説明

セパレータ材料及びそれを用いた電池

【課題】 緻密性及び地合の均一性に優れ、アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際には耐ショート性が高く、充放電サイクル寿命の長寿命化を達成するセパレータ材料、及びそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 本発明のセパレータ材料は、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含む不織布からなり、前記不織布は、前記高強度複合繊維により構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されており、前記高強度複合繊維の伸度は30%よりも大きく60%以下であり、ヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニッケル−水素電池やニッケル−カドミウム電池に代表されるアルカリ二次電池、リチウムイオン二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ、コンデンサーなどの電気素子、あるいはイオン交換セパレータ(イオンキャッチャー)などに用いられるセパレータ材料及びそれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレータ材料として、突き刺し強力、引張強力を高めることで耐ショート性の向上を図るために、2種類の異なるポリオレフィン系樹脂を構成単位とし、非相溶性の組み合わせで、その繊維断面において2種の異なる樹脂成分を、一方の樹脂成分を繊維表面に配される鞘成分、もう一方の樹脂成分を繊維断面の中心付近に配される芯成分となるように配置した、いわゆる芯鞘型複合繊維を用意し、この芯鞘型複合繊維をより高強度の繊維としたり、より細繊度の繊維にしたりすることで前記目的を達成しようとするセパレータ材料が多数提案されている。
【0003】
例えば、特開2004−296355号公報では、耐ショート性、生産性を高めるために単繊維強度が4.5cN/dtex以上の複合高強度ポリプロピレン系繊維のみからなり、平均5%モジュラス強度が50〜120N/5cmの電池用セパレータが提案されている。また特開2002−180330号公報では、電池セパレータ材料に使用可能な、結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、前記結晶性プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体を鞘材としており、破断強度が5.74cN/dtexより大きく、伸度が30%以下、かつヤング率が43.1cN/dtex以上である延伸複合繊維が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−296355号公報
【特許文献2】特開2002−180330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記セパレータ材料には、以下のような問題がある。例えば、特開2004−296355号公報で提案されている、単繊維強度が4.5cN/dtex以上の複合高強度ポリプロピレン系複合繊維のみからなるセパレータは、高強度複合繊維のみで構成することで、セパレータの突き刺し強力や引張強力といった機械的特性が高めている。しかし、単繊維強度のみを考慮し、それを高めた複合繊維を使用すると、複合繊維そのものの強度に由来するセパレータ材料の強度は高められるものの、複合繊維が単繊維強度の高い繊維となったことで、セパレータ材料全体のしなやかさが失われ、取り扱い性が低下するおそれがある。
【0006】
また、特開2002−180330号公報で提案されている、電池セパレータ材料に使用可能な高強度、低伸度、高ヤング率の延伸複合繊維は、延伸複合繊維を規定するものであって、各種セパレータ材料への使用について検討・改良の余地がある。加えてこの文献に記載の延伸複合繊維は、極めて低伸度の複合繊維である。このような繊維をセパレータ材料に使用すると、延伸複合繊維そのものの強度は高いが、繊維が伸びにくく変形しにくいことから、それを使用したセパレータ材料も変形しにくく、しなやかさに乏しいものとなる。電池セパレータ用途であると、デンドライトなどの針状異物によって、ごく狭い範囲に集中して圧力が加えられた場合、圧力を分散しにくくなるため、異物と接触している部分に圧力が集中して加えられるようになり、前記延伸複合繊維以外の部分(例えば構成繊維間の熱接着部分)から破壊されやすくなるおそれがある。また、この特許文献に記載されている延伸複合繊維は、加熱飽和水蒸気を用いた延伸方法で製造されており、延伸工程が大がかりになるだけではなく、高温の加熱水蒸気を使用するため、繊維が急激に加熱されるため繊維間の融着が発生しやすく、得られる延伸複合繊維の水への分散性が悪くなったり、繊維同士が融着した融着繊維が製品に混入したりするおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、不織布の緻密性および地合の均一性に優れるとともに、各種アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際、異物と接触して圧力を受けても、突き刺し強力が高く、耐ショート性能が高いセパレータ材料、及びそれを用いた電池に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を克服するため、セパレータ材料に使用される高強度繊維に求められる特性に着目した。そして、ある程度伸度を残している、すなわち比較的高伸度であって、単繊維強度が高く、ヤング率を所定の範囲とした高強度複合繊維を使用したセパレータ材料が電池内部に装填された際、混入した異物や充放電の繰り返しによって生成されたデンドライトなどの針状異物と接触し、厚さ方向に貫通するように圧力加えられても、セパレータ材料が適度に変形することにより、異物等が貫通しにくくなり、耐ショート性が高められることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明のセパレータ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなり、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含み、高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されている不織布であり、高強度複合繊維の伸度が30%より大きく60%以下であり、ヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電池は、前記セパレータ材料を組み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセパレータ材料は、所定の高強度複合繊維を用いることにより、セパレータ材料として使用した際、混入した異物や充放電の繰り返しによって生成されたデンドライトなどの針状異物と接触し、厚さ方向に貫通するように圧力加えられても、セパレータ材料が適度に変形することにより異物が貫通しにくくなり、耐ショート性が高い。
【0012】
本発明の電池は、前記の特徴、即ち針状異物と接触して、厚さ方向に貫通するように圧力加えられても異物が貫通しにくいセパレータ材料が組み込まれているため、耐ショート性が高く、サイクル寿命に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のセパレータ材料に用いることができる、各種分割型複合繊維の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセパレータ材料に用いられる高強度複合繊維について説明する。本発明のセパレータ材料において、前記高強度複合繊維はセパレータ材料の構成繊維間を熱接着して、セパレータ材料の機械的強度、例えば、最大貫通力F(以下、突き刺し強力とも称す)、引張強力の向上に寄与している。高強度複合繊維は、単繊維強度が4.0cN/dtex以上であり、伸度が30%より大きく60%以下であり、ヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であれば特に限定されない。高強度複合繊維の単繊維強度が4.0cN/dtex以上であることで、セパレータ材料の突き刺し強力、引張強力といった力学的特性が向上し、セパレータ材料の耐ショート性だけでなく、生産工程での取り扱い性も向上する傾向にある。高強度複合繊維の単繊維強度の上限は特に限定されないが、8.0cN/dtex以下であることが好ましい。高強度複合繊維の単繊維強度を8.0cN/dtex以下とすると、セパレータ材料が必要以上に剛性の高い、しなやかさが失われたものになりにくく、伸度が30%以下にもなりにくい。また、高強度複合繊維を効率よく生産することができる。前記高強度複合繊維の単繊維強度は、4.2cN/dtex以上7.5cN/dtex以下であることが好ましく、4.5cN/dtex以上7.0cN/dtex以下であることがより好ましく、4.8cN/dtex以上6.5cN/dtex以下であることがさらにより好ましく、5.0cN/dtex以上6.2cN/dtex以下であると最も好ましい。なお、本発明において、単繊維強度とはJIS L 1015に準じ、引張試験機を用い、試料のつかみ間隔を20mmとして引張試験を行い、破断したときの荷重値を測定し、単繊維強度とする。
【0015】
前記高強度複合繊維の伸度は、30%より大きく60%以下である。高強度複合繊維の伸度がこの範囲を満たすことで高強度複合繊維は圧力、特に繊維側面に対する圧力に対して適度に伸びたり変形するので、セパレータ材料としたときに、電池内に混入した異物やデンドライトなどの針状異物と接触し圧力を受けた際に、高強度複合繊維がセパレータ材料に加えられる圧力を分散または吸収するようになり、異物によって変形はするものの、異物が突き抜けにくいセパレータ材料となる。高強度複合繊維の伸度が30%以下であると、異物によって加えられた圧力では高強度複合繊維が伸びにくいため、繊維の変形によって圧力を分散できず、異物と接触している部分にのみ強い荷重が加わるようになり、その部分から割けたり異物が貫通しやすくなったりすることがある。高強度複合繊維の伸度が60%を超えると、高強度複合繊維が過剰に伸びたり変形したりするようになり、セパレータ材料の突き刺し強力や引張強力が低下するおそれがある。高強度複合繊維の伸度は32%以上60%以下であることがより好ましく、32%以上、55%以下であることが特に好ましく、35%以上、50%以下であることが最も好ましい。なお、本発明でいう伸度とは、JIS L 1015に準じ、引張試験機を用い、試料のつかみ間隔を20mmとして引張試験を行い、破断したときの伸びをその繊維の伸度とする。
【0016】
前記高強度複合繊維のヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満である。高強度複合繊維のヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満であることで、高強度複合繊維が繊維の長さ方向に対してひずみが比較的生じやすく、繊維断面方向に対して適度にたわむようになるため、この高強度複合繊維を含むセパレータ材料は、突き刺し強力や引張強力といった機械的特性と、特に厚さ方向の柔軟性が両立される。その結果、電池内に混入した異物や、デンドライトなどの針状異物と接触し、圧力を受けた際、高強度複合繊維が適度にたわんだり、変形したりすることで、セパレータ材料に加えられる圧力を繊維が分散または吸収するようになり、異物によって変形はするものの、異物が突き抜けにくい、耐ショート性の高いセパレータ材料となる。高強度複合繊維のヤング率が3250N/mm2未満であると、高強度複合繊維が外部からの力に対して容易に変形するため、セパレータ材料の突き刺し強力や引張強力が低下することがある。高強度複合繊維のヤング率が4650N/mm2以上となると、繊維の変形によって圧力を分散できず、異物と接触している部分にのみ強い荷重が加わるようになり、その部分から割けたり異物が貫通しやすくなったりすることがある。前記高強度複合繊維のヤング率は3530N/mm2以上4460N/mm2以下であると好ましく、3720N/mm2以上4460N/mm2以下であるとより好ましい。前記ヤング率は、JIS L 1015に規定される方法によって測定される初期引張抵抗度から算出した見かけヤング率の値を指し、前記初期引張抵抗度は、定速緊張形試験機によって測定した値をいう。
【0017】
前記高強度複合繊維の繊度は特に限定されないが、繊度が0.1dtex以上4.4dtex以下であることが好ましい。高強度複合繊維の繊度が前記範囲を満たすことで、地合いが均一なセパレータ材料が得られるためである。高強度複合繊維の繊度は0.2dtex以上2.2dtex以下であることがより好ましく、0.4dtex以上1.2dtex以下が特に好ましく、0.5dtex以上0.9dtex以下が最も好ましい。
【0018】
前記高強度複合繊維の繊維長は特に限定されないが、湿式抄紙法を用いる場合は繊維長が0.5mm以上25mm以下であることが好ましい。繊維長が0.5mm以上であると、繊維の脱落が発生したり、得られるセパレータ材料の表面が毛羽だったりすることがない。繊維長が25mm以下であると、湿式抄紙法によって不織布を製造する際、スラリー中における繊維の分散性が低下することがなく、均一な不織布が得られやすいからである。高強度複合繊維の繊維長は1mm以上20mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下であることが特に好ましく、3mm以上6mm以下が最も好ましい。
【0019】
前記高強度複合繊維は、熱接着性を有するものであれば特に限定されないが、少なくとも2種類の異なる熱可塑性樹脂からなり、融点が高い熱可塑性樹脂(高融点樹脂)と、高融点樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂(低融点樹脂)を含むことが好ましい。より好ましくは、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂のうち、最も低融点の熱可塑性樹脂が繊維表面に露出し、その露出面積が、繊維表面全体の面積に対し、少なくとも20%以上を占める複合繊維である。このような複合繊維としては、異なる2つの樹脂成分が同心円状に配置された芯鞘型複合繊維、内側に配置される、いわゆる芯成分が、繊維の中心からずれている偏心芯鞘型複合繊維、異なる2つの樹脂成分を貼り合わせた並列型複合繊維(サイド バイ サイド型複合繊維とも称す)、異なる2つの樹脂成分を重ね合わせた多層バイメタル型複合繊維が挙げられる。特に、主に高強度複合繊維を構成する低融点の熱可塑性樹脂成分によって構成繊維間を熱接着させることを考慮すると、熱接着性の高い同心円状の芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維が好ましく、同心円状の芯鞘型複合繊維または偏心芯鞘型複合繊維が特に好ましい。以下、同心円状の芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維を併せて単に芯鞘型複合繊維と称す。前記芯鞘型複合繊維は、芯成分を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が10℃以上低い熱可塑性樹脂を鞘成分とすることが好ましい。より好ましくは、芯成分よりも融点が20℃以上低い樹脂を鞘成分とする。
【0020】
前記高強度複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、高強度複合繊維の機械的特性は高強度複合繊維の中心付近に存在する芯成分に依存する。また前記芯成分の外側に位置する、いわゆる鞘成分は芯成分を被覆し、繊維表面を覆う形で存在する。前記鞘成分は熱加工において適度に溶融し、構成繊維間を熱接着させる働きがあり、熱接着により構成繊維間の空隙が部分的に埋められてセパレータ材料はより緻密なものになるため、鞘成分は繊維間の熱接着に起因する機械的特性の向上に寄与している。従って、高強度複合繊維において、芯成分と鞘成分の体積比(複合比もしくは芯鞘比とも称す)は特に限定されないものの、高強度複合繊維そのものの機械的特性と、前記鞘成分による構成繊維間の熱接着力が最も高められるようにすることが好ましい。高強度複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、その複合比(芯/鞘)は、体積比で80/20〜30/70であることが好ましい。複合比が80/20〜30/70であることで、高強度複合繊維の機械的特性に起因するセパレータ材料の機械的強度と、構成繊維間の熱接着に起因するセパレータの機械的特性が両立され、突き刺し強力や引張強力の高いセパレータ材料が得られる。複合比が30/70よりも鞘成分が多いと、構成繊維間が強く熱接着されるものの、芯成分が少なくなり高強度複合繊維そのものの単繊維強度が低下するほか、セパレータ材料の空隙率が低下して保液性が低下したり、通気度が低下したりしてセパレータ材料を電池に組み込んだときの電池特性が低下するおそれがある。一方、複合比が80/20よりも芯成分が多いと、高強度複合繊維そのものの機械的特性は高くなるものの、セパレータ材料の構成繊維間が充分に熱接着されず、繊維間の熱接着に起因する機械的特性が低下するだけでなく、構成繊維間が充分に緻密にならないため空隙率が大きくなりセパレータを電池に組み込んだときの電池特性が低下するおそれがある。高強度複合繊維の複合比(芯/鞘)は、体積比で80/20〜50/50であることがより好ましく、75/25〜60/40が特に好ましく、75/25〜65/35が最も好ましい。
【0021】
前記高強度複合繊維に使用する熱可塑性樹脂は、前記の通り、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂であれば限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレン系樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂;各種ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。前記高強度複合繊維にはこれらの樹脂が使用できるが、セパレータ材料を電池セパレータとして電池に組み込んで使用する際、水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ性の水溶液を電解液としてセパレータ材料に含浸させるので、高強度複合繊維は耐アルカリ性の高いポリオレフィン系樹脂から2種類以上の異なる樹脂を選択して使用することが好ましい。
【0022】
前記のポリオレフィン系樹脂のほか、公知となっているポリオレフィンからなる樹脂を、前記高強度複合繊維を構成する2つの樹脂成分に使用できるが、高強度複合繊維の生産性や単繊維強度といった機械的特性を考慮すると、前記高強度複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、この高強度複合繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の組み合わせとしては、芯成分/鞘成分が、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、で表されるポリオレフィン系樹脂の組み合わせが好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂の組み合わせが特に好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂が最も好ましい。
【0023】
本発明においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びプロピレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にプロピレンを85モル%以上含んでいるものをポリプロピレン系樹脂と称す。前記ポリプロピレン系樹脂は特に限定されないが、紡糸性、延伸性、得られる高強度複合繊維の各種物性を考慮すると、前記ポリプロピレン系樹脂は紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリプロピレン系樹脂のほうが、高強度複合繊維の単繊維強度、伸度、ヤング率が前記の範囲を満たすものが得られやすい傾向があり好ましい。
【0024】
本発明においてポリエチレン系樹脂とは、エチレンのホモポリマー、エチレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びエチレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンを85モル%以上含んでいるものをポリエチレン系樹脂と称す。前記ポリエチレン系樹脂も前記ポリプロピレン系樹脂と同様、特に限定されないが紡糸性、延伸性、得られる高強度複合繊維の各種物性を考慮すると、前記ポリエチレン系樹脂も紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリエチレン系樹脂のほうが、高強度複合繊維の単繊維強度、伸度、ヤング率が前記の範囲を満たすものが得られやすい傾向があり好ましい。
【0025】
本発明においてエチレン−プロピレン共重合樹脂とは、エチレンとプロピレンとからなる共重合体、もしくはエチレンとプロピレンとからなる共重合体と他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンとプロピレンをあわせて50モル%以上、好ましくは85モル%以上含んでいるものをエチレン−プロピレン共重合樹脂と称す。前記高強度複合繊維に使用できる前記エチレン−プロピレン共重合樹脂は特に限定されず、市販のエチレン-プロピレン共重合樹脂を使用できるが、エチレン含有量が1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。エチレン含有量が1モル%未満であると、融点が上昇し、プロピレンのホモポリマーの物性に近くなるため、熱接着性が低下することがある。エチレン含有量が20モル%を超えると、溶融紡糸時に繊維間融着が発生しやすくなり可紡性が低下することがある。前記エチレン−プロピレン共重合体系樹脂の融点は特に限定されないが、120℃以上150℃以下であることが好ましい。また、前記エチレン−プロピレン共重合体系樹脂のJIS K 7210に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.2N))も特に限定されないが、1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。
【0026】
本発明においてポリメチルペンテン系樹脂とは、4−メチルペンテン−1のホモポリマー、4−メチルペンテン−1と、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デカン−1、テトラデカン−1、オクタデカン−1等の炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、および4−メチルペンテン−1のホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中に4−メチルペンテン−1を85モル%以上含んでいるものをポリメチルペンテン系樹脂と称す。前記ポリメチルペンテン系樹脂は特に限定されないが、その融点が210℃以上245℃以下であることが好ましく、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度260℃、荷重5.0kgf(49.0N)、以下MFR260とも記す。)が120g/10分以上280g/10分以下であることが好ましい。本発明のセパレータ材料に使用できるポリメチルペンテン系樹脂としては、例えば三井化学(株)製「TPX」(登録商標)がある。
【0027】
本発明においてエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂とは、エチレンとビニルアルコールとからなる共重合体、もしくはエチレンとビニルアルコールとからなる共重合体と他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンとビニルアルコールをあわせて50モル%以上、好ましくは85モル%以上含んでいるものをエチレン−ビニルアルコール系樹脂と称す。前記エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、エチレン含有量が20モル%以上70モル%以下であることが好ましい。また前記エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度210℃、荷重2.16kgf(21.2N)、以下MFR210とも記す。)が1g/10分以上50g/10分以下の樹脂を用いると、紡糸性に優れるため好ましい。より好ましいMFR210の下限は10g/10分以上である。より好ましいMFR210の上限は30g/分以下である。本発明のセパレータ材料に使用できるエチレン−ビニルアルコール系樹脂としては日本合成化学工業(株)製「ソアノール」(登録商標)がある。
【0028】
前記高強度複合繊維は、以下の方法で製造することができる。まず複数成分の異なる熱可塑性樹脂、好ましくは2成分のポリオレフィン系樹脂を用意し、公知の溶融紡糸機で、所望の複合ノズル(好ましくは同心円状の芯鞘型複合ノズル、もしくは偏心芯鞘型の複合ノズル)を用いて溶融紡糸することができる。このとき高強度複合繊維の繊維断面形状を考慮し、それぞれの樹脂の溶融粘度を押出機のせん断力や紡糸温度などを調整して、繊維断面において鞘成分が芯成分を均一に覆うようにセクションを調整することが好ましい。溶融させた熱可塑性樹脂から紡糸フィラメント(未延伸糸)を得るが、紡糸フィラメントの繊度は2dtex以上10dtex以下が好ましい。
【0029】
次いで、紡糸フィラメントは、必要に応じて延伸されるが、延伸温度80℃以上160℃以下、延伸倍率1.5倍以上8倍以下の条件で延伸される。延伸方法は特に限定されず、高温の熱水などの高温の液体で加熱しながら延伸を行う湿式延伸、高温の気体中又は高温の金属ロールなどで加熱しながら延伸を行う乾式延伸、100℃以上の水蒸気を常圧若しくは加圧状態にして繊維を加熱しながら延伸を行う水蒸気延伸などの公知の延伸処理を行うこともできる。従来の延伸装置を使用でき、また延伸工程が複雑にならず、紡糸フィラメント間に融着が生じにくいことから、湿式延伸、もしくは乾式延伸が好ましく、伸度を残しつつ(比較的伸度が大きく)、単繊維強度やヤング率の高い高強度複合繊維を得やすいことから、乾式延伸がより好ましい。延伸工程は1段階で延伸処理を行うこともできるし、公知の延伸方法による延伸処理を複数回に分けて行ういわゆる多段延伸処理を行うこともできる。この中でも生産性、経済性、また、未延伸繊維束全体を容易にかつ均一に加熱できることから、1段あるいは2段延伸することが好ましい。得られた延伸フィラメントは、必要に応じて繊維処理剤が付与され、必要があれば捲縮付与処理が施され、所定の繊維長に切断して高強度複合繊維として用いられる。
【0030】
本発明のセパレータ材料は、前記高強度複合繊維を含むものであれば特に限定されないが、繊度が0.5dtex以下の極細繊維を含んでいると好ましい。本発明のセパレータ材料が、前記高強度複合繊維の他に前記極細繊維を含むことで、より微細な繊維間空隙を形成することができる。その結果、得られるセパレータ材料は、緻密で地合の良好なものとなり、電池に組み込んだときの耐ショート性を向上させることができる。また、セパレータ材料の比表面積が増加するので、スルホン化処理やフッ素ガス処理あるいはコロナ放電処理などの親水化処理において、比較的弱い条件で処理しても十分な親水性を得ることができ、電池のサイクル寿命を向上させ、内圧、内部抵抗の上昇を抑制することができるほか、親水化処理による不織布の強力劣化を抑制することができる。前記極細繊維は、繊度が0.005dtex以上0.4dtexであることが好ましく、0.01dtex以上0.3dtex以下であるとより好ましく、0.05dtex以上0.15dtex以下であると特に好ましい。
【0031】
前記極細繊維の繊維長は特に限定されないものの、湿式抄紙法を用いる場合は繊維長が0.5mm以上25mm以下であることが好ましい。繊維長を0.5mm以上とすると、繊維の脱落が発生したり、得られるセパレータ材料表面が毛羽だったりすることがない。繊維長が25mm以下とすると、湿式抄紙法によって不織布を製造する際、スラリー中における繊維の分散性が低下することがなく、均一な不織布が得られやすいからである。本発明のセパレータ材料に使用する極細繊維の繊維長は1mm以上20mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下が特に好ましく、3mm以上6mm以下が最も好ましい。
【0032】
前記極細繊維は、前記繊度の範囲を満たせば、その製造方法は限定されない。極細繊維は、いわゆる海島構造の断面を有する複合繊維から海成分を溶脱して得られる極細繊維が使用できるほか、メルトブローン法、或いはエレクトロスピニング法で比較的長い繊維長の極細繊維を製造した後、適度な繊維長、例えば前記の繊維長となるように切断、選別したものを使用してもよい。しかし、比較的容易に製造できる点や所望の性質を有する極細繊維が製造しやすい点から極細繊維は、2種類の樹脂成分からなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維を使用することが好ましい。分割型複合繊維の分割前の繊度は、分割処理によって発生する極細繊維が前記極細繊維の繊度の範囲を満たせば特に限定されないが、好ましくは0.1dtex以上4dtex以下であり、より好ましくは0.5dtex以上3.3dtex以下であり、0.8dtex以上2.2dtex以下が特に好ましい。
【0033】
前記分割型複合繊維は、分割処理によって異なる樹脂成分で構成される極細繊維を複数発生させるものであれば特に限定されず、2成分の分割型複合繊維であってもよく、3成分以上の樹脂成分に分割可能な分割型複合繊維であってもよいが、分割型複合繊維の生産性、分割性を考慮すると、異なる2種類の樹脂成分からなる分割型複合繊維が好ましい。極細繊維に使用する樹脂成分には、熱可塑性樹脂であれば特に限定することなく使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレン系樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂、各種ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。前記極細繊維には、これらの熱可塑性樹脂が使用できるが、セパレータ材料を電池に組み込んで使用する際、水酸化カリウム水溶液といった強アルカリ性の水溶液を電解液としてセパレータ材料に含浸させるので、耐アルカリ性の高いポリオレフィン系樹脂を使用した極細繊維が好ましい。
【0034】
前記極細繊維として、分割型複合繊維を分割処理して得られる極細繊維を使用する場合、前記分割型複合繊維は、その断面形状が限定されず、図1(a)に示す中空部分のあるオレンジ状断面(以下、単に中空オレンジ状断面とも称す)や、図1(b)に示す中空部分のない、いわゆる中実のオレンジ状断面(以下、単に中実オレンジ状断面とも称す)、特開2000−328348号公報、及び特開2002−88580号公報で開示されているC型のオレンジ状断面(以下、単にC型オレンジ状断面とも称す)のほか、オレンジ状断面において、図1(c)に示す一成分が芯鞘型複合繊維になっている中空複合分割型(以下、単に中空複合分割型オレンジ状断面とも称す)や、図1(d)に示す中実複合分割型のオレンジ状断面(以下、単に中実複合分割型オレンジ状断面)、また多層バイメタル状の断面形状など、分割処理によって2種類以上の極細繊維を発生しうる公知の分割型複合繊維の断面形状であれば、いずれの断面形状であってもよい。この中でも分割型複合繊維の生産性、分割性を考慮すると、中空オレンジ状断面、中実オレンジ状断面、C型オレンジ状断面、中空複合分割型オレンジ状断面、中実複合分割型オレンジ状断面が好ましく、中空オレンジ状断面、C型オレンジ状断面、中空複合分割型オレンジ状断面がより好ましい。分割数は特に限定されず公知となっている分割数であればよいが、4〜32分割が好ましく、4〜24分割が好ましく、8〜16分割が特に好ましい。
【0035】
前記分割型複合繊維は前記の通り、複数成分の異なるポリオレフィン系樹脂で構成させると得られるセパレータ材料が電解質やアルカリに対して耐性の高いものとなるため、好ましい。分割型複合繊維に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、各種α−オレフィンの単独重合体や共重合体、三元共重合体(ターポリマーとも称す)を挙げることができる。具体的なポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリ(4−メチルペンテン−1)、および4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体等のポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリプロピレンのほか、メタロセン触媒で重合したポリプロピレンも含む)、ポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリエチレンのほか、メタロセン触媒で重合したポリエチレンも含む)、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられる。
【0036】
前記ポリオレフィン系樹脂のほか、公知のポリオレフィンからなる樹脂を前記分割型複合繊維の各樹脂成分に使用できるが、分割型複合繊維の生産性や分割性を考慮すると、前記分割型複合繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の組み合わせとしては、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、といった樹脂の組み合わせが好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂の組み合わせがより好ましい。
【0037】
本発明においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合樹脂、及びプロピレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にプロピレンを85モル%以上含んでいるものをポリプロピレン系樹脂と称す。前記ポリプロピレン系樹脂は特に限定されないが、紡糸性、延伸性、得られる分割型複合繊維の分割性を考慮すると、前記ポリプロピレン系樹脂は紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリプロピレン系樹脂のほうが、得られる分割型複合繊維の分割性が高くなる傾向があり好ましい。
【0038】
本発明においてポリエチレン系樹脂とは、エチレンのホモポリマー、エチレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びエチレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられ、樹脂成分中にエチレンを85モル%以上含んでいるものをポリエチレン系樹脂と称す。前記ポリエチレン系樹脂も前記ポリプロピレン系樹脂と同様、特に限定されないが紡糸性、延伸性、得られる分割型複合繊維の分割性を考慮すると、前記ポリエチレン系樹脂も紡糸性、延伸性に悪影響を与えない範囲内において、溶融時の流動性が低いポリエチレン系樹脂のほうが、得られる分割型複合繊維の分割性が高くなる傾向があり好ましい。また、前記ポリエチレン系樹脂としては前述のとおり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどの各種ポリエチレンを用いることができるが、分割型複合繊維を構成する各樹脂成分において、含まれるポリマーの結晶性が高いポリマーであるほど分割性が向上する傾向があるので使用するポリエチレンの密度は0.94g/cm3以上であることが好ましい。
【0039】
前記分割型複合繊維に使用する前記ポリメチルペンテン系樹脂は特に限定されないが、その融点が210℃以上245℃以下であることが好ましく、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度260℃、荷重5.0kgf(49.0N)、以下MFR260とも記す。)が120g/10分以上280g/10分以下であることが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂の融点が210℃以上245℃以下であると、紡糸が容易になり、また、延伸性にも優れるためである。また、ポリメチルペンテン系樹脂のMFR260が120g/10分以上280g/10分以下であることにより、紡糸が容易となり、得られる分割型複合繊維の分割性も向上しやすいためである。このような性質を満たし、前記分割型複合繊維に使用できる好ましいポリメチルペンテン系樹脂としては、例えば三井化学(株)製「TPX」(登録商標)がある。
【0040】
前記分割型複合繊維に使用する前記エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、エチレン含有量が20モル%以上70モル%以下であることが好ましい。より好ましいエチレン含有量は、25モル%以上60%以下であり、特に好ましいエチレン含有量は、35モル%以上50%以下である。エチレン含有量が30モル%未満であると、繊維製造時の延伸性に劣り、エチレン含有量が70モル%を超えると、繊維自体の親水性に劣るからである。また前記エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、ASTM D 1238に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度210℃、荷重2.16kgf(21.2N)、以下MFR210とも記す。)が1g/10分以上、50g/10分以下の樹脂を用いると、紡糸性に優れ都合がよい。このような性質を満たし、前記分割型複合繊維に使用できる好ましいエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂としては日本合成化学工業(株)製「ソアノール」(登録商標)がある。
【0041】
前記の各種熱可塑性樹脂、好ましくは前記の各種ポリオレフィン系樹脂から異なる熱可塑性樹脂を2種類組み合わせて本発明のセパレータ材料に使用する分割型複合繊維とすることができる。その断面形状は前記の通り、特に限定されていないが、中空、中実、C型のオレンジ状断面の分割型複合繊維とする場合、異なる熱可塑性樹脂からなる樹脂成分が体積比で30:70〜70:30になる分割型複合繊維が好ましい。樹脂成分の体積比が30:70〜70:30になることで、分割型複合繊維を溶融紡糸する際、繊維断面形状がいびつな形状になったり断面形状が崩れたりすることなく溶融紡糸が行えるだけでなく、分割後の極細繊維が、一方の樹脂成分からなる極細繊維の繊度が極端に大きくなることもない。前記樹脂成分の体積比は40:60〜60:40が好ましく、50:50すなわち樹脂成分が同容積になるように溶融紡糸を行うことが最も好ましい。
【0042】
前記分割型複合繊維において、断面形状が中空複合分割型オレンジ状断面や中実複合分割型オレンジ状断面の複合分割型複合繊維とする場合、図1(c)、図1(d)のB成分で示される芯鞘型複合繊維となっている樹脂成分の芯部分(22,32)、および分割処理後に極細単一繊維となるA成分として、2種類の熱可塑性樹脂のうち融点がより高い熱可塑性樹脂が配され、図1(c)、図1(d)のB成分で示される芯鞘型複合繊維となっている樹脂成分の鞘部分(24,34)として、2種類の熱可塑性樹脂のうち、融点がより低い熱可塑性樹脂が配されるように溶融紡糸を行うことが紡糸性、及び得られる分割型複合繊維の熱接着性の面から好ましい。この場合、融点が高い熱可塑性樹脂と、融点が低い熱可塑性樹脂を、高融点熱可塑性樹脂:低融点熱可塑性樹脂=80:20〜40:60(体積比)となるように溶融紡糸をすることで、繊維断面形状がいびつな形状になったり断面形状が崩れたりすることなく溶融紡糸が行えるだけでなく、分割処理によって得られる極細繊維が、一方の樹脂成分からなる極細繊維の繊度が極端に大きくなることがないため好ましい。分割型複合繊維の断面形状が中空複合分割型オレンジ状断面や中実複合分割型オレンジ状断面といった複合分割型の場合、各熱可塑性樹脂成分の体積比は、高融点熱可塑性樹脂:低融点熱可塑性樹脂=75:25〜45:55が好ましく、70:30〜50:50となるように溶融紡糸を行うことが特に好ましい。
【0043】
前記分割型複合繊維は繊維断面において、繊維長さ方向に連続する空洞部分を有さない、いわゆる中実断面であってもよいだけでなく、連続する空洞部分を有する中空断面やC字断面であってもよいことは前記の通りであるが、紡糸性や分割型複合繊維の分割性等を考慮すると、本発明のセパレータ材料に使用する分割型複合繊維は、繊維断面において、繊維長さ方向に連続する空洞部分を有する中空断面の繊維であることが好ましい。前記中空部分は空洞になっていれば中心(同心)に位置しなくても偏心していてもよいが、分割型複合繊維の生産性から考慮すると、同心に位置することが好ましい。また、中空部分の形状も円形、楕円形、異形のいずれであってもよい。また中空部分の中空率は、繊維断面積の5%以上40%以下の範囲であることが好ましい。中空率のより好ましい範囲は、8%以上30%以下であり、特に好ましくは10%以上25%以下である。中空率が5%未満であると、各構成成分を中空部分に露出させることが困難となり、中空部分が40%を超えると、生産性の点から困難となる傾向にあるからである。
【0044】
前記分割型複合繊維は、以下の方法で製造することができる。まず複数成分の異なる熱可塑性樹脂、好ましくは2成分のポリオレフィン系樹脂を用意し、公知の溶融紡糸機で、所望の分割型複合ノズル(例えば中空分割型複合ノズル)を用いて溶融紡糸することができる。このとき分割型複合繊維の断面構造、分割後の極細繊維の繊維断面形状、及び分割性を考慮し、それぞれの樹脂の溶融粘度を押出機のせん断力や紡糸温度などを調整して、繊維断面において1方の成分が他成分を巻き込んだりしないようにセクションを調整することが好ましい。溶融させた熱可塑性樹脂から紡糸フィラメント(未延伸糸)を得るが、紡糸フィラメントの繊度は2dtex以上12dtex以下が好ましい。
【0045】
次いで、紡糸フィラメントは、必要に応じて延伸されるが、熱媒中にて80℃以上160℃以下、延伸倍率1.5倍以上8倍以下の条件で延伸される。延伸方法は特に限定されず、高温の熱水などの高温の液体で加熱しながら延伸を行う湿式延伸、高温の気体中又は高温の金属ロールなどで加熱しながら延伸を行う乾式延伸、100℃以上の水蒸気を常圧若しくは加圧状態にして繊維を加熱しながら延伸を行う水蒸気延伸などの公知の延伸処理を、1段階で延伸処理を行うこともできるし、公知の延伸方法による延伸処理を複数回に分けて行ういわゆる多段延伸処理を行うこともできる。この中でも生産性、経済性、また、未延伸繊維束全体を容易にかつ均一に加熱できることから、乾式延伸や湿式延伸を1段延伸もしくは2段延伸することが好ましい。得られた延伸フィラメントは、必要に応じて繊維処理剤が付与され、必要があれば捲縮付与処理が施され、所定の繊維長に切断されて得られる。
【0046】
前記分割型複合繊維から極細繊維を形成することは、後述するが繊維ウェブ及び不織布製造の過程において、繊維に外部から力を加えて、分割型複合繊維を分割することにより行う。繊維の分割は、例えば、高圧水流を噴射したり、ニードルパンチをしたりすることにより実施することができ、あるいは、湿式抄紙法により不織布を製造する場合には、抄紙の際の離解処理時に受ける衝撃を利用して実施することができる。
【0047】
本発明のセパレータ材料における前記高強度複合繊維の含有量は、30質量%以上であることが好ましい。具体的には、高強度複合繊維のみ、すなわち100質量%であるか、または他の繊維を混合する場合は30質量%以上95質量%以下であると好ましい。前記高強度複合繊維の含有量が30質量%未満であると、セパレータ材料の構成繊維間が充分に熱接着されないことで充分な突き刺し強力や引張強力を得られないおそれがあるだけでなく、構成繊維間の空隙が多く残り、セパレータの性能が低下するおそれがある。他の繊維、具体的には前記極細繊維を含有する場合は、高強度複合繊維の含有量が95質量%を超えると、極細繊維と混綿しても極細繊維を混綿した効果が得られにくく、地合が均一で、緻密なセパレータ材料を得られなくなるおそれがある。本発明のセパレータ材料内部において、前記高強度複合繊維の含有量は50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることが特に好ましく、68質量%以上78質量%以下が最も好ましい。
【0048】
本発明のセパレータ材料における前記極細繊維の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。極細繊維の含有量が5質量%以上とすると、セパレータ材料内部において、繊維間空隙により形成される不織布の平均孔径が小さく不織布の緻密性が維持されるので、セパレータ材料の耐ショート性が低下することもない。極細繊維の含有量が50質量%以下とすると、極細繊維同士および極細繊維と他の繊維とが絡みついたファイバーボール現象を引き起こすことがないので、地合いが均一な不織布が得られる。また、高強度複合繊維と併用することにより、セパレータとしての耐突き刺し性と緻密性を両立することができる。本発明のセパレータ材料において、前記極細繊維の含有量は10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることが特に好ましく、22質量%以上32質量%以下が最も好ましい。
【0049】
本発明のセパレータ材料は、本発明の効果が失われない範囲内において、前記極細繊維及び前記高強度複合繊維以外の他の繊維(以下、他の繊維とも称す)を含んでいてもよい。前記他の繊維はその種類が特に限定されず、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、ケナフ(洋麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ミツマタ、バガス等の天然繊維やビスコースレーヨン、テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標)、キュプラなどの半合成繊維(再生繊維ともいう)であってもよいが合成樹脂からなる繊維が好ましい。前記他の繊維に使用できる合成樹脂からなる繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの公知のポリエステル系樹脂からなる単一繊維、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの公知のポリエチレン系樹脂からなる単一繊維、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなど公知のポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維、若しくはこれらのポリオレフィンのモノマー同士の共重合樹脂、又はこれらのポリオレフィンを重合する際にメタロセン触媒(カミンスキー触媒ともいう)を使用したポリオレフィンなど公知のポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などの公知のポリアミドからなる単一繊維、アクリルニトリルからなる(ポリ)アクリルの単一繊維、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックの単一繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エンジニアリング・プラスチックの異なる種類の樹脂、又は同一の種類の異なるポリマー成分からなる樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート)同士を複合した複合繊維が挙げられる。前記他の繊維が複合繊維であった場合、その複合状態は特に限定されず、繊維断面において断面形状が芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、柑橘類の房状の樹脂成分が交互に配置されている分割型複合繊維や海島型複合繊維であってもよい。本発明のセパレータ材料にはアルカリ性の水溶液に対する耐久性が求められるので、前記他の繊維としてはポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維や、ポリオレフィン系樹脂からなる複合繊維が好ましく、一例として、単繊維強度が高い(例えば6.0cN/dtex以上)のポリプロピレン単一繊維や、低熱収縮性の複合繊維などが挙げられる。
【0050】
前記他の繊維は、その断面形状、合成樹脂の種類、数、あるいは複数の樹脂成分からなる複合繊維であった場合は、合成樹脂の組み合わせや構成樹脂の複合形態が特に限定されないことは前述の通りだが、他の繊維の繊度、繊維長、断面形状、他の繊維が複合繊維であった場合は複合比も特に限定されるものではない。しかし、前記他の繊維が、高強度複合繊維の好ましい繊度の範囲や好ましい繊維長の範囲と大きく異なると抄紙法によって湿式繊維ウェブおよび湿式不織布を生産する際に生産性が低下するおそれがあるだけでなく、本発明の効果が損なわれるおそれがあることから、前記他の繊維の繊度も0.2dtex以上5.6dtex以下であることが好ましく、0.5dtex以上3.3dtex以下であることがより好ましい。また、湿式抄紙法により不織布を作製する場合、前記他の繊維の繊維長は1mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0051】
前記他の繊維は、セパレータ材料中に50質量%未満の割合で含まれていてもよい。すなわち前記極細繊維と高強度複合繊維を合わせたものがセパレータ材料中に50質量%以上含まれていることが好ましい。極細繊維と高強度複合繊維を合わせた含有量が50質量%未満となると、セパレータ材料の機械的特性が低下したり、通気度、保液性が低下したりして、電池特性が低下するおそれがある。本発明のセパレータ材料には、前記極細繊維と前記高強度複合繊維が合わせて70質量%以上含まれていることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、前記極細繊維または極細繊維を発生し得る繊維と、前記高強度複合繊維の2つの繊維のみで構成されることが最も好ましい。
【0052】
本発明のセパレータ材料について、不織布の製造方法に従って説明する。本発明のセパレータ材料は、単繊維強度が4.0cN/dtex以上であり、伸度が30%より大きく60%以下、かつヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満の高強度複合繊維、必要があれば繊度が0.5dtex以下の極細繊維及び/または前記極細繊維を発生しうる繊維(海島型複合繊維や分割型複合繊維が含まれ、以下、単に極細繊維発生繊維とも称す)、さらに必要であれば前記混合繊維を用意し、これらの繊維が均一に混合した繊維ウェブを作製する。繊維ウェブは、公知の方法で作製することができ、例えば、カード法、エアレイド法、湿式抄紙法、スパンボンド法、メルトブローン法などが挙げられる。なかでも、湿式抄紙法は、均一な繊維ウェブが得られる点で好ましい。前記繊維ウェブは、例えば、公知の湿式抄紙法に従って製造し、前記繊維ウェブを、前記高強度複合繊維に含まれる低融点樹脂の融点をTm(℃)としたときTm−10℃以上、Tm+60℃以下の温度で熱処理することで、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって構成する繊維同士が熱接着されて不織布を作製することができる。前記繊維ウェブや熱処理を行った後の不織布には、必要に応じて、繊維交絡処理に付してよいし、極細繊維発生繊維からの極細繊維の発生が少なければ、繊維ウェブや湿式不織布に対し分割処理(例えば高圧水流による分割処理)を行ってもよい。
【0053】
本発明のセパレータ材料は、緻密性や均一性の点から湿式抄紙法による不織布(以下、「湿式不織布」という)であることが好ましい。湿式不織布は、以下の方法で製造することができる。まず、前記高強度複合繊維、必要があれば繊度が0.5dtex以下の極細繊維及び/または前記極細繊維発生繊維を混合し、さらに必要であれば前記他の繊維を混合し、これらの繊維が0.005〜0.6質量%の濃度になるよう水に均一に分散した水分散スラリーを調整する。このとき離解機を用いて極細繊維発生繊維の少なくとも一部を分割させて、極細繊維を発生させることができる。前記離解機としては、パルパー、チェスト、リファイナー等が挙げられる。なかでも、パルパーが撹拌時間、回転数で制御することによって前記極細繊維発生繊維からの極細繊維の発生状況を調整することができるため好ましい。湿式抄紙段階における極細繊維が発生している割合(前記極細繊維発生繊維が分割型複合繊維であれば、分割型複合繊維の分割率)は、50%以上、95%以下であることが好ましい。極細繊維が発生している割合が50%未満であると、得られる湿式不織布全体の緻密性が損なわれるおそれがあるだけでなく、後述する親水化処理において均一な処理が困難となるおそれがある。極細繊維が発生している割合が湿式抄紙段階にて95%を超えると、ファイバーボールが発生しやすくなり、均一な湿式不織布が得られないおそれがある。次に、前記水分散スラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る。この湿式抄紙法としては、従来公知の方法、例えば短網方式、円網方式、長網方式、又は長網・円網コンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式といった公知の抄紙方法のうちいずれかを組み合わせた湿式抄紙方式により繊維ウェブを形成できる。
【0054】
次に、上述した各湿式抄紙法で得られた繊維ウェブは、熱処理が施されて、繊維ウェブの構成繊維間が熱接着される。このとき、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって構成する繊維同士が熱接着されて、熱接着不織布を得る。熱処理の条件は、繊維ウェブの目付、繊維ウェブの厚み、及び湿式不織布に含まれる繊維を構成する樹脂の種類等に応じて適宜選択される。熱処理に用いる熱処理機としては、公知の熱処理機を用いることができるが、前記繊維ウェブの構成繊維間を熱接着しながら乾燥させることができる熱処理機が好ましく、例えば、シリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)、熱風吹き付け加工機、熱ロール加工機、または熱エンボス加工機等を用いることができる。特にシリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)は、繊維ウェブを加熱ロールに接触させることにより熱接着処理を行うことができるので、構成する繊維同士の交絡点において単なる点接着にならず面接着となり、不織布の厚みを調整しながら、効果的に繊維同士を熱接着させることができ、好ましい。熱処理の温度は、前記高強度複合繊維に含まれる低融点成分の融点をTm(℃)としたときTm−10℃以上Tm+60℃以下の温度で熱処理される。例えば前記高強度複合繊維の鞘成分がポリエチレン系樹脂であれば120℃以上160℃以下であることが好ましく、特に、高密度ポリエチレンである場合は、130℃以上150℃以下であることが好ましい。芯鞘型複合繊維の場合、熱処理温度の上限は、芯成分(高融点成分)の融点よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。前記高強度複合繊維の鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であれば、熱処理の温度は130℃以上160℃以下、好ましくは140℃以上150℃以下である。また、前記高強度複合繊維の鞘成分がポリプロピレン系樹脂であれば熱処理の温度は150℃以上200℃以下、好ましくは160℃以上180℃以下である。
【0055】
前記熱処理された熱接着不織布は、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる低融点の樹脂成分によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着していれば特に限定されず、目付、厚み、平均孔径、引張強力などは特に限定されない。しかし、熱接着不織布の目付は、10g/m2以上100g/m2以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましい目付は、20g/m2以上90g/m2以下の範囲であり、特に好ましくは25g/m2以上80g/m2以下の範囲であり、最も好ましくは30g/m2以上80g/m2以下の範囲である。熱接着不織布の目付が10g/m2未満であると、不織布に粗密が生じて、セパレータとして使用したときに短絡が生じることがある。熱接着不織布の目付が100g/m2を越えると、セパレータの厚みも大きくなり、その分、電池内の正極および負極の量が少なくなるおそれがある。
【0056】
前記熱接着不織布の厚みは、150μm以上350μm以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、200μm以上300μm以下の範囲内にあり、特に好ましくは230μm以上270μm以下の範囲内にある。熱接着不織布の厚みが上記範囲内にあると、繊維同士の熱接着が強固にされつつ、電池内で圧縮・解放が繰り返されるときに厚み方向に生じる圧力に対して、吸収・回復する厚みを確保することができるからである。熱接着不織布の厚みが150μm未満であると、地合いムラが生じるおそれや、セパレータ材料の突き刺し強力が低下するおそれがある。熱接着不織布の厚みが350μmより大きくなると、セパレータ厚みが大きくなるので電池内の正極および負極の量が少なくなる。
【0057】
前記熱接着不織布は、比容積が3.5cm3/g以上、6.0cm3/gの範囲内にあることが好ましい。熱接着不織布の比容積が3.5cm3/g未満であると、熱接着不織布が緻密になりすぎるため、得られるセパレータ材料も緻密なものになり、電解液の保持性が低下し、電池の内部抵抗が上昇することがあるほか、セパレータ材料の柔軟性が失われ、セパレータ材料としての工程性が低下するおそれがある。一方、セパレータ材料の比容積が6.0cm3/gを超えると、セパレータ材料の嵩が大きくなりすぎ、セパレータ材料の孔径を小さくすることが困難となり、その結果、微粉末短絡が発生しやすくなる傾向にある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい比容積は、3.7cm3/g以上、5.8cm3/g以下であり、4.0cm3/g以上5.5cm3/g以下であることが特に好ましく、4.2cm3/g以上5.2cm3/g以下であることが最も好ましい。
【0058】
次に、得られた熱接着不織布に対して、必要に応じて親水化処理を施すことができる。本発明のセパレータ材料は、ポリオレフィン系樹脂からなる極細繊維や高強度複合繊維を70質量%以上含んでいることが好ましいが、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂以外のポリオレフィン系樹脂は一般的に疎水性が強いため、セパレータ材料に求められる親水性を示さないことが多いため、親水化処理を行うことが好ましい。親水化処理は、セパレータ材料の製造において常套的に用いられている任意の方法を用いて実施してよい。親水化処理は、具体的には、フッ素雰囲気に晒す処理(以下、単にフッ素処理という。)、ビニルモノマーのグラフト重合処理、スルホン化処理、オゾンガス処理、コロナ放電処理やプラズマ放電処理といった、各種放電処理、界面活性剤処理または親水性樹脂付与処理、或いはこれらの親水化処理を繰り返す処理や、組み合わせて行う親水化処理等が挙げられる。
【0059】
例えばコロナ放電処理であれば、熱接着不織布の両面にそれぞれ1〜20回処理するとよく、処理した総放電量が0.05〜10kW・分/m2の範囲で処理するとよい。フッ素処理であれば、熱接着不織布を窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈したフッ素ガスと、酸素ガスや亜硫酸ガス(二酸化硫黄ガスとも称す)、二酸化炭素ガス等との混合ガスにさらすことによって、熱接着不織布表面に親水基を導入する方法が挙げられる。なお、熱接着不織布表面に対して亜硫酸ガスを接触、反応させた後、フッ素ガスを接触、反応させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。フッ素処理を行った場合には、処理後の熱接着不織布を水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液中で中和処理し、温水洗浄、乾燥させて処理してもよい。
【0060】
グラフト重合処理であれば、ビニルモノマーと重合開始剤とを含む溶液中に熱接着不織布を浸漬して加熱する方法、熱接着不織布にビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法等を用いるとよく、さらに、ビニルモノマー溶液と熱接着不織布とを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、熱接着不織布表面を改質処理すれば、効率的にグラフト重合でき好ましい。
【0061】
スルホン化処理としては、濃硫酸を用いた処理、発煙硫酸を用いた処理、クロロスルホン酸を用いた処理、無水硫酸を用いた処理などが挙げられ、濃硫酸、発煙硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に、熱接着不織布を浸漬して熱接着不織布表面にスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス或いは三酸化硫黄ガスなど各種硫黄酸化物ガス含有雰囲気中で放電処理を熱接着不織布表面に作用させて、熱接着不織布表面にスルホン酸基を導入する方法などが挙げられる。スルホン化処理を行った場合には処理後の湿式不織布をアルカリ溶液中で中和処理し、温水洗浄、乾燥させて処理してもよい。
【0062】
界面活性剤処理であれば、親水性能を有するアニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤の溶液中に熱接着不織布を浸漬し、あるいは塗布して付着させる方法等がある。なお、前記親水化処理方法は、上述したいかなる方法であっても、また、二種以上組み合わせても構わない。また後述する厚み調整工程の前に行ってもよく、厚み調整工程の後に行ってもよいが、厚み調整工程後に親水化処理を実施すると、熱接着不織布内部に付着させる成分や、熱接着不織布表面の炭素原子と反応させる成分(例えばフッ素ガスや亜硫酸ガス、発煙硫酸、硫黄酸化物ガスなど)が浸透しにくくなるおそれがあるので、厚み調整工程の前に実施することが好ましい。
【0063】
本発明のセパレータ材料の製造方法において、得られた前記熱接着不織布に対して熱カレンダー加工を施して、少なくとも1回の厚み調整工程を実施してセパレータ材料に適する厚みに調整する。厚み調整工程を熱接着不織布に対して行う際は、40℃より高く、熱接着不織布の構成繊維が溶融する温度より10℃以上低い温度の1対のプレス機(熱カレンダーロール)を用いて、前記不織布を厚みが50μm以上300μm以下となるようにプレスされることが好ましい。かかる処理を施すことにより、熱接着不織布を所望の厚みに調整するとともに、熱接着不織布中に極細繊維が充分に発生していない極細繊維を発生し得る繊維が存在する場合、極細繊維の発生する割合をさらに高めることができる。1対のプレス機としては、ロール型、平板型などが挙げられるが、生産性を考慮すると平ロール型のカレンダー加工機を用いることが好ましい。より好ましい加工温度の下限は、45℃より高い温度である。より好ましい加工温度の上限は、不織布を構成する繊維の溶融する温度より30℃以上低い温度であり、さらにより好ましい加工温度の下限は、50℃より高い温度である。さらにより好ましい加工温度の上限は、不織布を構成する繊維の溶融する温度より40℃以上低い温度である。加工温度が低すぎると、不織布の幅方向で厚み斑が生じたり、加工後不織布の厚みが復元する(厚み回復)現象を引き起こしたりするおそれがある。加工温度が構成繊維の溶融する温度より10℃低い温度を超えると、不織布表面の繊維間空隙が閉塞され、電解液及びガス通過性を低下させるおそれがあるだけでなく、前述したスルホン化処理などの親水化処理を行った後に厚み調整工程を実施する場合において、厚み調整工程の温度により、親水化処理で付与された親水基が劣化して、熱接着不織布の親水性が減衰するおそれがある。
【0064】
前記厚み調整工程において、プレス処理における線圧は、150N/cm以上1500N/cm以下であることが好ましい。より好ましい線圧の下限は、200N/cmである。さらに好ましい線圧の下限は、300N/cmである。より好ましい線圧の上限は、1000N/cmである。さらに好ましい線圧の上限は、800N/cmである。線圧が150N/cm未満であると、厚み調整工程が不安定になるおそれがあり、線圧が1500N/cmを超えると、不織布表面がフィルム化し易い傾向となり、ガス及び電解液通過性に支障をきたすおそれがある。
【0065】
本発明のセパレータ材料の製造方法は、下記に示す方法でも特定できる。繊維強度が4.0cN/dtex以上、伸度が30%より大きく60%以下である高強度複合繊維を含むスラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る工程、前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させた熱接着不織布を得る工程、前記熱接着不織布に熱カレンダー加工を施して、少なくとも1回の厚み調整を行う工程を含み、前記熱接着不織布の不織布厚みをT1、前記厚み調整後の不織布厚みをT2としたとき、厚み比(T2/T1)が0.65以下になるように厚み調整することを特徴とする。上記製造方法によれば、高強度複合繊維が繊維の長さ方向への圧力に対して適度に伸びたり変形するのに加えて、高強度複合繊維の熱接着によって得られる繊維交絡点が面接着されるので、繊維交絡点間で繊維のひずみが比較的生じやすく、繊維断面方向に適度にたわむようになるため、この高強度複合繊維を含むセパレータ材料は、突き刺し強力や引張強力といった機械的特性と、特に厚さ方向の柔軟性が両立される。その結果、電池内に混入した異物や、デンドライトなどの針状異物と接触し、圧力を受けた際、高強度複合繊維が適度にたわんだり、変形したりすることで、セパレータ材料に加えられる圧力を繊維が分散または吸収するようになり、異物によって変形はするものの、異物が突き抜けにくい、耐ショート性の高いセパレータ材料となる。
【0066】
前記厚み比が0.65以下となるためには、厚み調整工程前の熱接着不織布が比較的嵩高であることが好ましい。このような嵩高な熱接着不織布に対して厚み調整工程を行うことで、セパレータ材料に適した厚さを有しつつ内部に空隙が残存する、柔軟で、かつ嵩回復性の高いセパレータ材料となる。前記厚み比が0.65を超えていると、厚み調整工程前の熱接着不織布が、既に緻密で内部に空隙の少ない熱接着不織布となっているため、厚み調整工程によって、さらに内部の空隙が少なくなるため、得られるセパレータ材料が剛性の高いものとなりやすく電池内部に装填した際、内圧の低減効果が少なくなることがある。
【0067】
前記厚み比は、厚み調整工程を1回行う場合は厚み調整工程の前後の厚みから求めることができる。厚み調整工程を複数回行う場合は、1回目の厚み調整工程を行う前の厚みをT1とし、最後の厚み調整工程後の厚みをT2とする。なお、厚み調整工程前の厚みは、厚みが大きく変動していなければ、厚み調整工程を行う直前の厚みでなくてもよく、厚み調整工程前の厚みとして、湿式抄紙後の熱処理が終了した後の熱接着不織布の厚みを厚み調整工程前の厚み(T1)とし、厚み調整工程後の厚みが大きく変動していなければ、得られたセパレータ材料の厚みを厚み調整工程後の厚み(T2)としてもよい。より好ましい厚み比(T2/T1)が0.6以下であり、さらにより好ましくは0.55以下である。厚み比の下限は特に限定されないが、厚み比が0.15未満であると厚み調整工程で過度に圧縮されるため、熱接着不織布が緻密になりすぎる、あるいはフィルム状になるおそれがあり好ましくない。より好ましい厚み比の下限は0.3以上であり、さらによりこのましくは0.4以上である。
【0068】
本発明のセパレータ材料は、下記の物性値を満たすことが好ましい。下記の物性値がそれぞれの範囲を満たすことでセパレータ材料は緻密性および地合の均一性に優れるとともに、各種アルカリ二次電池のセパレータとして使用した際、異物と接触して圧力を受けても、突き刺し強力が高く、加えてセパレータが適度に変形することで異物が貫通しにくくなった、耐ショート性能が高いセパレータ材料となりやすいためである。
【0069】
本発明のセパレータ材料のニードル貫通力測定における貫通点での応力(最大貫通力F)は、12N以上であることが好ましい。セパレータ材料の突き刺し強力は、金属バリ等の混入した金属異物や、二次電池を繰り返し使用した際に発生するデンドライトに起因する短絡防止性(耐ショート性)の程度を表す代用特性であり、この値が大きいほど金属異物やデンドライトに起因する短絡が発生しにくいことを示す。セパレータ材料の突き刺し強力が12N未満であるとセパレータとして使用した際、金属異物やデンドライトに起因する短絡が発生しやすくなる。本発明のセパレータ材料のより好ましい突き刺し強力の下限は、12.5N以上であり、特に好ましい下限は、13N以上である。突き刺し強力の上限は、特に限定されないが、セパレータ材料の生産性、取り扱い性を考慮すると30N以下であることが好ましく、より好ましくは27N以下であり、25N以下であることが特に好ましい。
【0070】
ニードル貫通力測定による突き刺し強力及び最大変位量は、下記の方法で測定された値を指す。まず、測定するセパレータ材料、あるいは熱接着不織布について、縦30mm、幅100mmの大きさに裁断したもの試料として用意する。この試料を、ハンディー圧縮試験機(カトーテック(株)製 KES−G5)の円筒状貫通孔(直径11mm)を有する支持体の上に置き、更にその上に縦46mm、横86mm、厚み7mmのアルミ板の中央部に直径11mmの孔を有する押さえ板を、当該孔が支持体の円筒状貫通孔と一致するように載置した。次いで、高さ18.7mm、底面直径2.2mm、先端部形状が直径1mmの球形である円錐形状の針を、2mm/秒の速度で押さえ板の中央に垂直に突き刺した時の荷重と、前記円錐状の針によって試料が押され、変形した長さを測定し、測定した荷重のうち、前記円錐状の針が試料を貫通する貫通点での応力を最大貫通力F(突き刺し強力(N))とし、貫通点での変位量を最大変位S(mm)とした。突き刺し強力の測定は、1枚のセパレータ材料、もしくは熱接着不織布から4枚試料を採取し、それぞれの試料について異なる15箇所で測定し、計60箇所で測定した値の平均値をその試料における突き刺し強力及び最大変位とする。
【0071】
本発明のセパレータ材料は、前記突き刺し強力を測定した際の前記最大荷重F(すなわち突き刺し強力(N))を最大変位S(mm)で除したF/S(N/mm)が4.5N/mm以上10N/mm以下であると好ましい。前記F/Sは、セパレータ材料に対して針が貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料を1mm変形させるのに必要な貫通力を示す指標であり、貫通力(Force)−変位量(Strain)曲線の傾きを示す。この傾き(F/S)が所定の範囲内にあると、異物に対してセパレータ材料が厚み方向に変形して異物の応力を吸収することができる。前記F/Sが4.5N/mm未満であると、セパレータ材料を貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料が過剰に変形することで突き刺し強力が低下し、異物が貫通しやすくなり、耐ショート性が低下するおそれがある。一方、前記F/Sが10N/mmより大きくなると、圧力に対してセパレータ材料が変形しにくくなり、セパレータ材料を貫通するように圧力を加えた際、セパレータ材料がほとんど変形しないため、圧力が分散しにくくなり、異物等から加えられる圧力がセパレータ材料と異物とが接触している一点に集中して異物が貫通しやすくなり、耐ショート性が低下するおそれがあるだけでなく、セパレータ材料が硬く、曲げにくいものとなり、生産性、取り扱い性が低下することがある。前記F/S(N/mm)は4.5N/mm以上8.0N/mm以下であることがより好ましく、4.75N/mm以上7.8N/mm以下であることが特に好ましく、5.0N/mm以上7.5N/mm以下であることが最も好ましい。
【0072】
本発明のセパレータ材料は、厚みが50μm以上300μm以下であると好ましい。セパレータ材料の厚みが50μm未満であると、セパレータ材料の孔径、特に最大孔径が大きくなる傾向にあり、微粉末短絡防止性及びデンドライト短絡防止性が低下することがある。一方、セパレータ材料の厚みが300μmを超えると、電解液通過性が悪くなり、電池の内部抵抗が上昇することがある。また、電池容積当たりの電極板数が減少することになるため、電池性能も劣る傾向にある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい厚みは70μm以上200μm以下であり、100μm以上150μm以下が特に好ましく、105μm以上140μm以下が最も好ましい。
【0073】
本発明のセパレータ材料は、目付が10g/m2以上100g/m2以下の範囲内にあることが好ましい。セパレータ材料の目付が前記範囲を外れると、本発明のセパレータ材料の厚みや孔径が所定の範囲を満たさなくなることがある。本発明のセパレータ材料におけるより好ましい目付は、20g/m2以上90g/m2以下であり、25g/m2以上80g/m2以下であると特に好ましく、30g/m2以上80g/m2以下であると最も好ましい。
【0074】
本発明のセパレータ材料は、比容積が1.5cm3/g以上3.5cm3/gの範囲内にあると好ましい。セパレータ材料の比容積が1.5cm3/g未満であると、セパレータ材料が緻密になりすぎて電解液の保持性(保液率)が低下し、その結果電池の内部抵抗が上昇することがある。一方、セパレータ材料の比容積が3.5cm3/gを超えると、セパレータ材料の嵩が大きくなりすぎ、セパレータの孔径を小さくすることが困難となり、その結果、微粉末短絡が発生しやすくなる傾向にある。本発明のセパレータ材料における比容積は、2.0cm3/g以上3.0cm3/g以下であることがより好ましく、2.2cm3/g以上2.7cm3/g以下であることが特に好ましく、2.3cm3/g以上2.5cm3/g以下であることが最も好ましい。
【0075】
本発明のセパレータ材料は、平均孔径が4μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましい。平均孔径が4μm以上15μm以下の範囲内にあると、微粉末短絡防止性及びデンドライト短絡防止性に優れたセパレータ材料を得ることができる。平均孔径が4μm未満であると、電解液保持性が低下し、電池の内部抵抗が大きくなる傾向にある。一方、平均孔径が15μmを超えると、微粉末短絡、及びデンドライト短絡が発生する傾向にある。前記平均孔径は、4.5μm以上14μm以下であることが好ましく、4.8μm以上12μmであることが特に好ましく、5.0μm以上10μm以下であると最も好ましい。
【0076】
本発明のセパレータ材料の引張強力は、特に限定されないが、少なくとも1方向(例えばMD方向(機械方向、縦方向とも称す)、CD方向(幅方向、横方向とも称す))の引張強力が50N/5cm以上であればよく、80N/5cm以上であってもよく、100N/5cm以上であってもよい。引張強力の上限は特に限定されず350N/5cm以下であればよい。セパレータ材料の引張強力が50N/5cm未満であると、他の機械的特性である突き刺し強力も低下する場合がある。また、セパレータ材料の生産時や電池の製造時にセパレータ材料の取り扱い性、生産性が低下する場合がある。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、用いる繊維の各種物性、得られた熱接着不織布やセパレータ材料の各種物性は以下の方法により測定した。
【0078】
[単繊維繊度]
JIS L 1013に準じて測定した。
【0079】
[単繊維強度・単繊維伸度]
JIS L 1015に準じ、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとし、繊維が切断したときの荷重値を単繊維強度とし、切断したときの伸びを単繊維伸度とした。
【0080】
[単繊維ヤング率]
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとして引張試験を行い、荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度P(N/tex)を求め、次式により算出した値を単繊維ヤング率とした。ただし、ρは繊維密度(g/cm3)である。
単繊維ヤング率(N/mm2)=1000×P×ρ
【0081】
[厚み]
熱接着不織布及びセパレータ材料の厚みを、マイクロメータ((株)ミツトヨ 製 マイクロメータ MDC−25MJ)を用い、JIS B 7502に準じ、3枚の試料のそれぞれ異なる10箇所で、荷重が175kPaになるようにして厚みを測定し、計30箇所の平均値を求め、試料の厚みとした。
【0082】
[引張試験]
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じ、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、切断時の荷重を引張強力(N/5cm)とし、切断時の伸びを伸度(%)とした。
【0083】
[孔径分布(平均孔径)]
パームポロメータ(Porous Materials INC.製)を使用し、ASTM F 316 86に準じ、バブルポイント法によって測定した。
【0084】
[繊維ウェブの構成繊維]
実施例、及び比較例のセパレータ材料を製造するのに際し、下記に示す繊維を用いた。
【0085】
[分割型複合繊維]
分割型複合繊維1:一方の樹脂成分がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂からなり、もう一方の樹脂成分がポリプロピレンからなり、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とポリプロピレンを複合比が5/5(体積比)、中空率が12%となるよう溶融紡糸を行って得られた、断面形状が図1(a)に示す中空16分割型であり、繊度が1.1dtex、繊維長が3mmの中空分割型複合繊維。
分割型複合繊維2:繊度が2.2dtex、繊維長が4mmである以外は、前記分割型複合繊維1と同様にして得られた中空16分割型複合繊維。
分割型複合繊維3:一方の樹脂成分がポリメチルペンテン、もう一方の樹脂成分がポリプロピレンからなり、ポリメチルペンテンとポリプロピレンを複合比(体積比)が5/5、中空率が12%となるよう溶融紡糸を行って得られた、繊度が1.8dtex、繊維長が3mmの中空8分割型複合繊維。
【0086】
[高強度複合繊維]
高強度複合繊維1:芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンからなり、前記芯成分と鞘成分の複合比(体積比)が(芯/鞘)=7/3となり、芯成分が露出しないよう、芯成分と鞘成分を同心円状になるように溶融紡糸を行って、未延伸繊維束を製造し、前記未延伸繊維束に対し、乾式2段延伸を行うことで得られた、各物性値が下記の値である繊度が0.8dtex、繊維長が5mmの同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.25cN/dtex
・ヤング率:4325.8N/mm2
・伸度:41.0%
高強度複合繊維2:延伸倍率を変更して繊度を1.1dtexとしたこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:4.87cN/dtex
・伸度:45.0%
高強度複合繊維3:延伸倍率を変更して繊度を1.4dtexとしたこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.24cN/dtex
・伸度:58.9%
高強度複合繊維4:延伸倍率を変更して繊度を1.7dtexとしたこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.38cN/dtex
・伸度:49.4%
高強度複合繊維5:複合比を(芯/鞘)=(8/2)に変更したこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:6.9cN/dtex
・伸度:28.4%
高強度複合繊維6:複合比を(芯/鞘)=(6/4)に変更したこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.69cN/dtex
・伸度:32.8%
・ヤング率:4331.8N/mm2
高強度複合繊維7:複合比を(芯/鞘)=(5/5)に変更したこと以外は前記高強度複合繊維1と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:5.26cN/dtex
・伸度:30.2%
・ヤング率:4018.8N/mm2
【0087】
[芯鞘型複合繊維]
芯鞘型複合繊維1:芯成分のポリプロピレン、鞘成分の高密度ポリエチレンを変更した以外は、前記高強度複合繊維7と同様にして得られた同心円状の芯鞘型複合繊維。
・単繊維強度:3.94cN/dtex
・伸度:61.4%
・ヤング率:3137.1N/mm2
【0088】
[実施例1〜11、比較例1〜3]
まず、セパレータ材料に最適な湿式不織布の条件を検討するため、極細繊維を発生し得る分割型複合繊維、高強度複合繊維の物性や混合率を変更した湿式不織布を実施例1〜11、比較例1〜3として作製した。表1、2に示す混合率になるように分割型複合繊維及び高強度複合繊維、他の繊維を計量し、用いた原綿が0.01質量%の濃度になるように水分散スラリーを調製した。調整したスラリーに対し、家庭用ミキサーを用いて毎分2000回転で1分間攪拌し、前記分割型複合繊維を各樹脂成分に分割させて極細繊維を発生させると同時に各構成繊維が均一に分散したスラリーとした。得られたスラリーを湿式抄紙し、目付が約53g/m2の繊維ウェブを作製した。繊維ウェブを、搬送用支持体で搬送し、140℃に加熱したシリンダードライヤー(ヤンキードライヤー)を用いて、45秒間、ウェブに加熱処理を施して、繊維ウェブを乾燥させると同時に、含まれている高強度複合繊維および/または芯鞘型複合繊維で繊維同士を接着させて、熱接着不織布を得た。
【0089】
次に、前記熱接着不織布に、温度60℃、線圧320N/cmの条件で熱ロールを用いた厚み加工を行い、実施例10、比較例3、4は約160μm、それ以外は約120μmに厚みを調整し、セパレータ材料を作製した。この実施例1〜11、比較例1〜3の熱接着不織布に対し、セパレータ材料への適応性を評価するため、目付、厚み、突き刺し強力、引張強力の各項目を測定した。各項目を測定した結果を表1、表2に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
実施例1〜11のセパレータ材料は突き刺し強力が12N以上の高い突き刺し強力を有するセパレータ材料が得られたのに対し、比較例1、3のセパレータ材料はいずれも突き刺し強力が12N未満となり、突き刺し強力、すなわち耐ショート性の充分に高いセパレータ材料が得られなかった。これは比較例1、3のセパレータ材料には単繊維強度が4.0cN/dtex以上であってヤング率が3250N/mm2以上である高強度複合繊維が含まれないためと推測される。また、実施例1〜11のセパレータ材料と比較例2のセパレータ材料を比較すると、比較例2に含まれる高強度繊維のほうが実施例1〜11で使用した高強度複合繊維よりも単繊維強度が高いが、セパレータ材料の突き刺し強力は、実施例1〜11のセパレータ材料よりも低くなっている。これは比較例2で使用した高強度複合繊維の伸度が30%よりも小さいため、セパレータ材料に対しごく狭い範囲で圧力が加えたれた際、繊維の変形による圧力の吸収がされなかったために突き刺し強力が低下したと推測される。
【0093】
実施例1、3、4を比較すると、突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、芯鞘比が(芯/鞘)が5/5よりも芯成分が多い6/4や、7/3の高強度複合繊維のほうが好ましく、7/3前後の高強度複合繊維を使用することが特に好ましいと考えられる。
【0094】
実施例1、5、6、7を比較すると、突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、高強度複合繊維の繊度がより小さいことが好ましいと考えられ、特に1.2dtex以下が好ましいと考えられる。
【0095】
また実施例1と実施例8、及び実施例5と実施例9を比較すると、より細繊度の分割型複合繊維を使用したセパレータ材料である実施例1、5のほうが突き刺し強力の高いセパレータ材料となっている。従って高強度複合繊維と分割型複合繊維を混綿したセパレータ材料において、より突き刺し強力が高く、耐ショート性が高められたセパレータ材料を得るためには、繊度がより小さい分割型複合繊維を使用することが好ましいと考えられる。
【0096】
[実施例12〜15、比較例4]
実施例1〜11、比較例1〜3の結果から、最適な高強度複合繊維、極細繊維もしくは極細繊維を発生しうる繊維の傾向を把握したため、前記分割型複合繊維1と前記芯鞘複合繊維1、必要に応じて芯鞘複合繊維8を用いてセパレータ材料を作製した。まず、表3に示す混合率になるように各繊維を計量し、用いた原綿が0.5質量%の濃度になるように水分散スラリーを調製した。調整したスラリーに対し、パルパーを用いて前記水分散スラリーに含まれる分割型複合繊維に対し、分割処理を施した。得られた水分散スラリーを短網式湿式抄紙機及び円網湿式抄紙機を用いて抄き合わせることで湿式抄紙ウェブを作製し、得られた湿式抄紙ウェブをヤンキードライヤー(シリンダードライヤーとも称す)を用いて140℃で加熱することで前記湿式抄紙ウェブを乾燥させるとともに、高強度複合繊維及び/または芯鞘型複合繊維の熱接着成分を融解させて湿式抄紙ウェブの構成繊維同士の少なくとも一部を熱接着させて熱接着不織布を得た。得られた熱接着不織布を採取し、目付、厚み(T1)、孔径分布の測定を行った。
【0097】
次に得られた熱接着不織布に対し、フッ素ガスなどの反応性の気体を用いた親水化処理を行い、官能基を熱接着不織布表面に導入することで熱接着不織布に親水性を付与させた。
【0098】
フッ素処理した熱接着不織布に対し、本発明のセパレータ材料に最適な厚みにするため、一対のプレーンロールからなる熱ロールを用いた厚み加工(カレンダー処理)を行った。前記厚み加工(カレンダー処理)は、熱ロールを60℃に加熱し、線圧500N/cmの圧力を熱接着不織布に加え、加工速度15m/分の条件で実施した。
【0099】
前記厚み加工後の熱接着不織布に対し、親水性を更に高めるためにコロナ放電処理を熱接着不織布の両面に対し実施し、本発明のセパレータ材料を得た。コロナ放電処理は熱接着不織布の両面に対し、それぞれ4回ずつ、放電量1.0kW・分/m2でコロナ放電処理を施した(総放電量8kW・分/m2)。コロナ放電処理が終了し、得られた実施例11〜14、比較例1、2のセパレータ材料に対し、前記の測定方法で目付、厚み(T2)、突き刺し試験、孔径分布の測定を行った。その結果を実施例12〜15、比較例4の繊維構成、熱接着不織布の各種測定結果と共に表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
実施例12〜15のセパレータ材料は、セパレータ材料は単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含んでいるため突き刺し強力が12N以上の高い値となっている。また、前記高強度複合繊維は単繊維強度が高いだけでなく、伸度が30%を超える高強度複合繊維であるため、それを使用したセパレータ材料も、強度と、圧力に対する伸びのバランスがとれ、突き刺し試験におけるF/Sがセパレータ材料として最適な4.5N/mm以上10N/mm以下の範囲になる。これにより、本発明のセパレータ材料は、例えば電池筐体内部に装填して使用した際、針状異物などによって圧力を受けた際、セパレータ材料が高い強度を示し、かつ適度にたわみ、変形することで、加えられる圧力に耐えつつ、適度に変形することで圧力を分散するため、異物が貫通しにくい、耐ショート性の優れたセパレータ材料となる。
【0102】
一方、比較例4のセパレータ材料は、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含んでおらず、単繊維強度の低い複合繊維で構成繊維間が熱接着されている。この複合繊維は伸度が大きいため、突き刺し試験の際、複合繊維が大きく伸びるため、貫通するまでの変位量は大きくなるものの、繊維そのものの強度が不足しているため突き刺し強力が12N未満と不十分であり、本発明のセパレータ材料よりも耐ショート性が劣るものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のセパレータ材料は、アルカリ二次電池、リチウムイオン二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ、コンデンサーなどの電気素子、あるいはイオン交換セパレータ(イオンキャッチャー)に用いられるセパレータとして好適であり、特にニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池用途に好適である。
【符号の説明】
【0104】
A 成分A
B 成分B
6 中空部分
10 中空分割型複合繊維
20 中実分割型複合繊維
22 芯成分
24 鞘成分
30 中空複合分割型複合繊維
32 芯成分
34 鞘成分
40 中実複合分割型複合繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなり、単繊維強度が4.0cN/dtex以上の高強度複合繊維を含み、高強度複合繊維によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されている不織布であり、
高強度複合繊維の伸度が30%より大きく60%以下であり、ヤング率が3250N/mm2以上4650N/mm2未満である、セパレータ材料。
【請求項2】
前記不織布は、ニードル貫通力測定における貫通点での応力(最大貫通力 F)が12N以上であり、且つ最大貫通力Fを貫通点の変位量(最大変位量 S)で除した値(F/S)が4.5N/mm以上である、請求項1に記載のセパレータ材料。
【請求項3】
前記高強度複合繊維は、2種類の異なる熱可塑性樹脂からなり、融点が高い熱可塑性樹脂を芯成分とし、芯成分より融点が10℃以上低い熱可塑性樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維であり、
芯成分/鞘成分が、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂である、請求項1または2に記載のセパレータ材料。
【請求項4】
前記高強度複合繊維は、芯成分と鞘成分の体積比(芯/鞘)が60/40〜75/25である、請求項3に記載のセパレータ材料。
【請求項5】
前記不織布は、前記高強度複合繊維を30〜95質量%含み、0.5dtex以下の極細繊維を5〜50質量%含む、請求項1〜4のいずれかに記載のセパレータ材料。
【請求項6】
前記極細繊維は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維であり、
前記分割型複合繊維は、一方の熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、他方の熱可塑性樹脂がポリメチルペンテン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、及びエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から選ばれる少なくとも一つの樹脂である、請求項5に記載のセパレータ材料。
【請求項7】
繊維強度が4.0cN/dtex以上、伸度が30%より大きく60%以下である高強度複合繊維を含むスラリーを湿式抄紙して繊維ウェブを得る工程、
前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記高強度複合繊維に含まれる樹脂の一部によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させた熱接着不織布を得る工程、
前記熱接着不織布に熱カレンダー加工を施して、少なくとも1回の厚み調整を行う工程を含み、
前記熱接着不織布の不織布厚みをT1、前記厚み調整後の不織布厚みをT2としたとき、厚み比(T2/T1)が0.65以下になるように厚み調整する、セパレータ材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のセパレータ材料を組み込んだ電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−216427(P2012−216427A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81163(P2011−81163)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】