説明

スロープ装置の車体連結構造及び回動アシスト構造

【課題】スロープ装置を車室内に傾斜又は水平状態に倒して格納でき、格納及び車外への展開操作が容易で簡単な構造からなるスロープ装置の車体連結構造の提供を目的とする。
【解決手段】車室内から車外に展開するスロープ装置の車体連結構造であって、スロープ装置の回動中心軸を車体側に設けた立設ブラケットに軸着又は枢着することで、スロープ装置を車室内側に概ね水平状態又は水平状態からの角度が80度以内になるように傾斜させた格納状態からスロープの先端が地面に当接する範囲まで回動可能に連結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の車室内にスロープ装置を格納した状態から車外に回動展開するための車体連結構造及びその展開操作力をアシストする回動アシスト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚以上のスロープがスライド伸縮自在又は折り畳み自在に連結したスロープ装置を起立状態にて車室内に格納するスロープ装置は公知である。
例えば、特許文献1は折り畳み格納可能に連結したスロープ装置を車両のテールゲートに連結した構造を開示し、特許文献2は2枚のスロープパネルを伸縮自在に連結したスロープ装置を車体のフロアに蝶番連結した構造を開示する。
しかし、これらのスロープ装置は車室内側に倒すことができず、車室内を広く使用することができないだけでなく、概ね起立した状態で車室内に格納するものであるために車体側の第一スロープパネルに折り畳んだ第二スロープパネル、あるいは第一スロープパネルのレールに沿ってスライド収納した第二スロープパネルは車両の走行中の振動にて揺れるので、第一スロープパネルとの間に生じるガタ音や干渉音が発生する問題があり、ガタ止め装置が別に必要となり、格納操作の手間がかかったり、構造上コストアップの要因になっていた。
【0003】
また、スロープ装置を車室内に格納したり、車外に展開する操作力を小さくするのにアシスト機構を設けたものも公知である。
例えば、特許文献3はアシスト機構を有するテールゲードに連結したスロープ装置を開示し、特許文献4はリンク機構によるアシスト機構を開示する。
しかし、特許文献3はテールゲードに連結したので、車室内側に倒すことができず、特許文献4はスロープの回動中心とアシストリンクの回動中心が異なるために構造が複雑であるのみならず、やはりスロープ装置を車室内側に倒して格納することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−193756号公報
【特許文献2】特開2008−221922号公報
【特許文献3】特開2004−224086号公報
【特許文献4】特開2008−230270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スロープ装置を車室内に傾斜又は水平状態に倒して格納でき、格納及び車外への展開操作が容易で簡単な構造からなるスロープ装置の車体連結構造の提供を目的とする。
また、構造が簡単で、回動範囲が広く、見栄えの良い回動アシスト構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるスロープ装置の車体連結構造は、車室内から車外に回動展開するスロープ装置の車体連結構造であって、スロープ装置の回動中心軸を車体側に設けた立設ブラケットに軸着又は枢着することで、スロープ装置を車室内側に概ね水平状態又は水平状態からの角度が80度以内になるように傾斜させた格納状態からスロープの先端が地面に当接する範囲まで回動可能に連結したことを特徴とする。
ここで、立設ブラケットとは軸着又は枢着したスロープ装置がこのブラケットや車体のフロアに干渉することなく、車室内側に回動可能にしつつ、車外に回動展開できるように車体から上方に向けて離間した位置に回動連結部を有することをいう。
【0007】
また、本発明はスロープ装置を回動させる操作力を低減するためのアシスト機構を備えてもよく、その場合に、スロープ装置は、立設ブラケットに軸着又は枢着した第一スロープに他のスロープがスライド伸縮可能又は折り畳み可能に設けてあり、前記第一スロープはパネルの両側にレール部を有し、前記アシスト機構に備えるアシストアームがスロープ装置の展開又は/及び格納方向に回動するとともに当該アシストアームの先端部がスライドするスライド溝を前記レール部に沿って有するようにすると構造が簡単で回動範囲が広い。
特に、レール部に沿って形成したスライド溝の条状の開口部がスロープ面に沿って有するようにすると、アシストアームの回動力が直接的にレール部に伝達されるように作用する。
ここで、スロープ面とは、スロープ装置が起立した状態で車両側に面した面をいう。
また、左右とはスロープ方向に対する直角方向をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスロープ装置の車体連結構造によると、スロープ装置を車室内に倒すと、室内が広く使用でき、また80度以内の角度になるように傾斜して格納すると、複数のスロープを折り畳んだ場合やスライド収納した場合に、第二あるいは第三のスロープに倒れ込み方向のモーメントが作用し、この第二あるいは第三のスロープが第一のスロープに向けて押し付けられる方向の力が発生することから従来の起立格納するタイプのスロープ装置よりもスロープのガタつきを抑える方向に保持力が向上し、車両走行時の静粛性が向上する。
【0009】
また、アシスト機構を設けた場合に本発明に係るアシスト構造は、アシストアームの先端部がスライドする条状の溝部をスロープのレール部に沿って設けたので、回動範囲が広く、構造が簡単で見栄えがよい。
また、条状の溝部はレール部の左右方向外側の側面と、レール部のスロープ面に沿った面とのどちらに設けてもよいが、レール部のスロープに沿った面に設けるとアシスト力がそのままレール部に伝達されやすい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】スロープ装置の車室内格納状態(a)及び車外への展開状態(b)を示す。
【図2】スロープ装置を車体に連結した状態を説明するために起立させた状態を示す。(a)は側面図、(b)は車外から見た正面図を示す。
【図3】連結部の部分拡大図を示し、(a)は側面視、(b)は車外正面視、(c)は水平に格納した状態、(d)は車室内側に傾斜させた状態に格納した場合、(e)は車外に展開した状態を示す。
【図4】他の連結構造例を示し、(a)は側面視、(b)はその正面視、(c)は他の構造の側面視、(d)はその正面視を示す。
【図5】(a)は傾斜状態に格納した場合のモーメント発生を示し、(b)は起立状態に格納した状態を示す。
【図6】スロープ装置にアシスト機構を設けた例を示す。
【図7】アシストアームの先端部の拡大図を示す。
【図8】スロープのレール部の根元側に切欠部を設けた例を示す。
【図9】レール部の上部面に沿ってスライド溝を設けた例を示す。
【図10】レール部の外側の側面に溝を設けた例を示す。
【図11】アシストアームにタンパー機構を設けた例を示す。
【図12】車外展開方向にダンパー機構を設けた例を示す。
【図13】ダンパー機構をレール内部に内蔵した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図3に本発明に係るスロープ装置10の連結構造例を示す。
本実施例は第一スロープ11の内側に第二スロープ12がスライド伸縮するスロープ装置を例に示したが、三段以上のスライド式スロープ装置でも複数枚のスロープパネルを折り畳んで格納する折り畳み式スロープ装置でもよい。
図2に示すように、第一スロープ11はパネル11aの両側にレール部11b,11cを連結してあり、このレール部に沿って第二スロープ12のレール部がスライド伸縮する。
第一スロープの根元部に回動中心軸21を設け、車両1の車体側から立設した立設ブラケット20に軸着又は枢着した。
本実施例では、パネル11aの下端部に回動中心軸21を配置し、パネル11aの両側から突出したレール部11b、11cの上端が、スロープ装置を車室内側に倒した際に、車内フロア面に干渉しない高さ以上に、回動中心軸21が位置するように立設ブラケット20を車体側に取り付けてある。
なお、立設ブラケット20の構造としては、図2,3に示すように車体のフロア2aからの立上げ部3にボルト等の締結部材20aを用いて垂直方向にブラケット20を立設してもよく、図4に示すようにフロア2aから略L字形状等のブラケット20Aを立設し、回動ピン21Aで連結してもよく、またシャフト21Bで軸着してもよい。
このようにすると、図1に示すように車室内側に概ね水平状態になるaの状態まで倒すことで、室内を広く利用できるようにしたり、フロア2aからの傾斜角度θ≦80度以内に傾斜したbで示した傾斜状態に格納してもよい。
傾斜状態に格納すると、図5(a)に示すように起立状態、(b)の重心Wの高さHよりも、重心Wの高さがHに低くなることでスロープ装置が安定するとともに、第一スロープの内側に収納した第二スロープに倒れ込み方向のモーメントfが発生するので、第二スロープのガタつきを防止する方向に保持力が働く。
また、スロープ装置10の連結部を中心にそのままスロープ11,12を車外にcの状態まで展開できる。
回動範囲θは135度以上が望ましい。
【0012】
図6はスロープ装置10のレール部に図7に示すような条状の開口部11eを有し、この開口部の内側に幅広の凹部11dを形成したレール溝を形成し、このレール溝にアシストアーム30の先端部に取り付けた条状の開口部11eの幅よりも幅の広い摺動コマ32をスライドさせる。
この場合に図6にてスロープの先端が車外に展開する際にレール溝とアシストアーム30が干渉しないように図8に示すように根元側に切欠き部11fを設けるとよい。
このようにすると、スロープのレール部に沿ってスライド用のレール溝が形成されるので、簡単な構造にてスロープの格納又は展開をアシストでき、例えばアシストアーム30の根元側をギア式の駆動部31に連結するだけで室内に概ね水平状態に格納するaの状態から車外に展開したcの状態まで連続的にアシストできる。
従って、アシストアーム30の回動範囲も広い。
また、レール溝の開口部11eをアシストアーム30の回動方向で、スロープ面に沿って設けることで、アシストアームの回動力がレール部にそのまま伝達される。
図9はレール溝をレール部11cの上端部に沿って設けた例である。
図10はレール溝をレール部11cの外側の側面に沿って設けた例で、この場合には図6に示すように車外に展開する際に切欠部11fは不要になる。
図11〜図13はアシストアーム30にさらにダンパーアーム40を連結した例を示し、図11(a)はアシストアーム30の先端部32の回転軌道Rに対してダンパーアーム40の先端部42をアシストアーム30の途中に軸着し、回転軌道Rによりアシストするようにダンパーアーム40の基部41をフロア2aに取り付けた例で、ダンパーアームの回転軌道Rに対してダンパーアームが伸張し展開方向にアシストする。
図11(b)はダンパーアーム40が展開側で伸張し、格納側で収縮することで両方向にアシストする例である。
図12はダンパーアーム40が伸張し格納方向にアシストする例を示す。
図13はダンパー装置40Aをレール部の内部に内臓した例である。
【符号の説明】
【0013】
10 スロープ装置
11 第一スロープ
12 第二スロープ
20 ブラケット
21 回動中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内から車外に回動展開するスロープ装置の車体連結構造であって、
スロープ装置の回動中心軸を車体側に設けた立設ブラケットに軸着又は枢着することで、スロープ装置を車室内側に概ね水平状態又は水平状態からの角度が80度以内になるように傾斜させた格納状態からスロープの先端が地面に当接する範囲まで回動可能に連結したことを特徴とするスロープ装置の車体連結構造。
【請求項2】
前記スロープ装置を回動させる操作力を低減するためのアシスト機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のスロープ装置の車体連結構造。
【請求項3】
前記スロープ装置は、前記立設ブラケットに軸着又は枢着した第一スロープに他のスロープがスライド伸縮可能又は折り畳み可能に設けてあり、
前記第一スロープはパネルの両側にレール部を有し、
前記アシスト機構に備えるアシストアームがスロープ装置の展開又は/及び格納方向に回動するとともに当該アシストアームの先端部がスライドするスライド溝を前記レール部に沿って有することを特徴とする請求項2記載のスロープ装置の車体連結構造。
【請求項4】
前記レール部に沿って形成したスライド溝の条状の開口部がスロープ面に沿って有することを特徴とする請求項3記載のスロープ装置の車体連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−229004(P2012−229004A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100087(P2011−100087)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】