のばね側可動磁気結合部材32である磁石32Mに第2のスライドレール側可動磁気結合部材(磁石吸着性材料)34が吸着されているため、ばね手段20によって第1のスライドレール12側(引出しが閉じる方向)に引っ張られていて引出しキャビネット1の閉じた状態を維持している。
【0026】
引出しキャビネット1を開くため、引出し本体3を手前に引くと、ばね側可動磁気結合部材32(磁石32M)と第2のスライドレール側可動磁気結合部材34(磁石吸着性材料)との吸着によってばね手段20の1対の引っ張りばね22R、22Lを伸長しながら可動磁気結合部材32、34が引出しの開放方向に移動してばね側可動磁気結合部材32(磁石32M)が磁気ストッパー36に衝合する(図3及び図6(B)参照)。この位置から引出し本体3を更に開く方向に引くと、ばね側可動磁気結合部材32を磁気ストッパー36に吸着してこの位置に残したまま、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34は、ばね側可動磁気結合部材32から離反するため、第2のスライドレール14は、ばね手段20から解放されてばね抵抗を受けることなく、第1のスライドレール12から軽い力で引き離すことができ、従って引出し本体3を円滑に開くことができる(図4及び図6(C)参照)。なお、図示の形態では、第1と第2のスライドレール12、14の間に中間スライドレール16を有するので、図4に示すように、第2のスライドレール14は、この中間スライドレール16を介して更に伸長して引出し本体3の引出し長さが大きくなっている。
【0027】
図4の引出し開放状態から引出し本体3を筐体2内に引き込むと、第2のスライドレール14が中間スライドレール16と共に第1のスライドレール内に入り込み、遂には、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34がばね側可動磁気結合部材32に衝合して両可動磁気結合部材32、34が相互に吸着する(図3及び図6(B)参照)。引出し本体3がこの位置を越えて更に内側に引き込まれると、ばね側可動磁気結合部材32が磁気ストッパー36から引き離される。従って第2のスライドレール14は、ばね手段20に結合された状態となると共に、ばね側可動磁気結合部材32の伸長状態が解放されるので、引出し本体3から手を離しても、ばね手段20の収縮によって第2のスライドレール14が引き込み方向へ第1のスライドレール12に引き寄せられるため、引出し本体3は、自動的に筐体2内に引き込まれる(図6(A)参照)。この場合、ダンパー28は、引出し本体3が筐体2内に引き込まれる際に、第2のスライドレールの引き寄せを緩衝するので、引出し本体3は、衝撃を受けることなく、穏やかに筐体2内に引き込まれる。
【0028】
なお、引出し本体3を筐体2から急激に引き出すと、ばね結合/解放手段30のばね側と第2のスライドレール側との可動磁気結合部材32、34が離反し(図5及び図6(D)参照)、引出し本体3は、ばね手段20の抵抗を全く受けることなく、筐体2から引き出されるが、この場合、ばね側可動磁気結合部材32は、当初の位置、即ち、引出し本体3が完全に閉じたときと同じ位置に残ったままとなっている(図6(D)参照)。このようにして引出し本体3が開いた状態から筐体2内に引き込むと、引出し本体3は、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34が磁気ストッパー36を越えてもばね手段20の作用を受けることがなく、従って手で押しながら引出し本体3を完全閉じ位置まで押し込まなければならないが、引出し本体3を完全に引き込むと、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34がばね側可動磁気結合部材32に吸着し結合して正常な状態に戻る。このようにして、ばね手段20及びばね結合/解放手段30の機能が回復してスライダー10を正常に復帰することができる。
【0029】
本発明の他の実施の形態が図7、図8に示されており、この実施の形態では、ばね手段20は、ダンパー28を備えていないが、1対の引っ張りばね22R、22Lの間に配置さればね側可動磁気結合部材32に連結されて1対の引っ張りばね22R、22Lの伸縮を案内する案内杆28GRを有する案内部材28Gを備えていることを除いて図1乃至図6の実施の形態と同じである。この場合には、ばね手段20が第2のスライドレール14を引き寄せる際に、緩衝作用を有しないが、案内部材28Gの案内杆28GRの摺動抵抗で若干の緩衝は行われる。
【0030】
既に述べたように、ばね手段20は、1つの引っ張りばねから成っていてもよいが、この場合、この1つの引っ張りばねは、例えば、図9に示すように、その自由端に取り付けられたばね側可動磁気結合部材32を案内部材28Gの案内溝(又は案内孔)28GGに沿って案内するようにし、またばね側可動磁気結合部材32は、所定位置(磁気ストッパー36に衝合する位置)の手前では第2のスライドレール側可動磁気結合部材34に結合し、前記所定位置で磁気ストッパー36に衝合するように案内部材から露出している(図9(B)参照)。このようにすると、ばね側可動磁気結合部材32は、第2のスライドレール側可動磁気結合部材34及び磁気ストッパー36との吸着が阻害されることがない。なお、図9において、符号26Pは、可動磁気結合部材32を保持するばね保持部材26Hの両側から延びる案内ピンを示す。
【0031】
なお、上記実施例では、可動物体側の第2のスライドレールが固定物体側の第1のスライドレールに対して所定位置引き寄せられると、第1のスライドレール側に自動的引き寄せられるスライダーに本発明を適用した例であるが、可動物体側の第2のスライドレールが固定物体側の第1のスライドレールから所定位置離れると、第2のスライドレールが自動的に引き離されるスライダーにも本発明を同様に適用することができる。
【0032】
図10は、この自動引き離しの形態の実施例を示し、この実施例では、同図に示すように、ばね手段20の引っ張りばね22R、22Lの一端は、第1のスライドレールの端部(第のスライドレール14が引き離される側の端部)のばね保持部材24に固定され、他端のばね連結片26に可動磁気結合部材32(図示の形態では磁石32M)が取り付けられている。第1のスライドレール12には、ばね保持部材24から第2のスライドレール14が引き寄せられる側の一部に磁気ストッパー36が設けられている。図10(A)は、第2のスライドレール14が第1のスライドレール12から引き離される方向に引っ張りばね22R、22Lによって引っ張られて自動的に第1のスライドレール12から最も引き離された(引き出された)状態を示し、この状態から第2のスライドレール14を第1のスライドレール12側に引き寄せる際に、第2のスライドレール14側可動磁気結合部材34とばね側磁気結合部材32との結合によって引っ張りばね22R、22Lが伸長させられ、可動磁気結合部材32が磁気ストッパー36に衝合すると、その後、第2のスライドレール14は、その磁気結合部材34がばね側磁気結合部材32から離反し、第2のスライドレール14は、引っ張りばね22R、22Lから解放されて第1のスライドレー12内に自由に引き込まれる。逆に、第2のスライドレール14が2第1のスライドレール12から引き出し、その磁気結合部材34がばね側磁気結合部材32に衝合し、更にばね側磁気結合部材32を磁気ストッパー36から引き離すように押すと、第2のスライドレール14は、引っ張りばね22R、22Lによって手を離しても自動的に第1のスライドレール12から引き離される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、第2のスライドレールを第1のスライドレールに引き寄せ又は引き離すばね手段と第2のスライドレールとの結合/解放は、簡単な磁気結合作用で行うので、スライダーを簡単な構造で安価に提供することができ、高い産業上の利用性を有する。
【符号の説明】
【0034】
1 引出しキャビネット
2 筐体
3 引出し本体
10 引出しスライダー
12 第1のスライドレール
12W 第1のスライドレールのウエブ
12S 第1のスライドレールの側壁
14 第2のスライドレール
14W 第2のスライドレールのウエブ
14S 第2のスライドレールの側壁
16 中間スライドレール
16W 中間スライドレールのウエブ
16S 中間スライドレールの側壁
20 ばね手段
22R、22L 1対の引っ張りばね
24 ばね保持部材
26 ばね連結片
26H ばね保持部材
26HP 案内ピン
28 ダンパー
28G 案内部材
28GR 案内杆
30 ばね結合/解放手段
32 ばね側可動磁気結合部材
32M 磁石
34 第2のスライドレール側可動磁気結合部材
36 磁気ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定物体に取付けられるべき第1のスライドレールと、前記第1のスライドレールに摺動自在に係合し前記固定物体に対してその壁面に沿って移動する可動物体に取付けられるべき第2のスライドレールと、前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して所定位置まで引き寄せられ又は引き離されると前記第2のスライドレールを前記第1のスライドレールに弾性的に自動的に引き寄せ又は引き離すばね手段と、前記第2のスライドレールを前記ばね手段に抗して前記第1のスライドレールから前記所定位置を越えて引き離され又は引き寄せられると、前記第2のスライドレールを前記ばね手段から解放すると同時に前記所定位置で前記ばね手段の伸長状態を維持し、また前記第2のスライドレールが前記所定位置を越えて前記第1のスライドレールに引き寄せられ又は引き離されると、前記ばね手段の伸長状態の維持を解放するばね結合/解放手段とを備えたスライダーにおいて、前記ばね結合/解放手段は、前記ばね手段の自由端に設けられて前記ばね手段の伸縮と共に変位するばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレールに設けられて前記第2のスライドレールと共に移動する第2のスライドレール側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して前記所定位置に離反又は接近するまで前記ばね手段が伸長すると、前記ばね側可動磁気結合部材を磁気的に吸着して前記ばね手段の伸長状態を維持する磁気ストッパーとから成り、前記ばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材も相互に磁気的に吸着して前記第2のスライドレールが前記第1のスライドレールに対して前記所定位置に達して前記ばね側可動磁気結合部材が前記磁気ストッパーに衝合するまで前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材が前記ばね側可動磁気結合部材に結合するようにしたことを特徴とするスライダー。
【請求項2】
請求項1に記載のスライダーであって、前記ばね結合/解放手段の前記ばね側可動磁気結合部材と前記第2のスライドレール側磁気結合部材とのいずれか一方が磁石であって他方が磁石吸着性材料であるか、双方とも磁石であり、前記ばね側可動磁気結合部材が磁石である場合には、前記磁気ストッパーは、磁石吸着性材料か磁石であり、前記ばね側可動磁気結合部材が磁石でない場合には、前記磁気ストッパーは、磁石であることを特徴とするスライダー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスライダーであって、前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材と前記磁気ストッパーとは、相互に干渉しないように前記第2のスライドレールの移動方向とは直角の方向に位置をずらせて配置されていることを特徴とするスライダー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のスライダーであって、前記ばね手段は、1つ又は複数の引っ張りばねから成っていることを特徴とするスライダー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスライダーであって、前記ばね手段は、前記引っ張りばねの収縮を緩衝するダンパーを含み、前記ばね側可動磁気結合部材は、前記ダンパーの伸縮ロッドに支持されていることを特徴とするスライダー。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスライダーであって、前記ばね手段は、前記引っ張りばねの伸縮を案内する案内部材を含み、前記ばね側可動磁気結合部材は、前記案内部材の案内杆に支持されていることを特徴とするスライダー。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスライダーであって、前記ばね手段は、前記引っ張りばねの伸縮を案内する案内部材を含み、前記ばね側可動磁気結合部材が前記第2のスライドレール側可動磁気結合部材及び前記磁気ストッパーとの吸着を阻害しないように前記案内部材の案内孔又は案内溝を摺動することを特徴とするスライダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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