説明

ソレノイドバルブ

【課題】異物が制御弁内に進入するのを防止することができ、コストを低くすることができるストレーナを有するソレノイドバルブを提供。
【解決手段】スリーブ24における供給ポート29の外側に環状溝44を設け、網目部分45と回り止め形状43を有する円弧形状のストレーナ42を、断面W字形状43が供給ポート29に位置するようにスリーブ24に取り付ける。ストレーナ42の断面W字形状43で供給ポート29を覆うことにより、該ストレーナ42の回り止め機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソレノイドバルブに関し、さらに詳細にはストレーナを取り付けたソレノイドバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機の油圧回路には、圧力を制御する圧力制御弁、流量を制御する流量制御弁、流れ方向を制御する方向制御弁等の各種の制御弁が配設され、各制御弁を操作することによって、所定の油圧サーボに油を供給してクラッチ、ブレーキ等を係合させ、所定の変速段を達成するようになっている。
【0003】
前記各種の制御弁は、スリーブ、該スリーブ内において進退自在に配設されたスプール、該スプールを所定の方向に付勢するスプリング等を備えるとともに、必要に応じて前記スプールを進退させるためソレノイド部を備える。前記スリーブには、制御弁に油を供給するための入口ポート、制御弁から油を排出するための出口ポート等のポートが形成され、制御弁をバルブボディにセットすることによって、該バルブボディに形成された流路と各ポートとが連通するようになっている。
【0004】
ところで、前記制御弁内に鉄粉等の異物が進入すると、異物がスリーブとスプールとの間に入り込み、制御弁をロックさせたり、傷つけたりしてしまう。そこで、各ポートを覆うように、フィルタ構造を有するストレーナを前記スリーブのストレーナ取付部に外側から取り付け、ストレーナの内周面とストレーナ取付部の外周面とを密着させてポートをシールし、各制御弁内に異物が進入するのを防止するようにしている(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4400486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の制御弁においては、ストレーナをポート形状部である入口ポート及び出口ポートを利用して回り止めを設け、該回り止めに設けた引っ掛け部を制御弁のスリーブに当接させている。
しかしながら、ポート形状部にストレーナを設置しない場合と比較し、ストレーナを設置したことによる流体(低温)の流量損失が大きくなる。また、ストレーナの外径部に引っ掛け部を形成するので該ストレーナの素材が大きく、かつ一つの型による個数が少なくなるのでストレーナを作成する素材単価が高くなる。
【0007】
本発明は、前記従来の制御弁の問題点を解決するためになされたもので、異物が制御弁内に進入するのを防止することができ、コストを低くすることができるストレーナを有するソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため請求項1記載の本発明は、
ポートと、
前記ポートに対応させて該ポートの外側に設けられたストレーナ取付部が形成されたスリーブと、
前記スリーブ内において進退自在に配設されたスプールと、
前記ストレーナ取付部に取り付けられたストレーナと、
を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記ストレーナは、網目部分が形成されると共に、前記ポート開口部に対応する部位に回り止め形状を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明では、前記ストレーナの回り止め形状は断面W字状であることを特 徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ストレーナ取付部に回り止め形状なるストレーナを設置することにより、ポート内を流れる流体の面積が増加するので流体量の損失を小さくすことができる。
また、ストレーナをストレーナ取付部に取り付けた際に、該ストレーナの回り止めが必要ないため、ストレーナの素材を少なくすることができ、ソレノイドバルブのコストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブの略縦断面図である。
【図2】図1のスリーブの要部外形図である。
【図3】ストレーナを取り付けたスリーブの要部外形図である。
【図4】図3のIV−IV線の断面図である。
【図5】ストレーナの斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドバルブの略縦断面図である。
【図7】図6の弁部の要部外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のソレノイドバルブにつき好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態に係るソレノノイドバルブ10の略縦断面図である。
ソレノイドバルブ10は、磁性体の金属材料であるハウジング11を有し、該ハウジング11は円筒部12とフランジ部13とを備える。前記ハウジング11の内方には、嵌合孔14が貫通して形成される。この場合、前記円筒部12は固定鉄芯としての機能を有する。嵌合孔14に嵌着された軸受機構15は軸心方向に沿って比較的に肉厚が薄い円筒形状のリテーナ16と、該リテーナ16に嵌挿される磁性体の金属製のボール17とを備え、後述するロッド18が軸心方向に変位するときのガイド機能を有する。
【0012】
ハウジング11の外周には電磁弁用コイル組立体19が配設され、該電磁弁用コイル組立体19の外周はカバー21によって覆われている。電磁弁用コイル組立体19は、ボビン20の外周に導線(図示しない)が巻き回されたコイル19aと、ボビン20の鍔部20a、20bと、コイル19aの外周を被覆するモールド部材20cと、を備える。
カバー21の内方円筒部21aの外周面にはボビン20の内周面22が嵌合されており、カバー21の内方円筒部21aの内周面22には、ロッド18に固着された可動鉄芯23が変位自在に遊嵌されている。
【0013】
参照符号24は円筒状のスリーブを示すもので、ハウジング11に当接した状態でカバー21の一端を例えば加締めることにより該ハウジング11と一体化される。前記スリーブ24には、嵌合孔14と同軸にスリーブ孔25及びスリーブ孔26が穿設され、該スリーブ孔25及びスリーブ孔26にスプール27が摺動自在に嵌挿されている。前記スリーブ24には、ハウジング11側からフィードバックポート28、供給ポート29、出力ポート30及びドレーンポート31がこの順序で形成されている。
供給ポート29は、タンクからポンプ(図示しない)によって供給される圧力流体を流入すると共に出力ポート30に供給する圧力流体の油圧を調整するようになっている。
【0014】
図2はスリーブ24の外形を示す斜視図であり、図3はソレノイドバルブ10の供給ポート29にストレーナ42を取り付けた外形図を示し、図4は図3のIV−IV線の断面図であり、図5はストレーナ42の外形図を示す。
図1乃至図3において、供給ポート29はスリーブ24の半径方向に開口した開口部、例えばU型形状の開口部45が形成されており、かつ供給ポート29の案内孔部分にはスリーブ24の外周面に環状溝44(ストレーナ取付部)が形成されており、該環状溝44にストレーナ42が取り付けられるようになっている。
【0015】
ストレーナ42(図5参照)は、例えば、ステンレスの薄板を半円形状に湾曲に成形したもので、その略全面に亘って網目部分45を形成すると共に、該網目部分45の両端部は該ストレーナ42の弾性力によってスリーブ24の外周面に密着するようになっている。そして、両端部を押し広げるようにして供給ポート29の上方からストレーナ42をスリーブ24の環状溝44に押し込み、ストレーナ42自身の弾性力により環状溝44に固定している。
本実施例のソレノイドバルブ10は、ストレーナ42を供給ポート29に取り付ける状態を示して説明したが、フィードバックポート28、出口ポート30に取り付けてよい。
さらに、ストレーナ42は、断面U字状又は断面円弧状にして開口部43に装着してもよい。
【0016】
前記スプール27は、スリーブ孔25及びスリーブ孔26のそれぞれに摺動自在に嵌挿される小径部32、大径部33を備える。小径部32の端面(図1で左端)はロッド18の一端(図1で右端)に後述するばね部材35の弾発力に付勢されて常時、当接している。前記ばね部材35は、スリーブ孔26に収納されており、一端(図1で左端)がスプール27の端面(図1で右端面)に当接し、他端(図1で右端)がスリーブ24の端面に螺着されたアジャスタ36の凹部に当接している。
この場合、ばね部材35の弾発力の調整はアジャスタ36の締め込み量によりなされ、該アジャスタ36の締め込み量の加減によりスプール27をロッド18への押力(もしくは付勢力)が調整される。これにより、スプール27は、電磁弁用コイル組立体19の励磁により可動鉄芯23及びロッド18の移動によりばね部材35の弾発力に抗して矢印Y方向に付勢され、電磁弁用コイル組立体19の非励磁によってばね部材35の弾発力により矢印X方向に付勢されることにより、ロッド18と協動してスリーブ24内を矢印Y方向及びX方向に変位するようになる。
【0017】
前記スプール27の大径部33には、該スプール27の軸心方向の位置に応じて供給ポート29及び出力ポート30間を接続・遮断するランド37と、出力ポート30及びドレーンポート31間を接続・遮断するランド38と、を軸心方向に沿って備える。前記ランド37及びランド38は軸方向に間隔を置いて設けられ、これらのランド37、38は大径部33の外径より小さい軸部39によって接続されている。よって、ランド37及びランド38と、軸部39とは直径方向に段差が形成されスリーブ孔26に対して直径方向に開口部40が形成されている。前記開口部40はランド37及びランド38間を連結する油路として機能する。
【0018】
小径部32とランド37との間にはフィードバック室41が形成され、小径部32とランド37との外径差によりフィードバックされた圧力流体が作用する受圧面積が異なる。よって、フィードバック室41に流入した圧力流体はスプール27を常時、矢印Y方向に押圧するように作用している。
一方、スプール27は、ばね部材35の弾発力と、電磁弁用コイル組立体19に供給される電流により固定鉄芯12に発生する電磁力によってロッド18がスプール27を押す力と、フィードバック室41の圧力流体からのスプール27が受ける力とが釣り合う位置で静止する。
【0019】
供給ポート29から出力ポート30に流入する圧力流体の流量は、スリーブ24の内周壁(図示しない)とランド37の外周壁との重合部分のシール長によって決定される。すなわち、シール長が短くなると供給ポート29から出力ポート30へ流れる流体の流量が増大し、シール長が長くなると供給ポート29から出力ポート30へ流れる流体の流量が減少する。同様に、出力ポート30からドレーンポート31へ流れる流体の流量は、スリーブ24の内周壁とランド38の外周壁とのシール長によって決定される。
【0020】
図6は本発明の第二の実施の形態に係る3方向2位置ノーマルクローズ弁50にストレーナ77を取り付けた略縦断面図を示す。
【0021】
図6に示すように、固定鉄芯51は断面凹状の空間部52を有する円筒部53と、前記空間部52の開口端54に設けられた鍔部55と、を備える。空間部52の円筒部53の底部56にはドレーン用の貫通穴57が設けられている。固定鉄芯51の円筒部53の外側及び鍔部55の円筒部外周面に接するようにソレノイドコイル58が嵌挿されている。
ボビン58aの下端には断面L字状で円筒状の鉄製のヨーク59が固定されている。ボビン58aの下方から端子部60が半径方向に突出し外部から電力が供給される。
【0022】
固定鉄芯51の下端及びボビン58aの内径に沿って移動可能に可動鉄芯61が設けられている。可動鉄芯61は凹状穴61aを有する中空円筒状であり、底部にピン62が固定されている。凹状穴61aにはばね部材63が設けられ、該ばね部材63の上部が固定鉄芯51の下端に当接し、ばね部材63の弾発力により固定鉄芯51と可動鉄芯61が離隔するようにされている。可動鉄芯61及びヨーク59の下部に弁部64が設けられている。弁部64は上部に鍔64aを有し、鍔64a、ヨーク59、ソレノイドコイル58、固定鉄芯51の鍔部55がカバー65の両端部で挟持するように加締め固定されている。
【0023】
弁部64は凹状穴64bに供給ポートを有する弁座(以下、第一弁座とする)66及びドレーンポートを有する弁座(以下、第二弁座とする)67が嵌挿されている。この場合、弁部64の凹状穴64bと第二弁座67との結合は、ローリング加締めにより弁部64と第二弁座67とを一体に形成している。
【0024】
弁部64の凹状穴64bに嵌挿された第一弁座66には供給口75に連通する圧力ポート68が穿設され、上方に開口する圧力ポート側弁座69、該圧力ポート側弁座69に離着座するボール70が設けられている。ボール70の上側には下方に開口するタンクポート側弁座71が設けられ、ボール70が離着座可能に配置されている。圧力ポート側弁座69とタンクポート側弁座71間に連通して負荷ポート72が設けられ、図示しない供給路に接続されている。タンクポート側弁座71はピン貫通穴73に連接し、タンク穴74を経由してタンクポート76に連通し、ソレノイドバルブ10の外部に排出される。
【0025】
参照符号77は供給口75に取り付けられたストレーナであって、該ストレーナ77は図5に示すものが図6及び図7のように装着されている。
可動鉄芯61のピン62はその先端がばね部材63の弾発力によりボール70に当接可能にされており、ソレノイドコイル58に通電することにより、固定鉄芯51側に吸引されボール70と接触しないようにされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートと、
前記ポートに対応させて該ポートの外側に設けられたストレーナ取付部が形成されたスリーブと、
前記スリーブ内において進退自在に配設されたスプールと、
前記ストレーナ取付部に取り付けられたストレーナと、
を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記ストレーナは、網目部分が形成されると共に、前記ポート開口部に対応する部位に回り止め形状を有することを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイドバルブにおいて、
前記ストレーナの回り止め形状は断面W字状であることを特徴とするソレノイドバルブ 。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−92228(P2013−92228A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235735(P2011−235735)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】