説明

スライドファスナー

【課題】ファスナーエレメントが軽量で、噛合割れが生じ難いスライドファスナーを提供する。
【解決手段】本発明に係るスライドファスナー(1) は、各ファスナーエレメント(10,10',30,40)が、エレメント上半部(11,31,41)とエレメント下半部(21)とを備え、エレメント上半部(11,31,41)は、第1テープ挟持部(12,32,42)と、先細形状の第1頭部(13,13',33,43)と、エレメント上半部(11,31,41)に設定した薄肉開始部(15,35,45)から第1頭部(13,13',33,43)側に、第1頭部(13,13',33,43)の先端に向けて下り傾斜する下り傾斜面(17,37a,37b,47) を備えた薄肉部(16,36,46)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に、射出成形により合成樹脂製の複数のファスナーエレメントが列設されたスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スライドファスナーに用いられるファスナーエレメントとしては、合成樹脂をファスナーテープに射出成形することによって1つ1つが単独に形成される合成樹脂製のファスナーエレメントや、モノフィラメントをコイル状又はジグザグ状に成形することによって形成される連続状のファスナーエレメント、及び、略Y字状を呈する金属製のエレメント素材をファスナーテープに加締めることによって形成される金属製のファスナーエレメント等が知られている。
【0003】
合成樹脂製のファスナーエレメントは、一般に、ファスナーテープの外面となる第1面とテープ裏面となる第2面とに跨るように成形されており、ファスナーテープの第1面側に配されるエレメント上半部と、同ファスナーテープの第2面側に配されるエレメント下半部とを有している。
【0004】
また、このような合成樹脂製のファスナーエレメントは、エレメント上半部とエレメント下半部とが対称的な形状を有するように成形されることが多いものの、例えば、ファスナーエレメントの美感や感触(手触り)などを向上させるために、エレメント上半部とエレメント下半部とが非対称的な異なる形状に形成されることもある。
【0005】
このようにエレメント上半部とエレメント下半部とが互いに異なる形状を有するファスナーエレメントの例が、例えば実公昭45−33956号公報(特許文献1)、特公昭47−37061号公報(特許文献2)、及び特開2006−320642号公報(特許文献3)などに開示されている。
【0006】
例えば、前記特許文献1に記載されている合成樹脂製のファスナーエレメント51は、図12に示したように、ファスナーテープ52の第1面側に配されるエレメント上半部53と、同ファスナーテープ52の第2面側に配されるエレメント下半部54とを有しており、前記エレメント上半部53は、正面視にて略矩形状の第1テープ挟持部53aと、同第1テープ挟持部53aからテープ外方に向けて延設され、その先端に向けてテープ長さ方向の寸法(以下、同寸法をエレメント幅寸法と記す)が漸減する三角形状に形成された三角状頭部53bとを備えている。
【0007】
同ファスナーエレメント51の前記エレメント下半部54は、前記第1テープ挟持部53aとの間でファスナーテープ52を挟持する第2テープ挟持部と、同第2テープ挟持部からテープ外方に向けて延設され、エレメント幅方向に括れた形状を有する首部54aと、同首部54aの先端部から膨大状に延設された噛合頭部54bとを備えている。
【0008】
特に、この特許文献1のファスナーエレメント51では、エレメント上半部53の上面とエレメント下半部54の下面とが、それぞれ連続した平坦面に形成されており、また、エレメント上半部53の三角状頭部53bの厚さ(上下方向の寸法)が、エレメント下半部54の噛合頭部54bの厚さよりも薄く設定されている。
【0009】
前記特許文献1によれば、上述のようなファスナーエレメント51を用いてスライドファスナー50が構成されることにより、ファスナーエレメント51全体の厚さを薄くする
ことができ、また、三角状頭部53bの側縁部で噛合相手方の噛合頭部54bの一部を被覆できるため、チェーン割れが生じ難い強力な噛合が得られるとしている。
【0010】
次に、前記特許文献2に記載されている合成樹脂製のファスナーエレメント61は、図13及び図14に示したように、エレメント上半部62とエレメント下半部63とを有しており、各ファスナーエレメント61のエレメント上半部62は、正面視にて略台形状を呈するとともにエレメント下半部63との間でファスナーテープを挟持する第1テープ挟持部62aと、同第1テープ挟持部62aからテープ外方に向けて延設された首部62bと、同首部62bの先端部から膨大状に延設された噛合頭部62cとを備えている。また、この特許文献2において、エレメント上半部62の噛合頭部62cは、その横断面形状が半円形状となるように形成されている。
【0011】
一方、同ファスナーエレメント61のエレメント下半部63は、エレメント上半部62の第1テープ挟持部62a及び首部62bに対応するように配された略台形状の第2テープ挟持部63aのみを有しており、エレメント上半部62の噛合頭部62cの下方は、何も形成されていない空間となっている。
【0012】
上述のようなファスナーエレメント61を有する特許文献2のスライドファスナー60であれば、エレメント上半部62の噛合頭部62cが半円形状の横断面を有しているため、左右のファスナーエレメント61が噛合した状態で、ファスナーテープ64をエレメント上半部62側に小さな局率半径で容易に折り曲げることができる。その上、同特許文献2によれば、各ファスナーエレメント61における第1テープ挟持部62aのテープ内方側端部を噛合頭部62cよりも広幅に形成することによって、ファスナーテープ64の折り曲げ状態において、左右のファスナーエレメント61の噛合が外れないようにすることができるとしている。
【0013】
前記特許文献3に記載されている合成樹脂製のファスナーエレメント71は、図15に示したように、エレメント上半部72とエレメント下半部73とを有しており、各ファスナーエレメント71のエレメント上半部72は、正面視にて略矩形状の第1テープ挟持部72aと、同第1テープ挟持部72aからテープ外方に向けて延設され、先端に向けてエレメント幅寸法が漸減する三角形状に形成された三角状頭部72bとを備えている。
【0014】
また、同ファスナーエレメント71のエレメント下半部73は、前記第1テープ挟持部72aとの間でファスナーテープ74を挟持する第2テープ挟持部73aと、同第2テープ挟持部73aからテープ外方に向けて延設された首部73bと、同首部73bの先端部から膨大状に延設された噛合頭部73cとを備えている。
【0015】
更に、同ファスナーエレメント71では、エレメント上半部72の上面が、エレメント幅方向の中央部及びエレメント長さ方向の中央部が上方へ凸状となるように湾曲して形成されている。一方、エレメント下半部73の下面は、平坦な平面に形成されている。
【0016】
このような特許文献3のファスナーエレメント71を有するスライドファスナー70であれば、エレメント上半部72の上面がなだらかな円弧状に膨出する曲面を備えているため、ファスナーエレメント71の手触りや感触が良好となり、また、エレメント列の美感を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実公昭45−33956号公報
【特許文献2】特公昭47−37061号公報
【特許文献3】特開2006−320642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述のような合成樹脂製のファスナーエレメントは、射出成形の際にファスナーテープに直接固着されるため、ファスナーテープに対するファスナーエレメントの固着面積を広くすることによって、ファスナーエレメントの固着強度を高めて、同ファスナーエレメントの固着状態を安定させている。このため、前記特許文献1〜特許文献3に記載されているような従来の合成樹脂製のファスナーエレメントでは、ファスナーエレメントの固着強度を安定して確保するために、各ファスナーエレメントのエレメント幅寸法を大きく設定せざるを得なかった。
【0019】
ところで、スライドファスナーに用いられる金属製のファスナーエレメントは、加締められることによりファスナーテープに植え付けられて固定されるため、同ファスナーエレメントのエレメント幅寸法を前述のような合成樹脂製のファスナーエレメントのように大きく設定しなくても、十分な固着強度を容易に得ることができる。
【0020】
このため、金属製のファスナーエレメントのエレメント幅寸法は、一般に、合成樹脂製のファスナーエレメントよりも小さく設定されており、このような金属製のファスナーエレメントが固定されたスライドファスナーは、合成樹脂製のファスナーエレメントを有するスライドファスナーよりも、スタイリッシュに見えたり、お洒落な印象を与えたりすることが多く、外観品質(見栄え)に優れている。
【0021】
しかしながら、このような金属製のファスナーエレメントは、合成樹脂製のファスナーエレメントに比べて重量が大きいため、複数の金属製ファスナーエレメントが列設されたスライドファスナーが重たくなる。従って、このような金属製ファスナーエレメントを有するスライドファスナーは、外観品質に優れているにも関わらず、軽さが求められる衣類などに使用され難く、その用途が限られるという問題があった。
【0022】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、金属製のファスナーエレメントよりも軽量で、優れた外観品質を備えることが可能なファスナーエレメントを有し、噛合割れが生じ難いなどの機能的にも優れたスライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナーは、基本的な構成として、左右一対のファスナーテープと、同ファスナーテープの対向するテープ側縁部に列設された合成樹脂製の複数のファスナーエレメントとを有し、前記各ファスナーエレメントは、前記ファスナーテープの第1面側に配されるエレメント上半部と、同ファスナーテープの第2面側に配されるエレメント下半部とを備え、前記エレメント上半部は、所定のテープ長さ方向の寸法を有する第1テープ挟持部と、同第1テープ挟持部からテープ外方に向けて前記エレメント下半部の先端まで延設され、その先端に向けてテープ長さ方向の寸法が漸減する先細形状の第1頭部とを備え、前記エレメント下半部は、前記第1テープ挟持部との間で前記ファスナーテープを挟持する第2テープ挟持部と、前記第2テープ挟持部からテープ外方に向けて延設され、テープ長さ方向の前後へ括れた形状を有する首部と、前記首部の先端部から延設され、テープ長さ方向の前後へ膨大する第2頭部とを備えたスライドファスナーであって、前記エレメント上半部は、当該エレメント上半部に設定した薄肉開始部から前記第1頭部側に、前記ファスナーエレメントの上下方向の高さ寸法を前記薄肉開始部における高さ寸法よりも小さくした薄肉部を有し、前記薄肉部は、前記薄肉開始部から前記第1頭部の先端に向けて、前記ファスナーエレメントの高さ寸
法を漸減させるように下り傾斜する下り傾斜面を有してなることを最も主要な特徴とするものである。
【0024】
本発明に係るスライドファスナーにおいて、前記薄肉部により、左右の前記ファスナーエレメントが噛合した状態にて、前記ファスナーテープを前記エレメント上半部同士が接近する方向に折り曲げたとき、前記第1頭部と噛合相手側の前記エレメント上半部との干渉により噛合相手側の互いに隣接する前記第2頭部が前記噛合が外れるまで離間することを避けるように、前記第1頭部と噛合相手側の前記エレメント上半部との干渉を回避する干渉回避部が構成されていることが好ましい。
【0025】
また、前前記エレメント上半部における前記薄肉開始部よりもテープ内方側の上面に対する前記下り傾斜面の傾斜角度が15°以上90°未満に設定されていることが好ましい。
【0026】
更に、前記第1頭部の先端における前記ファスナーエレメントの高さ寸法が、前記薄肉開始部が配されている位置における前記ファスナーエレメントの高さ寸法の50%より大きく、80%以下に設定されていることが好ましい。更にまた、前記第1頭部の先端から前記薄肉開始部までのテープ幅方向の寸法が、前記ファスナーエレメント全体の長さ寸法の45%以上に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るスライドファスナーは、ファスナーテープに固着される合成樹脂製のファスナーエレメントが、エレメント上半部とエレメント下半部とを備えており、前記エレメント上半部は、第1テープ挟持部と、同第1テープ挟持部からテープ外方に延設された先細形状の第1頭部とを備え、前記エレメント下半部は、第2テープ挟持部と、括れた形状を有する首部と、膨大状の第2頭部とを備えている。
【0028】
更に、エレメント上半部は、そのエレメント上半部に設定した薄肉開始部から第1頭部側に、ファスナーエレメントの上下方向の高さ寸法を薄肉開始部における高さ寸法よりも小さくした薄肉部を有している。この薄肉部は、薄肉開始部から第1頭部の先端に向けて、ファスナーエレメントの高さ寸法を漸減させるように下り傾斜する下り傾斜面を有している。
【0029】
このような合成樹脂製のファスナーエレメントを有する本発明のスライドファスナーは、金属製のファスナーエレメントを有するスライドファスナーに比べて重量を小さくすることができる。また、エレメント上半部が、上述のような薄肉開始部から第1頭部の先端に向けて下り傾斜する下り傾斜面を備えた薄肉部を有していることにより、左右のファスナーエレメントが噛合した状態にて、ファスナーテープをエレメント上半部同士が接近する方向に折り曲げたとき、第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部との干渉を回避する干渉回避部を、ファスナーエレメントの外観品質を低下させることなく、容易に構成することができる。
【0030】
例えば、左右のファスナーエレメントのエレメント下半部同士が噛合した状態にて、ファスナーテープをエレメント上半部同士が接近する方向に折り曲げたときに、隣接するファスナーエレメント間では、第1テープ挟持部同士が当接する前に、エレメント上半部の第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部とが干渉することがある。
【0031】
特に、ファスナーエレメントの第1テープ挟持部に、当該第1テープ挟持部におけるテープ長さ方向の前方及び後方側面間の寸法を上方に向けて漸減させるテーパ部が形成されているスライドファスナーの場合、ファスナーテープに固着するファスナーエレメントの
ピッチは従来の一般的なスライドファスナーと変わらないものの、各ファスナーエレメントの第1テープ挟持部の上面部におけるテープ長さ方向の寸法が小さくなる。このため、互いに隣接するファスナーエレメント間のエレメント上面側における間隔が比較的広くなる。
【0032】
この場合、左右のファスナーエレメントのエレメント下半部同士が噛合した状態にて、ファスナーテープをエレメント上半部同士が接近する方向に折り曲げたときに、同ファスナーテープが比較的小さな曲率半径まで容易に折り曲げられ易い。このとき、隣接するファスナーエレメント間では、第1テープ挟持部同士が当接する前に、エレメント上半部の第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部とが干渉してしまう。
【0033】
このようにファスナーテープが小さな曲率半径まで折り曲げられたときにエレメント上半部の第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部とが干渉すると、その干渉した部分が支点となって噛合相手側の互いに隣接するファスナーエレメントのエレメント下半部が離間する方向に回動するため、同ファスナーエレメントの第2頭部間の間隔が所定の大きさよりも簡単に大きく拡がってしまう。その結果、左右のエレメント下半部の噛合状態を維持することができずに、左右のファスナーエレメントの噛合が外れてしまうため、所謂チェーン割れと呼ばれる不具合が生じる虞があった。
【0034】
そこで、本発明では、上述のように、エレメント上半部に、先端に向けて下り傾斜する下り傾斜面を備えた薄肉部を形成することによって干渉回避部を設けた。これにより、左右のファスナーエレメントが噛合した状態にてファスナーテープを折り曲げたときに、同ファスナーテープが比較的小さな曲率半径まで折り曲げられても、第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部との干渉を回避できるため、その干渉部分を支点としてファスナーエレメントが離間する方向に回動することを防ぐことができる。その結果、ファスナーエレメントの第2頭部間の間隔が所定の大きさよりも大きく拡がらなくなるため、左右のファスナーエレメントの噛合が外れることを防止して、その噛合状態を安定して維持することができる。
【0035】
この場合、エレメント上半部における薄肉開始部よりもテープ内方側の上面に対する下り傾斜面の傾斜角度が15°以上90°未満に、好ましくは、20°以上45°以下に設定されている。この傾斜角度が15°以上、特に20°以上であることによって、前記干渉回避部にて第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部との干渉をより確実に回避できる。また、傾斜角度が90°未満、特に45°以下であることによって、ファスナーエレメントの外観品質の低下を招くこともない。
【0036】
また本発明のファスナーエレメントでは、第1頭部の先端におけるファスナーエレメントの高さ寸法が、薄肉開始部が配されている位置におけるファスナーエレメントの高さ寸法の50%より大きく、80%以下に設定されている。
【0037】
第1頭部の先端における高さ寸法が薄肉開始部における高さ寸法の50%より大きく、好ましくは60%以上に設定されていることによって、第1頭部がエレメント下半部の先端まで確実に形成されるため、ファスナーエレメントの外観品質を低下させることはない。また、第1頭部の先端における高さ寸法が薄肉開始部における高さ寸法の80%以下、好ましくは75%以下に設定されていることによって、干渉回避部にて第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部との干渉をより確実に回避することができる。
【0038】
更に本発明のファスナーエレメントでは、第1頭部の先端から薄肉開始部までのテープ幅方向の寸法が、前記ファスナーエレメント全体の長さ寸法の45%以上に設定されている。これにより、干渉回避部にて第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部との干渉を更
に確実に回避することができる。
【0039】
なお、本発明に係るスライドファスナーのエレメント上半部が、第1テープ挟持部におけるテープ長さ方向の前方及び後方側面間の寸法を上方に向けて漸減させるテーパ部が形成されている場合、各ファスナーエレメントの前記テーパ部のエレメント上下方向に対するテーパ角度が5°以上、特に10°以上に設定されていることが好ましい。更に、各ファスナーエレメントの第1テープ挟持部の上面におけるテープ長さ方向(エレメント幅寸法)の寸法の最大値が、同第1テープ挟持部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値の70%よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0040】
エレメント上半部にテーパ部が形成されていることにより、ファスナーテープに固着する面積を広くして同ファスナーエレメントの固着強度を高めることができるとともに、エレメント上半部の上面におけるテープ長さ方向の寸法(即ち、エレメント幅寸法)を小さくすることができる。このため、同ファスナーエレメントは、金属製のファスナーエレメントのようにスタイリッシュな感じやお洒落な印象を与える優れた外観品質を有することができる。
【0041】
更に、上述のようにテーパ部のテーパ角度が5°以上に設定されることや、第1テープ挟持部の上面におけるテープ長さ方向の寸法の最大値が同第1テープ挟持部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値の70%よりも小さく設定されることによって、第1テープ挟持部の上面側におけるテープ長さ方向の寸法を小さくして、ファスナーテープに固着された各ファスナーエレメントを、金属製のファスナーエレメントのような体裁に仕上げることができる。
【0042】
なお、本発明におけるテーパ角度とは、例えばテーパ部を構成するテーパ面が平坦面で形成されている場合には、エレメント上下方向に対するテーパ面の傾斜角度を指し、また、テーパ面が湾曲面で形成されている場合には、エレメント上下方向に対する湾曲面の下端部における接線の傾斜角度を指している。
【0043】
また、本発明に係るスライドファスナーでは、第1頭部の先端部における内角が30°以下、特に20°以下に設定されていることが好ましい。これにより、各ファスナーエレメントの外観をより金属製のファスナーエレメントのように見せることができる。
【0044】
更に、各ファスナーエレメントの第2頭部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値は、第2テープ挟持部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値の85%以上95%以下に設定されていることが好ましい。
【0045】
第2頭部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値が第2テープ挟持部の寸法の最大値の85%以上に設定されていることにより、左右のファスナーエレメントを噛合したときに、スライドファスナーの使用に耐え得る十分な噛合強度を安定して得ることができ、更に、左右のファスナーエレメントが噛合した状態にてファスナーテープを折り曲げてもチェーン割れの発生を確実に防止できる。
【0046】
また、第2頭部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値が第2テープ挟持部の寸法の最大値の95%以下に設定されていることにより、例えばスライダーを摺動させて左右のファスナーエレメントを噛合させるときに、その噛合動作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るスライドファスナーの要部を拡大して示す要部斜視図である。
【図2】図2は、同ファスナーエレメントをスライドファスナーの正面から見たときの上面図である。
【図3】図3は、同ファスナーエレメントをスライドファスナーの背面から見たときの下面図である。
【図4】図4は、同ファスナーエレメントをテープ長さ方向の下側面から見たときの側面図である。
【図5】図5は、同ファスナーエレメントを第1及び第2頭部側から見たときの図である。
【図6】図6は、実施例1におけるスライドファスナーの左右のファスナーエレメントが噛合した状態を示す正面図である。
【図7】図7は、図6に示すVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、左右のファスナーエレメントが噛合しているスライドファスナーを折り曲げたときの状態を示す断面図である。
【図9】図9は、実施例1の変形例に係るファスナーエレメントを示した斜視図である。
【図10】図10は、本発明の実施例2に係るスライドファスナーに用いられるファスナーエレメントを示す側面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例3に係るスライドファスナーに用いられるファスナーエレメントを示す側面図である。
【図12】図12は、従来の合成樹脂製のファスナーエレメントを有するスライドファスナーを示す正面図である。
【図13】図13は、従来の合成樹脂製のファスナーエレメントを有する別のスライドファスナーを示す正面図である。
【図14】図14は、図13に示したXIII−XIII線断面図である。
【図15】図15は、従来の合成樹脂製のファスナーエレメントを有する更に別のスライドファスナーを拡大して示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する各実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0049】
図1は、本実施例1に係るスライドファスナーの要部を拡大して示す要部斜視図である。また、図2は、同ファスナーエレメントの上面図、図3は、同ファスナーエレメントの下面図、図4は、同ファスナーエレメントの側面図、図5は、同ファスナーエレメントを第1及び第2頭部側から見たときの図である。更に、図6は、本実施例1におけるスライドファスナーの正面図であり、図7は、図6に示したVII−VII線断面図である。
【0050】
なお、以下では、ファスナーテープのテープ長さ方向を前後方向と規定し、ファスナーテープのテープ幅方向を左右方向と規定し、ファスナーテープのテープ表裏方向を上下方向と規定して説明を行う。また、ファスナーエレメントに関しては、本発明の特徴を判り易く説明するために、テープ長さ方向(前後方向)をエレメント幅方向と記載し、また、テープ幅方向(左右方向)をエレメント長さ方向と記載することもある。
【0051】
本実施例1のスライドファスナー1は、図1及び図5に示したように、左右一対のファスナーテープ2と、同ファスナーテープ2の対向するテープ側縁部に列設された合成樹脂製の複数のファスナーエレメント10と、左右のファスナーエレメント10を噛合・分離させるための図示しないスライダーとを有している。
【0052】
前記左右の各ファスナーテープ2は、対向するテープ側縁にファスナーテープ2の上下方向に膨大する芯部2aを有しており、その芯部2aをテープ側縁部に沿って複数のファスナーエレメント10が一定の間隔をおいて射出成形されてエレメント列3が形成されている。
【0053】
本実施例1におけるファスナーエレメント10は、例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性合成樹脂を射出成形することにより形成されており、このようにして得られた合成樹脂製のファスナーエレメント10は、金属製のファスナーエレメントよりも軽量となる。
【0054】
また、同ファスナーエレメント10は、ファスナーテープ2の外面となる第1面側に配されるエレメント上半部11と、同ファスナーテープ2の裏面となる第2面側に配されるエレメント下半部21とを有している。このファスナーエレメント10のエレメント上半部11は、エレメント下半部21の後述する第2テープ挟持部22との間にてファスナーテープ2のテープ側縁部を挟持する第1テープ挟持部12と、同第1テープ挟持部12からテープ外方に向けて延設された先細形状の第1頭部13とを備えている。
【0055】
前記第1テープ挟持部12は、ファスナーテープ2との固着強度を確保するために、ファスナーテープ2と接触する側の端縁部(下端部)におけるエレメント幅寸法が所定の大きさに設定されている。この場合、第1テープ挟持部12の下端部におけるエレメント幅寸法は、例えば従来の合成樹脂製のファスナーエレメントが有するエレメント幅寸法と同様の大きさに設定される。なお、例えばファスナーテープ2との固着強度が十分に得られる場合には、従来のエレメント幅寸法よりも小さく設定することも可能であり、また、必要に応じて従来のエレメント幅寸法よりも大きく設定することも可能である。
【0056】
また、同エレメント上半部11における第1テープ挟持部12と、第1頭部13の第1テープ挟持部12側の一部とには、同エレメント上半部11の前方側面と後方側面との間の寸法を上方に向けて漸減させるテーパ部14が、エレメント上半部11の下端縁から同エレメント上半部11の上面まで設けられている。この場合、テーパ部14が配されているエレメント上半部11の前方側面及び後方側面は、図5に示したように曲率の小さな湾曲面に形成されている。なお、本発明では、同前方側面及び後方側面を平坦な平面に形成することも可能である。
【0057】
本実施例1において、図5に示したようなエレメント上下方向に対して傾斜しているテーパ部14のテーパ角度θ2は10°に設定されている。テーパ部14がこのようなテーパ角度θ2を有することにより、第1テープ挟持部12の上面におけるテープ長さ方向の寸法(即ち、エレメント幅寸法)を、例えば図2及び図5に示したように同第1テープ挟持部12の上面におけるテープ長さ方向の寸法の最大値W2が、第1テープ挟持部12におけるテープ長さ方向の寸法の最大値W1(即ち、第1テープ挟持部12の下端部におけるエレメント幅寸法)の70%よりも小さくなるように設定することができる。なお、本実施例1の場合は、前記最大値W2が、前記最大値W1のおよそ62%の大きさに設定されている。これにより、本実施例1のスライドファスナー1を正面側から見たときに、ファスナーテープ2に固着された合成樹脂製の各ファスナーエレメント10の形態を、金属製のファスナーエレメントのように見せることができる。
【0058】
また、同エレメント上半部11における前記第1頭部13は、エレメント下半部21の先端まで延設されており、同記第1頭部13の第1テープ挟持部12に接合している基端部から先端に向けてテープ長さ方向の寸法が漸減する先細形状に形成されている。この第1頭部13が、エレメント下半部21の先端まで延設されていることにより、ファスナー
エレメント10の外観を金属製のファスナーエレメントに近づけることができる。また、左右のファスナーエレメント10が噛合している状態で同ファスナーエレメント10がテープ表裏方向の力(突き上げ力)を受けても、同ファスナーエレメント10の噛合が簡単に外れることを防いで、その噛合状態を維持することができる。
【0059】
更に、同第1頭部13は、第1テープ挟持部12側に配された第1細幅部13aと、同第1細幅部13aから変曲部13cを介してエレメント先端側に配された第2細幅部13bとを有しており、前記第1細幅部13aは、例えば第1頭部13の基端部における側縁と同第1頭部13の先端部における側縁とを直線で結んだときに、当該直線よりも外側に膨らむように形成され、前記第2細幅部13bは、当該直線よりも内側に凹むように形成されている。
【0060】
このように第1頭部13に第1細幅部13aと第2細幅部13bとを設けることによって、各ファスナーエレメント10の外観を、金属製のファスナーエレメントに更に近づけることができる。その上、同第1頭部13では、例えばその基端部から先端部に向けてエレメント幅寸法が同じ割合で漸減するように形成された頭部(図2に点線で示したような頭部)に比べて、第1頭部13の先端から変曲部13cまでの第2細幅部13bのエレメント幅寸法が小さくなるため、後述するように本実施例1のスライドファスナー1を、隣接するエレメント上半部11同士が接近する方向に折り曲げたときに(図8を参照)、同第1頭部13が噛合相手側のエレメント上半部11と干渉することをより確実に防ぐことができる。
【0061】
更に、同第1頭部13では、例えばその基端部から先端部に向けてエレメント幅寸法が同じ割合で漸減するように形成された頭部に比べて、変曲部13cから第1頭部13の基端部までの第1細幅部13aのエレメント幅寸法が大きくなるため、例えば左右のファスナーエレメント10が噛合しているときに、同ファスナーエレメント10が下方から上方へ向かう突き上げ力を受けても、第1細幅部13aにて噛合相手方の第2頭部24をより確実に支持し、ファスナーエレメント10の噛合状態を安定して維持することができる。
【0062】
また本実施例1では、図2に示したように、第1頭部13の先端部(第2細幅部13b)における内角θ3が20°に設定されているとともに、同第1頭部13の先端が面取りを施されたような曲面状に形成されている。これにより、ファスナーエレメント10の外観を金属製のファスナーエレメントに近づけ、且つ、ファスナーエレメント10の美感を向上させることができる。
【0063】
なお、本発明において第1頭部13の先端部の内角θ3とは、例えば本実施例1のように第1頭部13の先端部が曲面状に形成されている場合に、第1頭部13の先端側にてエレメント幅寸法が一定の割合で減少する部位の前方側面及び後方側面に沿って延長線を描き、それらの延長線が交差したところの内側の角度を指している。
【0064】
また、本実施例1のエレメント上半部11には、第1頭部13の先端に向けてファスナーエレメント10の上下方向の高さ寸法を減少させ始める薄肉開始部15が設定されており、この薄肉開始部15から第1頭部13の先端側に、ファスナーエレメント10の上下方向の高さ寸法を同薄肉開始部15におけるファスナーエレメント10の高さ寸法よりも小さくした薄肉部16が、後述する干渉回避部として形成されている。
【0065】
本実施例1において、前記薄肉開始部15は、第1頭部13の先端から薄肉開始部15までのテープ幅方向(エレメント長さ方向)の寸法L2を、同ファスナーエレメント10全体の長さ寸法L1の45%の大きさとする位置に設定されている。
【0066】
なお、この薄肉開始部15は、ファスナーエレメント10の形状等に応じて、前記長さ寸法L2が前記長さ寸法L1の45%以上となる任意の位置に設定することができるが、同薄肉開始部15は、干渉回避部としての機能をより確実に果たすために、左右のファスナーエレメント10を噛合したときに、テープ幅方向に見て、噛合相手側の第1頭部13の先端よりも当該ファスナーエレメント10における第1テープ挟持部12側の端縁(即ち、第1テープ挟持部12の第1頭部13側とは反対の端縁)側の位置に設定されることが特に好ましい。
【0067】
更に、本実施例1の前記薄肉部16は、薄肉開始部15から第1頭部13の先端までファスナーエレメント10の上下方向の高さ寸法を漸減させるように下り傾斜する下り傾斜面17を有している。この場合、エレメント上半部11における薄肉開始部15よりもテープ内方側の上面に対し、下り傾斜面17の傾斜している傾斜角度θ1は、20°に設定されている。
【0068】
これにより、本実施例1のファスナーエレメント10では、例えば図4に示したように、第1頭部13の先端におけるファスナーエレメント10の高さ寸法H2を、薄肉開始部15が配されている位置におけるファスナーエレメント10の高さ寸法H1の80%以下となるように設定することができる。なお、前記高さ寸法H2は、上述のように第1頭部13が所要の肉厚をもってエレメント下半部21の先端まで延設されているため、前記最大値H1の50%よりも大きく設定される。実際に本実施例1の場合では、前記高さ寸法H2が、前記最大値H1のおよそ75%の大きさに設定されている。
【0069】
本実施例1のファスナーエレメント10におけるエレメント下半部21は、エレメント上半部11と一体に形成されている。このエレメント下半部21は、所定のテープ長さ方向の寸法を有して第1テープ挟持部12との間でファスナーテープ2のテープ側縁部を挟持する第2テープ挟持部22と、第2テープ挟持部22からテープ外方に向けて延設され、テープ長さ方向の前後へ括れた形状を有する首部23と、首部23の先端部から延設され、テープ長さ方向の前後へ膨大する第2頭部24とを備えている。
【0070】
また、同エレメント下半部21では、図2及び図5に示したように、第2頭部24におけるテープ長さ方向の寸法の最大値W3が、第2テープ挟持部22におけるテープ長さ方向の寸法の最大値W1の88%の大きさに設定されている。これにより、左右のファスナーエレメント10を噛合したときに、スライドファスナー1の使用に耐え得る十分な噛合強度が安定して得られるとともに、左右のファスナーエレメント10を噛合させる際の噛合動作を円滑に行うことができる。
【0071】
更に、本実施例1のファスナーエレメント10では、エレメント上半部11とエレメント下半部21の境界部18に、図4に示すような段部18aが設けられており、エレメント下半部21における段部18aからファスナーテープ2側の部位の高さ寸法が、段部18aからエレメント先端側の部位よりも大きく設定されている。
【0072】
このような段部18aを設けて同段部18aからファスナーテープ2側のエレメント下半部21の高さ寸法を大きくすることにより、例えば図示しないスライダーを摺動させて、図6に示すように左右のファスナーエレメント10を噛合させるときに、エレメント上半部11の第1頭部13と噛合相手側のファスナーエレメント10における第2頭部24との間に図7に示すような間隙8を設けることができる。このため、左右のファスナーエレメント10を噛合させるときに、例えばスライダーのエレメント案内路内で左右のファスナーエレメント10の相対的な高さ位置がずれたとしても、同ファスナーエレメント10の噛合動作を円滑に行うことが可能となる。
【0073】
そして、本実施例1のスライドファスナー1は、上述のような構成を有する合成樹脂製の複数のファスナーエレメント10がファスナーテープ2のテープ側縁部に列設されているため、同スライドファスナー1を正面から見たときに、ファスナーエレメント10の外観を金属製のファスナーエレメントのように見せることができる。このため、同スライドファスナー1は、スタイリッシュに見えたり、お洒落な印象を与えたりすることができ、外観品質や意匠性に優れたものとなる。
【0074】
更に、同スライドファスナー1は、ファスナーエレメント10のエレメント上半部11に上述のような薄肉部16が形成されている。これにより、左右のファスナーエレメントが噛合した状態にて、ファスナーテープ2をエレメント上半部11同士が接近する方向に折り曲げたときに、同ファスナーテープ2が従来よりも小さな曲率半径まで折り曲げられても、前記薄肉部16が干渉回避部として機能するため、図8に示したように、各ファスナーエレメント10の第1頭部13と噛合相手側のエレメント上半部11とが互いに干渉することを回避することができる。
【0075】
ここで、例えばエレメント上半部11に本実施例1のような薄肉部16が設けられてなかった場合について想定してみると、この場合、第1頭部13の上面の高さ位置が薄肉開始部15が配されている位置の上面の高さ位置と同じになる。このため、ファスナーエレメントが噛合している状態にてファスナーテープ2をエレメント上半部同士が接近する方向に折り曲げたときに、エレメント上半部の第1頭部と噛合相手側のエレメント上半部とが干渉し、その干渉した部分が支点となって噛合相手側の互いに隣接するファスナーエレメントのエレメント下半部21が離間する方向に回動する。その結果、ファスナーエレメントの第2頭部24間の間隔が大きく拡がって、左右のファスナーエレメントの噛合が外れてしまい、チェーン割れが生じるという問題があった。
【0076】
これに対して、本実施例1のスライドファスナー1では、ファスナーエレメント10のエレメント上半部11に薄肉部16を設けたことによって、同薄肉部16が干渉回避部として機能するため、上述のようにファスナーテープ2を折り曲げたときに、ファスナーエレメント10の第1頭部13に噛合相手方のエレメント上半部11を干渉させずに、その噛合相手側の隣接するエレメント上半部11同士を、その上面側の前方側縁及び後方側縁にて接触させることが可能となる。これによって、噛合相手側の隣接する第2頭部24が、ファスナーエレメント10噛合が外れるまで離間することを防止して、ファスナーエレメント10の噛合状態を安定して維持できるため、上述のようなチェーン割れの問題を解消することができる。
【0077】
以上のように、本実施例1のスライドファスナー1は、そのファスナーエレメント10が金属製のファスナーエレメントよりも軽量で、且つ、金属製のファスナーエレメントのような優れた外観品質を有している。しかも、同スライドファスナー1は、左右のファスナーエレメント10噛合状態にてファスナーテープ2をエレメント上半部11同士が接近する方向に従来よりも小さな曲率半径まで折り曲げたとしてもチェーン割れが生じないため、機能的にも優れた高品質のスライドファスナーとなる。
【0078】
なお、本実施例1のスライドファスナー1では、エレメント上半部11のテーパ部14が第1テープ挟持部12と、第1頭部13の第1テープ挟持部12側の一部とに配されている。しかしながら、本発明では、エレメント上半部11のテーパ部14は、少なくとも第1テープ挟持部12に配されていれば良く、例えば図9に実施例1の変形例となるファスナーエレメント10’を示したように、第1頭部13’にはテーパ部14を設けずに、同第1頭部13’の縦断面形状をその上面の形状に対応させるように、同第1頭部13’の前方側面と後方側面とを切り欠いたように形成することも可能である。これによっても、ファスナーエレメント10’の体裁を金属製のファスナーエレメントのように仕上げて
、実施例1のファスナーエレメント10と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0079】
図10は、本発明の実施例2に係るスライドファスナーに用いられるファスナーエレメントを示した側面図である。
なお、本実施例2に係るスライドファスナー、及び、後述する実施例3に係るスライドファスナーは、各ファスナーエレメントのエレメント上半部の形態が前述の実施例1におけるスライドファスナー1と相違すること以外について、実施例1と実質的に同様の構成を有している。従って、本実施例2、及び、後述する実施例3において、前述の実施例1にて説明した部材と同様の部材については、同じ符号を用いて表すことによってその説明を省略することとする。
【0080】
本実施例2におけるファスナーエレメント30のエレメント上半部31は、第2テープ挟持部22との間にてファスナーテープ2のテープ側縁部を挟持する第1テープ挟持部32と、同第1テープ挟持部32からテープ外方に向けて延設された先細形状の第1頭部33とを備えており、また、その第1テープ挟持部32と、第1頭部33の第1テープ挟持部32側の一部とには、前記実施例1と同様にテーパ部34が設けられている。
【0081】
更に、同エレメント上半部31には、第1頭部33の先端に向けてファスナーエレメント30の高さ寸法を減少させ始める薄肉開始部35が、第1頭部33の先端から薄肉開始部35までのテープ幅方向の寸法L2を、同ファスナーエレメント30全体の長さ寸法L1の45%の大きさとする位置に設定されており、この薄肉開始部35から第1頭部33の先端側に、薄肉部36が干渉回避部として形成されている。
【0082】
本実施例2の薄肉部36は、薄肉開始部35から第1頭部33の先端に向けて下り傾斜する第1下り傾斜面37aと、同第1下り傾斜面37aよりも第1頭部33の先端側に、第1下り傾斜面37aの傾斜角度θ1よりも大きな傾斜角度θ1’を有する第2下り傾斜面37bとを有している。
【0083】
この場合、第1下り傾斜面37aの傾斜角度θ1は20°に設定されており、第2下り傾斜面37bの傾斜角度θ1’は40°に設定されている。またこれにより、本実施例2では、第1頭部33の先端におけるファスナーエレメント30の高さ寸法H2が、薄肉開始部35が配されている位置におけるファスナーエレメント30の高さ寸法H1のおよそ62%の大きさに設定されている。
【0084】
このようなファスナーエレメント30を有する本実施例2のスライドファスナーは、ファスナーエレメント30が金属製のファスナーエレメントよりも軽量で、且つ、金属製のファスナーエレメントのような優れた外観品質を有している。
【0085】
しかも、同スライドファスナーは、前記実施例1のスライドファスナーと同様に、左右のファスナーエレメント30噛合状態にてファスナーテープ2をエレメント上半部31同士が接近する方向に折り曲げたとしても、ファスナーエレメント30に設けた薄肉部36が干渉回避部として機能するため、チェーン割れの発生を防いで、その噛合状態を安定して維持することができる。
【実施例3】
【0086】
図11は、本発明の実施例3に係るスライドファスナーに用いられるファスナーエレメントを示した側面図である。
本実施例3におけるファスナーエレメント40のエレメント上半部41は、第1テープ挟持部42と、先細形状の第1頭部43とを備えており、また、その第1テープ挟持部4
2と、第1頭部43の第1テープ挟持部42側の一部とには、前記実施例1と同様にテーパ部44が設けられている。更に、同エレメント上半部41には、薄肉開始部45が前記実施例1及び2と同様の位置に設定されており、この薄肉開始部45から第1頭部43の先端側に、薄肉部46が干渉回避部として形成されている。
【0087】
本実施例3の薄肉部46は、薄肉開始部45から第1頭部43の先端に向けて下り傾斜する下り傾斜面47と、同下り傾斜面47よりも第1頭部43の先端側に配された平坦面48とを有している。この場合、下り傾斜面47の傾斜角度θ1は40°に設定されている。また、第1頭部43の先端におけるファスナーエレメント40の高さ寸法H2は、薄肉開始部45が配されている位置におけるファスナーエレメント40の高さ寸法H1のおよそ76%の大きさに設定されている。
【0088】
このようなファスナーエレメント40を有する本実施例3のスライドファスナーも、前記実施例1及び2と同様に、軽量で、且つ、金属製のファスナーエレメントのような優れた外観品質を有している。しかも、左右のファスナーエレメント40の噛合状態にてファスナーテープ2をエレメント上半部41同士が接近する方向に折り曲げたとしても、チェーン割れの発生を防いで、その噛合状態を安定して維持することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 スライドファスナー
2 ファスナーテープ
2a 芯部
3 エレメント列
8 間隙
10,10’ ファスナーエレメント
11 エレメント上半部
12 第1テープ挟持部
13,13’ 第1頭部
13a 第1細幅部
13b 第2細幅部
13c 変曲部
14 テーパ部
15 薄肉開始部
16 薄肉部
17 下り傾斜面
18 境界部
18a 段部
21 エレメント下半部
22 第2テープ挟持部
23 首部
24 第2頭部
30 ファスナーエレメント
31 エレメント上半部
32 第1テープ挟持部
33 第1頭部
34 テーパ部
35 薄肉開始部
36 薄肉部
37a 第1下り傾斜面
37b 第2下り傾斜面
40 ファスナーエレメント
41 エレメント上半部
42 第1テープ挟持部
43 第1頭部
44 テーパ部
45 薄肉開始部
46 薄肉部
47 下り傾斜面
48 平坦面
H1 薄肉開始部が配されている位置におけるファスナーエレメントの高さ寸法
H2 第1頭部の先端におけるファスナーエレメントの高さ寸法
L1 ファスナーエレメント全体の長さ寸法
L2 第1頭部の先端から薄肉開始部までのテープ幅方向の寸法
W1 第1及び第2テープ挟持部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値
W2 第1テープ挟持部の上面におけるテープ長さ方向の寸法の最大値
W3 第2頭部におけるテープ長さ方向の寸法の最大値
θ1,θ1’ 下り傾斜面の傾斜角度
θ2 テーパ角度
θ3 第1頭部の先端部の内角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のファスナーテープ(2) と、同ファスナーテープ(2) の対向するテープ側縁部に列設された合成樹脂製の複数のファスナーエレメント(10,10',30,40)とを有し、前記各ファスナーエレメント(10,10',30,40)は、前記ファスナーテープ(2) の第1面側に配されるエレメント上半部(11,31,41)と、同ファスナーテープ(2) の第2面側に配されるエレメント下半部(21)とを備え、前記エレメント上半部(11,31,41)は、所定のテープ長さ方向の寸法を有する第1テープ挟持部(12,32,42)と、同第1テープ挟持部(12,32,42)からテープ外方に向けて前記エレメント下半部(21)の先端まで延設され、その先端に向けてテープ長さ方向の寸法が漸減する先細形状の第1頭部(13,13',33,43)とを備え、前記エレメント下半部(21)は、前記第1テープ挟持部(12,32,42)との間で前記ファスナーテープ(2) を挟持する第2テープ挟持部(22)と、前記第2テープ挟持部(22)からテープ外方に向けて延設され、テープ長さ方向の前後へ括れた形状を有する首部(23)と、前記首部(23)の先端部から延設され、テープ長さ方向の前後へ膨大する第2頭部(24)とを備えたスライドファスナー(1) であって、
前記エレメント上半部(11,31,41)は、当該エレメント上半部(11,31,41)に設定した薄肉開始部(15,35,45)から前記第1頭部(13,13',33,43)側に、前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)の上下方向の高さ寸法を前記薄肉開始部(15,35,45)における高さ寸法よりも小さくした薄肉部(16,36,46)を有し、
前記薄肉部(16,36,46)は、前記薄肉開始部(15,35,45)から前記第1頭部(13,13',33,43)の先端に向けて、前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)の高さ寸法を漸減させるように下り傾斜する下り傾斜面(17,37a,37b,47) を有してなる
ことを特徴とするスライドファスナー。
【請求項2】
前記薄肉部(16,36,46)により、左右の前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)が噛合した状態にて、前記ファスナーテープ(2) を前記エレメント上半部(11,31,41)同士が接近する方向に折り曲げたとき、前記第1頭部(13,13',33,43)と噛合相手側の前記エレメント上半部(11,31,41)との干渉により噛合相手側の互いに隣接する前記第2頭部(24)が前記噛合が外れるまで離間することを避けるように、前記第1頭部(13,13',33,43)と噛合相手側の前記エレメント上半部(11,31,41)との干渉を回避する干渉回避部が構成されてなる請求項1記載のスライドファスナー。
【請求項3】
前記エレメント上半部(11,31,41)における前記薄肉開始部(15,35,45)よりもテープ内方側の上面に対する前記下り傾斜面(17,37a,37b,47) の傾斜角度(θ1) が15°以上90°未満に設定されてなる請求項1記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前記第1頭部(13,13',33,43)の先端における前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)の高さ寸法(H2)が、前記薄肉開始部(15,35,45)が配されている位置における前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)の高さ寸法(H1)の50%より大きく、80%以下に設定されてなる請求項1記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記第1頭部(13,13',33,43)の先端から前記薄肉開始部(15,35,45)までのテープ幅方向の寸法(L2)が、前記ファスナーエレメント(10,10',30,40)全体の長さ寸法(L1)の45%以上に設定されてなる請求項1記載のスライドファスナー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−81858(P2013−81858A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−26580(P2013−26580)
【出願日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【分割の表示】特願2010−546479(P2010−546479)の分割
【原出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】