説明

セルフアンローダ船のブームコンベア

【課題】セルフアンローダ船のブームコンベアについて、粉塵の外部散出やシュートの耐久性低下を伴わずに短周期の上下動をシュート部分で吸収可能とする。
【解決手段】シュート3Aを受入ホッパ100に挿入して積み荷のばら物を連続的に投入しながら陸揚げを行うセルフアンローダ船のブームコンベア2Aにおいて、そのシュート3Aを、伸縮機構で上下に伸縮動作可能としながら上端側が下端側よりも大径の底のない洗面器状とした金属製の節部材31,32,33,34,35を縦方向に連設して上下に伸縮可能な蛇腹状部材を構成してなるインナーシュート30と、弾性樹脂を蛇腹状にしたベローズをインナーシュート30の外周側を隙間無く覆ってなるアウターシュート39の2重構造とし、インナーシュート30内周側で金属製の積み荷投入路を構成しアウターシュート39で樹脂製の粉状物散出防止手段を構成しながら、これらが一体的に伸縮動作を行うものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフアンローダ船のブームコンベアに関し、殊に、ばら物を運搬するセルフアンローダ船に配置され、搬出端側のシュートが上下に伸縮可能とされたブームコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば実開平2−33196号公報や特開平11−301780号公報に記載され、図5に示すセルフアンローダ船1のように、船倉に積載した石炭、鉄鉱石、ウッドチップ、石灰石、穀物などのばら物の積み荷を、船体上に配置したブームコンベア2Bで埠頭側の受入ホッパ100に投入して自ら陸揚げ作業を行う機能を備えたものが周知である。
【0003】
このようなセルフアンローダ船1では、積み荷の陸揚げに際し、図5(A)に示す干潮時と図5(B)に示す満潮時との間の潮位変化、及び積み荷の積載量の変化により、埠頭に対する船体の高さ位置が大きく変動することが知られている。また、これに波浪による短い周期の上下動が加わることで、ブームコンベア2Bから受入ホッパ100への投入位置が上下に変動する。
【0004】
そのため、場合によりブームコンベア2B本体先端側のシュート3Bが受入ホッパ100から外れて積み荷であるばら物を外部にこぼしてしまうことがあり、操作者がブームコンベア2Bを適宜に起伏動作させながら搬出端側の高さ位置を調整するのが通常であり、操作者にとって面倒な作業となっている。
【0005】
これに対し、ブームコンベア本体先端側のシュートを伸縮機構で上下に伸縮可能とするとともに、ブームコンベア本体先端側に受入ホッパとの距離を測定する高さ位置センサを設けて、その高さ位置センサの測定信号により伸縮機構を制御することで、搬出端側の高さ位置の変動状況に応じてシュートを適宜伸縮させる搬出位置調整手段を設けることも行われている。これにより、潮の干満や積載量の変化による船体高さ位置の変動に自動的に対応して、ばら物が受入ホッパからこぼれ落ちるのを回避しやすくなる。
【0006】
しかし、波浪に伴う動きについては、その上下動の周期が短いとともに細かい横方向の動きも加わるため、管状部材からなるシュートの伸縮が充分に追従しにくい。そこで、これらの細かい動きに対応して柔軟な伸縮動作を実現するため、シュートの周壁を長さ方向に複数分割して精密な伸縮動作が可能な蛇腹状にすることが考えられる。
【0007】
ところが、金属製のシュートを長さ方向に複数分割すると、蛇腹の隙間からばら物由来の粉塵が周囲に散出しやすくなる。一方、粉塵の散出を回避するためにシュートの周壁をゴム製のベローズ状にした場合、今度は硬く重量のある石炭や鉄鉱石等のばら物が内周面に衝突することで、シュートの耐久性を充分に確保しにくいものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−33196号公報
【特許文献2】特開平11−301780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、セルフアンローダ船のブ
ームコンベアについて、粉塵の外部散出やシュートの耐久性低下を伴うことなく、搬出端側の短い周期の上下動をシュート部分で充分に吸収できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、基部を中心に旋回及び起伏可能とされその先端側に設けた下向きのシュートを埠頭側の搬入コンベアの受入ホッパに挿入して積み荷のばら物を連続的に投入しながら陸揚げを行うセルフアンローダ船のブームコンベアにおいて、そのシュートは、付設された伸縮機構により上下に伸縮動作可能とされ、上端側が下端側よりも大径の底のない洗面器状とされた複数の金属製の節部材を上端側開口部内に下端側を挿入しながら縦方向に連設して上下に伸縮可能な蛇腹状部材を構成してなるインナーシュートと、弾性樹脂を蛇腹状にしたベローズをブームコンベア本体下面側と先端側の挿入金具の間に介装されインナーシュートの外周側を隙間無く覆ってなるアウターシュートの2重構造とされており、インナーシュート内周側で金属製の積み荷投入路を構成しアウターシュートで樹脂製の粉状物散出防止手段を構成しながら、そのインナーシュートとアウターシュートが一体的に伸縮動作を行う、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、ブームコンベア先端側のシュートを、ゴム等の弾性樹脂素材を蛇腹状に成形したアウターシュートと金属製の節部材を縦方向に連設して蛇腹状にしたインナーシュートの2重構造としたことで、シュートが細かく伸縮してブームコンベア先端側の周期の短い上下動に追従しやすくなるとともに多少の横方向の動きにも対応可能となることに加え、内側のインナーシュートで硬くて重いばら物が衝突する積み荷投入路の強度を充分に確保可能としながら、外側の弾性樹脂製のアウターシュートでばら物由来の粉塵が外部に散出するのを有効に回避可能なものとなる。
【0012】
また、この場合、その伸縮機構は、シュートの伸縮方向に渡したワイヤの長さをウインチで調整することにより伸縮動作を行うものとされ、そのワイヤは、ウインチから下向きに延びてシュート先端側に設けた滑車を経由し上向きとされブームコンベア本体側に上がってから他の滑車を経由し下向きとされて縦向きの摺動ガイド内に配置された先端側に、バランスウエイトが摺動ガイド内を上下に摺動可能な状態で連結されており、ブームコンベア先端側と受入ホッパの間隔が変動した際に、そのバランスウエイトが上下動してシュートの伸縮動作を自動的に補助することを特徴としたものとすれば、波浪等によるブームコンベア本体先端側の短い周期の上下動に対応可能として、自動的且つスムースにシュートの伸縮動作が行われるものとなる。
【0013】
さらにこの場合、その摺動ガイドの上部側所定位置及び可部側所定位置には、バランスウエイトがその位置に達したことで警報を生じさせるセンサ又はリミットスイッチが各々設けられている、ことを特徴としたものとすれば、シュートの伸縮動作で対応可能な上下の限界位置を超えることによるトラブルの発生を回避しやすいものとなる。
【0014】
さらにまた、上述したセルフアンローダ船のブームコンベアにおいて、ブームコンベア本体先端側の下面所定位置には、受入ホッパと前記下面との距離を測定して測定信号を出力するための距離測定手段が配設されている、ことを特徴としたものとすれば、制御装置等に測定信号を出力することでブームコンベア先端側を起伏動作させたりシュートを伸縮動作させたりして受入ホッパとの距離を制御可能なものとして、主として比較的長い周期に亘る船体の上下動に自動的且つ的確に対応できるものとなる。
【発明の効果】
【0015】
ブームコンベアのシュートを弾性樹脂素材を蛇腹状に成形したアウターシュートと金属製の節部材を蛇腹状にしたインナーシュートの2重構造とした本発明によると、粉塵の散出やシュートの耐久性低下を伴うことなく、周期の短い搬出端側の上下動をシュート部分
で充分に吸収できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における実施の形態であるブームコンベア本体先端側の構成を示す部分側面図。
【図2】図1のブームコンベアのシュートを受入ホッパ挿入口に挿入する手順を説明するための部分側面図。
【図3】図2のブームコンベアのシュート先端が受入ホッパ挿入口に挿入された後にブームコンベア本体先端側が受入ホッパに近づいた場合のシュートの動作を説明するための部分側面図。
【図4】図2のブームコンベアのシュート先端が受入ホッパ挿入口に挿入された後にブームコンベア本体先端側が受入ホッパから離れた場合のシュートの動作を説明するための部分側面図。
【図5】(A)は干潮時にセルフアンローダ船で積み荷を陸揚げしている状態を示す縦断面図であり、(B)は満潮時に積載量が減少した状態のセルフアンローダ船で積み荷を陸揚げしている状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態であるセルフアンローダ船のブームコンベア2Aの搬出端である先端側部分の詳細を説明するためのものであり、シュート3Aの内部構成が見えるようにアウターシュート39の一部を切り欠いて示している。尚、このブームコンベア2Aは、石炭や鉄鉱石等のばら物を運搬するセルフアンローダ船1の船体上に積み荷の陸揚げ手段として搭載されるものであり、先端側以外の部分は従来例とほぼ共通しているため説明を省略する。
【0019】
このブームコンベア2Aの先端側部分のうち、埠頭に配置した搬入コンベアの受入ホッパに挿入しながら積み荷を連続的に投入する部分として、ブームコンベア2Aの本体先端側の下面から下向きに延設され受入ホッパの投入口に先端部を挿入して作業を行うシュート3Aの構成及び機能に特徴を有したものとなっている。
【0020】
このシュート3Aには、ブームコンベア2A本体先端側上面のウインチ6から延びたワイヤ8が上下方向に渡されており、その長さを調整することで上下方向の伸縮動作を行うようになっている。また、ブームコンベア2A本端先端側下面に設けた受入ホッパ上面との間の距離測定手段である超音波センサ12による測定信号を受信した図示しない制御装置が、ブームコンベア2Aの起伏動作に加えてウインチ6の駆動を操作することにより、潮位の変化や積載量の変化等に応じてシュート3A先端部が受入ホッパの投入口から外れないように自動制御を行うようになっており、このこと自体は従来例にも見られる周知の技術である。
【0021】
そして、本発明において、このシュート3Aの構成として、上端側が下端側よりも大径で底のない鋼板等の金属板を洗面器状に形成してなる平面視ドーナツ状の複数の節部材31,32,33,34,35を、上端側開口部内に下端側を挿入しながら縦方向に連結して上下に伸縮可能な蛇腹状に形成したインナーシュート30と、その外周側を隙間なく覆いながらブームコンベア2A本体先端側下面と耐摩耗性に優れた金属素材で口金状に形成した先端側金具36との間に介装されて弾性樹脂素材を蛇腹状に成形したベローズによるアウターシュート39の、2重構造とされている点が第1の特徴部分となっている。
【0022】
即ち、このシュート3Aは、インナーシュート30の節部材31,32,33,34,
35が各々アウターシュート39の伸縮動作に追従するものとして、インナーシュート30とアウターシュート39が一体的に伸縮動作を行うとともに、金属製で耐久性に富むインナーシュート30の内周側でばら物投入路を構成しながら、その外周側の樹脂製のアウターシュート39で粉状物の内外流通を阻止して粉状物散出防止手段を構成するものとなっている。
【0023】
そのため、このシュート3Aにより細かい伸縮動作がスムースに行われ、波浪等によるブームコンベア2A先端側の周期の短い上下動に追従するとともに多少の横方向の動きにも対応できるものとなり、受入ホッパの投入口から先端側金具36がずれたり外れたりしにくいものとなる。加えて、金属板からなるインナーシュート30により、硬くて重い石炭や鉄鉱石等のばら物投入路となる内周側の強度が充分に確保されるとともに、弾性樹脂製で内外の連通路になる隙間を有しない外側のアウターシュート39で、ばら物由来の粉塵が外部に散出するのを有効に防止することができる。
【0024】
また、本実施の形態では、シュート3Aの伸縮機構の構成として、シュート3Aの伸縮方向に渡したワイヤ8が、下向きに延びてから先端側に設けた滑車80bを経由し上向きとなってブームコンベア2A本体上部側まで上がり、さらに滑車80cを経由して下向きとなり摺動ガイド9中に配置された先端側に、摺動ガイド9内で上下に摺動可能な状態でバランスウエイト7が連結されている点が第2の特徴部分となっている。
【0025】
これにより、受入ホッパとブームコンベア本体先端側下面との間隔が変動した際に、バランスウエイト7がその動作に追従して上下動することによりシュート3Aの伸縮動作を補助するものとなり、波浪等によるブームコンベア2A先端側の短い周期の上下動に対応して、自動的且つスムースにシュート3Aの伸縮動作が行われるようになる。尚、摺動ガイド9の上部と下部の所定位置にはリミットスイッチ10,11が配設されており、バランスウエイト7がその位置に来ることで、シュート3Aの伸縮における上限位置や下限位置に達したことを知らせる警報を生じさせるようになっている。
【0026】
図2は、上述したブームコンベア2Aのシュート3Aを埠頭側の受入ホッパ100の投入口110に接続(挿入)する手順を説明するためのものであり、操作者は、図1のようにワイヤ8をウインチ6で巻き取って退縮させた状態のシュート3Aの先端側金具36を、投入口110の上方所定距離に位置するようにブームコンベア2Aを旋回・俯仰動作させる。
【0027】
次に、ウインチ6を作動させてワイヤ8を繰り出すことにより、シュート3Aが下方向に延びて口金状の先端側金具36が投入口110に一致して預けられる。これからさらにウインチ6でワイヤ8を繰り出すことでバランスウエイト7が摺動ガイド9の中央位置になるように調整することにより(図示省略)、受入ホッパ100へのセットが完了する。
【0028】
そして、図3に示すように陸揚げ作業中にブームコンベア2A先端側が下降すると、バランスウエイト7も下降しながらシュート3Aをスムースに退縮させ、図4に示すようにブームコンベア2A先端側が上昇した場合は、バランスウエイト7も上昇してシュート3Aをスムースに伸長させる。
【0029】
尚、バランスウエイト7が、図のように伸縮限界位置に配置したリミットスイッチ10,11部分に達するまで上下動した場合、これらが作動して管理者に注意を促す警報を発生させる。その際、下限のリミットスイッチ11が作動した場合は、シュート3Aが外れる方向ではないため荷役は続行してもよいが、上限のリミットスイッチ10が作動した場合はシュート3Aが外れる方向であるため、荷役作業は一斉停止させることが推奨される。また、各節部材31,32,33,34,35が上下に偏りのない伸縮動作を行うよう
にするため、その上端外周部側をその位置に対応したアウターシュートの内周側に、各々接続部品等で接続しておいても良い。
【0030】
以上、述べたように、セルフアンローダ船のブームコンベアについて、本発明により、粉塵の外部散出やシュートの耐久性低下を伴うことなく、周期の短い搬出端側の上下動をシュート部分で充分に吸収できるものとなった。
【符号の説明】
【0031】
1 セルフアンローダ船、2A ブームコンベア、3A シュート、6 ウインチ、7
バランスウエイト、8 ワイヤ、9 摺動ガイド、10,11 リミットスイッチ、12 超音波センサ、30 インナーシュート、31,32,33,34,35 節部材、36 先端側金具、39 アウターシュート、80a,80b,80c 滑車、100 受入ホッパ、110 投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部を中心に旋回及び起伏可能とされその先端側に設けた下向きのシュートを埠頭側の搬入コンベアの受入ホッパに挿入して積み荷のばら物を連続的に投入しながら陸揚げを行うセルフアンローダ船のブームコンベアにおいて、前記シュートは、付設された伸縮機構により上下に伸縮動作可能とされ、上端側が下端側よりも大径の底のない洗面器状とされた複数の金属製の節部材を前記上端側開口部内に前記下端側を挿入しながら縦方向に連設して上下に伸縮可能な蛇腹状部材を構成してなるインナーシュートと、弾性樹脂を蛇腹状にしたベローズを前記ブームコンベア本体下面側と先端側の挿入金具の間に介装され前記インナーシュートの外周側を隙間無く覆ってなるアウターシュートの2重構造とされており、前記インナーシュート内周側で金属製の積み荷投入路を構成し前記アウターシュートで樹脂製の粉状物散出防止手段を構成しながら、前記インナーシュートと前記アウターシュートが一体的に伸縮動作を行うことを特徴とするセルフアンローダ船のブームコンベア。
【請求項2】
前記伸縮機構は、前記シュートの伸縮方向に渡したワイヤの長さをウインチで調整することにより伸縮動作を行うものとされ、前記ワイヤは、前記ウインチから下向きに延びて前記シュート先端側に設けた滑車を経由し上向きとされ前記ブームコンベア本体側に上がってから他の滑車を経由し下向きとされて縦向きの摺動ガイド内に配置された先端側に、バランスウエイトが前記摺動ガイド内を上下に摺動可能な状態で連結されており、前記ブームコンベア本体先端側と前記受入ホッパの間隔が変動した際に、前記バランスウエイトが上下動して前記シュートの伸縮動作を自動的に補助することを特徴とする請求項1に記載したセルフアンローダ船のブームコンベア。
【請求項3】
前記摺動ガイドの上部側所定位置及び下部側所定位置には、前記バランスウエイトが前記位置に達したことで警報を生じさせるセンサ又はリミットスイッチが各々設けられていることを特徴とする請求項2に記載したセルフアンローダ船のブームコンベア。
【請求項4】
前記ブームコンベア本体先端側の下面所定位置には、前記受入ホッパと前記下面との距離を測定して測定信号を出力するための距離測定手段が配設されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載したセルフアンローダ船のブームコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171791(P2012−171791A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38938(P2011−38938)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】