説明

セメント混和材及びセメント組成物

【目的】 型枠にコンクリートを打設する時は流動性が良好で、打設した後それが速やかに低下して凝結を速め、硬化することによってコンクリートの型枠にかかる側圧を減少させる効果を有するセメント混和材などを提供すること。
【構成】 炭酸マグネシウム類、硫酸アルミニウム類、及びカルシウムアルミネートからなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分αと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材、また、成分αと、ホウ酸類、ベントナイト、石灰類、及びセッコウ類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分βと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材、さらにはセメントと該セメント混和材とを含有してなるセメント組成物を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セメント混和材、セメント組成物、及びそれらを使用したモルタル又はコンクリートに関し、詳しくは、型枠にコンクリートを打設する時はコンクリートの流動性が良好で、打設した後、流動性が速やかに低下し、かつ、凝結を速め、硬化することによって、コンクリートの型枠にかかる側圧を減少させる効果を有するセメント混和材、セメント組成物、及びそれらを使用したモルタル又はコンクリートに関する。
【0002】なお、本発明でいう側圧とは、コンクリートを型枠内に打設した後、コンクリートが凝結するまで型枠を押し開こうとする圧力であり、コンクリートに、ブリージング等の材料分離がなく、流動性が大きい場合、側圧は大きく、コンクリートの打設量が多いほど、また、コンクリートを打設する高さが高いほど側圧は大きく、側圧が大きすぎると型枠の破損にまでつながるものである。
【0003】
【従来の技術とその課題】一般に、コンクリートに要求される性質として、コンクリートの硬化前の性質と硬化後の性質がある。コンクリートの硬化前の性質は主に施工のしやすさに関係し、具体的には、適度な軟らかさと作業時間を有し、ブリージング等の材料分離のないワーカブルで締め固めの容易な性質が要求されている。
【0004】さらに、水中コンクリート等特殊なコンクリートでは、セメントが水中に流れでないことやアルカリが溶出しないことなども要求されている。
【0005】一方、コンクリートの硬化後の性質としては、コンクリートの圧縮強度等一般的な物理的性質や各種耐久性などが要求される他に、大型構造物などの場合は発熱温度が低いことなども要求されている。
【0006】即ち、要求される理想的なコンクリートとは、適度な作業時間が取れ、ブリージングや、粗骨材とモルタル分との材料分離などがなく、かつ、振動締め固めをしなくてもコンクリート自身の流動性で型枠内に充填でき、物理的性質や各種耐久性に優れているものである。そして、水中コンクリート等ではセメントの流出やアルカリの溶出がなく、大型構造物用では水和熱が小さいコンクリートが要求されている。
【0007】このような理想的なコンクリートとしては、東京大学岡村教授が提唱した超流動性のハイパフォーマンスコンクリートがあり(信頼されるコンクリートへの途、コンクリート工学、Vol.26、No.1、1988)、また、材料が分離しない特性、即ち、材料不分離性と、締め固め不要の特性を有し、増粘剤が主成分の水中不分離性混和剤を用いた水中コンクリートがあり、既に実用化されている。
【0008】そして、これらのコンクリートに共通する特性としては、ブリージングはもとより粗骨材とモルタル分との材料分離がなく、充分な作業時間と、超流動性、即ち、セルフレベリング性を有し、コンクリート自身の流動性により締め固め不要で施工できるものであり、材料分離がないという観点から、これらのコンクリートは、空隙等の構造欠陥が生じにくく、物理的性質や耐久性に優れているとされるものである。
【0009】さらに、コンクリート材料面では、材料不分離、セルフレベリング性が付与されているため締め固め不要、充分な作業時間の確保、即ち、超流動性の保持という特性を確保するために、増粘剤及び/又は比較的多量の減水剤の併用添加が基本となっているものであり、その他、目的に応じてフライアッシュやシリカヒュームなどが粘性の低下と流動性改良助材として適宜配合されている。
【0010】また、大型構造物などの施工では、水和熱抑制やコールドジョイント防止のために高炉スラグ粉末や超遅延剤の使用が、さらには、近年、その開発が活発になっている高炉スラグ−フライアッシュ−ポルトランドセメント系やダイカルシウムシリケートクリンカーをベースとした超低発熱セメントの使用が、そして、寸法安定化のために適量の膨張材の使用が実施されている。
【0011】しかしながら、通常のコンクリートに、増粘剤及び/又は減水剤を使用したり、超低発熱セメントを使用したりする場合は、コンクリートの凝結するまでの時間が著しく遅延し、特に、超低発熱セメントを使用したコンクリートの場合では、20℃の温度でも始発がくるまでに9〜12時間以上かかり、増粘剤の添加量を多くして不分離性を強くした水中コンクリートにいたっては凝結始発時間が24時間以上遅延されるという課題があった。
【0012】また、このようなコンクリートを大型構造物等に打設すると側圧が大きくなり、かつ、その側圧が長時間かかり続けることになり、水中コンクリートでは天候の急変による増水等によるコンクリートの流出が課題となっている。水中コンクリートの場合は、打設時の天候を予測するとか、増水に対して対処するなどある程度対策が可能であるが、側圧に対しては、型枠を無制限に強くできないため打設効率が著しく低下するという課題が残されている。
【0013】この側圧という課題を解決するためには、理論的には、コンクリートの打設が終了すると同時にコンクリートの流動性がなくなり、凝結が始まれば良く、そのためには、凝結促進剤、急硬材、及び急結材等の利用が考えられるが、その前提条件は、コンクリートの不分離性や自身の超流動性、即ち、セルフレベリング性に悪影響を与えないことなどである。そのうち、最も重要な点は超流動性を保持する時間を任意にコントロールすることができることである。そして、コンクリートの物理的性質や耐久性に影響を与えず、かつ、経済的であることが要求され、現在、そのようなセメント混和材が強く要望されている。
【0014】本発明者らは、前記課題を解消するため鋭意検討した結果、特定の材料を使用することによって、モルタルやコンクリートの材料不分離性と締め固め不要性という特有のワーカビリティを維持したまま、始めの超流動性を任意の時間保持し、その後、急速に流動性を失わせて凝結を促進して側圧を低減する効果を有し、硬化後の物性にも悪影響を与えないセメント混和材が提供できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、炭酸マグネシウム類、硫酸アルミニウム類、及びカルシウムアルミネートからなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分αと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材であり、成分αと、ホウ酸類、ベントナイト、石灰類、及びセッコウ類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分βと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材であり、セメントと該セメント混和材とを含有してなるセメント組成物であり、さらには、該セメント組成物、骨材、及び水を含有してなるモルタル又はコンクリートである。
【0016】以下、本発明を詳しく説明する。
【0017】本発明に係るセメント混和材は、炭酸マグネシウム類、硫酸アルミニウム類、及びカルシウムアルミネートからなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分αと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするものであり、さらには、成分αと、ホウ酸類、ベントナイト、石灰類、及びセッコウ類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分βと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするものである。
【0018】本発明において、成分αを併用することは、モルタル又はコンクリートの超流動性を保持しながら、添加量によって任意の時間に流動性を急速に失わせ、次いで凝結を促進するものであり、強度などの物理的性質に全く影響を与えないものである。そして、超流動性に関しては、流動化速度が速くなるという効果も示すものである。本発明の成分αは、炭酸マグネシウム類、硫酸アルミニウム類、及びカルシウムアルミネートからなる群より選択された一種又は二種以上の成分である。
【0019】本発明に係る炭酸マグネシウム類とは、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、及びドロマイト等であり、工業用に粉末状態で市販されているものはそのまま使用することが可能である。
【0020】また、本発明に係る硫酸アルミニウム類としては、硫酸アルミニウム、また、カリウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、及び鉄ミョウバンなどのミョウバン類、ミョウバン石、並びに仮焼ミョウバン石等が挙げられ、工業用に粉末状態で市販されているものはそのまま使用可能であるが、ミョウバン石や、ミョウバン石を400〜800℃程度で焼成して得られる仮焼ミョウバン石は、ブレーン比表面積が1,500cm2/g以上となるように粉砕して使用することが好ましい。
【0021】さらに、本発明に係るカルシウムアルミネートとは、CaOをC、Al2O3をAとすると、C3A、C4AFe2O3、C12A7、C11A7CaF2、C4A3SO3、C3A3CaF2、CA、及びCA2等と示されるもので、これらの内の一種又は二種以上の混合物や、冷却過程で急冷により非晶質化して活性を高めたものなどを粉砕によりブレーン比表面積2,000cm2/g以上にしたものが使用可能である。
【0022】以上のうち、好ましい成分は炭酸マグネシウム類で、その使用量が少なくても効果が大きく、次いで硫酸アルミニウムや仮焼ミョウバン石である。特に、炭酸マグネシウムと硫酸アルミニウムの併用はより好ましい。
【0023】成分αの使用量は、その種類、凝結遅延の原因となる高炉スラグやフライアッシュなどの配合量、並びに増粘剤及び/又は減水剤の使用量によっても異なるが、無水物換算で、コンクリート1m3に対して、0.05〜10kg/m3が好ましく、使用量が多いほど凝結は速くなる傾向がある。10kg/m3を超えると、高炉スラグ、フライアッシュ、並びに増粘剤及び/又は減水剤の使用量が多くても凝結は速くなるが、超流動性を保持する時間が短くなるので好ましくなく、0.05kg/m3未満では高炉スラグやフライアッシュ、並びに増粘剤及び/又は減水剤の使用量が少なくても凝結を促進する効果が小さくなり好ましくない。
【0024】本発明に係る成分βは、ホウ酸類、ベントナイト、石灰類、及びセッコウ類からなる群より選択された一種又は二種以上の成分であり、成分βのみでは凝結促進などの効果はなんら示さないが、成分αと併用することによって、成分αの使用効果を助長し、かつ、流動性を向上させる作用をも有するものである。即ち、成分α単独使用では時間の経過と共に始めの流動性が徐々に低下する場合でも、成分βの併用によりそれを防止するだけでなく、一度、流動性を大きくしてから急速に流動性を失い凝結を促進する効果をも奏するものである。
【0025】本発明に係るホウ酸類とは、ホウ酸や、ホウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びマンガンその他の金属塩等を示し、工業用に市販されているものがそのまま使用可能である。
【0026】本発明に係るベントナイトとしては、工業用がそのまま使用可能である。
【0027】本発明に係る石灰類としては、消石灰、生石灰、及び炭酸カルシウム等を示し、工業用に市販されているものの使用が可能である。石灰類の粉末度はブレーン比表面積で1,500cm2/g以上が好ましい。
【0028】本発明に係るセッコウ類としては、二水、半水、可溶性無水、及び不溶性又は難溶性無水の各種セッコウの使用が可能である。セッコウ類の粉末度はブレーン比表面積で1,500cm2/g以上が好ましい。
【0029】成分βの使用量は、その種類によって異なるが、無水物換算でモルタル1m3当たり0.02〜10kg/m3が好ましい。このうち、ホウ酸類の使用量は多くても0.5kg/m3が好ましく、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びセッコウ類の使用量は10kg/m3以下が、さらには、消石灰や生石灰の使用量は5kg/m3以下が好ましく、これらの範囲外では流動性を保持する時間が短くなりすぎたり、凝結を遅延したりして作業性に支障をきたす可能性がある。
【0030】なお、成分βの二種以上の併用はより好ましく、特に、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、及び仮焼ミョウバンからなる群から選ばれた一種又は二種以上と、ホウ酸類、ベントナイト、及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれた一種又は二種以上との併用が好ましく、そのうち、カルシウムアルミネートは、ホウ酸類、消石灰や生石灰、及びセッコウ類との併用が好ましい。さらに、経済性を加味すると、硫酸アルミニウムと、ホウ酸、ベントナイト、及び/又は炭酸カルシウムとの併用が好ましい。
【0031】本発明において、成分α又は成分α及び成分βと、凝結遅延時間が異常に長くなる増粘剤や減水剤とを併用することが、側圧を低減させ、効率良くモルタル又はコンクリートを打設する面で必要である。
【0032】ここで増粘剤とは水溶性高分子を示し、メチルセルロース系、ポリエチレングリコールやエチレンオキサイド系、ポリアクリルアマイド等のアクリル系、及びポリビニルアルコール系等が挙げられるが、既に、水中不分離性混和剤として市販されているものを使用することも可能である。水中不分離性混和剤としては、例えば、セルロース系として、信越化学工業社製商品名アスカクリーン、竹本油脂社製商品名アクアセッター、及び電気化学工業社製商品名デンカスタビコンA等が挙げられ、アクリル系として、三共化成工業社製商品名シーベターや東亜合成化学社製商品名アロンシークリートWなどが挙げられる。これら増粘剤の使用量は、メーカーの指定量で良いが、通常、増粘剤の使用量を多く必要とする水中コンクリートの場合は、コンクリート1m3当たり、2〜7kg/m3程度が好ましく、ハイパフォーマンスコンクリートや超低発熱コンクリートの場合は、0.01〜2kg程度が好ましく、目的や状況によって使用量を適宜変化することが好ましい。
【0033】減水剤は特に制限されるものではないが、特に、高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び流動化剤の使用が好ましい。高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び流動化剤は、大別してナフタリン系、メラミン系、及びポリカルボン酸系に分類される。その代表例としては、ナフタリン系として、花王社製商品名マイティ100マイティ2000WH、デンカグレース社製商品名ダーレックススーパー100PH、及び電気化学工業社製商品名デンカFT-500デンカFT-80等が挙げられ、メラミン系として、昭和電工社製メルメントF-10等が挙げられ、ポリカルボン酸系として、藤沢薬品工業社製商品名パリックFP-100S等が挙げられる。その他、日曹マスタービルダーズ社、日本ゼオン社、日本シーカ社、神戸材料社、山陽国策パルプ社、竹本油脂社、福井化学工業社、及び第一工業製薬社等各社より同様な減水剤が市販されている。特に、増粘剤と併用する場合の減水剤としては、メラミン系やポリカルボン酸系の使用が好ましい。これらの減水剤の使用量は、メーカーの指定の範囲量で十分ではあるが、ナフタリン系やメラミン系は、市販の原液の形態でセメント100重量部に対して、1〜4重量部、ポリカルボン酸系は1〜2重量部が好ましい。
【0034】本発明に係るセメント組成物とは、セメントと前述のセメント混和材を含有するものである。本発明に係るセメントとしては、JIS R 5201に規定されている普通、早強、超早強、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、及びシリカを配合した各種混合セメントのほか、JIS 規格以上に高炉スラグを配合したセメントも使用可能であり、さらに、任意に配合した高炉スラグ−フライアッシュ−ポルトランドセメント系やダイカルシウムシリケートクリンカーを主体とした超低熱セメントとの混合物も使用可能である。
【0035】また、本発明では、膨張材、セッコウを主体とした高強度混和材、及びシリカヒューム等を適宜配合したセメントも使用可能である。
【0036】本発明のセメント混和材を用いたモルタル又はコンクリートは、前述のセメント組成物に、骨材や練り混ぜ水を適宜配合したものである。その配合は、設計強度など対象となる構造物により異なり、特に制限されるものではないが、単位セメント量は300kg/m3以上、水/セメント比は60%以下、流動性の指標となるスランプフローは400mm以上が好ましい。
【0037】ここで、スランプフローとは、常法によってコンクリートをスランプコーンに詰め、スランプ測定の要領でコーンを抜き上げた時の広がりの直径を示す。また、モルタルはプレパックド、グラウト、及び床用のセルフレベリング材用として使用可能であり、その配合は材料不分離性と超流動性を阻害しない限り、特に限定されるものではない。
【0038】本発明において、セメント混和材の使用方法は特に制限されるものではないが、粉末の状態でコンクリートを練り混ぜるときに、他の材料と一緒にミキサーに投入しても良いし、練り混ぜ水の全量又は一部に溶解するか懸濁してコンクリートを練り混ぜるときに添加しても良く、さらには、溶解又は懸濁したものをコンクリート運搬のアジテーター車に投入することも可能である。
【0039】
【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0040】実施例1水150kg/m3、セメント192kg/m3、スラグ128kg/m3、細骨材858kg/m3、粗骨材1,015kg/m3、減水剤イ9.6kg/m3、及び増粘剤ニ1.0kg/m3の単位量で、Gmax15mm、水/粉体比47%、air量2±1%、細骨材率48%、及びスランプフロー500〜600mmとし、表1に示すように成分αの種類と添加量を変え、20℃の室内で容量100リットルの強制練りミキサーを用い、40リットル分のコンクリートを混練した。このコンクリートを使用し、スランプフローの経時変化、練り上がり直後のコンクリートの広がりに要する時間(時間)、凝結始発までの時間、及びφ10×20cmの供試体の28日圧縮強度を測定した。結果を表1に併記する。
【0041】なお、スランプフローの経時変化はコンクリートを静置しておいて、測定時間がきたらスコップで練り返し測定した。圧縮強度は材令3日で脱型し標準養生とした。
【0042】<使用材料>セメント:電気化学工業社製普通ポルトランドセメント比重3.16スラグ :川鉄リバメント社製スラグ、ブレーン比表面積4,500cm2/g、比重2.75細骨材 :新潟県姫川産川砂、比重2.62粗骨材 :新潟県姫川産砕石、比重2.64減水剤イ:高性能減水剤、電気化学工業社製商品名デンカFT-500、主成分ナフタレン系増粘剤ニ:三共化成工業社製商品名シーベター、主成分アクリル系成分αA:炭酸マグネシウム、工業用〃 B:塩基性炭酸マグネシウム、試薬〃 C:硫酸アルミニウム、試薬〃 D:カリウムミョウバン、試薬〃 E:仮焼ミョウバン石、広島県勝光山産ミョウバン石を600℃で焼成してブレーン比表面積2,000cm2/gに粉砕したもの。
〃 F:カルシウムアルミネート、生石灰と白ボーキサイトをC12A7の組成となるように調合した原料粉末を電気炉で1,500℃で熔融し、空気で吹き飛ばして冷却し、ガラス化したものをブレーン比表面積3,000cm2/gに粉砕したもの、一部C12A7の結晶を含む。
【0043】
【表1】


【0044】表1から明らかなように、成分αを使用することによりスランプフローを任意の時間維持しながら、急速にフローを低下させ、凝結を促進させることが可能である。そして、成分αの使用量を多くすることにより、フローの維持する時間は短くなり凝結をより促進できることが認められる。
【0045】実施例2水225kg/m3、セメント450kg/m3、細骨材642kg/m3、粗骨材970kg/m3、減水剤ロ4.5kg/m3、及び増粘剤ホ3kg/m3の単位量で、水/粉体比を50%、細骨材率を40%とし、表2に示すように成分αの種類と添加量を変えたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0046】<使用材料>減水剤ロ:高性能減水剤、昭和電工社製商品名メルメント主成分メラミン系増粘剤ホ:信越化学工業社製商品名アスカクリーン主成分メチルセルロース系
【0047】
【表2】


【0048】実施例3水159kg/m3、セメント155kg/m3、スラグ171kg/m3、フライアッシュ202kg/m3、膨張材10kg/m3、細骨材733kg/m3、粗骨材903kg/m3 、減水剤ハ6kg/m3、及び増粘剤ホ0.02kg/m3の単位量で、水/粉体比を30%、細骨材率を45%とし、表3に示すように成分αの種類と添加量を変えたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0049】<使用材料>フライアッシュ:常磐発電産業社製フライアッシュ、比重2.40膨張材 :電気化学工業社製商品名デンカCSA#20減水剤ハ:高性能AE減水剤、花王社製商品名マイティ2000WH主成分ナフタレン系
【0050】
【表3】


【0051】実施例4成分αの炭酸マグネシウム又は硫酸アルミニウム0.5kg/m3に、さらに表4に示すように成分αを併用したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0052】
【表4】


【0053】表4から明らかなように、成分αの二種以上の組み合わせでは、より効果的に凝結を促進すること可能である。
【0054】実施例5表5に示すように、成分αと成分βを用いたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0055】<使用材料>成分βa:ホウ酸、工業用〃b:ベントナイト、関東ベントナイト鉱業社製商品名プレミアムゲル〃c:消石灰、石灰石をUCL炉で焼成し、水をかけ消化させたものをブレーン比表面積5,000cm2/gに調整。
〃d:生石灰、石灰石をUCL炉で焼成し、ブレーン比表面積2,500cm2/gに調整。
〃e:炭酸カルシウム、石灰石をブレーン比表面積3,000cm2/gに調整。
〃f:フッ酸発生セッコウ、不溶性無水セッコウををブレーン比表面積3,000cm2/gに調整。
【0056】
【表5】


【0057】表5から明らかなように、成分αと成分βの併用は凝結を促進し、かつ、流動性を一度向上させることが示される。
【0058】実施例6表6に示すように、成分αと、二種以上の成分βとを用いたこと以外は、実施例5と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0059】
【表6】


【0060】表6から明らかなように、成分αと、二種以上の成分βとの併用は、少量でより効果的に凝結を促進し、ホウ酸、ベントナイト、及び炭酸カルシウム等の併用が特に好ましい。
【0061】実施例7水260kg/m3、セメント450kg/m3、細骨材637kg/m3、粗骨材960kg/m3、及び増粘剤ホ3kg/m3の単位量で、水/粉体比を57.8%、細骨材率を40%とし、硫酸アルミニウム50重量部、ホウ酸3重量部、ベントナイト17重量部、及び炭酸カルシウム20重量部からなる混合物の添加量を表7に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表7に併記する。なお、増粘剤としては、電気化学工業(株)製商品名デンカスタビコンA主成分メチルセルロース系を使用。
【0062】
【表7】


【0063】実施例8水125kg/m3、セメント500kg/m3、シリカヒューム100kg/m3、細骨材655kg/m3、粗骨材1,077kg/m3、及び減水剤イ18kg/m3の単位量で、水/粉体比を57.8%、細骨材率を38%とし、実施例8と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0064】
【表8】


【0065】
【発明の効果】以上、実施例で詳しく説明したように、本発明のセメント混和材を使用することにより、■超流動性や圧縮強度などの物理的性質に影響を与えることなく、凝結の始発を速め、側圧等の低減に有効であり、打設効率を高めることが可能である。
■超流動性を保持する時間や凝結は、使用量で任意に調整可能である。
■プレバックド、グラウト、及びセルフレベリング用のモルタルに対しても材料不分離性と超流動性を任意の時間確保しながら凝結時間を自在にコントロールでき、硬化前の乾燥収縮等による沈下やプラスチックひび割れなどに対して卓効を示す。
などの効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭酸マグネシウム類、硫酸アルミニウム類、及びカルシウムアルミネートからなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分αと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材。
【請求項2】 成分αと、ホウ酸類、ベントナイト、石灰類、及びセッコウ類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の成分βと、増粘剤及び/又は減水剤とを有効成分とするセメント混和材。
【請求項3】 セメントと請求項1又は2記載のセメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
【請求項4】 請求項3記載のセメント組成物、骨材、及び水を含有してなるモルタル又はコンクリート。