説明

タッチパネル

【課題】樹脂基板を用いてタッチ位置の検出感度に優れたタッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネル10は、樹脂基板1を用い、X検知電極2およびY検知電極3を有する検知領域11と引き回し領域12と引き出し領域13とから構成され、X検知電極2の引き出し配線4とY検知電極3の引き出し配線5とが連結部14に向かって引き回され、引き出し領域13では連結部14からその端部に向かって伸びるよう形成される。引き回し領域12では引き出し配線4、5の重なり部が絶縁的に形成され、引き出し領域13では引き出し配線4と引き出し配線5とが、所定の間隔で交互に配列するように形成される。重なり部をなす引き出し配線4と引き出し配線5とのうちの一方が、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くことで、重なり部での引き出し配線4、5の重なり面積が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォンやPDA(パーソナルデジタルアシスタント)等の電子機器では、画面の大型化への要求が大きく、スイッチやテンキーなどの入力装置を配置できる領域が少なくなっている。また、液晶表示パネル等の表示素子に表示された画像を参照しながら表示画像に触れ、分かりやすく情報の入力ができる入力方法の実現が求められている。そのため、近年では、タッチパネル付きの表示装置への要求が高まっている。
【0003】
タッチパネルは、上述した液晶表示パネル等の表示パネル上に配置され、操作者が指やペン等の導体でタッチパネルに触れたときに、そのタッチ位置を検出する入力装置の総称である。
【0004】
タッチパネルは、タッチ位置検出の方式の違いに従って抵抗膜方式や静電容量方式等が知られている。
抵抗膜方式は、表面に透明な検知電極の配設された2枚の基板を、互いの検知電極が対向するように離間して配置する。そして、操作者の指やペンで一方の基板を押下することで検知電極同士を接触させ、通電させて、タッチ操作を検知する構造となっている。この方式では2枚の基板を必要とするため、薄型化は難しい。また、従来の抵抗膜方式タッチパネルでは、基板を押すことで対向する電極間をショートさせる構造のため、摩耗などを生じやすく耐久性の点で問題がある。
【0005】
一方、静電容量方式は、人間が導体であり、操作者の指がグランドとして機能することを利用する。すなわち、タッチパネルの基板上に配置されたタッチ位置検出用の検知電極に指が近づくと、指と検知電極との間に容量が形成される。静電容量方式のタッチパネルでは、そのタッチ操作に伴う容量形成を変化として捉え、制御回路等により検知する。このとき、容量変化を検知する方式であるため、直接に操作者の指が検知電極に触れない場合でも、指の接近を検知することができる。
【0006】
静電容量方式では、透明基板の一方の面に、例えば、水平方向であるX方向に伸びた複数のX検知電極を設ける。そして、透明基板のもう一方の面にX方向と垂直なY方向に伸びた複数のY検知電極を設ける。または、X検知電極の上に絶縁膜を配置し、その上に、複数のY検知電極を設ける。こうして静電容量方式のタッチパネルは、基板または絶縁膜等の絶縁層を挟んで互いに交差する2種類の検知電極を格子状に配置し、操作者がタッチ操作する検知領域を形成して、タッチ位置の座標の検出に用いている。静電容量方式は耐久性に優れるのみならず、使用する基板を1枚として薄膜化することも可能であるという利点も有しており、特に携帯用小型電子機器には好適な方式である。
【0007】
最近、静電容量方式のタッチパネル基板として、ガラス基板の代わりに、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂フィルムも用いられてきている(例えば、特許文献1および2を参照。)。樹脂フィルム基板は成形性、加工性、耐衝撃性の点で優れているのみならず、基板の薄型化、軽量化が可能である。
【0008】
ところで、タッチパネルには、通常、端部にFPC(Flexible printed circuits:フレキシブル基板)が取り付けられる。FPCは、検知領域に配された検知電極から引き出された配線を、例えば、外部のプリント基板上に形成された入出力制御用の制御回路と連結するものである。タッチパネルは、FPCを介して、静電容量を監視するように構成された制御回路と接続される。FPCは、可撓性の樹脂材等から構成され、ガラス基板を用いたタッチパネルの場合、熱圧着等によって接合されて連結される。FPCが可撓性を有することにより、タッチパネルにガラス基板を用いた場合でも、FPCを曲げて限られたスペースに制御回路を収納することが可能になる。
【0009】
タッチパネルをガラス基板ではなく樹脂基板を用いて作成する場合には、検知領域の部分と配線引き出し領域の部分とを一体に成形することが可能である。配線引き出し領域には、検知電極と制御回路とを接続する配線が配置され、従来のFPCと同様の機能を果たす。例えば、特許文献3には、検知領域と配線引き出し領域とを一体に形成したタッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−177194号公報
【特許文献2】特開2009−170155号公報
【特許文献3】特開2011−76514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3のように、検知領域と配線引き出し領域とを一体に形成することでFPCの付設が不要となり、タッチパネル製造のための工程数を減らすことができ、また検知領域と配線引き出し部分との接続信頼性を高めることができる。
【0012】
図9は、検知領域と配線引き出し領域とを一体形成した従来のタッチパネルの構造を模式的に説明する平面図である。
【0013】
図9に示す、従来のタッチパネル500は、静電容量方式であり、透明な樹脂基板501の一方の面に、X方向に伸びる複数のX検知電極502が配置され、もう一方の面に、Y方向に伸びる複数のY検知電極503が配置されている。従来のタッチパネル500では、樹脂基板501を挟んで格子状に配置されたX検知電極502とY検知電極503とが、操作者がタッチ操作する検知領域を構成している。
【0014】
タッチパネル500のX検知電極502は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等から形成された透明電極であり、一方の端部で配線504に接続している。Y検知電極503も、例えば、ITO等から形成された透明電極であり、一方の端部で配線505に接続している。
【0015】
配線504および配線505は、それぞれX検知電極502およびY検知電極503の端部で接続する。そして、X検知電極502およびY検知電極503の周辺で引き回されて、樹脂基板501の配線引き出し領域506に集められる。複数の配線504は、配線引き出し領域506の一方の面で、配線引き出し領域506の末端に向けて伸びるようにそれぞれが配列される。また、複数の配線505は、配線引き出し領域506のもう一方の面(図9では、裏面。)で、配線引き出し領域506の末端に向けて伸びるようにそれぞれが配列されている。タッチパネル500では、配線引き出し領域506の末端で、例えば、コネクタを用いて配線504、505と図示されない制御回路との電気的な接続が行われる。
【0016】
図10は、図9のD−D’線に沿った断面概略図である。
【0017】
図10に示すように、配線引き出し領域506では、それぞれの配線504、505が互いに交差して交差容量を形成しないように配列される。例えば、配線引き出し領域506の一方の面に配線3本の配線504が並べて配置され、もう一方の面の、3本の配線504の両脇の領域にそれぞれ2本ずつ、合計4本の配線505が配置される。
【0018】
タッチパネル500では、配線引き出し領域506においてこうした配線504、505の配置がなされる場合、樹脂基板501を挟んで配列される配線504と配線505との間に相互作用が生じ、容量が形成されることがある。例えば、図10に示されるように、破線で囲まれる領域507では、X検知電極502に接続する配線504の中の配線505に近い配線504aと、Y検知電極503に接続する配線505の中の配線504に近い配線505aとの間に相互作用が生じることがある。このような相互作用による容量形成が、複数の配線504、505の中の一部にのみ生じると、検知領域におけるタッチ位置の検出感度を低下させることがあった。
【0019】
以上の構成のタッチパネル500では、樹脂基板501を用いてFPCを不要とする一方、タッチ位置の検出感度の低下を避けることができる構成にする必要がある。
そのため、従来のタッチパネルでは、X検知電極に接続する配線とY検知電極に接続する配線とを互いに離間して引き出すようにすることがあった。例えば、樹脂基板に複数個の配線引き出し領域を設ける。そして、上述のような配線間の相互作用を低減するように、X検知電極に接続する配線とY検知電極に接続する配線とを別々に引き出すように構成されることがあった。
【0020】
しかしながら、タッチパネルが複数の配線引き出し領域を設ける場合、制御回路との間の接続のために複数のコネクタが必要となる。複数のコネクタの配設は、タッチパネルの薄型化や省スペース化の妨げとなる。また、複雑な樹脂基板の切断加工が必要となって、タッチパネルの生産性の低下を招いていた。そこで、樹脂基板を用いて、FPCの付設や複数の配線引き出し領域の配設を不要とし、さらに、タッチ位置の検出感度の低下を回避できるタッチパネルの実現が求められている。
【0021】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、樹脂基板を用い、タッチ位置の検出感度に優れたタッチパネルを提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、ストライプ状に配置されたそれぞれ複数の第1の検知電極および第2の検知電極を有する検知領域と、その検知領域の周辺に設けられた引き回し領域と、その引き回し領域に連結して設けられた引き出し領域とを樹脂基板上に有し、
第1の検知電極と接続する第1の配線および第2の検知電極と接続する第2の配線が、引き回し領域で引き出し領域との連結部に向かって引き回され、引き出し領域で、連結部からその連結部と対向する端部に向かって伸びるように形成されるタッチパネルであって、
引き回し領域で、第1の配線と第2の配線の重なり部が絶縁的に形成されており、
その重なり部を構成する第1の配線および第2の配線のうちの少なくとも一方が、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くことで、重なり部における第1の配線および第2の配線の重なり面積が低減されていることを特徴とするタッチパネルに関する。
【0024】
本発明において、引き出し領域では、第1の配線と第2の配線とが、所定の間隔で交互に配列することが好ましい。また、第1の配線および第2の配線の少なくとも一方は、その重なり部を構成する部分が、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成されることが好ましい。
【0025】
本発明において、微細配線は、第1の配線と第2の配線の重なり部においてメッシュ形状を形成していることが好ましい。
【0026】
本発明において、第1の検知電極および第1の配線は、樹脂基板の第1の面に形成されて、第1の面における引き出し領域で、第1の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
第2の検知電極および第2の配線は、樹脂基板の第1の面に対向する第2の面に形成されて、第2の面における引き出し領域で、第2の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
引き出し領域で、第1の配線と第2の配線とが、樹脂基板を挟んで、所定の間隔で交互に配列するように構成されることが好ましい。
【0027】
本発明において、第1の検知電極および第1の配線は、樹脂基板の第1の面に形成されて、引き出し領域の第1の面で、第1の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
第2の検知電極および第2の配線は、樹脂基板の第1の面に形成されて、第2の検知電極が第1の検知電極と絶縁層を介して重畳するように構成されるとともに、引き出し領域の第1の面で、第2の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
引き出し領域の第1の面で、第1の配線と第2の配線とが、所定の間隔で交互に配列するように構成されることが好ましい。
【0028】
本発明において、引き出し領域の、第1の配線および第2の配線の少なくとも一方が形成された面に、第1の配線および第2の配線の少なくとも一方と平行となるよう形成されたダミー配線を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、樹脂基板を用いてタッチ位置の検出感度に優れたタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態のタッチパネルの構造を説明する模式的な平面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面概略図である。
【図3】第1実施形態のタッチパネルの引き出し配線の重なり部を構成する部分の拡大図である。
【図4】第1実施形態のタッチパネルの引き出し配線の重なり部を構成する部分の別の例の拡大図であり、(a)は引き出し配線の重なり部を構成する部分の別の例の拡大平面図であり、(b)は、引き出し配線の重なり部を構成する部分のさらに別の例の拡大平面図である。
【図5】第1実施形態のタッチパネルの別の例の構造を説明する模式的な平面図である。
【図6】図5のB−B’線に沿った断面概略図である。
【図7】第2実施形態のタッチパネルの構造を説明する模式的な平面図である。
【図8】図7のC−C’線に沿った断面概略図である。
【図9】従来のタッチパネルの構造を模式的に説明する平面図である。
【図10】図9のD−D’線に沿った断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、液晶表示パネル等の表示パネル上に配置され、操作者が指やペン等の導体で触れたときに、そのタッチ位置を検出するタッチパネルに関する。本発明のタッチパネルは、例えば、静電容量方式である。本発明のタッチパネルは、操作者のタッチ操作を検知する検知領域において、互いに異なる方向に伸び、絶縁層を挟んで交差する2種類の検知電極をマトリクス状に配置することが可能であり、タッチ位置の座標を検出することができる。
【0032】
そして、本発明のタッチパネルは、樹脂基板を用いて構成され、検知電極の配された検知領域と、その検知電極に接続する配線を引き出すための領域を一体的に形成することができる。そのため、本発明のタッチパネルはFPCの付設を不要とし、高い生産性を有する。
【0033】
樹脂基板を用いた本発明のタッチパネルは、配線を引き出すための領域が少なくとも1つ設けられる。この配線を引き出すための領域には、上記2種類の検知電極に接続する配線が配置される。このとき、上述した配線間の相互作用が生じる懸念がある。しかしながら、本発明者は、配線を引き出すための領域における配線の配列方法を改善することにより、そうした問題を回避できることを見出した。具体的には、配線を引き出すための領域で、2種類の検知電極に接続する配線を交互に配列することが好ましい。そうした配線の配列方法をとることにより、特定の配線間のみに容量が形成されてタッチパネルの検出感度が低下する問題を回避することができる。
【0034】
また、本発明のタッチパネルは、引き回し領域において一方の検知電極と接続する引き出し配線と他方の検知電極と接続する引き出し配線とを交差させる特徴的な構造を有する。検知領域以外での配線の交差は、その部分での交差容量を形成することになり、検知領域におけるタッチ位置の検出感度を低下させることがある。そのため交差部の重なり面積を小さくすることが重要である。
以下、図面を用いて、本発明のタッチパネルについて説明する。
【0035】
<実施の形態1>
図1は、本発明の第1実施形態のタッチパネルの構造を説明する模式的な平面図である。
【0036】
本発明の第1実施形態であるタッチパネル10は、静電容量方式である。
【0037】
タッチパネル10は、樹脂基板1上に、図1中で破線を用いて模式的に示された検知領域11と、点線を用いて模式的に示された引き回し領域12と、引き出し領域13とを有している。引き回し領域12と引き出し領域13は、後述するように、検知領域11の検知電極と接続する引き出し配線4、5を引き回して、所定の位置に引き出すための領域である。タッチパネル10は、これらの領域を、1つの樹脂基板1上で、一体的に形成して有する。
【0038】
タッチパネル10の樹脂基板1は、可視光の透過が可能な透光性の基板とすることが好ましい。樹脂基板1を構成する樹脂材としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフェン系樹脂およびそれらを含む樹脂組成物や樹脂積層体等が挙げられる。この中でも、光学特性等の観点からはポリエチレンテレフタレートおよびポリカーボネートが好ましく用いられる。厚みは、携帯用小型電子機器用等の用途によって異なり、特に限定されないが、通常、数μm〜数百μm程度のものが用いられる。樹脂基板1を用いることにより、製造等における加工が容易で、破損し難く、軽量のタッチパネル10を構成することができる。
【0039】
図1に示すタッチパネル10の検知領域11では、樹脂基板1の第1の面である表の面に、第1の検知電極として、水平方向であるX方向に伸びるストライプ状の複数のX検知電極2を所定の間隔で配列して有する。一方、樹脂基板1の第2の面である裏の面に、X方向と直交する垂直な方向であるY方向に伸びるストライプ状の複数のY検知電極3を所定の間隔で配列して有する。タッチパネル10の検知領域11では、樹脂基板1を挟んでX検知電極2とY検知電極3とが格子状に配置される。タッチパネル10の検知領域11は、X検知電極2とY検知電極3とが樹脂基板1を介して配置されているので、容量の検知感度が高くなり、タッチ位置検出の精度が向上する。また、操作者の指等の導体に近い側に、X検知電極2またはY検知電極3が配設されるために検知感度が高くなる。
【0040】
タッチパネル10の検知領域11は、タッチパネル10が液晶表示パネル等の表示パネル(図示されない)上に配置されたときに、操作者が指やペン等の導体によりタッチして操作する操作面となり、そのタッチ操作を検知して、タッチ位置の検出を行うように機能する。
【0041】
尚、図1において、タッチパネル10の検知領域11では、3個のストライプ状のX検知電極2と4個のストライプ状のY検知電極3とがそれぞれ所定の間隔で配列されている。しかし、それらの個数はそうした数に限られるわけではなく、より多い数や少ない数とすることが可能である。また、X検知電極2およびY検知電極3の短手方向の幅や配列間隔についても、図1に示すものに限られず、より小さくすること等が可能である。
【0042】
タッチパネル10の検知領域11の周辺には、図1中で点線を用いて模式的に示された、配線引き回しのための引き回し領域12が、検知領域11の周囲を取り囲むように連続して設けられている。
そして、引き回し領域12の端部には、後述する引き出し配線4、5を所定の方向に向けて引き出して、例えば、コネクタ(図示されない)接続をするための引き出し領域13が、連結部14を介して連結されている。
【0043】
引き出し領域13の形状としては、図1に示すように、例えば、引き回し領域12の一方の辺の端部から検知領域11の周囲の所定の方向に伸びる短冊状の形状とすることができる。そして、引き出し領域13の短手方向(引き出し領域13が伸びる方向と垂直な方向)の幅は、コネクタ接続が可能となるようにコネクタに適合する幅であって、樹脂基板1の検知領域11と引き回し領域12が形成された辺の幅より小さい幅であることが好ましい。
【0044】
タッチパネル10は、検知領域11で複数のX検知電極2が、表の面で、それぞれX方向に伸びるよう配置され、それぞれの末端で第1の配線である引き出し配線4に接続している。一方、複数のY検知電極3が、裏の面で、X方向と直交するY方向に伸びるよう配置され、それぞれ末端で第2の配線である引き出し配線5に接続している。
【0045】
引き出し配線4および引き出し配線5はそれぞれ、金属材料を用いて形成することができる。引き出し配線4および引き出し配線5の形成に使用可能な金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、金属クロム、ニッケルおよびチタンを挙げることができる。好ましくは、汎用性の高い金属クロムである。
【0046】
引き出し配線4および引き出し配線5は、それぞれ引き回し領域12でX検知電極2およびY検知電極3から引き出され、引き回し領域12と引き出し領域13とが連結する部分である連結部14に向かって引き回される。
【0047】
このとき、タッチパネル10では、上述したように、X検知電極2が検知領域11の表の面に形成され、Y検知電極3が検知領域11の対向する裏の面に形成されている。したがって、X検知電極2の末端と接続する引き出し配線4は、樹脂基板1の表の面に形成され、引き回し領域12の表の面で連結部14に向かって引き回される。引き回された引き出し配線4は、引き出し領域13で、連結部14から、その連結部14と対向する端部に向かって伸びるように形成されている。そして、引き出し配線4はそれぞれが、引き出し領域13の表の面で、互いに平行かつ所定の間隔となるように配列されている。
【0048】
一方、Y検知電極3の末端と接続する引き出し配線5は、樹脂基板1の裏の面に形成され、引き回し領域12の裏の面で連結部14に向かって引き回される。引き回された引き出し配線5は、引き出し領域13で、連結部14から、その連結部14と対向する端部に向かって伸びるように形成されている。そして、引き出し配線5はそれぞれが、引き出し領域13の裏の面で、互いに平行かつ所定の間隔となるように配列されている。
【0049】
引き出し配線5は、それぞれが引き出し領域13の裏の面に配列されるに際し、引き出し配線4が形成されていない表の面の領域と対向する領域内に引き出し配線5のそれぞれが配置されるように、所定の間隔で配列されている。その結果、タッチパネル10の引き出し領域13は、X検知電極2に接続する引き出し配線4と、Y検知電極3に接続する引き出し配線5とが、樹脂基板1を挟んで、所定の間隔で交互に配列するように構成されている。引き出し配線4および引き出し配線5のそれぞれは、引き出し領域13の末端部で、例えば、コネクタ等と接続するための接続端子を構成する。
【0050】
以上の構造のタッチパネル10は、検知領域11で格子状をなすX検知電極2とY検知電極3とが、樹脂基板1を介し、互いに絶縁して配置される。そのため、樹脂基板1を挟んでX検知電極2とY検知電極3とが重畳する交差部分に容量が形成されている。
【0051】
X検知電極2に接続する引き出し配線4と、Y検知電極3に接続する引き出し配線5は、上述したように、検知領域11および引き回し領域12と一体的に形成された引き出し領域13を介し、例えば、コネクタを用いて制御回路(図示されない)に接続している。制御回路は、X検知電極2とY検知電極3とを用いて静電容量を監視するように構成されている。
【0052】
したがって、タッチパネル10では、操作者の指等によるタッチ操作に伴って容量形成がなされた場合、それを電位の変化として検知することができ、その接触位置を検出することができる。
【0053】
例えば、相互容量型においては、引き出し配線4、5を介して、X検知電極2とY検知電極3のうち一方を定電圧とし、他方に対しては線順次でパルス電圧を印加する。そして、X検知電極2とY検知電極3との各交差部分で生じる容量カップリングによる微分波形を読み取って、操作者によるタッチ操作の有無を検知し、タッチ位置を検出することができる。
【0054】
以上の構成を有するタッチパネル10では、従来の樹脂基板を用いたタッチパネルのように、引き出し領域13で、樹脂基板1を挟んで配列される引き出し配線4と引き出し配線5との間に相互作用が生じることがある。
【0055】
図2は、図1のA−A’線に沿った断面概略図である。
【0056】
図2に示すように、引き出し領域13では、表の面に引き出し配線4を所定の間隔で配列し、裏の面に引き出し配線5が、表の面の引き出し配線4が形成されていない領域と対向する領域内に配置されるように配列されている。その結果、引き出し領域13は、X検知電極2に接続する引き出し配線4と、Y検知電極3に接続する引き出し配線5とが、所定の間隔で交互に配列するように構成されている。
【0057】
こうした構造のタッチパネル10は、引き出し領域13で、樹脂基板1を挟んで配列される引き出し配線4と引き出し配線5との間に、図2中の矢印で表されるような相互作用が生じることがある。こうした相互作用が引き出し配線4、5のうちの一部に生じた場合、上述した従来のタッチパネルと同様の検出感度低下の問題が生じる可能性がある。
【0058】
しかしながら、タッチパネル10では、上述した従来構造のタッチパネルと異なり、そのような相互作用は全ての引き出し配線4、5においてほぼ同等に生じるようになる。そのため、引き出し配線4、5の間に生じる相互作用の影響が、全ての引き出し配線4、5のうちの一部に偏って生じることは回避されている。
【0059】
したがって、タッチパネル10は、引き出し領域13で、引き出し配線4と引き出し配線5との間に相互作用が生じても、タッチ位置の検出感度を低下させることを回避することができる。そして、引き出し領域13を複数設ける必要はなく、1つのみ設けて引き出し配線4、5を形成することができ、1つのコネクタを用いて制御回路と接続することができる。よって、タッチパネル10は、省スペース化を可能とする。
【0060】
また、本実施の形態のタッチパネル10は、図1に示すように、引き出し領域13で引き出し配線4と引き出し配線5とを交互に配列する特徴的な構造を有する。そうした構造を形成するために、図1の点線で囲まれた引き回し配線の重畳領域である領域15のように、引き回し領域12に引き出し配線4と引き出し配線5とが交差する部分が形成されることがある。タッチパネル10では、この交差する部分で、引き出し配線4と引き出し配線5の重なり部が、樹脂基板1を介して絶縁的に形成されている。
【0061】
領域15におけるような引き出し配線4と引き出し配線5の重なり部の形成は、検知領域11以外の領域で交差容量を形成することになり、検知領域11におけるタッチ位置の検出感度を低下させることがある。
【0062】
そこで、本実施の形態のタッチパネル10では、重なり部を構成する引き出し配線4および引き出し配線5のうちの少なくとも一方が、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くことで、それらの重なり部における引き出し配線4および引き出し配線5の重なり面積を低減することができる。尚、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くという形状は、詳しくは後述するが、ベタ状の配線形状の片側辺部を一部切り欠いてもよいし、配線の中央部を切り欠いてもよい。切り欠く形状は矩形でも円形、楕円形状であってもよい。言い換えれば、後述する配線のメッシュ形状化は複数の四角形状を切り欠いた形状と表現できる。
【0063】
例えば、引き出し配線4および引き出し配線5の少なくとも一方は、上述の領域15内の重なり部を構成する部分を、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成することができる。
【0064】
本実施の形態のタッチパネル10は、引き出し配線4および引き出し配線5の少なくとも一方をこうした構造とすることにより、重なり部に発生する静電容量を低減でき、ひいてはタッチパネル10のタッチ位置の検出感度を保つことができる。
以下、タッチパネル10の引き出し配線4等の具体的な構造についてより詳しく説明する。
【0065】
図3は、本発明の第1実施形態のタッチパネルの引き出し配線の重なり部を構成する部分の拡大図である。
【0066】
タッチパネル10においては、引き出し配線4の重なり部を構成する部分16を、図3に示すように、引き出し配線4の他の部分よりも細い複数の微細配線よりなるメッシュ構造とすることが可能である。引き出し配線4の重なり部を構成する部分16のメッシュ構造は、図3に示すように、引き出し配線4の形成方向と平行な複数の微細配線を配列し、それら微細配線と交差する微細配線をさらに複数設けてメッシュ状の構造を形成している。
【0067】
タッチパネル10の引き出し配線4が、図3に示す部分16を有する場合、引き出し配線5との重なり面積はメッシュ状の微細配線の面積分のみに抑えられていることから、引き出し配線4と引き出し配線5との重なり面積が大幅に低減される。その結果、引き出し配線4と引き出し配線5とが交差して、樹脂基板1を介して重畳する部分が形成されても、タッチパネル10のタッチ位置の検出感度への影響は効果的に抑えられている。一方で、引き出し配線4のメッシュ構造の導通方向の両端部では、複数の微細配線によって引き出し配線4の他の部分と接続されているため、重なり部を構成する部分16を通過する電流の導通は確保されている。
【0068】
尚、本実施形態のタッチパネル10において、引き出し配線の重なり部を構成する部分は、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成されていればよく、図3に示したメッシュ構造のみに限られるわけではない。
【0069】
図4は、第1実施形態のタッチパネルの引き出し配線の重なり部を構成する部分の別の例の拡大図である。図4(a)は、引き出し配線の重なり部を構成する部分の別の例の拡大平面図であり、図4(b)は、引き出し配線の重なり部を構成する部分のさらに別の例の拡大平面図である。
【0070】
図4(a)に示すように、引き出し配線4の重なり部を構成する部分16の別の例である引き出し配線4の部分16aでは、引き出し配線4の形成方向と平行な1本または複数本の微細配線を配列して形成することが可能である。この例では4本の微細配線が配設されている。また、図4(b)に示すように、引き出し配線4の重なり部を構成する部分16のさらに別の例である引き出し配線4の部分16bでは、メッシュ構造を形成する微細配線の形成方向を図3に示したものと変え、微細配線が図3に示した例と異なる形成角度を有するメッシュ構造とすることが可能である。
【0071】
また、本実施形態のタッチパネル10では、引き出し配線4との重なり部を構成する引き出し配線5の部分について、図3、図4(a)および図4(b)に示した形状とする等、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成された構造とすることが可能である。一方で、引き出し配線4との重なり部を構成する引き出し配線5の部分については、そのような、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成された構造とすることなく、ベタ状とすることも可能である。重なり面積を最小にして検出感度を精度良くすることを考えると、重なり部を形成する引き出し配線4と引き出し配線5のそれぞれが複数本の微細配線であることが好ましい。
【0072】
さらに、引き出し配線4の重なり部を構成する部分をベタ状とし、引き出し配線5の重なり部を構成する部分のみを、図3、図4(a)および図4(b)等に示した、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成された構造とすることも可能である。
【0073】
以上のように、本発明の第1実施形態のタッチパネル10は、引き出し配線4、5を配置して有する引き出し領域13において、特徴的な配線構造と配線配列の構造を有し、タッチ操作の検出感度の低下の問題を回避する。
【0074】
ここで、タッチパネル10は、図2に示すように、引き出し領域13で、表の面に引き出し配線4が配列され、裏の面で引き出し配線5が配列されている。そして、引き出し領域13の引き出し配線5は、表の面の、引き出し配線4が形成されていない領域と対向する裏の面の領域に設けられている。その結果、引き出し領域13では、引き出し配線4と引き出し配線5とが交互に配列されるように構成されるが、引き出し配線4および引き出し配線5それぞれの配列は、1/2ピッチずれて形成されることになる。
【0075】
すなわち、引き出し領域13で、引き出し配線4の配列間隔と引き出し配線5の配列間隔とは互いに同等であるものの、引き出し配線4、5の形成方向と垂直な方向の引き出し配線4および引き出し配線5の配列位置は、互いに、例えば、1/2ピッチずつずれるようになっている。
【0076】
このような構造の第1実施形態のタッチパネル10では、引き出し領域13において、表の面の引き出し配線4同士の間、および裏の面の引き出し配線5同士の間に、引き出し配線と平行なダミー配線を形成することができる。そして、このダミー配線を含んだ引き出し配線4の配列位置と、同様にダミー配線を含んだ引き出し配線5の配列位置とを、引き出し領域13の表の面と裏の面とで、同一位置となるようにすることができる。
【0077】
図5は、本発明の第1実施形態のタッチパネルの別の例の構造を説明する模式的な平面図である。
【0078】
図5に示すタッチパネル110は、タッチパネル10と同様、ストライプ状に配置された複数のX検知電極2およびY検知電極3を有する検知領域11と、検知領域11に連設された引き回し領域12と、引き回し領域に連設された引き出し領域113とを樹脂基板1上に有して構成される。そして、タッチパネル110は、その他の構造について、引き出し領域113にダミー配線120を設けた以外は、第1実施形態のタッチパネル10と同様の構造を有する。したがって、共通する構成要素については、同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0079】
図5に示すタッチパネル110では、引き出し領域113の表の面で、引き出し配線4が連結部114から、その連結部114と対向する端部に向かって伸びるように形成され、所定の間隔で配列されている。そして、ダミー配線120が、引き出し配線4の形成された面で、引き出し配線4と平行となるように形成されている。同様に、引き出し領域113の裏の面においても、引き出し配線5と平行になるようダミー配線120が設けられている。ダミー配線120は、フローティング状態とするか、図示されないコネクタとの接続によって接地接続されることが好ましい。
【0080】
図6は、図5のB−B’線に沿った断面概略図である。
【0081】
ダミー配線120の配置方法については、図6に示すように、例えば、引き出し領域113の表の面で引き出し配線4とダミー配線120を含む配線の形成ピッチが一定となるようにすることが好ましい。同様に、引き出し領域113の裏の面でも、引き出し配線5とダミー配線120を含む配線の形成ピッチが一定となるようにすることが好ましい。
【0082】
タッチパネル110では、引き出し領域113で、引き出し配線4と引き出し配線5とが一定の配列ピッチで配列されている。その結果、引き出し領域113の表の面において、ダミー配線120は、裏の面の引き出し配線5の形成位置と同じ位置に配置されることになる。同様に、引き出し領域113の裏の面において、ダミー配線120は、表の面の引き出し配線4の形成位置と同じ位置に配置されることになる。
【0083】
以上のような構造で、ダミー配線120を設けることにより、タッチパネル110は、引き出し領域113の表の面と裏の面とで、引き出し配線4、5の配列ピッチを調節することができ、引き出し領域113の末端部を接続端子としたコネクタ等との接続を容易にすることができ、ひいては、制御回路との接続を容易に行うことができる。
【0084】
<実施の形態2>
本発明の第2実施形態であるタッチパネルは、上述した第1実施形態であるタッチパネル10と同様に、静電容量方式とすることが可能である。そして、本実施形態のタッチパネルは、樹脂基板を用いて構成され、検知電極の配された検知領域と、検知電極に接続する配線を引き出すための領域とを一体的に形成して有する。配線を引き出すための領域においては、特徴的な配線構造と配線の配列構造を有する。
【0085】
図7は、本発明の第2実施形態のタッチパネルの構造を説明する模式的な平面図である。
【0086】
図7に示すように、本実施形態のタッチパネル210は、タッチパネル10と同様、ストライプ状に配置されたそれぞれ複数のX検知電極202およびY検知電極203を有する検知領域211と、検知領域211に連設された引き回し領域212と、引き回し領域212に連設された引き出し領域213とを樹脂基板1上に有して構成される。
【0087】
本実施形態のタッチパネル210では、X検知電極202が検知領域211の第1の面である表の面側に形成される。そして、Y検知電極203も表の面側に形成されて、Y検知電極203がX検知電極202との交差部分で、図示されない絶縁層を介して重畳するように構成されている。したがって、X検知電極202に接続する引き出し配線204およびY検知電極203に接続する引き出し配線205は、いずれも引き回し領域212と引き出し領域213の表の面側に形成される。
【0088】
絶縁層は、タッチパネル210の場合のように、検知領域211におけるX検知電極202とY検知電極203との間の絶縁性が確保されるように、検知領域211の全域に設けることが可能である。また、別の例として、絶縁層を検知領域211内のX検知電極202とY検知電極203との交差部分にのみ設けることも可能である。
【0089】
本実施形態のタッチパネル210は、X検知電極202およびY検知電極203のいずれもが絶縁層を介して検知領域211の表の面側に形成され、それにともなって、引き出し配線204、205が表の面側に形成されること以外は、第1実施形態のタッチパネル10と同様の構造を有する。したがって、共通する構成要素については、同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0090】
タッチパネル210は、上述したように、樹脂基板1上に、図7中で破線を用いて模式的に示された検知領域211と、点線を用いて模式的に示された引き回し領域212と、引き出し領域213とを有している。
【0091】
図7に示すタッチパネル210の検知領域211では、樹脂基板1の第1の面である表の面に、第1の検知電極として、水平方向であるX方向に伸びる複数のX検知電極212を所定の間隔で配列して有する。そして、樹脂基板1の表の面側に、X方向と垂直な方向であるY方向に伸びる複数のY検知電極213を所定の間隔で配列して有する。X検知電極202とY検知電極203との間には、図示されない絶縁層が設けられ、Y検知電極203は、X検知電極202との交差部分で、絶縁層を介して重畳するように構成されている。したがって、タッチパネル210の検知領域211では、絶縁層を挟んでX検知電極202とY検知電極203とが格子状に配置される。
【0092】
タッチパネル210の検知領域211は、タッチパネル210が液晶表示パネル等の表示パネル(図示されない)上に配置されたときに、操作者が指やペン等の導体によりタッチして操作する操作面となり、そのタッチ位置を検出する。
尚、図7に示すタッチパネル210において、検知領域211に配置されるX検知電極202および検知電極203の数、短手方向の幅、および配列の間隔は適宜変更することが可能である。
【0093】
タッチパネル210の検知領域211の周辺には、図7中で点線を用いて模式的に示された、配線引き回しのための引き回し領域212が、検知領域211の周囲を取り囲むように連続して設けられている。
【0094】
そして、引き回し領域212の端部には、配線を引き出して、例えば、コネクタ(図示されない)と接続するための引き出し領域213が連結部214を介して連結するように設けられている。
引き出し領域213の形状としては、図1に示した第1実施形態のタッチパネル10の引き出し領域13と同様とすることができる。
【0095】
タッチパネル210は、検知領域211の表の面で複数のX検知電極202が、それぞれX方向に伸びるよう配置され、それぞれの末端で第1の配線である引き出し配線204に接続している。一方、複数のY検知電極203が、同様に検知領域211の表の面側で、X方向と直交するY方向に伸びるよう配置され、それぞれ末端で第2の配線である引き出し配線205に接続している。
【0096】
引き出し配線204、205は、金属材料を用いて形成することができる。引き出し配線204、205の形成に使用可能な金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、金属クロム、ニッケルおよびチタンを挙げることができる。好ましくは、汎用性の高い金属クロムである。
【0097】
引き出し配線204および引き出し配線205は、それぞれ引き回し領域212の表の面側でX検知電極202およびY検知電極203から引き出される。そして、引き出された引き出し配線204、205は、引き回し領域212と引き出し領域213との連結部214に向かって引き回される。
【0098】
引き回された引き出し配線204および引き出し配線205のそれぞれは、タッチパネル210の引き出し領域213の表の面側で、引き回し領域212との連結部214から、連結部214と対向する引き出し領域213の端部に向かって伸びるように形成される。そして、引き出し配線204および引き出し配線205は、引き出し領域213の表の面側で、互いに平行かつ、所定の間隔でそれぞれ交互に配列される。交互に配列された引き出し配線204および引き出し配線205のそれぞれは、引き出し領域213の末端部で、例えば、コネクタ等と接続するための接続端子を構成する。
【0099】
こうした構造のタッチパネル210は、格子状をなすX検知電極202とY検知電極203とが、絶縁層を介し、互いに絶縁して配置される。そのため、絶縁層を挟んでX検知電極202とY検知電極203とが重畳する交差部分に容量が形成されている。
【0100】
X検知電極202に接続する引き出し配線204と、Y検知電極203に接続する引き出し配線205は、上述したように、検知領域211および引き回し領域212と一体的に形成された引き出し領域213を介し、例えば、コネクタを用いて制御回路(図示されない)に接続している。制御回路は、第1実施形態のタッチパネル10の場合と同様に、X検知電極202とY検知電極203とを用いて静電容量を監視するように構成されている。
【0101】
したがって、タッチパネル210では、操作者の指等によるタッチ操作に伴って容量形成がなされた場合、それを電位の変化として検知することができ、その接触位置を検出することができる。
【0102】
以上の構成を有するタッチパネル210では、引き出し領域213で隣接して配列される引き出し配線204と引き出し配線205との間に、樹脂基板1を介した相互作用が生じることがある。
【0103】
図8は、図7のC−C’線に沿った断面概略図である。
【0104】
図8に示すように、引き出し領域213では、表の面で、引き出し配線204と引き出し配線205とが隣接するように配置されている。
【0105】
そのため、タッチパネル210は、引き出し領域213で、引き出し配線204と引き出し配線205との間に、図8中の矢印で表されるような相互作用が生じることがある。こうした相互作用の不均一な箇所が引き出し配線204、205のうちの一部に生じた場合、上述した従来のタッチパネルと同様の検出感度低下の問題が生じる可能性がある。
【0106】
しかしながら、タッチパネル210では、引き出し領域213の表の面側で引き出し配線204と引き出し配線205とが交互に配列しており、そのような相互作用は全ての引き出し配線204、205でほぼ同等に生じるようになる。そのため、引き出し配線204、205の間に生じる相互作用の影響が、全ての引き出し配線204、205のうちの一部に偏って発生することは回避されている。
【0107】
したがって、タッチパネル210は、引き出し領域213の引き出し配線204、205間で生じる相互作用が均一となるので、検知領域211におけるタッチ位置の検出感度を低下させることを回避することができる。そのため、引き出し領域213を複数設ける必要はなく、1つのみ設けて引き出し配線204、205を配置することができ、1つのコネクタを用いて制御回路と接続することができる。よって、タッチパネル210は、省スペース化を可能とする。
【0108】
また、本実施の形態のタッチパネル210は、図7に示すように、引き出し領域213で引き出し配線204と引き出し配線205とを交互に配列する特徴的な構造を有する。そうした構造を形成するために、図7の点線で囲まれた引き回し配線の重畳領域である領域215のように、引き回し領域212に引き出し配線204と引き出し配線205とが交差する部分が形成される。タッチパネル210では、この交差する部分で、引き出し配線204と引き出し配線205の重なり部が、図示されない絶縁層を介して絶縁的に形成されている。
【0109】
この絶縁層は、図7の領域215内の引き出し配線204と引き出し配線205とが交差する部分に対応する位置に交差面積よりも大きい大きさで、引き出し配線204と引き出し配線205との間に、それらの絶縁性が確保できるように形成される。尚、この絶縁層の形成については、検知領域211の全域に設けられた絶縁層を大きくして領域215にも及ぶようにして、引き出し配線204と引き出し配線205との間に設けることも可能である。この場合、絶縁層は、検知領域と引き回し領域の全域に配設されるが、引き出し領域には絶縁膜を配さないようにすることが好ましい。
【0110】
このような絶縁層を挟んで絶縁的に形成された引き出し配線204と引き出し配線205の重なり部の形成は、検知領域211以外にも交差容量を形成することになり、検知領域211におけるタッチ位置の検出感度を低下させることがある。
【0111】
そこで、本実施の形態のタッチパネル210は、重なり部を構成する引き出し配線204および引き出し配線205のうちの少なくとも一方が、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くことで、それらの重なり部における引き出し配線204および引き出し配線205の重なり面積が低減されている。
【0112】
例えば、重なり部を構成する引き出し配線204および引き出し配線205のうちの少なくとも一方が、重なり部を構成する部分について、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成された構造を有するようにすることが可能である。より具体的には、重なり部を構成する引き出し配線204および引き出し配線205のうちの少なくとも一方の重なり部を構成する部分について、第1実施形態のタッチパネル10と同様に、図3、図4(a)および図4(b)に示した形状とすることができる。
【0113】
本実施の形態のタッチパネル210は、引き出し配線204および引き出し配線205の少なくとも一方をこうした構造とすることにより、重なり部に発生する静電容量を低減でき、ひいてはタッチパネル210のタッチ位置の検出感度を保つことができる。
【0114】
また、本実施の形態のタッチパネル210は、引き出し領域213において、引き出し配線204、205の配列された表の面側に、それらと平行となるように形成されたダミー配線を有することが可能である。このダミー配線は、配列する引き出し配線204、205の両方の端に、それらを挟むように、例えば、2本を形成することが可能である。ダミー配線は、図示されないコネクタ等を介して接地接続されることが好ましい。
【0115】
引き出し領域213の表の面側に引き出し配線204と引き出し配線205とを交互に配列した場合、引き出し配線204と引き出し配線205との間に、図8中の矢印で表されるような相互作用が生じることがある。その場合、両端に位置する引き出し配線205には、さらにその外側に位置する引き出し配線204が無いことになる。そのため、両端に位置する引き出し配線205は、その内側にある他の引き出し配線204、205と比べて、引き出し配線204、205から受ける相互作用の程度が異なっている。
【0116】
したがって、上述したようなダミー配線を設けることにより、タッチパネル210では、引き出し配線204と引き出し配線205との間の相互作用が、全ての引き出し配線204、205でより均等に生じるようになる。したがって、ダミー配線を設けたタッチパネル210は、引き出し配線204、205の間に生じる相互作用の影響が、全ての引き出し配線204、205のうちの一部に偏って生じることを効率的に防止することができる。そして、タッチパネル210のタッチ位置の検出感度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0117】
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【0118】
例えば、本発明のタッチパネルでは、X検知電極およびY検知電極の構造を、図1、図5および図7に示すように、ITO等を用いて短冊状に構成することができるが、例えば、より導電特性に優れた金属材料を用いて、より微細なワイヤー状の形状とする等、他の形状を選択することも可能である。
【0119】
また、X検知電極およびY検知電極に、例えば、複数の微細金属線からなる金属メッシュの電極を用いてもよい。金属メッシュの電極を用いることにより、タッチパネルの検知領域の透光性を確保するとともに、低抵抗かつ高信頼性のX検知電極およびY検知電極を形成することができる。
【符号の説明】
【0120】
1、501 樹脂基板
2、202、502 X検知電極
3、203、503 Y検知電極
4、5、204、205 引き出し配線
10、110、210、500 タッチパネル
11、211 検知領域
12、212 引き回し領域
13、113、213 引き出し領域
14、114、214 連結部
15、215、507 領域
120 ダミー配線
504、504a、505、505a 配線
506 配線引き出し領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライプ状に配置されたそれぞれ複数の第1の検知電極および第2の検知電極を有する検知領域と、前記検知領域の周辺に設けられた引き回し領域と、前記引き回し領域に連結して設けられた引き出し領域とを樹脂基板上に有し、
前記第1の検知電極と接続する第1の配線および前記第2の検知電極と接続する第2の配線が、前記引き回し領域で前記引き出し領域との連結部に向かって引き回され、前記引き出し領域で、前記連結部から当該連結部と対向する端部に向かって伸びるように形成されるタッチパネルであって、
前記引き回し領域で、前記第1の配線と前記第2の配線の重なり部が絶縁的に形成されており、
前記重なり部を構成する前記第1の配線および前記第2の配線のうちの少なくとも一方が、導通を切らない形状に少なくとも一部を欠くことで、前記重なり部における前記第1の配線および前記第2の配線の重なり面積が低減されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記引き出し領域では、前記第1の配線と前記第2の配線とが、所定の間隔で交互に配列したことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方は、前記重なり部を構成する部分が、その他の部分よりも細い1本または複数本の微細配線により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記微細配線は、前記第1の配線と前記第2の配線の前記重なり部においてメッシュ形状を形成していることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記第1の検知電極および前記第1の配線は、前記樹脂基板の第1の面に形成されて、前記引き出し領域の前記第1の面で、前記第1の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
前記第2の検知電極および前記第2の配線は、前記樹脂基板の前記第1の面に対向する第2の面に形成されて、前記引き出し領域の前記第2の面で、前記第2の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
前記引き出し領域で、前記第1の配線と前記第2の配線とが、前記樹脂基板を挟んで、所定の間隔で交互に配列するように構成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第1の検知電極および前記第1の配線は、前記樹脂基板の前記第1の面に形成されて、前記引き出し領域の前記第1の面で、前記第1の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
前記第2の検知電極および前記第2の配線は、前記樹脂基板の前記第1の面に形成されて、前記第2の検知電極が前記第1の検知電極と絶縁層を介して重畳するように構成されるとともに、前記引き出し領域の前記第1の面で、前記第2の配線のそれぞれが所定の間隔で配列し、
前記引き出し領域の前記第1の面で、前記第1の配線と前記第2の配線とが、所定の間隔で交互に配列するように構成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記引き出し領域の、前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方が形成された面に、前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方と平行となるよう形成されたダミー配線を有することを特徴とする請求項5または6に記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105275(P2013−105275A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247982(P2011−247982)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000103747)京セラディスプレイ株式会社 (843)
【Fターム(参考)】