説明

スリット付き料理用手袋

【課題】料理作業時に高温の油やお湯の飛沫から手を保護しながら箸等の調理器具を素手で操作可能とする。
【解決手段】料理時に手に装着する手袋であって、指部を有することなく先端は閉鎖され、基端は手を挿抜するための開放口を有する略筒形を成す手袋部10に、長さ方向に沿って手袋部10内部から箸11を操作するためのスリットが設けられたことを特徴とするスリット付き料理用手袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理時に鍋等から飛散する高温の油やお湯等の飛沫から手を保護しながら、同時に箸を自在に操作することのできるスリット付き料理用手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天ぷらや炒め物のみならず食材を加熱して料理する際には、鍋等調理器具や食材から高温の油やお湯などの飛沫が調理作業中の手に付着してしまう場合が多い。一例として、天ぷらを揚げる際の天ぷら油の適温は一般に160℃から180℃とされ、場合によっては250℃に達する場合もある。その際に油に入れられる食材等に付着した水分(沸点約100℃)が急激に気化膨張し、油や水分が高温の飛沫として飛散する。これが料理作業中の手の皮膚に付着すると火傷や怪我の恐れが有り、最悪の場合には事故や火事の誘因ともなり得る。
【0003】
一般的な指付きの手袋は、装着した状態で箸を扱う場合にはその厚みと表面の摩擦抵抗の違いから素手で扱うのと同様に器用に箸を扱うことができず、料理時に使用する目的には不向きである。
【0004】
腕に嵌めたままハンド部のみを手袋より露出させることのできる料理用手袋「特許公開2004−52165」があった。しかし、この方法では料理作業中の調理器具を取り扱う際にハンド部は露出しており、高温の油やお湯の飛沫からハンド部を保護することはできない。
【0005】
また、「特許公開2004−52165」の料理用手袋は、5本指乃至ミトン形の親指部を有する形態をしており、手のひら部分乃至親指付け根部分付近にハンドを挿抜する目的のスリットが設けられていた。これは、ハンドを挿抜するために手袋の幅方向に長さ約10cm以上の開口部を必要とする。同時にスリットの位置は手袋先端部より約10cmから約15cmの位置に設けなくてはならない。このスリットは大きな開口部を有し、容易に油等の飛沫が内部に侵入するため、皮膚を守るための保護機能は十分とはいえない。
【0006】
「特許公開2004−76239」てんぷら油から手を守る手袋があった。これはアルミ箔を貼った薄いプラスチックの紙でできた手袋であるが、5本指を有する形態であり、手袋にスリットは無い。
【0007】
「登録実用新案3024602号」てんぷら油はね保護手袋があった。これは指の部分をのぞいた手の部分、手背部、手掌部、前腕部へかけて布またはそれに代わるものでおおうてんぷら油はね保護手袋であるが、先端部は開放され指を露出する形態であり、料理作業時に外部に露出した指を高温の油やお湯の飛沫から保護することはできない。
【0008】
【特許文献1】特許公開2004−52165
【特許文献2】特許公開2004−76239
【特許文献3】登録実用新案3024602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
天ぷらや炒め物等の料理作業時に鍋等から高温の油やお湯が飛沫として飛散する場合が多く、これが手に付着し火傷や怪我の原因となる。他方、飛散する油やお湯から保護するために一般的な手袋を装着した場合、食材を取り扱う箸を意図した通り器用に操作する事が出来ないため、一般的な手袋は料理作業に用いるには不向きである。
【0010】
箸を意図した通り自在に取り扱うには素手で直接持つのが最も効果的である。この方法で軽度の火傷等の苦痛に耐えながら料理作業をしているのが現状であり、同時にこれは大怪我や火災を引き起こす可能性をも有している。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて成されたものであり、その目的は料理作業中に高温の油やお湯の飛沫から手を保護しながら、箸を自在に操作可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため本発明のスリット付き料理用手袋は、料理時に手に装着する手袋であって、指部を有することなく先端は閉鎖され基端は手を挿抜するための開放口を有する略筒形を成し、長さ方向にスリットを設け、このスリットで箸を外部と挿通させ手袋内部で直接箸を持ち操作することを特徴とする。このスリット付き料理用手袋を装着することにより、高温の飛沫から手を保護しながら自在に箸の操作が可能となる。
【0013】
一例として、スリットを遮蔽用部材で覆い、高温の飛沫からの遮蔽効果をより高める。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、従来は手袋を装着しない、又は手袋を装着しても箸等を器用に操作する必要性から指や掌を手袋外部に露出させており、これらの方法では高温の油やお湯等の飛沫から遮蔽し手を保護することはできない。また、掌全体を覆う手袋を装着し手袋素材の上で箸を持つ場合は手袋素材の厚さによる触感の無さや表面の摩擦抵抗の大きさの違い、皺の発生などが素手の場合と異なり、意図した通りに箸を自在に操作することは困難である。本発明によれば手を高温の飛沫から手を保護しつつ、同時に手袋内で箸の基部付近を直接素手で持ちながらスリットを通じ箸の先端側を外部に露出することにより、箸を意図通りに操作し食材等を扱うことができる。また、一般に手袋は左右の手夫々個別に構成されたものを装着するのが通例となっているが、本発明のスリット付き料理用手袋は右手用、左手用といった区別は無く左右兼用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態に係り図1は、その使用時の慨観斜視図、図2は正面図、図3は箸を挿抜するスリットである。
【0017】
図1に示すように、本発明のスリット付き料理用手袋の手袋部10は略筒形で指部を有さず、柔軟性を有する素材で成形され、その径は人の拳と同程度乃至はやや拳よりも大きく、先端は閉鎖され基端は開放されている。その長さは、掌を握った状態で人の手首より先を覆う程度から肘から先を覆う程度とする。点線で示した使用者の手20の掌は握られた状態で箸21持って操作する形態を示している。箸21はその基部を素手で持たれ、箸21の先端部側はスリット11を通じ外部に露出している。
【0018】
図2で示したように、先端より基端方向約3cm〜約5cm付近を中心に手袋部の長さ方向に箸21を挿抜するための長さ約2cm〜約4cm程度のスリット11が設けられている。使用者は手袋部10の基端の開放部から手20を最奥部まで挿入し掌を握り箸21を持つ。
【0019】
図3で示したようにスリット11は手袋部10の長さ方向に沿って設けられる形態であるが、その隙間は上下が接する程度乃至1mm〜3mm程度とする。箸21は一般に2mm〜6mm程度の厚さを有するが、手袋部10は柔軟性を有する素材で成形されており容易に変形するため、スリット11の隙間が箸21の厚さより狭隘であっても箸21の操作に大きな摩擦抵抗が発生することは無い。また、スリットの周囲に縫製13を施すことにより素材の強度を高めることが出来る。
【0020】
掌に持たれた箸21の開閉動作は掌の長さ方向で行われるが、図1のように外部から箸21の基部を先にしてスリット11に挿入し、指でこれを持つと、箸21の開閉方向とスリットが同一方向であるため、手袋部10の内部で箸21を持ちながら手袋部10の外部に露出している箸21の開閉操作が可能となる。同時に、手袋部10は鍋等から発せられる高温の油やお湯の飛沫から手を覆い保護することができる。また、副次的に箸以外の調理器具でも保持部分がスリット11の大きさに適合するならば、これを操作することが可能となる。
【0021】
本発明のスリット付き料理用手袋におけるスリット11と他の指無し手袋の有する指出し用スリットには相違点がある。5本指を外部に露出する指無し手袋は先端部に指を挿抜するために直線状にスリットが4箇所あり、本発明のスリット付き料理用手袋は先端部にスリットを有さず、この点が相違となる。また、ミトン型で親指を露出する種類の手袋では掌が開いた状態を基本とするために先端部より12cm〜16cm基部寄りの位置にスリットの中心があるが、本発明のスリット付き料理用手袋は先端部より約3cm〜5cmの位置にスリット11を設け掌は握った形態で使用される。
【0022】
手袋部10の素材には高温の飛沫を遮蔽し、手を自由に動かすことが出来、箸11を操作する目的のため柔軟な繊維素材が用いられ、一重構造の他にも必要に応じ二重、三重構造とする場合もある。また、耐熱性向上のため素材の一部又は全部に耐熱繊維を用いる他、綿やビニール、ゴム等の柔軟素材を重ね合わせ縫製する場合も有る。
【0023】
図1、図2で示したように固定部12を設ける。素材中に弾性部材を有し、非装着時には手の当該部位よりもやや細い径とし、装着時にはこの弾性部材が伸長し発生する引張力により手と手袋部10の間に摩擦抵抗が発生し、手袋部10が手に保持される。これは手袋部10が料理作業中に脱落、又は最適な装着位置から離れるのを防ぐ効果がある。図1、図2では固定部12の位置を手袋部10の基部としているが、必要に応じ手首付近等に追加する場合もある。
【0024】
図4、図5は本発明の第2の実施の形態に係り、図4正面図、図5は断面図である。手袋部10の外部に遮蔽用部材14がスリット11を覆う形態で設けられる。遮蔽用部材14は繊維素材等の柔軟素材が用いられ、スリット11の片側の近傍に平行してスリット11を覆うように縫製等により取り付けられる。遮蔽用部材14には柔軟素材が用いられ、スリット11に箸21を挿通しても容易に折り曲げる等の変形が可能なため箸21の操作に支障は無い。遮蔽用部材14は必要に応じ手袋部10の内側に設けられる場合もある。手袋部10により高温の飛沫を防ぐことは十分可能であるが、スリット11に遮蔽用部材13を設けることにより飛沫からの保護機能をより強化することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。[0018]において説明したように、スリット11は手袋部10の先端より基端方向へ3cm〜5cmの位置に長さ方向に設けられるならば、手袋部10にスリット11を複数箇所設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスリット付き料理用手袋の使用状態を示す概観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスリット付き料理用手袋の全体の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るスリット部の正面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るスリット部の正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るスリット部の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 手袋部
11 スリット
12 固定部
13 縫製部
14 遮蔽用部材
20 使用状態を示す手
21 箸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
料理時に手に装着する手袋であって、指部を有することなく先端は閉鎖され基端は手を挿抜するための開放口を有する略筒形を成し、手袋内部から箸を操作するためのスリットが設けられたことを特徴とするスリット付き料理用手袋。
【請求項2】
前記スリットを覆う開閉自在の遮蔽部材を設けることを特徴とする請求項1記載のスリット付き料理用手袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−263835(P2009−263835A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137273(P2008−137273)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506259896)
【Fターム(参考)】