説明

ゼオライト触媒の活性化方法

【課題】炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒の活性を向上させる方法を提供する。
【解決手段】周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、ゼオライト触媒の活性化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に広く使われているゼオライト触媒の活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト触媒は、石油精製プロセスや種々の化学工業プロセスで広く使われている。これらのゼオライトは、飽和炭化水素等の価値の低い炭化水素を接触反応させて軽質オレフィン(エチレン、プロピレン)等を製造する反応に有用であり、多種の触媒が開発されてきている。
【0003】
ゼオライトの種類としては、ZSM−5型等のペンタシル型ゼオライトを用いた報告が最も多い。
例えば、特許文献1及び2には、銅、コバルト、あるいは銀と、リンで修飾したZSM−5型ゼオライトを触媒として用いた、炭素数3〜10のパラフィンを主体とする炭化水素の接触分解反応による、低級オレフィンの製造方法が記載されている。
また、特許文献3には、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオン型のZSM−5型ゼオライトに、銀等の周期表IB族の元素を含有させた触媒を用いた、ナフサを原料とする、エチレン・プロピレン等の製造方法が記載されている。
他に、特許文献4には、実質的にプロトンを含まず、銀等の周期表IB族の元素を含有させた触媒を用いた、ブテンを原料とする、エチレン・プロピレンの製造方法が記載されている。
【0004】
また、上述の特許文献のような銀等の周期表IB族の元素を含むゼオライト以外に、希土類やリンを含むZSM−5型ゼオライトを用いた例も開示されている。
例えば、特許文献5には、ZSM−5型ゼオライトを希土類及びリンで修飾した触媒を用いた、n−ブタンを原料とする、低級オレフィンの製造方法が記載されている。
他に、特許文献6には、希土類、リン、及びマンガン及び/又はジルコニウムで修飾したZSM−5型ゼオライトを、窒素とスチームで処理した後に、接触分解反応を行った実施例が記載されている。
【0005】
また、これらの特許文献で用いられているゼオライト触媒の活性向上が望まれている。特許文献7には、リンを含む蒸気活性化ZSM−5からなる触媒を用いた、炭化水素を低級オレフィンに転換する方法が記載されている。当該特許文献によると、500〜700℃において、1〜5気圧の蒸気下、1〜48時間、触媒を加熱することによって、触媒の活性が向上することが示されている。
しかしながら、反応温度600℃以上という極めて過酷な反応条件にもかかわらず、原料炭化水素の転化率は20〜60%程度であり、十分な活性が得られていない。
【0006】
なお、「周期表」の記載としては、上述の従来技術の記載では、引用した特許文献の例
にしたがって記載したが、以下の記述においては、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の周期表「IUPAC Periodic Table of the Elements,October 3th,2005」にしたがって記載する。そのため、例えば上述の銀等の「IB族」は、IUPACの周期表では、「11族」となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−1413号公報
【特許文献2】特開平2−184638号公報
【特許文献3】特開平8−126844号公報
【特許文献4】特開2007−106738号公報
【特許文献5】特開平11−180902号公報
【特許文献6】特開2004−143373号公報
【特許文献7】特許第3057398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒を高活性化する方法は見出されていなかった。
本発明は、炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒の活性を向上させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定のゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行うことで、ゼオライト触媒の活性が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に関する。
(1)周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、ゼオライト触媒の活性化方法。
(2)前記周期表第11族元素が銀である、上記(1)に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
(3)前記ゼオライト触媒がペンタシル型ゼオライトである、上記(1)又は(2)に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
(4)前記ゼオライト触媒がMFI型及び/又はMEL型である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゼオライト触媒の活性化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒の活性を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、ゼオライト触媒の活性化方法である。本発明の方法によれば、ゼオライト触媒の活性を著しく向上させることができる。
その理由としては、ゼオライト中に含有させた第11族元素とリンが、酸化性雰囲気での水蒸気との相互により、新たな活性点を構築するためと推測される。
【0012】
(ゼオライト触媒)
本発明の方法で活性化されるゼオライト触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒である。なお、本発明において、「ゼオライト」とは、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩及びメタロケイ酸塩のことを示す(「ゼオライトの科学と工学(小野嘉夫ら編、講談社サイエンティフィク社刊、2000年刊行)」の2頁、3〜4行参照)。
ゼオライト触媒としては、A型、ペンタシル型、モルデナイト、ベータ、X型及びY型、UTD−1、CIT−5、ITQ−7、ITQ−4、MCM−22、チェルトネライト等が挙げられる。
これらのゼオライト触媒の中でも、触媒活性の観点から、ペンタシル型ゼオライトが好ましい。
【0013】
ペンタシル型ゼオライトとしては、MFI型ゼオライト及び/又はMEL型ゼオライトが好ましい。
MFI型ゼオライトとしては、ZSM−5、及びZSM−5と類似の構造を有するZSM−8、ゼータ1、ゼータ3、Nu−4、Nu−5、TZ−1、TPZ−1等が挙げられる。
MEL型ゼオライトとしては、ZSM−11、及びZSM−11と類似の構造を有するものが挙げられる。これらの中でも、ZSM−5が好ましい。
なお、これらのゼオライトは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明で用いるゼオライト触媒のSiO2/Al23比は、好ましくは20〜800、より好ましくは30〜300、更に好ましくは35〜200、より更に好ましくは40〜100である。SiO2/Al23比が20以上であれば、耐久性を十分に向上させることができ、800以下であれば、触媒活性を十分に保持することができる。
なお、本発明において、ゼオライト触媒のSiO2/Al23比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SIナノテクノロジー社製、SPS5100型)を用い、JIS K 0116に準じて分析した値である。
【0015】
本発明で用いるゼオライト触媒は、周期表第11族元素(以下、「11族元素」ともいう)を含有する。11族元素としては、銅、銀、金が挙げられるが、触媒活性を向上させる観点から、銀が好ましい。
11族元素のゼオライト触媒への導入は、11族元素を含む各種化合物(硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩等)を用いたイオン交換法、含浸法あるいは水熱合成法等により行うことができる。
11族元素の含有量は、触媒全量に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、更に好ましくは0.3〜2質量%、より更に好ましくは0.5〜1.2質量%である。0.1質量%以上であれば、触媒活性の向上効果が十分に得られる。また、20質量%以下であれば、逆に触媒活性が低下することもない。
【0016】
また、本発明で用いるゼオライト触媒は、リンを含有する。
リンのゼオライト触媒への導入は、リン酸及び/又はリン酸のアンモニウム塩等の水溶液に、ゼオライトを含浸する方法、又はゼオライト上にこれらの水溶液を噴霧する方法等により行うことができる。
リンの含有量は、触媒全量に対して、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、更に好ましくは1〜5質量%、より更に好ましくは1.5〜4質量%である。0.2質量%以上であれば、耐久性を十分に向上させることができ、10質量%以下であれば、触媒活性を十分に保持することができる。
【0017】
なお、本発明において、上述の11族元素及びリンの含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SIナノテクノロジー社製、SPS5100型)を用い、JIS K 0116に準じて定量した値を意味する。
【0018】
11族元素及びリンは、ゼオライト触媒上に含有(担持)されていることが重要であり、該ゼオライト触媒と11族元素又はリンとを物理的に混合しただけでは、本触媒の効果は得られない。
11族元素及びリンをゼオライト触媒に含有させる順序は、特に限定されず、別々に含有させてもよく、同時に含有させてもよいが、ゼオライト触媒に11族元素を含有させた後に、リンを含有させることが好ましい。
【0019】
本発明で用いるゼオライト触媒は、11族元素、リン以外に、希土類元素、アルカリ元素、アルカリ土類元素、シリカ、アルミナ、マグネシア、石英砂等の充填剤、各種バインダー等を、その他の成分として含有してもよい。
また、本発明で用いるゼオライト触媒の製造方法は、特に限定されず、例えば、実施例に記載の方法が挙げられる。
本発明の触媒の形状は、特に限定されず、粉末や成型品等のいずれの形状のものでもよい。
【0020】
以上のようにして調製されたゼオライト触媒の比表面積は、触媒活性の観点から、好ましくは100〜500m2/g、より好ましくは200〜400m2/gである。
【0021】
(活性化方法)
本発明では、上述した11族元素とリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う。
本発明において、水蒸気による処理を行う際、ゼオライト触媒の温度は、500℃以上であるが、好ましくは550〜800℃、より好ましくは600〜780℃、更に好ましくは620〜750℃である。500℃未満では、ゼオライト触媒の活性向上の効果が得られないため好ましくない。また、800℃以下とすることで、触媒の一部が壊れやすくなる現象を抑えることができる。
なお、担持成分の安定化の観点から、上述の水蒸気による処理を行う前に、分子状酸素と共に窒素等の不活性ガスを流通させながら、ゼオライト触媒の温度を500℃以上となるように昇温することが好ましい。
【0022】
水蒸気による処理を行う際、用いる分子状酸素としては、純酸素の他、酸素を他の不活性ガスで希釈した混合ガス、例えば空気(エアー)(酸素濃度約21%、窒素バランス)を用いることができる。これらの中でも、取り扱い性や入手の容易さの観点から、空気(エアー)が好ましい。
なお、水蒸気による処理を行う際に、本発明の効果を損なわない範囲で、二酸化炭素等の空気中に含まれるガス等のその他のガスが含まれていてもよい。
【0023】
分子状酸素と水蒸気のモル比(分子状酸素:水蒸気)は、好ましくは0.1:99.9〜90:10、より好ましくは0.1:99.9〜30:70、更に好ましくは0.2:99.8〜8:92、より更に好ましくは0.3:99.7〜4:96である。
また、水蒸気による処理を行う際のゼオライト触媒に対する水蒸気の流通量は、特に制約はないが、ゼオライト触媒100質量部に対し1時間あたり、好ましくは100〜1000質量部、より好ましくは200〜800質量部、更に好ましくは350〜600質量部である。100質量部以上であれば、触媒活性を向上させることができ、1000質量部以下であれば、耐久性を十分に保持することができる。
【0024】
また、水蒸気による処理時間としては、触媒活性を十分に向上させる観点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、更に好ましくは3〜30時間である。
以上の条件で触媒を処理することにより、高活性な触媒とすることができる。
【0025】
上記の方法により活性化されたゼオライト触媒は、炭化水素類の接触分解反応に好適であり、エチレン、プロピレン等の軽質オレフィンや、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族化合物等の製造に特に好適である。
上記接触分解反応における反応の様式は、特に限定されないが、固定床、移動床、流動床等の形式の反応器を使用し、上記の触媒を充填した触媒層へ炭化水素原料を供給することにより接触分解反応を行うことができる。
【0026】
また、上記反応の原料として用いる炭化水素類としては、常温常圧下で、気体又は液体の炭化水素類が挙げられる。炭化水素類の炭素数としては、好ましくは2〜30、より好ましくは3〜20、更に好ましくは4〜10、より更に好ましくは4〜6である。
具体的な炭化水素類としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等のパラフィン類、ブテン類、ペンテン類、ヘキセン類等のオレフィン類、シクロヘキサン等のナフテン類、ナフサ、軽油等の軽質炭化水素留分等が挙げられる。
なお、原料として用いる炭化水素類は、窒素、水素、ヘリウム、水蒸気等で希釈されていてもよい。
【0027】
接触分解反応の反応温度は、好ましくは350〜780℃、より好ましくは450〜650℃、更に好ましくは500〜600℃である。350℃以上であれば、十分な活性が得られ、原料が1回通過あたりの目的生成物の収量が十分に確保することができる。また、780℃以下であれば、メタンやコーク等の副生成物の生成量を抑えることができる。
なお、反応の際の圧力は、常圧、減圧又は加圧のいずれでも実施できるが、常圧もしくは加圧することが好ましい。
【0028】
本発明の方法により活性化されたゼオライト触媒を、炭化水素類の接触分解反応に用いた場合、反応の転化率、及び生成物の収率を共に向上させることができる。そのため、効率的に軽質オレフィンや単環芳香族化合物等を製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、触媒として用いたゼオライトのSiO2/Al23比、リン及び銀の含有量は、ICP発光分光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、SPS5100型分光装置)を用い、JIS K 0116に準拠して、測定・定量した。
【0030】
製造例1
ゼオライトとして粉末状のプロトン型ZSM−5ゼオライト(ICP発光分光分析法で測定したSiO2/Al23比=60、比表面積420m2/g、粒子径150μm以下)100質量部を、硝酸銀水溶液(1.575質量部の硝酸銀を脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)に含浸し、40℃で2時間攪拌した。生成したスラリーを減圧下、40〜60℃で攪拌しながら約2時間かけて水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。得られた粉末を空気中、120℃で8時間乾燥した後、マッフル炉内で4時間かけて600℃まで昇温し、600℃で5時間焼成した。得られた固体を粉砕し、さらにリン酸水素二アンモニウム水溶液(リン酸水素二アンモニウム17.1質量部を脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)に含浸し、同様な操作で、乾燥・焼成し、白色の固体を得た。それを圧縮成型して、乳鉢で粉砕し、16〜36メッシュのふるいを用いて整粒し、直径約0.8mmの粒状の成型体を得た(以下、「触媒A」ともいう)。得られた成型体(触媒A)は、リン:3.6質量%、銀:0.8質量%を含んでいた(ICP発光分光分析法で定量)。また、触媒Aの比表面積は380m2/gであった。
【0031】
製造例2
硝酸銀水溶液に代えて、オキシ硝酸ジルコニル水溶液(21.4質量部のオキシ硝酸ジルコニルを脱イオン水1500質量部に溶解させたもの)を用いた以外は、製造例1と同様にして、リン及びジルコニウムを含有する、直径約0.8mmの粒状の成形体を得た(以下、「触媒B」ともいう)。得られた成形体(触媒B)は、リン:3.6質量%、ジルコニウム:5.3質量%を含んでいた(ICP発光分光分析法で定量)。また、触媒Aの比表面積は390m2/gであった。
【0032】
実施例1
製造例1で調製した触媒A15gを内径46mmの石英管に充填し、石英管内に触媒層を形成した。さらに、触媒層の下部には石英砂を充填した。この石英管に、窒素を200cm3/min(0℃、1気圧換算、以下同じ)、エアー(酸素濃度21%、窒素バランス、以下同じ)を369cm3/minで流しながら触媒層の温度を700℃まで昇温し、その後、窒素の供給を停止し、エアーを29cm3/min、及び水蒸気を70.0g/hの流量(分子状酸素:水蒸気モル比=0.4:99.6)で5時間連続的に供給し、分子状酸素の共存下での水蒸気による処理を行い、触媒Aの活性化処理を行った。
【0033】
活性化処理終了後、上記の活性化処理をした触媒A0.5gを、内径10mmのステンレス製反応管(外径3mmの熱電対用内挿管付き)に充填した。さらに、触媒層の上下には、アルミナボールを充填した。この反応管に窒素を45cm3/minで流しながら、触媒層の温度を550℃まで昇温した。その後、触媒層の温度を550℃に保持し、窒素を45cm3/minの流量で連続的に供給しながら、原料として液体のn−ヘキサン1mm3を、リアクターの入口にシリンジで注入し、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。
原料の導入と同時に、反応器出口に接続したガスクロマトグラフィーを用いて出口組成を分析し、原料転化率及び生成物収率を式1及び2により算出した(以下同じ)。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
【0034】
・原料転化率(%)=(1−未反応原料質量/供給原料質量)× 100 (式1)
・生成物収率(質量%)=(各成分質量/供給原料質量)× 100 (式2)
【0035】
比較例1
エアー29cm3/minに代えて、窒素29cm3/minとした以外は、実施例1と同様にして、製造例1で調製した触媒Aの前処理を行った。
この前処理をした触媒Aを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
窒素の供給を停止後、水蒸気を用いずに、エアー29cm3/minのみを流して処理を行った以外は、実施例1と同様にして、製造例1で調製した触媒Aの前処理を行った。
この前処理を行った触媒Aを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
触媒Aに代えて、製造例2で調製した触媒Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、触媒Bの活性化処理を行った。この活性化処理をした触媒Bを0.5g用い、実施例1と同じ条件にて、n−ヘキサンのパルス分解反応を行った。原料転化率及び生成物収率の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すとおり、実施例1は、原料転化率及び生成物収率が共に良好であり、活性化処理が十分になされていることがわかる。
一方、比較例1〜3は、原料転化率及び生成物収率が共に、実施例1に比べて劣る結果となった。そのため、触媒の活性化処理が不十分であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の活性化方法によれば、炭化水素類の接触分解反応等に用いるゼオライト触媒の活性を著しく向上させることができる。そのため、本発明の方法により活性化されたゼオライト触媒を、例えば、炭化水素類の接触分解反応に用いることにより、工業的に有用な軽質オレフィンや単環芳香族化合物等を効率的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表第11族元素及びリンを含有するゼオライト触媒を500℃以上とし、分子状酸素の共存下で水蒸気による処理を行う、ゼオライト触媒の活性化方法。
【請求項2】
前記周期表第11族元素が銀である、請求項1に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
【請求項3】
前記ゼオライト触媒がペンタシル型ゼオライトである、請求項1又は2に記載のゼオライト触媒の活性化方法。
【請求項4】
前記ゼオライト触媒がMFI型ゼオライト及び/又はMEL型ゼオライトである、請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライト触媒の活性化方法。

【公開番号】特開2012−239924(P2012−239924A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108842(P2011−108842)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(590000455)一般財団法人石油エネルギー技術センター (249)
【Fターム(参考)】