説明

スルホキシド誘導体またはその塩のアモルファスの製造方法

下記式(I)(式中、Rは水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、Rはメチル基またはメトキシ基を、Rは3−メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2−トリフルオロエトキシ基を、Rは水素原子またはメチル基をそれぞれ意味し、Bは水素原子、アルカリ金属または1/2アルカリ土類金属を意味する。)で表されるスルホキシド誘導体またはその塩の溶媒和結晶を加熱乾燥することを特徴とする、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの製造方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スルホキシド誘導体またはその塩の溶媒和結晶を加熱乾燥することにより、胃酸分泌抑制剤、抗潰瘍剤等の医薬として有用なスルホキシド誘導体またはその塩のアモルファスを効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
従来、式(I)(式中、Rは水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、Rはメチル基またはメトキシ基を、Rは3−メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2−トリフルオロエトキシ基を、Rは水素原子またはメチル基をそれぞれ意味し、Bは水素原子、アルカリ金属または1/2アルカリ土類金属を意味する。)で表されるスルホキシド誘導体またはその塩の一つである2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩(一般名:ラベプラゾール・ナトリウム塩)の製造においては、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(一般名:ラベプラゾール)を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた後、凍結乾燥するか(特許文献1参照)、または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を凍結乾燥することによりアモルファスとして得ていた(特許文献2参照)。

凍結乾燥によりアモルファスを得る方法は、不安定なタンパク系製剤や抗生剤等を中心に、医薬品を固体として得る手段として汎用されてきている。
しかし、1)生産スケールが設備の容量または能力によって制限され、工業スケールで実施する場合には、大規模な凍結乾燥専用設備が必要とされること、2)水分に不安定な医薬品の場合、凍結乾燥終了後にさらに別途水分除去のための乾燥工程が必須とされること等、時間、コストあるいは環境保護の面で大きな問題点があった。
また、凍結乾燥によって得られるアモルファスはその粒径を揃えることが困難であることが知られている。特にラベプラゾールのように潮解性があり、水分のコントロールが重要な化合物の場合には、粉砕と篩過の工程を採用することが困難であるという問題点があった。
【特許文献1】米国特許第5045552号明細書
【特許文献2】米国特許第6180652号明細書
【発明の開示】
本発明は上記事情に鑑み、凍結乾燥法の抱える上記問題点を克服し、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスを工業スケールで効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を、従来の常識を覆す高温加熱乾燥することにより、工業スケールで安定的に無色のスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスを得ることに成功するとともに、さらに当該乾燥方法を用いるとスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの粒径が揃った状態で得られることも見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<32>を提供する。
<1> 下記式(I)(式中、Rは水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、Rはメチル基またはメトキシ基を、Rは3−メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2−トリフルオロエトキシ基を、Rは水素原子またはメチル基をそれぞれ意味する。Bは水素原子、アルカリ金属または1/2アルカリ土類金属を意味する。)で表されるスルホキシド誘導体またはその塩の溶媒和結晶を加熱乾燥することを特徴とする、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの製造方法

<2> スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を減圧下、加熱乾燥することを特徴とする、<1>記載の製造方法。
<3>スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を、加湿ガスを用いて加熱乾燥することを特徴とする、<1>または<2>記載の製造方法。
<4>スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を、不活性媒体中で加熱乾燥することを特徴とする、<1>記載の製造方法。
<5> スルホキシド誘導体が2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、2−[[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールまたは5−ジフルオロメトキシ−2−[(4,5−ジメトキシ−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールである、<1>〜<4>のいずれかに記載の方法。
<6> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体を減圧下、加熱乾燥することを特徴とする、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファスの製造方法。
<7> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を減圧下、加熱乾燥することを特徴とする、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファスの製造方法。
<8> 加熱温度が30℃から130℃の範囲である<1>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9> 加熱温度が100℃から110℃の範囲である<1>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<10> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が50μm以下であり、90%累積径が80μm以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<11> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が30μm以下であり、90%累積径が50μm以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<12> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、90%累積径が10μm以上50μm以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<13> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上15μm以下であり、90%累積径が10μm以上25μm以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<14> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にある<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<15> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にある<1>〜<9>及び<14>のいずれかに記載の方法。
<16> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が5μm以上30μm以下である<1>〜<9>、並びに<14>及び<15>のいずれかに記載の方法。
<17> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が5μm以上15μm以下である<1>〜<9>、及び<14>〜<16>のいずれかに記載の方法。
<18> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、90%累積径が10μm以上50μm以下である<1>〜<9>、及び<14>〜<17>のいずれかに記載の方法。
<19> スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、90%累積径が10μm以上25μm以下である<1>〜<9>、及び<14>〜<18>のいずれかに記載の方法。
<20> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造することができる、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
<21> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造される、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
<22> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造することができる、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
<23> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造される、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
<24> レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、90%累積径が10μm以上50μm以下である、<20>〜<23>のいずれかに記載のアモルファス。
<25> レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上15μm以下であり、90%累積径が10μm以上25μm以下である、<20>〜<23>のいずれかに記載のアモルファス。
<26> レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にある<20>〜<23>のいずれかに記載のアモルファス。
<27> レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にある<20>〜<23>及び<26>のいずれかに記載のアモルファス。
<28> レーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が5μm以上30μm以下である<20>〜<23>、並びに<26>及び<27>のいずれかに記載のアモルファス。
<29> レーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が5μm以上15μm以下である<20>〜<23>、及び<26>〜<28>のいずれかに記載のアモルファス。
<30> レーザー回折法による粒度分布測定において、90%累積径が10μm以上50μm以下である<20>〜<23>、及び<26>〜<29>のいずれかに記載のアモルファス。
<31> レーザー回折法による粒度分布測定において、90%累積径が10μm以上25μm以下である<20>〜<23>、及び<26>〜<30>のいずれかに記載のアモルファス。
<32> 2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体。
【図面の簡単な説明】
図1は、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体の粉末X線回折パターンを示す図である。
図2は、凍結乾燥品(参考例2)の粉末X線回折パターンを示す図である。
図3は、加熱乾燥品(実施例1)の粉末X線回折パターンを示す図である。
図4は、凍結乾燥品(参考例2)の粒度分布を示す図である。
図5は、加熱乾燥品(実施例3)の粒度分布を示す図である。
図6は、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体の熱分析の結果を示す図である。
図7は、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトニトリル錯体のH−NMRチャートである。
図8は、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトニトリル錯体の粉末X線回折パターンを示す図である。
図9は、加熱乾燥品(実施例16)の粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明について詳述する。
本明細書において用いられる用語「アルカリ金属」とは、具体的には例えばナトリウム、カリウム、リチウム等を意味し、アルカリ土類金属とは、具体的には例えばカルシウム、マグネシウムを挙げることができる。好ましくはナトリウムまたはマグネシウムであり、より好ましくはナトリウムである。
本明細書において用いられる用語「アルカリ金属」とは、具体的には例えばナトリウム、カリウム、リチウム等を意味し、「アルカリ土類金属」とは、具体的には例えばカルシウム、マグネシウムを挙げることができる。好ましくはナトリウムまたはマグネシウムであり、より好ましくはナトリウムである。
なお、本明細書中の式(I)において、Bが「1/2アルカリ土類金属」を意味する場合、該スルホキシド誘導体の塩は、以下の式(II)で表される。

(式中、R、R、RおよびRは前記定義と同意義を意味する。B’はアルカリ土類金属を意味する。)
スルホキシド誘導体またはその塩(I)は、より具体的には、例えば米国特許第5045552号明細書に記載されている2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(一般名;ラベプラゾール)、米国特許第4628098号明細書に記載されている2−[[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(一般名;ランソプラゾール)、米国特許第4255431号明細書に記載されている5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(一般名;オメプラゾール)または米国特許第4758579号明細書に記載されている5−ジフルオロメトキシ−2−[(4,5−ジメトキシ−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(一般名;パントプラゾール)等、あるいはそれらの塩を挙げることができる。いずれの化合物も、それぞれの明細書記載の方法により製造することができる。
スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶として、より具体的には、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、2−[[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールもしくは5−ジフルオロメトキシ−2−[(4,5−ジメトキシ−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールのアセトン錯体(アセトン和結晶)、アセトニトリル錯体(アセトニトリル和結晶)もしくは酢酸エチル錯体(酢酸エチル和結晶)等、またはそれらの塩のアセトン錯体、アセトニトリル錯体もしくは酢酸エチル錯体等を挙げることができる。好ましくは、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体および2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体であり、より好ましくは2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体である。
スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶は、基本的にはスルホキシド誘導体またはその塩(I)を、溶媒と接触させるか、または溶媒に溶解させ、次いで結晶化させる等の処理をすることによって得ることができる。
なお、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアセトン錯体は、米国特許第6180652号明細書に開示されており、具体的には、下記式(式中、Rは水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、Rはメチル基またはメトキシ基を、Rは3−メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2−トリフルオロエトキシ基を、Rは水素原子またはメチル基をそれぞれ意味し、mおよびnは独立して1〜4の実数を意味し、Bは水素原子、アルカリ金属または1/2アルカリ土類金属を意味する。)で表され、同明細書記載の方法に従って製造することができる。

スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアセトニトリル錯体は、スルホキシド誘導体またはその塩(I)をアセトニトリルに溶解し、静置の後析出した結晶を濾取し、乾燥することで製造することができる。
スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアセトン錯体またはアセトニトリル錯体は、濾取した後、乾燥することなくアモルファスの製造工程に用いてもよい。
本明細書において用いられる用語「アモルファス」とは、非晶質の固体を意味する。
本明細書において用いられる用語「加湿ガス」とは、加湿空気または加湿窒素等、水分を含有しスルホキシド誘導体またはその塩(I)に対して不活性な気体を意味する。また、加湿ガスの湿度は、加湿ガスの温度が20℃から35℃の範囲である場合に、15%から60%の範囲、好ましくは30%から40%の範囲である。
本明細書において用いられる用語「不活性媒体」とは、スルホキシド誘導体またはその塩(I)に対して不活性な気体または液体を意味する。不活性な気体の具体例としては窒素ガス、アルゴンガス、乾燥空気等が挙げられる。不活性な液体は、1)スルホキシド誘導体またはその塩(I)を溶解せず、2)沸点が約60℃以上であれば限定されないが、具体的には例えば1−ヘプタン、シクロヘキセン等の脂肪族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、エーテル類等が挙げられる。
続いて、本発明に係るスルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を加熱乾燥することによる、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの製造方法について、具体的に述べる。
本発明においては、基本的にはスルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を振動真空乾燥機に入れ、熱媒を循環させながら加熱乾燥を行うことで、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスを製造することができる。好ましくは減圧下において加熱乾燥を行う。
本発明に係る加熱乾燥は、加湿ガスを用いることでも行うことができる。具体的には、加熱振動させながら減圧し、それと同時にスルホキシド誘導体またはその塩(I)と接触するように加湿ガスを少しずつ流入させながら溶媒和結晶中の溶媒を除去することにより行う。加湿ガスを用いた乾燥では、粉体中の溶媒と水との置換により拡散移動を容易にし、蒸発を助長することで、溶媒を分離することができるので、加湿ガスを用いると加熱温度と減圧度を下げることができるという利点がある。
本発明に係る加熱乾燥は、不活性媒体中でも行うことができる。不活性媒体として不活性な気体を用いる場合、具体的には加熱と同時にスルホキシド誘導体またはその塩(I)と接触するように不活性な気体を少しずつ流入させることにより行う。不活性媒体として不活性な液体を用いる場合、具体的にはスルホキシド誘導体またはその塩(I)を不活性な液体中に懸濁、分散させ、熱伝導性が良好な条件で加熱することにより行う。
加熱温度は限定されないが、通常は30℃から130℃の範囲、好ましくは60℃から120℃の範囲、より好ましくは100℃から110℃の範囲で加熱乾燥を行うことができる。また、乾燥時間は乾燥装置、加熱温度、減圧度、スケール等に依存するが、通常は1時間から160時間の範囲、好ましくは3時間から30時間の範囲で加熱乾燥を行うことができる。
レーザー回折法による粒度分布測定は、例えば「Microtrac X100」(Leeds and Northrup製)を用いて行うことができる。本測定方法によって、前記加熱乾燥を行うことにより製造されるスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの粒度分布測定を行った場合、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの平均粒子径は50μm以下、好ましくは30μm以下であり、90%累積径は80μm以下、好ましくは50μm以下である。
また、レーザー回折法による粒度分布測定方法によって、前記加熱乾燥を行うことにより製造されるスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの粒度分布測定を行った場合、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、90%累積径が10μm以上50μm以下である。好ましくは、アモルファスの粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上15μm以下であり、90%累積径が10μm以上25μm以下とすることができる。上記の範囲の粒子を得ることにより、粒径を揃える工程を削減することができる。また、比較的粒径の小さい粒子は一般に比表面積を小さく抑えることができるため、水分に対する安定性が向上した粒子を得ることができる。
【実施例】
続いて本発明を具体的に説明するため、以下に実施例を掲げるが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
純度測定HPLC条件
固定相:YMC−Pack Pro C18 AS−303(4.6mmI.D.X250mm,5μm)
移動相:MeOH/HO/AcONH=550mL/450mL/2g
流速 :1.0mL/分
温度 :35℃
検出器:UV 290nm
粉末X線回折パターンの測定条件
X線 :Cu
フィルタ :使用しない
電圧 :40kV
電流 :20mA
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット :1deg
散乱スリット :1deg
受光スリット :0.15mm
スキャンスピード :2deg/分
走査範囲 :5〜40
参考例1:2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体の製造
米国特許第6180652号明細書(実施例7)に記載の方法に従って合成した。
参考例2:凍結乾燥による2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
米国特許第5045552号明細書(実施例33)に記載の方法に従って合成した。
実施例1:110℃/減圧乾燥による6kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VH−25型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(6kg:アセトン26%含有品:12.35mol)をとり、110℃に加熱した熱媒(80%エチレングリコール/水)を循環し振動真空加熱を行った。加熱1時間15分で乾燥機のジャケット温度が104℃に達した(品温83℃)。5時間後に(ジャケット温度109℃、品温107℃、真空度0.2pKa)乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(4.66kg、アセトン260ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例2:105℃/減圧乾燥による6kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VH−25型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(6kg:アセトン26%含有品:12.35mol)をとり、105℃に加熱した熱媒(80%エチレングリコール/水)を循環し振動真空加熱を行った。加熱2時間で乾燥機のジャケット温度が103℃に達した(品温75℃、真空度0.2pKa)。7時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(4.57kg、アセトン280ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例3:100℃/減圧乾燥による6kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VH−25型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(6kg:アセトン26%含有品:12.35mol)をとり、60℃に加熱した熱媒(80%エチレングリコール/水)を循環し3時間振動真空加熱を行った。次いで、100℃に加熱した(80%エチレングリコール/水)熱媒を循環し振動真空加熱を行った。加熱1時間40分で乾燥機のジャケット温度が88℃に達した(品温69℃、真空度0.2pKa)。14時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(4.54kg、アセトン290ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例4:120℃/減圧乾燥による50gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
300mLのナスフラスコに2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(50g:アセトン12%含有品:122mmol)をとり、60℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより真空ポンプで減圧しながら2時間減圧加熱乾燥を行った。次いで120℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより減圧加熱乾燥を行った(真空度0.2pKa)。1時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン80ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例5:115℃/減圧乾燥による50gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
300mLのナスフラスコに2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(50g:アセトン12%含有品:122mmol)をとり、60℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより真空ポンプで減圧しながら2時間減圧加熱乾燥を行った。次いで115℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより減圧加熱乾燥を行った(真空度0.2pKa)。加熱2時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン240ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例6:105℃/減圧乾燥による50gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
300mLのナスフラスコに2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(50g:アセトン10%含有品:125mmol)をとり、60℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより真空ポンプで減圧しながら2時間減圧加熱乾燥を行った。次いで105℃に加熱した油浴中で間欠回転しながらevaporatorにより減圧加熱乾燥を行った(品温100℃、真空度0.2pKa)。加熱5時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン190ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例7:82℃/減圧乾燥による1kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VU−15型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(1kg:アセトン10%含有品:2.5mol)をとり、82℃に加熱した熱水を循環し振動真空加熱を行った(真空度<0.2pKa)。137時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン1870ppm)が得られた。
実施例8:80℃/減圧乾燥による15gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
棚式真空乾燥機に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(15g:アセトン10%含有品:38mmol)をとり、80℃で減圧乾燥を行った(真空度<0.2pKa)。加熱15時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(13g、アセトン130ppm、HPLC純度99.6%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例9:105℃/減圧乾燥による12kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VH−25型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(11.5kg:17%アセトン含有品:25.0mol)をとり、105℃に加熱した(80%エチレングリコール/水)熱媒を循環し振動真空加熱を行った(真空度0.2pKa)。ジャケットの温度が100℃以上になってから15時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(9.4kg、アセトン130ppm、HPLC純度99.3%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
実施例10:60℃/加湿減圧乾燥による10kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VU−15型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(10.2kg:約24%アセトン含有品:26.7mol)をとり、30℃で1hr、次いで40℃で1hr、次いで50℃で0.5hr熱水を循環し振動真空乾燥を行った。次いで60℃に加熱した熱水を循環し、窒素ガスを少しずつ流入させて減圧度を13mmHgに調整し、更に67hr乾燥を行った。次いで大気(室温22〜27℃、湿度16〜60%、空気流入量10〜13m/hr)を少しずつ流入させながら(13mmHg)更に60℃で84hr乾燥を行った。152時間後に乾燥を終了し、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン340ppm)が得られた。
実施例11:60℃/加湿減圧乾燥による9kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VU−15型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(9.1kg:約20%アセトン含有品:19.1mol)をとり、20℃で2hr、次いで30℃に加熱した熱水を循環し、大気(室温26〜32℃、湿度30〜40%、空気流入量10〜13m/hr)を少しずつ流入させながら(650mmHg)67hr乾燥を行った。更に、リークを止め48hr減圧乾燥を行った(30℃で24hr、次いで50℃で24hr)。2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(2.1kg、アセトン600ppm、HPLC純度99.8%)が得られた。
実施例12:60℃/加湿減圧乾燥による3kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VU−15型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(2.5kg:約24%アセトン含有品:6.6mol)をとり、60℃に加熱した熱水を循環し、大気(室温27〜32℃、湿度30〜40%、空気流入量0.68〜1.25L/min)を少しずつ流入させながら(4mmHg)92hr乾燥を行った。2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(2.0kg、アセトン1600ppm)が得られた。
実施例13:30℃/加湿条件下の減圧乾燥による3kgスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
振動真空乾燥機(中央化工機製、VUA−20型)に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(2.5kg:約15%アセトン含有品:5.5mol)をとり、30℃に加熱した熱水を循環し、加湿窒素を少しずつ流入させて減圧度を13mmHgに調整し、21hr乾燥を行った(室温30℃、湿度40%、加湿窒素流入量207m/hr)。2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(アセトン510ppm)が得られた。
実施例14:50℃/加湿送風乾燥による10gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
箱型送風乾燥機に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体(10g:約12%アセトン含有品:23mmol)をシャーレにとり、乾燥機の温度を50℃に設定し、48時間送風乾燥を行った(室内の湿度50%)。2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(9.0g、アセトン40ppm、HPLC純度99.8%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。
図1に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体の粉末X線回折パターンを、図2に凍結乾燥品(参考例2)の粉末X線回折パターンを、図3に加熱乾燥品(実施例1)の粉末X線回折パターンをそれぞれ示す。
実施例15:2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトニトリル錯体の製造
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩10.0gをアセトニトリル20mlに溶解した後、22℃にて18時間静置した。析出した結晶を濾取した後、アセトニトリル30mlで洗浄し、2時間減圧乾燥して無色の2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトニトリル錯体9.1gを得た(アセトニトリル8.4%)。得られたアセトニトリル錯体の粉末X線回折パターンは結晶構造を示した。なお、図7にアセトニトリル錯体のH−NMRチャートを、図8にアセトニトリル錯体の粉末X線回折パターンを、表1にアセトニトリル錯体の粉末X線回折パターンにおける回折角度と相対強度をそれぞれ示す。
H−NMR(400MHz,DMSO−d
δ:1.97(quintet,J=6Hz,2H)2.17(s,3H)3.24(s,3H)3.48(t,J=6Hz,2H)4.09(t,J=6Hz,2H)4.39(d,J=13Hz,1H)4.76(d,J=13Hz,1H)6.85(m,2H)6.92(d,J=6Hz,1H)7.44(m,2H)8.27(d,J=6Hz,1H)

実施例16:105℃/減圧乾燥による5gスケールの2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスの製造
棚式真空乾燥機に2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトニトリル錯体(10g、約8.4%アセトニトリル含有品38mmol)をとり、真空ポンプで減圧しながら105℃で減圧乾燥を行った(真空度0.2pKa)。加熱5時間後に乾燥を終了した。2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファス(4g、アセトニトリル4ppm、HPLC純度99.7%)が得られた。得られたアモルファスの粉末X線回折パターンは凍結乾燥品と一致した。なお、図9に加熱乾燥品(実施例16)の粉末X線回折パターンをそれぞれ示す。
粒度分布の測定
凍結乾燥(参考例2)、加熱乾燥(実施例3)それぞれの方法によって得られた2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスについて、「Microtrac X100」(Leeds and Northrup製)を用いて粒度分布を測定した。凍結乾燥品の結果を図4に、加熱乾燥品の結果を図5に示す。
凍結乾燥品は幅広い粒度分布を示すのに対し、加熱乾燥品はシャープな粒度分布を示し、加熱乾燥によって均一性の高いアモルファスを得ることができた。
比表面積の測定
凍結乾燥(参考例2)、加熱乾燥(実施例3)それぞれの方法によって得られた2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アモルファスについて、高精度全自動ガス吸着装置「BELSORP 36」(日本ベル製)を用いて50℃で真空脱気の後、液体窒素温度(77K)で窒素の吸着等温線を測定した。この等温線をBET法で解析して比表面積を求めた。以下の表2に、凍結乾燥品と加熱乾燥品の比表面積と粒度分布の測定で算出された90%累積径を示す。

凍結乾燥品と比較して、加熱乾燥品は粒径が小さく、比表面積も小さいことが明らかとなった。従って、凍結乾燥品と比較して、加熱乾燥品は水分に対する安定性により優れているものと考えられる。
熱分析の測定
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体について、熱分析(TG−DTA)を、下記条件にて行った。
リファレンス :Al
スキャンスピード:2℃/min
上限温度 :120℃
下限温度 :20℃
熱分析の結果を図6に示す。
測定結果より、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩・アセトン錯体は65.7℃以上から重量の減少が始まり、76.7℃以上から効率的なアセトンの減少が始まることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
本発明に係る加熱乾燥方法を用いることにより、スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶から、工業スケールで安定的にスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスを得ることができるようになった。さらに、本発明の乾燥方法を用いることでスルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの粒径が揃った状態で得られることも可能となった。したがって、本発明の乾燥方法は、従来の凍結乾燥法に比較して工程短縮と同時に、時間とエネルギーを含むコストの大幅な削減につながり、また、地球環境保護の観点からも好ましいものと考えられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)(式中、Rは水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、Rはメチル基またはメトキシ基を、Rは3−メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2−トリフルオロエトキシ基を、Rは水素原子またはメチル基をそれぞれ意味し、Bは水素原子、アルカリ金属または1/2アルカリ土類金属を意味する。)で表されるスルホキシド誘導体またはその塩の溶媒和結晶を加熱乾燥することを特徴とする、スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスの製造方法:

【請求項2】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を減圧下、加熱乾燥する請求項1記載の方法。
【請求項3】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を、加湿ガスを用いて加熱乾燥する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)の溶媒和結晶を、不活性媒体中で加熱乾燥する請求項1記載の方法。
【請求項5】
スルホキシド誘導体が2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、2−[[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールまたは5−ジフルオロメトキシ−2−[(4,5−ジメトキシ−2−ピリジル)メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールである、請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体を減圧下、加熱乾燥することを特徴とする、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファスの製造方法。
【請求項7】
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を減圧下、加熱乾燥することを特徴とする、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファスの製造方法。
【請求項8】
加熱温度が30℃から130℃の範囲である請求項1〜7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
加熱温度が100℃から110℃の範囲である請求項1〜7いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が50μm以下であり、90%累積径が80μm以下である請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、平均粒子径が30μm以下であり、90%累積径が50μm以下である請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、90%累積径が10μm以上50μm以下である請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
スルホキシド誘導体またはその塩(I)のアモルファスのレーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上15μm以下であり、90%累積径が10μm以上25μm以下である請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体または2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造することができる、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
【請求項15】
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトン錯体を減圧下、加熱乾燥することにより製造することができる、2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアモルファス。
【請求項16】
レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上75μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上30μm以下であり、90%累積径が10μm以上50μm以下である、請求項14または15記載のアモルファス。
【請求項17】
レーザー回折法による粒度分布測定において、粒子径が1μm以上50μm以下の範囲内にあり、平均粒子径が5μm以上15μm以下であり、90%累積径が10μm以上25μm以下である、請求項14または15記載のアモルファス。
【請求項18】
2−[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩のアセトニトリル錯体。

【国際公開番号】WO2004/085424
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504007(P2005−504007)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003525
【国際出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】