説明

スーツケース及びスーツケース用シェル

【課題】多様な色彩や模様を柔軟に且つ迅速に付して供給することが可能であると共に、低コストで製造することができ、更には非常に軽量で高強度を有するスーツケースを提供する。
【解決手段】スーツケース1は、第1のポリカーボネイト層11と、第1のポリカーボネイト層11上にグラビア印刷等で印刷形成されたインク層12と、インク層12上に形成された第2のポリカーボネイト層13とを有する積層体10でシェル2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色が付された合成樹脂製のスーツケース、及びスーツケースの本体や蓋体などのスーツケース用シェルに関する。
【背景技術】
【0002】
色が付された合成樹脂製のスーツケース或いはそのシェルに関連する公知技術文献として特許文献1がある。特許文献1には、ABS樹脂の基材フィルムにABS樹脂のカラーフィルムを積層し、その積層フィルムを雌雄一対の金型で加熱プレスしてシェル形状に成形し、冷却してスーツケース用シェルを得ることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−122387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年に於ける消費者の嗜好の多様化からスーツケースの色にも多様なものが求められており、又、消費者の需要に合わせて迅速に製品を供給する必要性から、製造業者は上記の様な多様な色のカラーフィルムを色毎に常時ある程度確保しておく必要に迫られている。そのため、カラーフィルムの在庫管理に多大な労力を要すると共に、カラーフィルムの在庫コストが高止まりしてしまい、スーツケースの製造コスト削減の障害となっている。
【0005】
また、別の課題として、スーツケースには、より丈夫で且つ持ち運びが楽なものが望まれるため、シェルの一層の強度の向上や軽量化が求められる。しかしながら、ABS樹脂で一層の強度の向上を図ろうとすると、必然的にシェルの肉厚を厚くする必要が生ずるため、スーツケースが重くなってしまうという不具合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、多様な色彩や模様を柔軟に且つ迅速に付して供給することが可能であると共に、低コストで製造することができ、更には非常に軽量で高強度を有するスーツケース及びスーツケース用シェルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスーツケースは、第1のポリカーボネイト層と、第1のポリカーボネイト層上に印刷形成されたインク層と、該インク層上に形成された第2のポリカーボネイト層とを有する積層体でシェルが形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のスーツケース用シェルは、第1のポリカーボネイト層と、第1のポリカーボネイト層上に印刷形成されたインク層と、該インク層上に形成された第2のポリカーボネイト層とを有する積層体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスーツケース及びスーツケース用シェルは、必要に応じて所要の色彩や模様をフィルムに印刷するものであるから、多様な色彩や模様を柔軟に且つ迅速に付して供給することが可能である。更に、本発明を用いることにより、多様な色のカラーフィルムを在庫として確保する必要がなくなるので、在庫管理を容易化することができると共に、スーツケースやシェルの製造コストの削減を図ることを可能にする。更に、ポリカーボネイト樹脂を素材とすることにより、スーツケースやシェルの大幅な軽量化や高強度化を図ることができる。
【0010】
また、インク層が高強度のポリカーボネイト層に挟まれているので、インク層に傷が付くことがなく、鮮やかな色合いを長期間保持することができると共に、非常に美しい光沢も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
スーツケース1の本体或いは蓋体等であるシェル2は積層体10で形成されており、図1に示すように、積層体10は、第1のポリカーボネイト層11と、第1のポリカーボネイト層11上に印刷形成されて固着されたインク層12と、インク層12上に形成されて固着された第2のポリカーボネイト層13とを有する。インク層12は、ウレタン樹脂をベースにした熱硬化型インクからなる。
【0013】
次に、積層体10の製造工程について説明する。
【0014】
先ず、樹脂押出機101のTダイ102から高温のポリカーボネイト樹脂11を平面形状で押し出し、ポリカーボネイト樹脂11の下面にグラビア印刷する。グラビア印刷機は、容器103内にウレタン樹脂をベースとする熱硬化型のインク104が入れられ、外表面に窪み105が形成されたグラビア版106が容器103内に回動可能に設置されており、グラビア版106が回動して外表面に熱硬化型のインク104を付け、余分なインク104をドクター107で掻き落とし、押えロール108でポリカーボネイト樹脂11の上側を押さえながらグラビア版106の外表面をポリカーボネイト樹脂11の下側に当接し、窪み105に残ったインク104をポリカーボネイト樹脂11の下面に転移するようになっている。インク層12が下面に接着して形成されたポリカーボネイト樹脂11は進行し、一対の押圧ロール111、112間に入り込んで行く。
【0015】
また、別の樹脂押出機109のTダイ110からは、高温の別のポリカーボネイト樹脂13を平面形状で押し出し、ポリカーボネイト樹脂13を一対の押圧ロール112、113の位置まで進行する。ポリカーボネイト樹脂13は、インク層12が積層されたポリカーボネイト樹脂11と共に押圧ロール111、112に入り込み、上側のポリカーボネイト樹脂11のインク層12の下面と、下側のポリカーボネイト樹脂13の上面とが、両側の押圧ロール111、112の押圧で圧着される。前記インク層12の下面とポリカーボネイト樹脂13の上面の圧着により、ポリカーボネイト樹脂11、インク層12、ポリカーボネイト樹脂13が積層された積層体10が形成される。積層体10は、更に搬送され、必要に応じて冷却される。
【0016】
そして、積層体10は、公知のシェル形状を成形する工程により、加熱して金型でプレスされてシェル2の形状に成形される。更に、積層体10で形成されたシェル2は、公知の組立工程により、スーツケース1に組み立てられる。
【0017】
尚、上記実施形態では、ポリカーボネイト樹脂11に積層されるインク層12をグラビア印刷で形成したが、他の印刷方式を採用することも可能であり、また、インク層12、インク104には、ウレタン系の熱硬化型インク以外のものを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、スーツケース、スーツケースの製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は実施形態のスーツケースを示す正面図、(b)は同図(a)のスーツケースのシェルを構成する積層体を説明する縦断説明図。
【図2】積層体の製造工程を説明する説明図。
【符号の説明】
【0020】
1 スーツケース
2 シェル
10 積層体
11 第1のポリカーボネイト層
12 インク層
13 第2のポリカーボネイト層
101、109 樹脂押出機
102、110 Tダイ
103 容器
104 インキ
105 窪み
106 グラビア版
107 ドクター
108 押えロール
111、112 押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリカーボネイト層と、第1のポリカーボネイト層上に印刷形成されたインク層と、該インク層上に形成された第2のポリカーボネイト層とを有する積層体でシェルが形成されていることを特徴とするスーツケース。
【請求項2】
第1のポリカーボネイト層と、第1のポリカーボネイト層上に印刷形成されたインク層と、該インク層上に形成された第2のポリカーボネイト層とを有する積層体で形成されていることを特徴とするスーツケース用シェル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−255138(P2006−255138A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76312(P2005−76312)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(502038989)中栄物産株式会社 (19)
【出願人】(000102290)エースラゲージ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】