説明

タワーボイラの建造方法

【課題】多数の伝熱管によって形成する後伝部を、より効率的に建造できるようにし、これによって全体の工期短縮を図るとともに、作業の安全性を高めた、タワーボイラの建造方法を提供する。
【解決手段】ボイラ本体を有するタワーボイラの建造方法である。タワーボイラの後伝部を構成する複数の伝熱管を、タワーボイラの建造現場以外の場所で仮固定具によって、ボイラ本体に組み付ける後伝部としての形態に並列配置する工程と、並列配置した伝熱管をその状態に保持して建造現場に移送し、建造中のボイラ本体の下方に搬入する工程と、搬入した伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付ける工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワーボイラの建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラとしては、高温ガスの対流伝熱によって流体を加熱する部分(接触伝熱面)を火炉の後側に配置したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このように火炉の後側に配置された加熱部分は、一般に後部伝熱部(後伝部)と呼ばれている。
これに対してタワーボイラは、前記接触伝熱面、すなわち後部伝熱部を、火炉の上側に配置するようにしたもので、接触伝熱面が火炉の後側に配置されている従来のボイラに比べ、設置スペースが約20%程度少なくなり、したがって据付場所の制約を受けるような場合に好適とされている。
【0003】
このようなタワーボイラは、柱間に形成されたボイラ架構に、吊下材を介してボイラ本体が吊り下げられて支持された構造となっている。
このタワーボイラの建造において、前記ボイラ本体を建造するにあたっては、特に後伝部(後部伝熱部)はボイラ本体の高い位置に取付けられるため、その施工が難しくなっている。すなわち、後伝部の施工にあたっては、通常は後伝部を構成する伝熱管を予め工場で所定形状に曲げ加工しておき、これら伝熱管を現場に搬入する。そして、これら伝熱管を後伝部の構造に組み立てるとともに、ボイラ本体の構造内に組み付ける。
【0004】
ところが、伝熱管の組み付け等は高所および狭隘な場所での作業となるため、作業性や安全性に問題がある。
そこで、工場等の建造現場以外の場所において伝熱管を後伝部の構造に組み立てて後伝部エレメントとし、この後伝部エレメントを施工現場に搬入してボイラ本体の構造内に組み付けることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、後伝部を構成する各エレメントは、例えば多数の伝熱管が互いに連結することなく独立してそれぞれ所定状態に配置され、最終的にハンガーチューブ等に固定されることによってボイラ本体内に組み付けられる。したがって、これら多数の伝熱管を予め組み立てて後伝部エレメントをユニット化しておくのは、このユニット(後伝部エレメント)のボイラ本体内への組み付けが終わった後、個々の伝熱管を再度独立させる必要があるため、設計上、非常に困難である。
また、たとえ後伝部エレメントをユニット化したとしても、組みあがったユニットの状態の後伝部エレメントはかなり大きくなるため、工場等から建造現場までのトラック輸送が困難である。
【0006】
したがって、従来では、後伝部エレメントを建造現場以外の場所で組み立てて(ユニット化して)現場に輸送するといった手法を採ることができず、伝熱管を、トラックに載る範囲の形状に曲げ加工された配管の形でトラック輸送し、現場に搬入している。
すなわち、ボイラ本体の下部を空けた状態とし、この空きスペースで搬入された伝熱管を後伝部の構造(後伝部エレメント)に組み立て、その後、組みあがった構造体(後伝部エレメント)をボイラ本体の取付け位置まで吊上げ、ボイラ本体の構造内に組み付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−162137号公報
【特許文献2】特開2002−115804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、後伝部を形成するための多数の伝熱管については、前記したようにトラックに載る範囲の形状に曲げ加工した形で、トラック輸送にて建造現場に搬入している。その際、伝熱管の曲折した特殊な形状による制限から、輸送効率を高めるべく伝熱管を横に寝かせて積層した状態でトラックの荷台に載せ、現場ではそのままの状態で荷卸しする。
したがって、伝熱管をボイラ本体内に組み付ける際には、寝かされて積層された状態の伝熱管を1本1本立ち上げ、順次接続して後伝部の構造(後伝部エレメント)に組み立てなくてはならず、効率が非常に悪い工程となっていた。そのため、この工程が工期短縮を損なう一因になっており、また、作業の安全性も損なっている。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、多数の伝熱管によって形成する後伝部を、より効率的に建造できるようにし、これによって全体の工期短縮を図るとともに、作業の安全性を高めた、タワーボイラの建造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のタワーボイラの建造方法は、ボイラ本体を有するタワーボイラの建造方法において、
タワーボイラの後伝部を構成する複数の伝熱管を、タワーボイラの建造現場以外の場所で仮固定具によって、前記ボイラ本体に組み付ける後伝部としての形態に並列配置する工程と、
並列配置した前記伝熱管をその状態に保持して前記建造現場に移送し、建造中のボイラ本体の下方に搬入する工程と、
搬入した前記伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記タワーボイラの建造方法においては、搬入した前記伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付ける工程では、前記仮固定具で伝熱管を後伝部としての形態に並列配置した状態で行い、伝熱管をボイラ本体の下部に組み付けた後、前記仮固定具を取り外すことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタワーボイラの建造方法によれば、複数の伝熱管を、建造現場以外の場所でボイラ本体に組み付ける後伝部としての形態に並列配置しておき、この並列配置した伝熱管を建造現場に移送して建造中のボイラ本体の下方に搬入し、搬入した伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付けるようにしたので、例えば寝かされて積層された状態の伝熱管を建造現場にて1本1本立ち上げる必要がなく、搬入した伝熱管を並列配置状態そのままでボイラ本体の下部に組み付けることが可能になり、よって、作業効率が向上するとともに、作業の困難性も改善される。したがって、全体の工期短縮を図るとともに、作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るタワーボイラの一例の側断面図である。
【図2】図1に示したタワーボイラのA−A線矢視図である。
【図3】伝熱管によって構成される伝熱管パネル及び後伝部エレメントの概略構成図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の建造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図5】伝熱管を並列配置して形成した後伝部エレメントの説明図であり、(a)は側面図、(b)は要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のタワーボイラの建造方法の実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
まず、本発明のタワーボイラの建造方法によって建造されるタワーボイラの一例を、図1、図2を参照して説明する。なお、図1はタワーボイラの一例の側断面図、図2は図1に示したタワーボイラのA−A線矢視図である。
【0015】
図1、図2に示すようにタワーボイラには、前後側の炉壁1,2(図1参照)と左右側の炉壁3,4(図2参照)とによって水平断面形状が矩形状に形成された、ボイラ本体7が備えられている。このボイラ本体7は、上方に高く延びて形成され、その上端に天井壁6が設けられており、鉄骨8から吊下材5によって吊下げ支持されている。前後側の炉壁1,2および左右側の炉壁3,4は、上下方向に延びる平行な炉壁管9の相互間をフィン(図示せず)で接続してなる、炉壁パネルによって形成されている。
【0016】
前記ボイラ本体7の前後側の炉壁1,2の下部位置には、複数のバーナ11が設けられており、前記ボイラ本体7の上端後部には、排ガス出口12が設けられている。この排ガス出口12には、煙道13の上端部が連通しており、該煙道13は排ガス出口12側から下方に延びて配置されている。
また、前記ボイラ本体7内の上下方向中間部から前記排ガス出口12までの間には、本発明における後伝部(後部伝熱部)となる熱交換装置14が設置されている。さらに、前記ボイラ本体7の上下方向中間部位置から上方には、前後側の炉壁1,2及び天井壁6の外部を包囲するようにして、ケーシング15が設けられている。このケーシング15の外周及びボイラ本体7の下部外周には、保温材16が設けられている。
【0017】
前記熱交換装置(後伝部)14は、前記排ガス出口12に近い上部位置(低温部側)に節炭器17を配設している。該節炭器17の下側には、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21、及びハンガーチューブ過熱器22が順次配設されている。
前記節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21は、それぞれ、図1に示すようにボイラ本体7内を前後方向に幅全体に亘って延びるパネル状の伝熱管23にて構成されている。このパネル状の伝熱管23は、図2のボイラ本体7内をその左右方向に多数並列された状態で配置されている。
【0018】
伝熱管23は、図3に示すように、予め設計された所定のS字形状(図3では逆S字形状)となるように、工場で複数箇所曲げ加工されて形成されたものである。また、伝熱管23は、それぞれが異なるS字形状となるように曲げ加工され、これらが同一平面上に配列されることにより、前記したようにパネル状に構成されている。すなわち、異なるS字形状の複数の伝熱管23は、互いに所定間隔をおいて同一平面上に配列されて、伝熱管パネル23Aを形成している。
【0019】
また、このように形成された伝熱管パネル23Aは、該伝熱管パネル23Aが形成する平面が鉛直方向に立つように配置され、さらに、これら伝熱管パネル23Aが所定間隔をおいて互いの面を対向させて水平方向に複数並列配置されることにより、前記の節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21をそれぞれ形成している。すなわち、前記熱交換装置(後伝部)14を構成する節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21は、複数の伝熱管23からなる伝熱管パネル23Aが予め設定された所定の形態に配設されたことで、形成されている。
【0020】
ここで、これら節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21は、本発明では後伝部(熱交換装置14)の一部を構成する形態、すなわち後伝部エレメントとなっている。したがって、本発明では、例えば図3に示したような複数の伝熱管パネル23Aが水平方向に並列配置されてなる後伝部エレメント23Bにより、節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21が形成されている。
【0021】
また、前記ハンガーチューブ過熱器22は、上端に備えられたヘッダ24から下方に延設された多数のハンガーチューブ25によって形成されている。すなわち、ハンガーチューブ25の下端が横方向に曲げられたことにより、ハンガーチューブ過熱器22が形成されている。このハンガーチューブ過熱器22も、前記節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21と同様に、図3に示したような、複数の伝熱管パネル23Aが水平方向に並列配置されてなる後伝部エレメント23Bによって形成されている。すなわち、ハンガーチューブ25も伝熱管であり、したがって多数のハンガーチューブ25によって形成されたハンガーチューブ過熱器22も、多数の伝熱管(ハンガーチューブ25)からなる後伝部エレメント23Bによって形成されたものとなる。
【0022】
また、ハンガーチューブ25は、前記節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21のそれぞれの伝熱管23を吊り下げて支持するようになっている。このような構成によって前記の各伝熱管23は、単一の後伝部エレメント23B中では互いに連結されることなく独立した状態に配置され、ハンガーチューブ25によってその位置が固定されるようになっている。また、各後伝部エレメント23B間では、例えば互いに流路が連続する後伝部エレメント23B間で、対応する伝熱管23どうしが他の連結配管(図示せず)を介して溶接等によって接続されている。なお、必要に応じて、ハンガーチューブ25以外の固定部材により、各後伝部エレメント23B(伝熱管23)を炉壁1〜4等に補助的に固定していてもよい。
【0023】
図1に示すようにボイラ本体7の各炉壁1,2,3,4の炉壁管9の上端には、ドラムあるいはセパレータからなる気水分離装置28が接続されている。これにより、炉壁管9内で加熱された加熱水は、気水分離装置28によって水と蒸気に分離され、水は再びボイラ本体7の炉壁管9に戻されるようになっている。一方、気水分離装置28で分離された蒸気は、前記ハンガーチューブ25のヘッダ24に導かれるようになっている。
なお、ボイラ本体7には、本例では図1中に破線で示すように熱交換装置14の上方、すなわち節炭器17の上方に、ガス流量調節ダンパ32,33が設けられている。
【0024】
このような構成のボイラ本体7にあっては、下方から供給された給水26が、まず、節炭器17に供給される。そして、バーナ11の燃焼によって発生する高温の排ガス27によって加熱された後、給水26はボイラ本体7の下端に供給される。そして、ボイラ本体7の前後側の炉壁1,2及び左右側の炉壁3,4の炉壁管9内を加熱されながら上昇し、上部の気水分離装置28に供給され、ここで水と蒸気に分離される。分離された水は、再びボイラ本体7の炉壁管9に戻される。
【0025】
一方、気水分離装置28で分離された蒸気は、前記ヘッダ24からハンガーチューブ25に供給されて内部を下降し、ハンガーチューブ過熱器22に導かれて過熱された後、低温側過熱器19に供給され、続いて高温側過熱器21に導かれて過熱され、高温高圧の蒸気となって高圧の蒸気タービン29に供給される。
高圧の蒸気タービン29から出た蒸気は、低温側再熱器18に供給されて再熱された後、高温側再熱器20に導かれて更に過熱され、その後、中圧あるいは低圧の蒸気タービン30に供給されるようになっている。
【0026】
次に、本発明の一実施形態として、前記構成のボイラ本体7を備えたタワーボイラの建造方法を説明する。
本実施形態では、まず、タワーボイラの主柱を4本建造するとともに、これら主柱間にボイラ架構を形成する。なお、図1、図2では、ボイラ架構を鉄骨8として示している。
【0027】
次に、図4(a)に示すように、各主柱40の上端にこれらを連結する天井大梁(図示せず)を配設し、該天井大梁間に大梁41を配設し、さらに該大梁41にジャッキ42を設置し固定する。
次いで、ジャッキ42に取り付けたワイヤロープ等の吊り材43に、ボイラ本体7の構成要素を上から順に取り付けつつ、順次吊り上げていく。吊り材43には、適宜な天秤(図示せず)を取り付け、この天秤にボイラ本体7の各構成要素を取り付けてもよい。また、天秤として、最終的に前記天井大梁間に配設する大梁41を用いてもよい。
【0028】
図4(a)では、ガス流量調節ダンパ32、33を吊り上げ、さらにその下に、後伝部(熱交換装置14)の一部を構成する要素、すなわち節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19等を構成する各要素、すなわち後伝部エレメント17E〜21Eを、図1に示した配置順に従って順次吊り下げている。また、本実施形態では、高温側過熱器21の下にハンガーチューブ過熱器22を組み付けるべく、該ハンガーチューブ過熱器22を形成するための後伝部エレメント22Eを形成する。
【0029】
すなわち、図3に示したように複数の伝熱管23(ハンガーチューブ25)から伝熱管パネル23Aを形成し、さらにこの伝熱管パネル23Aを複数並列配置して、ハンガーチューブ過熱器22としての形態の、後伝部エレメント23B(22E)を形成する。この後伝部エレメント23Bの形成は、タワーボイラの建造現場以外の場所、例えば工場で行う。また、タワーボイラの建造現場が工場から遠い場合には、タワーボイラの建造現場に近くて広い敷地などで、後伝部エレメント23Bの形成を行ってもよい。
【0030】
その際、形成する後伝部エレメント23Bは、各伝熱管23(各伝熱管パネル23A)を、仮固定具によってボイラ本体7に組み付ける形態に並列配置させておく。すなわち、ハンガーチューブ過熱器22となる後伝部エレメント23B(22E)を、その上に配置される高温側過熱器22に組み付けられる形態に、並列配置させておく。
【0031】
具体的には、図5(a)、(b)に示すように鋼材等からなる底桟45、図5(b)に示すように伝熱管パネル23Aを個々に挟持する挟持柱46、挟持柱46上に設けられた梁47、吊り部材48、などを備えた仮固定具44によって、高温側過熱器22に組み付けられる形態に並列配置させられている。
【0032】
すなわち、各伝熱管パネル23Aを底桟45上に立てて配置するとともに、図5(b)に示すように一対の挟持柱46間に伝熱管パネル23Aを配置し、その両側を挟持柱46で押さえ、その状態で一対の挟持柱46間をボルト止めすることなどにより、伝熱管パネル23Aを一対の挟持柱46間に固定した状態で挟持する。なお、これら挟持柱46の対は、一つの伝熱管パネル23Aに対して複数配置されている。また、底桟45上に並列配置する伝熱管パネル23Aの数に対応して、それぞれに複数ずつ配設されている。さらに、隣り合う各対どうし間の間隔は、ハンガーチューブ過熱器22における各伝熱管パネル23A間の間隔に対応するように調整されている。
【0033】
したがって、各挟持柱46の対間にそれぞれ伝熱管パネル23Aを立てた状態に配置することにより、これら伝熱管パネル23Aは、ボイラ本体7に組み付ける後伝部としての形態、すなわち後伝部エレメント23B(22E)としての形態に並列配置される。なお、図5(a)に示すように伝熱管パネル23Aは、伝熱管23のそれぞれの両端部が、仮止め材29によって仮固定されている。
【0034】
このようにして並列配置された多数の伝熱管23(ハンガーチューブ25)からなる後伝部エレメント23B(22E)は、並列配置された状態に保持されたままで、吊り部材48によってトラックの荷台に積み上げられる。そして、タワーボイラの建造現場に輸送(移送)される。建造現場では、建造中のボイラ本体7が吊り上げられており、したがって後伝部エレメント23B(22E)は、図4(a)に示すようにその下方に搬入される。なお、後伝部エレメント22E(23B)の、ボイラ本体7の下方への搬入は、敷地が広い場合には直接トラックで行ってもよく、狭い場合には、トラックから降ろした後、仮固定具44で並列配置された状態に固定された後伝部エレメント22E(23B)を、クレーン等によってボイラ本体7の下方に移送(搬入)してもよい。
【0035】
次いで、搬入した伝熱管23(ハンガーチューブ25)からなる後伝部エレメント22E(23B)を、直上に位置する高温側過熱器21の後伝部エレメント21Eに対して位置合わせ(芯合わせ)する。すなわち、各エレメント21E、22Eの対応する部材(例えばハンガーチューブ25)どうしが、平面視して互いに重なるように位置合わせを行う。
【0036】
次いで、後伝部エレメント22E(23B)を図示しないジャッキ等によって押し上げ、図4(b)に示すように搬入した後伝部エレメント22E(23B)と吊り下げている高温側過熱器21の後伝部エレメント21Eとの間のレベル合わせを行う。すなわち、高温側過熱器21の後伝部エレメント21Eの各部材と、搬入した後伝部エレメント22E(23B)の各部材(ハンガーチューブ25)とが、互いに対応して接続されるものどうし、接続可能となるようにレベル合わせを行う。なお、ここでは、先に吊り上げている、高温側過熱器21の後伝部エレメント21Eまでのボイラ本体7の各要素(後伝部エレメント17E〜21E)等を、ジャッキ42によって少し下げ、搬入した後伝部エレメント22E(23B)と吊り下げた高温側過熱器21の後伝部エレメント21Eとの間のレベル合わせを行うようにしてもよい。
【0037】
その後、後伝部エレメント21Eと後伝部エレメント23B(22E)との間を、鉛直方向に配置されたハンガーチューブ25を介して連結するとともに、これらエレメント間の互いに対応する部材どうしを、溶接等によって接続する。
そして、このようなエレメント間の接続を終了したら、後伝部エレメント23B(22E)から仮固定具44を取り外す。
その後、図4(c)に示すようにジャッキ42によってボイラ本体7の各要素(後伝部エレメント17E〜22E)等を吊り上げ、ボイラ本体7の残りの部分の組み立て(組み付け)を従来と同様にして行う。
【0038】
このようなタワーボイラの建造方法にあっては、複数の伝熱管23(ハンガーチューブ25)を、建造現場以外の場所でボイラ本体7に組み付ける後伝部としての形態に並列配置して後伝部エレメント22E(23B)とし、この後伝部エレメント22E(23B)を建造現場に移送して建造中のボイラ本体7の下方に搬入するようにしたので、複数の伝熱管23を前記形態に並列配置する工程を、工場等の設備が整った広い場所で行うことができ、したがって作業を効率的に、かつ安全に行うことができる。
【0039】
また、搬入した多数の伝熱管23からなる後伝部エレメント23B(22E)を、単に位置合わせした後、そのまま建造中のボイラ本体7の下部に組み付けるようにしたので、従来のように寝かされて積層された状態の伝熱管を建造現場にて1本1本立ち上げる必要がなく、搬入した後伝部エレメント23B(22E)の各伝熱管23を並列配置状態そのままで、ボイラ本体7の下部に組み付けることができる。
よって、作業効率を従来に比べ格段に向上し、作業の困難性も改善することができ、したがって、全体の工期短縮を図るとともに、作業の安全性を高めることができる。
【0040】
また、搬入した後伝部エレメント23B(22E)を、建造中のボイラ本体7の下部に組み付ける工程では、仮固定具44で各伝熱管23を後伝部としての形態に並列配置した状態で行い、各伝熱管23をボイラ本体7の下部に組み付けた後、仮固定具44を取り外すようにしたので、対応する伝熱管どうしの溶接等による接続の際にも、搬入した後伝部エレメント23B(22E)側の伝熱管23が安定した状態に固定されているため、溶接等の作業がより容易になり、作業効率が従来に比べ格段に向上する。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ハンガーチューブ過熱器22を形成するための伝熱管23(ハンガーチューブ25)を、ボイラ本体7に組み付けられてハンガーチューブ過熱器22となる形態の後伝部エレメント23B(22E)に並列配置させ、この後伝部エレメント23B(22E)を建造現場にてボイラ本体7に組み付けるようにしたが、後伝部、すなわち熱交換装置14の構成要素であれば、ハンガーチューブ過熱器22以外の節炭器17、低温側再熱器18、低温側過熱器19、高温側再熱器20、高温側過熱器21についても、同様にして後伝部エレメント23Bの形態に並列配置させ、これを建造現場にてボイラ本体7に組み付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
7…ボイラ本体、14…熱交換装置(後伝部)、17…節炭器、18…低温側再熱器、19…低温側過熱器、20…高温側再熱器、21…高温側過熱器、22…ハンガーチューブ過熱器、23…伝熱管、23A…伝熱管パネル、23B…後伝部エレメント、17E〜22E…後伝部エレメント、44…仮固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体を有するタワーボイラの建造方法において、
タワーボイラの後伝部を構成する複数の伝熱管を、タワーボイラの建造現場以外の場所で仮固定具によって、前記ボイラ本体に組み付ける後伝部としての形態に並列配置する工程と、
並列配置した前記伝熱管をその状態に保持して前記建造現場に移送し、建造中のボイラ本体の下方に搬入する工程と、
搬入した前記伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付ける工程と、を備えることを特徴とするタワーボイラの建造方法。
【請求項2】
搬入した前記伝熱管を、建造中のボイラ本体の下部に組み付ける工程では、前記仮固定具で伝熱管を後伝部としての形態に並列配置した状態で行い、伝熱管をボイラ本体の下部に組み付けた後、前記仮固定具を取り外すことを特徴とする請求項1記載のタワーボイラの建造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100967(P2013−100967A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245705(P2011−245705)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)