説明

スルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法

【課題】スルホン酸基含有ビニルモノマーの重合体を、活性プロトンを有するモノマー、溶媒、あるいは両者を用いても、高収率で重合体を得ることができるスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法を提供する。
【解決の手段】
t−Bu3−nZnM またはt−BuR’4−mZnM
(式中、nは1〜3の整数であり、mは1〜4の整数であり、lは1〜2の実数であり、R及びR’は各々同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示す。Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す)で示されるハロゲン化マグネシウムを表す。)で示される亜鉛アート錯体を重合開始剤として用いる、スルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の亜鉛アート錯体を重合開始剤として用いるスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基を含有するポリマーは、酸触媒、洗浄剤、イオン交換膜あるいは電解質膜として有用である。
スルホン酸基を含有するポリマーの製造方法としては、スルホン酸基を含有しないポリマーをスルホン化剤によりスルホン化する方法および、スルホン酸基含有モノマーを用い重合により合成させる方法の2通りが挙げられる。
【0003】
ポリマーのスルホン化により製造する方法は、スルホン化の位置選択性の制御の問題や、スルホン化に用いる反応剤の残存、架橋等の副反応抑制などの問題がある。
【0004】
一方、スルホン酸基含有モノマーを用いた重合、特にスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合は一般には開始剤としてラジカル開始剤が使用される(例えば特許文献1、2参照)。しかしながら、ラジカル重合を行うに当たっては微量不純物により重合速度や生成ポリマーの分子量が影響を受けるため、重合に際しては、モノマー、溶媒などの精製、および溶媒の溶存酸素の除去などに留意する必要があった。
【0005】
有機金属化合物を開始剤に用いたアニオン重合では、溶媒やモノマー中に活性プロトンが存在する場合、開始剤の失活が起こるため、ポリマーを得ることはできない。
ところが内山らは、テトラt−ブチル亜鉛酸ジリチウムがN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリル酸エステル等の重合触媒として有用であり、さらにこの触媒は、含水THF(テトラヒドロフラン)等の水を含む溶液中でもリビング重合的アニオン重合を進行させることができる画期的な方法として提案した(例えば特許文献3参照)。
【0006】
またt−ブチル基を少なくとも1つ含有する亜鉛アート錯体でも、同様にアクリレート系モノマーの水系での重合が進行することが報告されている(例えば特許文献4,5参照)。
これらの亜鉛アート錯体を使用することで、モノマーや溶媒の厳密な精製を必要とすることなくアクリレート系のモノマーの重合を行う事が可能であることが示された。
【0007】
しかしながら、これらの亜鉛アート錯体が、スルホン酸基を含有するビニルモノマーの重合に使用可能であることは示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−139816号公報
【特許文献2】特表2006−502249号公報
【特許文献3】特開2004−292328号公報
【特許文献4】特開2007−320938号公報
【特許文献5】再表2007/142188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するためになされたものであり、スルホン酸基含有ビニルモノマーの重合体を、活性プロトンを有するモノマー、溶媒、あるいは両者を用いても、高収率で重合体を得ることができるスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法を提供することにある。
即ち、いずれの先行技術もスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合開始剤として、最適な物質を示唆するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、本課題を解決するために鋭意努力を行った結果、亜鉛原子上にt−ブチル基を少なくとも1つもつ有機亜鉛アート錯体がアニオン重合性モノマーの重合開始剤として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)または(2)で示される亜鉛アート錯体を重合開始剤として用いることを特徴とするスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法である。
t−Bu3−nZnM (1)
(式中、nは1〜3の整数であり、Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す。)で示されるハロゲン化マグネシウムを表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示す。)
t−BuR’4−mZnM (2)
(式中、mは1〜4の整数であり、lは1〜2の実数であり、R’は式(1)のRと同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示し、Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す)で示されるハロゲン化マグネシウムを表す。)
【0011】
本発明の重合開始剤は下記一般式(1)または(2)で示される少なくとも1つのt−ブチル基を有する有機亜鉛アート錯体である。
t−Bu3−nZnM (1)
t−BuR’4−mZnM (2)
ここで、nは1〜3から選ばれる整数であり、mは1〜4の整数を示し、lは1ないし2の実数である。
RとR’は、各々同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ビニル基、シクロペンタジエニル基、フェニル基、ベンジル基のいずれかを示す。
Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す)で示されるハロゲン化マグネシウムを表す。
【0012】
本発明に用いられる有機亜鉛アート錯体のより具体的な例としては、一般式(1)
t−Bu3−nZnM (1)
で示される化合物として、(t−ブチル)ジメチル亜鉛酸リチウム、(t−ブチル)ジエチル亜鉛酸リチウム、(t−ブチル)ジブチル亜鉛酸リチウム、(t−ブチル)ジビニル亜鉛酸リチウム、(n−ブチル)ジt−ブチル亜鉛酸リチウム、ビス(t−ブチル)フェニル亜鉛酸リチウム、トリt−ブチル亜鉛酸リチウム等の有機亜鉛酸リチウムや、(t−ブチル)ジメチル亜鉛酸マグネシウムクロライド、(t−ブチル)ジメチル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、(t−ブチル)ジメチル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、ジ(t−ブチル)メチル亜鉛酸マグネシウムクロライド、ジ(t−ブチル)メチル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、ジ(t−ブチル)メチル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、ジエチル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムクロライド、ジエチル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムブロマイド、ジエチル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、エチルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムクロライド、エチルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムブロマイド、エチルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、(t−ブチル)ジブチル亜鉛酸マグネシウムクロライド、(t−ブチル)ジブチル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、(t−ブチル)ジブチル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、ジ(t−ブチル)ブチル亜鉛酸マグネシウムクロライド、ジ(t−ブチル)ブチル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、ジ(t−ブチル)ブチル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、(t−ブチル)ジビニル亜鉛酸マグネシウムクロライド、(t−ブチル)ジビニル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、(t−ブチル)ジビニル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、ジフェニル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムクロライド、ジフェニル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムブロマイド、ジフェニル(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、フェニルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムクロライド、フェニルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムブロマイド、フェニルジ(t−ブチル)亜鉛酸マグネシウムアイオダイド、トリt−ブチル亜鉛酸マグネシウムクロライド、トリt−ブチル亜鉛酸マグネシウムブロマイド、トリt−ブチル亜鉛酸マグネシウムアイオダイド等の有機亜鉛酸マグネシウムハロゲン化物が例示される。
【0013】
また、一般式(2)
t−Bu4−mZnM (2)
で示される有機亜鉛アート錯体の具体例としては、テトラキス−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチルメチル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチルエチル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチル−n−プロピル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチル−i−プロピル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチル−n−ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチル−i−ブチル亜鉛酸ジリチウム、トリ−t−ブチル−s−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジメチルジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジエチルジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジ−t−ブチルジ−n−プロピル亜鉛酸ジリチウム、ジ−t−ブチルジ−i−プロピル亜鉛酸ジリチウム、ジ−n−ブチルジ−n−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジ−n−ブチルジ−i−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジ−n−ブチルジ−s−ブチル亜鉛酸ジリチウム、メチルエチルジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、メチル−n−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、メチル−s−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、エチル−n−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、エチル−s−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジメチルエチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジメチル−n−ブチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジメチル−s−ブチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジメチルエチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジエチルメチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジエチル−n−ブチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム、ジエチル−s−ブチル−t−ブチル亜鉛酸ジリチウム等の有機亜鉛酸ジリチウムや、テトラキス−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチルメチル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチルエチル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチル−n−プロピル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチル−i−プロピル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチル−n−ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチル−i−ブチル亜鉛酸マグネシウム、トリ−t−ブチル−s−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジメチルジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジエチルジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジ−t−ブチルジ−n−プロピル亜鉛酸マグネシウム、ジ−t−ブチルジ−i−プロピル亜鉛酸マグネシウム、ジ−n−ブチルジ−n−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジ−n−ブチルジ−i−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジ−n−ブチルジ−s−ブチル亜鉛酸マグネシウム、メチルエチルジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、メチル−n−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、メチル−s−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、エチル−n−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、エチル−s−ブチル−ジ−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジメチルエチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジメチル−n−ブチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジメチル−s−ブチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジメチルエチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジエチルメチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジエチル−n−ブチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム、ジエチル−s−ブチル−t−ブチル亜鉛酸マグネシウム等の有機亜鉛酸マグネシウムを挙げる事ができる。
【0014】
これらの亜鉛アート錯体は、単品でもあるいは混合物でも重合開始剤として用いることができる。
【0015】
本発明のt−ブチル基を有する亜鉛アート錯体は、不活性ガス雰囲気下、亜鉛化合物と、有機リチウム化合物あるいは有機マグネシウム化合物との反応により合成することができる。
例えば、ジアルキル亜鉛やジアリール亜鉛、ジアルケニル亜鉛などの有機亜鉛化合物に対して1〜2当量のt−ブチルリチウムあるいはt−ブチル基を有する有機マグネシウム試薬とを反応させることで合成することができる。
【0016】
また、ジt−ブチル亜鉛に対して1〜2当量の有機リチウム試薬または有機マグネシウム試薬を反応させたものを用いることもできる。
【0017】
あるいは、塩化亜鉛などのハロゲン化亜鉛を出発源とし、亜鉛に対し3〜4当量の有機リチウム試薬あるいは有機マグネシウム試薬を反応させることで合成することができる。この際、少なくとも1当量のt−ブチルリチウムあるいはt−ブチル基を有する有機マグネシウム試薬を使用することで、本発明における亜鉛アート錯体を合成することができる。
【0018】
これらの合成には、反応溶媒として、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素系溶媒およびそれらの混合液を用いることができる。なかでも、反応時の温度の制御あるいは均一性の保持の観点から、エーテル系溶媒を用いるのが好ましい。
【0019】
本発明において、合成した亜鉛アート錯体の溶液はそのまま重合に使用することができる。
【0020】
重合に用いられるスルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0021】
また、スルホン酸基含有ビニルモノマーと、その他のビニルモノマーとの共重合を行っても良い。
その他のビニルモノマーとしては具体的にはアクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミドなどのアクリル系モノマーや、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−(クロロメチル)スチレン、4−メトキシスチレン、4−アミノスチレン、4−ビニル安息香酸、ブタジエン、イソプレンなどの炭化水素系ビニルモノマーが例示できる。
【0022】
重合に用いられる溶媒としては、通常用いられる溶媒であればよく、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル溶媒系、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類および水等が挙げられる。一般に、水やアルコール類は、有機金属化合物と容易に反応を起こすため、それらを溶媒に用いた場合、有機金属化合物は重合開始機能を失う。しかしながら、本発明の亜鉛アート錯体は、水やアルコール系溶媒といったプロトン性溶媒系を重合溶媒として使用しても、重合開始機能を失うことがなく、高収率で重合体を得ることが出来る。
【0023】
本発明における重合において使用される亜鉛アート錯体の量は特に制限はないが、(モノマー100モルに対して0.001〜10モルの範囲で用いることが好ましい。この範囲より少ない場合には十分な重合活性が出ないことがあり、この範囲を超えた場合には、得られたポリマー中に多量の金属残渣が含まれることがあり、それを除去する工程が必要となることがある。
【発明の効果】
【0024】
本発明に記載の有機亜鉛アート錯体を重合開始剤として用いることで、スルホン酸基含有ビニルモノマーの重合体を、活性プロトンを有するモノマーおよび/または溶媒を用いても、高収率で重合体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[測定機器]
H−NMR測定はVarian社製 Gemini−300を用いて行った。
数平均分子量及び重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記条件で測定を行った。
分離カラム:TSK gel α−6000 +α−3000
カラム温度:40℃
移動相:リン酸緩衝液(pH=7)/アセトニトリル=9/1
移動速度:0.6ml/分
検出器:UV検出器、230nm
【0026】
(実施例1) t−BuZnLiによるp−スチレンスルホン酸ナトリウムの重合
窒素雰囲気下、0℃にてp−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物5.0gの水溶液(50mL)に、15.0wt%(重量%)のt−BuZnLiのTHF溶液(関東化学社より購入)0.6gを加え、常温で1時間間攪拌した。
得られた水溶液のH−NMR測定したところ、ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)が96%の転化率で得られていることを確認した。
GPC測定にて、ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)の数平均分子量は45,000、重量平均分子量は100,000であった。
【0027】
(実施例2) t−BuEtZnLiの調整
窒素雰囲気下、100mLナスフラスコにTHF20mL,ジエチル亜鉛1.78g(14.4ミリモル)を加え、−70℃に冷却した。攪拌条件下、16.0wt%のt−ブチルリチウムのペンタン溶液5.76g(14.4ミリモル)を滴下した。滴下後、−70℃にて30分攪拌した後、室温まで昇温した。溶媒を減圧濃縮後、THF希釈し9.3wt%のt−BuEtZnLiのTHF溶液を得た。
【0028】
t−BuEtZnLiによるp−スチレンスルホン酸ナトリウムの重合
窒素雰囲気下、0℃にてp−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物5.0gの水溶液(50mL)に、9.3wt%のt−BuEtZnLiのTHF溶液0.6gを加え、常温で1時間間攪拌した。
得られた水溶液のH−NMR測定したところ、ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)が79.6%の転化率で得られていることを確認した。
【0029】
(比較例1) n−BuEtZnLiの調製
窒素雰囲気下、100mLナスフラスコにTHF30mL,ジエチル亜鉛2.75g(22.2ミリモル)を加え、−70℃に冷却。攪拌下、15.3wt%−n−ブチルリチウムのヘキサン溶液19.0g(45.5ミリモル)を滴下した。滴下後、−70℃にて30分攪拌した後、室温まで昇温した。溶媒を減圧除去し、38.1wt%のn−BuEtZnLiのTHF溶液を得た。
【0030】
n−BuEtZnLiによるp−スチレンスルホン酸ナトリウムの重合
窒素雰囲気下、0℃にてp−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物5.0gの水溶液(50mL)に、38.1wt%のn−BuEtZnLiのTHF溶液0.2gを加え、常温で1時間間攪拌した。
得られた水溶液のH−NMR測定したところ、p−スチレンスルホン酸ナトリウムのピークのみで、ポリマーの生成は認められなかった。
【0031】
以上の結果よりより、t−ブチル基を有さない亜鉛アート錯体では、p−スチレンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合開始剤として機能しないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法は、酸触媒、洗浄剤、イオン交換膜あるいは電解質膜を得るのに有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または(2)で示される亜鉛アート錯体を重合開始剤として用いることを特徴とするスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法。
t−Bu3−nZnM (1)
(式中、nは1〜3の整数であり、Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す。)で示されるハロゲン化マグネシウムを表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示す。)
t−BuR’4−mZnM (2)
(式中、mは1〜4の整数であり、lは1〜2の実数であり、R’は式(1)のRと同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示し、Mはリチウム、マグネシウムあるいはMgX(Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表す)で示されるハロゲン化マグネシウムを表す。)
【請求項2】
重合に用いられる溶媒が水であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法。
【請求項3】
スルホン酸基含有ビニルモノマーがスチレンスルホン酸あるいはスチレンスルホン酸の金属塩であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスルホン酸基含有ビニルモノマーの重合方法。


【公開番号】特開2013−64085(P2013−64085A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204459(P2011−204459)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【Fターム(参考)】