説明

タイルユニット用ネット

【課題】タイルユニット化の際の糊材との接着性及び施工時のモルタルや接着剤との接着性に優れ、しかも撥水性のガラス繊維ロービングよりなるネットであっても水系の糊材の適用を可能とすることができるタイルユニット用ネットを提供する。
【解決手段】ネットに粒子4が付着されているタイルユニット用ネット2A。ネット2Aに粒子4が付着していることにより、ネットと糊材との接着のためのネット表面積が増し、この結果、タイルに対するネットの接着強度を高めることができる。粒子として親水性のものを用いることにより、水系の糊材とのなじみが良くなり、撥水性のガラス繊維製ネットであっても水系の糊材の適用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルをユニット化するためのタイルユニット用ネットに係り、特に、タイルへの接着性が良く、また、タイルユニットの施工面への接着性の向上にも有効なタイルユニット用ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
図2の如く、複数枚のタイル1が整列配置され、且つ各タイル1の裏面にネット2を接着してタイル1を一体化させてなるタイルユニット3は周知である(例えば実公昭55−1233号、実公昭49−43403号、実開平4−123948号)。上記実公昭55−1233号公報の第2欄には、ネットを酢酸ビニール等の糊材でタイル裏面に接着することが記載されている。
【0003】
タイルユニット3は、接着剤液(糊液)が付着されたネット2を整列配置された複数枚のタイル1の裏面に重ね合わせ、その後、この接着剤液を乾燥させることにより製造される。
【0004】
図3(a)はネット2の一例を示す平面図、図3(b)は同(a)のB−B線断面図、図3(c)は糸状材料の断面の拡大図である。このネット2は、ガラス繊維ロービング等の糸状材料2a,2b,2cを編組し、相互に結着したものである。糸状材料2aは経糸であり、糸状材料2b,2cは該経糸2aに斜交する緯糸である。この緯糸2b,2cがX字状に交叉しているため、ネット2は縦方向及び横方向にも伸びがきわめて小さいものとなっている。
【0005】
ネット2は、各糸状材料2a,2b,2cをネット状に配置してバインダーで互いに結着させることにより製造されている。このため、図3(c)の通り糸状材料は若干偏平状となっている。ただし、糸状材料の断面形状はこれに限定されるものではなく、真円状、楕円状、三角形、方形、多角形、星形などその他の形状であってもよい。
【0006】
タイルユニットにおいては、当然のことながら、タイルを一体化するためのネットとタイルとが十分に高い接着性で接着していることが要求されるため、この接着性のより一層の改善が望まれる。
【0007】
また、タイルとネットとを接着する糊材としては、コスト及び作業環境の面から、溶剤系のものよりも水系のものを用いることが好ましい。一方で、ネット2を構成する糸状材料2a〜2cとしては、耐候性に優れ、伸縮し難く、タイル保持性能に優れていることから、ガラス繊維ロービングが好適に用いられるが、ガラス繊維は撥水性があるため、水系の糊材を用いてタイルに接着することが困難であるという欠点がある。
【0008】
なお、特開平6−57910号公報には、ネットにエンボス加工を施してタイルユニット化の際の糊材及び施工時のモルタルとの接着性を改善することが記載されているが、十分であるとは言えず、また、ガラス繊維の撥水性の問題は解決し得ない。
【特許文献1】実公昭55−1233号公報
【特許文献2】実公昭49−43403号公報
【特許文献3】実開平4−123948号公報
【特許文献4】特開平6−57910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、タイルユニット化の際の糊材との接着性及び施工時のモルタルや接着剤との接着性に優れ、しかも撥水性のガラス繊維ヤーン又はロービングよりなるネットであっても水系の糊材の適用を可能とすることができるタイルユニット用ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のタイルユニット用ネットは、タイルをユニット化するためのネットにおいて、該ネットに粒子が付着されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2のタイルユニット用ネットは、請求項1において、該ネットがガラス繊維で構成されることを特徴とする。
【0012】
請求項3のタイルユニット用ネットは、請求項1又は2において、該ネットを構成する糸状材料同士が、前記粒子を含有するバインダーによりネット形状に結着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4のタイルユニット用ネットは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該粒子がシリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム及び鉱物粒子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイルユニット用ネットでは、ネットに粒子が付着していることにより、ネットと糊材との接着のための見掛け上のネット表面積が増し、この結果、タイルに対するネットの接着強度を高めることができる。また、同様の理由から、このようなネットを用いたタイルユニットをモルタルや接着剤で施工面に施工する際、タイルユニットと施工面との接着性も高められる。
【0015】
また、粒子として親水性のものを用いることにより、水系の糊材とのなじみが良くなり、ガラス繊維製ネットであっても水系の糊材の適用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して本発明のタイルユニット用ネットの実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は本発明のタイルユニット用ネット2Aの実施の形態を示す平面図、図1(b)は同(a)のB−B線断面図、図1(c)は糸状材料の断面の拡大図である。本発明のタイルユニット用ネット2Aは、ネットに粒子4が付着されていること以外は、図3に示すような通常のタイルユニット用ネットと同様の構成とされている。図1において、図3と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0018】
ネット2Aを構成する糸状材料としては、ガラス繊維のヤーン又はロービングの他、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリアクリル系繊維、綿糸繊維等よりなる糸状材料を用いることができるが、前述の如く、耐候性に優れ、伸縮し難く、タイル保持性能に優れていることから、ガラス繊維のヤーン又はロービングが好適に用いられる。ガラス繊維のヤーン又はロービング等の糸状材料の幅(図2(c)のW)は通常0.5〜3.0mm程度である。
【0019】
このようなネット2Aに付着される粒子4としては、耐候性等の面から無機物粒子が好ましく、例えば、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム及び鉱物粒子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。これらのうち、特にシリカ粉末等の親水性の高い粒子を用いた場合には、前述の如く、水系の糊材とのなじみが良くなり、水系の糊材の適用が可能となり、好ましい。
【0020】
ネット2Aに付着させる粒子4の粒径は、過度に小さいと、粒子4を付着させたことによる接着性の向上効果を十分に得ることができず、過度に大きいと、ネットに付着し難くなるため、前述のような幅の糸状材料に対して、平均粒径10〜50μm程度の粒子を適用することが好ましい。
【0021】
ネット2Aに対する粒子4の付着量についても、過度に少ないと粒子4を付着させたことによる接着性の向上効果を十分に得ることができず、過度に多くても良好な接着性の向上効果を得ることができない。従って、以下に記載するように、糸状材料をネット形状に結着してネットを製造する際、バインダー中の粒子含有量を適宜調整することにより、ネットへの粒子の付着量を調整することが好ましい。
【0022】
本発明のタイルユニット用ネットの製造方法には特に制限はないが、ネットを構成する糸状材料を、粒子を含有するバインダーを用いてネット形状に結着する方法が簡便である。この場合、バインダー中の粒子含有量は、ネットに適当量の粒子を付着させるために、5〜30重量%程度とすることが好ましい。
【0023】
なお、バインダーとしては、通常、ネットの製造に用いられるものを用いることができ、例えばアクリルエマルジョン等を用いることができる。このようなバインダーに、粒子を上述の濃度に添加混合し、ネットへの粒子含有バインダーの付着量が1〜10g(粒子含有バインダー)/g(ネット重量)となるように付着させることが好ましい。
【0024】
このような本発明のタイルユニット用ネットは、常法に従ってタイルのユニット化に適用される。特に、親水性の粒子を付着させたネットの場合には、水系の酢酸ビニル系糊材を用いてタイル裏面に接着することができ、コスト面、環境面で有利である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0026】
実施例1
幅W0.5mmのガラス繊維ヤーンを用い、これを下記配合の粒子含有バインダーを用いてネット形状に結着させることにより、図1に示すタイルユニット用ネットを製造した。
【0027】
[粒子含有バインダー配合]
バインダー(アクリルエマルジョン)100g
粒子(水酸化アルミニウム,平均粒径10μm)10g
粒子含有バインダーの付着量はネット重量に対して3g/gであった。
【0028】
この粒子付着ネットを水系の酢酸ビニル系糊材を用いてタイルをユニット化したところ、良好な接着性でユニット化することができた。
【0029】
タイル裏面へのネットの付着力を引張り試験機にて測定したところ、2.0N/cmであることが認められた。
【0030】
比較例1
実施例1において、粒子を用いなかったこと以外は同様にしてネットを製造し、同様にタイルのユニット化を行ったところ、タイル裏面へのネットの接着力は0.5N/cm程度に止まった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のタイルユニット用ネットの実施の形態を示す図であって、(a)図はネットの構成を示す平面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図、(c)図は糸状材料の断面図である。
【図2】一般的なタイルユニットを示す斜視図である。
【図3】(a)図は従来のネットの構成を示す平面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図、(c)図は糸状材料の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 タイル
2,2A ネット
2a,2b,2c 糸状材料
3 タイルユニット
4 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルをユニット化するためのネットにおいて、該ネットに粒子が付着されていることを特徴とするタイルユニット用ネット。
【請求項2】
請求項1において、該ネットがガラス繊維で構成されることを特徴とするタイルユニット用ネット。
【請求項3】
請求項1又は2において、該ネットを構成する糸状材料同士が、前記粒子を含有するバインダーにより結着されていることを特徴とするタイルユニット用ネット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該粒子がシリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム及び鉱物粒子よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするタイルユニット用ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−45971(P2006−45971A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230453(P2004−230453)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】